Author(s) 白幡, 紗良彩; 山田, 玲子; 佐々木, 胤則
Citation 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 69(1): 373‑383
Issue Date 2018‑08
URL http://s‑ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9918
Rights
メディア機器利用時の姿勢と心身様態との関連について
白幡紗良彩・山田 玲子・佐々木胤則
北海道教育大学大学院健康教育学研究室
RelationshipbetweenPostureandPsychosomaticState whenUsingMediaDevices
SHIRAHATASarasa,YAMADAReikoandSASAKITanenori
DepartmentofHealthEducation,
GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation,Sapporo
Abstracts
Inthisstudy,wesurveyedindividuals’responsestoquestionnairesadministeredthrough differentmedia,i.e.,usingpenandpaper,apersonalcomputer,asmartphoneandatablet.
Weexaminedtherelationshipbetweenpostureandpsychosomaticstatewhenusingeach mediadevice.Werecordedthesituationinwhichrespondents useddifferentpiecesof equipmentwithavideocamera.Inaddition,thedistancefromtheeyestotheobjectand theanglefromtheearholetotheshoulderofeachrespondentweremeasured.Asaresult, acorrelationwasdrawnbetweenthedistancefromtheeyestotheobjectandtheangleof theneckwhenansweringthequestionnaireusingeachmedium.Acorrelationwasfound witheachdevice,suchthattheshorterthedistancefromtheeyetotheobjectatthetime ofreply,thelargertheangleoftheneck.Basedontheseresults,weconsideritimportantto focusonthearrangementofequipmentinfrontoftheuserwhenusingmediadevices,to ensurethatsufficientdistanceismaintained,andtheneckisnotforcedintoabending position.Furthermore,wefoundthatusingmediadevicesatanearlyactivitytimecan preventtendenciestowardinternetaddiction.
Ⅰ.はじめに
近年,情報技術の進展により,様々なメディア機器を利用する機会が増加し,携帯電話やスマートフォン,
パソコンなどは日常生活に欠かせないものになっている。しかし,卒業研究において大学生のメディア機器 依存と抑うつ傾向の関連について調査をしたところ,インターネット依存傾向が高いものは,高い抑うつ傾
向,不眠傾向を持つものが多く,自尊感情は逆に低い傾向がみられた。これは,インターネットに依存する ことで睡眠時間を削ってインターネットを利用すること,不眠傾向に陥ることによってセロトニンの働きが 低下し,心身のバランスが崩れることでさらに自尊感情が低下し,抑うつ傾向が高くなったと推測された。
ただし,インターネット依存傾向が高いもののなかにはインターネットを重要なコミュニケーションツール として認識していることなどから,スマートフォンやパソコンなどのメディア機器の利用によって健康を損 なわないようにするためには,メディア機器の利用を単に制限したり,控えさせたりするのではなく,望ま しい機器の利用方法を提示する必要性が示された。
そこで本研究では,学校で最も頻度が高いと考えられる筆記姿勢を計測するために紙媒体による質問紙,
1回あたりの利用時間が最も長くなると予測されるパソコン,近年利用者数の増加により依存が懸念される スマートフォン,ICT教育の推進により導入する学校が増えているタブレットを実際に使用した個別アン ケート回答を依頼し,その利用姿勢・利用状況とインターネット依存傾向,スマホ腱鞘炎,視力等の関連要 因を計測・整理することで,メディア機器利用時の姿勢と心身様態との関連について検討し,望ましい機器 の利用方法を探ることとした。
Ⅱ.研究方法および対象
北海道教育大学教育学部札幌校の学生104名を対象として,2017年10月~12月に,本人了承のもとにメディ ア機器利用等に関するアンケート調査と同時に計測調査を行った。調査は,予め用意した質問用紙,パソコ ン,スマートフォン,タブレットを用いて記入又は入力でアンケートに回答し,その時の姿勢を計測すると いう方法で実施した。104名の対象者は,説明された所定の手順に従って記入・入力作業を行い,すべて有 効な回答および作業であると判断した(有効回答率100%)。
対象者への質問と回答の入力項目として,性別・学年等の属性は質問用紙とパソコンで,各種電子機器の 利用状況についてはスマートフォンで,インターネット依存傾向はタブレットを用いての回答・入力とした。
実際には,図1のように被験者の正面手前に質問紙,奥にパソコン,左側手前にスマートフォン,左側奥に タブレットを配置して,順次回答する形式で実施した。また,調査項目には,アンケート回答時のスマート フォン・タブレットへの移動の有無とアイヒホッフテストを加えた。
パソコン,スマートフォン,タブレットによるアンケートは,研究倫理綱領に基づいてGoogleフォームを 用いて作成し,記入や入力で回答している姿勢は右側からビデオカメラで撮影した。姿勢や距離は,質問紙,
パソコン,スマートフォン,タブレットを使用している時間の中間の画像を切り取り,目から対象物までの 距離とアンケート回答者の耳孔から肩までの角度を計測した(図2)。
図1 質問紙と機器の配置 図2 対象者の目から機器までの距離と首の角度の計測
集計は,それぞれの項目をカテゴリーごとに単純集計し,クロス検定を行った。集計と解析には,
MicrosoftOfficeExcel2016を用いた。必要に応じてχ2検定を用いて2群間比較を行い,統計上の有意差は 1%,5%とした。また,2群に分類したものは,集計の中央値を基準とした。
Ⅲ.結 果
1.対象者の基本属性とメディア機器の利用状況
対象者104名のうち男性が10名,女性が94名であったが,基礎集計で男女差が認められなかったため,男 女合わせて解析を行った。
対象者の視力,パソコン利用状況等の基本属性ついては,表1に示した。学年が低い方が,矯正後右目視 力が低く,パソコンの利用頻度が低かった。また,パソコンの1日あたりの平均利用時間が短く,パソコンを 最も利用する時間帯が遅く,携帯電話・スマートフォン所持歴が短いものの学年が低い傾向が見られた。ま た,眼鏡・コンタクトレンズ使用者の方が回答時の矯正後の視力が低いものが多かった。
パソコンを用いた入力による回答である携帯電話・スマートフォンをはじめて所持した年齢と所持歴につ いては,表2に示した。年齢が低いものほど,携帯電話・スマートフォンの所持歴が長いものが多かった。
2.質問紙を用いた回答時の姿勢と他メディア使用との関連
質問紙によるアンケート回答時の被験者の目から質問紙までの距離は,最も近いもので約17cm,最も離 表1 対象者の視力,パソコン利用状況等
表2 携帯電話・スマートフォンをはじめて所持した年齢と所持歴の関連
れたもので約49cm,中央値は約31cmであった。勉強や読書をする際の正しい姿勢は,背中をまっすぐにし て少し頭をかたむけた姿勢で,目と本の間を30cm以上離した状態とされている。対象者104名の中で,質問 紙と目の距離が30cm以上空いているものが58名,30cm以下であったものが46名と44%が十分な距離を確保 できていなかった。質問紙を用いた回答時の目から対象までの距離と他メディア使用状況との関連を表3に 示した。有意な関連が認められた項目から,質問紙による回答時の被験者の目から質問紙までの距離が遠い ほど,パソコン・スマートフォン・タブレットそれぞれの機器と目までの距離が遠く,首の角度は小さかっ た。
また,質問紙によるアンケート回答時の被験者の首の角度については,最も角度が小さいもので約32度,
最も角度が大きいもので約87度,中央値は約61度であった。頭部が前傾するほど首にかかる負担は増加する とされており,今回の結果からも用紙に記入する際の首の角度が大きいものが多く,頸椎に負担をかけてい る可能性がある。質問紙を用いた回答時の首の角度と他メディア使用状況との関連を表4に示した。有意な 関連が認められた項目から,質問紙による回答時の首の角度が大きいほどパソコン・スマートフォン・タブ
表4 質問紙を用いた回答時の首の角度と他メディア使用状況との関連 表3 質問紙を用いた回答時の目から対象までの距離と他メディア使用状況との関連
レットによる回答時の距離が近く,角度が大きかった。さらに,タブレットは置いたまま利用する被験者が 多く,最も多いスマートフォン利用時の姿勢が座った状態であった。
3.パソコン操作による回答とアンケート成績
パソコンによるアンケート回答時の被験者の目からパソコンの液晶までの距離は,最も近いもので約 33cm,最も離れたもので約64cm,中央値は約40cmであった。パソコンを使う時の望ましい姿勢は,ディ スプレイまでの距離は40cm以上にするとされている。104名の回答時の状況として,パソコンの液晶画面と 目の距離が40cm以上取っているものは93名,40cm以下だったものは11名であり,9割のものが十分な距離 を確保できていた。パソコン操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア使用状況との関連を表 5に示した。有意な関連が認められた項目から,アンケート回答時の目からパソコンの液晶までの距離が遠 いほど,各機器利用時の距離も遠く,首の角度が小さかった。
また,パソコンによるアンケート回答時の被験者の首の角度については,最も角度が小さいもので約22度,
最も角度が大きいもので約63度,中央値は約40度であり,今回利用した4つの媒体の中で,利用時の首の角 度が最も小さかった。パソコン操作による回答時の首の角度と他メディア使用状況との関連を表6に示し た。パソコンによる回答時の首の角度と関連が認められた項目から,パソコン操作時の首の角度が大きいほ ど,スマートフォン・タブレットによる回答時の首の角度が相関して大きかった。
表5 パソコン操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア使用状況との関連
表6 パソコン操作による回答時の首の角度と他メディア使用状況との関連
4.スマートフォン操作による回答とアンケート成績
スマートフォンによるアンケート回答時の被験者の目からスマートフォンまでの距離は,最も近いもので 約13cm,最も離れたもので約51cm,中央値は約28cmであった。スマートフォン利用時のスマートフォン と目との距離については,40cm以上が望ましいとされる。今回104名の回答時の状況として,スマートフォ ンと目との距離を40cm以上取っているものが4名,40cm以下のものが100名であり,大半のものが十分な 距離を確保できていなかった。スマートフォン操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア使用 状況との関連を表7に示した。スマートフォンによる回答時の目からスマートフォンまでの距離と関連が認 められた項目から,回答時の目からスマートフォンまでの距離が遠いほどタブレットとの距離が遠く,利用 時の首の角度が小さく,スマートフォンを置いたままのものが多かった。また,学年が高いものは,スマー トフォンとの距離が遠く,パソコンの利用頻度が低いものは,スマートフォンまでの距離が近かった。
また,スマートフォンによるアンケート回答時の被験者の首の角度については,最も角度が小さいもので 約16度,最も角度が大きいもので約80度,中央値は約54度であった。スマートフォン操作による回答時の首 の角度と他メディア使用状況との関連を表8に示した。スマートフォンの回答時の首の角度と関連が認めら れた項目から,スマートフォン利用時の首の角度が大きいほどタブレット利用時の首の角度が大きく,ス マートフォン・タブレット操作時それぞれの機器を置いたまま利用したものが多かった。また,回答時にス
表7 スマートフォン操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア使用状況との関連
表8 スマートフォン操作による回答時の首の角度と他メディア使用状況との関連
マートフォン・タブレットへ移動したものが多かった。スマートフォンを置いてある場所に移動して,そこ に置いたまま操作をするものが,スマートフォン利用時の首の角度が大きいという結果になった。
5.タブレット操作による回答とアンケート成績
タブレットによるアンケート回答時の被験者の目からタブレットまでの距離は,最も近いもので約 19cm,最も離れたもので約45cm,中央値は約31cmであった。タブレット利用時のタブレットと目との距 離については,40cm以上が望ましいとされる。今回104名の回答時の状況として,タブレットと目との距離 を40cm以上取っているものが7名,40cm以下であったものが97名であり,大半のものが十分な距離を確保 できていなかった。タブレット操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア機器使用状況との関 連を表9に示した。タブレットによる回答時の目からタブレットまでの距離と関連が認められた項目から,
タブレットによる回答時の被験者の目からタブレットまでの距離が遠いほど,タブレット利用時の首の角度 が小さく,スマートフォンを置いたまま利用するものが多かった。また,寝る前の携帯電話・スマートフォ ン利用時の部屋の明るさが豆電球程度のもの,携帯電話・スマートフォン所持歴が長いものは目からタブ レットまでの距離が離れていた。
また,タブレットによるアンケート回答時の被験者の首の角度については,最も角度が小さいもので約17 度,最も角度が大きいもので約84度,中央値は約54度であった。タブレット操作による回答時の首の角度と 他メディア機器使用状況との関連を表10に示した。タブレットによる回答時の首の角度と関連が認められた 項目から,タブレット操作時の首の角度が大きいほど,タブレットを置いたまま操作するものが多く,回答 時にスマートフォン・タブレットへ移動するものが多かった。
表10 タブレット操作による回答時の首の角度と他メディア機器使用状況との関連 表9 タブレット操作による回答時の目から対象までの距離と他メディア機器使用状況との関連
6.3種のメディア機器利用状況におけるクロス検定
クロス検定より,回答時のスマートフォン操作状況と有意な関連が認められた項目を表11に示した。スマー トフォンを手持ちで利用していたものの方が,タブレットも手持ちのもの,居住形態が一人暮らし・学生寮 のものが多く,携帯電話・スマートフォンを最も利用する時間帯が早く,パソコンを最も利用する時間帯が 遅いものが多かった。また,携帯電話・スマートフォンを最も利用する時間帯と関連が認められた項目を表 12に示した。携帯電話・スマートフォンを最も利用する時間帯が遅いものは,パソコンを最も利用する時間 帯が早く,インターネット依存傾向が強いものが多かった。夜寝る前のベッドや布団の中で携帯電話・ス マートフォンの利用の有無と関連が認められた項目を表13に示した。夜寝る前に携帯電話・スマートフォン を利用するものは,パソコンを利用する時刻が遅いものが多かった。パソコンの利用頻度と関連が認められ た項目を表14に示した。利用頻度が高いものがパソコンの1日あたりの平均利用時間が長いものが多かった。
表11 回答時のスマートフォン操作状況とタブレット操作状況,居住形態,
携帯電話・スマートフォン利用状況,パソコン利用状況の関連
表12 携帯電話・スマートフォンを最も利用する時間帯とパソコン利用状況,
インターネット依存傾向の関連
表13 夜寝る前の携帯電話・スマートフォンの利用の有無とパソコン利用状況の関連
Ⅳ.考 察
質問紙による回答時の被験者の目から質問紙までの距離が離れているほど,パソコン・スマートフォン・
タブレットそれぞれ機器と目までの距離が遠く,首の角度は小さかった。よって,学校現場では子どもたち がメディア機器を用いて入力することは少ないので,筆記で用紙に記入する際の姿勢を正しくすることが重 要であると考えられた。また,質問紙による回答時の首の角度が大きいほど各機器による回答時の距離が近 く,角度が大きかった。さらに,タブレットは置いたまま利用するものが多く,スマートフォン利用時の姿 勢が座った状態のものが多かった。これより,紙に記入する姿勢が座った状態での機器の利用姿勢と関連す ると考えられた。よって,紙に記入する際の首の角度を大きくしないためには,紙との距離を保つこと,機 器を利用する際の座った姿勢を正すことが必要であると考えられた。
パソコンを用いた入力における目からディスプレイまでの距離について,アンケート回答時の目からパソ コンの画面までの距離が遠いほど,各機器利用時の距離も遠く,首の角度が小さかった。よって,パソコン 利用時の目からパソコンまでの距離は,スマートフォン・タブレットなどの機器利用時の距離を保つことや 首の角度を大きくしないようにすることが有効であると考えられた。また,パソコンを利用する際の液晶や キーボードの位置などの周囲の環境が姿勢を左右することが示された。パソコンによるアンケート回答時の 被験者の首の角度の結果からは,パソコン操作時の首の角度が大きいほど,スマートフォン・タブレットに よる回答時の首の角度が大きかった。よって,パソコン利用時の首の角度を大きくしないためには,スマー トフォンやタブレットの機器の利用姿勢や機器の置き方を提示する必要があると考えられた。
スマートフォンを用いたアンケート回答時の被験者の目からスマートフォンまでの距離は,学年が高いも のは,スマートフォンとの距離が遠く,パソコンの利用頻度が低いものは,スマートフォンまでの距離が近 かった。スマートフォンを利用する時間が長くなるにつれて,目からスマートフォンまでの間隔を広く取る ようになる可能性が示された。スマートフォンを用いたアンケート回答時の被験者の首の角度については,
スマートフォンを置いてある場所に移動して,そこに置いたまま操作をするものが,スマートフォン利用時 の首の角度が大きいという結果が示された。これより,操作する際の機器の場所が,姿勢を正しくするため には必要であると思われた。よって,スマートフォンについては,機器を利用者の正面に配して,手に持っ て利用するのが望ましい利用方法であると考えられた。
タブレットを用いたアンケート回答時の被験者の目からタブレットまでの距離については,寝る前の携帯 電話・スマートフォン利用時の部屋の明るさが豆電球程度のもの,携帯電話・スマートフォン所持歴が長い ものの目からタブレットまでの距離が遠かった。このことから,スマートフォンでの操作に慣れがあるもの がタブレット操作においても十分な距離を保つことができていると考えられた。また,タブレットを用いた アンケート回答時の被験者の首の角度については,タブレット操作時の首の角度が大きいほど,タブレット を置いたまま操作するものが多く,回答時にスマートフォン・タブレットへ移動するものが多かった。この
表14 パソコンの利用頻度とパソコン利用状況の関連
結果より,タブレットは手に持った状態で操作し,機器が操作するものの正面にある状態で利用するのが望 ましいと考えられた。
以上より,スマートフォンを望ましい姿勢で利用するためには,スマートフォンを利用する時間帯を早く する,または,スマートフォンとパソコンを利用する時間帯をわけることが有用であることが推測された。
また,タブレットにおいては,タブレットを望ましい姿勢で利用するためには,学年が低いうちに望ましい 利用方法の習慣を身に付け,機器を正面に置いて利用することが必要と考えられた。今回アンケートを実施 した際には,タブレット本体しか利用しなかったが,タブレットを利用する際に机に水平に置いて利用する のは首に負担をかけ,垂直に持って利用すると手首を痛めるとされている。タブレットは,少し垂直に立て ておいて利用するのが最も望ましく,タブレットを立てかけるためのタブレットスタンドを利用することが 有効であると考えられた。
また,結果から,スマートフォンを利用する時刻が早いことによって,相対的にパソコンを最も利用する 時刻が遅くなったと考えられた。よって,インターネット依存傾向が強くならないためには,スマートフォ ンを遅い時間帯に利用することを避けることが有効であることが示唆された。パソコンの利用を早い時間で 切り上げることによって,夜寝る前にベッド・布団の中で携帯電話・スマートフォンの利用を減少させる可 能性が示された。よって,スマートフォン・パソコンの利用時間を早い時刻に行うことで,テクノストレス の影響を減らすことができることが考えられた。また,携帯電話・スマートフォン所持歴が長い者の方が機 器を正面に移動させて利用しており,所持歴が長い者は自身の利用しやすい姿勢を自分で整えて機器を利用 していると推測された。
インターネット依存傾向については,インターネット依存傾向が強い者が各メディア機器による回答時の 首の角度が大きくなることが予測されたが,関連は認められなかった。これより,メディア機器利用時の目 から機器までの距離や首の角度が,直接インターネット依存傾向にはつながらないことが捉えられた。クロ ス検定の結果では,インターネット依存傾向と関連があった項目は,携帯電話・スマートフォンを最も利用 する時間帯であった。インターネット依存傾向が強い者は,携帯電話・スマートフォンを最も利用する時間 帯が遅い場合が多かった。この結果より,インターネット依存傾向が強くならないようにするためには,メ ディア機器利用時の姿勢と同時に機器を利用する時間帯を意識することが重要と考えられた。
Ⅴ.まとめ
本研究では,質問紙,パソコン,スマートフォン,タブレットを用いて回答する形式でアンケートおよび 調査を実施した。アンケート回答内容を含め,それらの利用姿勢・利用状況とインターネット依存傾向,ス マホ腱鞘炎,視力等の関連要因を計測・整理することで,メディア機器利用時の姿勢と心身様態との関連に ついて検討し,望ましい機器の利用方法について探ることができた。
結果より,心身の健康を保つためのメディア機器を利用する際の望ましい姿勢は,機器を利用者の正面に 配し,機器との距離を十分に保つこと,首を曲げないように意識し,首を曲げずに利用できる位置に機器を 移動させて利用することが重要であると考えられた。また,必要に応じてスタンドを利用することが有効で あると考えられた。利用方法としては,パソコンや携帯電話・スマートフォンなどのメディア機器を利用す る時間を意識的に早い時刻にすることでインターネット依存傾向に陥ることなく,利用することができると 捉えられた。
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(白幡紗良彩 札幌校大学院生)
(山田 玲子 札幌校准教授)
(佐々木胤則 札幌校教授)