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『 地 蔵 十 王 経 』 考

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Academic year: 2022

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(1)﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ 考. 変成王庁 ︿ 弥勒菩薩 ﹀. 清 日 本 に於 て︑ 十 王信 仰 は︑ 当 初 ︑ 中 国 撰 述 ﹃預 修 十 王 生 七. 太山王庁 ︿ 薬師如来﹀. 水. 邦. 彦. 世 に流 布 し た テ キ スト に は存 在 せず ︑ た ま た ま続 蔵 経 の底 本. 考 え ら れ る ︒が (︑ 6﹃ )地 蔵 十 王 経 ﹄ に於 け る本 地 仏 の記 述 は︑中. 以 上 の如 く︑十 王 の本 地 仏 と いう思 想 は日 本 独 特 のも のと. 想 が あ った と判 断 す る の は早 計 であ る︒. て金 沢 文 庫 十 王図 の みか ら ︑中 国 で十 王 の本 地 仏 と い った 思. 信 忠 筆 の十 王図 は ﹁ 依頼 ﹂ に よ り作 成 さ れ た 説 も あ る︒従 (5 っ). 各 十 王 の本 地 仏 が 描 か れ て いる ︒( し4 か) し ︑ 日本 に現存 す る陸. 留 意 す べ き は︑金 沢 文 庫 本 陸 信 忠 筆 の十 王 図 で︑これ に は︑. 発 想 は︑( ﹃預 3修 )十 王 生七 経 ﹄ 等 中 国 文 献 に は見 ら れ な い︒. 確 か に︑閻 魔 と地 蔵 と の関 係 を除 き ︑十 王 の本 地 仏 と い った. 五道転 輪王庁 ︿ 阿弥陀如来﹀. 都 市王庁 ︿ 阿閤如来﹀. 平等 王 ︿ 観世音菩薩 ﹀. 経 ﹄ に基 づ いて いたが ︑十 二世 紀 後 半 〜 十 三世 紀 前 半 に日本 撰 述 ﹃仏 説 地 蔵 菩 薩 発 心 因縁 十 王経 ﹄(以下︑﹃地蔵十王経﹄)が 成 立 し て以 降 ︑ こち ら が重 要 視 さ れ る よ う にな った ︒ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ と内 容 が 類 似 す る十 王 経 図 巻 が中 国 に存 在 す る た め︑同 経 は単 純 に日 本 撰 述 と は言 え な いが︑﹁ ( 奈1河)津 ﹂・ ﹁ 奪 衣 婆 ﹂ と い った語 句 か ら ︑ そ の文 言 の多 く は 日本 で形 成 さ れ た と考 え ら れ る︒(2) 先 行 研 究 に於 て︑ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ の意 義 の 一つに ︑ 十 王 の 本 地 を明 確 化 し た こと が 挙げ ら れ て い る︒続 蔵 経 版 から 抜 き 出 す と︑ 以下 の よう にあ る︒ (︿ ﹀内 は割 註︒) 秦広 王 ︿ 不動明王﹀ 初江王宮 ︿ 釈迦如来﹀. に記 さ れ た にすぎ な いと 私 は考 え る︒ 以下 ︑論 証 を 行 なう ︒. 宋帝王宮 ︿ 文殊菩薩﹀ 五官王宮 ︿ 普賢菩薩﹀. 平 成十 四年 十 二月. 閻魔王国 ︿ 地蔵菩薩﹀ 印 度 學佛 教學 研究第 五 十 一巻 第 一号. 189.

(2) ﹃ 地蔵十王経﹄考 ( 清. 水). ( 村山修 一 ﹃ 古代仏教 の中世的展 開﹄所収 ) を 例 に考 え た い︒ 同. 秦広王 本地不動. 第 一に︑続 蔵 経 以 外 のテ キ スト に十 王 の本 地 仏 の記 述 が 無. 初江王 本地普賢. 書 は︑ ﹁ 十 王経 云 ﹂ と し て︑ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ を 頻繁 に引 用 し て. 広 王 ︿不 動 明 王﹀﹂を 除 き ︑本 地 仏 の記載 が無 いも のが多 い︒(7)初 七日. 宗帝王 本地釈迦. いも のが多 数存 在 す る こ と であ る ︒まず ︑室 町 中 期 頃 の写 本. 二七日. 五官王 本地薬師. いる に も か か わ らず ︑ 十 王 の本 地 に つ い て は ﹃地蔵 十 王 経 ﹄. 三七日. 閻魔王 本地地蔵. と考 え ら れ る ﹃注十 王経 ﹄ ( 叡山文庫蔵) に記 さ れ る ﹃地 蔵 十. 四七日. 変成王 本地弥勒. と 一致 し な い︒. 五七日. 太山王 本地阿弥陀. 王 経 ﹄ 本 文 に も無 い︒ ま た ︑ 江 戸 時 代 の刊 本 でも ︑ ﹁ 第 一秦. 六七日. 初江王 ハ尺迦ノ垂迹也. 秦広不動垂迹也 ⁝秦広王不動 又 ハ定 光仏. 以下 の よう にな って いる︒. な お︑ ﹃注十 王 経 ﹄ に 於 て ︑本 地仏 に関 す る注 を 抜 き 出 す と ︑. ( 絵 部 分 は除 く ︒例 外 は 後 述 ︒)さら に国 訳 一切経 版 に も無 い︒. 七 々日. 平等王 本地観音. 宋帝王 ハ文殊 ノ垂迹也. 一周忌. 五道転輪王本地阿弥陀. 都市王 本地勢至. 或説文殊師利菩薩. 阿弥陀如来. 字 数 を割 いて いる︒. な お︑ 五 道 転 輪 王 の本 地 を 以 下 の様 に も 記 し ︑文 殊 の説 明 に. 第 三年. ︿ 十王経云第九都市王文﹀. 百箇日. [ 補︱ 五官王]普賢 ノ垂迹也 [ 補︱ 閻魔王]地蔵菩薩 ノ口身也 変成王 ハ弥勒 ノ垂迹 ナリ 太山王者薬師 ノ所迹 ナリ [ 補︱ 平等 王]観音変化也 都市王勢至菩薩 ノ垂迹 ナリ. 第 三年. こ の二箇︑説くに︑まさに文殊 に就 かんとす る所以 は何ぞや︒阿. 五道転輪 王者釈迦牟尼仏也 ⁝大日ト云光明遍 照阿弥陀 ノ所変也 五道 転 輪 王 の本 地 を 大 日 や 阿 弥 陀 と す る説 の存 在 を 記 し て い. 弥陀 は︑今 に相 ひ別 るる説 の如くは︑七 々日泰山王 の本地︑阿弥. の讃 嘆を致す者なり︒ ( 原漢文 ). 陀如来 なるが故 に︑相 ひ替 て︑文殊を用 ひて︑な お文殊 に就 て︑そ. る こと も 興味 深 い︒ 第 二 に︑ 地 蔵 十 王 経 の本 地 仏 の組 み合 わ せ が中 世 文 献 ・絵 画 ど こ に も 見 ら れ な い こ と であ る ︒ 例 え ば ︑ ﹃普 通 唱 導 集 ﹄. 190.

(3) 但 し︑ 両 書 と も最 後 三 つが 阿弥 陀 三尊 と な っ て い る︒ ま た︑. 第 三 年 ︑ 五 道 転 輪 王 ト 云 ハ︑ 本 地弥 陀 ナリ ︒. え る ︒ 同 書 も ︑ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ を 引 用 し て い る が ︑ 都 市 王 の 念法寺本十王 図. 同 様 の事 は ︑ ﹃私 聚 百 因 縁 集 ﹄ ( 大 日本 仏 教 全 書 所 収 ) に も 云. 本 地 を 勢 至 と し て いる︒ ( 他は ﹁ 宋 帝 王 ﹂ の表 記 を 含 め︑ 続 蔵 経. 同 じな がら も ︑ 変 成 王 の本 地 を大 日 如来 と し て いる︒( 南8 北)朝. 同 一で あ る︒( 隆9 尭) ﹃ 十 王 本 跡 讃 嘆 修 善 鈔 ﹄ (一四三 三年 成 立)(10). 期 に作 成 さ れ た 二尊 院 本 十 王 図 の本 地 仏 は︑ ﹃百 因 縁 集 ﹄ と. (一三 四 五 年 作 成 ) で は ︑ ﹃百 因 縁 集 ﹄ と ほ ぼ. 版 と 同 じ ︒) こ れ 以 外 に も ︑十 王 の本 地 を 記 し た 中 世 史 料 は 多 々 あ る が ︑. も 本 地 仏 に関 し て は ﹃ 百 因 縁 集 ﹄ と同 一であ る ︒. ② は︑ 五 道 転 輪 王 の本 地 を 釈迦 とす るも ので︑ 伝 日蓮 ﹃ 十. 鎌 倉 時 代 に 於 て ︑十 王 の 本 地 は ︑様 々 な バ ー ジ ョ ン が あ る ︒. 都 市 王 の本 地 を 阿 閤 と し た も の は 見 当 た ら な い︒. 五 道 転 輪 王 の 本 地= 最 終 的 救 済 者 に 着 目 す る と ︑① 浄 土 系 ︑②. い った 天 台 ・日蓮 系 に 見 ら れ る︒両 書 の本 地 仏 は 一致 し て い. 王讃歎鈔﹄ ( 昭和新 修 日蓮 聖 人遺文全集所収 ) ・﹃注 十 王 経 ﹄ と. る︒ ( 但 し伝 日蓮 ﹃十 王讃歎鈔﹄に於 て秦広王 の本地 は不動 のみで︑. 天 台 ・日 蓮 系 ︑ ③ 真 言 系 ︑ 三 つに 分 類 で き る ︒ ① は ︑ 五 道 転. 王裁 断 ﹄ ( 真 宗 史 料 集 成 所 収 ) に 見 ら れ る ︒ 但 し ︑ 両 書 の記 す. 輪 王 の本 地 を 阿 弥 陀 と す る も の で ︑ ﹃百 因 縁 集 ﹄・伝 覚 如 ﹃十. 本 地 仏 に は 相 違 が あ る ︒ ﹃十 王 裁 断 ﹄ を 以 下 ︑ 抜 き 出 し て 引. ・ 定光仏 の名 は無 い︒) ③ は︑ 五道 転 輪 王 の本 地 を大 日 にす る も ので︑ 真 言 系 に見. 三 七 日 ︑ 宗 帝 王 ト イ フ ハ︑ 本 地 ハ文 殊 師 利 菩 薩 ナ リ ︒. 五官王. 宋帝王 薬師 如来. 初江王. 秦広王. 不動明王. 釈迦如来. 初 七 日 ハ秦 広 王 ト イ フ ハ︑ 本 地 大 日 如 来 ナ リ︒ 不 動 ト モイ フ︒. 用 す る︒. 四 七 日 ︑ 五 官 王 ト 云 ハ︑ 本 地 普賢 菩 薩 ナ リ ︒. 閻魔王 地蔵 菩薩. ら れ る︒( 以1 下1 ︑)誓 願 寺 本 十 王 図 に於 け る本 地 仏 を 挙 げ る ︒. 五 七 日 ︑ 閻 魔 王 ト イ フ ハ︑ 本 地地 蔵 ︑. 変成 王 観 世音菩 薩. 二七 日 ハ初 江 王 ハ本 地 釈 迦 ナリ ︑ 是 又 弥 陀 ノ応 化 ナ リ ︒. 六 七 日 ︑変 成 王 ト イ フ ハ︑本 地 弥 勒 菩 薩 ナ リ ︒. 太山王 欠. [ 如来形]. 七 七 日︑ 泰 山 王 ト イ フ ハ︑ 本 地 薬 師 ナ リ︒. 平等 王 普賢菩薩. 水). 一周 忌 ︑ 都 市 王 ト イ フ ハ︑ 本 地 観 音 ナ リ︒. ( 清. 百 ヶ 日 ︑ 平 等 王 ト イ フ ハ︑ 本 地 勢 至 ナ リ︒. ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ 考. 191.

(4) ﹃地蔵十 王経﹄ 考 ( 清. 水). 型化 し て いく 十 王 の本 地 仏 から締 め出 さ れ てし ま った 大 日 を ︑. 何 と し ても 年 忌 供 養 の忌 日 仏 に加 え た いと いう 真 言密 教 家 の. 大日如来. 五道転輪王. 強 い欲 求 が あ った こと が想 像 さ れ る の であ る﹂と (述 1べ 4て ) い る︒. 文殊菩薩. ﹃注 十 王 経 ﹄ の釈 文 の中 に︑ 五 道 転 輪 王 の本 地 を 大 日 と す. 貞 見 で あ ろう ︒ 言 い換 え れば ︑南 北 朝 期 に は百 因 縁 型 が そ れ. 都市王. る説 が あ った が︑ これ は真 言 の説 を紹 介 し たも のと 考 え ら れ. だ け定 着 し て いた と言 え る ︒百 因 縁 型 の定着 に は︑ 浄 土 系 の. こう した 流 れ の中 で︑ ﹃地 蔵 十 王経 ﹄ に忠 実 な も の が 一切. が 通 例 で あ る︒. な お︑ 江 戸 時 代 の刊 本 に 記 さ れ る絵 の詞 書 では︑ 百 因 縁 型. 唱導 僧 の活 躍 が想 定 さ れ る ︒. る︒ 時 代 が下 り ︑室 町 時 代 と な る と︑ ︿続 蔵 経 版 が ベー ス だ が︑ 都 市 王 の本 地 を 勢 至 と す る ﹀百 因 縁 型 が 一般化 す る ︒ そ の時 期 を特 定 す る の は 困 難 だ が ︑十 三仏 信 仰 の初 期 資 料 であ る︑ 真 言系 ﹃弘 法 大 師 逆 修 日 記 事 ﹄ (一四二九〜 四 一年成立 下限 ・弘. (一四 四四年 成立 ・中田祝夫 ︑林義雄 ﹃ 古本 下学集七 種研究 並び に. 起﹂ と十 王 ・十 三仏﹂ ﹃千里山文学論集﹄ 二四号所収 )・﹃下 学集 ﹄. な ろう ︒ ﹃逆 修 講 縁 起 ﹄ (一四三九年成立 ・橋本直紀 ﹁﹁ 逆修 講縁. す形 で︑十 三仏 を 形 成 し て いる こと が 一つのメ ルク マー ルと. 他 の王 と仏 ・菩 薩 と の関 係 も同 様 で あ る︒ 石 田瑞 麿 は︑ ﹁ 普. 地 仏 の名 称 以 外 ︑普 賢 の名 が 出 て こな いた め︑ 不 明 であ る ︒. の本 地 は普 賢 な のか ? ︒ ﹃地蔵 十 王経 ﹄ の記 述 を 見 ても ︑ 本. 部 分 が 対応 し な い こと が 挙 げ ら れ る︒ 例 えば ︑ 何 故 ︑ 五 官 王. 第 三 に︑ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ を見 直 す と ︑ 本 地 仏 の記 述 と 他 の. で て こな い のは か な り 不 自 然 であ る︒. 総合索引﹄所収) に於 け る十 三仏 も同 様 であ る︒ほぼ 同 時 期 の. 賢 菩 薩 と 五 官 王 と の関 係 は ︑前 の諸 王 と 仏 ・菩 薩 と 同 じ く. 法大師全集所収 ) で は︑ 百 因 縁 型 に︑ 阿 閤 ・大 日 ・虚 空 蔵 を 足. 板 碑 に記 さ れ る十 三 仏 でも ︑十 王 の本 地 仏 に関 し て は異 同 が. 以 上 を 踏 ま え る と ︑ ﹃地 蔵 十 王 経 ﹄ に於 け る本 地 仏 の記 述. は っきり しな い(1 と5 述)べ て いる︒. 加 え た も の で あ り ︑ そ れ が 大 日 二尊 に虚 空 蔵 を 加 え た も のや. は︑ た ま た ま 続 蔵 経 の底 本 に記 さ れた に過ぎ ず ︑中 世 に流 布. な い︒( 但1 し2 ︑)最 初 期 の十 三仏 は ︑十 王 の本 地 仏 に大 日 を 三体. 大 日 二尊 に阿 閤 を加 え た も の へと 変 化 し ︑( さ1 ら3 に) 現 在 の十 三. し た テ キ ス ト に は無 か った と 考 え ら れ る︒ と す る と ︑今 日 に. た と考 え ら れ る︒. 引 き続 く十 王 の本 地 仏 を 定 着 さ せ た のは︑ 浄 土系 の僧 で あ っ. 仏 と な った と考 え ら れ て い る︒こ のこ と に つい て︑矢 島 新 は︑ ﹁ 南 北 朝 期 の板 碑 に 見 え る十 三 仏 は ︑ 十 王 の定 型 の本 地 仏 に 大 日 を 三体 加 え る も の であ った が︑ そ の成 立 の背 景 に は︑ 定. 192.

(5) 概 念 はも と も と の経 典 に は な く︑ そ の定 着 には 浄 土 系 の唱 導. 本 発 表 の意 義 はど こ に あ る か と いう と ︑十 王 の本 地 と いう. 蔵 十 王経 ﹄ も存 在 し ︑続 蔵 経 は こ の種 のも のを 底 本 と し た と. と す る と︑ 江 戸 時 代 に於 て︑都 市 王 の本 地 を 阿 閤 と し た ﹃ 地. 2 3. 4. 5. 二 年 )・中 野 照男 ﹃ 閻 魔 ・十 王 図 ﹄ (一九 九 二年 至 文 堂 ) 十 八頁. ちく ま新 書 ) 一四七 〜 一五 三頁. 本 居宣 長 ﹁ 玉 か つま ﹂ (﹃ 日 本 思 想 大 系 ﹄ 所収 )・川 村 邦 光 ﹃ 地. 宋 代 に編 集 さ れ た説 話 集 ﹃ 地 蔵 菩 薩 応 験 記﹄第 十 七 話 に は ︑閻. 獄めぐり﹄ ( 二〇 〇 〇 年. 残念 な が ら︑ 後 五 幅 のみ 現 存 ︒本 地 仏 の描 写 は小 さ く ︑ ま た ︑. 魔 王 は地 蔵 の化 身 であ る旨 が述 べ ら れ る ︒. 十 王図 ﹂ ( ﹃金 沢 文 庫 研 究 ﹄ 一 三六 号. 一. 個 性 化 さ れ て いな い︒ 変 成 王 の本 地 が 如 来 形 ︑ そ れ以 外 の四 王. 鈴木敬 ﹁ 陸信忠筆. の本 地 は菩 薩 形 で あ る の が確 認 さ れ る ︒. 先 行 研 究 に お い て︑ こ の点 に 関 し て は朝 鮮 半 島 か ら の 影響 は. 九六七年). な か っと さ れ て いる ︒. 二九 九 六 年 ) を 入 手 し た の で︑ 今 後 の課 題 と. 一九 九 八 年 ) 二 二 二頁 ・学 会 の際 ︑ 金 延 禧 ﹃ 朝鮮時代地蔵 十王 した い︒. 図 研 究 ﹄ (一志 社. 橋 本 直 紀 蔵本 ( 寛 永 頃 開 版 ︑ ﹃千 里 山 文 学論 集 ﹄三 十 号 に影 印. 無 い︒ 国 会 図 書 館 本 に は 他 本 に は無 い閻 魔 王 の口絵 も あ る︒ 国. し︑ 国 会 図 書 館 本 に のみ ︑ ﹁ 第 一秦 広 王 ︿ 不 動 明 王 ﹀﹂ の記 述 が. 山 文 庫 所 蔵 慈 限 堂 蔵 書 版 ・叡 山 文 庫 所 蔵 天海 蔵 書 版 が該 当 ︒ 但. 復 刻 が 掲 載 ) ・金 沢 文 庫 本 ・国 会 図 書 館 本 ( 文 禄 三 年 開 版 ) ・叡. 7. 6. 松本栄 一 ﹁ 燉 煌 本 十 王 経 図 巻 雑 考 ﹂ (﹃ 国 華 ﹄ 六 二 一号 一九 四. 考 え ら れ る の で あ る ︒(16). 配 一周忌﹀. 1. 僧 の活 躍 があ った ︑ と いう こと を 明 ら か に した 点 にあ る︒ 浄 土宗 の中 世 的 展 開 に於 て︑葬 祭 儀 礼 の導 入が 重 要 な 役 割 を 占 めた こと は既 に先 行 研 究 で言 及 さ れ て いると ころ で はあ るが ︑ 本 発 表 に よ っ てそ の具 体 的 動 き の 一端 が 明ら か にな った と 言 え る︒ さ て︑ そ れ で は︑ 続 蔵 経 に あ る十 王 の本 地 仏 の名 称 は 一体 何 な のだ ろう か ︒前 述 の如 く ︑ 十 王 の本 地 が 諸 説 あ った 中 世 に於 て︑続 蔵 経 型 の配 置 は見 ら れな い︒ し か し︑ 近 世 にな る と︑続 蔵経 型 の配置 を 記 す ﹃地 蔵 十 王経 ﹄ も出 現 す る︒ 浅 井 了 意 ﹃仏 説 地 蔵 菩 薩 発 心 因 縁 十 王経 注 解 ﹄ (一六八三年刊 ・東 洋大学蔵 ) に 引 用 す る ﹃地 蔵 十 王経 ﹄ で は︑ 都 市 王 の本 地 を. ︿ 本地阿閤仏. 阿 閤 と し ︑続 蔵 経 と 一致 す る︒ 第九都市王庁. ﹁ 第 九 都 市 王 庁 ﹂ 以 下 の部 分 は ︑ 了 意 が付 した 注 の部 分 と 区 別 さ れ て いる︒浅 井 が真 宗 の説 教 僧 であ る こと を考 慮 す ると ︑ 当 該部 分 は︑ 了 意 が依 拠 し た ﹃地 蔵十 王経 ﹄ に存 在 し た と考 えられる︒ ま た ︑ 一六 八 八年 に 江 戸 の前 川 五 郎 兵 衛 が開 版 し た ﹃地 蔵. 水). ︿ 本﹀ 阿閤如来 ︿一周忌 ノ為本尊﹀. 十 王経 ﹄ ( 叡山文庫蔵 ) の本 文 に も ほぼ 同 様 の記述 が あ る︒ 第九都市王庁. ﹃ 地蔵十王経﹄考 ( 清. 193.

(6) ﹃ 地 蔵 十 王 経 ﹄考. ( 清. 水). 会 図書館本 の ﹁ 文 禄 三 年 ﹂開 版 の記 録 は不 自 然 に追 加 さ れ た 一. 武 田和 昭 ( 下 )﹂ ( ﹃ 仏 教 芸 術 ﹄ 一六. ﹁ 十 三 仏 図 の成 立 に つ い て﹂ (﹃ 密 教 文 化 ﹄ 一六 九 号. 文 に 記 さ れ て い る こと か ら ︑ 再 検討 が 必 要 で あ る︒ 8 一九 八 六 年 ). 一九 八 九 年 ) ・宮 島 新 一 ﹁ 巨 勢派 論. 富 山県 [ 立 山 博 物 館 ] 編 ﹃地 獄遊 覧 ﹄ (二〇 〇 一年 ) 八 六 頁. 九号 9 国 会 図書 館 並び に金 沢 大 学 暁烏 文 庫 に 刊本 が 現 存 ︒鷹 巣 純 ﹁ ﹃ 十 王 讃 歎 鈔 ﹄ 系 諸 本 と 六道 十 王 図﹂ ( ﹃東 海 仏 教 ﹄ 四 二号 一九 九. 植島基行 七 〇年). ﹁ 十 三仏 成 立 へ の展 開 ﹂ ( ﹃密 教 文 化 ﹄ 九 四号. 一九. 九州歴史資料館編 ﹃ 筑 前 今 津 誓 願 寺 展 ﹄ (一九 七 七 年 ) 二 五 頁. 七年 ) に内 容 が 紹 介 さ れ て いる ︒. 10. 11 12. 石 田 瑞 麿 ﹃民 衆 経 典 ﹄ ( 筑 摩 童旦房. 一九 八 六 年 ) 二一 四頁. 13 14 矢 島 新 ﹁ 沼 田市 正 覚 寺 蔵 十 王 図 と 十 三 仏 成 立 の問 題 ﹂ ( ﹃ 群 馬 県 立 女 子 大 学 紀 要 ﹄十 号 一九 九 〇 年 ) 15. 外. 八 重 合 綴 ﹄ と題 さ れ る. 16 但 し ︑ こ れ ら の 記述 は︑ 続 蔵 経 と も 微 妙 に異 な る︒ 刊 本 と続 蔵 経 と を 繋 ぐ も のと し て︑ 写 本 ﹃ 地蔵十 王経﹄ ( 京 都大学蔵)が 挙 げ ら れ る ︒ これ は︑ ﹃ 円覚経侠文. 本 に 収 め ら れ て いる ︒﹃円覚 経 ﹄は 一九 一 一年 に書 写 さ れ て お り︑ ﹃ 地 蔵 十 王 経 ﹄も 同 時期 の書 写 と考 え ら れ る ︒特 筆 す べき は同 二. い う のも ︑ 朱 書 き に よ っ て秦 広 王 以外 の十 王 に本 地 を 補 っ て い. 人 物 の手 に よ ると 考 え ら れ る ﹁ 朱 書 き ﹂ が あ る こ と であ る︒ と る か ら であ る︒ そ れ以 外 にも 朱 書 き に よ る訂 正 が あ る︒ 訂 正 さ れ た 記 述 は続 蔵 経 と同 一であ り︑ 恐 ら く 朱 書 き版 が 続 蔵 経 の底. こととする︒. 本 と な った と 考 え ら れ る︒ 詳 し く は再 調 査 の上 ︑ 別 稿 で述 べ る. ( 金 沢 大 学助 教 授 ). ︿キ ー ワー ド ﹀ 地 蔵 十 王 経 ︑ 十 王 の本 地︑ 十 三仏 信 仰. 新刊紹介. 加藤 精 一著. 弘 法 大 師 思想 論 考. A 5判 ・三 八○ 頁 ・九 ︑ ○ ○ ○ 円. 春 秋 社 ・二〇 〇 二年 九 月. 194.

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