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Academic year: 2021

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磁気 磁気 磁気

磁気を を を を利用 利用 利用した 利用 した した医療用能動 した 医療用能動 医療用能動カテーテル 医療用能動 カテーテル カテーテルの カテーテル の の開発 の 開発 開発 開発

Development of Medical Active Catheter Using Magnetism

精密工学専攻

19

号 栗原 俊介

Shunsuke Kuribara

1. 1.

1. 1. 序論 序論 序論 序論

1.1 1.1

1.1 1.1 低侵襲医療低侵襲医療低侵襲医療を低侵襲医療をを担を担担う担うう医療機器う医療機器医療機器医療機器

低侵襲医療とは,患者の身体に対する侵襲度が非常に低い 医療機器を用いた診断及び治療のことである.これまでの医 療は,医師自身の技術や医学が医療技術の発達の大きな要因 となっていた.しかし,現在ではそれらと肩を並べるほど工 学の発展が大きく貢献している.特に,マイクロマシンが医 療分野で寄せられている期待は大きく,今では生体診断や外 科手術でも不可欠となっている内視鏡や生体用カテーテル に関する研究が注目を浴びている.

低侵襲医療の進む医療界において,工学技術者には「操作 しやすい医療器具」を世の中に送り出すことが求められてい る.例えば器具自体の自由度の向上,力覚や触覚情報を提供,

内視鏡における解像度の向上が必要である.そして最終的な 目標は,誰もが同等且つ容易に操作できる医療機器の開発と,

確実な効果をあげる治療法の確立である.

1.2 1.2 1.2

1.2 虚血性心疾患虚血性心疾患虚血性心疾患 虚血性心疾患

虚血性心疾患とは,心臓を構成する心筋に酸素と栄養を送 る冠動脈に障害が起きる病気をいう.虚血性心疾患は狭心症 と心筋梗塞に大別することができる.近年の日本における心 疾患の死亡者数は,全死亡の約2割を占め,死因第2位であ る.その半数が虚血性心疾患によるものである.

狭心症は冠動脈の内腔が狭くなって心筋に十分な血液が 流れなくなる状態であり,心筋梗塞は狭心症の最も激しい状 態である.狭心症の治療法は,カテーテルを狭窄部まで誘導 し,搭載したバルーンを膨らませることで冠動脈の内腔を広 げるというものが主流であり,経皮経管的冠動脈形成術 (PTCA)と呼ばれている.

1.3 1.3

1.3 1.3 能動能動能動カテーテル能動カテーテルカテーテルカテーテル

能動カテーテルとは,カテーテル先端部で屈曲運動が行え る機構を持ち,任意の方向へ自在に屈曲するものである.外 部から先端の屈曲操作をすることにより従来では挿入困難 であった部位への挿入が可能となり,患者と医師双方の負担 の低減や,手術時間の短縮も可能になる.

屈曲原理として形状記憶合金を利用したものがあるが,通

電加熱制御による遠隔操作が可能な反面,冷却時の応答遅れ や漏れ電流など安全上の問題がある.また,ワイヤ式屈曲機 構では,細径化時にワイヤと内部部品との摩擦の影響が懸念 される.

1.4 1.4 1.4 1.4 目的目的目的目的

本研究では,磁気によって簡易に先端を屈曲,誘導できる 医療用能動カテーテルの開発を行う.磁気により簡易に操作 可能なカテーテルは,術者の技量に依らずに冠動脈等への挿 入を可能にし,患者や医者の負担を大幅に軽減することがで きると考えられる.

2. 2. 2.

2. 生体適合性 生体適合性 生体適合性 生体適合性

2.1 2.12.1

2.1 生体適合性生体適合性生体適合性生体適合性

生体適合性とは,生体と材料との相互作用が生体に悪影響 を与えず,さらにその材料の使用目的も損なわないことであ

る. Fig.1に材料と生体の相互作用により生じる諸反応と経

過時間のグラフを示す.

狭心症や心筋梗塞の原因のひとつに血栓がある.血栓は血 液が凝固して生じた血液塊のことであり,細い血管を詰まら せる.普通,血管の血液接触面には内皮細胞と呼ばれるもの があり,血栓形成反応を防止しているが,内皮細胞を持たな い医用材料ではいかに血栓形成反応を防ぐかが課題となっ ている.医用材料における血栓形成を防ぐ方法は,固剤の投 与,低血栓反応性材料の平滑平面化,偽内膜形成抗凝固剤固 定化・除放材料の使用などがある.

Fig.1 Vital reaction from Material-Body interaction Time [h]

100 101 102 103 104 105

Vital reaction

初期(急性)反応 後期(慢性)反応 補体活性化反応

補体活性化反応 補体活性化反応 補体活性化反応

初期炎症反応 初期炎症反応初期炎症反応 初期炎症反応

石灰化反応 石灰化反応 石灰化反応 石灰化反応 組織修復反応 組織修復反応 組織修復反応 組織修復反応

アレルギー アレルギー アレルギー アレルギー反応反応反応反応

血栓反応血栓反応 血栓反応血栓反応

癌化反応 癌化反応 癌化反応 癌化反応 初期(急性)反応 後期(慢性)反応

補体活性化反応 補体活性化反応 補体活性化反応 補体活性化反応

初期炎症反応 初期炎症反応初期炎症反応 初期炎症反応

石灰化反応 石灰化反応 石灰化反応 石灰化反応 組織修復反応 組織修復反応 組織修復反応 組織修復反応

アレルギー アレルギー アレルギー アレルギー反応反応反応反応

血栓反応血栓反応 血栓反応血栓反応

癌化反応 癌化反応 癌化反応 癌化反応

(2)

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 100 200

distance [mm]

magnetic flux density [T]

Tube2

Tube3 Magnet

Balloon

Tube1 S

N

3 33

3. . .実験概要 . 実験概要 実験概要 実験概要

3.13.1

3.13.1 磁気装置磁気装置磁気装置磁気装置

本研究で使用した磁気装置をFig.2示す.磁極の先端に永 久磁石を装着し,磁極距離を変えることで磁場を変化させる.

磁極はステージを中心に 30[deg]回転を行うことができる.

磁極の距離と磁束密度の関係をFig.3示す.磁界の強さHは,

で表され,距離の2乗に反比例する.

3.23.2

3.23.2 試作試作試作試作カテーテルカテーテルカテーテルカテーテルのののの構造構造構造構造

試作したカテーテルのモデルを Fig.4 に,仕様を Table1 に示す.本研究では,経管的冠動脈形成術(PTCA)に用い られるカテーテルを想定しているため,膨張部のバルーンと してラテックスゴムを使用している.PEEK®チューブは,

英国 VICTREX 社の高機能樹脂チューブである.耐薬品性や耐 疲労性,耐放射線性に優れている.生体適合性にも優れてい るため,医療用チューブにも使用され始めている.ネオジム 磁石はシリコンゴムチューブに埋め込むように装着し,血管 壁への直接的な接触を防ぐ.

3.3 3.3 3.3

3.3 先端屈曲原理先端屈曲原理先端屈曲原理先端屈曲原理

カテーテルの先端屈曲原理をFig.5に示す.カテーテル先 端の永久磁石に外部磁場を与えることで,磁極への吸引反発 力および回転モーメントが発生し先端部が屈曲する.

回転モーメントは,磁界と永久磁石の磁気モーメントによ り作用する.Fig.6 に示すように磁石に磁界を印加すると磁 界と同じ方向に磁石の磁気モーメントが向こうとする.この 回転する力が回転モーメントとなる.

4 4 4

4. . . .先端屈曲実験 先端屈曲実験 先端屈曲実験 先端屈曲実験

4.1 4.1 4.1

4.1 先端屈曲角先端屈曲角先端屈曲角先端屈曲角のののの測定測定測定測定

カテーテル先端の永久磁石に外部磁場を与え,カテーテル 先端部の屈曲角度を測定した.本研究では,手首にある撓骨 動脈から挿入し,腕頭動脈,大動脈弓を通り,冠動脈までの 到達を目的としている.挿入経路を Fig.7 に示す.撓骨動脈 からの挿入は患者への侵襲度が非常に低く,負担も軽いため,

心臓カテーテル手術では主流になりつつある.

Fig.4 Model of prototype catheter Fig.2 Experiment

Fig.6 Magnet and magnetic field Magnetic field

Magnetic moment Moment

Magnetic pole

Stage

Fig.5 Bending mechanism of prototype catheter

Fig.3 Relation between distance and magnetic flux density

N

S

N

S N

Parts Material Scale [mm]

Magnet Neodymium 1.5φ×1.5 Balloon Latex Rubber 1.5φ×1.4φ×10

Tube1 Silicon Rubber 1.5φ×1.3φ×5 Tube2 Silicon Rubber 1.5φ×1.3φ×50

Tube3 PEEK® 1.5φ×1.3φ×800

Table1 Specific of prototype catheter

4 r

2

m H

= πµ

m:磁極の強さ r:距離

μ:透磁率

Fig.7 Insertion pathway

Opening of           coronary coronary coronary coronary artery

Insertion opening Opening of           coronary coronary coronary coronary artery

Insertion opening Φ4mm

Φ50mm

Aortic arc

Coronary artery

(3)

カテーテル挿入時,先端の屈曲と誘導が特に必要になるの が大動脈弓付近と冠動脈入り口付近である.それぞれの径に 個人差はあるが,約50[mm]と約4[mm]である.この2つ付 近での屈曲について評価した.外部磁場は様々な方向から与 えることを想定して,垂直方向と斜め 30[deg]からそれぞれ 与えた.Fig.7に実験状態とパラメータを,Table2にパラメ ータの各条件を示す.カテーテル先端部の磁石とテーブルの なす角度を屈曲角度とした.実験はそれぞれ5回ずつ行った.

4.2 4.2

4.2 4.2 実験結果実験結果実験結果 実験結果

磁界方向が垂直の実験結果をFig.8に,30[deg]の実験結果 Fig.9に示す.

4.3 4.3 4.3 4.3 検証検証検証検証

Fig.8より,外部磁場が垂直方向のとき,b=55,60,65[mm]

では,磁極距離が90~80[mm]にかけて急激に50[deg]付近ま で屈曲した.腕頭動脈から大動脈弓への実際の挿入を想定し ても,カテーテルの誘導には十分な屈曲角が得られた.この ときの磁束密度は0.05~0.07[T]であり,より強い磁石を用い ればより遠方からの屈曲・誘導が可能である.b=10,15,

20[mm]では,磁極距離が110[mm]近辺から減少していくに

つれ, 緩やかに屈曲角を増し,20[mm]近辺では90[deg]に近 づく傾向が見られた.冠動脈入り口への実際の挿入を想定し ても,十分な屈曲角が得られた.

Fig.9より,外部磁場が斜め30[deg]方向のときも,垂直方 向とほぼ同じ結果が得られた.これにより実際の手術で求め られる3次元での誘導にも有効なことが確認できた.

5 5 5

5. . . .V V V V----PREP PREP PREP PREP 挿入実験 挿入実験 挿入実験 挿入実験

5.1 5.1 5.1

5.1 VVVV----PREPPREPPREPPREP

カテーテル操作トレーニングキットV-PREPFig.10 示す.V-PREPは体幹部の血管を忠実に再現しており,冠動 脈への挿入も可能である.適度な弾性をもち,専用液を注入 することで実際の手技に近い感触が得られる.試作カテーテ

ルをV-PREPに挿入し,有効性を評価した.

5.2 5.2 5.2

5.2 左橈左橈左橈左橈骨動脈骨動脈骨動脈から骨動脈からからから左右冠動脈左右冠動脈左右冠動脈左右冠動脈へのへのへのへの挿入挿入挿入挿入ののの評価の評価評価評価

左橈骨動脈から左冠動脈への挿入を行った.穿刺部から腕 頭動脈までは分岐が無い為,血管壁に沿って滑らかに挿入可 能で,外部磁場を与える必要はなかった.PEEK®チューブ の持つ適度な剛性により座屈も起きなった.大動脈弓から冠 動脈入り口までは大腿部へ向かう大動脈への落ち込みを防 ぐ為,胸部上部約80[mm]から磁石により磁場を与える事で 誘導が可能であった.冠動脈入り口から左冠動脈内部への挿 入は,左脇約50[mm]から磁場を与える事で,カテーテル先 端部が屈曲し,挿入可能であった.右冠動脈への挿入は,同 様に右脇約50[mm]から磁場を与えることで挿入が可能であ った. 磁気によるカテーテルの誘導の有効性が確認できた.

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

0 50 100 150 200

Magnetic pole distance [mm]

bending angle [deg] b:10mmb:15mm

b:20mm b:55mm b:60mm b:65mm

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

0 50 100 150 200

Magnetic pole distance [mm]

bending angle [deg] b:10mmb:15mm

b:20mm b:55mm b:60mm b:65mm

Fig.8 Relation between magnetic pole distance and bending angle in vertical magnetic field

Table2 Experimental conditions Fig.7 Experimental status

Fig.10 V-PREP

Magnetic field direction Length[mm]

a 200~30

b 10,15,20,55,60,65

a 200~30

b 10,15,20,55,60,65 verticality

30[deg]

Fig.9 Relation between magnetic pole distance and bending angle in 30deg magnetic field

a

a

h

h

b θ

30°

z z

x y

a

a

h

h

b θ

30°

z z

x y

Left radial artery Aortic arc

Right coronary artery

Left coronary artery

(4)

000 0 1 01 01 0 1 0 2 02 02 0 2 0 3 0 3 03 0 3 0 4 0 4 04 0 4 0 5 0 5 05 0 5 0 6 0 6 06 0 6 0

1 11

1 2222 3333 4444 5555

Insertion frequence [time]

Insertion time [s] Present model

Previous model avg.

5.3 5.3 5.3

5.3 挿入所要時間挿入所要時間挿入所要時間の挿入所要時間のの評価の評価評価 評価

左橈骨動脈から左右冠動脈への挿入時間を測定した.10 人の実験者に5 回ずつ挿入してもらい,挿入時間を測定し,

試作カテーテルの操作性能を評価した.左橈骨動脈から左冠 動脈への挿入時間の結果をFig.11に示す.

Fig.11の結果より,操作者の技量に関係なくすばやい挿入

が可能なことが確認できた.前年度のモデルはPEEK®チュ ーブの代わりに PEBAX®チューブを用いたもので,外径が

2.0[mm]であったが,それより10~20[s]の短縮ができた.実

際の手術において,実験結果と同じような時間での挿入は難 しいだろうが,磁気を用いたカテーテルの誘導により,従来 に比べて大幅な挿入時間の短縮が期待できる.

6 6 6

6 . .血管 . . 血管 血管 血管シミュレータ シミュレータ シミュレータ シミュレータ実験 実験 実験 実験

6.1 6.1

6.1 6.1 血管血管血管シミュレータシステム血管シミュレータシステムシミュレータシステムシミュレータシステム

血管シミュレータシステムは,血管モデル,拍動型ポンプ,

磁石によって構成されている.Fig.12に血管シミュレータシ ステムの概略を示す.拍動型ポンプは流量,拍動回数,スト ローク長をそれぞれ設定できるソレノイド駆動定量ポンプ PZDを用いた.流体は40[℃]の水を用いた.

ヒト心臓の左冠動脈付近の流速は約 40[mm/s]である.また,

通常時の左心室拍動回数は約 60[time/min]であり,高いとき で約 150[time/min]である.流速は実際の心臓と同程度で,

且つ拍動回数 60[time/min]を再現するための血管シミュレ

ータ管の内径を 8.0[mm]とし,同じく拍動回数 150[time/min]

を再現するための血管シミュレータ管の内径を 14.0[mm]と した.流量はそれぞれ 120[ml/min]と 360[ml/min]である.

血管シミュレータ上部に取り付けた冠動脈モデルは直径 4.0[mm]とした.

拍動流の発生する血管シミュレータ内に試作カテーテル を挿入し,外部磁場を与えて屈曲性,挿入性を評価した.

6.2 6.2 6.2

6.2 血管血管血管血管シミュレータシミュレータシミュレータ結果及シミュレータ結果及結果及び結果及びびび評価評価評価評価

内径 8.0[mm]と内径 14.0[mm]の血管シミュレータ実験にお いて,カテーテルが冠動脈入り口付近で屈曲し,挿入できる ことを確認できた.Fig.13に挿入完了時の様子を示す.

血管シミュレータ実験より,試作カテーテルと外部磁場に よって拍動流内においてもスムーズに屈曲し,冠動脈モデル への挿入が可能であることがわかった.

本実験では 40[℃]の水を用いたが,血液の粘性係数は水の 約 4 倍である.粘性抵抗を考慮すると,今後は血液と同程度 の粘性をもった流体での実験も必要である.

7.

7. 7.

7. 結論 結論 結論 結論

磁気を利用した医療用能動カテーテルを開発し,先端屈曲 実験,V-PREP挿入実験,血管シミュレータ実験から以下の 結論を得た.

(1) 永久磁石とシリコンゴムと PEEK®による能動カテー テルを開発した.

(2) 任意の角度から外部磁場を発生させることにより,左橈 骨動脈から左右冠動脈への容易な挿入が可能である.

(3) 冠動脈付近における拍動流内においても磁力により十 分に屈曲できることが確認できた.

今後は,更なる細径化や付加機能の搭載,動物等の生体内 での実験が必要であると考える.

参考文献 参考文献参考文献 参考文献

(1) 郭書祥,福田敏男,新井史人,根来真,小黒啓介,能動カテー テルシステムに関する研究,日本ロボット学会誌 (1996) (2) 石川将志,磁気を利用した冠動脈造影用カテーテルの開発,中

央大学修士論文 (2007)

(3) 心臓カテーテル検査講習会テキスト,日本光電工業株式会社 (2008)

Fig.11 Relation between insertion frequency and insertion time

Infusion Pump Magnet

Catheter Vessel simulator

Infusion Pump Magnet

Catheter Vessel simulator Fig.12 Vessel simulator system

Fig.13 Finish of insertion in vessel simulator Pulsatile flow

Catheter Coronary artery model

Pulsatile flow

Catheter Coronary artery model

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