た利益の侵害)
(1) 公有水面埋立法の仕組み
公有水面埋立法第4条は、当該地方公共団体の公益を適切に保護す るため、都道府県知事に、第1項第1号『国土利用上適正且合理的ナ ルコト』の判断権限を与えているものである。沖縄防衛局長は、審査 請求書・執行停止申立書において、公有水面埋立法の解釈について、
「埋立法第42条第1項の承認は、第1号法定受託事務であるところ
(埋立法第51条第1号)、公有水面埋立ての承認が法定受託事務とし て都道府県知事の事務とされたのは(埋立法第51条第1号及び第4 2条第1項)、造成された土地の利用が概ね一地方の利害関係に繋がる ものであるから(別添資料12 処分庁注 山口真弘・住田正二著「公有 水面法」)、当該地方の実情に詳しい都道府県知事の判断に委ねるのが 合理的と考えられたことによるものと考えられる」としている。
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都道府県知事に承認権限を与えているのは、公有水面埋立ては、当 該地域に重大なインパクト、深刻な不利益を与える可能性があること から、公有水面埋立法第4条第1項第1号は、不適正・不合理な公有 水面埋立てによって、当該地方公共団体の利益が侵害される場合には 当道府県知事が公有水面埋立てを承認しないという権限を付与するこ とで、不適正・不合理な公有水面埋立によって当該地方公共団体の利 益が侵害されないという利益を保護しているものである。
(2) 本件埋立てによる沖縄県の自治権侵害
ア 自治権侵害に係る主張の概要
(ア) 憲法第92 条による地方自治権の保障の趣旨
a 中央政府の統治権の根拠は、憲法前文に「国政は、国民の厳 粛な信託による」とあるとおり、社会契約、すなわち主権者た る国民の「信託」にあるとされる、地方自治体の統治権も、憲 法制定権力である国民からの信託によるものである。すなわち、
国民が、国とは別に「地方公共団体」を設け、国と地方自治体 の双方に、統治権を分配して信託したものであり、国と地方公 共団体は、並立・対等の関係である。
憲法制定権力たる国民が、地方自治体の統治権(地方自治権)
を保障したのは、基本的人権の保障のためにほかならない。日 本国憲法は、国家といえども「侵すことのできない永久の権利」
として、基本的人権を保障しているものであり(11 条、97 条)、
統治機構も人権保障のために存するものである。そして、国民 の人権保障のために、他と区別される社会的一体性を備えた地 域の住民が、その最も身近な地域社会を基礎に地方公共団体を
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形成し、地方公共団体の自己決定に基づいて、地方公共団体の 統治を行うことを、憲法制定権力たる国民が選択したものであ る。
したがって、住民の憲法上の権利を擁護することは地方自治 体の責務であって、地方自治権として保障されているものであ り、国家が、抽象的な国益を理由に、不当な介入をして、地方 公共団体の自己決定権を侵害し、地域住民の権利を侵害するこ とは、「地方自治の本旨」(92条)を侵害することとなり、憲法 上、許容されない。
b ここに言う「地方自治の本旨」には、住民自治と団体自治の 二つの要素があるとされ、住民自治とは、地方自治が住民の意 思に基づいて行われるという民主主義的要素であり、団体自治 とは、地方自治が国から独立した団体に委ねられ、団体自らの 意思と責任の下でなされるという自由主義的・地方分権的要素 であるとされる。
(イ) 米軍基地の過重負担による沖縄県の自治権制約の実情
本件埋立ては、日本の滑走路、弾薬庫、艦船の接岸可能な護岸 といった本格的、恒久的な基地建設のために行われるものであり、
沖縄県に米軍基地を固定化するものにほかならない。
米軍に対しては、特別な取決めがない限りわが国の法令の適用 がないと解釈・運用されているところ、施設・区域(米軍基地)
の提供の在り方及び米軍・軍人等・その家族の法的地位を定めて いる日米地位協定は、米軍を規制するどころか、第6条において 排他的管理権を定めるなど逆に広範に米軍の特権を認める内容
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となっており、わが国の主権や地方公共団体の自治権の行使が直 接的に制約されている。
そのため、沖縄における米軍基地の存在は、沖縄の振興開発を 進める上で大きな制約となっていることはもとより、その運用等 により周辺住民をはじめ県民生活に様々な影響を与えている。
日本の国土面積のわずか 0.6 パーセントに過ぎない狭い沖縄県 に、在日米軍専用施設面積の約 74 パーセントに及ぶ広大な面積 の米軍基地が存在している。米軍基地は、県土面積の 10 パーセ ントを占め、とりわけ人口や産業が集中する沖縄島においては、
約 18 パーセントを米軍基地が占めている。さらに、沖縄周辺に は、28 か所の水域と20 ヵ所の空域が米軍の訓練区域として設定 されるなど、陸地だけでなく海、空の使用も制限されている。
こうした過重な米軍基地の存在は、望ましい都市形成や交通体 系の整備並びに専業基盤の整備など地域の振興開発を図る上で 大きな障害となり、街の中心地に基地を持つ沖縄島中部の主要都 市では、周辺集落間の交通網が遮断されている。また、基地周辺 の住宅・商業地域はゾーニングもされないままスプロール化して できたため、住宅等が密集し、道路整備などが不十分な状況にな っている。
また、広大な米軍基地の存在は、県民生活や自然環境に様々な 影響を及ぼしており、とりわけ日常的に発生する航空機騒音によ る基地周辺住民の健康への影響や、戦闘機・ヘリコプター等米軍 機の墜落事故及び油脂類・赤土等の流出、実弾演習による山林火 災や被弾事故等、米軍基地に起因する事件・事故等による県民生
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活及び環境への影響が問題となっている。
米軍飛行場(嘉手納飛行場及び普天間飛行場)周辺においては、
依然として環境省の定める環境基準値を超える航空機騒音が発 生しており、地域住人の日常生活及び健康への影響が懸念されて いる。また、基地周辺の学校では、授業が度々中断されるなど教 育面でも影響が出ている。
キャンプ・ハンセン演習場では、度重なる実弾演習や、それに 伴う山林火災の発生等により、大切な緑が失われ、山肌がむき出 しになるなど、かけがえのない自然環境が損なわれている。その 他、同演習場では、無数の不発弾が存在し、その処理には莫大な 費用と長い年月を要することが予想される。
米軍航空機関連の事故は、復帰後、平成24年12 月末現在で5 40 件(うち墜落43 件)発生している。航空機事故は、一歩間違 えば住民を巻き込む大惨事になりかねないものであり、周辺住民 はもとより県民に大きな不安を与えている。
平成 10 年7月にキャンプ・ハンセン内で発生した米海兵隊所 属のUH-1Nヘリコプター墜落事故をはじめ、平成 11 年4月 にはCH-53Eヘリコプターが北部訓練所の沖合に墜落する事 故(乗員4名死亡)、同年6月にはAV-8ハリアー機が嘉手納 飛行場を離陸後、滑走路に墜落する事故、平成 14 年8月には嘉 手納基地所属のF-15C戦闘機が沖縄本島の南約60マイル(約 100キロメートル)の海上に墜落する事故、平成16 年8 月13日 には沖縄国際大学構内への米海兵隊CH-53Dヘリコプター墜 落事故、平成18年1月17日には嘉手納基地所属のF-15C戦
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闘機が嘉手納飛行場から北東へ 55 マイルの訓練区域内の海上へ 墜落する事故、平成20年 10 月24 日には嘉手納飛行場のエアロ クラブ所属のセスナ機が、名護市真喜屋の畑地に墜落した事故が 発生し、県民に大きな不安と衝撃を与えた。
その他、米軍人等による刑法犯罪は、沖縄県警察本部の統計に よると、昭和 47年の日本復帰から平成24 年12月末までに5,801 件にのぼり、そのうち凶悪事件が 570件、粗暴犯が1,045件も発 生するなど、県民の生命、生活及び財産に大きな影響を及ぼして いる。
かかる自然環境、生活環境破壊や事件・事故による沖縄県民の 被害が生じているにもかかわらず、日米地位協定により、自治権 の行使が制約され、基地内への立ち入り等もできないため、沖縄 県が環境保全のために行政権を行使することもできず、また、沖 縄県警察の捜査権も著しい制約を受けている。
(ウ) まとめ
以上のとおり、米軍基地が建設されるということは、自治権 を直接的に制約し、自治権の空白地帯を設定するものにほかなら ないが、沖縄県においては、米軍基地が県土面積の約 10 パーセ ントを占め、とりわけ人口や産業が集中する沖縄島においては約 18 パーセントを米軍基地が占めている。その結果、地域振興開発 が著しく阻害され、日常的に頻発する環境や県民の生活への基地 被害に対する自治権に基づく監督行政も制約され、様々な基地被 害の発生は後を絶たない。
巨大な自治権の空白地域が存在し、地方公共団体が自律的にそ