(1) 本件は実体法的効果を生じて現に埋立工事がなされていること
本件執行停止決定は、形式的には沖縄県知事翁長雄志を名宛人とす るものであるが、知事はあくまで沖縄県の機関として名宛人になって いるものであり、実質的な名宛人は沖縄県である。
そして、執行停止決定により、単なる審査手続上の効果にとどまら ず、埋立承認取消の効力が停止されることによって実際に埋立工事が 可能となり、現に工事がなされるという実体法的効果を生じて、第5 で述べるとおり、沖縄県に不利益が生じているものである。
そして、この侵害に対して抗告訴訟の提起(及びこれに伴う執行停 止申立)以外に司法的救済方法はないのであるから、処分性が認めら れることは明らかというべきである。
(2) 昭和54 年12 月19 日岐阜地判とは事案を異にすること ア 岐阜地裁判決
岐阜地方裁判所昭和54年12月19日判決・判決判例タイムス409 号 137 頁(以下「岐阜地裁判決」という。)は、収用委員会の収用
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裁決に対する審査請求に付随してなされた執行停止申立てに対する 停止しない旨の決定について、抗告訴訟の対象とならないとしてい るが、本件とは、事案を異にするものであり、同判決は、本件が抗 告訴訟の対象となることを否定する論拠とはならない。
イ 岐阜地裁判決は執行停止申立人を名宛人とする不停止決定に係る 判断であること
岐阜地裁判決の事案は、執行停止を申し立てたが執行停止を認め なかった決定であり、それ自体として実体法的効果はないものであ る。
これに対し、本件は、沖縄県は執行停止を申立てられ、執行停止 決定の名宛人となったという真逆な事案である。すなわち、執行停 止決定を受けて実体法的効果を生じ、現に埋立工事がなされている ものである。平成 27 年 10 月 27 日に本件執行停止決定がなされ、
翌10 月28 日に決定が送達されて執行停止の効力が生じると、同日
(28 日)に国(沖縄防衛局)は翌 29 日から公有水面の埋立工事に 着手することを内容とする「工事着手届出書」提出し、同月 29 日 に工事に着手したものである。このように、執行停止決定によって 埋立工事が可能となり、直接かつ具体的に権利関係に影響を受けて いるものであり、埋立工事がなされて自然環境が失われてしまえば その影響は不可逆的なものであるから、執行停止決定は終局的な影 響を与えるものであり、その処分性は明らかである。
ウ 岐阜地裁判決の事案は別に司法による救済手段が存していたこと 岐阜地裁判決は、「執行停止に関する処分の瑕疵は、裁決に対する 抗告訴訟によってはその救済を受け難いものではある」ことを認め
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ながら、「審査請求人は、右手続とは別に係争処分に対する抗告訴訟 の手続内で執行停止を申立てることにより、司法機関の判断による 仮の救済を受けることができる(行政事件訴訟法二五条)以上、審 査手続に付随してなされる執行停止に関する処分は抗告訴訟の対象 とならないと解しても、審査請求人の権利保護に欠けることとはな らない」として、抗告訴訟の対象となりえないとしたものである。
すなわち、行政事件訴訟法8条によれば、審査請求によるか抗告訴 訟によるかについては自由選択主義が採用されており、かつ、審査 請求前置の場合であっても、3か月の経過あるいは著しい損害を避 けるため緊急の必要がある場合には処分に対する抗告訴訟の提起と これに伴う執行停止が許される以上、敢えて審査請求における執行 停止に対して権利救済を図る必要がないというに過ぎない。
岐阜地裁の事案では、執行停止を求めるために、別途裁判所に取 消訴訟を提起して執行停止を申し立てる方途があるが、本件では執 行停止がなされ、これによって原初的に不利益を蒙っているので、
執行停止決定を争うより他に司法による救済手段がない。執行停止 に関する処分の瑕疵によって、自己の法的利益を侵害される限り、
当然その救済を受け得ると解さなければ、沖縄県は裁決に対する抗 告訴訟によっては救済され得ない不利益を被りながらも何らの権利 救済を受け得ないことになるものであり、岐阜地裁判決の事案とは まったく相違するものである。
(3) 小括
以上のとおり、本件執行停止決定は、抗告訴訟の対象となる処分で あることは明らかである。
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