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山岸文庫蔵﹃宗尊親王三百首﹂解題・翻刻

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(1)

調査報告四十八

本学山岸文庫には﹁宗尊親王三百首﹄と題された写本一冊︵山岸文庫請求番号﹁三○二﹂番︶が蔵されている︒

﹃宗尊親王三百首﹂は別に﹁文応三百首﹄﹁中務卿親王三百首和歌﹂﹁東関竹園三百首﹄﹁鎌倉中害王御詠﹄などとも

呼ばれる︑宗尊親王若き日の歌集である︒成立は文応元年︵一二六○︶十月以前であることは動かない︒

この歌集の伝本は約二十数本現存するが︑初めて本格的な系統分類を示したのが﹁新編国歌大観﹂の解題︵平成四年四

月刊︶である︒そこで︑小林強氏は二十七本にも及ぶ諸本を整理し︑一瓶本︑二類本︑三顛本と分孤された︵解題は井上

宗雄氏︑兼築信行氏との共同執筆であるが︑分類をなされたのはその付記から小林氏と判断される︶︒今後の伝本研究を

領導する︑すぐれた成果といい得る︒

この山岸文庫蔵本は﹁新編国歌大観﹄には未調査本として挙がっている︒その後︑﹁新編国歌大観﹂の成果を踏まえつ

つ︑別の観点も加えて伝本系統について考察された佐藤智広氏は︑この山岸文庫蔵本も資料に加えて本文の異同を整理さ

れた︵﹁宗尊親王﹃文応三百首﹂伝本分敵私考﹂︑﹁筑波大学平家部会肺集第五集﹂平成七年十一月刊︶︒

山岸文庫蔵﹃宗尊親王三百首﹂解題・翻刻

久保貴子

248−

(2)

四 十 八 山 岸 文 姉 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

﹃宗尊親王三百首﹂は小林氏もつとに述べられたように︑﹁諸本間には︑各点者の合点や本文の異同が極めて多く︑厳

密な伝本の系統分類は今後の課題﹂であることは確かであろう︒そのための基礎資料として︑佐藤氏の貴重な言及を除い

てはほとんど学界未紹介であった山岸文庫蔵本を全文翻刻する意味は大きいと思われる︒

次に︑この本の簡略な書誌事項を示しておく︒

実践女子大学山岸文庫所蔵﹁宗尊親王三百首﹄一冊

袋綴装︵四目綴︑綴糸萌黄色︶︒近世写︒

表紙︑薄香色無地紙表紙︒二七・八糎×二○・四糎︒外題︑表紙左肩に赤朽葉色唐草文様蝋賎紙︑八・六糎×四・四糎

を貼付﹁宗尊親王三百首﹂と墨書︵本文と同筆か︶︒表紙右肩に﹁︵冷泉家本︶﹂と朱筆で打付書︵山岸徳平氏筆か︶︒

内題﹁中務親王三百首和歌﹂︵二丁表一行︶︒

料紙︑楮斐漉混紙︒見返し料紙共紙︒前遊紙一丁︑後遊紙なし︒墨付二十一丁︵一丁裏.二一丁裏︑白紙︶︒

印記﹁山岸文庫﹂の長方形朱印︵表紙右下︑一丁表右下︶︒﹁実践女子大学図書館印﹂の長円形朱印︵二一丁裏左下︶︒

毎半葉十二行︒一行二十五字内外︑和歌は一行書き︒

頓阿︵二○丁表︶・李部王︵二○丁裏︶・為栄︵二一丁表︶それぞれの奥書と︑山岸氏の識語︵裏見返し︶を有する︒

所々に朱・冑筆による書入れ︑ミセヶチなどあり︒保存状態は極めて良く︑虫損・湿汚の痕など殆どなし︒

部立ごとに収められた歌数は以下のとおり︒︵︶内の漢数字は山岸文庫蔵本に仮に付した歌番号を示す︒

春七十首︵一〜七○︶

夏三十首︵七一〜一○○︶

(3)

この山岸文庫蔵本の諸本の中に占める位置について︑いささか触れておきたい︒﹁宗尊親王三百首﹄の諸本は先述した

ように︑小林強氏によって︑三つの系統に分けられている︒それは大別して︑為家の合点と評語の桑を有する系統︵二類

本︶︑それに加えて基家の評語と計八名の手になる合点を有する系統︵一類本︶︑抄出本の系統︵三類本︶︑の三つである︒

一類本と二類本との相違か何故生じたのか︑大きな問題点である︒これは︑当初為家のみに加点か要請されていたのが︑

後に基家らにも加点の依頼が行われたことに起因すると推測するのは自然であろう︒小林氏は二類本が御子左家に︑一類

本が反御予左家に伝来していったものと推測されている︒

ところで︑この山岸文庫蔵本は佐藤氏によって︑他の二十一本の伝本とともに︑和歌本文の異同が調査されている︒佐

滕氏の調査は新たな諸本系統整理の観点からなされているので︑特に山岸文庫本の位置付けに焦点を合わせたものではな

いが︑この本が一類本の中でも最善本と目される天理図書館蔵春海文庫蔵本と同系統の本文を持つことを明らかにしてい

る︒管見からも︑この佐藤氏の判断は肯定し得ると思われる︒

以上のことを確認した上で︑この山岸文庫蔵本の奥書について︑いささか検討しておきたい︒奥書は先ず︵二○丁表︶

秋七十首

冬三十首恋七十首

此御歌先年書写之処為人被借夫之間 雑三十首

全 全 / 、 /

七 ○ 七 ○

〜一七○︶

〜二○○︶

〜二七○︶

〜三○○︶

− 2 5 0 −

(4)

四 十 八 山岸文庫蔵『宗尊親王三百首』

れる︒ 尋證本書之早

頓阿

とある︒これは春海文庫本にも共通するものであるが︑続く︵二○丁裏︶に︑

此一冊以仙洞御本令書写加校合者也

元和元年臘月廿八日李部王

とある︒これは春海文庫本が書写奥書として﹁申出禁裏御本使愚息通村害之慶長九年始月中院也足子素然︵黒印︶﹂

となっていることとは異なる︵愚息通村とは中院通村︑素然とは父・中院通勝を指す︶︒

元和元年︵一六一五︶︑仙洞御所に伝わる本を書写し︑校合を加えた﹁李部王﹂という人物は︑恐らく碩学として知ら

れ︑多くの古典文学を書写した式部卿宮智仁︵としひと︶親王であろう︒細川幽斎より古今伝授を受けたことでも著名で

ある︒﹁李部﹂とは言うまでもなく︑式部の唐名であり︑﹁李部王﹂とは式部卿宮を指す︒智仁親王は例えば﹃内外口伝

歌共秘食﹄︵書陵部蔵︶の慶長七年︵一六○二︶四月の奥書に﹁李部﹂と自署しており︑﹁李部王﹂と自ら記すに不思議

はないのではなかろうか︵智仁親王の文学者としての足跡は︑小高道子氏の一連の論考が詳細を極める︶︒

この判断が正しいとするならば︑慶長九年︵一六○四︶に禁裏の本を書写した中院通勝・通村父子とは別に︑その十年

余り後に︑智仁親王もこの作品を書写したこととなる︒この山岸文庫本は智仁親王の書写奥書を継承するもので︑智仁親

王書写本の形姿を今日伝えている︒智仁親王自筆とは認定し得ないにしても︑伝本研究上重要な位置を占めるものと思わ

続ノく︑︵二一丁表︶に︑

以或本一校旱

(5)

明和五年夏

為栄

と青筆で記されている︒﹁為栄﹂とは︑下冷泉為栄である︒この山岸文庫本に他本を参考にして︑所為に胄筆で校合を加

えているのが下冷泉家の当代の為栄であり︑山岸文庫本が明和五年︵一七六八︶の段階で下冷泉家に存在していたことが

わかる︒反御子左家的色彩の強い一類本系の本文を持つ川岸文庫本が冷泉家に旧蔵されていた事実は歴史のアイロニーでわかる︒宮

あろうか︒

冷泉家旧蔵也

昭和廿四年林鐘五岸廼舎

という山岸氏の識語も︑この本が冷泉家旧蔵本であることを確認している︒以上いまだ解明していない点も多いのである

が︑後考を期すこととして︑本書の解題の閉じめとしたい︒ 裏見返しの︑

ワ 局 ワ ー

一 U 一

(6)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

# " " ふ 蕊

餓軋零…輔一・E−2‑二全一ニーニニ夢‑ニモ‑2.。.一賎

蕊蕊識蕊

屯毒ニミ

ニー三二一 ニニ ーニ華二 二.溶理』

ニニ琴二

蝿蜂蕊 瓜臘蝋脆争蕊塗十・藤や§鼠

北﹄︾一鼠i・マノへ鯉雪6ゞ河奄一︑

謎﹀鵯桐︾︽¥芥I命繋舟剣劇奇蕪溌蕊溶ゞ︾一¥峠妻蕊

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︲︑

耀調 泉掌糺上一岳搾等即征為K輔卑︲

今人K九二1翼必ず雲蕊泌載窓豊副1.−苦価rえ襲火

1

オ風へ︿小1謝雫秋︾訂茎︾

驚駿譜欝葛蕊 ..膠篭役

… 鍵

一︑実践女子大学図書館山岸文庫蔵﹁宗尊親王三百首﹂一冊を底本

として翻刻する︒

一︑翻刻は︑朱筆等の別を含めて底本に忠実なるを旨とするが︑印

刷の都合などにより左のように処置する︒

a︑漢字・仮名は︑おおむね通行字体によるが︑一部書き癖︵﹁ご

﹁ミ﹂など︶を残したところもある︒

b︑反復記号一︲上﹂﹁と﹂一ノ︑﹂︑補入記号︑見せ消ちなどは

原則として底本のままとする︒猶︑特に注記すべき箇所につ

いては︿注﹀として示した︒

C︑朱筆は︵︶内に記し︑青筆はゴチックで記す︒

一︑丁は墨付を以て数え︑丁移りは﹂として示し︑その下の︵︶

内に丁数を記す︒また︑表裏は同じ︵︶内にオ又はウとカタ

カナで記す︒

一︑改行は︑原則として底本のままとする︒

一︑便宜上︑歌番号を漢数字で仮に付した︒ 凡例

(7)

宗尊親王三百首︵題叢︶﹂︵表紙︶ ︵白紙︶﹂︵見返し︶

︵白紙︶﹂︵前遊紙オ︶

︵白紙︶﹂︵前遊紙ウ︶

後嵯峨院第一皇子御母准三宮蔵人木工頭平棟基女

宗尊親王一品中務卿征夷大将軍

文永九二州出家法名覚惠同十一七廿九莞

目 l l l 三 九 衣 井

弁右大辨入道光俊朝臣法名真観

墨黙同詞害民部卿入道為家卿

︵白紙︶ 文永九二舟出家法名此三百首号文應三百首

常磐井相國實氏公

衣笠内大臣家良公

九条内大臣基家公

侍従三位行家卿 黙者

此本以朱詞書アリ

﹂︵一オ︶

﹂︵一ウ︶

− 2 5 4 −

(8)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

五 四 三 三 二 二 う く

ブ.し

井衣︵續古今︶a︶おほとものミつの濱松かすむなりはや日のもとに春やきぬらん三弁首尾相叶姿詞共調候本歌被取成候之躰殊珍重候

衣四三識あつま路のあふ坂山も関なれ︿いくつを越て春のきぬらん

井衣四︑いつくよりかすみそむらんあしひきの山にも野にも春くぎにけり

一一云升︑たちこむる春のかすみのうす衣なほ袖さえて淡雪そふる

衣二︵マ乙井山河のこほりの関やこえつらんいはまの浪に春かせそふく

春風や吹らん氷のとくる︿とや候へきと存候

詫つれもなきねをたにさそへうぐひすのこそのやとりの春のはつかせ

是下句なと優美に候つれもなきねをたにと︿愚昧靭

不思得候之問巻過候

衣三弁帥光なき谷のうぐひすいかにしてよそなる春の色をしるらん

如此本歌存旨候之間故不申子細候

衣三帥心にもかなはぬれをやつくすらんせりつむ野への春のうぐひす

此鶯︿而白めつらしく候へとも猶楯梅窓竹なとより

弁帥 中務親王三百首和歌

おく山のこそのしら雪けいかうへにすかのねしのき鶯そなく

は甚ちかく聞候にや ﹂︵ニオ︶

(9)

三 己 売 六 毛 実 一五 西 三 三 一つ

あまりのことを申上候雌其悼候やかぬしほせなと申候事

︿造立たる事にて非美麗之詞候欺

井三ねこ春

︑たつぬらんたかしるへと︿なけれとも梅か香さそふ庭の枩かせ

井衣︵績古今︶︸へ

詔けふも又人のとはてやくれなゐのこそめの梅の花のさかりを

芽極榊袖にほふ山路の梅の花かつらゆふこえか上る春のたひ人

榧三帥梅花かをなつかしゑ春の野にすミれもつまぬ旅ねしてけり 井衣二八ママV〜風さゆる山のかけ野のはっ草のばっかにこその雪そのこれる井衣四夛帥ふるさとのよしの上山︿雪消てひとひも震た皇ぬ日︿なし

た上これら躰にこそ歌は候へきと承候しか尤珍重候

井衣四弐汁春はまたかすみのそこに成にけり雲ゐに象えしかつらぎの山

井衣尋をちこちの霞そふかき煙たつあさまのたけの春の明ほの

井衣四尋ふき︿らふ嶺のあらしもうとけれは霞そ遠きさしの上原︵巳上面点珍重候︶耳武蔵野山遠き心近代満多目候めつらしけなく存候

一一処此嵐うとくて野霞とをき景気浮眼候欺

井九三弁帥ひれふりしむかしを遠︑︑︑まつらかたかす象の袖に春かせそふく井二衣八ママV︵往事更浮眼候︶尋帥こょろあるあまのぃそゃ︿かすかにて霞にのこる松かうらしま

井衣三︵績古今しぼかまのうらのひかたの明ほのに霞にのこるうぎ鴫の松後鳥羽院御製︶蕪わたつ海の浪の千里やかすむらんやかぬしほせにたつけふりかな 下句同前候

﹂︵三オ︶ ﹂︵ニウ︶

− 2 5 6 −

(10)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

三なにかあらぬ春もむかしの袖の上に梅か上にほふふるさとの月

︵常聞習躰候︶初句あまりにめつらしくや候らん

井衣三九帥一西︑山のはくそことも承えぬ夕暮にかすみをいつる春の夜の月井衣三︵續古今︶二五綱あすか風河音ふけてたをやめの袖にかすめる春の夜の月︵妖艶詞句尤比西施顔色欺殊幽玄候歎︶二世二弁き上わたるなからの橋の跡ふりてあしまにかすむ春のよの月

井九帥君夛春の夜のかすめる袖をけふりとてすこさぬあまをかこつ月かけ

︵真實一一無挫ご歎︶第四句先々申上候結構躰候欺

井衣四九六二一弁帥こぎまする柳さくらもなかりけりにしきの浦の春の明ほの

名浦各雛珍重候花柳矢本意候鍬

衣四九元邦帥いひしらいつらさそふらし鴫かねのいま︿とかへる春のあけほの

井三二帥弁しの坐めの霞のころもきぬノー︑にわかれてかへる春のかりかね

続後撰寄前大納言基良

たちわかれてやかへるかりかねいく程かくらす候欺

井九三〜さほ姫の春の衣のせきもゐすたつや霞にかへるかりかね

九帥衣一二臥犬都を︿すミうしとてや人やりの道ならなくに鳫の行らん

言三

すミれもつまぬしほせの時申上候

井衣三九帥弁ひる︿雪よる︿月そといひなさ︿軒はの梅の花やなからん

︵殊銘心肝秀逸歎︶雌其興候非本意候歎

﹂︵三ウ︶

(11)

巨 亘 匹 三 三 二 二

三七

三八

三九四つ

四一 二二一︑一〆 九四弁︵本歌可調雲泥獣︶三一一一帥松ならぬ柳か枝もたまつけてきなれの里に春雨そふる

︵此春雨跿一一連玉章候欺︶上句定様候欺短慮難軍候

九衣帥一茜弁三春雨︿ふりにけらしなとをつらのあと河やなきふか桑とりなり

是又あとかは柳或人の詠之時如此事廃忘至

愚難箪之由亡父申候き

衣三一云ふるさとの池のつ入ミの柳原さすかに春︿わすれさりけり

慥雌不覚悟候近年見及候おもかけ候しやらん以此等

井衣四う

執いまそふる若木の桜花さか︿この春よりや人のまたれん

一一毎句花麗返々かくこそ候たく候へ珍重候j︑

井衣四劃二をとは山花さきぬらし相坂の関のこなたににほふ春風

井衣︵本歌に似過候歎古歌句之在所及三句同所者先達申無念之由候欺︶試一かたにうらみや︿せんちらいまの花のかさそふ春の山かせ

井九衣塾一さくらさくあなしの山のやまかつら檜原をかけてにほふ春風

井九卦一一かけうつすみきはの桜ちらいまも花をそょする池のさ上なみ

井弁九帥衣四峯ならて草葉にか皇る白雲や野中のもりの桜なるらん

︵凡無比類欺︶初五字草葉の雲も耳にたち候鰍

九衣帥さくら色に雲のころも入うつるひて霞の袖は花のかそする九帥弁︵積古今近代常事歎︶臥花さかぬときはの山の嶺にたにさくらをミせてか入る白雲三衣四返々感難旦千候 週愚鮎之障と存候

︵四ウ︶

L 一 ︵四オ︶

258

(12)

四 十 八 山 岸 文 脆 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

九弁衣突三帥あはれしる心ありてやあたらよの月と花とに鴫の鳴らん井九帥︵同干信明歎︶男夛雪とふる花をこ上路の空とミてしくしくとまれ春のかり金

九︵再三可握翫歎︶

吾かへるかり霞の空にねをたえてさそふ嵐の花をミしとや

終句つよくきこえ候歎

井弁衣臺幽二いかにせんあらしのさそふ花の山しはしとなかてかへるrかね

井九三帥三卦四うかりける花にいつよりなれそめてちる春ことに物おもふらん

三井九四三帆雷ちるとミてさらに我身のくやしき︿桜にそめし心なりけり三井︵已上四首速珍重候︶琶鶏ちりぬれはとふ人もなし山里︿庭のさくらのおしきのミか︿

九帥衣至叫彗一ときはなる松にもおなし春風のいかにふけはか花のちるらん

井九帥昊詠弁ときはなる物にしぁらねハ山桜ぁはれぁなぅとちるをミるかな九衣︵両首如代直千金歎︶君すゑ︿雲もとに︿雪とちる花のをくれさきたつ春の山かせ

宅 突 專 圀

井三帥衣熟九ときは木にましりてさける山桜うつるふ色をいつならひけん

井帥三九弁いたつらに軒はのさくらうつろひぬ独さひしきなかめせしまに

新古今式子内親王

風よりさきにとふ人もかなと候歎

九三弁かさすとておるたにおしき桜花大宮人よいとまなくとも衣三︵已上三首其興過分候歎︶あはれけにみせもきかせも花さかり人まつやとのうぐひすの鑿

初五字不幽玄候鍬

﹂︵五オ︶

(13)

九衣兵三あかす︑︑︑る人もはかなきあたし世におしまれんとや花のちるらん

五九

一︿C

一︿一一︿一一

一︿一一一

一︿四

一︿五

一︿一︿

菫︵O︶雲のゐるとを山鳥のをそさくら心なかくものこるはるかな

井九三︵紬古今︶イロィ

くれか上るけふ︿やよひのすゑの松夕浪こえて春やゆくらん七つ 井衣︵不可劣本歌歎遅桜歎︶ 一︿丸四九と塁まらぬ事をあまたにしたへとや春のわかれにかへるかりかね 井三衣 天 宅弁帥うぐひす︿物うかるねにうらふれて野上のかたに春そくれゆく 衣三 帥弁花さそふ風をたよりのしるへにて跡なきかたに春そくれゆく 九衣三 三あすから︿ゆき上の人やかさすらん岡へのつ坐しいまさかりなり 九衣 三弁山ふきくいはての里の春よりやくちなし染の花に咲けん 井衣 尋さきてちるっらさもしらぬわたつ海の浪の花ふく春の浦風 井九衣︵此風情先に人別雛詠於愚意落葉可然落花︿弥木晴て月難堀候鰍︶ 鯲邦あらしふくたかれのこすゑ雲消て花の跡もる有明の月 井三衣 四弁かきりあれは日数︿のこる春風にわかれていそぐ山さくらかな 井九衣︵不可劣干本歌鍬︶ 郭とのもりの心ある花のも坐しきにあさきよめする庭の春風 井三︵不可説に候歎︶ 三弁さくら色の衣ふきかへす春風に夢となり行花のおもかけ 九帥衣︵よしの河せかはや春のやすら︿んおられぬ花の狼のうたかた後鳥羽院御製︶ 弐吉野川いはまふきこす春風におられぬ浪の花もちりけり 井

第四句不優候鰍 終句近代満耳目候 ︵心詞尤被思入歎︶ ﹂︵五ウ︶ 已上二首故不申子細

﹂︵六オ︶

260

(14)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

八四八五

二 台 尭 天 老 実 妄 茜 三 三

△一 八二 姿詞尤珍重候但山鳥尾と存候緒非本意候

︑空にミし霞の衣はるすぎていまくかきほにさらす卯の花

︑あけぬとも猶かけのこせ白妙の卯花山の承しか夜の月

井衣四三沁翔帥まちわひてこょひもあけぬ郭公たかつれなさに音をならひけん九衣弁︵尤絶妙漱︶鮴豐人ならはわひつ入やねん時烏いと坐またる上夜半のむらさめ井衣︵勝千本歌再三可詠︶三たつねてもいか坐まちミん郭公はつれつれなき三輪の山本

九井帥三弁あふ坂の関のとやまのほと奥きすあくる雲井に初音なく也

井衣三錨か帥いと上また夢てふ物をたのめとやおもひれになくほと上きすかな井衣帥︵是なと大方無子細候︶夛九この比をいつとさためて郭公をのか五月もつれなかるらん

九弁獄沁烏なきてあげゆく夜半の郭公なとか八聲をなら︿さりけん井三︵此二首殊めつらしく候︶帥衣さなへとるあへの田面の村雨に坂こえてなくほとLきすかな

さかこえてあへの田のも近代ミなれたるやうに候へとも

この郭公さなへもおもしろくとりなされて候にや

九衣︒耐あれ︿つるあすかの里の郭公宮こをとをミねをやなくらん

井九衣弁三帥たちはなの陰なき山のほと上きすやとかりかねて音をや鳴らん

第二句又結構の心・仕候て障と存候

井弁詞鮒しほたる壁ねをやなくらん郭公と︿たの浦の五月雨の比

衣弁三うら人のとるやさなへもたゆむらんひちきのなたの五月雨の比 ﹂全ハウ︶

(15)

空 空

ハーハ八九

九︵︸ 井衣弁︵新千載︶老い一一露にたに糸かさといひし宮きの︲些木のしたくらき五月雨の比 八一︿

井衣弁臥一師ほにいていまの典入江のしのす上きかれて浪こす五月雨の比

九衣らく

臥しほのミつ入江の松の木のまょりゑえてすぐなき象しか夜の月

九弁帥むら雲のうつれはかくるなかめかな夕立しつる山のはの月

是︿させる難にて︿候︿ねとも事次に申上候あはれは

あはれなることなかめ︿なかむる事に詠へしあばれといふ

物なかめといふ物別にある様に其躰︿不可詠之由

亡父まさしく申候き又第四句もつよくきこえ候にや

井衣尋いっくにか宿をもからんありま山いなの上原の夕たちの空

九帥三せはくともわらやの軒に立よらん夕立むかふあふ坂の関

初第四句不幽玄之躰候歎

井衣帥つま木とるしつはたをひの夕す坐ミかたふきかふる谷のしたかせ 九帥弁夛水まさるにふの河瀬の五月雨に杣人しらぬまきなかるめh

︵風情面白候之上争可出来候乎︶是も妖艶のすかたにて︿候︿ねともけにもさそ候覧 第二句いとみなれてもおぼえ候︿す名所から不幽玄

殊勝珍重候 とおほえ候 之界候覧

一︑一ユー/﹂︹非Lオ﹄

﹂︵セウ︶

262

(16)

四十八山岸文庫蔵『宗尊親王三百首』

井衣弁朶帥三夏草のしけミかしたのわすれ水たえノー承えてゆくほたるかな

慥雌不覚悟候上下句近年多見候心地仕候

九衣三の

老鋤邦たえノI︑に影をはみせてあすか井にみま草かくれとふほたるかな

井衣三之

共帥九かけろふのいはかきふちの草かくれあるかなきかに飛ほたるかな

上句不優候歎

井三発帥夏ふかきさ︿のほたるも象たれあしの一夜ふたよに秋やきぬらん

此十二字ナシ/︵蛍火乱飛賓秋氣近殊勝候欺︶

弁三帥九一g掛四ミなかミにたれか象そきをしかま川海にいてたるあさのゅふして

︵非言語所及歎︶此餅磨河近年多人詠候此あさのゆふして海に

いて生水上の象そきをしる心殊珍重おなし事もかく︿

なと仕候はいやらん存候 九四鄙︒等六五 井九衣臥一弄うちなひく野嶋かさきの夏草に夕浪かけてうらかせそ吹九帥三衣身を秋のしつか山路に入もせんこ上︿なつの坐しけき世中

︵尤驚目候欺︶故不申是非 綏旗帯とかきて候 妻木こるしつも帯は定候覧旗ハいかL候覧と存候如此事不知子細候俊頼朝臣しつ︿た帯のかたむすひと詠候にも若しつかはたにつきたる帯候歎万葉集にも

︵八オ︶

(17)

井九帥一三襲三このねぬるぁさ露かけて玉たれのこすの大野に秋くぎにけり

︵詞のよせ殊ふところおほく候歎︶ことからたく象に目出候へとも猶障と存候

九衣帥一三︑けさ︑︑︑れは露そひまなきあしのやのこやの一夜に秋やきぬらん

井三一〜ミなとかせす坐しくなりぬ水くきの岡のあさけに秋やきぬらん

井九帥一s夛衣さひしさくさらてもたえぬ山里にいかにせょとか秋のきぬらん

井九帥一三尋衣いまよりのぁはれをいかにしのはまし外山の庵の秋のはっかせ

井衣三一実執鮒うた上ねの床の秋かせふきそめてまたひとへなる袖そ露けき

井衣一宅尋ふけ行は月さへいりぬ天河浅瀬しらなミさそたとるらん井衣︵以外やすらかにゆ堅しく候歎︶一只珊汀たか世より身にしむ色と成ぬらん秋の夕のおきのうはかせ

一実〜とけそむる千草の花の下ひもにむすひかへたる秋のしら露

九三一己︑とへかなしなまかきの萩の花盛あさをく露の消やらいまを

井三三識名にめて皇おる人もなし女郎花とはれぬ庭の秋のゆふくれ

へ注1﹀心詞毎句珍重返々難有躰候歎

九弁一三︑ふるさとのみかきか原の藤はかまたかぬきかけし匂ひなるらん

九三一三弁衣涙に︿秋のゆふへ︿つけなくにあはれしらする袖の露かな井衣三︵尤感涙得便宜候歎︶一西弁帥草も木も露そこほる上大かたの秋のあはれや涙なるらむ

九弁二五衣三わか身いかに秋のならひの涙にもことはり過てぬる呉袖かな

︵八ウ︶

− 2 6 4 −

(18)

四十八山岸文庫蔵『宗尊親王三百首』

︵殊以老涙不堪歎︶初句すこし耳にたち候欺

九弁三︿三秋はきの花のまかきのあれしよりおなし野原と鹿や鳴らん

井衣一毛九つき草の花田のをひのゆふは山絶ぬる妻を鹿や恋らん

色こと無何色こと面白珍重に候へとも老心飢て不心得候

九井一六衣三秋霧のふかき翠山にたつ鹿もおもひつきせぬ音をや鳴らん

井︵已上三首鹿短臘難弁欺︶そ

一元おほかたに秋︿かなしき風の音も夕はわきて袖はぬれける

一一第四句又不覚悟候近代定多候欺

九井衣三つ三帥かりほさすしつきの田井に露ちりてを花吹しく秋の夕風

︵是叉美然歎︶此田井も疎遠候之間不能申是非候

井三三かりにたに問人もなき深草の野へをはかれす秋風そふく

衣帥三一井三色かくる野へよりもなをさひしき︿朽木の杣の秋の夕くれ

寂蓮法師研釧柳蝿鍬叶輌な唯玖蛾味秘吠唖f朽木の杣の秋の夕くれ︶

さひしさくその色としもなかりけり槙たつ山の秋の

夕暮と仕て候同躰候欺

九帥衣一三三弁遠さかるあまのを舟もあはれなりゆらのミなとの秋の夕暮

衣四︵第一傷心性秀逸鰍︶もな

三四三おりノーのなかめ︿すれと.さひしさのことにもあるか.秋の夕くれ

九衣一三帥よしやた入おもひもいれしこれも又つもれば老の秋のゆふくれ

1111是因

九弁︵業平風情尤︒同准歎︶三︿帥雲まてもあはれにたへぬけしきかな秋のゆふへのむら雨の空 ﹂︵九ウ︶

︵九オ︶

(19)

井衣一毛弁はつ雁もなきてきにけりうきことをおもひつらぬる秋の夕暮九衣︵本歌似過献︶三八三秋風に草葉色つくかた岡のむかへの嶺に鴫︿きにけり

九帥衣︵高増神妙一一恩欺︶三九弁三外山なるま木の葉そよぐ夕暮に初鳫なきて秋風そふく

︵此ま木の葉︿伝柿本之迩柱歎︶三つ弐あらち山かりかねさむみやたの上にあさち色つく秋かせそふく

九帥三一尋はっ鴫の嶺とひこゅるぉほひはに霜をきぁまる秋のよの月

八注2V高如ロロ左右欺昔建保の比このおほひハ上よミたる人候しかはおそる

しといふ事にて候しかともこの比ハさならぬ事も

おほく候うへ是︿面影あまりて面白みえ候にや

井衣弁三一帥三しら雲の跡なき嶺に出にけり月の御舟も風をたよりに

にの字あまた指合候歎小野

花の色︿うつりにけりないたつらに我身世にふるなか

めせしまに是︿秀逸候へは何事歎

九衣一三弁あまの河月の御舟ののほりせにみかくはかりやわたす棚はし

のほり瀬大井河よりもやさしからすや候覧か様事

一旦︿おもしろく候へとも誠しき事にくいか上と存候衣四︵新後撰︶三四封二雲︿らふ夕風わたるさ上の葉の深山さやかにいつる月かげ 申候き 是も次に申上候氣色をいふ詞強不可好詠之由亡夫

﹂︵一○オ︶

ハ ハ ハ

ー ム U O −

(20)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 「 宗 尊 親 王 三 百 首 」

一四四

一四五

九衣四川イ

ー呂弁帥いはたかきしほたの海に舟うけてさしのほりたる月を︑︑︑るかな︵無物に収嶮欺︶ハ是も詞つきちからあるさまに・候鰍

九衣三酉帥弁舟出するあかしのとなミ霧晴てしまかくれなき月をミるかな

衣帥酉一弁三舟出していまこそミつれたまの浦のはなれ小嶋の秋のよの月

三帥一豐弁鳫のくるしほちの末をゑわたさせは月によこきるあまの釣舟 九衣一昊削津の国のいく田の森に人はこて月にこと上ふ夜半の秋かせ

井九衣三九帥三弁山鳥のをたえの橋にか些桑かけなかきよ渡る秋の月かけ

︵四首月興多得風骨︶山鳥の緒の事已前に申上候了是又姿詞たく承 九衣

二毛三弁 一一二一︿ 九衣 衣三一三五 井九

九衣三帥

令八 た入かやうにやすらかにうつくしうこそありたく存候へ

一本の松はくもりもなかりけるみの上を山の秋の夜の月

一一うつらなく野へのあさちの露の上に床をならへて月そやとれる

第四句もとめたる様にや候覧猶障と存候

中/︑に木のはかくれもあはれなり秋のけしきの杜の月かけ 八注3V

さ生浪やしかつのうら︿あれはて坐ひとりや月の宮木もるらん

︵湖上景氣招高躰献︶いとまなきなたのあま人秋のよ︿やすくもねすて月をぷるかな 候歎 是叉障候歎已上三艘又障候欧 つ一オ︶ ﹂︵一○ウ︶

(21)

︵拝見更不可飽歎︶第四句やすらかならす候歎

井九勇尋いつまてかたつる煙をぅらミけんある坐しほゃの秋のよの月

井九衣四

一珸昴弁うら§つる煙もうすく成にけりあまのとまゃの明かたの月衣弁︵此両首為月厭炳之興誰相似塩屋下句猶可勝歎︶一貝さそなうきすまの関守なのミしてと上めい月の有明のそら

九弁一男州有明のつれなき嶺にすむ鹿も月にわかれのねをや鳴らん九帥衣︵殊銘心肝畝︶の一吾三弁うき雲をとを山・すそに分過て嶺にわかる上秋のむら雨

︵拭涙断腸之一篇獄︶景氣面白みえ候へとも其情不分明候之間暫巻過候

九三三識われからの袖とやあまもしぼるらんたまもかる浦の秋の村雨

三衣是又面白歎

一三帥弁八重とつるむくらの門をふきあけて野分そ宿の道︿桑せける

井三衣四

一三執刈帥露むすふ田つらの庵の月かけにをしね色つく秋風そふく九三︵秋月秋風有興有感歎︶一岳帥いかはかり夜さむなるらんふるさとにひとりある人の袖の秋風

續後撰歌夜風をさむミふる里に独ある人や衣うつらんと候歎

井九一芸計いつミ河かは風さむし今よりやくにの都はころもうつらん井︵讃古今︶一癸狐ま萩ちる遠さとをの上秋風に花すり衣いまやうつらん三帥︵已上三首とりj︑敵︶一毛弁家ゐしてたかすむならし玉嶋のこの河かミに衣うつ聲

三帥川イしなりイ

一天衣夜半にふく浦風さむミあらき田の具さかの里︿衣うつらん︷︑

ヘー 第三句不優候

已上二首障と存候

/ ヘ

、 ン

− 2 6 8 −

(22)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

三弁一尭軌たった山しくれぬさきの秋風に先うつるふくこ上ろ也けり

衣一さをはつせの山の木の葉や染つらん伏見の里に時雨ふる也

呈︷井九一三弐時雨つるもみちの山︿雲はれて夕日うつるふ嶺の秋かせ

九三衣一杢帥弁ミなふちのほそ河山そしくるめるま弓の紅葉いまさかりかも

山名やさしからす候にや

井三九三鞘もの▲ふのやしほにゑゅる紅葉はやま弓の岡の梢なるらん九帥三︵還以雌念不能子細候︶一茜謡なく鹿の聾きく時の山さとをも桑ちふミ分とふ人もかな九弁︵續古今本歌のおもかけ殊以無術候︶一壹臥露ふかきを花かもとのきりノーすさておもひあるねをゃ鳴らん

衣四一棗口なかき夜のたけたの原のきりj︑すうきふししけきれをや鳴らん

壱韮衣まくす原また霜をかい秋風にまつぅらかる上松虫の聲

一天Ⅵたれも又くれゆく秋︿かなしきにをのれひとりと虫の鳴らん

九衣三︵已上四首殊絶妙之詞花獄︶一究︑暮てゆく秋︿とまらぬ夕風にかへりやすきく野へのくす原弁井︵此下句秀逸之至極欺︶一ざ卦二久かたのあまの岩戸の関路にもとまらて秋のけふやゆくらん

︵此関之群秋川比嘔好忠初秋献︶いはとの関も新勅撰以後満耳目候但猶珍重候

一七一

一壱二

一七三 九弁三期ときは今︿冬になりいとしくるめり遠き山辺に雲のか呉れる三帥井鶉四秋の色を木にも草にも染はて上竹の葉そよきふる時雨かな九弁塾一もしぼやく煙を雲のたよりにて時雨をいそぐすまのうら風

﹂︵一一〒オ︶

﹂︵一二ウ︶

(23)

一七一︿一七七

一七八

一七九

一八つ 一七四一七五

一八一

一八二

一八一二一八四

一八五

衣弁一会帥ふるさとのかハらの千とりうらふれてさほ風さむし有明の月

九弁三一老弧さか木とる大宮人の袖の上に八たち霜をく有明の月︵さか木とるやそうち人の袖のうへに神代をかけてのこる月かけ土御門院御製︶ 九弁端雪一一うき雲︿はれぬる跡の月かけにしくれのこれる嶺の松かせ井衣四︵續古今已上四首尤宜敷︶誰弁しくるへき氣しきをみする山風に先さき立てふる木葉かな衣三︑つもりて︿ふちとやならんミなの河あらしにおつる嶺の紅葉奥九三獄さそひゆく木のはをやかてせきとめてこほりそめぬる谷河の水九帥鏑きくのさくまかきや山とみえつらん暮にし秋の色のやとれる井衣四︵更以無敵對歎︶弁帥三さひしさハ身にそふ物と成にけり秋より後の夕くれの空九弁帥衣三これも又タハまたしあさかほの枯葉のうへにをけるあさ霜臥日かけさすかれの入まくす霜とけて過にし秋にかへる露かな衣四弁︵如法秀逸也下句なと争如此可候哉︶喫三霜こほるあしまの月のさゆるよに聲うらかれて千烏鳴なり弁帥有景氣欺睦二こま山のあらしやさむきいつミ河わたりをとをミ千鳥なく也井弁九衣あへの鴫いはうつ浪のよるさえてすむともきかぬ千鳥鳴也九帥衣三弁むろの浦のしほひのかたのさ夜千鳥なき鴫かけてせと渡る也 衣三これも又タハまたしあ

已上二首珊存旨候

井三九帥 ︵上手之所為顕然候歎︶氣しき已前に申上候

︵己上両首存古躰歎︶河原千鳥無念候數 已上三首障と存候 ﹂︵一三オ︶

270−

(24)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

三帥一公飛わきもこか袖に糸たる上玉かつら夕風さえてあられふる也

九帥井亮詠弁雪︿たかことの葉なれはふるま上にたのめぬ人の猶またるらん九井衣弁︵此風情凡夫不思寄歎︶一き〜ひまさむきいほのさ上かきうつもれて一夜の程に雪そつもれる

九弁三衣元一︑さらてたにさひしくゑえし一本のなるをの松に雪ふりにけり

︵見一本松葉動万歳之蕊思歎︶九井衣一空帥三弁浪かくるむこのうら風音さえてあはしましろく雪そつもれる

しろきと申候詞又亡夫申旨候き

九衣完二一弄ふきおろすあそ山あらしけさ冴て冬野をひろミ雪そつもれる

九井一茜三弁白雪のとこしく嶺のこけむしろミとり︿冬や色かはるらん三弁︵已上三首水陸之雪多見所鰍︶一芸よもすから此いちしはをおりたきて雪にそあかす大原のさと井九三︵風情尤深候︶一突帥弁花とミるこ松かうれの白雪を日影やさそふあらしなるらむ

已上四首陣と存候て罷過候

井衣一毛コ禿まきの屋につもれる雪やとけぬらん雨にしられぬ軒の玉水

井衣三一夫荊如またさかぬ冬木の梅の花の枝にかつ色みえてつもるしら雪

九一究弐雪の中に炭やく山やふしのねに立もかくらぬ烟なるらん

井九衣二s四三帥かす桑より霜夜に月をなかめきてつもれる老とくる上としかな

︵已上両首尤可然欺︶

九衣三一一三弁帥きのふ承し人の心にか坐るかなこれやおもひのはしめなるらん

上句あまりにた上詞にてや候覧 ﹂︵一三ウ︶﹂︵一四オ︶

(25)

井三衣三五鮴邦下もえにたえぬ煙の末よりや慧すてふ名の空に立らん

三 三 三

四 三 三 二 二 一 一 。 ロ つ つ つ

一 ロ ブ し ノ 、 一 上 プ マ 五

二つ二

二空一

二つ四 九衣臥こひそむるからあひのきぬの色に出てふかき心をしらせてしかな井衣弐くれなゐのはつ花そめのした衣人こそしられふかき心を九衣四三弁帥中ノーによそにも象しとおもふこそ人めをしのふあまり也けり

是又上句うちとけてや候覧

井衣三九弁帥〜しのふ山心のおくにたつ雲のはれぬおもひはしる人もなし

井弁衣三九帥︑人しれぬしのふの山になく鹿もねにたて上こそ妻をこふらめ

九衣三弁︑ほのかにもミてを燕はやしのす坐き相坂山の名はしらすとも井九衣︵与後撰丞相勝劣如何︶尋おもふともいはての杜のミしめ縄くるしゃなにとしのひそめけん

井九三帥衣四弁うちもれすしのふ心のあらはれはしられまくらを猶やかこたん

九井帥卦こしたもえのあまのたくもの夕煙すゑこそしられ心ょはさを衣三︵已上両首興味争定文又論實方歎︶帥物おもふみしまかくれをゆく舟のほにこそみえね浦風そふく

新勅撰行能卿

かすならいぶしまかくれにこく舟と詠候歎

井三九弁衣四とにかくにこかれて物をおもふかなしほやく浦のあまの釣舟

井九三衣こと入︿んしほやの里にすむ海人のわかことからき物やおもふと

三帥衣消かへりくゆるおもひになからへてはて︿けふりの夕暮そうき

故存旨候 ﹂︵一四ウ︶

272

(26)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

井衣三一三︿糾弁人しれすこゃにたく火の下煙いかなるひまにうき名たつらん衣三︵両首下句相叶上句尤可賞歎︶一毛鋤弁またあはいつらさもかなし人の身をなら︿し物とたれかいひけん

井弁三三八︑いのりけんかもの糸あれのもるかつらかけても人にあふひありやと

九四三帥衣弁三九いかにしてよそにもぷむとおもひし︿つらきになれぬ心なりけり井九三弁帥︵神也妙也可賞可翫歎︶三己〜さりともと人のなさけをたのむかなつらき心も岩木ならねは九三帥弁︵数度雌泳不可飽歎︶一三︑なかしとそおもひ︿てぬるあはてのミひとり月ミる秋のよな︐11

衣三三一︑にはつ烏かけのたれおの打はへてなかき夜すから承たれてそ思

井衣三九弁三三︑山とりのをろのはつかにミし人のかけをと入むるか坐ミ也せは

九三西︑ことの葉のあとなき末をたつねてもあはての森の木枯の風

井弁二五封こしくれにもつれなき松︿ある物を涙にたへぬ袖の色かな

九井衣一二︿帥三弁袖にあまる涙の露やしくるらん秋のならひといひ︿なすとも

︵此風梢常出来欺︶無指要文字餘事強不可好之由亡夫同申候し以事

九帥衣一三尋ほしわふる袖のためしょなにならん草葉も秋そ露︿をさける九三帥︵遊理尤可然歎︶三六︑朽にけり袖やむかしの袖ならいつ上むなミたくもとの身にして

衣帥三弁九︵是等︿秀逸之中一天此本歌常見躰候歎︶二元︑ひろ瀬河あさきく人のちぎるにて袖つく波︿ほすひまもなし菫リ九衣四ころ︑あちきなや人の心のうきにさへた生われからと身をうらミつょ

も三︑むすひをきし契よいかに岩代のまっにむなしきよをかさぬらん 次申上候 一︑一一t﹂一ノ﹂︽一エオ﹂﹂︵一一互台/︶

(27)

井三一室︿〜ありしよのかたみと何をなかめまし月にわかれぬわか身也せは 二四四二四五 一二一二︿二三七二三八二三九二四つ二四一二四二二四一二 三九帥衣四弁三一︑︲中jく〜にたのめぬよはそまたれける人のこLろのかくるならひに

三帥弁二三︑︑ふけすともまたてやねなん月にたにこさりし物をよひの村雨

九三衣二西帥弁雨ふら︿うらぷさらましこぬ人のこk︽ろゑえたる夜半の月かけ

︵難出来歎︶二一壹可ヨー弁帥あはれなる身のおもひかな偽の人のちきりをなくさめにして

井九衣弁帥く北方屍とf一きりて4

−一存旨候之間罷過候

井九衣三弁わすれしといひてわか

九三帥なきぬとて烏よりさき 井三帥衣︑いく秋のなミたの露を︿らひかね物おもふ袖に月をミるらん衣三︑物おもふ我からくもる月かけをなミたのとかを何うらむらん弁九衣昴いのらすよゅふしてかけしかたそきのゆきあひ遠き契なれと︿

九三弁な

︲︑有明をなにつれしとおもひけん夜ふかき月におぎわかれつ上

衣帥三も

︑あか月︿うきものそと︿いにしへのたか別よりうらゑそめけん

井衣三九〜曉はうき時なれはあふ坂のゆふ尋烏も音をやなくらん

井九︑あか月くうら︑︑︑てのミやかへるらんわかれちにおふる葛のしたかせ

衣九は

弁帥くれなゐとちぎりても猶かなしきくさためなき世の曉のそら

わすれしといひてわかれし曉もなにのつらさに袖のぬれけん

身なきぬとて烏よりさきにいそぎしやわする上中のはしめ成けん状へ︷欺︵両首別恋尤優美候︶已上二首又陣と存候 第四句不優候歎

|︑一一︑一/﹂〆一二/4判﹄

ワワ刈

三 J 辻

(28)

四十八山岸文庫蔵『宗尊親王三百首』

井三九一里︑わすれしとちきらさりせはかねてよりおもひしま上のわか身ならまし

衣三二受おもはすよれくたれかミのそのま上にみたれて人をこひんものと︿

九二男︑かつらぎやくめの岩はし神かけて契し中のいつたえにけん

衣三弁二三︑うた上ねにたのむはかりの夢もかな感てふことのなくさめにせん

九帥三弁三識夢の中にゆきてや︽﹁ましかへすてふ夜はの衣のうらのはっしま井九衣︵不向戒仙法師歎︶一三三弁ミる夢のなこりもつらし今︿た上かへさてねなんよはのさ衣

井九三一三もろこしも夢にミしか︿とくかりを夜なノ︑ことにたのむはかなさ

玉ほこのみち行人ほと塁きすなくや五月と︿可詠桜

ちる木の下風なとく不可詠之由亡夫申候き

九一吾試うらミわひかへすころもの関すへておもひたえたる夢のかょひち

九帥二妾三衣夢にたにあひミることをたえねとやぬるひまもなきおもひ成らん

井九一三︿衣三おもひあまりくるれくたのむ夢ちにもたえぬる中︿あふひまもなし

︵已上七首夜夢絶妙也勝劣可見合鮎歎︶已上二首叉障と存候

九衣一毛臥しらさりぎわか玉のをくなからへてあひ︑︑︑し中のたえんものとは

九衣四一頁飛帥わたつ海の底の玉もの︑︑︑かくれてみたれてそおもふあふよしをなミ

九衣三一一尭師弁あふ事︿なたのしほせに行舟のいや遠さかる中そかなしき

衣三二a帥逢こと︿なすのゆりかねいつまてかくたけて感にしつ︑︑︑はつへき 第三句無念候歎 ﹂︵一六ウ︶﹂︵一七オ︶

(29)

一一七一二七二

二七三

二七四 ︿︿

一二︿九二七つ 二一︿四一二︿五︿︿

二一︿七 一一一︿一一一一︿一一︿

井三帥孤衣かへりこん月日へたつな立わかれいな葉の山の嶺のしら雲

井九弁論ふるさとのさかひはるかになるみかたしほみちくれは行人もなし衣三︵續古今︶邸いかにねて夢もむすはむ草まくら嵐ふく夜のさやの中山弁劫唾弁月影にこよひは山の嶺こえぬたれか野原に枕ゆふらむ

其心不分明候之間障と存候 弁衣弄相坂の関路におふるされかっらかれにし後︿くる人もなし

九︵本歌似過歎︶

︑うらミても里を︿かれぬくすかつらくるしき物とたれをまつらん三帥衣︵綾古今︶郭まくす原ぅらミし比の秋かせゃかれノI︑になるはしめなりけん

四三あたにちる花よりも猶はかなきはうつろふ人の心なりけり

井衣︵無二無三鍬︶

塾一うつるは土色かはれとや契置しうき身しりける袖の露かな 九帥衣四︵尤宜歎︶ ︑をく露も色こそかはれあた人のわれをふるせる秋のたもとに 井三衣四九弁帥 弁 井

井九三うつり行人の心の花かつら後の世かけてなにたのミけん 衣三九弁 あふこともいま︿むなしき空蝉の羽にをく露のきえやはてなんわするなょ身を浮雲︿へたつをもよなjく︑なれし袖の月かけ身を秋の袖の月かけふけにけりかハるちきりの末の涙に

又障と存候 已上又障と存候

|コセウ︶L/一︑

、 再 介

乙 イ 、 −

(30)

四 十 八 山 岸 文 庫 蔵 『 宗 尊 親 王 三 百 首 』

井九三帥弁一要︑いはしろの松のしたねの草枕さてもむすはい夢そかなしき衣︵人丸定感申候歎︶一三︿鮴さ上まくらいく野の末にむすひきい一夜はかりの露の契りを

一毛たひ衣を花か露をかたしきて野へにも浪のうきねしてけり

景気殊勝候但僧正遍昭風躰やすき候覧

井衣師一買弄さ坐のゃのかりねのまくら夢たえて袖も夜さむの松風そふく

九三一莞諦ふるさと︿とをっのはまの礒まくら山こえてこそ浪に成けれ

︵側本欣下句猶勝歎︶是又愚心迷て不分明候暫罷過候

井弁一否卦うき枕またふしなれぬさ些嶋の礒こす浪の音のはけしさ

井三帥河

天一飛九何の名もこと上ふ烏もあらはれてすミたえぬるく︑︑︑やこ也けり

井九三︷︷︵縦古今︶云一臥たちかへりみてこそゆかめふしのねのめつらしけなきけふり也とも

帥衣弁た兇二八三鯉洋るかなるふしのしら雪きゅる日︿あれともけふりたえぬまくなし

一一一茜蝦趣潅みわたせはしほかせあらしひめ鴫の小松かうれにかLるしらなみ

井三一至九帥ほしわふる袖しの浦のあま人とひともみぎはにもしほたれつ坐

井九衣二会帥三弁いて上ミるむかひの岡のか皇ミ草露にみかける月のかけかな

三九帥弁

二毛︑かきのこけか︿らの松のふか象とり年ふりにけるやと上みえつ些

衣四三弁一兵刻訓しつかすむとを山松のふかミとりうすきや里のけふりなるらん

衣三弁二先制鯲宮こ人とはいもよしや山里︿さひしきにこそ心すミけれ 已上又念して罷過候 ︵一八オ︶

|︵一八ウ︶

(31)

二九八

二九九三つ︒ 二元七 二九三二九四二九五二九一︿ 一元︹︸衣

二 二 ニ ニ プ し プ 山

= 二

九三帥弁山さとの軒はにたてるそなれ松なれても風の音のさひしさ

九帥衣三まへは海うしろは山の松かせに一かたならぬ波のをとかな

︵凡非心之所及洞庭湖之松庵被思泄候︶はしめつかた不幽玄候鰍

九帥ホカ

ヨ敷嶋ややまとしまねの外まてもわたせ︿わたす夢のうき橋

井九劃二夢の中に猶みるゆめや世中のはかなく過し昔なるらむ

井斌いたつらにあすかの河の瀬をはやミ過る月日のしから︑︑﹃もかな

井三衣はま千とりむかしの跡をたつねても猶みちしらぬわかの浦波

︵三代御秀逸御梱傳之上者故不加合鮎︶凡中/︑ともかくも不能言上候

井衣帥九三千とせ山これやむかしのさ入れ石いはほにふかき苔の色かな

此山すこし似大嘗會歌候歎

井弁恥すぷよしの浦はの松のふか︑︑︑とりひさしかれとや神もうへけんヘィ井三弁ふかき斌千世ふへき大内山の嶺の松いや年のはに色まさるらん

鱸垂れも坐しきやあまてる神のますか入﹁︑︑君か御影をさそまもるらん き上なれぬ松のあらしもかねてよりおもひしま︲︽のミ山へのさと

み山へのさとふくあらしかな不可詠之由亡夫慥申候き得

︵是又秀逸歎神慮之實義忽以露顕不能左右之上 み山へのさ分加制止候

﹂︵一九オ︶

278

(32)

四十八山岸文庫蔵『宗尊親王三百首』

︿注1﹀﹁躰﹂の右に詞

︿注2﹀虫損状態をその辛

く注3﹀合点を擦り消し︒ ︵白紙︶

冷泉家旧蔵本也 今賜此御詠已被許愚鮎老後之自愛候︶以朱書之者九条前内府被註之

本云此御歌先年書写之処為人被借失之間

以或本一枝旱

昭和廿四年林鐘五 頓阿

此一冊以仙洞御本令書写加校合者也

元和元年臘月廿八日李部王

尋證本書之早

明和五年夏

﹁程﹂と墨書するが︑擦り消し︒

のまま書写︒﹁高躰不能左右歎﹂とあるべきか︒ 岸廼舎 為栄

﹂︵裏見返︶

﹂︵裏表紙︶ ﹂︵二一オ︶﹂︵二一ウ︶

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/ 、 ﹂︵二○オ︶ ︵一九ウ︶

参照

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