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54 岩医大歯誌 11:54−56,1986

トピックス

歯面清掃器は安全か?

西山恵美子  佐々木  順  佐藤 久保田  稔

     岩手医科大学歯学部歯科保存学第一講座

〔受付:1986年1月13日〕

 歯の汚れや着色は歯面のあらゆる箇所に見ら れる。特に,歯面に広範に付着したタバコのヤ ニなどの清掃は実に厄介なものである。近年,

研磨材を圧縮空気と水とともに噴射して汚れを 除去する歯面清掃器が臨床で広く使用されつつ ある。この清掃器では強固に付着した歯石は除 去しにくいが従来の方法に比べ,歯面着色物の 除去効率もよく,操作も簡単で患者の苦痛も少 ないと言われている。

 本装置は原理的にはサンドブラスターと同様 であるが,その使用は果たして歯質や修復物に 対して安全といい切れるだろうか? 今回,こ

の問題を明らかにするため歯面清掃器を用いて 歯質と修復物の面荒れ状態を検討した。

1.歯質に対する安全性

 エナメル質に対しては軽度の面荒れが引き起 こされたが,その程度は従来行われている超音 波スケーラーやブラシコーンよりも少ない1の。

従って,臨床的には許容できるもので,問題は 少ないと思われる。

 これに対して,象牙質では高度の削除が引き 起こされた。すなわち,3mmの距離から1点 に向けて20秒間噴射すると,約0.5mmの深さ まで象牙質が削除された(表1)。臨床的にはこ のような条件で使用することはない。しかし,

1回0.5秒間の噴射を年4回リコール時に行っ ていくと,10年間で合計20秒となり,結果的に 象牙質は約0.5mm削除されることになる。さ

らに,頗蝕,咬耗,模状欠損などがあった場 合,歯髄への近接がより促進され,露髄の危険 すら生じて来ることから,象牙質への不用意な 使用は危険である。

2.修復物に対する安全性

 レジンにおいては,MFR型レジン(Micro−

rest⑱)の削除は象牙質とほとんど同じであっ た。しかし,従来型レジン(P−10@)ではMFR 型の削除より軽度であった(表1)。なお,削

表1 歯面清掃器1点噴射により惹起された各種   修復材料の最大深さ(ノズル距離3mm)

500

400

300

200

100

0 μm

D●nUn    Am●1gam   鮪1cro ■■t   ●−10

Safty of air polishing systenl on tooth and restotative materials.

 Emiko NIsIYA虹A, Yori SAsAKI, Sei SATo and Minoru KuBoTA

 (Depertlnent of Operative Dentistry, School of Dentistry, Iwate Medical University, Morioka O20  Japan)

岩手県盛岡市中央通1−3−27(〒020)       Dεη .J.τ四zθMε4、びπ訪、11:5←56,1986

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岩医大歯誌 11:54−56,1986

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a.MFR型レジン        b.従来型レジン         c.

      図1 歯面清掃器で噴射された3材料表面の電顕像(×200)

アマルガム

除面の電顕所見では図1に示すように,MFR 型(図1a)は有機質フィラーの露出が,従来 型(図1b)は無機質フィラーの露出が観察さ れ,ともに歯面清掃器の使用によりレジン表面 が粗造になっていることがわかる。

 一方,アマルガムにおいては,レジンの1/

10−1/20程度しか削除されず(表1),削除 面には,未反応合金相と思われる球状構造物が 見られた(図1c)。これに対し,陶材や銀パ

ラジウム合金ではエナメル質で観察された程度 の軽度な粗さになるだけであった。

 以上のように,修復材の種類により削除され る量や面荒れはだいぶ異なるものの,いずれの 材料においても,面荒れが増大することが明ら かとなった。興味深いのは,この面荒れの増大 が直ちにプラークの付着し易さに繋がるのかと 言うことである。レジンは面荒れが大きく成る ほど細菌の付着数が増加するが3),アマルガム はそのような傾向は少ない旬と言われ,細菌や プラークの付着が面粗さという単一原因に起因 していないと考えられる。しかし,この面荒れ は材料学的に決して好ましいものではない。

3.本装置を安全に使用するには

 歯面清掃器による歯肉縁上のプラーク除去は 1歯あたり約5秒間で十分である5)と言われて いる。この条件で使用する場合には,歯質ある

いは修復物に対する影響はほとんどないと考え られる。また,タバコのヤニなどの除去には長 時間を要するが,このような場合には肉眼的に 汚れの除去を確認しつつ使用することにより,

歯質あるいは修復物の損傷を軽減することがで

きる。

 その他の注意事項として,次のような事が挙 げられる。歯肉に向けて使用した場合,歯肉を 損傷する可能性がある。また歯肉溝内や開放さ れた根管内に向け使用した場合には歯肉を単に 損傷するだけでなく,気腫を起こす恐れがあ る。なお,研磨材粒子の成分は重炭酸ナトリウ ム,硫酸ナトリウムそして第3燐酸カルシウム であり,塩辛く患者にとってはかなり不快なも のである。さらに,研磨材粒子は清掃時に周囲 に飛び散り吸引もされる。これを防ぐには,適 切なバキュウム,患者の顔にタオルをかけるな どの配慮が必要である。このような事から,食 塩を制限されている高血圧患者や呼吸器疾患の 重症患者には禁忌である。

 以上,最近の教室での仕事の一部を紹介した が,新しい機械,器具,材料の使用に際しては 単にメーカーの説明にのみ頼るのでなく,自ら の検討により,その有効性,安全性を確認する 心がけが大切である。

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       文     献

1)永目誠吾,中井孝佳,竜門睦正,森孝,上村 参生,白石雅照,小西浩二:PROPHY−JETに

 よる歯面着色物の除去効果,歯界展望,63,541−

548, 1984L

2)久保田 稔,遠藤 修,安藤良彦,佐藤 保,

中嶋和郎,菊地由起子,熊谷敦史:歯面清掃器の 歯質および修復材におよぼす影響一一表面性状の

岩医大歯誌 11:54−56,1986 変化に関する基礎的研究,日歯保誌,28,681−

 689, 1985.

3)中田郁平:あらさの異なるコンポジットレジン 表面への微生物付着に関する研究,日歯保誌,26,

445−454, 1983.

4)坂本義昭:アマルガムの表面あらさと細菌付着

 に関する研究,日歯保誌,23,481−488,1980.

5)丸茂義二:歯面清掃機の臨床評価,歯学,73,

 124〜144, 1985.

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