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(1)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究 : 解雇制限法九条・一〇条の史的形成と現代的展開

著者 山本 陽大

雑誌名 同志社法學

巻 62

号 4

ページ 1285‑1380

発行年 2010‑11‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012533

(2)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三五七同志社法学 六二巻四号

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究 ―

解雇制限法九条・一〇条の史的形成と現代的展開

本 陽 大

  (一二八五)

 

    

  

  "

    

      

    

  ﹁

     稿

      

      

(3)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三五八同志社法学 六二巻四号

  (一二八六)

 

   

      

      

    

     

    

  "

      

      

    

      

      

    

      

      

      

     

使

      

    

    

     

(4)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三五九同志社法学 六二巻四号

  (一二八七)

      

    

     

      

      

      

      

    

    

     

      

      

    

      

       使

      

(5)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六〇同志社法学 六二巻四号

  (一二八八)

はじめに

  労働契約の成立・展開・終了というプロセスにおいて、とりわけ終了に着目した際に、最も重視すべき契約終了事由は、使用者による一方的解約、すなわち﹁解雇

、由れは様々な理に。よって行われそう異﹂あでいなは論ろにとこるあで 1

労働者に帰責すべき事由が存在する場合のみならず、いわゆる戦略的合理化型の整理解雇にみられるように、近年では経営困難に陥るより以前に、経営合理化や競争力強化のための手段として、解雇が用いられることもある

2

  もちろん、我が国における多くの人々はその生活原資の多くを労働契約に拠っているのであるから、それを一方的に終了させる解雇を法的に規制すべきとする思想が生じること自体は自然なことのように思われる。現に我が国のみなら

ず、諸外国においても、何らかの形において解雇に対する法規制が行われていることは周知の通りである。しかしながら、諸外国と比して我が国の解雇規制は、殊にその法律効果面において、硬直的に過ぎるのではなかろうか。これが、

本稿における問題意識の出発点である。

  すなわち、二〇〇七年に成立した労働契約法(以下、労契法)一六条は、﹁解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして、無効とする﹂と規定する。このよう

に、現在の日本の解雇法制は、その法律効果として無効を予定するところ(解雇無効原則)、比較法的にみると特に、(差別的解雇の禁止等の個別的解雇規制に対置されるところの)一般的解雇規制の法律効果にとして当該解雇を﹁無効﹂を

定める国は、マイノリティーであるといって良い。一九九九年に行われたOECDの解雇規制の強度に関する調査研究

3)

において、解雇無効という法律効果は、解雇規制の強度に対する積極的要因として評価されている。その点において、

日本が当時OECD二七カ国中、ポルトガル、ノルウェーに次いで、﹁解雇が困難な国﹂と評価されたのも故無しとし

(6)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六一同志社法学 六二巻四号 ない。

  最近の我が国の労働法学において、このような解雇法制の法律効果をテーマとするものとして想起されるのは、﹁解

雇の金銭解決制度﹂を巡る議論であろう。そこで論じられているところによれば、解雇の金銭解決制度とは、裁判所により解雇が無効と判断されたことを前提に、一定の要件のもとに労働契約関係を金銭と引き換えに解消することを裁判

所に申し立てる権利を労働者および使用者双方に付与することをその内容とする。もっとも、同制度は二〇〇三年の労働基準法改正の際には立法化が見送られ、その後も検討は試みられているものの、具体的立法に至っていないのが現状

である。

  ところで、本稿では右の意味における解雇の金銭解決制度を﹁狭義の解雇の金銭解決制度﹂と呼んでおきたい。とい

うのは、解雇の金銭解決制度の在り方として理論上観念されるものは、必ずしも右の類型に限られないからである。特にヨーロッパ諸国における多くはむしろ、一般的解雇規制の効果を当該解雇の無効ではなく、使用者による被解雇労働

者に対する金銭の支払義務自体と結び付けている(詳細については、第一章第四節⑴を参照)。そして、解雇法制において金銭的解決手段の可能性を開くという意味においては、これらの法制度も(広義の意味での)解雇の金銭解決制度

と評価できるのである。

  以上のことを踏まえて、諸外国に目を向けてみると、ドイツ解雇制限法(

K ün dig un gs sc hu tz ge se tz

補当一九五一年八月一〇日の立法初で以来、いわゆる﹁解消判決・、方とて第一次的規範一し解雇無効原則を採用する 本は、日)と同様、 4)

償金制度﹂が整備されており、右・狭義の解雇の金銭解決制度と類似の機能を営んでいる。また、その具体的な要件および効果については、その後の判例・学説による理論的展開を見せており、我が国における問題の考察にとって参考と

なるところが大きいと思われる

・に〇年前後の時期お〇いて、様々な学者〇二。しまた、これと並行てはドイツにおいて 5)

  (一二八九)

(7)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六二同志社法学 六二巻四号

実務家から解雇制限法の改革論が唱えられた。そこでの主たる論点は、論者により多少のグラデーションはあったにせ

よ、方向性としては解雇制限法における金銭的解決手段のより一層の拡充へと向いていたのであり、その影響は労働市場改革法(二〇〇三年一二月一九日成立、二〇〇四年一月一日より施行)に伴う解雇制限法改正による新たな金銭解決

制度への導入(解雇制限法

1

a条)へと結実した

。る論に応す対ものであろう 雇﹂度制決解銭金の解。、右このような経緯はにのいうところの﹁広義 6)

  このように、ドイツにおいては﹁解雇規制﹂とその法律効果としての﹁金銭解決﹂との関係性につき、豊富な理論的蓄積が存在するのであり、我が国の議論に対して重要な素材を提供しているものと思われるが、本稿では差し当たり、

﹁狭義の解雇の金銭解決制度﹂を検討の対象としたい。本稿は、日本における解雇法制が抱える問題点を指摘しつつ、現在までの解雇の金銭解決制度に関する議論状況を鳥瞰したのち、ドイツにおける﹁解消判決・補償金制度﹂の歴史的

形成過程から、現在までの展開に対し、分析・検討を加えることにより、我が国における解雇の金銭解決制度の在り方につき、示唆を得ることを目的とするものである。

第一章  前提的考察 第一節  我が国における解雇法制の特徴   まずは、問題状況について確認する。民法六二七条一項によれば﹁当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過

することによって終了﹂し、かつ﹁いつでも﹂とは、特別の理由を要しないという意味を含むか、またはその意味であ

  (一二九〇)

(8)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六三同志社法学 六二巻四号 ると解されている

。るが原則あでことになる 法少なくとも民自上は、解約て由はい。雇従って、期間の定めのない用お契約については、我が国に 7)

  このように、雇用契約の両当事者に自由な解約権を保障するということは、換言すれば労働者に退職の自由を、使用者に解雇の自由を保障することを意味する

け的な契約は身分拘続束・従属を避的継お。ゆらあ、はているに法民市代近 8

るため、いつでも解約が認められるのが原則である。民法典起草者によれば、当事者が雇用の期間を定めなかった場合においては、当事者は必ずしも永久にその雇用関係の継続を欲しておらず、法律はこのような意思を有することを許さ

ないのであるから、当事者はいつでも解約をすることができるとしたと説明される

9)

  しかしこれに対して、第二次世界大戦後における我が国の労働立法は、個別的にではあるが、手続面と実体面の双方 から制限を加えてきた。すなわち、手続面では、労働基準法一九条は一項が療養・産前産後の一定期間における解雇を禁止し

解る規を度制告予雇はす条〇二法同たま、定 10

解信たしと由理を分身的会社・条・籍国、はてしと面体実、方他。 11

雇(労働基準法︹以下、労基法︺三条)、組合所属または正当な組合活動等を理由とした解雇(労働組合法︹以下、労組法︺七条)などの差別的な解雇、あるいは労基法違反の事実を監督機関に対して労働者が申告したことを理由とする

解雇(労基法一〇四条二項)など、法律上の権利行使を理由とした解雇は禁止される

12

  他方で、諸外国における多くと同様、我が国も右の個別的規制に加えて、解雇に対する一般的規制を行っている。この点につき、かつては、正当事由説と権利濫用説の対立にみられるように、学説のレベルにおいて解雇に対し一般的制 限を行うことにより個別規制を補完する試みがなされてきた

者す存生てしそ。る配原支に的一統が理権理権延両、くなはで長るはな単の理原法民市原存﹁はていおに域領法働労生 由代の説る事当、正ばえ的表片な論者であ。岡曻教授は、例 13

は全く異質であり、かつ対抗関係にある。それにもかかわらず、両者が同一の法秩序の内部において互いに他の存在を

  (一二九一)

(9)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六四同志社法学 六二巻四号

前提しつつ存立しうるためには、労働法による市民法の原理的修正を容認せざるをえない﹂と解雇規制の根拠を生存権

(憲法二五条)に求めつつ、解雇の正当事由として認められるものとして、企業経営上の急迫の必要、被解雇者の選択における配慮、労働者の人格・行動上の事由を挙げる

法沼の用濫利権、は授教郎次稲田るあで者論説用濫利権、方他。 14

理は資本所有権の行使を制約する機能を有し、解雇権は企業合理性の維持増進に必要な限度において権利の行使と認められ、この限度を超えるものは権利の濫用になるとす

15

16

  もっとも、日本における一般的解雇規制について決定的に重要な役割を担っていたのは判例法理であった

雇最巻四号四五六頁)において高二裁は、﹁思うに、使用者の解九集件二日本食塩製造事民最(小判昭五〇・四・二五 。、ちわなす 17

権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。﹂と判示した

がは﹂由理な的理合に的観客、﹁使行の権雇解るよに者用使。 18

存在し、かつ﹁社会通念上相当﹂であって初めて権利濫用評価を免れるとする解雇権濫用法理を中心として、その後の我が国の労働契約法理は展開されてきたといってよい

19

  もっとも、解雇権濫用法理はそれまで判例法にとどまっていたことから、制定法主義をとる日本においては同法理の周知が十分でないことを理由として、一九九〇年代後半から立法化が検討されるようになる

。例えば、二〇〇二年の労 20

働政策審議会・労働条件分科会による﹁労働政策審議会建議

雇使基働労、は者用、法しととこるす記準等に用解の者働労るす使ののそりよに定規明律て権しいる解雇濫用法理を法 労準基働例、﹁はていおに法において、判﹂おいて確立に 21

に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇できるが、使用者が正当な理由なく行った解雇は、その権利の濫用として、無効とすることを規定することが必要である﹂と述べられており、その結果、二〇〇三年六月の労基法

改正の際に、解雇権濫用法理は労基法一八条の二として、立法化されることとなった

22

  (一二九二)

(10)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六五同志社法学 六二巻四号   なお、二〇〇七年の労契法制定により、労基法一八条の二は削除され、解雇権濫用法理は労契法一六条に規定されている。もっとも、労契法一六条は労基法一八条の二を単に移し変えたものであり、何等文言に変更を加えていないから、 従来の解雇権濫用法理に関する議論は、今後は労契法一六条のもとにおいて当然に妥当することとなる

23

第二節

  "解雇無効"の意義   ところで、解雇権濫用法理(労契法一六条)は権利濫用構成を採ることで、その要件面においては個々のケースに即 した柔軟な判断を許容する構造でありえた

冒以規雇解的別個の外理立法用濫権雇解、た制法。て。るす定予を効無しもと果効律法はく多、またあでのもるす択っ とに反違条同、れ時同は法そしかのし律の選を﹂効無﹁雇効解該当て。果し 24

頭で、現行解雇法制が﹁硬直的﹂であると述べたのは、この点に向けられたものに他ならない。

  解雇の有効性を巡る訴訟において、当該解雇無効の判断がなされると、労働者の請求に応じて、労働者の労働契約上 の地位が法的に確認される

た効れめ認ままのそを力のよ約契るれ解除されさとばい張にいなはのもきべず論特のてしと果効らかるあで主 れにに論般一るす関用は濫の権除解そよよば。効に合場るれさと無、﹁てしと用濫が除解お 25

﹂とされ 26

る。しかしながら、問題はこのような一般論の労働契約への妥当性にある。

  解雇が無効となれば、労働契約自体は存続するから、契約の効力として使用者は賃金支払義務を負い続けるし、他方、労働者の労務提供義務も存続することは言うまでもない。しかし、このことは﹁従前の労働関係の再開(=労働者の原 職復帰)﹂までを法的に担保するものではない。更に、読売新聞社事件(東京高決昭三三・八・二労民集九巻五号八三一頁)以降、我が国の裁判例は、労働者の就労請求権(

B es ch äft ig un gs an sp ru ch

)を原則として否定する立場を採って

いる。従って、解雇紛争後の労働者の原職復帰につき、不当労働行為としての解雇(労組法七条)に対して労働委員会

  (一二九三)

(11)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六六同志社法学 六二巻四号

が復職命令を発する場合を除いては、現行法上担保されているとは言い難い状況にある。

  また、事実上の問題として見ても、解雇訴訟における解雇無効判決後の当該労働者の原職復帰状況に関しては、最新の調査として平成一七年に労働政策研究・研修機構が行った﹁解雇無効判決後の原職復帰の状況に関する調査研究

﹂(以 27

下、調査研究)がある。同調査研究のうち、労働事件を専門とする日本労働弁護団および経営法曹会議に所属する弁護士に対するアンケート調査について見てみたい。アンケート調査は本案訴訟確定判決で終結した解雇事件に関するもの

と、本案訴訟確定判決以外で終結した解雇事件に関するものとの二部構成になっている。

  前者について、過去三年間の本案訴訟の判決確定で終結した解雇事件において、解雇無効後の復帰状況は、日本労働

弁護団所属弁護士の回答によれば﹁復帰してそのまま勤務を継続している﹂が四一・九%(一八人/四三人)、﹁一度復帰したが離職した﹂が一六・三%(七人/四三人)、﹁復職しなかった(即日退職を含む)﹂が四一・九%(一八人/四三人)

である。経営法曹会議所属弁護士の回答によれば﹁復帰してそのまま勤務を継続している﹂が三七・五%(三人/八人)、﹁復職しなかった(即日退職を含む)﹂が三七・五%(三人/八人)、﹁わからない﹂が一二・五%(一人/八人)、無回答

が一二・五%(一人/八人)となっている。

  他方、本案訴訟確定判決以外で終結した解雇事件については、過去三年間における本案訴訟以外の判決確定で終結し

た解雇事件のうち、和解で終結した一四九件、被解雇者総数二八九人の復帰に関する和解内容は、日本労働弁護団所属弁護士の回答によれば﹁復帰又は再雇用を認める前提﹂の和解が二三・五%(六一人/二六〇人)、﹁復帰又は再雇用を

認めない前提﹂の和解が七五・八%(一九七人/二六〇人)、無回答が〇・八%(二人/二六〇人)である。経営法曹会議所属弁護士の回答によれば﹁復帰又は再雇用を認めない前提﹂の和解が一〇〇・〇%(二九人/二九人)となっている。

  (雇うが、少なくとも、解無あ効と労働者の原職復帰ろ々統)計学的な問題も含めて右多調査研究に対する評価はは

  (一二九四)

(12)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六七同志社法学 六二巻四号 必ずしも論理的にイコールではないという現状の一端を示しているといえる。このことは確かに、一方では就労請求権の肯定論へと繋がってゆく

す解効果として、当該雇制の無効のみを規定の規も法かし他方で、そそ。も解雇に対するし 28

ることが、果たして全ての事案において適切かつ十分な規範であり得るのかという点に対する疑問をも生じさせることとなろう。

  思うに、労働契約は普遍的性質として労働者・使用者の人的結合を内容とする法律関係であり

なな結合は本来は当事者に内在的性か質のものなのであって、外在的るか働常初めて労、約は正契に。機しそてるす能 、てっあが合結るかか 29

圧力手段(権利あるいは法)によっては実現し得ないものというべきである

雇思なれらね委に意れの間者事当ろけばむ、解にうよの右けなわりと。いならし、係再た労働関を開させるかどうかは 解に雇ら、てっりよれ一旦停止せしめ。従 30

無効判決後の労働者の原職復帰が困難となっていることは、まさにこのことの徴表であると言ってよい。

  従って、このように解雇無効と事実上の労働関係とが現実的に直結しない状況下においては、その後の労働契約は、

機能不全に陥る危険を常に伴っている。それゆえ、労働契約に限ってみれば、右・解除権の濫用に関する一般論が述べるように、﹁効果として特に論ずべきものはない﹂と断じることはできないであろう。ここにおいて、労働者・使用者

間の利益調整規範としての﹁解雇の金銭解決制度﹂を検討する必要性が明らかとなるのである。

第三節  日本における解雇の金銭解決制度

⑴   意義と我が国における議論状況

  解雇の金銭解決制度の導入について、その基本的発想であるところの解雇紛争解決手段の硬直化に対する批判は、従

来、規制緩和を唱える経済学者からすでに主張されていた。例えば、八代尚宏教授は﹁現在の判例では、労使間の利害

  (一二九五)

(13)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六八同志社法学 六二巻四号

調整を、ひたすら雇用関係の継続を大前提として、解雇無効・現職復帰の是非が争点となっている。これは労働組合運

動を理由に解雇するような不当労働行為を念頭に置いた論理であり、仮に解雇の正当性が裁判所によって認められなかった場合には、企業は労働者の地位を回復・保全し、将来にわたって賃金を支払い続けなければならない。しかし、組

合運動とは無関係の個別的な紛争の場合には、一定額の補償金の支払いを条件として雇用契約の解消をも求める選択肢も考慮することが必要となる﹂とする

た申一第の議会革改制規合総れ答さ出に年一〇〇二、たま。次 31

も、﹁解雇の際の 32

救済手段として、職場復帰だけでなく、﹃金銭賠償方式﹄という選択肢を導入することの可能性を検討すべきである﹂と述べていた

33

  もっとも、冒頭で述べた﹁訴訟において解雇が無効と判断された場合、補償金と交換的に労働契約関係の解消を申て立てる権利を労働者および使用者双方に認める﹂という制度の骨格が明確に打ち出されたのは、前掲・二〇〇二年労働

政策審議会・労働条件分科会における﹁労働政策審議会建議﹂においてである。またそれは、解雇の金銭解決制度に関する初めての法律学的な検討でもあった。

  すなわち、同建議は﹁解雇の効力が裁判で争われた場合において、裁判所が当該解雇を無効として、解雇された労働者の労働契約上の地位を確認した場合であっても、実際には原職復帰が円滑に行われないケースも多いことにかんが

み、裁判所が当該解雇は無効であると判断したときには、労使当事者の申立てに基づき、使用者からの申立ての場合にあっては当該解雇が公序良俗に反して行われたものでないことや雇用関係を継続し難い事由があること等の一定の要件

の下で、当該労働契約を終了させ、使用者に対し、労働者に一定の額の金銭の支払を命ずることができることとすることが必要である。この場合に、当該一定の金銭の額については、労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大

臣が定める額とすることを含めて、その定め方について、当分科会において時間的余裕をもって検討することができる

  (一二九六)

(14)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三六九同志社法学 六二巻四号 よう、施行時期について配慮することが適当である﹂と述べる。すなわち、前節において紹介した調査研究が示す通り、我が国においては、解雇法制における理論と実務の乖離が﹁解雇の金銭解決制度﹂の検討の出発点となっていたのである。

  同建議自体は、そもそも前述した解雇権濫用法理と共に、解雇の金銭解決制度を二〇〇三年の労基法改正において立法化することを意図するものであったが、主として使用者に金銭解決の申立権を認めることに対する反対に会い、結局 のところ二〇〇三年の労働基準法改正法案要綱に解雇の金銭解決制度を盛り込むことができず、この段階での立法化には至らなかった

34

⑵   「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書

  二〇〇三年の労基法改正時においては、解雇の金銭解決制度の立法化は実現しなかったものの、同時に衆参両議院厚生労働委員会の付帯決議に基づいて、﹁今後の労働契約法制の在り方に関する研究会﹂が発足することとなる。そして その成果として同研究会が、二〇〇五年に公表した﹁今後の労働契約法制の在り方に関する研究会﹂報告書(以下、在り方研報告書

さにに、解雇の金銭解決つ詳いての制度設計が検討細り策よは、先の﹁労働政審)議会建議﹂に比してで 35

れている

し〇自体は前述の通り、二〇契七年一二月五日に成立法労抽、下では、その要点を出。しておきたい(但し以 36

たが、在り方研報告書において検討された解雇の金銭解決制度は、法案に盛り込むこと自体が見送られた

)。 37

ⅰ  総論   まず、基本的スタンスとして在り方研報告書は、﹁解雇紛争の救済手段の選択肢を広げる観点から、仮に解雇の金銭

解決制度を導入する場合に、実効性があり、かつ、濫用が行われないような制度設計が可能であるかどうかについて法

  (一二九七)

(15)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七〇同志社法学 六二巻四号

理論上の検討を行う﹂とする

、、であろう。まず一二つは﹁裁判手続上点の的次論として、理論に。重要であるのは総 38

解雇の有効・無効の判断と金銭解決の申立てとを二段階とすると、迅速な解決という本来の趣旨からは問題があり﹂、紛争の迅速な解決の観点から﹁解雇の有効・無効と金銭解決の判断は同一裁判所でなすべき﹂としている点、もう一つ

は﹁解決金﹂の法的性質について、﹁雇用関係を解消する代償であり、和解金や損害賠償とは完全には一致しない﹂としている点である。前者は手続法上の問題、後者は実体法上の問題と関連してくるため、制度設計にあたり慎重な検討

を要する。

ⅱ  労働者の申立て   次に各論として、労働者からの金銭解決の申立てにつき、在り方研報告書は﹁解雇された労働者が解雇には納得でき

ないが職場には戻りたくないと思った場合に、解決金を請求できる権利が保障されるというメリットがある﹂という積極論を述べたうえで、前述の紛争の迅速な解決の観点から、﹁従業員たる地位の確認を求める訴えと、その訴えを認容

する判決が確定した場合において当該確定の時点以後になす本人の辞職の申出を引換えとする解決金の給付を求める訴えとを同時に行うものと整理することも考えられるので、紛争の一回的解決に向け、同一裁判所での解決の手法につい

て検討を深めるべきである﹂とする。この場合、﹁金銭解決を認める判決確定の日から一定期間(例えば三〇日)以内に労働者が辞職の意思表示をしなければ金銭の請求権を失う﹂こととなるが、﹁もっとも、この場合、労働者は辞職の

意思表示をしていないので、当然、労働者としての地位を有する﹂とされる。

  また、解決金の具体的金額の決定方法については﹁解雇の金銭解決の申立てを、解決金の額の基準について個別企業

における事前の集団的な労使合意(労働協約や労使委員会の決議)がなされていた場合に限って認めることとし、その

  (一二九八)

(16)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七一同志社法学 六二巻四号 基準をもって解決金の額を決定するなどの工夫をすることも可能である﹂との意見を示している。

ⅲ  使用者の申立て   他方、在り方研報告書は、使用者からの金銭解決の申立てについても原則として肯定する方向において検討を行って

いる。すなわち、﹁使用者からの金銭解決の申立てについては、解雇は無効であっても現実には労働者が原職に復帰できる状況にはないケースもかなりあることから、使用者側の申立てにも一定の意味がある。⋮⋮違法な解雇は無効とさ

れ、判決時(口頭弁論終結時)までの違法状態は是正されることを前提としたうえで、その後の問題として、現実に職場復帰できない労働者にとっては、違法(無効)な解雇を行った使用者からの申立てであっても解決金を得られる方が

メリットがある場合は実際上あり得るのであって、そのような措置はまた紛争の早期解決にも資する﹂と指摘している。

  加えて、在り方研報告書は、先の労働政策審議会建議の際にも主張された批判を踏まえて、使用者の金銭解決の申立

てについては、労働者のそれに比して厳格な実体的・手続的要件を課している。まず、﹁違法な解雇が金銭で有効となる﹂、﹁解雇を誘発する﹂等の批判を受けて、﹁いかなる解雇についてもこの申立てを可能とするものではなく、人種、国籍、

信条、性別等を理由とする差別的解雇や、労働者が年次有給休暇を取得するなどの正当な権利を行使したことを理由と

する解雇等を行った使用者による金銭解決の申立ては認めないことが適当である。さらに、使用者の故意又は過失によらない事情であって労働者の職場復帰が困難と認められる特別な事情がある場合に限る﹂とし、更に使用者による解雇

の金銭解決制度の濫用の懸念について、﹁使用者の申立ての前提として、個別企業における事前の集団的な労使合意(労働協約や労使委員会の決議)がなされていることを要件とすることが考えられる。﹂とする。

  また、解決金額の決定方法については原則として、労働者による金銭解決申立ての場合と同様であるが、﹁使用者か

  (一二九九)

(17)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七二同志社法学 六二巻四号

らの金銭解決の申立ての場合に定められている金銭の額の基準が、労働者からの金銭解決の申立ての場合に定められて

いる金銭の額の基準よりも低い場合に、使用者からの金銭解決の申立てによって労働契約関係を解消することは均衡を欠くものと考えられるため、このような場合には使用者からの金銭解決の申立てができないこととすることが適当﹂で

あり、﹁解決金の額が不当に低いものとなることを避けるため、使用者から申し立てる金銭解決の場合に、その最低基準を設けることも考えられる﹂との意見を示している。

第四節  本稿の課題   まず、本章で検討したところによれば、我が国において議論されている解雇の金銭解決制度とは、基本的に、①解雇法制における第一次的規範としての解雇無効原則に劣後する、二次的規範として位置付けられるものであり、在り方研

報告書もこのことを前提としていた。かつ、②その骨格的な規範構造は、訴訟において解雇が無効と判断されることを前提に、補償金と交換的に労働契約関係の解消を申し立てる権利を労働者および使用者の双方に認めるというものであ

った。冒頭で述べた通り、本稿は、比較法的検討を通じて、我が国における(狭義の意味での)解雇の金銭解決制度の在り方につき示唆を得ることを最終的な目的とするものである(第三章)ところ、右・①および②は、正にかかる比較

法的検討の前提条件を意味する。そして、このような前提条件を充足する解雇法制を持つ国として、比較対象とされるべきはドイツである。

  詳細は第二章第一節で検討するが、ドイツ解雇制限法は、まずその一条において、社会的に不当(

so zia l un re ch tfe rti ge n

)な解約告知を法的に無効(

re ch ts un w irk sa m

)と規定し、一次的規範として解雇無効原則を採用して

いる(①)。そのうえで、同法は九条、一〇条において﹁解消判決・補償金制度﹂なる制度を置いている。それによれば、

  (一三〇〇)

(18)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七三同志社法学 六二巻四号 解約告知が社会的に不当であったとしても、法定の要件が充足される場合には、例外的に(使用者が労働者に)補償金を支払うことと引き換えに労働関係を解消することを申し立てる権利が労働者および、使用者の双方が付与されるので

あり(②)、我が国における狭義の解雇の金銭解決制度を検討するにあたり、有用な素材を提供するものと考えられるのである。

⑴   諸外国の解雇法制

39

  ところで、狭義の意味での解雇の金銭解決制度のみを検討対象とする本稿との関係では、むしろドイツ以外の欧米諸国の解雇法制を比較対象とすることは難しい。そもそも随意的雇用(

em plo ym en t at w ill

)が原則であるアメリカにお いて、解雇の際の使用者の労働者に対する金銭支払いはごく例外的なものに止まらざるを得ないことは言うまでもないが

の、ロッパ各国においてもそヨの法律効果は、当該解雇ー要般主で紹介するように、一的、解雇規制を行っている後 40

無効ではなく、当該労働者を継続就労させるかどうかを使用者の判断に委ねたうえで、究極的には使用者の労働者に対する一定額の金銭支払のみへと至るものが多い。ILO一五八号条約︹使用者の発意による雇用の終了に関する条約︺

(一九八二年)も、裁判所等が雇用の﹁終了が正当でないと認める場合において、その終了の無効の宣言又は当該労働

者の復職についての命令若しくは提案につき、国内の法令及び慣行により権限を与えられておらず又は実行可能であると認めないときは、適当な補償の支払又は適当と認められる他の救済を命ずる権限を与えられる﹂(第一〇条)と規定

しているのである。ⅰ  フランス   確認のため、(集団的解雇に対置されるところの)個別的解雇の場面についてのみ概観しておくと、例えば、フラン

  (一三〇一)

(19)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七四同志社法学 六二巻四号

m ot ré el et s ér ie ux if

てれさい要必が)﹂るが、かかる事と由に(労働法典において解雇はで﹁真実かつ重大な事由は 41

の有無に関わらず、労働者が勤続二年以上である場合には、解雇手当を受給することができ、その額は勤続年数×直近三カ月の平均賃金月額の一〇分の一とされている。

  他方で、真実かつ重大な事由が認められない場合にも、解雇自体は有効である。この場合に裁判所は労働者の再雇用(

ré in té gr at io n

)を提案することができるが、これを受け入れるか否かは、労働者の自由であると同時に、使用者の自

由でもある。従って、使用者がこれを拒否した場合には、労働者は使用者に対して解雇により被った損害の賠償請求のみが可能となるが、その場合に当該企業において常時一一人以上の労働者が雇用されており、被解雇労働者の勤続年数

が二年以上である場合には、損害賠償の最低額についての規制が適用され、裁判所は直近の六カ月分の賃金以上の額での損害賠償を命じなければならない。もっとも、これはあくまで最低額であるから、最終的に支払うべき金額が使用者

にとって事前に明確に算定可能となっているわけではない。ⅱ  スペイン   次に、スペインにおいては、全ての解雇につき、まず使用者が労働者に対して補償金を実際に提供することが有効要件となっており、その額は勤続年数×二〇日分の賃金額とされている。しかし、労働者憲章(

E st at ut o de lo s T ra ba ja do re s

)によれば、労働者の行為・態度を理由とする解雇(

de sp id o dis cip lin ar io

)、または客観的事由による解雇(

de sp id o ob je tiv o

)が裁判所において不当なものと判断された場合であっても、使用者は被解雇労働者を再雇用す

るか、損害賠償を支払うかを選択することが可能である。その際の額は、勤続年数×四五日分の賃金額とされているが、フランスとは逆に上限規制が存在しており、四二カ月分の賃金額が上限となっている。なお、この場合には、損害賠償

の額から、右の補償金額が控除されることとなっている。

  (一三〇二)

(20)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七五同志社法学 六二巻四号 ⅲ  イギリス   また、イギリス

fa ir

な)でなければなら、(とされているところいのにもいても、雇用権法よにり、解雇は公正なお 42

不公正解雇に対する救済として、雇用審判所は復職(

re in st at em en t

)または再雇用(

re en ga ge m en t

)命令を出すことは可能であるが

、法定の要件 43

さ至償金の裁定へとっはていることが指摘補訟る訴足する必要があたをめ、ほとんどの充 44

れている。このような補償金として、まず被用者の職場喪失の補償を目的とする基礎裁定(

ba sic a w ar d

)は、当該被用者の年齢、勤続期間および一週間分の賃金額(週給額)に基づき算定される。この場合、勤続年数および週給額につ いては上限規制があり、勤続年数の上限は二〇年、週給額の上限は二〇〇九年一〇月一日時点では、三八〇ポンドとされている

で的じて、基礎裁定の最終なを金額が算出されるわけ乗数該因続年数×週給額へ当被。用者の年齢に応じた勤 45

あるが、因数は、当該被用者が二〇歳未満の場合は〇・五、二一歳以上四一歳未満の場合は一、四一歳以上の場合には一・五となる

46

  他方で、被用者が不公正解雇により被った損害を補償することを目的とする補償裁定(

co m pe ns at io n aw ar d

)も行われうるが、その場合にも上限があり二〇〇九年一〇月一日時点では、六六,二〇〇ポンドとされている

。なお、剰員 47

整理解雇の場合には、労働者が勤続二年以上であることを要件に別途、剰員手当(

re du nd ac y pa ym en t

)と呼ばれる補

償金が支払われる。その額は、右・基礎裁定と同じく、当該被用者の年齢、勤続期間および一週間分の賃金額に基づき算定される。

ⅳ  オランダ   更に、オランダ

、用て行政機関である被者と給付実施機構(以下し則労原いては、使用者が働に者を解雇するには、お 48

UWV)の許可を要する。実務においては、ほとんどの場合に許可が与えられているようであり、その場合には労働者

  (一三〇三)

(21)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七六同志社法学 六二巻四号

は何等の補償も得ることができない

49

  もっとも許可が与えられた場合であっても、労働者は民法典上の規定に基づき裁判所に対し﹁明白に不当な解雇﹂として取消しを求めることは可能であるが、他方で﹁重大な事由﹂が認められる場合には使用者は労働関係の解消を求め

ることが可能である。その際には、裁判所は補償金の支払いを命じることができるが、その額については裁判所が用いる算定式により計算される。それによれば、原則として勤続年数×一カ月分の賃金額であるが、更に労働者が四〇歳以

上の場合には、右の式×一・五、五〇歳以上の場合には×二となる

  ⅴイタリア 。 50

  最後に、イタリア

iv ot o o at ific ist gu m

則的に原正当理由(はに雇解、が﹁効法る有の雇解が者働労。す)﹂定規旨るあで要必が)限雇解制 たリし差はていおにア。タイいたきおて見てい当りに律、下以(号四〇六法一日五一月七年六六九つ 51

性を争う場合には、解雇通知から六〇日以内に訴えを提起しなければならないが、解雇に正当理由が認められない場合には、当該解雇の違法性が基礎づけられるところ、解雇制限法八条で用意されている救済方法によれば、使用者は三日

以内に労働者を再雇用(

ria ss un zio ne

)するか、事実上の総賃金(

re tr ib uz io ne g lo ba le d i fa tto

)二・五~六个月分の額での代償手当を支払うかのいずれかにつき選択的に義務を負う

52

  これに対して、使用者は再雇用を望まないのが通常であったために、現実には労働契約関係の解消を防ぐことができなかったことを背景に、一九七〇年五月二〇日法律三〇〇号(以下、労働者憲章法)一八条は、労働者が違法に解雇さ れた場合、裁判所は使用者に対し、当該労働者の原職復帰(

re in te gr az io ne n el po st o di la vo ro

)を命じなければならない

と規定した。 53

  もっとも、これらの法状況下においては、解雇制限法八条による救済と、労働者憲章法一八条による救済の各適用範

  (一三〇四)

(22)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七七同志社法学 六二巻四号 囲は完全には同一でないという点が指摘されており、またそもそも雇用する労働者が一五人以下の小規模の使用者については解雇規制は適用除外とされていた。このような状況に対して、解雇制限法八条による救済と、労働者憲章法一八

条による救済との適用範囲を明確化するとともに、従来、適用除外とされてきた小規模の使用者に雇われている労働者にも保護を拡大したのが、一九九〇年五月一一日法律一〇八号である。

  現行の制度においては、まずは、労働者憲章法一八条による救済は解雇がなされたところと同一の事業所または同一市町村内において、一五人を超えて従業員を使用している使用者

ははていおに内村町市一同たま所業事の一同びよお、 54

一五人以下であるが、全従業員数が六〇人を超える使用者に雇用される労働者に対して適用される。この場合、裁判所は原職復帰を命じると同時に、解雇の日から原職復帰の日までの事実上の総賃金に相当する損害賠償の給付を使用者に

命じなければならない。なお、労働者は原職復帰を放棄して、事実上の総賃金一五カ月分に相当する代替手当を選択することも可能である。他方、上記の要件を満たさない使用者、すなわち同一事業所において一五人以下の従業員を使用

している使用者、あるいは全従業員数が六〇人未満の使用者に雇用される労働者については、解雇制限法八条による救済のみが認められることとなる。

  このように、イタリア解雇法制は企業規模に対する配慮から、個別的解雇の際の救済方法につき区別が設けられてお

り、労働者憲章法一八条が適用される場合には、使用者からの金銭解決は一切認められない。その点では、右・四カ国とはやや趣が異なるといえるが、イタリアでは全企業のうち解雇制限法八条しか適用されない中小企業がほとんどであ

るから

。い 択用か金銭支払いかの選が再認められるケースが多雇にス側態としてはフランスやペ、イン等と同様に使用者実 55

  (一三〇五)

(23)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七八同志社法学 六二巻四号

⑵   検討の順序と課題

  以上の外国法の状況を踏まえて、第二章では、次に掲げる諸課題について、ドイツ法における状況を分析・検討する。   まず第一に、解雇の金銭解決制度の導入は、解雇無効原則を維持する限りは、いかなる基本的理念に基づいて行われ

るべきであるのかという問題がある。この点につき、ドイツにおいて解消判決・補償金制度が導入されるに至った立法経緯を踏まえて、制度の基礎を成している基本理念を確認する。またこれと関連して、同制度に対しては違憲訴訟が提

起されており、二〇〇四年に連邦憲法裁判所はこれを合憲とする判断を下した。同判決の検討を通じて、解消判決・補償金制度は憲法規範との関係で、どのように規範的に正当化されているのかという点についても検討しておきたい。

  次に、かかる基本理念から、ドイツにおいていかなる要件論が展開されているのかを確認する。この点につき、本稿では手続法的要件と、実体法的要件に区別して考察する。とりわけ、在り方研報告書との関連では、前者についていえ

ば、例えば、申立ては何時の時点まで可能であるのか、申立ての法的性質をどのように理解するべきかなど、後者については、差別的解約告知の場合に申立ては可能か、労働者と使用者の場合とで実体的要件を区別すべきか、申立ての根

拠としていかなる事実が必要か、などが課題として重要であろう。

  最後に、効果論、すなわち補償金制度について検討する。在り方研報告書が言うところの解決金は﹁雇用関係を解消

する代償﹂であるが、ドイツにおいては補償金がいかなる法的性質を有するものであって、法律上いかなる取り扱いがなされているのか、例えば不法行為に基づく損害賠償請求権やバック・ペイとの関係をどのように理解すべきか、補償

金額の決定プロセスはいかに構築されるべきか、などが重要な検討課題となろう。

  (一三〇六)

(24)

ドイツにおける解雇の金銭解決制度に関する研究三七九同志社法学 六二巻四号 第二章  ドイツ解雇制限法における解消判決・補償金制度 第一節  概説

⑴   ドイツにおける解雇法制の概要

  検討の前提として、まずはドイツにおける解雇規制を概観しておこう

K g un dig ün

すし差、がる。服にた制規の当り律以るあでり通の下は個てしと制規な的別上様法告なによ解約る知()は々 ド。我が国と同様に、もイツにおいて、使用者 56

  まず手続規制として、全ての解約告知は書面によらねばならない(民法典六二三条)。書面性を欠く解約告知は形式的瑕疵があるものとして無効とされる(民法典一二五条)。

  加えて、使用者が解約告知を行おうとする場合であって、かつ当該事業所に事業所委員会が設置されている場合には、事業所組織法に基づき事業所委員会の意見聴取が行われなければならず、使用者が意見聴取を全く行わないか、または

解約告知を基礎付ける事実につき十分な報告を行わなかった場合には、当該解約告知は無効となる(事業所組織法一〇二条一項)。意見聴取において、使用者が解約告知にとって重要な事実を全て述べなかった場合には、使用者は解雇制

限訴訟において事業所委員会に述べた事実しか援用することはできない。

  また、通常解約告知(

or de nt lic h K ün dig un g

)の場合には、解約告知期間を遵守してなされなければならない。解約

告知期間については、民法典六二二条一項によれば、労働関係は四週間の期限で暦日の一五日目、または末日にむけて解約告知されうるが、この期間は同条二項により勤続年数を経るにつれて延長される。同条一項の基本解約告知期間は

労働者・使用者双方の解約告知について適用されるが、例外的に、労働関係を解約告知期間の経過までに維持することが期待し得ない﹁重大な事由(

w ic ht ig er G ru nd

)﹂が存在する場合には、即時解雇(

au ß er or de nt lic h K ün dig un g

)を行

  (一三〇七)

参照

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