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労働条件の不利益変更をめぐる司法審査のあり方 : 労働者の個別合意による就業規則の不利益変更・労 働協約の不利益変更を中心に

著者 河野 尚子

雑誌名 同志社法學

巻 68

号 6

ページ 2093‑2127

発行年 2017‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016891

(2)

    同志社法学 六八巻六号九九二〇九三

――労働者の個別合意による就業規則の不利益変更・労働協約の不利益変更を中心に――

           

一  問題の所在   近年、就業規則による労働条件の変更に係る労働者の合意の有効性が争われるケースがみられる。前提として、集団的な労働条件を定める就業規則による不利益変更は、個別の労働契約における労働条件の変更とは性質が異なる。すなわち、就業規則は、多数の労働者に対し、労働条件の統一的かつ公平な決定を行うため、使用者が一方的に作成するルールであることが特徴とされており、労働者の合意なしに、就業規則によって集団的な労働条件の変更を行う場合には、合理性審査が必要とされている(労契法一〇条)。

  一方、労契法九条は、﹁使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に

(3)

    同志社法学 六八巻六号一〇〇二〇九四

労働契約の内容である労働条件を変更することはできない﹂と定めている。そこで、九条を反対解釈すると、就業規則の変更による労働条件の不利益な変更も労働者との合意があれば可能である。裁判例及び学説では、就業規則の労働条件の変更(賃金減額)について、労働者の個別の合意によって変更が可能とする立場と、個別の合意による変更を否定した上で合理性要件を必要とする立場で対立がみられた(二(一)後述)。その後、山梨県民信用組合事件最高裁判決 1

(以下、﹁本判決﹂ともいう。)が、就業規則に定められている労働条件の場合も、労働者の個別の合意によって変更することは可能とする立場を明らかにした。しかし、今なお、就業規則による労働条件の変更に係る合意の司法審査のあり方については、解釈論上明らかにされていない点も多い。

  また、同一の労働条件変更について、就業規則の変更と、労働協約の変更・新協約の締結が並行して行われる場合もある。特に労働協約は、就業規則とは異なり、労働組合と使用者との合意に基づく協定であり、協約自治が尊重される。そこで、労働協約の労働条件の不利益変更がなされた場合、その限界が問題とされてきた。この点、前掲山梨県民信用組合事件は、労働協約における労働条件の不利益変更を協約締結権限の問題として、包括的な執行委員長の権限を付与する旨の組合規約により、本件基準変更を締結する権限があったか否か、手続的審査を行い、当該権限を否定した。労働協約の場合、協約自治の観点から、合意の意思形成・交渉過程に関する手続的審査がなされるため、かかる包括的な規約をどのように評価すべきかが問題とされるところである。

  そこで、本稿では、労働者の個別合意による就業規則の不利益変更および労働協約の不利益変更について、山梨県民信用組合事件を中心に、裁判例や学説を分析し、司法審査のあり方について考察することにしたい。

(4)

    同志社法学 六八巻六号一〇一二〇九五   二  労働者の個別合意による就業規則の不利益変更

㈠   就 業 規 則 変 更 に 係 る 合 意

  まず、個別的労働契約の内容を変更する場合、﹁労働者及び使用者は、その合意によって、労働契約の内容である労働条件を変更することができる﹂として合意原則が採用されている(労契法八条)。そして、八条の合意原則を、就業規則による変更との関係で具体化したのが、労契法九条である 2

。労契法九条は、﹁使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない﹂と定めている。そこで、九条を反対解釈すると、就業規則の変更による労働条件の不利益な変更も労働者との合意があれば可能であるということになる 3

  もっとも、就業規則は、多数の労働者に対し、労働条件の統一的かつ公平な決定を行うため、使用者が一方的に作成するルールであることを特徴としており、労働者の合意なしに、就業規則によって集団的な労働条件の変更を行う場合には、合理性審査が必要とされている(労契法一〇条)。労契法一〇条は、就業規則の不利益変更に関する判例法理 4

を立法化したものであるが、かかる変更につき、労働者の個別的合意がある場合にも、合理性がなければ拘束力が生じないと解するか否か、裁判例及び学説において見解の対立がみられる。

  この点につき、山梨県民信用組合事件最高裁判決により、労使間の合意によって就業規則の変更が可能であることが明らかにされた(合意基準説・二(二)参照)。もっとも、合意基準説の妥当性やかかる合意の審査をどのようにすべきが問題となることから、後で検討を行う(二(三)・(四)参照)。

(5)

    同志社法学 六八巻六号一〇二二〇九六

⒜  裁判例

  山梨県民信用組合事件最高裁判決以前の裁判例では、見解の対立がみられた。すなわち、協愛事件第一審判決 5

は、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合、合理性要件を認める立場(合理性基準説)であったのに対し、その後の協愛事件第二審判決 6

および熊本信用金庫事件 7

は、合意に基づく就業規則変更が可能であるとする見解(合意基準説)にたっている。

  まず、前掲協愛事件第一審判決は、旧労基法九三条(労契法一二条)の最低基準効を考慮し、個々の労働者が同意をした場合でも、そのことから直ちに就業規則の内容を変更することはできないとして、合理性要件を求めている。

  これに対しては、労契法が合意原則を労働契約の基本として位置づけていることから、就業規則の変更に関する合意であっても、変更内容に関する実体的審査をすることは妥当ではないとする批判がみられた

)8

。その後、前掲協愛事件第二審判決は、労契法九条が、合意原則を就業規則の変更による労働条件の変更との関係で規定するものとした上、合意があった場合には、労契法九条の反対解釈により、就業規則変更の拘束力が及ぶものと判断している。また、前掲熊本信用金庫事件は、就業規則の不利益変更に関する最高裁判例(秋北バス事件・第四銀行事件)の趣旨を考慮し、労働者の個別の合意がある場合には、就業規則の変更によって労働条件は有効に変更されるものとしている。ここで述べる、最高裁判例の趣旨とは、原則として、就業規則による労働条件の一方的変更を禁止し、例外的に、就業規則変更の内容が合理的なものであれば、明示的に就業規則変更に反対する労働者も拘束するという点に即した考え方が採用されているものと考えられる 9

。こうした法規範は、労契法九条・一〇条により立法化されたものと解されており、就業規則変更に対する労働者の合意がある場合にまでも、合理性要件を求めているわけではないという考え方が前提として存在するということを意味している。

(6)

    同志社法学 六八巻六号一〇三二〇九七 ⒝  学説   前掲協愛事件を契機として、学説では、就業規則変更に対する合意の審査をめぐって多様な見解がみられた ₁₀

  第一に、労契法が労働契約の基本的な原則として、合意原則を定めていることから、合意に基づく就業規則変更が可能であるとする見解(合意基準説)である ₁₁

。すなわち、労契法九条の内容は、八条に包含された合意原則を、就業規則による変更との関係で再度具体的に表現したものとされることから、労働者の同意による就業規則の変更は、当該合意を根拠に拘束力を認められる ₁₂

。もっとも、個々の労働者が使用者に対し交渉力の弱い立場にあることにかんがみ、労働者の同意は慎重に認定すべきであり、労働者の自由な意思が認められる客観的事情が認められる場合にのみ肯定している ₁₃

。この考え方は、前述した協愛事件第二審判決や熊本信用金庫事件と同じ立場であるといえる。なお、就業規則変更に関する合意をめぐっては、二(二)で後述するように、就業規則変更の場合の最低基準効の発生要件として、周知性(労契法一〇条)や労基法上の手続(届出・意見聴取)を必要とすべきか否かについても見解が分かれている。

  第二に、合意基準説を採用しつつも、労契法九条および就業規則変更が労働契約法の就業規則変更制度の中心を成す規定であることを考慮して、労契法一〇条の潜脱防止の観点から、純然たる合意の認定の問題ではなく、合意の効力要件として、例外的に内容規制(合理性審査)を認める立場である(修正合意基準説) ₁₄

。この場合も、合意基準説と同様、同意の認定は厳格に行われるものとされるが、それに加えて、緩やかな内容規制および労基法の手続(周知および届出・意見聴取)が適用される。

  第三に、就業規則変更合意について、合理性審査を行う立場である(合理性基準説)。この立場の中にも、労契法九条に基づく反対解釈は可能であるとした上で合理性要件を認めるものと、労契法反対解釈自体に否定的な立場とで区分される。

(7)

    同志社法学 六八巻六号一〇四二〇九八

  まず、労契法九条に基づく反対解釈として、労働者の同意がある場合には、契約内容を変更できるとしつつも、その変更内容において、労契法一〇条に基づく合理性審査を必要とする立場がある。合理性審査を肯定する理由について、使用者が就業規則の画一的・統一的処理の一環として、就業規則の不利益変更に対する個別労働者の同意を求めている場合、合意内容の正統性(契約正義)を実現するという対等当事者間の契約メカニズムが機能していないことを指摘する ₁₅

  また、同意の認定に際して、労契法九条と一〇条との相互関係を踏まえ、労契法一〇条の合理性基準論に足りる合理的、実質的な意思解釈が必要であるとする立場もある(合理的意思解釈論) ₁₆

。つまり、労契法九条の反対解釈において、同法の例外規定として位置づけられる労契法一〇条の合理性基準論に着目した解釈を行っている。

  他方で、労契法九条の反対解釈を否定し、労契法一〇条に基づく合理性審査を行う立場によると、労契法八条と九条が合意原則の重要性を確認し、その例外として一〇条を位置付けたにも関わらず、九条の反対解釈を認めてしまうと、合意がない場合の処理としての一〇条との関連性が不明確になることが指摘されている ₁₇

。加えて、同法の趣旨が、使用者の就業規則変更による労働条件の不利益変更は認められないとする原則であることを踏まえると、立法趣旨に反するといった見解もみられる ₁₈

。そもそも、就業規則の不利益変更に関する判例法理は、労働条件の統一的・画一的決定の要請から、変更の合理性を要件に不同意労働者への拘束を認めたものとして、合意原則に反する枠組みを用いたにも関わらず、再び合意原則を持ち込み、合理性審査を否定することは首尾一貫しない ₁₉

。また、契約論としても、合意基準説を認めてしまうと、使用者による一方的変更システムをビルドインした中での合意獲得過程と評価でき、きわめて片面的不公正な合意原則となるという批判がみられる ₂₀

  さらに、変更前の旧就業規則の最低基準効(労契法一二条)との関係を踏まえ、就業規則の不利益変更の合理性審査

(8)

    同志社法学 六八巻六号一〇五二〇九九 を求め、合理性が認められない場合には、旧就業規則の最低基準効が及ぶものとする立場がある ₂₁

。なお、これに対しては、就業規則変更の合理性要件は、就業規則による労働条件の変更が労働契約内容となって労働者を拘束するための要件であって、就業規則の変更自体は、合理性の有無にかかわらず成就することから、最低基準効を発揮するのは変更後の就業規則であるとする批判がみられる ₂₂

㈡   山 梨 県 民 信 用 組 合 事 件 最 高 裁 判 決

  前述のとおり、裁判例や学説では、就業規則の変更による労働条件の不利益な変更に係る労働者との合意をめぐって、見解の対立がみられたが、山梨県民信用組合事件最高裁判決により、合意基準説の立場が明確に示されるに至った。特に、本判決は、労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合について、労働者の自由意志に基づく同意の認定の判断枠組みを明らかにした点で意義を有する。本件では、労働者が管理職という立場で、本件基準変更の内容を理解して、書面押印したと評価する原審 ₂₃

と、本件基準変更の具体的な不利益の内容や程度についても、情報提供や説明を必要とすべきであるとして、そうした観点からの考慮がなされるべきであるとする本判決とで見解の相違がみられる(二㈢⒡参照)。本判決は、本件同意書への署名押印に至った経緯等に着目し、使用者の説明・情報提供を重視して判断した点に特徴があることから、以下で紹介を行う ₂₄

⒜  事案の概要

  A信用組合の経営破綻を回避するために行われたY(使用者)との平成一四年合併協議会において、A信用組合職員

X

さて、新規程により支給れとる退職金額が、旧規程にし更よ四ら(管理職八名、組合員名変)に係る退職金の不利益1

(9)

    同志社法学 六八巻六号一〇六二一〇〇

り支給される退職金額と比べて著しく低くなることになった(以下、﹁本件基準変更﹂という。)。そして、A信用組合の管理職員に対し、同日付けの同意書(以下、﹁本件同意書﹂という。)を示し、これに同意しないと本件合併を実現することができないなどと告げて本件同意書への署名押印を求め、上記全員がこれに応じて署名押印をした。また、A信用組合の代表理事とその職員組合(以下、﹁本件職員組合﹂という。)の執行委員長が、本件合併後の退職金の支給基準を新規程の支給基準とする旨の記載のある労働協約書に署名又は記名をし、押印をした。その後、C県内の三つの信用協同組合との間で行われた平成一六年合併に先立ち、合併後の労働条件について職員に説明するための﹁合併に伴う新労働条件の職員説明について(指示書)﹂と題する文書(以下、﹁本件説明指示書﹂という。)が作成された。Yの各支店長等は各所属の職員に対し、本件説明指示書のうち労働条件の変更について記載された部分を読み上げ、上記各支店長及び上記各所属の職員は、﹁合併に伴う新労働条件の職員説明について(報告書)﹂と題する文書(以下、﹁本件報告書﹂という。)に、それぞれ署名をした(平成一六年基準変更)。

  その結果、平成一六年合併前の在職期間に係る

。金された結、退職果が給されなかった支 合に自己都しにり退職施前、実の程規年一二成平者たまたよにるは用適が準基給の後更変支よに更変準基年六、一成平 くりなが、高る方の額除控よ給支っされる退職金額は〇円となた。等に額退額て得られる職金付総よりも、厚生年金給 職時の本の俸月額を、退後れさ用適が準基給支の分更二年の自じ乗を数係の職退合都己び一及数る続勤に額たじ減に変

X

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X

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(10)

    同志社法学 六八巻六号一〇七二一〇一 ぐる協約締結権限の問題についても争われており、この点については、三で後述する。

⒝  判旨

  ⅰ  本件基準変更及び平成一六年基準変更に係る合意について

﹂八巻号一〇八五等参照)。頁 高七頁、最六裁和三年号二・一巻七二集民オ決判廷法小(昭)第第四集民・決判廷法小二四日二六号平成四年一一月二 の解するでが相(あるのとさもきべるれ断判、もらか高最当裁号昭第日九一月一年八四同二三(七四四年和オ)第一〇 れいてさのたもめと認基づ自に思意な由の者働労が為行る足に存り点観ういとかかるす在否にな的合理的る理が客観由 態及びその当様、該行経緯にたっ至にるれさが為行該当為当先説立、てしら照に容内の明該はつ供提報情のへ者働労又 でなく、に当該変更だよけの無有の為行者働の旨る労れり労働容者りよに者働労、程び及度内さにのたらもれる不利益 職の件条働労るす関に金業退や金賃たれらめ定に則規更変働にい入け受対更変該当、はてをつのにす労者る同意の有無 るされるべきであと。そうする、就重に慎でく対に更該当、なるは当相はのはす変労に断判の働いつて無の意同の者有 こ界があるらとに照もせ限報力能るす集収を情るなと、ばに当る該とのもたっあが意同のみ者っ働行をも為て直ちに労 の使そてれさ用使に者用もが者働労、てしとるあが揮為指場命り礎基の定決思意令ら自、のおきて服すべに立に置かれ 関に金職退の金賃が更変や件条働労たし示提が者用使るすれもをの行者働労の旨る入け受の更合変ある場でには、当該 はとのもるな異、き除で要こるれさと必が更変のい則なをと九解もとっも)。照参文本条、、労条れる(さ働契約法八 て働労を件条働労るい者則れらめ定に規業就、はと不のも利その規業就てし際に意合の、益てっあで合場るす更変にこ   ﹁こ条者用使と者働労、は件働の労るあで容内の約契働と個、こりあでのもるきでがとる別す更変てっよに意合の労

(11)

    同志社法学 六八巻六号一〇八二一〇二

  本件基準変更は、﹁本件合併に際し、その職員に係る退職金の支給基準につき、旧規定の支給基準の一部を変更するものであり、管理職

⋮い付額も除すると控うのであって、も 前いては従りのとおとにつる式方枠内、で方一てと下以しす退を職金年業企に更、し除控還額ら付金額か総厚生年金給 変。準基件本、がろこといるあでのたてれさ載記が後旨更基の職一の分二の前新を額総金従退給、規程の支準の内容は 金準の退職一額を保障する水同に配意同本たれさ布と案員職各で会明説書件に職準基給支は係に員るのか前従のY、ら 書件同意印に署名押る本しあの載記の旨るす意同にもた開の印員職たれさ催変ち立先に押で名署のこ、てしそ。るあ更

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さい年六一成平てお併に時職退のら合前給退支てしと金職るの係に間期職在1   上記のような本件基準変更による不利益の内容等及び本件同意書への署名押印に至った経緯等を踏まえると、管理職 職意し著りな異と載記の書同均の記上もで係関のと準く案衡、を管りよに更変準基件本理どとく結果欠なことなる 額る退職金円が〇となされ場給支はに合可の職退合都己る基能前給支る係に員職のらか従性のY、やとこるなく高が自 、ず規りす更変を準基給支の程旧必、し対にら人同、はにる要た説足はでけだるれさが明や性供提報情のていつに等め

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(12)

    同志社法学 六八巻六号一〇九二一〇三   しかしながら、原審は、管理職

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X

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X

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㈢   本 判 決 の 分 析

⒜  本件における合意の性格   本判決は、本件退職給与規程を就業規則として位置づけた上で、労契法八条および九条を参照し、個々の労働契約で定めた労働条件の変更の場合と同じように、当該就業規則の不利益変更についても、労働契約の合意原則が妥当するという立場を明らかにしている。すなわち、前述の協愛事件第二審判決や熊本信用金庫事件の立場と同様、合意を基準とする立場(合意基準説)を採用したものである。

  この点、労契法八条は、労働契約の労働条件について、労使の合意により変更できるとし、また、九条は、労使の合意なしに、就業規則の不利益変更を行うことはできないとして、合意原則を確認している。一方で、労契法一〇条では、

(13)

    同志社法学 六八巻六号一一〇二一〇四

就業規則の統一的かつ画一的な決定をするという性質を踏まえ、使用者による一方的な集団的労働条件の変更の場合についてのみ、例外的に合理性要件を要請している。また、労契法の目的は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で労働契約が合意により変更されるという合意原則を定めることにより、合理的な労働条件の変更が円滑に行われることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することである。こうした点を踏まえると、合理性要件は、労使が自主的な交渉を行うことなく、使用者が就業規則を一方的に変更するということを前提としており、労使の合意がある場合には、その前提は覆されるものと考える。したがって、合意原則の観点から、労使間の合意による就業規則の不利益変更は可能であると考え、本判決の立場に異論はない。

  もっとも、本判決は、労契法八条及び九条を参照するのみで、九条の反対解釈を明確に肯定していない。本件では、①本件基準変更と②平成一六年基準変更に係る二つの合意が問題とされており、本判決では明確に言及されていないものの、前者①については、労契法九条を、後者②については、退職金の支給に関する個別の労働条件の変更として、労契法八条を参照したものと解される ₂₅

。その上で、本判決は、労契法八条に基づく労使間の個別的労働条件変更に係る合意と、労契法九条に基づく就業規則変更に係る合意を区別せずに、同意の認定を行っている。これに対し、前述の協愛事件第二審判決は、個別合意による就業規則の労働条件の変更について、労契法九条の反対解釈が妥当することを明確に示している ₂₆

。学説の中にも、労契法九条に基づく合意を労契法八条と区別し、就業規則の不利益変更に関する合意であることの特質に即した解釈を行う必要があるとの見解がある ₂₇

  思うに、①本件基準変更については、就業規則の変更による労働条件の変更に対する労働者の合意が争われていることを踏まえると、労契法九条に基づく合意(反対解釈)と解すべきである(労契法八条との関係については、二㈤参照。)。使用者が就業規則の労働条件を個別の合意によって変更する際、説明・情報提供を労働者集団に対して行う場面が想定

(14)

    同志社法学 六八巻六号一一一二一〇五 され、その結果、個別に交渉する機会が付与されない可能性が潜在している。これに対し、本判決は、後述のとおり、同意の認定方法をみる限り、労働者集団への説明・情報提供の場面において、労働者個々に生じる不利益の内容や程度を具体化する段階まで要請している点で、使用者に個別的な労使交渉と同等の説明・情報提供を求めているものと評価することができる。こうして、本判決は、労契法八条と労契法九条に基づく同意の認定方法(労働者の自由意思に基づく同意)を同様の判断枠組みとして捉えたものと解されよう。それゆえ、労契法九条に基づく反対解釈の場面においても、労契法八条に基づく同意と同様、個々の労働者の労働条件変更に関する説明・情報提供が必要とされる。この考慮要素については、(f)で検討を行う。

⒝  労働者の自由意思に基づく同意の位置づけ

  従来の裁判例は、労働者の自由意思に基づく同意を個別合意による就業規則の変更の成立要件とするのか、それとも、合意の成立を前提とする効力要件と位置付けるのか立場を明らかにしてこなかった。これに対し、学説においては、労働者の自由意思に基づく同意要件を成立要件として、労働契約内容に関する使用者の申込みおよび労働者の同意(承諾)を基礎づける要件と解する立場 ₂₈

と、労働者の同意の存在とは別に、労働条件変更合意の効力要件と解する立場 ₂₉

とで対立がみられた。

  この点につき、本判決は、労働者の同意の有無について、他人決定労働性や情報力格差を考慮し、労働者の行為の有無だけでなく、労働者の自由意思に基づく同意であるか否かといった観点からも判断されるべきものとした。すなわち、労働者の自由意思に基づく同意を成立要件として位置付けたものと考えられる。このように、労働者の自由意思に基づく同意を就業規則変更の成立要件と解することは、労働契約の特色として、他人決定労働性や情報力格差を考慮し、合

(15)

    同志社法学 六八巻六号一一二二一〇六

意原則を定めた労契法三条一項の基本理念とも合致している ₃₀

⒞  周知性と届出・意見聴取

  本判決では、合意の効力要件に関する就業規則の変更の手続の検討はみられない。もっとも、就業規則変更をめぐっては、労契法一〇条に基づく周知性や労基法上の手続として、届出・意見聴取(労契法一一条

労基法八九条・九〇条)が定められていることから、労契法九条の反対解釈においても、かかる要件が効力要件とされるか否かが問題となる。

  まず、周知性をめぐっては、労契法九条に基づく合意において、周知性の要件を否定した協愛事件第二審判決に対し、学説上批判がみられた ₃₁

。学説においては、労基法に基づく届出・意見聴取を、契約内容変更効の要件とせず、実質的周知により就業規則に最低基準効が認められ、旧就業規則には最低基準効は認められないとする立場 ₃₂

がある。

  このような解釈に対し、労働者が享受していた(旧)就業規則の最低基準効を新就業規則の実質的周知という簡易な手続きにより容易に奪い取ることを可能にするものであり、労働者保護という最低基準効の趣旨から実質的周知で足りるとした解釈と相容れないと批判する見解がある。これによると、旧就業規則の最低基準効(労契法一二条)については、労基法上の周知義務に加え、意見聴取や届出を履践して初めて消滅する ₃₃

  また、届出や意見聴取について、就業規則変更合意の特質を重視し、労使間の個別的合意の側面があったとしても、就業規則変更合意の前提を成す労契法九条は、同法一〇条と対を成す本則規定であることから、ともに労基法・労契法の就業規則制度を前提として、就業規則変更合意の効力要件とする見解もみられる ₃₄

  この点、個別合意によって就業規則の労働条件を変更する場合、統一的かつ画一的に定めることのできる労働条件の規定が置かれるという点を踏まえると、説明・情報提供を労働者集団に対して行う場面が想定される。この場合、個別

(16)

    同志社法学 六八巻六号一一三二一〇七 に交渉する機会が付与されず、労使間の自主的な交渉を経た合意と評価しがたい場面が生じることから、使用者が一方的に説明・情報提供を行うだけでは不十分であり、合意原則の観点から、労働者保護の必要性が高まるものと考える。それゆえ、労契法九条の反対解釈においても、周知性と届出・意見聴取の要件は効力要件と解されるべきであろう。

⒟  「

労働者の自由意思に基づく同意」の射程

  本判決は、就業規則による労働条件の不利益変更に対する労働者の同意の有無をめぐって、その同意の認定の判断枠組みを明らかにしている。特に、労働条件の変更が賃金や退職金に関するものである場合には、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている点、情報収集力の格差がある点を考慮して、当該変更に係る同意の認定を慎重に行うものとした。その際、使用者の働きかけによってなされた既発生の賃金債権の放棄 ₃₅

、賃金請求権と会社の有する借入金返還請求権との相殺 ₃₆

に関する二つの最高裁判例を参照し、労働者の自由な意思に基づく同意の有無を審査している。上記二つの最高裁は、賃金債権の放棄や相殺の合意の認定において、労基法二四条一項に基づく賃金全額払の原則を考慮し、労働契約において労働者の賃金請求権が発生していることを前提に、その法的保護を図っている。これに対し、強行法規たる全額払の原則の例外となる退職金放棄の意思表示と、労契法八条・九条における労働者の同意の意思表示を同列に論じることに異論を唱えるものもある ₃₇

。もっとも、個別的労働契約において、将来に向けた賃金減額の黙示の合意の成否が争われた従来の裁判例 ₃₈

においても、労基法二四条一項に基づく賃金全額払の原則を援用し、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の有無を重視した判断がされており、本判決は、労基法二四条一項を援用しているわけではないが、こうした枠組みを採用したものと考えられる。

  この点、賃金全額払の原則(労基法二四条一項)の趣旨は、使用者が一方的に賃金を控除することを禁止し、もって

(17)

    同志社法学 六八巻六号一一四二一〇八

労働者に賃金の全額を確実に受領させ、労働者の経済生活を脅かすことのないようにしてその保護を図ろうとするものである(労働者の所得保障) ₃₉

。そして、二四条は、労働契約において労働者の賃金請求権が発生していることを前提としており、将来に向けた賃金減額を射程におさめた規定ではない。しかし、将来に向けた賃金減額について、従前と同程度の労働を提供することによって同程度の基本的な賃金が将来的にも確保できるという期待を保護法益と捉える場合 ₄₀

、労基法二四条一項が想定する履行期の到来している賃金債権の控除と同様、賃金全額の確実な受領が要請されるものと考える。その結果、賃金が不利益に変更(減額)される場面において、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みを適用することは、労働者の所得保障を実現すると同時に、労働者の従前の労働条件(賃金)を維持することを保障し、ひいては、従前の労働条件を内容とする労働契約を維持することを意味する。この意味において、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みは、労働契約の継続的性格の側面を、規範的根拠とするものといえよう。それゆえ、将来に向けた賃金減額の合意の有効性をめぐっては、賃金全額の確実な受領(所得保障)と契約関係の継続という二つの法的要請から、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みを用いて、慎重な判断が求められるものと考える。

⒠  賃金以外の労働条件

  従来、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂は、賃金減額の場面に限定して用いられてきた枠組みであるが、賃金以外の労働条件についても妥当しうるか否かが問題となる ₄₁

。近年の裁判例の中には、賃金以外の労働条件の不利益変更についても、労働者の自由意思に基づく同意の有無を審査するものがある。例えば、広島中央保険生協事件 ₄₂

は、妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置について、原則として均等法九条三項の禁止する不利益取扱いに当たるとしつつも、例外的に、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な

(18)

    同志社法学 六八巻六号一一五二一〇九 理由が客観的に存在する場合には、不利益取扱いに当たらないとしている。また、職種変更の有効性が争われた、西日本鉄道(B自動車営業所)事件 ₄₃

も、労働者の任意(自由意思)によってなされた同意であったか否かを慎重に判断している。学説においても、賃金以外の重要な労働条件の変更の場合にも、こうした判断基準に基づいて合意の成立や効力を判断すべき場合があるとする見解がみられる ₄₄

。特に、降格や職種の変更は、賃金の不利益変更をともなうことが多く、雇用の存否は、賃金・退職金のリソースとなる重要な契約内容であることから、賃金や退職金の不利益変更の場面に限定されないものと解されている ₄₅

  しかし一方で、﹁労働者の自由な意思に基づく同意﹂の枠組みは、前述(d)のとおり、もともと賃金債権の放棄や相殺が問題とされる場面で用いられてきた。そのため、裁判例の中には、転籍合意の場合、使用者と労働者の力関係を考慮すれば、同意の認定は慎重に行うべきであるとする一方、賃金債権の放棄と事案を異にするとして、労働者の自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由の有無の審査を否定する例もある ₄₆

  そこで、賃金以外の労働条件の不利益変更において、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みを用いた審査を行うことが可能であるか検討する必要がある。この点、本判決は、賃金や退職金の不利益変更の場面に限定しているものの、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みを用いる根拠として、他人決定労働性や情報力格差を重視している。すなわち、労働契約上、労働者が使用者の指揮命令下で労働する義務を負うことは、他人決定労働であることを意味し、それゆえ、労働者に不利益が生じやすい点、使用者の働きかけによって生じた労働条件の変更に関する情報を労働者が収集するには限界がある点を考慮している。同様に、学説においても、個々の労働者が使用者に対し交渉力の弱い立場にあることにかんがみれば、就業規則の不利益変更に対する労働者の合意(同意)は慎重に認定すべきと解されている ₄₇

。このような考え方からすると、賃金以外の労働条件の不利益変更の合意についても、より慎重な判断が求められる

(19)

    同志社法学 六八巻六号一一六二一一〇

ことは、合意の原則(労契法三条一項)から当然に導かれる帰結である。

  また、前述(d)のとおり、労働条件の不利益変更の場面において、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みを適用することは、労働者の所得保障の実現と同時に、労働者の従前の労働条件(賃金)を維持することを保障し、ひいては、従前の労働条件を内容とする労働契約を維持することを意味する。この意味において、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の枠組みは、労働契約の継続的性格の側面を、規範的根拠とするものと考える。そして、上述した他人決定労働性・情報力格差という労働契約の特質及び継続的性格の要請(労働条件の内容維持の要請)が重要であることは、賃金以外のあらゆる労働条件についても、全く異なることはない。それゆえ、他人決定労働性、情報力格差、契約関係の継続という側面に着目すると、降格や職種の変更、転籍合意のような、賃金以外の労働条件の不利益変更についても、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂の要件が妥当する。

⒡  同意の認定に関する考慮要素

  次に、労働者の自由意思に基づく同意の考慮要素について、最高裁判決は、労働者の自由な意思に基づいて同意されたものと認めるに足りる客観的な理由があるか否かは、﹁当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして﹂判断するものとする ₄₈

。問題は、この枠組みによると、労働条件の不利益の内容及び程度等を考慮するものとして、情報提供や説明といった手続的審査にとどまらず、労働条件の合理性審査も含むと解されるのか否かである。この点、学説においても、考慮要素として、合意の書面化や使用者の説明、労働者の言動、当事者間の交渉等の状況等のほか、労働者の不利益の内容・程度・性質や、本人にとっての利益・代償措置等を掲げるものがある ₄₉

(20)

    同志社法学 六八巻六号一一七二一一一   しかしながら、本判決の具体的判断に目を転じると、本件基準変更による不利益の具体的内容について、管理職

たり心判断がなされてお、と協愛事件第二審判決中し ₅₀ た至に意同、で上たし解理ていつに益利っ明かのを供提報情・な説者ど用使、ういとかう不的者具るじ生に身自、が体 情要十分なに報を与えが必すYにめたるい断判、し討検て着たて働労、ちわなす。るいれかさなが断判てし目自か否ら

X

1

と同様、個別的労働契約の労働条件の不利益変更合意と同じ判断を行っているものと評価することができる ₅₁

。このことは、労契法が労働契約の基本的な原則として、合意原則を定めていることから導かれるものと考えられる。もっとも、本判決は、使用者の説明・情報提供の審査が不十分としているにすぎず、合理性審査を完全に排除しているわけでもないといえる。

  ①  説明・情報提供   前述のとおり、本判決は、労働者の自由な意思に基づいて同意されたものと認めるに足りる客観的な理由があるか否かをめぐって、まずは、手続的審査を中心に、使用者の説明・情報提供について審査している。手続的審査のあり方は、個別の労働条件の不利益変更(労契法八条)の合意の認定方法においても問題とされてきた。個々の労働条件変更(賃金減額)の合意の有無が争われた裁判例では、使用者の説明・情報提供が不十分であったこと等、消極的事情を検討し、黙示の合意を否定する傾向にある ₅₂

。労契法九条の合意が争われた協愛事件第二審判決も、不利益変更の内容を具体的かつ明確に説明しなければならないと判断している ₅₃

。同様に、学説でも、労契法八条に基づく個別合意の認定につき、自由意思に基づくものと客観的に認められるために、信義則(労契法三条四項)および労働契約内容の理解促進の責務(同法四条一項)に基づき、使用者が賃金引下げの必要性、変更後の内容、代償措置の有無等の変更内容について十分な説明・説得を行ったかどうかが審査されると解するものがある ₅₄

(21)

    同志社法学 六八巻六号一一八二一一二

  そこで、次に問題となるのが、使用者が、どの程度、労働者に対する説明・情報提供を行う必要があるかである。山梨県民信用組合事件では、説明会において、使用者Yから当面の退職金の金額とその算出方法が示されており、かつ、管理職

X

価るが、原審と本判決で評がて分かれている。原審はいれ、押らが本件同意書に署名印らしたとする事実が認め1

。 に・明説のとこるな果報く欠を衡均くし著情結提定供るいてしと必を要認かうどかたっ行のを 能となる可く性が高〇な円後が金職退の合都己自の併合こる意と、、りな異と案書同の前や以が準、本件同意書の支給基 分、りあで十れにこ、は決判本、し対不よこ。たし断判とのものうっるはにるす定認とのもあなが意同、はでけだ実事た

X

ら、理を容内の書意同件本でが場立ういと職理管、し解意たとあが合、えま踏を点ういる上いてし印押名署にれこで1   こうした差異は、原審において、労働条件変更の説明・情報提供について、労働者が不利益性を理解していたか否かの検討が不十分であったことから生じたものである。もっとも、原審が、管理職

、意りたあにるめ認とたしを

X

変思らが自由な意で本件基準同に更1

。をの存在を重視している点考承慮している可能性もある諾

X

、務いと職理管るす勤立に関機融金がらう場署で名押印等よる明示的な点ういとるあに1   ②  労働者の地位

  まず、山梨県民信用組合事件原審は、

者切明説と供提報情な適あのあ用使、で上たしがれるるがるす在存も場立すばとるめ認を力束拘、と ₅₅ 力交の者働労るよに法組労規や法行強の等法基労、もて渉しを、務義力高るせさ上向ら自努る慮考をとこるあが段手め が務義る理め深をりあ力、また、交渉につい解、関労これにて連し、学説のには、中働たし用者を報情活れえ与、もら 解容を理めするたにの内Y更変準基件本、べ比と場立行がくう低。るあが性能可たえ捉裁を説ルドーハの供提報情・明の

X

高勤職理管るす務にい関機融金がらとう最こ、えま踏をとう立いとるあで場1

。この見解に立つ

(22)

    同志社法学 六八巻六号一一九二一一三 と、

。るるうしらたもを結帰たっいと

X

慮点働者と比べて高ま考をうのいとるあで職理管がら労常し渉、自ら理解を深め、交力通を高め努力義務が、る1

  一方、最高裁は、他人決定労働性ゆえ、労働者に不利益が生じやすい点、使用者の働きかけによって生じた労働条件の変更に関する情報を労働者が収集するには限界がある点を考慮して、Yによる説明・情報提供の内容をより慎重に審査している。その際、使用者が労働者に対し、労働者自ら検討し判断するための十分な情報を与えていたか否かという視点から、不利益の内容等に関する説明や情報提供を必要とすることを明らかにした点に意義がある。使用者の働きかけによってなされた労働条件の不利益変更である以上、就業規則変更合意が、労契法一〇条の合理性審査を逸脱する方法として利用される恐れがあることを踏まえると ₅₆

、使用者による説明・情報提供の十全性を求める点は整合的である。それゆえ、仮に、労働者が金融機関に勤務する管理職という立場で、一般的な労働者と比べて、本件基準変更の内容を容易に理解できたとしても、使用者による説明・情報提供の内容については、慎重な判断が要請されるものと解される。

  ③  書面性の位置づけ   原審は、本件同意書への署名押印があったことから、合意の認定において、書面性を重視したのに対し、最高裁判決は、本件同意書への署名押印に至った経緯等に着目し、署名押印の事実が認められても、合意が認められない場合があることを明確にした点に特徴がある。

  この点、労働条件変更(賃金減額)の合意の認定をめぐって、裁判例は、書面性を原則として要件とする立場 ₅₇

、要件と位置付けていないものの、書面性を重視する立場 ₅₈

、あるいは、使用者が賃金減額に関する説明・情報提供を行ったかどうかを重視する立場 ₅₉

とで見解の対立がみられていた。

(23)

    同志社法学 六八巻六号一二〇二一一四

  そもそも、労契法八条は﹁労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる﹂と規定するのみで、労働契約は諾成契約であることから、書面による合意を必要としていない。したがって、労働条件の変更につき書面等による明示の合意が必要であるという根拠規定は存在しないため、合意の認定において、書面押印といった書面性は要件ではない。ただし、労契法四条二項は、労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認することを規定している。この規定は、合意内容を明確化することの重要性を謳った理念規定であり ₆₀

、労契法三条一項に基づき、労働契約における対等な立場での合意という理念の実現を促進するために設けられたものである ₆₁

。この理念を踏まえると、合意の認定において、労働者が労働契約の変更内容を十分確認できたかどうかという観点から、合意内容の書面化の有無を重視することは妥当と解する。そこで、さらに問題となるのは、合意内容の書面化と説明・情報提供との関係についてどう考えるかについてである。

  この点について、最高裁判決は、本件同意書への書面押印といった書面性よりも、本件同意書への署名押印に至った経緯の中でなされた説明・情報提供の内容に着目した判断を行っている。前述のとおり、他人決定労働性や情報力格差を踏まえると、労使間の対等な立場での合意の実現のためには、使用者が労働条件変更に関する十分な説明・情報提供を行い、労働者が変更内容を理解し、合意するか否かを適切に判断できる状況を提供することが前提として必須であると考える。

㈣   就 業 規 則 の 変 更 に 関 す る 合 意 の 審 査 方 法

  以下では、㈢で分析した山梨県民信用組合事件を踏まえ、労働者の個別合意による就業規則の不利益変更の審査方法について、若干の検討を行うこととする。

(24)

    同志社法学 六八巻六号一二一二一一五   前述のとおり、本判決は、労使間の合意によって就業規則の変更が可能であること(合意基準説)を明らかにし、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂を合意の成立要件に位置付けたものと考えられる。またその際、本判決は、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂に係る具体的判断において、使用者が労働者に対し、労働者が不利益変更に同意するか否かについて自ら検討し判断するための十分な情報を与えていたか否かという視点から検討を行っている。本判決も説くように、労契法が労働契約の基本原則として合意原則を定めていること(三条一項)を踏まえると、﹁労働者の自由意思に基づく同意﹂については、使用者の説明・情報提供を中心とした手続的審査が中心となるものと解される。なお、説明・情報提供の内容については、他人決定性、情報力格差、労働者の所得保障ないし労働契約の継続的性格の観点から、慎重な審査が求められるものと解すべきである。

  問題となるのは、労働者の個別合意による就業規則の不利益変更の審査方法として、使用者による情報提供や説明といった手続的規律にとどまらず、補足的・例外的な労働条件の合理性審査を肯定すべきか否かである。この点、個別合意による就業規則の不利益変更においては、使用者が十分な説明・情報提供を尽くし、情報格差を是正したとしてもなお、労使間の交渉力格差により、使用者が提示した労働条件について労働者がやむを得ず合意に至る場面がありうる。こうした帰結は、合理性基準説や修正合意基準説が指摘していた、労契法一〇条に基づく合理性要件の逸脱という事態を意味し、説明・情報提供を中心とする手続的規律のみでは是正しえない事態と評価できる。また、本判決も、使用者の説明・情報提供の審査が不十分としているにすぎず、合理性審査を完全に排除しているわけでもない。こうした点を踏まえると、労働契約の他人決定性に起因する交渉力格を是正しつつ、一〇条の潜脱を防止する観点から、補足的・例外的な合理性審査を肯定すべきであろう。その法的根拠については、労契法一〇条の類推適用に求める見解があり ₆₂

、妥当と解される。もっとも、労契法が当事者の自主的交渉と合意を前提としていることを踏まえると、合理性審査は例外

参照

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