YAG レ ー ザ に よ る 純 チ タ ン と ア ル ミ ニ ウ ム 薄 板 の 重 ね 溶 接 性
日 大 生 産 工 (院 ) ○ 大 里 史 人 日 大 生 産 工 朝 比 奈 敏 勝 東 葛 テ ク ノ プ ラ ザ 蓮 見 薫
1.緒 言
工業製品の高機能化,多様化を図るために は異種金属溶接技術が不可欠である.異材継 手に求められる機能としては軽量化,耐食性,
が挙げられ,各種の接合法が検討されている
1).近年 , 異種金属溶 接の研究報 告は増加の 傾向にあるが,その多くは自動車業界で需要 の あ る 鉄 /ア ル ミ ニ ウ ム 系 の も の で あ り , そ の 他 の 軽 金 属 材 料 の 組 合 せ で は 少 な い の が 現状である.
溶 融 溶 接 法 に よ る 異 種 金 属 接 合 に は レ ー ザ溶接が多く用いられている.レーザ溶接は ロボット化,自動化,システム化,ライン化,
省 力 化 な ど が 可 能 な 高 品 質 ・ 高 精 度 ・ 高 変 形・高柔軟性・高速・高生産性の溶接法とし て認められつつある.従来,異種材料の溶融 溶接の場合,金属間化合物を生成する組合せ は 一 般 的 に 溶 接 が 非 常 に 困 難 で あ る と さ れ ていた.しかし,レーザ加工の特徴である高 エネルギー密度加工,入熱制御が容易である 等 の 利 点 を 生 か す こ と に よ り 材 料 の 組 合 せ に よ っ て は 良 好 な 溶 接 性 が 得 ら れ る こ と が 報告されている 2).
チ タ ン は 比 強 度 に 優 れ る た め 航 空 機 材 料 として使用されているが,耐食性も良好であ るためプラントなどにも利用されており,今 後の発展が期待される材料である.一方,ア ル ミ ニ ウ ム は 構 造 用 材 料 や 自 動 車 用 材 料 の みならず,様々な分野に幅広く使用されてい る.
本 研 究 で は 純 チ タ ン と 3 種 類 の ア ル ミ ニ ウムをパルス YAG レーザにより重ね溶接を行
い,溶接性におよぼす材料の組合せと溶接条 件の影響を検討した.
2.供試材および実験方法
供試材には JIS H4600 に準じた市販の純チ タン2種(TP340C)板厚 0.6 ㎜,市販の 1100 純アルミニウム(A1100‑H14),2024 アルミニ ウム合金(A2024‑T3)および 5052 アルミニウ ム合金(A5052‑H34)それぞれ板厚 0.6 ㎜のも
Weldability of Pure Titanium / Aluminum Sheet Lap Joint using Pulsed YAG LASER
Fumito OSATO, Toshikatsu ASAHINA and Kaoru HASUMI
Table 1 Chemical compositions of base metals.
(a)TP340C titanium
H O N Fe Ti
0 0.1 0.01 0.07 Bal.
(b)1100 aluminum
Si Fe Cu Zn Al 0.5 0.45 0.14 0.1 Bal.
(c)2024 aluminum alloy
Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Zr+Ti Ti Al 0.06 0.17 4.51 0.58 1.58 0.02 0.20 0.03 0.03 Bal.
(d)5052 aluminum alloy
Si Fe Cu Mn Mg Cr Zn Ti Al 0.09 0.27 0.02 0.02 2.45 0.20 0.00 0.01 Bal.
Table 2 Mechanical properties of base metals.
Tensile
strength Elongation Hardness Materials
(MPa) (%) (HK0.025)
TP340C 383 41 158
A1100 128 14 48
A2024 465 19 151
A5052 237 12 68
Table 3 LASER welding conditions.
Pulse width PW (ms) 2.5, 5.0, 7.5, 10 LASER output Q (W) 100〜400
(20steps) Welding speed V (mm/min) 600 Pulse frequency f (Hz) 20
Tilt angle θ (deg.) 20
Surface Ga (l/min) 30 Shielding gas
flow rate Backing Gb (l/min) 30
のを使用した(以後,純チタン/1100 アルミニ ウム継手を Ti/A1100 継手,純チタン/2024 ア ルミニウム合金継手を Ti/A2024 継手,純チ タン/5052 アルミニウム合金継手を Ti/A5052 継 手 と 称 す ). 供 試 材 の 化 学 組 成 お よ び 機 械 的性質を
Table 1
およびTable 2
に示す.供 試材を長さ 200 ㎜,幅 80 ㎜に機械加工した ものをエメリーペーパーで研磨,ブタノンで 脱脂洗浄して実験に供した.溶接装置は最大平均出力 550W(最大パルス エネルギー:70J)のパルス YAG レーザ溶接装 置を使用した.溶接条件を
Table 3
に示す.レ ー ザ 出 力 は 溶 接 装 置 の 使 用 限 を 最 大 400W とした.レーザヘッドは供試材からの反射光 を避けるために前進角 20°とした.焦点位置 は焦点位置 80 ㎜の集光レンズを使用し,試 材の表面とした.シールドガスはアシストガ ス,バックシールドガス共にアルゴンを使用 した.
溶接はチタンを上板とし,重ね代を 20 ㎜ 設けた重ね溶接とした.溶接方向は圧延方向 に対して直角とした.予備実験よりアルミニ ウムを上板とした場合,チタンの溶融が十分 に行われず,またアルミニウムにスパッタが 発 生 し ア ン ダ ー フ ィ ル が 多 く 認 め ら れ た た め,チタンを上板とした場合に比較し非常に 狭い溶接範囲となった.このため以降の実験 ではチタンを上板とした.
得られた継手の外観観察,組織観察,硬さ 試験および引張せん断試験(幅 25 ㎜に機械加 工 し た も の を 使 用 )を い ず れ も 室 温 に て 行 っ た.
3.実験結果および考察
各継手の溶接条件範囲を
Fig.1
に示す.予 備実験より,アルミニウム側にビードが発生 した継手は継手強度が低下していた.よって 適 正 溶 接 の 判 定 は 裏 ビ ー ド の 発 生 状 況 に よ った.裏ビードによる判定例の一例をFig.2
に示す.レーザ出力 240W の条件では継手を 形成したが,アルミニウム側にビードは観察 されなかった.レーザ出力 320W の継手は裏 ビードが連続的に発生しているため,これよFig.1 Relation between LASER output and pulse width.
(Q=240W) (Q=280W)
(Q=320W)
○ :Good
× :Bad
Fig.2 Example of penetration bead.
(Ti/A1100, PW=5.0ms)
(Ti/A2024, Q=300W)
(Ti/A5052, Q=200W) (Ti/A1100, Q=280W)
Surface bead Penetration bead
1mm Welding direction
Fig.3 Appearances of welded joint.(PW=5.0ms)
り 大 き い レ ー ザ 出 力 の 条 件 で は 溶 接 を 行 わ な か っ た .ア ル ミ ニ ウ ム の 種 類 に 関 係 な く パ ル ス 幅 の 増 加 に 伴 い 継 手 を 得 る た め に 必 要 なレーザ出力は増加する傾向にある.これは,
パ ル ス 幅 の 増 加 に よ り 単 位 時 間 当 た り の エ ネ ル ギ ー が 減 少 し 継 手 を 得 る た め に 必 要 な 溶込みが得られなかったためと考える.
継手ビード外観の一例として,それぞれの 組合せで最大強度を示した継手を
Fig.3
に示 す.アルミニウムの種類に関係なく上板であ る チ タ ン 側 に は パ ル ス 溶 接 特 有 の 円 弧 状 の 模 様 が 認 め ら れ た .ま た , 少 量 で は あ る が ス パ ッ タ の 発 生 が 認 め ら れ た .酸 素 の 吸 収 に よ る溶接部の色調変化は観察されなかった.全 て の 継 手 の 下 板 で あ る ア ル ミ ニ ウ ム 側 に 断 続的なビードの発生が認められた.図に示す 継 手 は い ず れ も ビ ー ド の 発 生 が ラ ン ダ ム で あり,これらの条件より低いレーザ出力では 裏ビードの発生が認められなかった.図には 示 さ な い が 他 の パ ル ス 幅 に つ い て も 同 様 の 傾向を示した.継手横断面マクロ組織を
Fig.4
に示す.ア ル ミ ニ ウ ム の 種 類 に 関 係 な く 溶 込 み は 深 溶 込み型となった.溶融凝固部内および重ね合 わ せ 面 を 中 心 に ブ ロ ー ホ ー ル が 観 察 さ れ た . ブローホールの量は Ti/A1100 継手が少なく,Ti/A2024 継手および Ti/A5052 継手に多く観 察された.ブローホールの原因として重ね合 せ面に存在する空気と,Ti/A5052 継手に多く 見 ら れ る こ と か ら 合 金 元 素 と し て 含 有 し て いる Mg によるものと考えられる.
継 手 の ビ ー ド 幅 と 接 合 部 幅 の 測 定 位 置 を
Fig.5
に,測定結果をFig.6
に示す.レーザ出 力の増加に伴いビード幅,接合部幅共に増加 する傾向が認められた.接合部幅はビード幅に比較して狭く,最大ビード幅が約 1.8 ㎜を 示したのに対し約 0.6 ㎜であった.アルミニ ウ ム の 種 類 の 違 い に よ る ビ ー ド 幅 お よ び 接 合部幅に明瞭な差異は認められなかった.
Width of bonded zone Width of surface bead
Fig.5 Measurement position of width of surface bead and width of bonded zone.
150 200 250 300
0 0.5 1.0 1.5 2.0
LASER output / W Width of surface bead / mm Width of bonded zone / mm
Width of surface bead
: Ti/A1100 : Ti/A2024 : Ti/A5052 Width of bonded zone
: Ti/A1100 : Ti/A2024 : Ti/A5052
Fig.6 Measurement result of width of surface bead and width of bonded zone.(PW=5.0ms)
0
0.5 0.5
Distance from weld interface / mm
Hardness / HK0.025
: Ti/A1100, PW=5.0ms, Q=280W : Ti/A2024, PW=5.0ms, Q=300W : Ti/A5052, PW=5.0ms, Q=200W
Ti Al
Ti Al
0 200 400 600 800 1000
Fig.7 Hardness distributions of welded joint.
(Ti/A1100, Q=280W) (Ti/A2024, Q=300W) (Ti/A5052, Q=200W)
Ti
Al
500μm Fig.4 Macrostructures of welded joint.(PW=5.0ms)
継手の硬さの測定結果を
Fig.7
に示す.溶 融凝固部中央を板厚方向に測定した.全ての 継 手 の 上 板 で あ る チ タ ン に 硬 化 が 認 め ら れ た.チタンは酸素の吸収によって硬化する 3) との報告がある.しかし本実験ではアルゴン に よ り 十 分 シ ー ル ド を 施 し て い る こ と か ら , 溶 融 凝 固 部 の 硬 化 は 主 に 金 属 間 化 合 物 に よ る も の と 考 え ら れ る .い ず れ の 継 手 も 最 大 硬 さ を 示 し た 位 置 は 重 ね 合 わ せ 面 か ら や や ア ルミニウム側であり,この部分で最も多くの 化合物を生成しているものと考えられる.引張せん断試験結果を
Fig.8
に示す.いず れ の 継 手 も レ ー ザ 出 力 の 増 加 に 伴 い 引 張 せ ん 断 荷 重 は 増 加 す る 傾 向 に あ る . こ れ は Fig.5 に示すように接合部幅の増加によるも のと考えられる.しかし,Ti/A5052 継手では レーザ出力 200W 以上では引張せん断荷重の 増加は認められず,その値はわずかに減少し ていた.Ti/A5052 継手はレーザ出力 200W の 継手から裏ビードが発生し,レーザ出力の増 加に伴い連続したビードとなっていた.裏ビ ードが発生した継手は A5052 の板厚が大きく 減少しており,その部分から破断し引張せん 断荷重が減少したものと考えられる.それぞ れ の 継 手 の 最 大 引 張 せ ん 断 荷 重 と 見 か け の 引張強さによる継手効率は Ti/A1100 継手が 約 1.8kN で 99%,Ti/A2024 継手が約 1.2kN で 24%,Ti/A5052 継手が約 1.7kN で 49%であっ た.A2024 および A5052 の組合せでは継手強 度が著しく減少する結果となった.これは溶 融 凝 固 部 内 も し く は 接 合 界 面 付 近 に 存 在 す るブローホールの影響と考えられる.引 張 せ ん 断 試 験 後 の 継 手 横 断 面 マ ク ロ 写 真
を
Fig.9
に示す.写真に示す継手はいずれも最 大 引 張 せ ん 断 荷 重 を 示 し た 継 手 で あ る . Ti/A1100 継手は A1100 が溶落ちにより板厚が 減少したが母材で破断した.Ti/2024 継手は 剥離破断した.Ti/A5052 継手は多くの継手が 剥離破断したが,図に示すようにアルミニウ ム 側 に 溶 落 ち の 影 響 に よ る 板 厚 の 減 少 が 観 察された継手は最小断面から破断した.
参考文献
1)中田,牛尾:溶接学会誌 第 71 巻 第 6 (2002),6‑9
2)片山:溶接学会全国大会講演概要 第 71 集(2002‑10),F33‑34
3)日本チタン協会:チタンの加工技術 106
150 200 250 300
0 0.5 1.0 1.5 2.0
LASER output / W
Tensile shear load / kN
: Ti/A1100 : Ti/A2024 : Ti/A5052
Fig.8 Results of tensile shear test.(PW=5.0ms)
(Ti/A1100, PW=5.0ms, Q=280W)
(Ti/A2024, PW=5.0ms, Q=300W)
(Ti/A5052, PW=5.0ms, Q=200W)
500μm
Fig.9 Macro-photograph of welded joint after tensile shear test.