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史跡「石城山神籠石」保存のための石塁のエッジ処理と変位計測管理

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Academic year: 2022

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史跡「石城山神籠石」保存のための石塁のエッジ処理と変位計測管理

山口大学 正 ○近久 博志, 復建調査設計 正 來山 尚義 光市 太田 隆一, 河原 剛 復建調査設計 横手 了, 岡本 良徳, 佐々木杏奈

1.はじめに

山口県光市東端に位置する国指定史跡「石城山神籠石」は, 古代山城跡の一 つと考えられており, 石城山の

8

合目付近に, 延長約

2,553m

の列石や土塁, 門 や水門が鉢巻き状にめぐらされている. このうち, 谷地形部には「東水門」「北 水門」「西水門」「南水門」と呼ばれる排水構造物が築造されていて, 近年, 一 部の石塁に変状が著しくなっており, 今後,如何なる方法で良好な状態で保存 していくかが重要な課題となってきている.

しかしながら, 大規模な保存工事には予算確保などの課題も多く, 解決には

相当の時間がかかるのが現状である. このため, 訪問者の安全を確保し, 保存工事計画を立案するための計 測管理計画を立案した 1)

.

この計測管理計画では, 図-1 に示すように, 日常的に行う日常計測調査(目視観 察,写真撮影など)の結果, 異常が確認された場合, あるいは大雨や地震などによって変状が懸念される場 合には詳細計測調査(レーザ・プロファイラ測量など)を

行う計画にしている.

本論文は, 得られた計測結果の中から,レーザ・プロフ ァイラ測量と撮影された写真画像を使った石塁の変位計測 システムについて概説する.

2.精密写真測量

ここで用いる精密写真測量は, 航空写真測量などで良く 知られている技術であり, 数十m離れた位置から撮影した 複数枚の(ステレオ・ペアな)写真から, 撮影された対象物の三 次元座標(形状や大きさ)を算定しようとするものである.最近, 著 しい発展を遂げた画像処理技術が, これまで特殊とされてきた写 真測量を安価で手軽な技術にすることを実現した. 特殊な機器や 設備がなくとも, 撮影位置や撮影条件に特に制約を加えることな く精密写真測量が実施できるようになっている.

なお, 筆者らが開発した精密写真測量システムでは, 対象物を 異なる位置から撮影した複数枚の(ステレオ・ペアな)写真から, 直接, レンズのひずみ曲収差などの内部標定要素や, 撮影 位置やカメラの傾きなどの外部標定要素をパソコンによっ て算定することができる2)

.

3.レーザ・プロファイラ(LP)測量

レーザ・プロファイラにより水門の三次元座標を計測し た. 北水門の測量結果を図-2に示す. また, 図-3にその一部 を拡大して示す. 測量結果は密な点の集合であり, 対象構 造物上の点密度は最大

15mm

程度である.

図-1 計測管理の流れ

図-3 レーザ・プロファイラ測量結果(拡大)

図-3

-2 レーザ・プロファイラ測量結果

キーワード 写真測量, 計測管理, 文化遺産, 保全計画, レーザ・プロファイラ

連絡先 〒755-8611 山口県宇部市常盤台2丁目16番1号 山口大学 イノベーション推進機構TEL0836-85-9980

面的連続 データ

縁抽出等の色情 報処理が容易 画像座標が容易

に算定可

モデル座標の 算定解析の手間

が大きい

写真座標

(石塁の 縁取り)

不連続 点

群データ

モデル座標の 算定が容易 多量のモデル座

標の取得可

境界や縁の抽出 手間が大きい

モデル 座標

データ種類 長所 短所 画像処理

レー

図-4 精密写真測量とLP測量の比較とモデル座標化 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑769‑

Ⅲ‑385

(2)

4.精密写真測量と LP 測量を組み合わせた画像解析

精密写真測量と

LP

測量には図-4に示すような特徴があり, 両者の特徴を活かすために開発した

VGE

システム3)を用いて モデル座標化を行い, 面的計測を行う. 「北水門」での実施例 を以下に示す. 図-5に, 精密写真測量と

LP

測量を組み合わせ た画像解析手法を用いた計測管理の流れを示す.

まず, カメラの内部標定要素(カメラ焦点距離, 主点の位置 のずれ, レンズのひずみ曲収差関係の係数)を使用し, ゆがみ のない写真画像を作成する. 次に, LP 測量結果から不整三角 形網(TIN)を作成し, その結果と撮影した写真を重ね合わせ ることにより正射投影写真を作成する.

また, 不連続挙動を示す石塁構造物 であることから, 個々の石塁を抽出し それぞれの変位挙動を監視する必要が ある. ここでは, 画像解析手法として 良く用いられているエッジ処理 4)を活 用して行う. まず, 撮影した画像にエ ッジ処理(石塁の縁の

RGB

が周辺に比 べて大きく異なる)を行って, 石塁の縁 取りを行う. つぎに,点と線分からなる 折れ線列(ベクトル)に変換したのち

に,レーザ・プロファイラ測量結果を内 -7 正射投影化したエッジ処理およびベクトル化処理結果 挿する方法で,写真画像上のベクトルをモデル座標系(対象構造物の測量座標系)に変換する. たとえば,

全体座標系に変換したベクトルを

x-y

座標に投影すると図-6のような正射投影図になり,いろいろな地点か ら撮影された写真を貼り合わせると正射投影写真になる.

さらに,この全体座標系の座標は三次元

CAD

データとして扱うことができるため,図-7のように,時期 の異なるデータを比較することにより, 石塁の移動量をビィジュアルに比較することが可能になる.

おわりに

撮影された写真画像から石塁の縁の座標を算定するシステムを開発することによって,現地の石塁の変位 挙動や崩壊を容易に評価できるだけでなく,復元工事に対しても有用な情報を与えることになる. 今後は,

当該遺跡いせきだけでなく,さまざまな遺跡の保全 に開発した

VGE(Visual Geo-Engineering)システム

を役立てていきたいと考えている.

参考文献

1)來山尚義 他:史跡「石城山神籠石」保存管理に伴う地質調 査と計測管理について, 地盤工学会第46回地盤工学研究発表会

( 投 稿 中 ), 2011. 2) Chikahisa,H., Matsumoto,K., Tsutsui,M., Ohnishi,Y.: Field Measurement and Estimation for Displacement Behavior of Slope Using a Photogrammetry System, the 3rd Korea-Japan Joint Symposium on Rock Engineering pp.345-352,

2002. 3) 近久博志: デジタル画像処理技術を用いた測量システム, 36 回名古屋工業大学共同研究センター講演会, pp.49-58,

2001. 4)Duda,R.O., and Hart,P.E.: Pattern Classification and Scene Analysis, New York, John Wiley & Sons, Inc.,pp.267-272, 1971.

-8 積石移動量算出例(イメージ)

積石の変位挙動の評価と 対策工の検討 変状箇所とレベルの記録 イメージ・ベースト・モデル手法によ

る正射投影写真の作成

過去の正射投影図との比較による 積石の全体的な変位挙動の評価 積石の局部的な変位挙動の評価

積石の縁ベクトルの正射投影図 ベクトルのモデル空間への座標変換 エッジ処理した積石の縁のベクトル化 エッジ処理による積石の縁の抽出

写真画像のゆがみ補正 精密写真測量解析

現地測量・調査

(目視観察,LP測量,写真撮影)

図-5 精密写真測量解析とLP測量を組み合わせた 画像解析手法を用いた計測管理の流れ 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)

‑770‑

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参照

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