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(1)
田 村 馨 兵 土 美 和 子
フラットなコミュニティにおける リーダー選出に代替策はあるのか?
― PBL を左右する大学生リーダー選出をめぐる状況の点検 —
1.はじめに
大学における PBL は社会に出て必要となるリーダシップやチームワーク を学ぶ場となるべきだ。仕掛ける教員はそれを企画してプロジェクトを立ち 上げ,学生をそこに誘う。ところが成果は必ずしも教員が期するところに達 しない。なぜ?本稿が依って立つ問題意識はそこにある。
プロジェクトの正否は誰をリーダーに選ぶかに大きく左右される。どのよ うなプロジェクトであれ,コミュニティ,組織であれ,リーダーの選出はもっ とも重要な案件であり,大学生がメンバーのプロジェクトでも同じである。
2008 年2月にスタートした「書く力をきたえるプログラム」(以下,書く P と略す)においてリーダーの選出は,長いこと,田村,兵土が行ってきた。
田村,兵土はいわば書く P の代表取締役兼 CEO(最高経営責任者)。その権
限と責務をもってリーダーを指名してきた。リーダー指名の基準は2つ。1
つは「リーダーに相応しい統括力,責任感」を有すこと。もう1つは, 「チャ レンジさせたい,チャンスを与えたい」人物であること。後者は教育上の観 点から導かれる基準といえる(「チャレンジの場やチャンスを与える」は企 業においてもリーダー選出の基準になっていようから,ことさら「教育上の」
を強調する必要はないかもしれないが)。
書く P では,ここにきて,「上からのリーダー指名」とは異なる選出方法 を模索しはじめた。それは,上からのリーダー指名の限界を痛感する状況や 課題が目立つようになってきたからである。たとえば,リーダーやメンバー のモチベーションを高め維持することが前にも増して難しくなっている。ま た,「一歩踏み出す」ことが人生の転機になることを中高生に伝える書く P の立ち位置に照らすとき,大学生自身が「一歩踏み出す」気概と姿勢でプロ ジェクトに臨むことが望まれるにもかかわらず,主体性や当事者意識の希薄 さが大学生に目立ってきた。いわば,これまで「組織」としてデザインして きた学生メンバーの集団(コミュニティ)を,「生態系(エコシステム)」と してリデザインする必要性が増しているのだ。
敷衍するなら,組織から生態系へのトランスファーが必要だと考えるの は,1つに,プロジェクトを構成するプログラムの企画・開発はもちろん,
プロジェクトのコンセプトメーキングまで大学生が主体的に関与する現実が
あり,その変化をより後押ししたいためである。2つに,1つめと関連する
が,プロジェクトのタスクが高度化するなか,以前にも増して,大学生の主
体性や当事者意識を前提にプロジェクトを進めざるを得なくなっているから
だ。3つに,書く P の顧客である次世代に求められる能力が「創造性」や「イ
ノベーション」に関わるものに移行する時代の変化に照らすとき,プロジェ
クト自体が「創造性の発掘」や「イノベーションの担い手育成」の場となる
必要があり,そのためには組織から生態系へのトランスファーが不可欠だか
らである。
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
代替策はあるのか?(田村・兵土) ― 313 ―
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を中 高 生 に伝 える書 く P の立 ち位 置 に照 らすとき、大 学 生 自 身 が「一 歩 踏 み出 す」気 概 と姿 勢 で プロジェク ト に臨 むことが望 まれるにもかかわらず、 主 体 性 や当 事 者 意 識 の希 薄 さが大 学 生 に目 立 ってきた。いわば、これまで「組 織 」としてデザインしてきた学 生 メンバーの集 団 (コミュニティ)を、「生 態 系 (エコシステム)」としてリデザインする必 要 性 が増 しているのだ。
敷 衍 するなら、組 織 から生 態 系 へのトランスファーが必 要 だと考 えるのは、1つに、
プロジェクトを構 成 するプログラムの企 画 ・開 発 はもちろん、プロジェクトのコンセプトメー キングまで大 学 生 が主 体 的 に関 与 する現 実 があり、その変 化 をより後 押 ししたいため である。2つに、1つめと関 連 するが、プロジェクトのタスクが高 度 化 するなか、大 学 生 の主 体 性 や当 事 者 意 識 を前 提 にプロジェクトを進 めざるを得 なくなっているからだ。3 つに、書 く P の顧 客 である次 世 代 に求 められる能 力 が「創 造 性 」や「イノベーション」に 関 わるものに移 行 する時 代 の変 化 に照 らすなら、プロジェクト自 体 が「創 造 性 の発 掘 」 や「イノベーションの担 い手 育 成 」 の場 となる必 要 があり、そのためには組 織 から生 態 系 へのトランスファーが不 可 欠 だと考 えるからである。
以 上 の理 由 からリーダーの選 出 方 法 を大 きく変 えようとしているのだが、そもそも、
こ れ ま で の リ ー ダ ー 選 出 の 評 価 を デ ー タ 的 に 行 っ た こ と は な い 。 プ ロ ジ ェ ク ト の 成 果 は PDCA サイクルを回 しながら数 値 に落 とすので成 果 は数 値 で把 握 でき、過 去 のプロジェ
図表1 プロジェクトを運営する大学生コミュニティを組織から生態系にリデザインする
対等なメンバーの中の第一人者 責任者
組織(ヒエラルキー) 生態系(ダイバーシティ)
注:「対等なメンバーの中の第一者」という表現は『サーバント・リーダーシップ』から借りた。
図表1 プロジェクトを運営する大学生コミュニティを組織から生態系にリデザインする
責任者
組織(ヒエラルキー)
注: 「対等なメンバーの中の第一者」という表現は『サーバント・リーダーシップ』から借りた。
生態系(ダイバーシテイ)
対等なメンバーの中の第一人者
以上の理由からリーダーの選出方法を大きく変えようとしているのだが,
そもそも,これまでのリーダー選出の評価をデータ的に行ったことはない。
プロジェクトの成果は PDCA サイクルを回しながら数値に落とすので成果 は数値で把握でき,過去のプロジェクトはいずれも目標をクリアしてきた。
この数値目標をもってプロジェクトは成功したと評価し,リーダーの人選も 結果的に「良し」としてきた。
リーダーの選出方法を変えるとしても,現行の選出方法をデータ的に評価 しておくことは必要であろう。以下では,現行のリーダー選出方法をデータ 的に点検した作業結果を紹介したい。
2.使用するデータ
リーダーの選出方法をデータ的に点検するとして,どのようなデータの利 用が望ましいだろうか。
大学生をリーダーに仕立てるのは,実は難しい。多くの大学生が「自己肯
定感」が弱く,自分のリーダーとしての資質に自信をもっていないからであ る。この現状から,単純だが,「自分の強みに自覚的で,自己認識する強み の数が多い大学生がリーダーとして選出されるべき」との仮説が導かれる。
では,実際のリーダー選出はそのような大学生をリーダーとして選んできた のだろうか。
データとして利用したのは,国際的に著名な心理学者マーティン・セリグ マン(ペンシルベニア大学心理学教授)らが開発した強みテストの結果であ る。具体的には,セリグマン博士の『ポジティブ心理学の挑戦』(日本語版,
2014 年)の巻末にある「強みテスト」(簡略版 VIA)を利用した。この「強 みテスト」は,世界 190 カ国,260 万人以上の人が利用した,強みの診断ツー ルとしては世界でもっとも信頼がおけるといわれる VIA-IS(Value in Action Inventory of Strengths)の簡略版である。VIA-IS はセリグマン博士,クリス トファー・ピーターソン博士らによって開発され,ペンシルバニア大学のサ イト上でオンラインで誰もが使える(多言語対応の)診断ツールだ(https://
www.authentichappiness.sas.upenn.edu/ja/home)。
VIA-IS は 120 の設問からなる。簡略版は 48。43 人の大学生には簡略版で
診断をうけてもらった。本診断ツールは人間の強みを大きく6つ,細分類で
24 にわける。個々の強みは2つの質問に対する自己認識評価(「とてもよく
あてはまる」5点,「あてはまる」4点,「どちらでもない」3点,「あては
まらない」2点, 「全くあてはまらない」1点)の合計点で算出される。い
わば,24 の強みが2- 10 点の範囲で点数化される。
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図表2 強みテストの簡略版質問票(ペンシルバニア大ポジティブ心理学)
知 恵 と 知識
創造性 何かをするのに,新しいやり方を考えるの が好きだ
友人のほとんどは,自分よりも想像力が豊 かだ
好奇心 世の中について好奇心をもっている すぐに退屈してしまう 知的柔軟性 必要に応じて,極めて合理的に考えること
ができる 物事をぱっと決断しがちだ
向学心 何か新しいことを学ぶ時,わくわくする わざわざ博物館に足を運んだりすることは 一度もない
大局感 いつも物事をよくみて,全体像をとらえる ことができる
他人が助言を求めてくることはほとんどな い
勇気
勇敢さ よく強い抵抗にあう立場をとってきた 苦悩や失望に挫けてしまうことがよくある 忍耐力 始めたことは必ずやりとげる 課題に取り組むとき脇道にそれる 誠実さ 約束は必ず守る 友人から飾らない人間だと言われたことが
一度もない 熱意 やることなすことすべてに全力投球する 落ち込むことが多い
人間性
愛情 自分には我がことのように自分の気持ちや
調子を気遣ってくれる人がいる 他の人からの愛をうまく受け入れられない 親切心 この1ヶ月の間に周囲の人を自発的に助け
たことがある
他の人の幸福を我が事のように嬉しく感じ ることはほとんどない
社会的知能 どんな社会的状況においても適応すること ができる
他の人の気持ちに気づくのはあまり得意で はない
正義
チームワー ク
グループの中にいるときに自分の力を最大 限に発揮することができる
自分の属するグループの利益のための自分 の利益を犠牲にすることには抵抗がある 公平さ どんな人であろうと誰でも平等に扱う 誰かのことが嫌いな場合その人を公平に扱
うのは難しい リーダー
シップ
口うるさくいうことなく,人をまとめて競 業させることができる
グループ活動を計画するのはあまり得意で はない
節制
寛容さ 過去のことはいつも水に流す いつも仕返ししようとする 慎み深さ 人にほめられると話題を変える 自分の業績についてよく自慢する 思慮深さ 身体的に危険な行動は避けるようにしてい
る
友人,恋愛関係で,ときどき選択を誤って しまうことがある
自己調整 自分の感情をコントロールできる ダイエットはほとんど続いたためしがない
超越性
審美眼 ここ1ヶ月の間に,音楽,美術,映画,スポー ツなどの素晴らしさに心躍ったことがある
この1年間,美しいものを何も生み出して いない
感謝 どんな小さなことであっても必ず「ありが とう」という
自分がいかに恵まれているか,立ち止まっ てよく考えてみることはほとんどない 希望 物事をいつもよい方向に考える やりたいことのために,じっくり計画を立
ててみることはほとんどない ユーモア いつでもできる限り仕事と遊びを織り交ぜ
る おもしろいことはほとんど言わない
精神性 自分の人生には明確な目的がある 人生における使命がない
注:マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦』(2014 年)掲載の調査票。
3.プロジェクトのメンバーの「強み」―その傾向と特徴
まず,「強み」の項目ごとの平均得点と項目ごとのメンバーの得点のバラ つきをみてみよう。「勇敢さ」「知的柔軟性」「忍耐力」「自己調整力」の平均
図表3 強みのメンバーの平均得点,メンバー間の変動係数
平均得点 変動係数
創造性 6.814 0.201
好奇心 6.744 0.226
知的柔軟性 5.907 0.278
向学心 7.907 0.193
大局感 7.000 0.260
勇敢さ 5.860 0.305
忍耐力 6.000 0.299
誠実さ 7.605 0.211
熱意 6.349 0.278
愛情 7.977 0.225
親切心 8.209 0.175
社会的知能 7.535 0.211
チームワーク 7.023 0.250
公平さ 6.465 0.308
リーダーシップ 6.093 0.304
寛容さ 7.116 0.252
慎み深さ 6.884 0.282
思慮深さ 6.930 0.244
自己調整 6.140 0.267
審美眼 8.093 0.211
感謝 8.651 0.149
希望 7.233 0.211
ユーモア 7.605 0.243
精神性 7.070 0.309
平均 7.050 0.245
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
代替策はあるのか?(田村・兵土) ― 317 ―
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得点が低い。平均得点高いのは「感謝」 「親切心」 「審美眼」 「愛情」などだ。「人 として優しいが、苦境や突破力に乏しい」と総括してしまいたいところだが,
データに即して傾向をみておこう。
図表が示唆するのは,平均得点と得点のバラつきの負の関係である。平均 得点が高い「強み」項目ではメンバー間のばらつきが小さく,平均得点が低 い「強み」項目ではメンバー間のばらつきが大きい。いわば,平均得点が高 い「強み」は多くのメンバーが強みだと自己認識する。強みに関するメンバー の同質性が高いと表現しておく。他方,平均得点が低い「強み」を「強み」
だと認識するメンバーは相対的に少ない。強みに関するメンバーの異質性が 高いといっておこう。
次に、43 人のメンバーごとに,「強み」の平均得点と「強み」間のバラつ き(変動係数)をみていこう。最低平均得点は 5.3 点,最高平均得点は 8.3 点。
5.3 点のメンバーは, 「そういう強みをもっているか」を問う設問に対して,
「あてはまらない」 (2点)+「どちらでもない」 (3点)や「どちらでもない」
(3点)+「どちらでもない」(3点),あるいは「まったくあてはまらない」
関 するメンバーの異 質 性 が高 いといっておこう。
図表3 強みのメンバーの平均得点、メンバー間の変動係数 平均得点 変動係数
創造性 6.814 0.201
好奇心 6.744 0.226
知的柔軟性 5.907 0.278
内学心 7.907 0.193
大局感 7.000 0.260
勇敢さ 5.860 0.305
忍耐力 6.000 0.299
誠実さ 7.605 0.211
熱意 6.349 0.278
愛情 7.977 0.225
親切心 8.209 0.175
社会的知能 7.535 0.211 チームワーク 7.023 0.250
公平さ 6.465 0.308
リーダーシップ 6.093 0.304
寛容さ 7.116 0.252
慎み深さ 6.884 0.282
思慮深さ 6.930 0.244
自己調整 6.140 0.267
審美眼 8.093 0.211
感謝 8.651 0.149
希望 7.233 0.211
ユーモア 7.605 0.243
精神性 7.070 0.309
平均 7.050 0.245
図表4 強みの平均得点と変動係数の散布図
0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35
5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9
強 み の メ ン バー 間 の 変 動 係 数
強み のメンバーの平均得点
図表4 強みの平均得点と変動係数の散布図
(1点)と「あてはまる」 (4点)等の組合せでこたえたことが想像される(あ る「強み」の得点は2つの設問に対する得点の合計として計算される)。他方,
8.3 点のメンバーは、「あてはまる」+「あてはまる」,「とてもよくあてはま る」+「どちらでもない」,「とてもよくあてはまる」+「あてはまる」など ポジティブな尺度の選択が多かったことが想像できる。
平均得点 変動係数 平均得点 変動係数
1 5.333 0.378 23 7.000 0.179
2 5.542 0.310 24 7.042 0.194
3 5.750 0.391 25 7.083 0.282
4 6.250 0.264 26 7.167 0.299
5 6.292 0.279 27 7.250 0.313
6 6.292 0.504 28 7.250 0.212
7 6.417 0.243 29 7.250 0.235
8 6.417 0.287 30 7.250 0.271
9 6.458 0.204 31 7.292 0.208
10 6.708 0.345 32 7.375 0.215
11 6.792 0.285 33 7.417 0.297
12 6.792 0.249 34 7.583 0.198
13 6.833 0.352 35 7.708 0.173
14 6.875 0.207 36 7.792 0.254
15 6.875 0.138 37 7.792 0.242
16 6.917 0.170 38 8.833 0.218
17 6.917 0.208 39 8.083 0.222
18 6.958 0.340 40 8.083 0.167
19 6.958 0.259 41 8.125 0.164
20 6.958 0.201 42 8.208 0.161
21 6.958 0.289 43 8.292 0.169
22 7.000 0.231 平均 7.050 0.251
図表5 メンバー別の「強み」の平均得点, 「強み」間の変動係数
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
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平均得点と変動係数の負の関係はメンバー間でも確認できる。平均得点が 高い「メンバー」は「強み」(各項目の得点)間のばらつきが小さく,平均 得点が低いメンバーは「強み」間のばらつきが大きい。平均得点が高いメン バーは,総じて多くの項目でそれらを自らの「強み」だと肯定的に認識する。
低いメンバーは,自らの「強み」だと肯定的に認識する項目と否定的に認識 する項目がバラけている。強味と弱味の幅が大きいと表現しておこう。
4.データによる点検
「強み」データを手がかりに,リーダーを選出するとするなら,どのよう な選出基準を設ければよいであろうか。メンバーおよび項目の「強み」に関 する平均得点と変動係数からうかがえる,メンバー及び集団の特性を前提に するなら,「強みの平均得点が高いか低いかでメンバーを区分し,高いメン バーグループを L 型グループ(リーダーグループ),低いメンバーグループ を NL グループ(非リーダーグループ)とする」方法が望ましい策となるで それらを自 らの「強 み」だと肯 定 的 に認 識 する。低 いメンバーは、自 らの「強 み」だと肯 定 的 に認 識 する項 目 と否 定 的 に認 識 する項 目 がバラけている。強 味 と弱 味 の幅 が大 きいと表 現 しておこう。
4.データによる点 検
「強 み」データを手 がかりに、リーダーを選 出 するとするなら、どのような選 出 基 準 を 設 ければよいであろうか。メンバーおよび項 目 の「強 み」に関 する平 均 得 点 と変 動 係 数 からうかがえる、メンバ ー及 び 集 団 の特 性 を前 提 に するな ら、「強 みの平 均 得 点 が高 いか低 いかでメンバーを区 分 し、高 いメンバーグループを L 型 グループ(リーダーグルー プ)、低 いメンバーグループを NL グループ(非 リーダーグループ)とする」方 法 が望 ましい 策 となるであろう。リーダーには、自 覚 する強 みが必 要 だからだ。その背 後 に想 定 する 因 果 関 係 は 、 (1) 平 均 得 点 が 低 い メ ン バ ー は 、 自 ら の 「 強 み 」 に 関 し て ポ ジ テ ィ ブ な
(平 均 得 点 が高 い)メンバーをリーダーと自 然 に見 做 すであろう、(2)自 らの「強 み」に 対 するポジティブさは自 らの「強 み」に対 してネガティブなメンバーを感 化 しエンカレッジ する可 能 性 が高 い、だ。ここで(1)と(2)が成 立 する可 能 性 は、L 型 グループと NL 型
図表6 強みの平均得点と強み間の変動係数でメンバーをプロットした散布図
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5
「
強 み
」間 の 変 動 係 数
メンバーの「 強み」の平均得点
図表6 強みの平均得点と強み間の変動係数でメンバーをプロットした散布図
あろう。リーダーには,自覚する強みが必要だからだ。その背後に想定する 因果関係は, (1)平均得点が低いメンバーは,自らの「強み」に関してポ ジティブな(平均得点が高い)メンバーをリーダーと自然に見做すであろう,
(2)自らの「強み」に対するポジティブさは自らの「強み」に対してネガティ ブなメンバーを感化しエンカレッジする可能性が高い,だ。ここで(1)と(2)
が成立する可能性は,L 型グループと NL 型グループの間で「強み」の差が あり,差がある項目が多いほど,高くなると期待される。
では実際に,L 型グループと NL 型グループの間で「強み」の差があり数 が多くなる区分はどういうものかを点検してみよう。区分の方法は大きく2 つ。
1.メンバーの強みの平均得点(24 項目の)の高低で分ける。
2.メンバーの平均得点が低くバラつきが大きな「強み」項目で,平均得点 が高いグループと低いグループに分ける。平均得点が低い強み項目では,メ ンバー間のバラつきが大きいので,より多くの「強み」項目で有意な差が検 出されると期待できる。
まず1の区分でデータによる点検を行ってみた。8点を基準に分けた結果 は図表7にある通り。強みに関して 12 項目で統計的に有意な差が認められ る。
他方,2の方法で行った結果は図表8に示す(区切る得点は項目によって 調整した)。予想に反して,統計的に有意な差が認められる項目数は総じて 少なく,得点が低い項目ほど有意な差が認められる項目数は多くなる傾向も 確認されない。
これらの点検から導かれるインプリケーションは,特定の強み項目を基準
にリーダーを選出するよりも,総合的な評価基準でリーダーを選出する方が
望ましいというものだ。リーダーとは総合力で選ぶべきものだと言い換えて
もいいかもしれない。
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
代替策はあるのか?(田村・兵土) ― 321 ―
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図表7 L 型と NL 型の比較で有意な差が確認できた強みの項目
―強みの平均得点で L 型,NL 型にメンバーを区分した―
全体 L 型 NL 型 平均値の検定
創造性 6.814 8.200 6.632 **
好奇心 6.744 8.200 6.553 **
知的柔軟性 5.907 7.200 5.737 *
内学心 7.907 8.000 7.895
大局感 7.000 8.000 6.868 **
勇敢さ 5.860 8.400 5.526 ***
忍耐力 6.000 7.400 5.816 *
誠実さ 7.605 7.800 7.579
熱意 6.349 8.600 6.053 ***
愛情 7.977 7.600 8.026
親切心 8.209 8.600 8.158
社会的知能 7.535 8.400 7.421
チームワーク 7.023 8.800 6.789 **
公平さ 6.465 8.200 6.237 **
リーダーシップ 6.093 7.800 5.868 **
寛容さ 7.116 8.200 6.974
慎み深さ 6.884 7.600 6.789
思慮深さ 6.930 7.600 6.842
自己調整 6.140 6.400 6.105
審美眼 8.093 8.800 8.000
感謝 8.651 8.800 8.632
希望 7.233 7.600 7.184
ユーモア 7.605 9.800 7.316 ***
精神性 7.070 9.800 6.711 ***
注① L 型 5 人,NL 型 38 人。
注② *は 10%,**は5%,***は1%で統計的に有意な「差」
があることを示す。以下の図表も同じ。
図表8 L 型と NL 型の比較で有意な差が確認できた強みの項目
―項目ごとに強みの得点で L 型,NL 型にメンバーを区分した―
勇敢さ 知的柔軟性 忍耐力 リーダーシップ 自己調整 熱意 公平さ 好奇心 創造性 慎み深さ 思慮深さ 大局感 チームワーク 精神性 寛容さ 希望 社会的知能 誠実さ ユーモア 向学心 愛情 審美眼 親切心 感謝
創造性
*** ** ● * **好奇心
* ● ** *** * *知的柔軟性
* ● * *** *内学心
●大局感
*** ● *** * *** *勇敢さ
● *** * ** *忍耐力
● ** ** **誠実さ
*** ●熱意
*** ● ** ** ** *愛情
* * * ● * **親切心
** ** *** ** ● ***社会的知能
* * * ●チームワーク
** *** ● *** ******公平さ
● * ** **リーダーシップ
** ● ** *寛容さ
● ** * **慎み深さ
● ** **思慮深さ
* * *** ● *自己調整
●審美眼
** * ** *** ●感謝
** *** ** ●希望
** ● *ユーモア
** ** * ● ***精神性
** * * ● *区切り得点
8 8 8 8 8 8 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 10 10 10 10 10 10L 型メンバー数
8 8 10 7 9 12 6 7 7 8 9 9 8 13 9 9 15 13 6 8 10 10 9 14注:項目は平均得点が低い方から高い方へ,左から右に並んでいる。
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
代替策はあるのか?(田村・兵土) ― 323 ―
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5. 「リーダーをメンバーが選ぶ」選出方法の点検
多くの組織では人が人を選ぶ。数値的なことも参照されようが,基本は, 「そ の人物の総合的な評価」を頼りにリーダーは選ばれる。複数のリーダー格の メンバーに「リーダーに相応しいか」 「リーダーシップがあるか」を基準に L 型メンバーを選出してもらった。NL 型グループとの間で有意な差が確認 できた項目を図表9に纏めた。
「リーダーシップがあると思うメンバー」をメンバーが選ぶ結果は,ここ での基準に照らす限り,惨憺たるものである。リーダーシップがあると見做 すということは他のメンバーに比べ異質なところがあると認識しているは ず。だが,図表9が示す通り,リーダーシップがあるとして他のメンバーが 主観的に選んだメンバーで構成されるグループは,強みテストによる選出に 比べ,相対的に異質性に欠ける。それを裏付けるように,他のメンバーが選 んだ「L 型グループメンバーリスト」と強みテストによる「L 型グループメ ンバーリスト」は半分程度しか合致していない。
では、書く P でのリーダー経験と「強み」の得点の間にはどのような関 係があるだろうか。理想をいえば、図表 10 にあるような関係を期待したい。
つまり,書く P のリーダーを経験することで自分の「強み」を発見し自覚 的になる度合いが高い,あるいは自分の「強み」に自覚的な学生がリーダー に選ばれる可能性が高いことが理想的だからだ。
ただし,現実は,この理想的な想定を支持しない。図表 11 に示すように,
リーダー経験者 20 人をプロットした図表 11 に期待したような傾向は確認で
きない。
図表9 「リーダーに相応しいか否か」を基準にメンバーが選んだ学生で構成される L 型グループと NL 型グループの比較
関係者が選んだ「リーダーシップがあるメンバー」か否かでの区分 左 の 4 人 以上がリー ダーシップ があるとみ なしたメン バーか否か での区分
リーダー的 な 役 職 に ついたこと があるメン バーか否か での区分
強みの平均得 点の高低での 区分(8点以 上か否か,7.5 点以上か否か
(括弧内))
書 く P の 経 験 者 か 否 か で の 区分
3年 3年 4年 4年 社会人
1 年 兵士 田村 総括経験
有 総括経験
無 総括経験
有 総括経験
無 総括経験
有 書く P ディレクター
書く P プ ロデューサー
知恵と 知識
創造性 *** *** * ** * ** * ** **
好奇心 **
(***)
知的
柔軟性 *(*)
向学心 ** **
大局観 ** **
(***)
勇気
勇敢さ *** ***
(***)
忍耐力 *(**)
誠実さ
熱意 ** *** *** ** *** *** *** ***
(***) **
人間性 愛情 *** * **
社会的
知能 * *** *
正義 チーム
ワーク * **
(**) ***
公平さ **
(***)
リーダーシップ * **
節制 寛容さ (**)
思慮深さ * (***)
超越性
審美眼 (**)
感謝 *
希望 (*)
ユーモア ***
精神性 ***
(***)
L 型メンバーの数 12 10 10 12 11 9 9 10 20 5(10) 27
選 ば れ た メンバー
2年 A ● ●
2年 B ●
2年 C ● ● ●
3年 A ● ● ● ● ● ● ● ●
3年 B ● ● ●
3年 C ● ● ● ●
3年 D ● ● ● ● ● ● ● ● ●
3年 E ● ●
4年 A ● ● ●
4年 B ● ● ● ● ● ● ●
4年 C ●
4年 D ● ● ● ● ● ● ● ●
4年 E ● ● ●
4年 F ● ●
4年 G ● ● ● ● ● ● ● ●
4年 H ● ● ● ● ● ● ●
4年 I ● ●
4年 J ● ● ● ●
4年 K ● ● ● ● ● ●
4年 L ● ● (●)
社会人 1 年 A ● ● ● ● ● ● ● ●
社会人 1 年 B ● ● ● ● ● ● (●)
社会人 1 年 C ● ● ● ● ● ● ● ●
社会人 1 年 D ●
+ 3年 2 人,2年 1 人
フラットなコミュニティにおけるリーダー選出に
代替策はあるのか?(田村・兵土) ― 325 ―
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図表 10 強み得点とリーダー経験度の理想的な関係
リーダー経験度
弱み弱点
図表 11 強みの平均得点とリーダー経験度の関係
5 6 7 8 9
強みの平均得点
リーダー経験度
11
9 7 5 3 1