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幼児への読み聞かせに関する母親の考え

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Academic year: 2021

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幼児への読み聞かせに関する母親の考え

著者 今井 靖親, 金 貞蘭

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 5

ページ 57‑65

発行年 1996‑03‑31

その他のタイトル The mothers  belief in reading to their children

URL http://hdl.handle.net/10105/4376

(2)

幼児への読み聞かせに関する母親の考え

今 井 靖 親・金 貞 蘭

(心理学教室)

The mothers beliefin reading to their ch‖dren

YasuchikaIMAI・Jungran KIM

(Department of Psychology)

要旨:奈良市内の幼稚園に適う園児(4歳児58名、5歳児54名)を持っ母親を対象に、①読み聞 かせに対する考え、②読み聞かせの目的、③読み聞かせ方法、④読み聞かせる量、⑤その他につ いてアンケート調査を行い、その実態を分析した。その結果、次のことが明らかになった。

(1)ほとんどの家庭で、読み聞かせの必要性・重要性が認識され、早い時期から読み聞かせが行な われている。(2日 ̄想像力・創造力」を伸ばすために本を読んであげている家庭が多い。(3)読み聞 かせの方法としては、「会話型」を用いている家庭が多い。(4)80%近くの家庭が1週間に2〜3 日以上、一目に10〜15分程度の読み聞かせを行なっている。(5)主に「母親」が、「子どもが要求 するとき」、「子どもと並んで」本を読んでいる家庭が多い。

キーワード:読み聞かせ、母親の考え 1.日 的

絵本を子どもに読み聞かせる行動は、現在の日本では、乳・幼児期初期から多くの家庭で日常 的に行なわれている。絵本の読み聞かせに関する心理学的アプローチは、1970年代後半から盛ん になり、さまざまな研究結果が報告されているが、その多くは、読み聞かせが子どもの言語や認 知の発達に及ぼす効果に関する研究や、読み聞かせ過程自体の分析等に関する研究であった。

たとえば、読み聞かせ過程に関する研究としては、絵本の読み聞かせに関する変数と望ましい 読み聞かせ条件の検討(中村、1992)や、家庭により親の読み方が異なること(大村他,1991)、

幼児期では子どもの年齢により、読み聞かせ中の親の発話数や内容が変化すること(大村・遠藤・

針生、1991)などの研究が挙げられる。

このことに関して、DeloacheとDemendoza(1985)は、母親と子どもの問の共通的な相互作 用の一つとして、本の読み聞かせを取り上げ、寝床で親が子どもに読み聞かせを行なうというの は多くの家庭において伝統的なことであり、このような親子ふれあいの経験(心理的環境)を提 供している核心的存在は母親であることを指摘している。

このように、読み聞かせが子どもの感情、認知、言語、社会性等の発達に大きな影響を及ぼす ことが知られるようになり(佐々木、1990;中村、1992)、読み聞かせに関する関心が高まって きた。

そこで本研究では、母親がどのような考えや目的をもって読み聞かせをおこなっているかを知

るために幼児をもつ母親を対象にアンケート調査を行い、幼児への絵本や童話の読み聞かせの実

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態を調べることを目的とする。

2.方 法

《調査対象〉奈良市内の幼稚園に通う園児(4歳児58名、5歳児54名)を持っ母親112人。子ども の平均年齢は、4歳児が5歳1か月、5歳児が6歳0か月であった。

〈材  料≫無藤 隆(「幼児における文字の読み書きと読書の技能と信念に関する研究」、

1993)を参考に作成した、29項目の質問が記載されている調査用紙

《手続 き〉幼稚園に依頼、幼稚園から保護者に調査用紙を配布する。質問に対して当てはまる ものを選んで丸をっけてもらった後、園を通して回答用紙を回収した。(回収率、

約95%)

3.結果と考察

質問紙の29項目それぞれについて、子どもの年齢(4歳と5歳)による母親の認識に差がある かどうかの検定を行なったところ、統計的な有意な差は認められなかった。そこで、この調査で は項目の内容を5つの領域(①読み聞かせに対する考え ②読み聞かせの目的 ③読み聞かせ方

④読み聞かせる竜 ⑤その他)に分け、4歳児と5歳児とを込みにして、主要な項目に関する考 察を行なうことにする。

3.1.読み聞かせに対する考え

項目1 《子どもに本を読み聞かせることについてどう思いますか〉 という質問に対しては、

図1に示したとおり、多くの母親が読み聞かせの必要性を認めて、自ら進んで積極的に、

あるいは子どもの要求に応じて読み聞かせを行なっていることがわかる。

腑 柚 舶 舶 用

∩闇Hmu V

ル 一 Y

〃 一 七

〃   H t

〝 山 ュ 2   0  

∧ V  

∧ y   p e p e   A V

. 爪 リ ー

▲ U

− 題 l l T   I J h t T  

′ h V   O   O  

・−1J IJ

図1 読み聞かせについての考え

項目2  《いっごろから本を読み聞かせ始めるのが望ましいと患いますか≫ という質問に対して

(4)

幼児への読み聞かせに関する母親の考え

は、図2に示されているように、86.6%の母親が、「牛後0か月から1歳の聞」を望ま しい時期として認識していることがわかる。

項目3  《実際に、いつから子どもに本を読んであげるようになりましたか茅 と、実際に読み聞 かを始めた時期を尋ねたところ、67.8%の母親が口上後から1歳の問」と答えている

(図3)。

項目2と3の結果から、母親は、子どもへの本の読み聞かせについて、その重要性、

必要性などを認識し、早い時期から本の読み聞かせを実践していること、すなわち、母 親の考えと行動の間には大きなギャップはなく、ある程度一致していると言える。

舶 柚 舶 舶 豊

□魁日田日田

図2 読み聞かせの望ましい時期

墜ツ予言言言蒜

仙 霊 加 ㈲

㈲ ㈲

ロ田且切口圏m皆 〃ル ht〃 Ht〃t〝 山t〝 Ht ・・lU O LIJ O O 1 1 J   3  

▲   A H V   A H V   O S   J

▼   一 題 0    

▼   l T   O  

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▼   一 丁 t V   j

セル山h⁚〃ルht〝〃掃い鷺 ︳神山l川 l   r J   7   1   1 H V   O l ・ l n V   / l n V

・   A V

− 1 J  

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∧ V   曾 e   2    

−     0  

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−  

⊥  

︳ 一 T   l  

図3 実際に読み聞かせを始めた時期

項目4  《いっまで、家庭で本を読んで聞かせてあげたいと考えていますか》 という質問には、

62.5%の母親が、「頼まなくなるまで」と答えている(図4)。このような結果から、読

み聞かせてもらいたがる子どもの要求が多いこと、母親は子どもの要求に応じ、親子の

(5)

楽しい語らいの場を提供していることなどがわかる。

ロ叫枇入与圧 拗けの外の E日和堆い 院=日用の 日射H招待 国11世心 mその他

叱〝 山方∴鷺〝 〃み=鷺〝 〃ル ht

一Y・′    rJ▼ トへV.J −V︐

00 甘′ lJ ・l l▲・一丁 ∧V

.−︳. 一AHV

O   p O

・ 題

▲ l l T   O   r J Y 一

− 題

図4 読み聞かせの継続期間 3.2.読み聞かせの目的

項目5  《なんのために子どもに本を読んであげていますか≫ と、日ごろの母親の考えを問う質 問に、複数回答してもらったところ、「想像力」や「創造力」の発達、「親子のふれあい」、

「本好きな子にするため」、「本を読む習慣をつけさせるため」に本を読んでいると答え た母親が多かった。本の読み聞かせを通して、技能や読み書きなど、認知的な側面の発 達をはかろうとしている家庭はそれほど多くなかった。ところが、図5−2に示したよ

うに、5歳児の母親のほうが、4歳児の母親よりも、「技能」的な面、すなわち「本を 読む習慣をっけさせるため」に本を読んでいる傾向が見られる。

添わ せ ‰ 訃力凱力誓I、あい

i羊く射大字 凱力 脚力

図5−1 読み聞かせる目的

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幼児への読み聞かせに関する母親の考え

項目6 《本を読んであげると、どんな良いことがあると思いますか≫ という質問に、複数回答 をしてもらったところ、図6−1に示したように、「想像力が豊かになる」、「言葉が増 える」、「本好きな子になる」などの順に答えが多かった。これに対して、「文字が覚え

られる」、「言葉が増える」など、読み書きや言語の発達についてはそれほど深く考えて いないようである。しかし、項目5の結果と同じように、子どもの年齢があがるにつれ 母親は本の読み聞かせを通して「文字」や「言語」の習得を期待する傾向が見られる

(図6−2)。

●一一斗長

▼‥Ⅴキ十

鱗)

臥力 私め 臥柚粗相払嘲胃鈷 払叫吊の叫臥側臥も

図6−1 読み聞かせの長所 図6−2 年長・年中の比較 3.3.読み聞かせの方法

項目7 〈どんなふうに読んでいますか》 という項目に9つの下位項目を設け、本を読むときの 様子について質問をした。答えはどこの項目においても「はい いっも」、「はいときど

き」、「いいえ」の3つ選択肢から選択させた。そして、回答を 《会話型≫、〈教授型》、

《反復型≫の3種類に分類し、それぞれを比較した。

《会話型》

①登場人物によって声を変えたりしながら劇のようにして読んでいる。

②子どもと絵本を通して会話をしながら読むようにしている。

《教授型≫

③字を教えながら読んでいる。

④本に出てくる物の名前を教えながら読んでいる。

⑤内容がわかるように、説明をくわえながら読むようにしている。

⑥読んでいるあいだ、書かれている内容を質問し、理解したかどうかを確かめながら読 んでいる。

《反復型》

⑦子どもが読んで欲しいというかぎり、何度でも、何冊でも読むことにしている。

(7)

(秒同じ本を繰り返し読むようにしている。

⑨できるだけいろいろな本を読むようにしている。

読み聞かせる方法については、図7に示している通り、いっも「劇のように」、「会話しながら」

読んでいる母親は、それぞれ50%と38%であった。これに対し、いっも「字を教えながら」、「名 前を教えながら」、「説明しながら」、「質問しながら」本を読む親は、それぞれ9%、22%、24%、

8%であった。このような結果は、本の読み聞かせの方法として、教授型より会話型が用いられ ていること、読み聞かせの際、絵本や童話の内容を単に棒読みするのではなく、登場人物の感情 や背景の様子を反映した読み聞かせを行なっていることを意味している。また、反復型として分 類された3つの下位項目については、いっも「同じ本を繰り返し」読んでいる親(23%)より、

いっも「色々な本を読んでいる」母親の方の割合(33%)が多かった。子どもの要求があるかぎ り、いっも「何冊でも読んでいる」母親も17%を占めていることは注目される。

%  会藷聖 教捜聖 丘珠型

冒っも 晋きどき冒いえ

図7 読み聞かせの方法

3.4.読み聞かせる頻度

項目8 《家庭でどのくらい、子どもに本を読んであげていますか≫ と読み聞かせの頻度を問う 質問に対する回答は、図8に示すとおりである。すなわち、1週間に2〜3日のペース で子どもに絵本を読み聞かせている家庭が、全体の約40%以上、また「かならず毎日」

「ほとんど毎日」本を読んであげている家庭を合わせると約34%となる。この点からも ほとんどの家庭において、本の読み聞かせは、子どもの成長・発達に価値あるものと考 えられていることがわかる。

項目9  《1日平均何分ぐらい読みますか〉 という質問には、10〜15分から20〜30分程度が全体

の85%を占めている(図9参照)。

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幼児への読み聞かせに関する母親の考え

□めったlこ 閻Jこilこ 臼とこrき

陶ほとんど 口かケらす

γ〃 Ht〃 Ht〃 Ht〃t

l l T   A U

▼ 一 P O   一 V l 一 H V 5   7   勺 t V

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▼ 一 1 P

− 1   1

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′ e   血 T

・ 一 ロ ー   1   0

− 1   t 一 l T  

図8 家での読み聞かせの頻度

[コ5分 閻川15分 E日0−30分 団30分一久上

叱〝Vル〟︾∴驚

け 1   3  

′ 0   3 あ

. 0  

− 9  

● e

′ O r コ

▼ 一 上 人 U

. T J   q

⊥   け t

. 一

. 1   1 H V   ヽ t V

図9 一口の平均読む時間 3.5.その他

項目10 《絵本を読む人≫ を尋ねたところ、両親が主で、中でも、特に「母親」が読み聞かせを 行なっている家庭がほとんどである。

表1 本を読んであげる人(複数回答)

本 を 読 む 人 母  親 父  親 兄  弟 祖  母 祖  父

% 9 6 .4 5 8 .9 2 3 ,6 1 6 .1 4 .5

項目11 《どんな時本を読むことが多いですか≫ には、「子どもが要求する時」、「寝る前」、

「親が時間がある時」の順に答えが多かった。

表2 読み聞かせを行なう目時(複数回答)

項目12 《読む時の姿勢》 については、「子どもと並んで」、あるいは「布団の中」が多いこと

がわかる。

(9)

表3 本を読んであげる時の姿勢(複数回答)

姿  勢 子 ど も と 並 ん で 布 団 に入 っ て 子 どもを抱 っこ して 子 ど もと向 き合 って

% 6 4 .3 5 7 .1 2 1 .4 1 3 .4

項目13 《現在どんな種類の本を読んでますか≫ という質問には、「日常生活を描いた本」、「空 想的なファンタジーを描いた本」、「日本の昔話」の順に答えが多く、「文字や数字の勉 強」に役立つような本を読んでいる家庭はわずかであった(図10)。

【:コ

咋生ほ乳。昔滋

鷲疲

【歪l

その他

Eヨ  切     駁l

要約木肌助冒ンガ 未年紬 でっけ 塚人

図10 現在読んであげている本の種類

項目14 《本を手に入れる方法》 としては、「親が買う」、「幼稚園から借りてくる」などの方法 で、本を手に入れる家庭が多かった(図11)。

㌻%)

(10)

幼児への読み聞かせに関する母親の考え

項目15 《本を選択する基準〉 については、「子ども基準」、「おもしろそうな本」を本を選ぶ基 準とし、特に、多くの家庭が「子どもに本を選ばせる」と答えている。

項目16 《子どものための本を何冊持っていますか》 という質問には、30冊以上持っている家庭 が、全体の70%以上を占めていた。その中でも、本調査の対象になった家庭では100冊 以上の本を持っている家庭が約30%を占めている(図12)。

ー 柵 柵 柵 加 盟

0

年ト日日∵∴川 口図日関口図m

t

t t

t

t

t

U I   P O   P J   I P   t

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l I   t

J   l l 1

l

l   t

l A U

l

l J

0

1

︳   1

−  

︳ T

. ん   2   1 J

図12 家で所有している子ども向けの本の冊数 引用文献

大村彰道・荻野美佐子・遠藤利彦・針生悦子1991絵本読み場面における母子相互作用(第2 報)安田生命社会事業団研究助成論文集,25,

佐々木宏子1990 増補 絵本と想像性

中村年江 1992 絵本の読み聞かせに関する心理学的研究Ⅲ 読書科学,36,3,81−88.

無藤 隆 1993 幼児における文字の読み書きと読書の技能と信念に関する縦断的研究 研究 成果報告書

Deloache J.S.and Olga A,P、,DeMendoza(1985).Joint PicturebookInteraction of mother and OneAYearrOld Children.ERICDocument Reproduction鮪ruiceNo 且D274960,3.

付記

本研究を行うにあたり、調査については、本学附属幼稚園の先生方と園児の保護者のご協力を

いただきました。また、資料の整理・分析については、幼児心理学研究室の岡本史さん、林みど

りさん、古澤多恵さん、有川佳尚書、中村知美さんのご協力を得ました。記して心から感謝しま

す。

参照

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