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資本章の外部における資本
3―1 自動増殖論と受動増殖論 すでに本稿の1―1で見たように,宇野の自 己増殖概念には,自発増殖と自動増殖という二 通りの意味合いがあった。1―3で検討した「価 値増殖=自己増殖」と「価値増殖=姿態変換」 という二種類の価値増殖概念と照らし合わせる と,「価値増殖=姿態変換」は,自発増殖に近 い内容をもつものと理解してよいであろう。商 人資本的形式は G─W という貨幣の運動で始 まる,それゆえ他の買い手に依存しない自発性 をもつという説明は,価値増殖の根幹をなすの が G─W─G’という姿態変換の運動であるとい う説明とほぼ重なり合う。自発増殖とは,価値 が自発的に姿態変換することを指してもいるの である。 問題は,非姿態変換型の「価値増殖=自己増 殖」が,自動増殖に近い内容をもつものと理解 してよいか,どうかにある。おそらく宇野自身 は,そのように理解していたものと推測される。 宇野の基本的な構想は,自動増殖にたいする資 本の要請によって金貸資本的形式の必然性を説 いた上で,その金貸資本的形式の発展形として 「それ自身に利子を生むものとしての資本」を (さらには金融資本を)説くというものであっ た。「それ自身に利子を生むものとしての資本」 は,事実上,「自動的に利子を生むものとして の資本」という内容をもつ。資本は所有してい るだけで利子=配当を生んで,自動的に自己増 殖する,これこそが究極的な「資本主義自身の 理念」であり(宇野編[1967・68]!,321頁), この「理念」を図式化したものが G‥‥G’であ る,というわけである。 しかし,「それ自身に利子を生むものとして の資本」にかんする宇野の説明をもう少し丁寧 に読んでみると,そこには自動増殖論の枠組み では処理しきれない問題が含まれていることに 気づく。すなわち,「それ自身に利子を生むも 制資本価値の変動をつうじた受動的な価値増殖に言及している。この受動増殖を具体化し たものが非姿態変換型の増殖方式であるが,それは宇野の想定とは逆に,利子=配当を生 むという自動増殖とは異なるパターンの価値増殖と見なければならない。 資本循環論の意義についても注意を要する。姿態変換型と非姿態変換型とのどちらにも 適用可能な資本規定を立てるためには,資本循環と姿態変換という二つの概念を区別する 必要がある。しかしその区別は,宇野の資本循環論重視説でも,山口の資本循環論不要説 でも曖昧になっている。それはまた,価値増殖と貨幣増加という二つの概念の区別が曖昧 になる原因でもある。 非姿態変換型の価値増殖が本格化するのは,売買関係ではなく貸借関係の領域において である。貨幣利子の確定された貨幣貸借だけが絶対的な貸借関係であるわけではない。先 物取引は,不確定な商品利子の付いた商品貸借である。また資本投下自体も,自分で自分 に資本を前貸しするという擬制的な貸借関係の形式をとる。貨幣価値の変動の影響をいっ たん遮断して前貸資本の価値を確定することが,資本の運動にとって本質的な意味をもつ のである。 JEL 区分:B11,B14,B24,B40,B51,E40生することと同じ理屈である。 94)貨幣を商品と同じポジションに置くということで いえば,「貨幣の商品化」も有効であろう。 95)もともと「貨幣価値」とは,貨幣の「購買力」と 「交換力」という両義性を有している。値上がりする 商品を基準に取れば,貨幣の「購買力」は低下する ことになり,その事態を避けるために貨幣を手放す ことが要請されるというのが,すでにくり返し述べ てきたように小幡の資本規定の眼目であった。同様 に,複数貨幣間の交換関係でも,別の貨幣を基準に 取った貨幣の「交換力」の低下が起こりうるのであ る。 96)現在幾つかの国で採用されている通貨バスケット 制は,こうした「標準商品」の変種と見てよいかも しれない。 参考文献
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Sraffa, P.[1960]Production of Commodities by Means of