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各国生保の経営環境変化への対応と その有用性

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(1)

各国生保の経営環境変化への対応と その有用性

⎜ 株式会社化,バンカシュランスと金融コングロマリット等 ⎜

松 岡 博 司

■アブストラクト

90年代以降の欧米保険業界では,買収競争に乗り遅れまいとする相互会社 が株式会社化を実施し,貯蓄商品に適したチャネルとしてバンカシュランス が採用された。バンカシュランスと形態的に重複する金融コングロマリット が保険を含む形で業務のバランスを保ったまま成長することは難しい。

■キーワード

株式会社化,バンカシュランス,金融コングロマリット

1.はじめに

欧米の保険業界を90年代以降に襲った経営環境の変化としては,以下のよ うなものをあげることができる。

高齢化の進行とこれにともなう生保事業の貯蓄・投資商品への傾斜 高齢化が欧州を中心に進行した。高齢化を意識した消費者は老後保障に目 を向けるようになった。また,将来の財政負担を減らすため社会保障分野に 民間商品を活用しようとする動きが現れ,民間生保の提供する年金や貯蓄商 品に税制優遇等が設けられるようになった。このためもともと貯蓄指向の強

*平成17年12月22日の日本保険学会関東部会(生命保険協会)報告による。

/平成18年12月11日原稿受領。

(2)

い欧米生保事業の貯蓄・投資商品への傾斜が強まった。株式市場が好調で消 費者の投資指向が高まったことも,投資型生保商品の発達を促した。

情報化,ネットワーク化とこれにともなう主体的な消費者の登場 進歩した情報技術を用いることにより金融サービス業者が提供できる商品 が複雑化・多様化した。また,情報化・ネットワーク化の中,消費者が豊富 な金融知識を持つようになった。消費者の意識は,自ら情報を収集し,検討,

選択して金融サービスを購入する方向に変化した。

金融サービス監督の変化

90年代を通して,業態規制は緩和傾向が続いた。金融各業態への新規参入 に関する障壁が低くなり,金融コングロマリットの登場を阻害する規制もな くなった。監督・規制の形態は,業者行政から消費者保護行政へ,事前規制 から事後規制へと変化した。

グローバル化と国境をまたがった競争の激化

情報や資金が瞬時に世界規模で移動するようになり,グローバル化がもた らされた。欧州ではEU統合が推進された。保険会社間の競争は,国をまた がった競争となった。

これら変化を背景に,各国の保険業界においては,M&Aがさかんに行わ れ,業界順位は頻繁に変動することとなった。欧州には銀行の保険分野への 積極進出が目立った国もある。

本稿は,こうした環境変化の中で欧米の保険会社がとってきた対応方策の 一例として株式会社化とバンカシュランス(銀行チャネルの活用)を取りあ げ,その活用状況と有用性等を見ていこうとするものである。また,バンカ シュランスと密接に絡むものとして,金融コングロマリットの状況について も目を向けることとしたい。

(3)

2.株式会社化

90年代後半から2000年代はじめにかけて,欧米,特に英語圏の国々で生保 相互会社が株式会社化する動きが相次いだ。この結果,英国,カナダ,オー ストラリアでは,相互会社として残るものは中小規模の会社のみとなった。

保険業界においても

M&A

による成長戦略が適用可能な経営選択肢の一つ となったこの時期,株式会社形態の成長指向者に競争上劣後したくないとす る相互会社により,株式会社化は実施された。株式会社化を実施した会社が 掲げた株式会社化の目的は概ね次の通りである。

・資本市場へのアクセスを良好にする

・持株会社を頂点におくグループ形態へ移行する

・積極的に買収を行いグループを大きく,あるいは強くする。そのため,

自社株式の発行を可能とし,株式交換方式での買収を可能とする。また は,買収を受け入れ,有力なグループの一員となる

・ストックオプション等,株式を用いた役員・従業員インセンティブプラ ンを導入し,優秀な人材を集める

はたして株式会社化の実施により,こうした目的・企画は達成されたのか,

明確な判断をくだすことは難しいが,当項では,直近の株式会社化事例であ る英国スタンダードライフの事例および株式会社化実施後5年を経た米国プ ルデンシャルの動向を見て,株式会社化に伴う変化を考えることとしたい。

⑴ 英国スタンダードライフの株式会社化

スタンダードライフは相互会社としては欧州最大を誇った会社である。株 式会社のライバルに劣らず経営は積極的で,銀行子会社を有し,トリプルA の格付を誇る会社でもあった。

①これまでの経緯 相互会社形態維持路線からの転換

同社は2000年2月と2003年7月の2度にわたり,一部の保険契約者グルー

(4)

プ(カーペットバガーと呼ばれる)から株式会社化の要求を提出され,これ を拒絶した経緯を有している。以降,同社は契約者への情報開示の充実等を 実施し,会社運営への批判を招かないように留意してきた。

しかし2001年から2004年にかけて株価が低迷したことから,同社の戦略は 方針転換を余儀なくされることとなった。保有資産中の株式の占率が70%を 超えていた同社は,自己資本が半減し,配当の削減に追い込まれた。また同 時期に,監督当局である

FSA

(金融サービス監督機構)が有配当契約の負 債認識等にリアリスティック(現実的な)アプローチを採用すると決めたこ とも痛手になった。新方式によれば同社の自己資本はさらに減少する。これ らを受け同社の健全性への疑念が広がり,主力販売チャネルである

IFA

(独立ファイナンシャルアドバイザー)の中には同社商品の販売を見合わせ る者もあらわれた。

こうした経緯を経て,2004年1月,同社は株式会社化を含む事業戦略の見 直しを行う方針を表明した。同年4月の年次社員総会では, 株式会社化に むけて手続きを進めることが会社と社員にとって最上の利益になる という 戦略見直しの結論が報告され,株式会社化を目指す方向性が確認された。

②株式会社化実施のプロセスと概要

2005年10月,スタンダードライフは2006年をめどに株式会社化と上場を実 施することを発表した。その後作業が進められた結果,2006年4月に株式会 社化の詳細計画を含む提案書が社員に送付され,5月31日に特別社員総会で 社員による株式会社化承認が行われた。社員による投票の結果は,投票資格 を有する社員の約3分の2が投票し,そのうち98%が賛成というものであっ た。その後6月9日にスコットランド民事最高裁判所による認可を受け,7 月10日に株式会社化に伴う一連の組織変更が完結した。

株式会社化は,これまでの生保相互会社から新設された株式会社形態の生 保会社に資産と負債が移転される形で実施された。同時に,グループの中核 会社として新設された持株会社スタンダードライフ

plcがロンドン証券取引

所に上場した。社員権を喪失した契約者への補償は,原則として持株会社の

(5)

株式を分配する形で行われた。

③株式会社化への方針転換の背景にある有配当保険事業の変化

スタンダードライフの株式会社化は,先にあげた一般的な株式会社化の目 的に加えて,従来の主力商品である有配当保険を巡る環境変化に対応するこ とを目的とするものであった。

2001年以降,株価低迷に見舞われた英国生保業界では有配当保険の配当減 額が相次いだ。減配に対する批判の高まりとともに,スムージングと呼ばれ る配当決定方式にも疑念が寄せられることとなり,英国における有配当保険 の販売は低迷した。スタンダードライフにおいても有配当保険の新契約占率 は20%を切るまでに落ち込み,総資産中の有配当ファンドの割合は縮小した。

英国の相互会社は有配当ファンドからの収益の10%を会社勘定に取り込む ことで,事業遂行のための資本(=内部留保)を獲得してきた。有配当保険 の販売不振は資本の先細りを意味する。また,有配当保険の契約者を総会で の投票権者,会社精算時の残余財産請求権者たる社員と定めていたスタンダ ードライフにおいては,有配当保険契約者の割合が縮小することは,少数の 有配当保険契約者がグループ全体の事業リスクを負担するという不健全な体 制をもたらすことにもなる。スタンダードライフはこうした形態が好ましく ないとして株式会社化に踏み切った。

④株式会社化後の有配当保険事業への対応

株式会社化の後,有配当保険の新契約を一切販売しなくなった米国プルデ ンシャル(後述)とは異なり,スタンダードライフは株式会社化後も有配当 保険の販売を継続している。ただし,株式会社化提案書の下記記述のように,

有配当保険事業に対しては,抑制的なスタンスがとられている。

(6)

【株式会社化提案書における記述】

株式会社化時に有配当ファンドに割り当てられた契約の増額,英国お よびアイルランドのAWPタイプの保険契約(有配当ファンドに投資し,

契約者は中長期的に平準的な配当の支払いを受け取りつつも現在の自分 の持分が明確にわかる仕組みの商品)の有配当投資部分等,限定された 新契約のみがスタンダードライフの有配当ファンドで引き受けられる。

有配当ファンドにおけるその他の新契約の引受については,取締役会が 以下の条件を満たすと認識した場合に限って行うことができる。

当該引受が有配当ファンドの剰余資産の金額に相当の悪影響を及ぼす と予想されるものではない。あるいは剰余資産の契約者への分配の方 式またはタイミングに重大な制約を課すと予想されるものではない 当該引受が既存の有配当保険契約者の合理的な配当期待に対して重大 な悪影響をもたらすと予想されるものではない

当該引受が有配当ファンドの管理について規定した 財産管理の原則 と実践(PPFM) に反するものではない

それら新契約の引受にあたって行われる資本の使用・リスクの引受に 対する報酬を有配当ファンドが受けるものである

⑵ プルデンシャル(米国)にみる株式会社化後の変化

米国のプルデンシャルは2001年12月に株式会社化を完了した。以降5年間 の同社の動向は以下の通りである。

①株価と収益性(ROE)を尺度とする企業行動

株式会社化時に27.5ドルで取引開始されたプルデンシャルの株価は,2006 年末には85.86ドルになっている。5年の間に3倍になっており,市場全体 の株価指数に比べて大きな上昇ぶりである。株価だけが成功・失敗の判断基 準というわけではないが,プルデンシャルの経営スタンスは株式市場から受

(7)

け入れられているということは言えそうである。株式の分配を受けた相互会 社当時の社員が株式を保有し続けていれば,株価の上昇により大きな果実を 受け取ったことになる。

プルデンシャルは株価と株価に影響を与える収益性指標である

ROE

を意 識した経営を行っている。株式会社化時に掲げられた,2005年末迄に

ROE

を12%に引き上げるという目標は達成された(2003年5.48

%,2004年9.35 %,

2005年15.43

%)。ストックオプションも2001年末から導入されている。

②事業運営の変化

ⅰ)有配当保険事業との決別

プルデンシャルは株式会社化を境に有配当保険事業への取り組みスタンス を一変させた。同社は今日,有配当保険の販売を一切行っていない。米国で は株式会社化後に有配当保険を売り止めにする例が多いので,ここまではと りたてて特別というわけではないが,同社は,有配当保険事業を株価に悪影 響をもたらす収益性のない事業と見なす立場で,有配当保険事業が株価に影 響を与えることを極力避けるよう,さらなる手だてを講じた。まず株式会社 化時点の有配当保険契約で構成されるクローズドブロック 事業のみを対象 とする株式(クラスB株式)が特定の機関投資家向けに発行され,一般の株 主が保有する株式(クラスA株式)は有配当保険事業とは無関係で,株式会 社化後の主力事業である 金融サービス事業 のみを対象とする株式である という位置づけが強調されている。さらにクローズドブロック事業から生じ るキャッシュフローが証券化され売却された。このような形で,プルデンシ ャルは有配当保険事業に決別を告げた。

ⅱ)M&Aを通じた事業構成の見直し

株式会社化の準備が始められた1998年頃から,ROEを基準に,事業の選 択と集中が,M&Aを活用して実施されてきた。

1) 米国では株式会社化時点までの有配当保険既契約に関する資産・負債をその 他の事業から切り離しクローズドブロック(閉鎖勘定)とすることが求められ る。

(8)

まず

ROE

が低く収益の変動が大きい医療保険部門(1999年)と損害保険 子会社(2003年)が売却された。また,収益が上がらなかった証券子会社は ワコビア銀行の証券子会社と合併させる形で切り離された(2003年)。

一方,ROEの良好な米国内の生保事業や国際保険事業では積極的に買収 が行われた。買収されたのは,アメリカンスカンディア(2003年),シグナ 社のリタイアメント部門(2004年),協栄生命(2001年),あおば生命(2004 年),オールステートの変額年金事業(2006年)等である。

ⅲ)現在の事業構造

事業調整を行った結果,同社の主力事業である金融サービス事業は今日,

(米国)保険部門,インベストメント部門,国際部門という3つのセグメン トで運営されている。これら各部門の収益構成は図−1の通りである。以下,

収益構成比で各分野の状況を見てみたい。

(資料)プルデンシャル発表資料から

(注)調整事業利益とはプルデンシャルが対外説明用に使用している数値で一 時的な収益であるキャピタルゲイン等の数値を含まない。

国際インベストメント 国際保険

リタイアメント 金融アドバイス アセットマネジメント

個人年金 個人生命保険

個人生命保険・個人年金

団体保険

100.0 5.6 3.1 36.9 40.0 14.0

▲7.2

13.1 19.9 6.3 14.2 14.0 28.2 34.5 占率

3552 198 110 1310 1420 498

▲255

464 707 224 505 498 1003 1227 金額

100.0 4.5

▲0.5

41.5 41.0 9.7

▲5.6

10.5 14.6 8.6 13.3 18.1 31.4 39.9 占率

1974 88

▲10

819 809 192

▲111

208 289 169 262 357 619 788 金額

100.0

▲2.2

▲3.8

52.8 49.0 9.5

▲12.1

16.1 13.6 6.0 9.2 24.4 33.6 39.6 占率

1158

▲25

▲44

611 567 110

▲140

187 157 70 107 282 389 459 金額

金融サービス事業合計 配賦不可の活動・不動産等 国際部門合計

インベストメント部門合計

(米国)保険部門合計

2005 2003

2001

図−1 プルデンシャルファイナンシャルの金融サービス事業の構成

−調整事業利益(税引前)の状況 (百万ドル,%)

(9)

米国内の生保事業で構成される保険部門の収益構成比は約35

%(個人生命

保険14%,個人年金14%,団体保険6%)である。

個人保険の主要商品は,いずれも無配当の変額保険,ユニバーサルライフ,

定期保険である。これら個人保険の販売において,従来の主力チャネルであ った専属エージェントによる販売の割合は全体販売額の約5割にまで低下し ている。その背景には,プルデンシャルがかつて6,000名を数えた専属エー ジェントを3,000名を切るまでに絞ってきた経緯がある(2001年平均5,200名

→2005年末2,946名)。短期的な収益状況を無視できない状況下では,専属エ

ージェントにつきものの維持管理コストは大きな負担になる。変額年金事業 の強化を目的として2003年に買収したアメリカンスカンディアが証券・銀行 チャネルに強いことも手伝って,個人保険販売においても外部チャネルへの 依存が強まった。また,こうした外部チャネルが高額の投資型商品を売るこ とに長けていることもあって,プルデンシャルの新契約平均保険金額は2002 年の27万ドルから2005年には49万ドルへと大幅にアップした(AMベスト

BestWeek December

8,2003および

October

2,2006より)。ここにも収益 性を重視する経営スタンスへの変更が見えてくる。

アメリカンスカンディアを買収(2003年)したこともあって,保険部門の もう一つの柱である変額年金を柱とする個人年金の販売額はここ3年ほど急 増している。プルデンシャルは金融機関を通じた変額年金販売への取組みで 遅れをとり,個人年金保険料の全米順位では2001年で第33位と出遅れていた が,スカンディアを買収したことにより,2004年には第18位へと巻き返した

(AMベスト社

BESTʼAGGREGATES & AVERAGES Life

/

Health

に基づく)。この後も同社は変額年金事業の強化を継続し,2006年にはオー ルステートの変額年金事業を買収した。個人年金の販売における外部チャネ ルの販売額の割合も急激に大きくなった(2005年販売シェア:専属エージェ ント20.0%,証券会社7.3%,銀行など外部チャネル72.7%)。

第二の事業セグメントであるインベストメント部門では,不調の金融アド バイス部門を縮小し,リタイアメント部門を拡大させた結果,インベスト部

(10)

門全体の収益構成比は14%から20%(アセットマネジメント13%,金融アド バイス▲7%,リタイアメント14%)へと拡大した。子会社プルデンシャル 証券のファイナンシャルアドバイザーによる証券販売・トレーディング等か らなる金融アドバイス事業はマイナスの収益が続いてきた。ファイナンシャ ルアドバイザーのターンオーバーが激しく経費率は高かった。こうした事情 もあって,2003年にプルデンシャル証券は大手銀行ワコビアの証券子会社と 統合され当該分野からの撤退が実施された(持分比率はワコビアが62

%,プ

ルデンシャルが38

%)。

その一方で,確定給付型年金・確定拠出型年金や利回り保証商品の提供を 中心とするリタイアメント事業には,2004年にシグナライフ(シグナのリタ イアメント部門)を買収し規模を倍増させるなど,力が注がれている。この 結果,9%台だったリタイアメント部門の収益構成比は14%にまで上昇した。

第三の事業セグメントである国際部門は,日本,韓国,台湾,ブラジル等 での保険事業を中核とする。その収益構成比は40

%(国際保険37 %,国際イ

ンベストメント3%)と,米国内生保事業で構成される保険部門の収益構成 比34.5

%を上回る収益部門となっている。プルデンシャルは日本市場を重視

しており,協栄生命(2001年ジブラルタ生命へ),あおば生命(2004年)と,

矢継ぎ早に買収を実施してきた。

⑶ 小括 株式会社化に伴う変化

M&A

合従連衡 グループ形成

以上の事例等を踏まえ株式会社化にともなう事業の変化を考えると,まず 目立つのは,当該会社が

M&A

に積極的になることだろう。グループ形成 意欲の強まりといってもいいかもしれない。そこには,買収する側に立つと いう選択だけでなく,買収される側に積極的に回って,より強大なグループ 形成に参加するという選択も見られる。欧米で1986年から2002年までの間に 株式会社化を実施した33社を調べてみたところ,うち12社は株式会社化の目 的が買収を受け入れることであったものであった。残る21社のうち,11社は

(11)

株式会社化後コンソリデーター(統合者)となって巨大化を果たしているも のや独立を保っているものであったが,その他の10社は環境の変転の中で他 グループに傘下入りしていた。図−2は最後の10社の概要をまとめたもので ある。このうちコロニアル(豪)とノウィッチユニオン(英)は買収された

マニュライフグループ,2004年 にマニュライフによる買収を受 け入れ

ジョンハンコック ファイナンシャル ジョンハンコック

00年 (米)

00年 アメラス(米) アメラスグループ

AVIVA

グループ,2001年にイ ンディアナポリスライフを買収 2006年 に

AVIVA

に よ る 買 収 を受け入れ

99年 カナダライフ(加) カナダライフ

グレートウエストライフグルー プ,2002年にグレートウエスト ライフによる買収を受け入れ サンライフグループ,02年にサ ンライフによる買収を受け入れ ミューチュアル クラリカ

ライフ(加)

98年

アクサグループ,2003年にアク サファインナンシャルによる買 収を受け入れ

MONY

グループ

MONY(米)

98年

ING

グ ル ー プ,2000年 に

ING

グループによる買収を受け入れ リライアスター

ファイナンシャル ノースウェスタン

ナショナル(米)

89年

94年 ミッドランド ミューチュアル (米)

ミッドランド ファイナンシャル サービス

スイス再保険グループ,2000年 にスイス再保険の買収を受け入

95年

ギ ャ ラ ン テ ィ ー ミ ュ ー チ ュ ア ル (米)

ギャランティー ライフ

カンパニーズ

ジェファーソンパイロットグル ープ,99年にジェファーソンパ イロットコーポレーションによ る買収を受け入れ

96年

コロニアル ミューチュアル

(豪)

コロニアル リミテッド

コモンウェルスバンクグループ,

2000年にコモンウェルス銀行と 合併

97年 ノウィッチ ユニオン(英)

ノウィッチ

ユニオン

pic   AVIVA

グ ル ー プ,2000年 に

CGUと の 合 併 に よ り CGNU

(現

AVIVA)を結成

株式会社化会社実施会社 株式会社化時に採

用したグループ名

現所属グループ,グループ入り の時期

図−2 独立したグループとして株式会社化したがその後買収された会社

(資料)各社ディスクロージャー資料,報道資料等から作成

(12)

というよりも新グループの形成に対等参加したというイメージが強いが,他 の8社はより巨大な会社の傘下に入った会社である。たとえばジョンハンコ ック(2000年株式会社化)は買収される側に回ってグループ形成を図った会 社である。同社は,競争が激化する中,自らの規模では大手金融機関に互し ていくことはできないとして,買収者を求め,2004年に,同じく株式会社化 を経験した会社であるマニュライフ(カナダ,1998年株式会社化)の買収を 受け入れた。同社はマニュライフグループの一員となった今日も,ジョンハ ンコックのブランドで事業を行っている。

②事業構造の変革への積極性

株式会社化を行った会社は,M&Aを駆使し,事業構造の変革に取り組む。

株式会社化はそのための改革の一環にすぎない。ただし株式会社化を行って からの各社の方向はまちまちである。

メットライフも株式会社化(2000年4月)の後,いくつかの

M&A

を実 施して,事業構造を変革してきた。まず2001年にはグランドバンク(銀行)

を買収している。これにより持株会社メットライフは生保と銀行を傘下に持 つ金融サービス改革法上の 金融サービス持株会社 になった。今日,グラ ンドバンクはメットライフバンクと改称され,保険契約者を主な顧客として 銀行サービスを提供している。次いで2003年にはジョン・ハンコックの団体 保険部門を買収した。これは自らの強みである団体保険部門の強化を目的と したものであった。そして2005年には,金融コングロマリット,シティグル ープ傘下の生保年金部門であったトラベラーズを買収し,その生保部門拡大 路線を鮮明にした。メットライフはプルデンシャルとは異なり,保険の枠内 に軸足をとどめつつ,生命保険を中心とした展開で全米での覇権を狙うとい う事業スタンスを有しているようにみえる。

そもそも株式会社化は,事業構造が多様化し,単なる相互扶助の生保会社 にとどまらなくなっている会社が実施することが多い。プルデンシャルのよ うに子会社を活用して,グループ内のどの生保会社から保険を購入するかに よって社員権が与えられる場合と与えられない場合が分かれるような場合や

(13)

スタンダードライフのように無配当保険を購入した契約者と有配当保険を購 入した契約者で与えられる社員権の態様が異なる場合などにおいて,本来的 な社員権を得られない契約を購入する顧客が増えて,やがてグループの事業 構造と意志決定機構の間に矛盾が大きくなったとき,株式会社化の必要性が 感じられるのかもしれない。

⑷ 相互会社であることを訴求点にする米国の大手相互会社

米国では,株式会社化の流れに対抗するかのように,ニューヨークライフ,

ノースウエスタンミューチュアル,マスミューチュアルなどが相互会社形態 を維持することを明言している。これらの会社のホームページを見ると,

The Mutual Advantage

などと,相互会社制度のプロパガンダ的な見出し が目に付く。しかし,そこでは,単なる防衛的なキャンペーンを超えた,相 互会社であるから契約者に利益があるのだという,有配当保険を前面に打ち 出した攻めの説明が行われている。彼らの説明では,有配当保険は柔軟な価 格設定を可能にし,剰余が発生した場合に契約者に配当還元する仕組みを持 っているので,消費者の利益にかなうものであるという。ここではプルデン シャルやスタンダードライフの否定的または悲観的な見解とは一線を画する 有配当保険のイメージが浮かび上がる。実際,ノースウエスタンミューチュ アルなどは有配当終身保険を主力商品とし,高い配当率を商品魅力として,

富裕層顧客を取り込んでいる。

ニューヨークライフはホームページの中で,格付機関ムーディーズの自社 に対する分析レポートを読めるように設定している。その中でムーディーズ は ニューヨークライフの相互会社形態がその信頼性を高めている という 一項目をたて,以下のように述べている 。

2)

http:

//

www.newyorklife.com

/

cda

/0

,

3254

,

12023

,

00

.html

3)

http:

//

www.newyorklife.com

/

cda

/0

,

3254

,

15064

,

00

.html

(14)

相互会社には株式会社に存在する株主と保険契約者の利益相反の可能性 がない。四半期ごとに市場の予測に合うかまたは凌駕する収益を報告す るプレッシャーにさらされている公開株式会社である競争相手に比べて,

相互会社は市場や投資に関して長期的な視点を持つこともできる。さら に相互会社は,ムーディーズが生命保険業界の中で最も信頼できる商品 であると信じる有配当終身保険を引き受けることができる。株式会社は 有配当終身保険を引き受けていない。

1998年,ニューヨークライフは相互会社のままでいるという同社の決定 を公表し,以降,機会あるごとにそのスタンスを表明している。さらに 最近では,同社はその相互会社形態と競争相手の株式会社形態の間に,

より明確な区分を引こうとしている。言い換えれば,ニューヨークライ フはその相互形態とカルチャーを積極的にセールスポイントとして活用 している。ムーディーズは,この区分は,その専属営業職員による販売 網とともに,同社のコアターゲットである中流から富裕層,さらに上流 層にかけての消費者に理解され評価されていると信じている。ニューヨ ークライフの伝統的な競争相手の多くが株式会社化の結果として,伝統 的な有配当終身保険の引受をやめてしまっている。この商品を引き受け 続けることで,当該商品を引き受けられない競争相手との間で,ニュー ヨークライフはさらに自らを際立たせることができる。

【ムーディーズのニューヨークライフ分析(06年8月)より】

3.バンカシュランス(銀行チャネルの活用)

80年代後半から90年代にかけて,欧州では銀行が保険子会社を保有し,自 らが子会社の保険商品を販売する形のバンカシュランスが開始され成長した。

欧州主要国における販売チャネル別の生保・年金販売シェアを見ると,ス ペイン,フランス,イタリア等では銀行の販売シェアが60%を超え,銀行が

(15)

支配的ともいえる生保販売チャネルとなっている一方,ドイツ,オランダ,

イギリスなどでは銀行の販売シェアは10%〜20%前後にとどまっている(デ ータモニターの統計に基づく)。また,米国では90年代の後半以降,生命保 険会社と販売提携を行う形で銀行が行う個人年金販売が伸び,銀行は個人年 金において,定額年金で約3割,変額年金で1割強,個人年金全体では約2 割の販売シェアを有する有力チャネルの一つとなっている(05年,リムラの 統計に基づく)。これに対し,米国の個人生命保険分野では専属・独立のエー ジェントが強く,銀行の生命保険販売額は増加傾向にあるものの,そのシェ アは約2%にすぎない(05年,ケネスケーラーアソシエイツの統計に基づ く)。

こうした各国の銀行シェアの背景には,貯蓄商品が重きを持つ欧米生保市 場の構造がある。

欧米の銀行が販売している生保年金商品のほとんどは貯蓄性の強い商品で ある。例えば,英国の統計では,銀行により獲得された年換算保険料の約8 割が生命保険の保険料に分類されるが,その7割は,貯蓄を主眼とし死亡保 障の要素がほとんどないボンドと呼ばれる一時払商品によりもたらされてい る。また残り3割は継続払型の生命保険であるが,そのうち半分はモーゲー ジ(住宅ローン)の借入と同時に契約される信用保険と同様の役割を担った 定期保険または養老保険である。このように見ていくと,英国において,モ ーゲージに関連しない保障商品を銀行が販売している実績は小さなものであ る(以上,データモニター資料より)。

フランスでは英国以上に死亡保障要素のない生存保険や変額商品が販売商 品の中核である。ミリマングローバルのレポート

European Bancassur- ance Review

2005 によれば,シンプルで保障部分が小さく,銀行商品と の類似性が高い商品がバンカシュランスで販売される商品であるということ である。

米国銀行の保険・年金販売実績(収入保険料)では,個人年金が3分の2 を占める。米国の銀行による個人生命保険商品の販売も増えてきてはいるが,

(16)

銀行の保険・年金販売実績の全体額において個人生命保険の販売額が占める 割合は5%にすぎない(ABIAの2003年調査に基づく)。その個人生命保険 販売の内訳を見ても,銀行による個人生命保険販売の85%が一時払商品であ り,一時払ユニバーサル保険が売れ筋の商品になっている。貯蓄部分を有す るユニバーサル保険の商品性が銀行の販売担当者に好まれている。また継続 払型の個人生命保険販売でも,やはり貯蓄性の強い変額保険とユニバーサル ライフが7割を占める。(ケネスケーラーアソシエイツの統計に基づく)。

以上のように見てくると,銀行は貯蓄性の強い商品の販売に適性を有した 販売チャネルであると見ることができるだろう。顧客に適した商品を,その 顧客・商品に適したチャネルで提供するというマルチチャネル戦略の一環と して,特に貯蓄型保険の販売チャネルとして,バンカシュランスは有効に機 能している。貯蓄生保商品市場というものが概念できるならば,銀行は生保 会社にとって心強い販売パートナーとなりうるといえるだろう。

4.さいごに

以上,株式会社化とバンカシュランスの動向を見てきたが,最後に今後の 研究の課題と考える点について若干触れておきたい。

まず,株式会社化に関して。買収受入同時型の株式会社化でない限り,株 式会社化と同時にグループの中核会社として持株会社が設立され,保険会社 は持株会社の子会社の一つとなって,グループ形成や事業構造の変革を行い やすくすることが一般的である。しかし,この持株会社を中心とするグルー プ形態への組織変更は,ディスクロージャー等の面で,いくつかの問題点を 有しているように思われる。

株式会社となった会社は,例えば米国で上場している場合には,SEC の各種届出を行う必要がある。四半期単位で経営状況を報告する義務も負う。

これをもって,株式会社化は相互会社時代の不十分な情報開示を飛躍的に向 上させるとみる見方もある。しかし,上場しているのは持株会社という状況 の中では,グループ全体からみれば一つの業務にすぎない保険事業の開示度

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合いにポイントを絞った場合,保険会社単体のディスクロージャーに重きが 置かれていた相互会社の時に比べて,情報量が減っているという印象を抱く 場合もある。保険業務を株式投資家に説明することが難しいことも手伝って,

プルデンシャル,メットライフなどは,保険業務の状況説明の項で独自のデ ータを提供している。このため,他社との比較が行いづらい。

また,生保株式会社から払い出される有配当保険契約者への契約者配当と 唯一の株主である持株会社への株主配当のバランスを評価することも難しい。

図−3は,生保会社であるメトロポリタン生命保険株式会社からの契約者配 当額と持株会社メットライフインクへの株主配当額の推移を見てみたもので あるが,これをもって株式会社化した場合としなかった場合の保険契約者の 得失を分析することは難しい。一定の評価手法の確立が求められるだろう。

なお,米英の状況から考えると,今後,生命保険経営においては,有配当 保険事業をどう行うかが一つのポイントになると考えられる。わが国の生保 事業においても配当が復活しつつある今日,有配当事業は収益力のある事業 なのか,いわゆるたこ足配当を求める難しい事業なのか,各社の対応が問わ れている。

次に最近注目を集めている 金融コングロマリット について。先に欧州 におけるバンカシュランスが 銀行が保険子会社を持ち子会社の保険商品を 親銀行が販売する形 で始まったと記したが,こうした形態であればバンカ シュランスとコングロマリットは形態的にだぶることになる。バンカシュラ

1999 2000 2001 2002 2003 2004 265 797 296

1448 209

904 661

3754 1416

763 1729

契約者配当

株主配当

(資料)

A. M.ベスト社 Bestʼ s Insurance Report L/ H

より作成 図−3 株式会社化実施会社の保険契約者への配当と

持株会社への株主配当(メトロポリタン生命)

(百万ドル)

(18)

ンスの成功が伝えられ,これが高じれば保険と銀行の業務が融合した 金融 コングロマリット が誕生するかのような雰囲気もある。しかし,その一方 で,そうした金融コングロマリット戦略の先頭を走っていると見られていた シティグループとクレディースイスが2005年と2006年に相次いで保険部門を 売却し,保険をも含めた金融コングロマリット路線から撤退した。現実には,

保険を含めた金融コングロマリットは難しいようである。

先進10ヶ国財務大臣・中央銀行総裁会議が2001年に実施したアンケート調 査の結果では,金融サービス業者が異業種との統合を選択する最も大きな目 的・動機は,ワンストップショッピングの実現による顧客の利便性向上と,

それを反映した金融サービス業者側における収入の増加であったという 。 しかし,実際にはワンストップショッピングの実現は難しい。英国のロイズ

TSB

はリテールを重視した銀行業で成長するかたわら,大手生保スコティ ッシュウィドウズを買収して保険業務も強化し,グループ全体の収益の約3 割を保険事業があげるまでになった。しかし,その保険販売のチャネルにつ いては,7割を

IFA

が販売し,残り3割を銀行店舗が販売するという状態 で,銀行店舗におけるワンストップショッピング(クロスセル)が中心とな っているわけではない。また,バンカシュランスの最先端を行くと見られて いるフランスの

BNP

パリバは,銀行店舗での保険販売を主としているが,

そのグループ収益中の保険業務による収益が占める割合は3%程度にとどま っている。もっとも金融コングロマリットらしい金融コングロマリットとい えるオランダの

ING

を例にとって,世界各地でのワンストップショッピン グ提供の有無を見るため,INGの保険による利益とリテールバンキングに よる利益を地域別に区分し,両者のバランスを見た図−4では,オランダで こそ保険の利益に対するリテールバンキングの利益の比率が0.74と同等に近 いが,ベルギーではこれが0.55に下がり,その他ヨーロッパでは0.19になり,

それ以外の地域では,支店を持った形でのリテールバンキングは行われてい

4) 日本銀行信用機構局 金融サービスのグループ化−主要国における金融コン グロマリット化の動向− 日本銀行調査委報 2005年春(4月),2005年p.57。

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ないという状況になる。こうした状況を見ると,コングロマリットがワンス トップショッピングを主たる目的としているとは言いがたいように思われる。

一つのグループブランドの商品だけでワンストップショッピングを提供する モデルが,他社の商品を取り次ぐことでワンストップショッピングを提供す るモデルに比べて,とりたてて大きな効果を発揮するということはないよう である。

このように見てくると,金融コングロマリット化のメリットとして現実的 なものは,収益源泉の分散による事業ポートフォリオ構築と,それによる安 定化ではなかろうかと思われる。一つの事業が不調であっても他の事業の好 調でトータルとしての利益を安定化させることはできる。

ただしこれが総体としての収益力の強化をもたらしているかの判断は難し い。米国では,銀行事業で求められる利益率を保険事業であげることは難し く,総体としての利益率が下がってしまうことを嫌って,銀行による保険の 買収が行われないと言われる。シティグループやクレディスイスの事例もそ の脈絡で理解される。保険事業はスパンが長いので,短期的な収益への貢献

図−4 ING グループの保険による利益と

リテールバンキングによる利益の地域別分布

(04年)(百万ユーロ) 保険① リテール

バンキング② ②/① 0.74 0.55 0.19 0 0 0.29 1065

70 35 0 0 1170 1423

128 182 1669 751 4005 オランダ

ベルギー その他ヨーロッパ

南北アメリカ アジア・パシフィック

その他とも合計

(資料)

ING

グループのアニュアルレポートおよびプレゼンテーション 資料から作成

(20)

を求める事業体には向かないのではないだろうか。欧米ではこうした点を見 越して,異なった事業を経営統合したコングロマリットの株価を各事業に純 化した事業体の株価の組合せとして理論上計算される株価よりも低く評価す るコングロマリットディスカウントが存在する。

金融コングロマリットが保険をも含めた形で成長するためには,生保商品 と銀行商品の境界が曖昧なフランスのような環境下で事業を行っている場合 であるか,双方の融合といった試みをともなわず各業務の資本的な結びつき にとどめるような形で経営されている場合,といった条件が必要であると思 われるがどうであろうか。

(筆者は㈱ニッセイ基礎研究所勤務)

(参考 献)

Milliman European Bancassurance Review

2005 2005年

日本銀行信用機構局 金融サービスのグループ化−主要国における金融コングロ マリット化の動向− 日本銀行調査委報 2005年春(4月),2005年

損害保険事業総合研究所 諸外国における金融コングロマリットの実態について , 2005年

参照

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