• 検索結果がありません。

Microsoft Word - 執行停止申立書 (最終版)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Microsoft Word - 執行停止申立書 (最終版)"

Copied!
167
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1

執行停止申立書

平成27年12月25日 那覇地方裁判所 御中 申立人訴訟代理人 弁護士 竹 下 勇 夫 弁護士 久 保 以 明 弁護士 秀 浦 由紀子 弁護士 亀 山 聡 弁護士 松 永 和 宏 弁護士 加 藤 裕 弁護士 仲 西 孝 浩

(2)

2

申立ての趣旨

1 処分行政庁が沖縄県知事に対して平成 27 年 10 月 27 日付けでした下 記公有水面埋立承認取消処分に対する執行停止決定は、本案事件の判決 確定までその効力を停止する。 記 沖縄防衛局長が平成25 年 3 月 22 日付けでした沖縄県名護市辺野古の 辺野古崎地区及びこれに隣接する水域等を埋立対象地とする普天間飛行 場代替施設建設事業に係る公有水面の埋立ての承認に係る申請に対し、 同年12 月 27 日付けで沖縄県知事がした公有水面埋立承認について、平 成 27 年 10 月 13 日付けで沖縄県知事がした公有水面埋立承認の取消処 分 2 申立費用は、相手方の負担とする との決定を求める。

(3)

3

申立ての理由

目次

第1 本申立てにおいて執行停止を求める対象となる処分(本件執行停止決 定) ... 6 1 埋立承認 ... 6 2 埋立承認取消 ... 6 3 行政不服審査法に基づく審査請求等 ... 6 4 本件執行停止決定 ... 7 第2 本件埋立承認取消の経緯と取消理由 ... 7 1 本件埋立承認取消に至る経緯 ... 7 (1) 第三者委員会の設置 ... 7 (2) 第三者委員会の検証結果 ... 8 (3) 埋立承認取消 ... 9 2 本件埋立承認取消の理由(本件埋立承認の瑕疵) ... 10 第3 本件執行停止決定が違法であること ... 10 1 概要... 10 2 行審法及び地自法は国に審査請求等の適格を本来許容していないと解 すべきこと ... 11 (1) 行審法は私人の救済を目的とする手続であること ... 11 (2) 地方自治保障という観点からも国の審査請求等の適格は本来否定 されるべきこと ... 12 (3) 国の審査請求等には客観性・公正性からの問題があること ... 15

(4)

4 (4) 国が採りうる他の制度が存すること ... 16 (5) 小括 ... 17 3 「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立」は「固有の資 格」に基づくものであること ... 17 (1) 公有水面埋立承認出願は国のみがなし得ること ... 17 (2) 実質的にも「固有の資格」に基づくことは明らかであること .... 19 4 本件執行停止決定が違法であること ... 26 (1) 本件執行停止申立ては却下されるべきであったこと ... 26 (2) 国土交通大臣による違法な執行停止決定 ... 26 5 国土交通大臣は、内閣の一員として、本件埋立ての遂行という政策目 的で行ったこと ... 27 (1) 閣議了解を受けての執行停止決定 ... 27 (2) 国土交通大臣の記者会見の内容 ... 28 (3) 行政不服審査制度の目的を逸脱した執行停止決定権限の行使が明 らかであること ... 31 第4 本件執行停止決定が抗告訴訟の対象となること... 32 1 本件執行停止決定の処分性が認められること ... 32 (1) 本件は実体法的効果を生じて現に埋立工事がなされていること . 32 (2) 昭和 54 年 12 月 19 日岐阜地判とは事案を異にすること ... 32 (3) 小括 ... 34 2 沖縄県の出訴資格が認められるべきこと ... 35 (1) 地方公共団体の出訴資格を認める見解が多数説であること ... 35 (2) 本件は「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に該当すること ... 35 (3) 本件は上命下服の関係にないこと(最判昭和 49 年5月 30 日と相違

(5)

5 すること) ... 39 (4) 地方公共団体の出訴資格が認められる場合に該当すること ... 41 3 小括... 44 第5 違法な執行停止決定により侵害される沖縄県の個別的利益 ... 45 1 公有水面埋立法第4条 ... 45 2 沖縄県の地域環境利益の侵害(公有水面埋立法第4条第1項第2号で 保護された沖縄県の利益の侵害) ... 45 (1) 公有水面埋立法第4条第1項第2号 ... 45 (2) 本件埋立対象地域の有する環境的価値 ... 46 (3) 環境保全・環境利用に係る地方公共団の計画等 ... 54 (4) 埋立のもたらす環境破壊等... 59 (5) 小括 ... 71 3 不適正・不合理な公有水面埋立により自治権が侵害されないという沖 縄県の利益の侵害(公有水面埋立法第4条第1項第1号により保護された 利益の侵害) ... 72 (1) 公有水面埋立法の仕組み ... 72 (2) 本件埋立てによる沖縄県の自治権侵害 ... 73 (3) 小括 ... 130 4 まとめ ... 130 第6 本件執行停止処分の効力は停止されなければならないこと(執行停止 の要件) ... 132 1 本件執行停止処分により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要が あること... 132

(6)

6 第1 本申立てにおいて執行停止を求める対象となる処分(本件執行停止決 定) 1 埋立承認 平成25 年 3 月 22 日、沖縄防衛局長は、沖縄県名護市辺野古の辺野 古崎地区及びこれに隣接する水域等を埋立対象地とする普天間飛行場 代替施設建設事業に係る公有水面の埋立て(以下「本件埋立」という。) の承認に係る申請(以下「本件埋立承認出願」という。)を行った(甲 B27)。 同年12 月 27 日、当時の沖縄県知事仲井眞弘多は、本件埋立承認出 願について、承認をした(以下「本件埋立承認」という。)。 2 埋立承認取消 平成27 年 10 月 13 日、現在の沖縄県知事翁長雄志は、第2項におい て後述するとおり本件埋立承認に取り消しうべき瑕疵が認められたこ とから、本件埋立承認を取り消した(以下「本件埋立承認取消」という。) (甲B29)。 3 行政不服審査法に基づく審査請求等 平成27 年 10 月 13 日、沖縄防衛局は、行政不服審査法(以下「行審 法」という。)によるとして、国土交通大臣に対し、本件埋立承認取消 を取り消す裁決を求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)(甲 G6)及び本件審査請求に対する裁決があるまで本件埋立承認取消の効 力を停止することを求める執行停止申立(以下「本件執行停止申立」と いう。)(甲G7)をした(以下、両者をあわせて「本件審査請求等」と いう。)。

(7)

7 4 本件執行停止決定 本件執行停止申立について、平成27 年 10 月 27 日、国土交通大臣は、 本件埋立承認取消は、本件審査請求に対する裁決があるまでの間、その 効力を停止する旨の決定(以下、「本件執行停止決定」という。)をした (甲G8)。 なお、同日の閣議において、国土交通大臣が、地方自治法(以下「地 自法」という。)に基づく代執行により、本件埋立承認取消の取消しに着 手することが閣議了解され、翌 28 日、国土交通大臣は、沖縄県知事に 対し、地自法第245 条の8第1項に基づき、本件埋立承認取消を取り消 すことを勧告した。 第3において後述するとおり、沖縄防衛局には本件審査請求等の適格 (以下「請求等適格」という。)は認められないものであり、国土交通大 臣は本件審査請求等を却下しなければならないものであった。それにも かかわらず、国土交通大臣は、内閣の一員として、本件埋立を遂行する ために、みずから地自法に基づく代執行の手続をとり、代執行の手続期 間中に本件埋立の工事を行うという、行政不服審査法の制度目的とは関 係のない目的をもって、違法に本件執行停止決定を行ったものであり、 本件執行停止決定の違法性は明らかである。 第2 本件埋立承認取消の経緯と取消理由 1 本件埋立承認取消に至る経緯 (1) 第三者委員会の設置 沖縄県知事は、平成 27 年1月 26 日、「普天間飛行場代替施設建設 事業に係る公有水面埋立承認手続に関する第三者委員会」(以下、「第 三者委員会」という。)を設置した。

(8)

8 第三者委員会の設置目的は,「普天間飛行場代替施設建設事業に係る 公有水面埋立承認手続(以下「承認手続」という。)に関し,法律的な 瑕疵の有無を検証する」ことであり(設置要綱第1条)、「委員会は, 承認手続に関する事項について,法律的な瑕疵の有無について検証し, 委員会の意見を知事に報告する」(同第3条)ものとされ、委員は「環 境問題や法律の専門家など優れた識見を持つ者」(同2条2項)から6 名が選任をされた。 第三者委員会は、平成27 年1月 28 日に準備会合を開催し、同年2 月6日から同年7月7日にかけて合計 13 回の委員会を開催して検証 を行い、同年7月16 日付で「検証結果報告書」(以下「検証結果報告 書」とはこれを指す。)を提出した。 (2) 第三者委員会の検証結果 検証結果報告書の結論は、「本件公有水面埋立出願は,以下のように 公有水面埋立法の要件を充たしておらず,これを承認した本件埋立承 認手続には法律的瑕疵がある。 第1に,『埋立ての必要性』について は,①本件埋立対象地についての『埋立ての必要性』については合理 的な疑いがあること,②審査において『普天間飛行場移設の必要性』 から直ちに本件埋立対象地(辺野古地区)での埋立ての『必要性』が あるとした点に審査の欠落があること,③その審査の実態においても 審査が不十分であることなどから,本件埋立承認出願が『埋立ての必 要性』の要件を充足している と判断することはできず,法的に瑕疵が あると考えられる。第2に,法第4条第1項第1号の『国土利用上適 正且合理的ナルコト』との要件についても,本件埋立により得られる 利益と本件埋立により生ずる不利益を比較衡量して,総合的に判断し

(9)

9 た場合,『国土利用上適正且合理的ナルコト』とは言えず, 法第4条 第1項第1号の要件を充足していないものであり,法的に瑕疵がある。 第3に,法第4条第1項第2号については,①知事意見や環境生活部 長意見に十分に対応しておらず環境影響評価法第 33 条第3項の趣 旨に反すること,②環境保全 図書の記載は定量的評価ではなく生態系 の評価が不十分であること,③具体性がなく,明らかな誤りの記載が ある等様々な問題があること等からして,その環境保全 措置は,『問 題の現況及び影響を的確に把握』したとは言い難く,『これに対する措 置が適正に講じられている』とも言い難い。さらに,その程度が『十 分』とも認め 難いものであり,『其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付 十分配慮セラレタルモノナルコト』の要件を充足していないものであ り法的に瑕疵がある。第4に,法第4条第1項第3号については,本 件埋立承認出願が『法律ニ基ク計画ニ違背』するか否かについて,十 分な審査を行わずに『適』と判断した可能性が高く,『生物多様性国家 戦略 2012-2020』及び『生物多様性おきなわ戦略』については,その 内容面において法第4条第1項第3号に違反している可能性が高く, さらに,琉球諸島沿岸海岸保全基本計画については,同計画の手続を 履践していない点において, 結果的に同第3号に違反しており法的に 瑕疵があると考えられる」というものであった。 (3) 埋立承認取消 専門性を有する有識者からなる第三者委員会の判断が示されたこと から、沖縄県知事は検証結果報告書を踏まえて慎重に検討を行った結 果、本件埋立承認について、公有水面埋立法の第4条第 1 項(同法第 42 条3項で承認に準用)の第1号及び第2号の要件を充足していない

(10)

10 (承認の判断に瑕疵がある)ものと判断した(なお、同項3号につい ては、十分な審査を行っていないとして判断過程の瑕疵が認められて いるものであるが、十分な審査を行えば要件が充足されるか否かにつ いての踏み込んだ判断がなされていないため、取消事由とはされなか った。)。 そして、聴聞手続において、沖縄防衛局長から提出された陳述書に 示された意見を慎重に検討したが、別紙「取消処分の理由」に示すと おり、沖縄防衛局長の意見には理由がなく本件埋立承認に瑕疵がある と認められたため、平成27 年 10 月 13 日に、本件埋立承認取消をし た。 2 本件埋立承認取消の理由(本件埋立承認の瑕疵) 本件埋立承認取消の理由は、別紙「取消処分の理由」のとおりであり、 本件埋立承認出願については公有水面埋立法第4条第1項第1号及び同 項第2号の要件を満たしていないものであり、かつ、これらの要件の判 断に係る考慮要素の選択や判断の過程は合理性を欠いていたものである から、本件埋立承認は違法であり、取り消しうべき瑕疵が存したもので ある。 第3 本件執行停止決定が違法であること 1 概要 法定受託事務に係る審査請求(地自法第255 条の2)について、現行 法には、国の審査請求等の適格を否定する明文規定は存しない。 しかし、行政不服審査制度は、私人の個別的な権利利益の簡易迅速な 救済を制度趣旨とするものであり、この制度趣旨より、本来国には請求 等適格が認められないものと言うべきであり、例外的に、私人とまった

(11)

11 く同様の立場で個別の権利義務が侵害された場合、すなわち「固有の資 格」(一般私人の立ちえない立場)に基づかない場合にのみ、審査請求等 の適格が認められるものと言うべきである。 審査請求人・執行停止申立人である沖縄防衛局長は国の機関であり、 一般公益のために公有水面埋立承認出願をしたものであって、私人では ないから、行審法による審査請求等の適格は認められないのであるから、 審査請求等は不適法であるから却下されなければならないものであった。 しかるに、国土交通大臣(処分行政庁)は、普天間飛行場代替施設の 名護市辺野古への移設という内閣の一致した方針に従い、執行停止申立 人は適格を欠いているにもかかわらず、違法に執行停止決定をしたもの である。 2 行審法及び地自法は国に審査請求等の適格を本来許容していないと解 すべきこと (1) 行審法は私人の救済を目的とする手続であること 行審法は、「公権力の行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行 政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続 による国民の権利利益の救済を図る」ことを目的としている(第1条)。 すなわち、行政不服審査は、行政作用により、個別の権利利益の侵 害を受けた私人を救済するための制度であって、外交・国防上の利益 といった一般的公益のための制度ではなく、また、行政主体間の紛争 解決を制度の対象とするものではない。 個別的な権利利益を侵害された私人の簡易・迅速な救済という制度 趣旨より、本来国が審査請求等の適格を有しないことは当然である。 国の機関でありながら、私人と同視して審査請求等の適格が認めら

(12)

12 れるのは例外的なものというべきであるから、その判断は厳格になさ れなければならない。 (2) 地方自治保障という観点からも国の審査請求等の適格は本来否定さ れるべきこと ア 地方分権推進委員会の基本方針 地自法第 255 条の2は、平成 11 年の地方分権一括法による地自 法改正による地方公共団体の事務の区分の再構成等が行われたこと に伴い設けられたものである。 地方分権一括法による地自法改正は、地方分権推進法に基づいて 設置された地方分権推進委員会の報告、勧告を尊重して制定された ものであるが、その基本的な考え方は、国と地方公共団体の関係を 上下・主従ではなく対等・協力の関係とし、両者の調整は最終的に は司法的判断によるというものである。 イ 平成8年3月 29 日中間報告 地方分権推進委員会の平成8年3月29 日付中間報告においては、 機関委任事務について「1.主務大臣が包括的かつ権力的な指揮監 督権をもつことにより、国と地方公共団体とを上下・主従の関係に 置いている。2.知事、市町村長に、地方公共団体の代表者として の役割と国の地方行政機関としての役割との二重の役割を負わせて いることから、地方公共団体の代表者としての役割に徹しきれない。 3.国と地方公共団体との間で行政責任の所在が不明確になり、住 民にわかりにくいだけではなく、地域の行政に住民の意向を十分に 反映させることもできない仕組みになっている。4.機関委任事務 の執行について、国が一般的な指揮監督権に基づいて瑣末な関与を

(13)

13 行うことにより、地方公共団体は、地域の実情に即して裁量的判断 をする余地が狭くなっているだけではなく、国との間で報告、協議、 申請、許認可、承認等の事務を負担することとなり、多大な時間と コストの浪費を強いられている。5.機関委任事務制度により、都 道府県知事が各省庁に代わって縦割りで市町村長を 広く指揮監督 する結果、国・都道府県・市町村の縦割りの上下・主従関係による 硬直的な行政システムが全国画一的に構築され、地域における総合 行政の妨げとなっている。」という弊害があることから、「地方分権 推進法の趣旨に即して、国と地方公共団体との関係を抜本的に見直 し、地方自治の本旨を基本とする対等・協力の関係とする行政シス テムに転換させるためには、この際機関委任事務制度そのものを廃 止する決断をすべき」と機関委任事務を廃止すべきとし、国と地方 公共団体と調整については「国と地方公共団体との役割分担を明確 にすることにより、両者の間の調整は基本的には国が優越的な地位 に立つ行政統制によるのではなく、公正かつ透明な立法統制・司法 統制にできるだけ委ねることとすべき」とし司法判断によるべきと されていた。 ウ 平成9年10 月9日付第4次勧告 平成9年 10 月9日付第4次勧告においては、国と地方公共団体 との間の係争処理の仕組について、「機関委任事務制度を廃止し、国 と地方公共団体の新しい関係を構築することに伴い、対等・協力を 基本とする国と地方公共団体との間で万が一係争が生じた場合には、 国が優越的な立場に立つことを前提とした方法によりその解決を図 るのではなく、国と地方公共団体の新しい関係にふさわしい仕組み

(14)

14 によって係争を処理することが必要となる。この仕組みは、地方公 共団体に対する国の関与の適正の確保を手続面から担保するもので あると同時に、地方公共団体が処理する事務の執行段階における 国・地方公共団体間の権限配分を確定するという意義をも有するも のであるから、対等・協力の関係にある国と地方の間に立ち、公平・ 中立にその任務を果たす審判者としての第三者機関が組み込まれて いるものであることが必要である。そして、この第三者機関は、審 判者である以上、国と地方公共団体の双方から信頼される、権威の ある存在でなければならない。さらに、行政内部でどうしても係争 の解決が図られないときは、法律上の争いについて最終的な判定を 下すことを任としている司法機関の判断を仰ぐ道が用意されている ことも必要である。」とされていた。この報告、勧告を最大限に尊重 して、地方分権一括法による地自法の改正がなされ、地自法第 11 章(国と普通地方公共団体との関係については地自法第245 条ない し第252 条)の規定が設けられてものである。 エ 小括 以上の経緯よりすると、法定受託事務について、各大臣等に対す る審査請求等を認めることは、国と地方公共団体を対等・協力関係 とする平成 11 年の地自法改正の理念に適合しないことになる。実 際、地自法 255 条の2については、「地方自治の本旨の観点から見 直されるべき制度である」(塩野宏「行政法Ⅲ(第4版)」246 頁) との疑問が示されている。 それにもかかわらず、法定受託事務について審査請求等をするこ とができるとしたのは、私人の権利利益の保護を重視したためであ

(15)

15 る(佐藤文敏「地方分権一括法の成立と地方自治法の改正(三)」自 治研究 76.2.98)。 法定受託事務について審査請求等を認めることには厳しい批判が あり、「加害者は、国家・公共団体なのであるから、被害者たる私人 の簡易迅速な救済手続を設けておく必要性」(塩野宏「行政法Ⅱ(第 5版補訂版)」9頁)が高いという点でかろうじて制度の合理性が認 められていることよりすれば、地自法第255 条の 2 に基づく審査請 求等について、「固有の資格」に基づかないとして国に適格が認めら れるのは、行政作用によって個別の権利利益を侵害されて簡易迅速 な救済の必要性の高い純然たる私人とまったく同様に評価される場 合に厳格に限定されなければならないものと言うべきである。 (3) 国の審査請求等には客観性・公正性からの問題があること 判断の客観性や公正性という点からも、国の審査請求等の適格を認 めることには重大な問題がある。 すなわち、国の審査請求等の適格を認めるということは、国という 同一の行政主体が、審査請求等をしてこれに対する判断をすることに なる。 国が一定の行政目的の実現のためにした行為について地方公共 団 体の行った処分について、その地方公共団体による処分の当否を国が 判断するならば、国の行政目的実現のために結論ありきの偏頗な判断 がなされるおそれがある。 したがって、国の機関がその行為によって実現しようとした目的を 実質的に踏まえて、私人の個別的な権利義務と同質と言えるか否かが 厳密に検討されてなければならないものと言うべきである。

(16)

16 (4) 国が採りうる他の制度が存すること ア 国の行政不服審査制度の審査請求等の適格を否定しても、国と地 用公共団体との間の係争について、解決の手段を奪うことになるも のではない。 イ 原告が国(沖縄防衛局)に対する公有水面埋立承認取消通知書に おいて教示したとおり、国(沖縄防衛局)は、公有水面埋立承認の 取消訴訟(さらに必要があれば執行停止申立)をすることができる。 ウ また、地自法第11 章の手続による解決も可能である。すなわち、 平成11 年の地自法改正は、「対等・協力を基本とする国と地方公共 団体との間で万が一係争が生じた場合には、国が優越的な立場に立 つことを前提とした方法によりその解決を図るのではなく、国と地 方公共団体の新しい関係にふさわしい仕組みによって係争を処理す ることが必要」との認識に基づいてなされたものである。 国と地方公共団体との関係については、地自法第 11 章の規定に よって調整を行うことを予定しているものであり、国が地方公共団 体の処分に不服がある場合には、これらの規定による解決が可能で ある。 すなわち、地自法第 245 条の5第1項による是正の要求や同法 245 条の7第1項による是正の指示を行うことができ、これに対し て、地方公共団体は、不服がある場合には、国地方係争処理委員会 に審査の申出をすることができ、第三者の判断を得られる仕組みが 準備されているものである。また、地方公共団体が国地方係争処理 委員会に審査の申出をしない場合には、国は不作為の違法確認訴訟 (地自法第251 条の7)を提起して紛争の解決をすることも可能で

(17)

17 ある。 (5) 小括 以上のとおり、行政不服審査制度は、行政作用により個別の権利利 益の侵害を受けた私人を簡易迅速に救済するための制度である以上、 本来国に審査請求等の適格を認めることはできないものであって、国 が個別の権利利益の侵害を受けた私人とまったく同じ立場にある場合 (「固有の資格」に基づかない場合)にのみ、例外的に審査請求等の適 格が認められるにすぎないものである。 この判断は、審査請求者・執行停止申立人たる国が、当該行為によ って実現しようとした目的を実質的に踏まえて、厳格になされるべき ものである。 そして、次に述べるとおり、本件埋立承認申請が「固有の資格」に 基づくことは明らかである。 3 「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立」は「固有の資 格」に基づくものであること (1) 公有水面埋立承認出願は国のみがなし得ること 公有水面埋立法は、国と私人は明確に区別して規定しており、私人 が事業者である場合と国が事業者である場合を区別して、別の条文で 規定しているものである。 すなわち、私人が埋立事業主体となる場合には同法2条により都道 府県知事の「免許」が必要であると定めている(「埋立ヲ為サムトスル 者ハ都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二 百五十二条の十九第一項ノ指定都市ノ区域内ニ於テハ当該指定都市ノ 長以下同ジ)ノ免許ヲ受クヘシ」)のに対し、国が埋立事業主体となる

(18)

18 場合には同法 42 条1項により都道府県知事の「承認」が必要である と定めている(「国ニ於テ埋立ヲ為サムトスルトキハ当該官庁都道府県 知事ノ承認ヲ受クヘシ」)ものである。 公有水面埋立法は、私人が事業主体となる場合には埋立の免許申請 という制度を設け、他方、国が埋立の事業主体となる場合には埋立の 承認申請という別個の制度を設けているものであり、私人は、埋立の 承認申請を行うことはできない。すなわち、埋立承認申請者の地位に 私人が立つことはできず、国のみが埋立承認申請をなし得るものであ るから、「固有の資格」に基づくことは明らかである。 公有水面埋立法の規律の内容をみて、私人が事業主体となる場合(免 許)と国が事業主体となる場合(承認)について、規律を異にしてい るものである。例えば、同法 22 条1項は「埋立ノ免許ヲ受ケタル者 ハ埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ遅滞ナク都道府県知事ニ竣功認 可ヲ申請スヘシ」と定めて私人が事業主体となる場合は竣工認可手続 が必要であるとするのに対し、国が埋立事業主体となる場合は、同法 42 条2項で「埋立ニ関スル工事竣功シタルトキハ当該官庁直ニ都道府 県知事ニ之ヲ通知スヘシ」として、国の竣工認可手続は免除されてい る。また、私人が事業主体となる場合は、同法 13 条で「埋立ノ免許 ヲ受ケタル者ハ埋立ニ関スル工事ノ著手及工事ノ竣功ヲ都道府県知事 ノ指定スル期間内ニ為スヘシ」と定めているが、この規定は国が事業 主体となる場合には準用されていない。そのほか、免許料の徴収にか かる規定や罰則の規定も国が事業主体となる場合には準用されていな いなど、公有水面埋立法において、私人が事業主体となる場合と国が 事業主体となる場合とで異なる扱いをし、国については一般私人が立

(19)

19 ちえないような立場を定めているのである。 以上のとおり、公有水面埋立法は、「承認」と「免許」を異なる制度 とし、「承認」申請は私人がすることができないのであるから、沖縄防 衛局長が、「固有の資格」に基づいて、公有水面埋立「承認」申請を行 ったものであることは明らかである。 (2) 実質的にも「固有の資格」に基づくことは明らかであること ア 条約に基づく義務履行のために行うものであること (ア) 埋立必要理由書 「普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認申 請書」の「埋立必要理由書」(甲B27)には、「埋立の動機並びに 必要性」として、「わが国の周辺地域には、依然として核戦力を 含む大規模な軍事力が集中しているとともに、多数の国が軍事力 を近代化し、軍事的な活動を活発化させるなど、安全保障環境は 一層厳しさを増している。こうした中、わが国に駐留する米軍の プレゼンスは、わが国の防衛に寄与するのみならずアジア太平洋 地域における不測の事態の発生に対する抑止力として機能して おり、極めて重要である。また、沖縄は南西諸島のほぼ中央にあ ることやわが国のシーレーンにも近いなど、わが国の安全保障上、 極めて重要な位置にあるとともに、周辺国から見ると、大陸から 太平洋にアクセスするにせよ、太平洋から大陸へのアクセスを拒 否するにせよ、戦略的に重要な位置にある。こうした地理的な特 徴を有する沖縄に、高い機動力と即応性を有し、様々な緊急事態 への対処を担当する米海兵隊をはじめとする米軍が駐留してい ることは、わが国の安全のみならずアジア太平洋地域の平和と安

(20)

20 定に大きく寄与している。普天間飛行場には、米海兵隊の第3海 兵機動展開部隊隷下の第1海兵航空団のうち第 36 海兵航空群な どの部隊が駐留し、ヘリなどによる海兵隊の航空輸送の拠点とな っており、同飛行場は米海兵隊の運用上、極めて大きな役割を果 たしている。他方で、同飛行場の周辺に市街地が近接しており、 地域の安全、騒音、交通などの問題から、地域住民から早期の返 還が強く要望されており、政府としても、同飛行場の固定化は絶 対に避けるべきとの考えであり、同飛行場の危険性を一刻も早く 除去することは喫緊の課題であると考えている。わが国の平和と 安全を保つための安全保障体制の確保は、政府の最も重要な施策 の一つであり、政府が責任をもって取り組む必要がある。日米両 政府は、普天間飛行場の代替施設について、以下の観点を含め多 角的に検討を行い、総合的に判断した結果、移設先は辺野古とす ることが唯一の有効な解決策であるとの結論に至った。」とされ、 「埋立の効果」については「本埋立てを行うことで、普天間飛行 場の代替施設が建設され、日米両政府の喫緊の課題となっている、 普天間飛行場の早期の移設・返還を実現して、沖縄県の負担軽減 を図ることが可能となる。また、在日米軍再編が着実に実施され ることにより、日米安全保障体制が強化され、わが国の安全と共 にアジア太平洋地域の安全にも寄与することが可能となる。」と している。 すなわち、本件埋立は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互 協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本 国における合衆国軍隊の地位に関する協定(以下、「日米地位協

(21)

21 定」という。)の第2条の「施設及び区域」の提供義務の履行の ためになされるものである。(「日本国とアメリカ合衆国との間の 相互協力及び安全保障条約」のことを、以下、「安保条約」とい う。) 沖縄防衛局長は、外交・防衛にかかる条約上の義務の履行とい う目的をもって、公有水面埋立法上の埋立承認手続を経て、一連 の基地建設のための事業を遂行しようとしているものであり、こ れは一般私人が立ちえない、まさに国家としての立場においてな される一連の行為にほかならない。 また、埋立必要理由に示された利益は、外交・防衛上の一般的 公益そのものであって、行政不服審査制度による保護の対象であ る私人の個別的権利利益ではない。 (イ) 執行停止申立書・審査請求書における沖縄防衛局長の主張 執行停止申立書・審査請求書において、沖縄防衛局長は、埋立 ての必要性及び公共性として、「本件埋立てにより、普天間飛行 場周辺に旧住する住民等の生命、身体及び財産に対する具体的な 危険性等を除去するという利益が大きいことや、同飛行場の辺野 古への移設という日米間の合意を実現することにより、日米間の 信頼関係はもとより、日米同盟を堅持することになり、外交・国 防上の利益が非常に大きいことや、さらに、宜野湾市による効率 的なまちづくりの進展及び多大な経済的効果の創出という利益 が得られることから、本件埋立ての必要性及び公共性は高い」(執 行停止申立書7頁、審査請求書7頁)と主張している。 また、執行停止が必要であるとする理由について、執行停止申

(22)

22 立書において、「普天間飛行場周辺における航空機による事故等 に対する危険性及び騒音等の被害の除去が困難となり、万一、事 故等が生起すれば、同飛行場周辺に居住する住民等の生命、身体 及び財産に甚大な被害を及ぼすことになり、当該住民等の生命、 身体及び財産に係る安全を確保し、生活環境を保全することが出 来なくなる。」(58 頁)、「米国との信頼関係はもとより、日米安保 体制を基盤として、日米両国がその基本的価値及び利益を共にす る国として、安全保障面をはじめ、政治及び経済の各分野で緊密 に協調・協力していく日米同盟に悪影響を及ぼす可能性があり、 外交・防衛上重大な不利益が生じることになる。」(60 頁)とし、 まさに政府見解たる「普天間飛行場の危険性」と「米国との信頼 関係への悪影響」を主張している。 ここで主張されているのは、まさに一般公益そのものであって、 行政不服審査制度の保護の対象である私人の個別的な権利利益 とはまったく異質なものであり、行政不服審査制度の対象となる ものではない。 沖縄防衛局長が、「固有の資格」に基づいて、本件埋立承認出 願を行ったものであることは、執行停止申立書・審査請求書にお ける主張からも明らかである。 以 上 のと お り 、「 普 天 間飛 行場 代 替施設 建設 事業 に係 る公 有 水面埋立」は、条約の履行のための一連の事業の一環としてなさ れるものであり、また、埋立てによる利益は外交・防衛上の一般 公益であって行政不服審査制度が救済の対象とする私人の個別 的な権利利益でないことより、「固有の資格」(一般私人が立ちえ

(23)

23 ないような立場にある状態)においてなされていることは明らか である。 イ 現政権の立場(平成22 年5月 28 日閣議決定) 上記のとおり、本件承認の取得はまさに、国が国としての立場に おいて行うものであり、その目的においておよそ私人と同列の関係 で行うものではあり得ないが、このことは、現内閣の閣議決定に基 づく方針からも根拠付けることが出来る。 いうまでもなく、沖縄防衛局は防衛大臣の指揮命令に服し、防衛 大臣及び国土交通大臣はともに内閣の構成員である。そして、内閣 は、総理大臣をその「首長」として組織され、総理大臣が任免権を 有する各国務大臣はその統括化に形成される行政組織を、「主任の国 務大臣」として分担管理し(内閣府設置法第6条)、かつ、内閣は「閣 議にかけて決定した方針に基づいて」一体的に行動する(内閣法第 6条)。平成19 年 5 月 9 日の衆議院外務委員会における法制局長官 答弁においても、内閣の一体性の保持は憲法上の要請であるとされ ている。つまり、国家行政組織の中にあって、防衛大臣と国土交通 大臣はともに内閣の構成員としての一体性を有し、閣議決定に基づ く方向性を同じくしている。 そして、「平成22年5月28日に日米安全保障協議委員会におい て承認された事項に関する当面の政府の取組について」と題する閣 議決定において、国は、「日米安全保障条約は署名 50 周年を迎えた が、特に最近の北東アジアの安全保障情勢にかんがみれば、日米同 盟は、引き続き日本の防衛のみならず、アジア太平洋地域の平和、 安全及び繁栄にとっても不可欠である。このような日米同盟を21

(24)

24 世紀の新たな課題にふさわしいものとすることができるように、幅 広い分野における安全保障協力を推進し、深化させていかなければ ならない。同時に、沖縄県を含む地元の負担を軽減していくことが 重要である。このため、日米両国政府は、普天間飛行場を早期に移 設・返還するために、代替の施設をキャンプシュワブ辺野古崎地区 及びこれに隣接する水域に設置することとし、必要な作業を進めて いくとともに、日本国内において同盟の責任をより衡平に分担する ことが重要であるとの観点から、代替の施設に係る進展に従い、沖 縄県外への訓練移転、環境面での措置、米軍と自衛隊との間の施設 の共同使用等の具体的措置を速やかに採るべきこと等を内容とする 日米安全保障協議委員会の共同発表を発出した。」と決定され、現政 権はこれを承継している。 平成 26 年6月 13 日に公布(施行は公布後2年以内であり、現時 点では施行されていない。)された行政不服審査法の改正法の第1条 1項の目的規定には、「簡易迅速かつ公正な手続」と明記され、手続 の公正性が前提であることが明らかにされているが、これは創設的 な規定ではなく、公正な手続という当然の事理を、その重要性に鑑 み、目的として明記したものと解される。 しかし、辺野古移設を「唯一の解決策」として一体的方針を共有 している内閣の内部において、「一般私人たる沖縄防衛局」と「公正・ 中立な審査庁たる国土交通大臣」と位置付けて、その判断の中立性・ 公正性を保つことは余りにも無理があり、判断権者の公正・中立と いう基本的な前提が欠落していることは明らかである。 ウ 日米合同委員会合意・閣議決定・防衛大臣告示は私人がなしえな

(25)

25 いこと 日米両政府は平成 26 年6月 20 日の日米合同委員会で、米軍普 天間飛行場移設先となる名護市辺野古沖で、普天間飛行場の代替施 設の工事完了の日まで常時立ち入り禁止となる臨時制限区域を設定 するとともに、日米地位協定に基づき代替施設建設のため日本政府 が同区域を共同使用すること(FAC6009 キャンプ・シュワブの水域 の使用条件の変更及び一部水域の共同使用について)、普天間飛行場 代替施設建設事業の実施に伴い、キャンプ・シュワブ内の作業ヤー ドを整備するために必要な工事の実施(FAC6009 キャンプ・シュワ ブの施設の整備に係る事業の実施について)を合意した。 そして、同年7月1日の閣議において、「『日米地位協定』第2条 に基づく,米軍使用施設・区域の共同使用等について,御決定をお 願いします。今回の案件は,沖縄防衛局が普天間飛行場代替施設建 設のため,キャンプ・シャワブの一部水域を共同使用するもの」(加 藤内閣官房副長官)と説明し、「『日本国とアメリカ合衆国との間の 相互協力及び安全保障条約第六条に基づく地位に関する協定』第2 条に基づく施設及び区域の共同使用,使用条件変更及び追加提供に ついて」を閣議決定し、同月2日に防衛大臣が告示(防衛省告示第 123 号)した。 「普天間飛行場代替施設建設事業」のために、第一制限区域の設 定を日米合同委員会において日米両国間で合意をし、この日米合意 に基づいて閣議決定し、防衛省告示をしているものであり、これは、 まさに私人は絶対に行うことのできない埋立事業であることを示し ているものにほかならない。

(26)

26 4 本件執行停止決定が違法であること (1) 本件執行停止申立ては却下されるべきであったこと 行政不服審査制度は、私人の個別的な権利利益の救済を目的とする ものであり、国は私人と同一の立場に立つ場合(「固有の資格」に基づ かない場合)でなければ、審査請求等の適格を有しないものである。 しかるに、公有水面埋立法は、私人が事業主体となる「免許」と国 が事業主体となる「承認」を明確に区別して規律しているのであるか ら、私人が「承認」申請をすることは不可能であり、本件公有水面埋 立承認出願が「固有の資格」に基づくことは客観的・形式的にも明ら かである。 また、実質的に検討しても、本件埋立承認出願は、外交・防衛上と いう一般公益のため、条約上の義務の履行のための一連の手続として なされたものであり、その目的は閣議決定をされているものである。 また、本件埋立など基地建設事業を実施するために日米合同委員会合 意、閣議決定、防衛大臣告示によって臨時制限区域の設定がなされて いるがこれは一般私人は行うことができず国のみがなしうるものであ り、沖縄防衛局長による本件埋立承認出願が「固有の資格」に基づく ことはあまりにも明らかというべきであった。 審査請求人・執行停止申立人である沖縄防衛局長には審査請求等の 適格は認められず、本件執行停止申立ては不適法であるから、却下さ れなければならないものであった。 (2) 国土交通大臣による違法な執行停止決定 国土交通大臣は、「本件承認取消しによって、申立人が行う本件事業 の継続が不可能となるため、普天間飛行場周辺に居住する住民等が被

(27)

27 る航空機による事故等に対する危険性及び騒音等の被害の継続や、米 国との信頼関係や日米同盟に悪影響を及ぼす可能性があるという外 交・防衛上の不利益が生じ、これらの重大な損害を避ける緊急の必要 性があるとする申立人の主張は相当であると認められる」として、本 件執行停止決定をした。この本件執行停止決定に示された理由は、国 のみがなしうる内容、一般公益そのものである。 沖縄防衛局長が、私人とまったく同一の立場ではなく、「固有の資格」 に基づいて審査請求等をしたもので審査請求等の適格を欠くことが明 白であるにもかかわらず、違法に本件執行停止決定がなされたことは あまりにも明らかである。 5 国土交通大臣は、内閣の一員として、本件埋立ての遂行という政策目 的で行ったこと (1) 閣議了解を受けての執行停止決定 本件執行停止決定がなされた日である、平成 27 年 10 月 27 日午前 の閣議において、改めて辺野古への移設を「唯一の解決策」と位置づ けた上で、「本件承認には何ら瑕疵はなく、これを取り消す処分は違法 である上、本件承認の取消しにより、日米間で合意された普天間飛行 場の辺野古への移設が出来なくなることで、同飛行場が抱える危険性 の継続、米国との信頼関係に悪影響を及ぼすことによる外交・防衛上 の重大な損害等が生じることから、本件承認の取消しは、著しく公益 を害することが明らかである。このため、法定受託事務である本件承 認の取消処分について、その法令違反の是正を図る必要があるので、 公有水面埋立法の所管大臣である国土交通大臣において、地方自治法 に基づく代執行等の手続に着手することになる」との閣議了解がなさ

(28)

28 れた。 閣議了解に基づき、国土交通大臣は、本件承認は違法であるとの立 場で、代執行を行うものとされ、その翌日である平成 27 年 10 月 28 日、地方自治法第 258 条の8第1項に基づき、沖縄県知事に対し、本 件埋立承認取消しを取り消すことを勧告した。 (2) 国土交通大臣の記者会見の内容 上記閣議後の記者会見において、国土交通大臣は本件執行停止決定 と代執行への着手を同時に公表したものであるが、その会見の内容は、 以下のとおりである 記 (国土交通大臣) まず閣議の関連で、辺野古沖の公有水面埋立承認の取消しに 関する執行停止の決定及び閣議口頭了解についてであります。 沖縄県知事の辺野古沖の公有水面埋立承認の取り消しについ ては、去る10 月 14 日に沖縄防衛局長より審査請求及び執行停 止の申立てがございました。このうち執行停止の申立てについ て、沖縄防衛局長及び沖縄県知事の双方から提出された書面を 審査した結果、承認取消しの効力を停止することとし、本日、 沖縄防衛局及び沖縄県に執行停止の決定書を郵送いたしまし たのでご報告いたします(中略)また本日の閣議において普天 間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立法に基づく埋 立承認の取消しについてが、閣議口頭了解されました。この閣 議口頭了解においては翁長知事による承認取消しは、なんら瑕 疵のない埋立承認を取り消す違法な処分である上、本件承認取

(29)

29 消しにより、普天間飛行場が抱える危険性の継続、米国との信 頼関係に悪影響を及ぼすことによる外交、防衛上の重大な損害 など、著しく公益を害することが確認されるとともに、その法 令違反の是正を図るため、公有水面埋立法を所管する国土交通 大臣において、代執行等の手続に着手することが、政府の一致 した方針として了解されました(略)。 (記者) 普天間基地。執行停止をすれば工事は再開できる。あえて代 執行の手続をした理由は。 (国土交通大臣) 先ほど申し上げましたとおり10 月 14 日に沖縄防衛局長から なされた審査請求と執行停止の申立てに対し、これまで審査庁 として法令の規定に基づく審査をし、本日、普天間飛行場が抱 える危険性の継続などの重大な侵害を避けるため必要性があ ると認め、執行停止の決定をしたところでございます。国交省 としては、審査請求の審査の過程で今回の翁長知事による取消 処分は、公有水面埋立法に照らし違法であると判断するに至り ました。すなわち仲井真前知事が行った埋立承認は適法になさ れたにも関わらず、これを取り消した翁長知事の処分は違法で あると判断したものであります。一方、本日開催された閣議に おきまして、翁長知事による違法な承認取消処分が、著しく公 益を害することが確認されるとともに、その法令違反の是正を 図るため、国土交通大臣において代執行等の手続に着手するこ とが、政府の一致した方針として口頭了解されております。こ

(30)

30 のため公有水面埋立法を所管する国土交通大臣といたしまし て、翁長知事の行った取消処分について、法令違反の是正を図 るべく、地方自治法に基づく代執行の手続に着手するとしたも のでございます。 (記者) 行政不服審査法の審査の中で違反であると判断したのであ れば、その法律に基づいて審査結果を出せばいいのではないか。 (国土交通大臣) 審査請求の裁決を行うべきかというご質問でしょうか。 (記者) そうです。 (国土交通大臣) 本日の閣議で国土交通大臣として代執行の手続に着手する ということが、政府の一致した方針として口頭了解をされたわ けでございます。公有水面埋立法を所管する国土交通大臣とし て、まずは代執行の手続を優先して行うということにいたした いと考えております。 (中略) (記者) 辺野古。今後、この行政不服審査法と地方自治法の2本の方 律でこの問題について取り組んでいくということなのか。行政 不服審査法で裁決を出した後も代執行は進めていくというこ とか (国土交通大臣)

(31)

31 まずは本日閣議口頭了解で、公有水面埋立法を所管する国土 交通大臣に対して、地方自治法に基づく代執行の手続を行うこ とが確認されましたので、地方自治法に基づく代執行の手続を まずは優先して行いたいと思います。その後状況を見て審査請 求のほうの手続についてどうするかということを考えていく。 同時並行というよりは、代執行の手続を優先してまず行うとい うことです。 (3) 行政不服審査制度の目的を逸脱した執行停止決定権限の行使が明 らかであること 国土交通大臣は、内閣の構成員として、本件埋立承認取消しは違法 であるとの閣議了解の立場に立つことになり、凡そ公平・中立な判断 者の立場に立ちえないことは鮮明になったにもかかわらず、閣議了解 の同日に本件執行停止決定を行ったものである。 また、国土交通大臣が、代執行に着手をしたということは、本件 埋立承認取消しを違法であると判断したということであるが、違法 であるとの認識に達したのであれば、裁決はできるということであ る。したがって、裁決をすれば足りることであり、執行停止をしな ければならない「緊急の必要性」は認められないことになる。それ にもかかわらず、国土交通大臣が自ら代執行をして、本件埋立承認 取消しを取り消そうとすることは、裁決をする意思はないといって いることに等しい。 そうすると、本件執行停止決定は、裁決とは関係なしに、代執行 手続が進められている間も埋立工事を行うための方便として使われ ているものにほかならないということになる。また、国土交通大臣

(32)

32 が、本件埋立承認取消しが違法であるとの認識に立ちながら、裁決 をせず、閣議了解に基づく代執行を行うということは、内閣の一員 であることを優先し、閣議了解に基づく代執行を優先させるという 目的で、行政不服審査手続を、棚上げ・塩漬けするものにほかなら ない。 これは、行政不服審査制度の目的を逸脱した執行停止決定権限の 悪用というほかはない。 第4 本件執行停止決定が抗告訴訟の対象となること 1 本件執行停止決定の処分性が認められること (1) 本件は実体法的効果を生じて現に埋立工事がなされていること 本件執行停止決定は、形式的には沖縄県知事翁長雄志を名宛人とす るものであるが、知事はあくまで沖縄県の機関として名宛人になって いるものであり、実質的な名宛人は沖縄県である。 そして、執行停止決定により、単なる審査手続上の効果にとどまら ず、埋立承認取消の効力が停止されることによって実際に埋立工事が 可能となり、現に工事がなされるという実体法的効果を生じて、第5 で述べるとおり、沖縄県に不利益が生じているものである。 そして、この侵害に対して抗告訴訟の提起(及びこれに伴う執行停 止申立)以外に司法的救済方法はないのであるから、処分性が認めら れることは明らかというべきである。 (2) 昭和 54 年 12 月 19 日岐阜地判とは事案を異にすること ア 岐阜地裁判決 岐阜地方裁判所昭和54 年 12 月 19 日判決・判決判例タイムス 409 号 137 頁(以下「岐阜地裁判決」という。)は、収用委員会の収用

(33)

33 裁決に対する審査請求に付随してなされた執行停止申立てに対する 停止しない旨の決定について、抗告訴訟の対象とならないとしてい るが、本件とは、事案を異にするものであり、同判決は、本件が抗 告訴訟の対象となることを否定する論拠とはならない。 イ 岐阜地裁判決は執行停止申立人を名宛人とする不停止決定に係る 判断であること 岐阜地裁判決の事案は、執行停止を申し立てたが執行停止を認め なかった決定であり、それ自体として実体法的効果はないものであ る。 これに対し、本件は、沖縄県は執行停止を申立てられ、執行停止 決定の名宛人となったという真逆な事案である。すなわち、執行停 止決定を受けて実体法的効果を生じ、現に埋立工事がなされている ものである。平成 27 年 10 月 27 日に本件執行停止決定がなされ、 翌10 月 28 日に決定が送達されて執行停止の効力が生じると、同日 (28 日)に国(沖縄防衛局)は翌 29 日から公有水面の埋立工事に 着手することを内容とする「工事着手届出書」提出し、同月 29 日 に工事に着手したものである。このように、執行停止決定によって 埋立工事が可能となり、直接かつ具体的に権利関係に影響を受けて いるものであり、埋立工事がなされて自然環境が失われてしまえば その影響は不可逆的なものであるから、執行停止決定は終局的な影 響を与えるものであり、その処分性は明らかである。 ウ 岐阜地裁判決の事案は別に司法による救済手段が存していたこと 岐阜地裁判決は、「執行停止に関する処分の瑕疵は、裁決に対する 抗告訴訟によってはその救済を受け難いものではある」ことを認め

(34)

34 ながら、「審査請求人は、右手続とは別に係争処分に対する抗告訴訟 の手続内で執行停止を申立てることにより、司法機関の判断による 仮の救済を受けることができる(行政事件訴訟法二五条)以上、審 査手続に付随してなされる執行停止に関する処分は抗告訴訟の対象 とならないと解しても、審査請求人の権利保護に欠けることとはな らない」として、抗告訴訟の対象となりえないとしたものである。 すなわち、行政事件訴訟法8条によれば、審査請求によるか抗告訴 訟によるかについては自由選択主義が採用されており、かつ、審査 請求前置の場合であっても、3か月の経過あるいは著しい損害を避 けるため緊急の必要がある場合には処分に対する抗告訴訟の提起と これに伴う執行停止が許される以上、敢えて審査請求における執行 停止に対して権利救済を図る必要がないというに過ぎない。 岐阜地裁の事案では、執行停止を求めるために、別途裁判所に取 消訴訟を提起して執行停止を申し立てる方途があるが、本件では執 行停止がなされ、これによって原初的に不利益を蒙っているので、 執行停止決定を争うより他に司法による救済手段がない。執行停止 に関する処分の瑕疵によって、自己の法的利益を侵害される限り、 当然その救済を受け得ると解さなければ、沖縄県は裁決に対する抗 告訴訟によっては救済され得ない不利益を被りながらも何らの権利 救済を受け得ないことになるものであり、岐阜地裁判決の事案とは まったく相違するものである。 (3) 小括 以上のとおり、本件執行停止決定は、抗告訴訟の対象となる処分で あることは明らかである。

(35)

35 2 沖縄県の出訴資格が認められるべきこと (1) 地方公共団体の出訴資格を認める見解が多数説であること 抗告訴訟は、国民の権利自由を保護するために設けられた訴訟制 度であること等を理由に、財産権の侵害を理由とする場合等以外に ついては、地方公共団体の抗告訴訟の出訴資格に消極的な見解も存 する。 しかし、比較法的にみても、地方公共団体の出訴資格を一般的に 否定することに根拠はない。ドイツ、フランス、英米諸国において も、地方公共団体の出訴資格は認められている(塩野宏「地方公共 団体の出訴資格」兼子仁・阿部泰隆編『自治体の出訴権と住基ネッ ト』117 頁以下、人見剛「分権改革と自治体法理」48 頁、白藤博行 「国と地方公共団体との間の紛争処理の仕組み」公法研究62 号 200 頁以下、阿部泰隆「区と都の間の訴訟(特に住基ネット訴訟)は法 律上の争訟に当たらないか(下)」自治研究83 巻1号7頁以下等。)。 わが国の学説においても、地方公共団体の抗告訴訟の出訴資格を 認めることが多数説であるとされる(阿部泰隆「意見書」(東京地方 裁判所平成 26 年(行ウ)第 152 号大間原子力発電所建設差止等請 求事件に提出)等。)。 (2) 本件は「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に該当すること ア 最判昭和27 年7月8日(警察予備隊違憲訴訟) 最高裁判所昭和27 年7月8日判決・民集6巻9号783頁は、「裁 判所は具体的な争訟事件が提起されないのに将来を予想して憲法及 びその他の法律命令等の解釈に対し存在する疑義論争に関し抽象的 な判断を下すごとき権限を行い得るものではない」と判示し、具体

(36)

36 的事件を離れて抽象的に憲法適合性を判断する抽象的規範統制訴訟 は「法律上の争訟」とはいえないものとし、事件性が「法律上の争 訟」の要件であることを示した(宇賀克也「行政法概説Ⅱ 行政救 済法(第5版)」109 頁)。 イ 最判昭和56 年4月7日(板まんだら事件) 最高裁判所昭和56 年4月7日判決・民集 35 巻3号 443 頁は、「裁 判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、裁 判所法三条にいう『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権 利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが 法令の適用により終局的に解決することができるものに限られる (最高裁昭和三九年(行ツ)第六一号同四一年二月八日第三小法廷 判決・民集二〇巻二号一九六頁参照)。したがつて、具体的な権利義 務ないし法律関係に関する紛争であっても、法令の適用により解決 するのに適しないものは裁判所の審判の対象となりえない、という べきである。」と判示した。 すなわち、事件性とともに、法令の適用により解決可能であるこ と(法的事項)であることが、「法律上の争訟」の要件であることを 示したものである。 本件は、第5で述べるとおり、沖縄県の具体的な利益の侵害が問 題となっているもので具体的紛争性(事件性)が認められ、かつ、 裁判所に判断が求められている事項は、信仰上の教義といったもの でなく、行政不服審査法の解釈という法令の適用により終局的に解 決することができるもの(法的事項)であるから、同最判の定義に 照らしても、本件は、「法律上の争訟」に該当するものである。

(37)

37 ウ 最判平成14 年7月9日(宝塚市パチンコ条例事件) なお、判例においては、最高裁判所平成 14 年7月9日判決民集 56 巻 6 号 1134 頁(以下「平成 14 年判決」という。)は、「国又は 地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の 財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には,法律上の争 訟に当たるというべきであるが,国又は地方公共団体が専ら行政権 の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は,法 規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって, 自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできない から,法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるもので はなく,法律に特別の規定がある場合に限り,提起することが許さ れるものと解される。」と判示し、「法律上の争訟」の範囲に限定を 加えている。 平成 14 年判決は、学説からこぞって批判を受けているものであ り、そもそも判例変更を免れ得ないものというべきであるが、本件 は、平成14 年判決とは事案を異にするものであり、平成 14 年判決 による限定の射程は、本件には及ばないものである。 平成 14 年判決は、「財産権の主体として自己の財産上の権利利益 の保護救済を求めるような場合」を「法律上の争訟」性が認められ る典型としてあげているものであり、「財産上の権利利益」の保護救 済を求める場合でなければ、凡そ司法的救済を求めることはできな いとしているものではない。 平成 14 年判決の事案は、宝塚市が、規制行政を行う主体として、 国民に対して、行政上の義務の履行を求めたものであり、その射程

(38)

38 は、「国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟」に限定されな ければならず、不当に拡張されてはならないものである。この点に つき、人見剛「大間原発行政訴訟に関する意見書」4頁以下は、「平 成14 年判決が『法律上の争訟』性を否定したのは、『国民に対して 行政上の義務の履行を求める訴訟』である。すなわち、平成 14 年 判決の射程は、行政上の義務の民事執行を否定するという点に限ら れると理解できる。この判決を根本的に批判する塩野宏博士も、こ の『判決の結論を維持する論拠となりうるのは、おそらく、民事執 行法は自力救済の禁止が厳格に妥当する私人相互の権利実現のため のものであって、行政上の義務履行確保の制度を自ら用意できる行 政主体には適用されないという民事執行不能論ではないかと考えら れる…。そして、本件は、民事執行法以前の給付判決を求める本案 訴訟であるので、民事執行法を持ち出すに由無く、議論を早めに決 着させるために法律上の争訟論に頼ったというのである』と論じて いる。実際、平成14 年判決の調査官解説が、『法律上の争訟』性を 認めることの具体的問題として想定した、裁判所が『行政権の執行 力獲得の手段として利用されることになる』という問題点は、行政 が私人を相手に行政上の義務履行を求めて提起する訴訟にこそ関わ っている…平成 14 年判決の『法律上の争訟』該当性を否定される 国又は地方公共団体が提起する訴訟は、通常考えられるものよりず っと限られており、『専ら行政権の主体として国民に対して行政上の 義務を求める訴訟』に限られるものであり、本件訴訟は、これに当 たるものではないことは明らかである」としている。 本件は、沖縄県が、規制行政の主体として、国民に対して行政上

(39)

39 の義務の履行を求めるものではないから、平成 14 年判決の射程外 である。 刑事訴訟が「法律上の争訟」に該当することは当然であり、私法 上の権利・利益の侵害でなければ「法律上の争訟」に該当しないと の理解はなり立ちえないものである。前述のとおり、平成 14 年判 決は、「財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求 めるような場合」を「法律上の争訟」性が認められる典型としてあ げたものと理解すべきものである。 本件は、独立した法主体間の、現実の具体的対立性のある紛争で あって、地域環境利益等の侵害が争点となっており、法を適用する ことにより終局的に解決される紛争であるから、「法律上の争訟」に 該当するものである。 (3) 本件は上命下服の関係にないこと(最判昭和 49 年5月 30 日と相違 すること) 最高裁判所昭和49 年5月 30 日判決・民集 28 巻4号 594 頁(大阪 府国民健康保険審査決定取消請求事件)は、団体委任事務に関する処 分に対する審査庁の判断に対して処分庁の側から争った事件として、 大阪市の国民健康保険の被保険者証の不交付処分に対し、大阪府国民 健康保険審査会が行った不交付処分の取消しと被保険者と認定する旨 の裁決に対して大阪市が出訴したという事案である。 この事案において、最判昭和49 年5月 30 日は、結論として大阪市 の出訴適格を否定しているが、以下に述べるとおり、本件は同最判の 射程外である。 同判決は、国民健康保険法が「国は健康保険事業の運営が健全に行

(40)

40 われるよう努めなければならない」(同法4条1項)と、国民健康保険 事業が国家の社会保障制度の一環をなす本来的な国の責務に属する行 政事務であることを宣明し、かつ、「都道府県は、健康保険事業の運営 が健全に行われるように、必要な指導をしなければならない」(同条2 項)として、都道府県の国民健康保険事業における指導監督の立場を 明らかにした上で、その指導監督権限の在り方として都道府県知事の 付属機関たる国民健康保険審査会を設けたものと位置づけ、その様な 国と都道府県、そして、国民健康保険の関係に鑑みれば、「保険給付等 に関する処分の審査に関する限りにおいて、審査会と保険者たる大阪 市とは、一般的な上級行政庁とその指揮監督に服する下級行政庁と同 様の関係に立ち、審査会の裁決に優越的効力が認められる。」と判示し ている。 これに対し、本件において国土交通大臣は公有水面埋立承認に係る 事務を所管する大臣として地自法255 条の2第1号により審査庁の地 位を有するところ、公有水面埋立法上、国土交通大臣には、わずかに 免許前の工事用以外の工作物設置許可に際する報告等が定められてい る程度であり、上記判示に含まれるような、「指揮監督」権は何ら定め られていないのであるから「上級下級行政庁と同様の関係性」は存し ない。 このことに加えて、事務の実質に鑑みても、公有水面の埋立ては各 地方における土地利用と密接に関連しており、公水法の定める免許要 件である「土地利用の適正」「環境保全及び災害防止への十分な配慮」 はまさに、その地方の事務を司る沖縄県知事にこそ適切な判断が可能 な事項であって、「国家の責務として国がその運営に責任を負うべき社

参照

関連したドキュメント

自己最高記録 Personal Best.. 生年月日/Date of Birth

(※)Microsoft Edge については、2020 年 1 月 15 日以降に Microsoft 社が提供しているメジャーバージョンが 79 以降の Microsoft Edge を対象としています。2020 年 1

前項においては、最高裁平成17年6月9日決定の概要と意義を述べてき

茨城工業高等専門学校 つくば国際会議場 帰国子女特別選抜 令和5年2月12日(日) 茨城工業高等専門学校. 外国人特別選抜

附 箱1合 有形文化財 古文書 平成元年7月10日 青面金剛種子庚申待供養塔 有形文化財 歴史資料 平成3年7月4日 石造青面金剛立像 有形文化財

・平成29年3月1日以降に行われる医薬品(後発医薬品等)の承認申請

平成 28 年 7 月 4

北区の高齢化率は、介護保険制度がはじまった平成 12 年には 19.2%でしたが、平成 30 年には