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公共安全情報該当性に関する司法審査のあり方につ いて

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(1)

公共安全情報該当性に関する司法審査のあり方につ いて

著者 高橋 正人

雑誌名 静岡大学法政研究

巻 15

号 2‑4

ページ 420‑380

発行年 2011‑02‑28

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00006631

(2)

論   説

は じめ に

(1)情 報公 開 。個人情報保護制度 は平成 11年 の「 行政機関 の保有す る情報 の公 開 に関す る法律」 (以 下、情報公開法 とす る )の 成立及 び各 自治体 にお ける情報公開法 の 規定 にあわせ た情報公開条例 の改 正 (制 定 )、 「平成 15年 の行政機 関 の保有す る個人情報 の保護 に関す る法律」 (以 下 、 行 政 機 関個 人 情 報保護法 とす る )及 び各 自治体 に お ける行政機関個人情報保護法 に

公共安全情報該 当性 に関する 司法審査 のあ り方 について

高 橋 正 人

規定 にあわせ た個人情報保護条例 の改正 (制 定 )に よ って国及 び地 方 自治体 のお け る法制度 の整備 の 問題 は解 決 した とい って よ い

1。

現在 の関心 は法制度 の整備 か ら、

判例動 向 (両 制度 は 自治体先行型 なので

2、

判 例 につ いて は国法 の 制定前か ら蓄積 されてい る )や 、 いわゆる 副作用 "の 問題である。

副作用 "の 問題 につ いて本稿 で は検討 しないが、個人情報保護 の 分 野 に お け る「 過 剰 反 応 」 の問

1平 20年 8月 1日 の総務省報道資料 によると、都道府県・ 市区町村の情報公開条例 (要 綱等 )の 制定率 は99.5%で ある (都 道府県 は全て制定

)。

2自 治体固有 の不開示情報 として法令秘情報がある。 また、広 島高裁松江支判平成 18 年 10月 11日 (判 時 1983号 68頁 )は 、法定受託事務 に関す る「処理基準」 (地 方 自治 法 245条 の 9)に よ り不開示 とされている情報 は開示 で きないとの判断を している (鳥 取県情報公開条例 のケースー本判決 を含 めた判例 の動向については、近藤哲雄

『 自治体法学 (第 一次改訂版

)』

221‑222頁 (2008年 ))。

‑91(420)一

(3)

3ゃ 災 害 時要保 護者 の情報 共 有 等 4が 課 題 と して取 り上 げ られ て

い る

5。

(D本 稿 の関心 は、判例 の展 開、

特 に「公共安全情報」 (ネ ー ミン グにつ いて は他 に もあるが本稿 で はこれで統一す る )に 関す る司法

審査 のあ り方 で あ る。周知 のよ う に、 情報公 開法 5条 4号 は、「 公 にす ることによ り、犯罪 の予防、

鎮圧 又 は捜査、公訴 の維持、刑 の 執行 その他 の公共 の安全 と秩序 の 維持 に支障を及 ぼすおそれが あ る と行政機関 の長が認 め ることにつ き相当の理由がある1騰艮 (傍 線部 一 筆者   以 下 同 じ )」 を不 開示情報

と して規定す るとともに、行政機 関個人情報保護法 14条 5号 も同旨

(「/Ak lこ

す る こと」が「開示す るこ

と」 にな っている )の 規定 を設 け て い る。地方 自治体 の情報公開条 例・ 個 /11情 報保護条例 もこれに倣 っ て不開示情報 と して公共安全情報 を規定 (改 正 )し てお り、公共安 全情報該当性 に関す る判例 も目に 付 くよ うにな って きた。

侶 )公 共安全情報該 当性 に関す る 司法審査 のあ り方 につ いて、今後 の下級審 に対 して も影響 を与 え る と考え られ るのが、 「 偽名領収書」

が公共安全情報 の不開示 を規定す る滋 賀 県 情 報 公 開条 例 6条 3号

(規 定 内容 は情 報 公 開法 5条 4号

に同 じ )に 該 当す るとの判断 を示 した最判平成19年 5月 29日 (判 時 1979号 52頁 )で あ る。公共安全情 報 につ いて は、「 行政機 関 の長 が

3戸 部真澄「情報公開法・ 個人情報保護法」法律時報 80巻 10号 (2008年 )32‑33頁 、 磯部哲「行政保有情報の開示・ 公表 と情報的行政手法」磯部力 ほか『行政法の新構 想 Ⅱ』 (2008年 )352‑354頁 等。

4人 見剛 =前 田定孝「防災行政 と地方 自治体 ―消防行政を中心 に」法律時報 81巻 9号 (2009年 )31頁 、野村武司「行政 による情報 の収集、保管、利用等」磯部 ほか・ 前 掲書 341頁 (児 童虐待防止 のための要保護児童対策 について も言及 されている )等 。 5情 報公開制度 においては、大量請求の問題がある。 この場合、事業者側 の権利濫用

を持ち出す判例 もあるが、極端な事例を除いては手数料等 によって対処すべ きあろ う。大橋洋一『行政法 I』 (2009年 )131頁 、阿部泰隆『行政法解釈学 I』 (2008年 )

541頁 。 なお、佐賀地判平成 19年 10月 5日 (判 自 307号 10頁 )は 情報公開請求権 の濫

用 に当た らないとしている。

(4)

公共安全情報該当性に関す る司法審査のあ り方について 認 め る ことにつ き相 当の理 由があ

る情報」 と規定 され ることで (国 の場合 は外交・ 防衛 に関す る 5条 3号 も同 旨の規定 )、 行 政機 関 の 長 に要件裁量 を認 め る趣 旨である と説かれて きたが 67、 以 降の裁判 例 には平成 19年 最判 に依拠 し、実 施機関の裁量判断を ほぼそのまま 受 け入 れて い る判例が見受 け られ る (何 らか の抽象 的な「 おそれ」

が存在す るな らばよい とい う考え 方

)。

にに の よ うな判決 は、裁量審査 に関す る最近 の最高裁判例 (広 汎 な行政裁量 を認 めつつ、判断過程 を精査 し裁量 の逸脱・ 濫用 を認 め た、最判平成 18年 2月 7日 (民 集 60巻 2号 401頁 )、 最判平成 19年 12 月 7日 (民 集 61巻 9号 3290頁 ))

とは逆行 す る もので あ り、判例 に 求 め られ るの は、行政機 関の裁量

を尊重 しなが らも個 々の情報 が、

不 開示情報 に該 当す るのか とい う 綿密 な審査 であ る。

(5)ま た、諮問機 関である情報公 開・ 個人情報保護審査会 (自 治体 で は両者 を分 けて設置 しているこ とが多 い )に よ る審査 も「 相 当の 理 由」 に該 当す るか否かの判断 に 欠 かせ ない。後述す るよ うに、下 級審判決や審査会答申の中には個々 の情報 を細分化 しなが ら、不開示 情報 (本 稿 との関係 か らすれば公 共安全情報 )該 当性 を審査 して い

る事例が見 られ る。

以下 で は、 これ らの問題点 を検 討 す るに当 た り、 自治体条例 にお ける公共安全情報 の規定 のあ り方 に触 れた上 で、判例 を中心 に検討 し、公共安全情報該 当性 の審査 が 抱 え る問題点 を浮 き彫 りに したい。

6塩 野宏『行政法 I(第 5版

)』

(2009年 )336頁 、宇賀克也『行政法概説 I(第 3版

)』

(2009年 )184頁 。

7平 8年 12月 16日 の行政改革委員会答申「情報公開法制 の確立 に関す る意見」 にお ける「情報公開法要綱案 の考え方」 4(4)イ は、「司法審査の場 においては、裁判所 は、第 3号 、 4号 に規定す る情報 に該当す るかどうかについての行政機関の長の第 一次的な判断を尊重 し、その判断が合理性を持つ判断 として許容 される限度内の も のであるかどうかを審理 0判 断す ることとす るのが適当である」 と述べている。

‑93(418)一

(5)

I  情報公開法 の制定 と自治体条 例 の改正

1、 従来 の 自治体条例 の規定 と解 釈

(1)情 報公 開条例制定前 において は、各都道府県 の実施機関 に公安 委員会 と警察本部長が含 まれてい なか った

S。

但 し、 「公共安全情報」

に関 して は情報公開法制定前か ら 規定 して い る自治体 が多 く、不開 示 の要件 も「 おそれがあ る情報」

と規定 され他 の不開示情報 との差 異 は設 け られて いない。

なお、実施機関 に公安委員会及 び警視総監 が加わ る前 の東京都情 報公 開条例 につ いて、第二東京弁 護士会編『 情報公開条例ハ ンドブッ

ク ー改正 東 京 都 条 例 を 中心 に』

(以 下 、 本 文 中 にお いて は『 ハ ン ドブ ック』 と略す )が 、 当時 の都 条例 の解説 に加 え他 の道府県 の情 報公 開条例 を掲載 してい るので、

適宜参照 させて いただいた。平成 11年 の改正都条例 であるが、 同年 の情報公開法制定 を見越 して、実 施機 関 に都公安委員会 (警 視庁 )

を含 め ることが提案 されたが先送 りされて い る

9。

(2)平 成 11年 改正都条例 7条 4号

は、犯罪予防・ 捜査等情報 と して 次 のよ うに規定 して いた。

「 公 にす ることによ り、人 の生命、

身体、財産又 は社会 的 な地位 の保 護、犯罪 の予防、犯罪の捜査 その 他 の公共 の安全 と秩序 の維持 に支 障が生 ず るおそれが あ る情報」

特 に、本号 の後段 は、警察活動 等主 と して公安委員会 や警察 が保 有 す る情報 を念頭 に置 いて いたよ うで あ るが Ю (即 ち、情報公 開法 5条 4号 の「公共安全情報」 に当 た る )、 他 の不 開示情報 との差 異 が設 け られなか った背景 としては、

公安委員会及 び警視総監が実施機 関 に含 まれて いなか った ことが大 8そ の背景 については、宇賀克也『新・ 情報公開法の逐条解説 (第 4版

)』

(2008年

)

26頁 。

9第 二東京弁護士会編『情報公開条例ハ ンドブックー改正東京都条例を中心 に』 (2000 年 )13頁 。

Ю第二東京弁護士会・前掲書 66頁 。

(6)

公共安全情報該 当性 に関す る司法審査 のあ り方 につ いて

きい といえ よ う (同 じく、公安委 員会・ 警察本部長 が実施機 関 に含 まれて いない道府県 において は同 旨の規定 が な されて い る一『ハ ン ドブ ック』198頁 以下参照

)。

また、

司法審査 に当 た って は、立案者 サ イ ドも他 の不開示情報 と同様 の審 査 が な され る ことを前提 に してい た と思 われ る。

2、 1青 報公 開法 との整合

(1)公 安委員会 や警察本部長 を実 施機 関 にす る ことは早 くか ら提言 されて いた ものの、 同時 に懸念 も 示 されて いた。 同年 に成立 した情 報 公 開 法 は、  5条 4号 にお いて

「 行 政 機 関 の長 が認 め る こ とにつ き相 当の理 由が ある情報」 と規定 してお り、注 (4)で 触 れた「情報公 開法要綱案 の考 え方」 4(4)イ にお いて示 されて い る H、 司法判 断 に おいて は「行政機関 の長 の第一次 的 な判 断 を尊重 し、 その判 断が合

理性 を持つ判断 として認容 され る 限度 内 の もので あ るか ど うか を審 理・判断す ることとす るのが適当」

との解釈 と併せ読 めば、 自治体条 例 が情報公 開法 5条 4号 と整合的 に規定 され ることで、行政機関の 長 が要件 をゆ るやか に適用 す るの で はな いか、裁判所 が「行政機関 の長 の第一次的な判 断」 を尊重 し た審査 をす るので はないか との懸 念 が示 され るの も当然であ った と いえ る

(『

ハ ン ドブ ック』69頁

)。

(2)実 際 の規定 の変化 は、周知 の よ うに国の情報公開法 と整合性 を 合 わせ た もの とな った。現在 の都 条例 7条 4号 は、

「公 にす る ことによ り、犯罪 の予 防、鎮 圧又 は捜査、公訴 の維持、

刑 の執行 その他 の公共 の安全 と秩 序 に支 障 を及 ぼす お それが あ ると 実施機 関が認 め る ことにつ き相 当 の理 由があ る情報」

と変更 されてい る。

11な お、「情報公開法制の確立 に関する意見」 において示 された P情 報公開法要綱案」

においては、 「認めるに足 りる相当の理由がある情報」 とされていたが、場合 によっ ては裁量 を制限す る趣 旨で使用 されることもあるため (警 察官職務執行法 7条 「抵 抗 の抑止 のため必要 であると認 める相当な理 由のある場合」

)、

現行法上 の文言 に変 更 されたとされる。宇賀・前掲注 (8Ю O頁 。

‑95(416)一

(7)

運用 において も、情報公開法同 様 の運用 が想定 されて い ると考 え られ る。「情報 公 開法要綱案 の考 え方」 4は )ア において、「 本号 は、

犯罪 の予防・ 捜査等 に代表 され る 刑事 法 の執行 を中心 と した ものに 限定 す る趣 旨で あ る。   ・ ・・ した

が って、個人 テロ等 の不法 な侵害 行為 か らの人 の生命、身体等 の保 護 に関す る情報 は第 4号 の対象で あ るが、風俗営業等 の許認可、伝 染病 予防、食 品 0環 境・ 薬事等 の 衛生監視、建築規制、災害警備等 のいわゆ る行政警察 に関す る情報 は、第 4号 の対象 で はな く、第 6 号 によ り開示・ 不開示 が決 せ られ る こことな る」 と述べてお り、行 政 警 察 に関 す る情 報 は 6号 情 報 (事 務 事 業情報 )該 当性 の問題 と な る (都 条例 において は、 7条 6

号該 当性 の問題 となろ う )。

情報公 開法 にお ける不 開示情報 の仕分 け (4号 、 6号 )の 解釈 に

つ いて は、学説 において も同趣 旨 の解釈が示 されてお り、 4号 は刑 事法 の執行 (司 法警察 )に 限定 し 行政警察 は 6号 該 当性 の問題 との 解釈 で ほぼ統一 されて い るとい っ て よいで あろ う

2。

侶 )実 施機 関 に公安委員会・ 警察 本部長 を含 め るに当 た って は、既 述 の東京都情報公開条例 のように、

法令秘情報 を除 いて情報公開法 の 規定 にな るべ く整合 した形 での整 理 がな されてい る自治体 が多 い 。

その よ うな中で特徴的なのが宮城 県情報公 開条例 の規定 で あ る。

宮城県条例 にお いて は、司法警 察分野 と行政警察 分野 の仕分 けに 重点が置かれてお り、改正前 の県 条例 8条 4号 は

「 公開す ることによ り、犯罪 の予 防又 は捜査、人 の生命、 身体又 は 財産 の保護 その他 の公共 の安全 と 秩序 の維持 に支 障が生 ず るおそれ 12大 橋・前掲注 (5)126頁 、宇賀 0前 掲注暢Ю l頁 、松井茂記『情報公開法 (第 2版

)』

254

頁 (2003年

)、

大浜啓吉『行政法総論 (新 版

)』

383‑384頁 (2006年

)。

13実 施機関に公安委員会・警察本部長を含 める必要のない市町村 の情報公開条例 にお

いては、従来 どお りの規定がなされている条例 も多い (他 の不開示情報 と同様 の規

)。

仙台市情報公開条例 7条 4号 、新潟市情報公開条例 6条 4号 等参照。

(8)

公共安 全情報該 当性 に関す る司法審査 のあ り方 につ いて

産 の保護 に支障が生ず るおそれの のあ る情報」

と規定 していた

(『

ハ ン ドブ ック』

207‑208頁

)。

改正後 の県条例 8条 1項 4号 は

「 公 開す ることによ り、犯罪 の予 防、鎮圧又 は捜査、公訴 の維持、

刑 の執行 その他 の公共 の安全 と秩 序 の維持 に支 障が生 ず るおそれが あ ると実施機関が認 め るに ことに つ き相 当の理 由があ る情報」

と規定す ることで、司法警察分 野 を対象 とす る ことを明示 す る一 方、新 たに、行政警察分野 を対象 とす る規定 を設 けて い る (県 条例

8条 1項 5号

)。

「県 の機 関、県 が設 置 した地方独 立行政法人、公社又 は国等・ ・・

の機 関が行 う衛生、営業、建築、

交通等 に係 る規制 に関す る情報 で あ って、公開す ることによ り、人 の生命、身体、健康、生活又 は財

あ る もの」

併せて、県条例 8条 2項 にお い て、司法警察分野 に関す る予算文 書 は県条例 8条 1項 4号 と同 じ扱 いにす る旨規定 されている聾。

以上 の規定 の仕方 によ って、行 政警察分野 の情報 は、事務事業情 報 の規定 (県 条例 8条 1項 7号 )

で はな く、 8条 1項 5号 によ って 不開示情報該 当性 が判 断 され る と い う全国的 に見 て もユニークな規 定 ぶ りにな って い る とともに、行 政警察分野 につ いて は、「 実施機 関 の第一次判断権 を尊重」 した規 定 にはな ってお らず、審議検討情 報 や事務事業情報 と同様 の判 断 に よ って不開示情報該 当性 が判断 さ れ る ことにな ろ う郷。

以下、 Ⅱ、 Ⅲにおいて検討 され

14宮 城県情報公開条例 については、稲葉馨「情報公開条例の一部を改正す る条例」 ジュ リス ト 1201号 (2001年 )80頁 以下、同「情報公開審査会 における裁量問題審査に関 す る一考察」 『 行政法 の思考様式 (藤 田先生退官

)』

(2008年 )289頁 以下、「情報公 開条例 の解釈及 び運用基準」 (宮 城県 HP<http://WWW.pref.miyagi.ip/jyOuhOkok ai/reiki>よ り閲覧可 )等 参照。

15要 件裁量が認 め られている情報公開法 5条 3号 、 4号 以外の不開示情報該当性 につ いては、裁判所の全面審査 によって判断されることになる。大浜 。前掲注 GD385頁 、 塩野宏『行政法 I(第 4版

)』

(2005年 )306‑307頁 。

‑97(414)―

(9)

る事例 は、 このよ うな条例改正 に よ って公共安全情報 に関す る規定 が、情報公開法 5条 4号 と同様 に 実施機関の裁量判断 を尊重 す る書 きぶ りにな っている ものである。

Ⅱ   情報公開 に関す る判例 の動 き

1、 個人情報、事務事業情報該 当 性 に関す る最高裁判例 の形成

(1)本 稿 は、情報公 開訴訟 にお け る判例 の動 向 (特 に最高裁判決 )

を全て否定的 に捉 え よ うとす る も ので はない。公刊 されて いる最近 の最高裁判決 において も、個人情 報 や事務事業情報 の開示 に関 して

は積極的な姿勢 が伺 え る 。

(2)個 人情報 に関 して は、平成 15 年 の一連 の最高裁判 決 にお いて、

非開示情報 の例外 とな る公務員 の 職務遂行情報該 当性 に関 して、最

判平成 15年 11月 11日 (民 集57巻 10 号 1387頁 )、 最 判 平成 15年 11月 21 日 (判 時1847号 24頁 )、 最判平成 1

5年 12月 18日 (判 時 1848号 68頁 )

が、非開示情報 とされ うる私事 に 関す る情報 に関 して、最判平成 15 年 11月 21日 (民 集57巻 10号 1600頁 )

が相次 いで判断 を示 してい る。

土地 開発公社 による土地 の買収

価格 に関す る情報 に関 して、最判

平成 17年 7月 15日 (判 時1909号 25

頁 )、 最判平 成 17年 10月 11日 (判

時1939号45頁 )は 、 「 プ ライバ シー

保護型」 か「 個人識別型」 であ る

かを問わず、その一部 を非開示情

報 に該 当 しない と判 断 した。前者

は他人 に知 られた くないか、後者

は公表が予定 されてい るか とい う

観点 か らの判断であ るが、条例 の

趣 旨を尊重 しなが らも整合性 を持

たせ た判 決 で あ った と思 わ れ る

(最 判 平 成 18年 7月 13日 (判 時

16公 刊 されている判決 につ いては、以下の文献を参照 した。村上博 ほか「判例回顧 と

展望 行政法」法律時報 76巻 6号 (2004年 )24頁 以下、浜川清 =西 田幸介「判例回

顧 と展望 行政法」法律時報 77巻 7号 (2005年 )23頁 以下、同「判例回顧 と展望 行

政法」法律時報 78巻 7号 (2006年 )28頁 以下、同「判例回顧 と展望 行政法」法律

時報 79巻 6号 (2007年 )28頁 以下、恒川隆生 ほか「判例回顧 と展望 行政法」法律

時報 80巻 7号 (2008年 )22頁 以下、 同「判例回顧 と展望 行政法」法律時報 81巻 7

号 (2009年 )22頁 以下。

(10)

公共安全情報該当性に関する司法審査のあり方 について 1945号 18頁 )も 参照

)。

(D事 務事業情報 に関 して は交際 費 に関す る事例 が多 か ったが、最 判平成 14年 10月 11日 (判 時1805号 38頁 )は 、教育公務員採用試験 の 問題及 び解答を開示す ることによっ て、教員採用選考 に著 しい支障が 生 ず るとはいえ ない と した。審議 検討 情報 と も関連 す るが、既 に都 市計 画変更決定 が な されて いた事 案 にお いて、最判平成 16年 6月 29 日 (判 時1869号 17頁 )は 、環境影 響評価書等 が公 開 された と して も その事務事業 に係 る意思決定 に支 障が生 ず る ことはない と した。控 訴審判決 で あ るが、消防法 に基づ く立入検査 の結果報告書等 の開示 によ って今後 の立入検査への支障 が生 ず るとはいえない と した、東 京 高 判 平 成 15年 11月 27日 (判 時 1850号 41頁 )も 重要 である。

(3)部 分 開示 につ いて は、最判平

成 13年 3月 27日 (民 集 55巻 2号

530頁 )に お いて、 大 阪府公文書 等公 開条例 (平 成 11年 改正前 )の

部分開示 の規定 は、非開示情報 に 該 当す る独立 した一体的な情報 を 更 に細分化 し、 これを公開す るこ とまでを も実施機関 に義務づ けて い ると解す ることはで きない との 判 断が示 された ことによ り、 この 平成13年最判で示 された「情報単 位論 (独 立一体説 )」 rが ̲部 の下

級審判決 に影響 を与 えてい ること が指摘 されていた。最判平成19年

4月 17日 (判 時1971号 109頁 )は 、 愛知県公文書公 開条例 (平成 12年 改正前 )所 定 の非開示情報 に当た

らない公務員 の懇談会 出席 に関す る情報 と非開示情報 にあた る公務 員以外 の者 の情報 とが含 まれてい る場合 に、前者 の公務員 の懇談会 出席 に関す る情報 に係 る記載部分 はすべて公開すべ きと判断 した。

平成 19年最判 は、学説 か らも好

17「 情報単位論 (独 立一体説

)」

と下級審の動向については、宇賀・前掲注 (8)92‑95 頁、藤田宙靖『行政法 I(第 4版 改訂版

)』

(2005年 )168‑169頁 参照。 なお、両文 献 において指摘 されているように、国の情報公開・ 個人情報保護審査会の答申は、

平成 13年 最判 に依拠 してはいない (平 成 14年 度 (行 情 )答 申第 123号

)。

‑99(412)―

(11)

意 的 に受 け止 め られて い るが 郎 、 同最判 には藤 田宙靖裁判官 の補足 意見が付 されてお り、情報公開法 6条 2項 の規定 は「 確認規定」 で あ るとの立場 を明確 にす るととも に、平成13年 最判及 び、最判平成 14年 2月 28日 (民 集 56巻 2号 467 頁 )に 依拠 した原審 (名 古 屋高判 平成 17年 11月 17日 ・ 判例集未登載 ) の解釈 は「専 ら形式的な文言解釈」

であるとして批判す る。その上で、

平成 13年 最判及 び平成 14年 最判 は

「 少 な くと も法令 の解釈 を誤 る も のであ り、 その限 りにおいて、 こ れ らの判例 は、本来変更 されて然

るべ きものであ る」 との見解を示 されて い る Ю 。

2、 公共安全情報 に対 す る行政判 断尊重

(1に のよ うに、最高裁 を含 めた 判例実務 は情報公 開訴訟 において 決 して消極 的で はない。加 えて、

冒頭 において触 れ たよ うに、裁量 審査 に関 して も審査密度 の深化 が 見 られ る。

学校施設 の 目的外使用許可 (地 方 自治法238条 の 4第 4項 (当 時 一 現在 は 7項 ))に 関 して

20、

最判平 成 18年 2月 7日 (民 集 60巻 2号

18宇 賀・ 前掲書 96頁 、阿部 0前 掲注 (5汚 38‑539頁 等。

19平 成 19年 最判 と、平成 13年 最判 (平 成 14年 最判 )と の関係 については

(「

独立一体 説」 の是非、情報公開法 6条 2項 の解釈 ―確認規定か創造規定か

)、

戸部真澄「判 批」『 (法 セ ミ増刊 )速 報判例解説 Vol.1』 (2007年 )71頁 以下、米 田雅宏「判批」

『 平成 19年 度重要判例解説』 46頁 以下等参照 (平 成 19年 最判の評釈

)、

第二東京弁護 士会編『情報公開 。個人情報保護審査会答申例』 (2009年 )133‑138頁 等。

なお、平成 13年 最判が前提 と している「 独立一体説」 に対す る藤田裁判官の批判 的見解 は、同裁判官の情報公開審査会委員 と しての経験 も踏 まえて執筆 された藤田 宙靖『行政法 I(第 4版

)』

(2002年 )167‑169頁 において示 されていたところであ

る。

20事 案が、行政財産の 目的外使用であるのか、公の施設 の利用 (地 方 自治法 244条 以 下 )で あるのかについて、当事者間に見解の相違がある場合が散見 される (大 阪地 判平成 20年 3月 27日 ・ 判 自 315号 43頁 、新潟地判平成 20年 11月 14日 0判 自 317号 49頁

)。

後者 の場合、裁量審査の問題 とはな らず、仮 の救済 も認 め られやすい動向にあるが

(執 行停止 に関 して、仙台高決平成 19年 8月 7日 (判 夕 1256号 107頁

)、

仮 の義務付

けに関 して、岡山地決平成 19年 10月 15日 (判 時 1994号 26頁

))、

ここでは問題点の指

摘 のみに留める。

(12)

公共安全情報該 当性 に関す る司法審査 のあ り方 につ いて

401頁 )は 、「学校施設 の 目的外使 用 を許可 す るか否 か は、原則 と し て、管理者 の裁量 にゆだね られて いる」 と して、学校教育上 の支障 が な くとも「行政財産であ る学校 施設 の 目的及 び用途 と目的外使用 の 目的、態様等 との関係 に配慮 し た合理 的 な裁量判断 によ り使用許 可 を しない こともで きる」 と して 管理者 の幅広 い裁量 を前提 に審査 を行 な っている。

その上 で、最高裁 は過去 にお け る教育研究集会での使用許可 の状 況、妨害行為 の生徒 への影響、本 件不許可処分 に至 った経緯等五 つ の点 に触 れ た上 で、本件不許可処 分 は、「重視 すべ きで ない考慮要 素 を重視 す るな ど、考慮 した事項 に対 す る評価が明 らか に合理性 を 欠 いてお り、他方、 当然考慮 すべ き事項 を十分考慮 してお らず、 そ

の結果、社会通念 に照 らし著 しく 妥 当性 を欠 いた もの」 で あ ると し て、裁量権 の逸脱 を認 めている。

更 に、海岸法37条 の 4に 基 づ く 一般公共海岸区域 占用不許可処分 につ いて、最判平成 19年 12月 7日 (民 集 61巻 9号 3290頁 )は 、 同様 な判断 プ ロセスの もとで裁量 の逸 脱・ 濫用 を認 めて い る 滉 。

同 じく、都市計画裁量 に関 して も最 判 平 成 18年 9月 4日 (判 時 1948号 26頁 )、 最 判 平成 18年 11月

2日 (民 集60巻 9号 3249頁 )が 詳 細 な裁量審査 を行 な って い る "。

(2)し か しなが ら、情報公開訴訟 における裁量審査 は極 めて消極的 で あ るとい って よい。

前 述 の最 判 平 成 19年 5月 29日 (判 時1979号 52頁 )23は 、 ぃゎゅ る

「 偽 名 領 収 書 」 が滋 賀 県 情報 公 開

21近 年 の裁量審査の動向に関 しては、三浦大介「行政判断 と司法審査」磯部力 ほか

『 行政法の新構想 Ⅲ』 (2008年 )103頁 以下 (特 に、 109‑124頁

)、

橋本博之『行政判 例 と仕組 み解釈』 (2009年 )145頁 以下 (特 に、 165‑173頁

)、

深澤龍一郎「裁量統 制 の法理 の展開」法律時報 82巻 8号 (2010年 )32頁 以下参照。

22東 京高判平成 17年 10月 20日 (判 時 1914号 43頁 )を 含 めた計画内容の統制 について、

見上崇洋「行政計画」磯部 ほか・ 前掲注 (3)57頁 以下、前 田雅子「公共事業 と都市計 画」芝池義一 ほか『 まちづ くり・環境行政の法的課題』 (2007年 )108頁 以下。

23本 判決の評釈 として、 白藤博行「判批」 『平成 19年 度重要判例解説』 48頁 以下。

‑101(410)一

(13)

条例 6条 3号 の非公開事 由に該 当 す るかが争点 とな ったものである。

原審 の大阪高判平成 18年 3月 29日 (平 成 17年 (行 コ )第 14号 )24は 、 本件領収書 (い わゆ る「偽名領収 書」 )に つ いて、 領収書 の作成者 がその記載 によ り自 らが情報提供 者 と して特定 され る ことを回避 す るた めあえて偽名 で作成 した もの で あ り、容易 に自己が特定 され る よ うな体裁 の記載 を していないと 推認す るのが合理的であるとして、

請求 を一部認容 している。

一 方、最高裁 は、「 本件領収書 には、例えば、作成者 の特異 な筆 跡 の現 れたた ぐいの もの、偽名 を 実名 と 1字 しか違 えていないた ぐ いの もの、住所 の記載 を作成者 の 住所 の近隣 と して い るた ぐいの も のな ど多種多様 な記載が されてい る可育旨性がある」 との前提の もと、

「 仮 に、 本 件 条 例 に基 づ き本 件領 収書 の記載 が公 にされ ることにな れば、情報提供者 に対 して 自己が

情報提供者 であ る ことが事件関係 者 か ら明 らか にな るので はないか との危 ぐを抱かせ、 その結果、滋 賀県警 にお いて情報提供者 か ら捜 査協力 を受 けることが困難 にな る 可能性 を否定す ることはで きない。

また、事件関係者 において、本件 領収書 の記載 の内容 やその筆跡等 を手掛 りと して、 内情等 を捜査機 関 に提供 し得 る立場 にある者 に関 す る知識 や犯罪捜査等 に関 して知 り得 る情報等 を総合 す ることによ り、本件領収書 の作成者 を特定す る ことが容易 にな る可能性 も否定 す る こ とが で きな い」 と し、「本 件領収書 の記載が公 にされた場合、

犯罪 の捜査、予防等 に支障を及 ぼ すおそれが あ る と認 めた上告人 の 判 断が合理性 を欠 くとい うことは で きないか ら、本件領収書 には本 件条例 6条 3号 所定 の非公 開情報 が記録 されてい るとい うべ きで あ る」 と結論付 けた (破棄 自判 )。

こ こで は、 本 件 条 例 にお け る

24判 例集未登載の判決については、裁判所HP(<http://WWW.COurts.go.jp>)か ら閲

覧できるものも含め事件番号を付する。

(14)

公共安仝情報該当性に関する司法審査のあり方について

「 相 当 の理 由」 に対 す る直接 の判 断 はな されてお らず、裁量審査 と い うよ りも、非公 開情報該 当性 の 問題 と して取 り扱 われて い る。 し か しなが ら、本件領収書が公開 さ れ た場合 の (抽 象 的 な )お それ に

関 して、原審 と最高裁 にはかな り の差異が あ る。図式的 には、実施 機 関 (警 察本部 )の 裁量判断を最 高裁 が その まま追認 して い るの と 同様 に考 え ることがで きよ う。

(3)出 所情報 に関す る最判平成 21 年 7月 9日 (判 時2057号 3頁 )も 、 平成 19年 最判 とほぼ同様 の帰結 に 至 って い る。平成21年最判 は、 出 所情報 の活用 に関す る文書 の一部 が、新潟県情報公 開条例 7条 4号

(滋賀県条例 と同様 に、 財目当の理 由が あ る '情 報」 と してお り、実施 機 関 の裁量 を認 めて い る )の 非公 開情報 に該 当す るかが争 われた事

例 で あ る

25。

非公 開情報該 当性が争 われたの は、「 出所者 の入所罪名」、「 出所 者 の出所事 由の種別」及 び「 出所 情報 フ ァイルの有効活用」 に関す

る部分 であ る。

原審 で あ る東京高判平成 19年 6 月 13日 (平 成 18年 (行 コ )第 337 号 )は 、 出所情報活用 の制度 の対 象罪種・ 対象者 の範囲が広 い こと 等 か ら、「 出所者 の入所罪名」「 出 所者 の出所事 由の種別」 が公 にさ れな くとも、重 い犯罪 を犯 して刑 に服 した とい う自覚 のある者 は自 分 が この制度 の対象 とされてい る ことを認識す るのが 自然 で あ り、

これ らの情報 が公 にされ ることに よ って、警察 への対抗措置 を講 ず る ことになるとは認 めが たい と し た。 また、「 出所情報 フ ァイルの 有効活用」 は、通達 (注 侶D参 照 )

が警察 内部 の運用指針 を示 した も

25な お、公開請求の対象 となった「凶悪重大犯罪等 に係 る出所情報の活用 について」

は、警察庁刑事局刑事企画課長か ら新潟県警本部長に送付 された文書であり、同課 長が各道府県警察本部長等 に対 して発 した通達が記載 されたものである。警察庁 は、

情報公開法 の非開示情報 に抵触 しない範囲で、訓令・ 通達の公表を行 う方針を採 っ ている。「警察庁訓令 0通 達公表基準」参照 (<http://wWW.npa.go.jp/pub̲dOCs/i ndex.html>よ り入手可

)。

‑103(408)一

(15)

のであることなどを考慮す ると、

犯罪 の捜査等 に支 障を及 ぼすおそ れが あ る内容が含 まれていると考 え るの は困難 であ ると し、非公開 処分 を取消 した。

一方、 最高裁 は、「 出所者 の入 所 罪名」「 入 所 者 の出所 事 由の種 月

J」

が公 にな ることによ り、「 出 所者 は、 自分 が 出所情報 フ ァイル の記録対象 とな り出所情報 の活用 の対象 とされ るか どうかな どにつ いて、単 なる推測 にとどま らず、

よ り確実 な判別 をす ることが可能 にな る」 と し、「 出所情報 フ ァイ ルの有効活用」 に係 る情報 を公 に す る ことは、「 一定 の程 度 にお い てではあるとして も、出所情報 ファ イルを活用 した捜査 の方法 を明か す結果を招 く」 とす る。その上で、

出所者 が「 よ り周到 に犯罪 を計画 し、 よ り細心 の注意 を払 ってそれ を実行 しよ うとす る可能性 を否定

す ること」 はで きず、原審 とは逆 に、「 出所情報 を活用 した捜 査 の 方法 をその一端で も知 った ときは、

その方法 の裏 をか くよ うな対抗策 に出 る可能性が あることも否 めな い」 とす る

26。

以上 の前提 の もと、「 本件 情報 を公 にす ることによ り犯罪 の捜査 等 に支 障 を及 ぼす おそれが あ ると 認 めた新潟県警 本部長 の判 断が合 理性 を持つ もの と して許容 され る 限度 を超 えた もの とい うことはで きず、 この判断 には相 当の理 由が あ るか ら、本件情報 は本件条例 7 条 4号 所定 の非公 開情報 に該 当す

る」 と結論付 けた (破 棄 自判

)。

平成 21年 最判 は、「 裁 量 」 の語 を明示的に用いてはいない ものの、

<実 施機 関 (=新 潟県警本部長 ) の判 断 に相 当 の理 由 が あ るか否 か >と い う観点 か ら結論 を出 して お り、裁量審査 を念頭 に置 いた も

26事 案 は異 なるが、検察庁保有の「接見指定 20講 」の情報公開法 5条 4号 該当性 につ

き、「仮 に何 らかの対抗措置が とられることが予想 されるとして も、検察官 におい

ては、的確な捜査 と適正な接見指定を行 うことによつて十分 これに対処することが

で きる」 として、被疑者等による対抗措置について消極的に判断 した答申が存在す

る (平 成 14年 度 (行 情 )答 申 434号

)。

本答 申については、第二東京弁護士会 0前

注 09188‑189頁 参照。

(16)

公共安全情報該当性 に関す る司法審査のあり方について ので あ ろ う

27。

出所 情報 が公 に さ

れ た場合 の (抽 象 的 な )お それに

関す る判 断、実施機関 (警 察本部 )

の裁量追認型審査 がな されている ことは、平成 19年 最判 と同 じであ る。

3、 考慮事項 の不存在 と下級審判 決の動 向

(1)2(1)で 触 れ た近年 の最高裁判 決 と情報公開 にお ける裁量審査 に お ける相違 を指摘す るとすれば、

裁量統制 にお ける考慮事項が情報 公 開訴訟 において は見 当た らない (も しくは見 出 されて いない )と

い うことであろ う。橋本教授 は、

審査密度 向上 の一般化 を指摘 され るが器、 全 て の最高裁判決 が 同様 の裁量統制手法 を用 いているわ け で はない。但 し、「 判 断過程統制」

手法 が最高裁判決 の多 くを 占め る ことで、 旧来型 の裁量審査が際立 つ ことになろ う

29。

下級審 にお いて も、審査密度 の 向上 につ いて は裁判所 による温度 差 が あ り

30、

審 査密 度 の向上 が下 級審裁判所全体 に行 き渡 って いる わ けで はないが、最高裁 の動 向 は 今後 の下級審判決 に も大 いに影響 す る もの と思 われ る。

(2に れ に対 して、情報公開訴訟 にお ける裁量審査 は下級審判決 の

27自 治体 における情報公開条例 において も、公共安全情報 に関す る規定 に影響を与え た「情報公開法要綱案の考え方」 4帷

)イ

における「行政機関の長の第一次的な判断 を尊重」すべ きこと =司 法審査のあ り方 (制 約 )に 関す る言及 は両最高裁判決 には 見 られない。 なお、裁量審査のあ り方 も含めた本判決の評釈 として、稲葉一将「判 批」『 (法 セ ミ増刊 )速 報判例解説 Vol.6』 (2010年 )77頁 以下、藤原静雄「判批」

『平成 21年 度重要判例解説』 54頁 以下参照。

23橋 本・ 前掲注 21165頁 以下 の判例分析参照。塩野・前掲注 (6)136頁 も、「判断過程の 統制 の方式が最高裁判所 の判例 に定着 しつつあるのは注 目すべ き」 と述べている。

なお、考慮要素 に着 目した裁量審査 については、亘理格「行政裁量 の法的統制」行 政法の争点 (第 3版 )118‑119頁 。

29橋 本教授 は、伝統的な裁量権逸脱 0濫 用審査 の事例 として、弁護士 の懲戒処分 に関 す る最判平成 18年 9月 14日 (判 時 1951号 39頁 )を 挙 げる。橋本・ 前掲書 170頁 。 30こ こで想起 されるのは、注 20で 触れた東京高判平成 17年 10月 20日 のほか、東京地判

平成 13年 10月 3日 (判 時 1764号 3頁

)、

東京地判平成 14年 8月 27日 (判 時 1835号 52 頁 )等 のいわゆる 藤山 コー ト "の 諸判決であろう。

‑105(406)一

(17)

審査手法 を上級審 が覆す とい う流 れが続 いてお り、前述 のよ うに裁 量審査基準が出来上が るには程遠 い状況 にある。 そ こで、公共安全 情報 の審査 のあ り方 に関 して、非 開示情報該 当性 か ら除外 しよ うと す る下級審判決 を検討 してみ るこ

とにす る譴。

前述 の平成 19年 最判 と同 じく捜 査報償費 に関す るもの と して、東 京 地 判 平 成 18年 7月 28日 (判 タ 1276号 148頁 )及 び仙 台地判平成 20年 3月 31日 (平 成 17年 (行 ウ )

第 18号 )が 公共安全情報 に該 当す ると して非開示 と した実施機 関の 判断 を一部取消 して い る。 また、

名古屋地判平成20年 1月 31日 (判 時2011号 108頁 )は 、 愛 知 県 個 人 情報保護条例 に基 づ く死体見分調 書等 の開示請求 において、公共安 全情報 に該当す りと してなされた 不 開 示 処 分 を一 部 取 消 して い る (併 せ て、 取 消 した部 分 の開示 を

義務付 けた )。

これ らの判決 に見 られ る共通点 と して、裁判所が公共安全情報 に 関す る審査基準 を まず設定 した上 で (規 定 の仕方→実施機 関 の第一 次 的 な判 断 の尊 重 → 裁 量 審査 )、

個 々の情報 が公共安全情報 に該 当 しているか というアプローチを行 っ て い る ことで あ る。

以下 で は、平成 18年 の東京地裁 判決及 び平成20年 の名古屋地裁判 決 につ き更 に詳 しく判決 内容 を見 てみ ることにす る。

暢 )平 成 18年 東京地裁判決 は、 I で触れた東京都情報公 開条例 にお ける公共安全情報該 当性 (7条 4 号 )に 関す る ものであ る (他 の非 開示情 報 該 当性 の判 断 は除 く )。

東京地裁 は、都条例 7条 4号 の規

定 (「 公 にす る こ とに よ り、 犯 罪

の予防、鎮圧又 は捜査、公訴 の維

持、刑 の執行 その他公共 の安全 と

31本 稿 で取 り上 げていない事例 も含 めて、公共安全情報 に関す る判例 について は、藤

原静雄「警察の情報公開」警察政策 4巻 1号 (2001年 )54頁 以下、法曹会『主要行

政事件裁判例概観 11‑情 報公開・ 個人情報保護関係編 一』 (2008年 )191‑201頁

照 (本 稿 Iで 触れた「行政機関の長 (実 施機関 )が 認 めることにつ き相当の理 由が

ある情報」 という長の裁量権を認めた規定がなされる前の事例を含む

)。

(18)

公共安全情報該 当性 に関す る司法審査 のあ り方 につ いて

秩序 の維持 に支障 を及 ぼす おそれ が あ ると実施機関が認 め ることに つ き相 当 の理 由が あ る情報」 )か

ら、「 この よ うな情報 の開示又 は 不 開示 の判断 には、 その性質上、

犯罪等 に関す る将来予測 につ いて の専 門的・ 技術的な情報 と経験 に 基 づ く判 断を要 し、公共 の安全 と 秩序 の維持 とい う都民全体 の基本 的利益 を守 るための高度 の政策 的 判 断 を伴 うことな どの特殊性があ る ことか ら、 同号 は、行政庁 の上 記判 断 に相 当程度 の裁量 を付与 し た もの と解 され る。   ・・・ 同号該 当性の司法審査の場面 においては、

裁判所 は、同号 に該当す る情報が 言 己録 されてい るか どうか について の実施機 関の長 の第一次 的な判断 が合理性 を持つ もの と して許容 さ れ る限度 の ものであ るか どうかを 判 断す るとい う審査方法 によるべ きで あ る と解 され る」 と して、

<実 施機 関 の第一次的な判断の尊 重→裁量審査 >と い う基準 を打 ち 立 てて い る。

この基準 の下 に、財目当の理 由」

の有無が判断 されているが、被疑

者 の逃亡又 は罪証隠滅・ 捜査状況 の把握 といったおそれがあるか否 か の半J断 にお いて は、   全 くもっ て想定 されえないか "と い う基準

が「相当の理 由」 の有無 に直結す る構造 とな っている。 この点 を、

取扱者 出納簿 と (取 扱者証拠書類 の うち )取 扱者総括表 に関す る判 断で比較 してみ よ う。

非 開示情報 に該 当す るとした取 扱 者 出納 簿 に関 して は、「取扱者 出納簿 に記録 されている少年事件 課長 が受 け入 れた捜査費 の出納 の 状況 に関す る情報 には、各月 ごと の受入額及 び執行額 の合計金額が あ るが 000そ の増減 の状況 か ら 直 ちに、特定 の事件 の捜査状況が 把握 され た り、被疑者等 の逃亡又 は罪証隠滅等 のおそれが あること を認 め る ことはで きな い。 [原 文 改行 ]し か し、   ・ ・・ 少年 事 件課 長 が受 け入 れた捜査費 の各月 ごと の個 々の執行額 につ いて は、 これ を公 にす ることによ って、特定 の 事件 の捜査状況 が把握 された り、

被疑者等 の逃亡又 は罪証隠滅等 が 図 られ る事態 を全 く想定 す ること

―‑107(404)一 一

(19)

がで きないわ けで はない (傍 線部 一 筆者 )。   ・ ・・ [原 文 改 行 ]そ うす ると、被告 が取扱者 出納簿 の非開 示情報 につ いて、 これを公 にす る ことによ って、少年事件課 の捜査 活動 の内容等 が明 らか にな ること か ら、犯罪 の予防及 び捜査 その他 の公共 の安全 と秩序 の維持 に支障 を及 ぼすおそれが あると判断 した ことには、相 当の理 由があ るとい うことがで きる。」

一方、非開示情報 に該 当 しない と判断 された取扱者総括表 に関 し て は、「 取扱者総括表 に記録 され て い る少年事件課長が受 け入れた 捜査費 の現金 出納 の状況 に関す る 情報 の うち、 各月 ごとの受入額及 び執行額 の合計金額 の増減 を明 ら か にす るものであるが・・・ その 増減 の状況 か ら、特定 の事件 の捜 査状況が把握 された り、被疑者等 の逃亡又 は罪証隠滅等 を図 った り

す るおそれが あ る ことを認 め るこ とはで きない。 [原 文改行 ]そ うす る と、被告が、取扱者総括表 の非 開示情報 につ いて、 これ を公 にす る ことによ って、少年事件課 の捜 査活動 の内容等 が明 らか になるこ

とか ら、犯罪 の予 防及 び捜査 その 他 の公共 の安全 と秩序 の維持 に支 障 を及 ぼすおそれが あ る もの と判 断 した ことに相 当 の理 由が あ ると い うことはで きない。」

以上 のよ うな枠組 みの もとで、

本判決 は非 開示処分 の一部 を取消 す判断 に至 ってい るが、被疑者 の 逃亡・ 罪証隠滅・ 捜査状況 の把握 とい った事態が <全 く想定す るこ とがで きないわ けで はない >な ら ば、「 相 当の理 由」 が あ る との判 断 に至 ってい る (実 施機 関 一本件 で は警視総監 一の裁量 の範囲内 と い うことになろ う

)。

この部分 に、

情報公 開訴訟 にお け る裁量審査 の

32裁 量審査ではな く初審的審査 (de nOvo re宙 ew)を 認めているアメ リカの情報 自由 法 において も、一方では行政判断 に対す る適切 な謙譲 (appropriate deference)を 要請 され る場合 には、裁判所 は難 しい判断を追 られ ることになる。DO」 ,The De―

partment of」 ustice Guide to the Freedom of lnformation Act, 141, 147‑150 (2009 edition).に おける不開示情報 exemptionl(国 家安全保障 )=5US.C.§ 552

(bXl).に 関す る記述。なお、法執行情報 に関す る exemption7(5U.S.C.§ 552(bX7D

(20)

公共安全情報該当性 に関す る司法審査のあ り方 について 難 しさ と

32、

文書 を直接見分 で き

ない (イ ンカメラ審理がで きない )

とい う情報公開訴訟 の限界 を見て とることがで きる

33。

は )平 成 20年名古 屋地裁判決 は、

愛知県個人情報保護条例 に基づ き、

原告 の (自 殺 した とされ る )長 男 の死亡現場 を見分 した調書等 の開 示 が求 め られた事案 であ る。

当初、本件保有個人情報 が原告 の もので はない ことか ら不開示決定 が な され たが、審査請求 の段階 に おいて、愛知県個人情報保護審査 会 は本件保有個人情報が社会通念 上、親 で ある原告 自身 の個人情報 とみな し得 るほど密接 な関係 にあ

る′ 清幸風とい うことがで きると して、

原告 を開示請求権者 と して認 め る のが相 当であるとの見解 を示 して い る (判 時2011号 110頁

)。

本判決 で、争点 とな ったのは、

愛知県個人情報保護条例17条 6号 該 当性 につ いてで あ り、行政機関 個人情報保護法14条 5号 、情報公 開法 5条 4号 と同趣 旨の規定がな され て い る (「 開示 す る こ とによ り、犯罪 の予防、鎮圧又 は捜査、

公訴 の維持、刑 の執行 その他公共 の安全 と秩序 の維持 に支障 を及 ぼ す おそれが あ ると実施機関が認 め る ことにつ き相 当の理 由が あ る情 報」

)。

名古屋地裁 は、本件条例 17条 6 に関 しては、連邦控訴審 レベルにおいて対応が分かれている に d at 514‑521.)。

司法判 断 にお いて、 謙譲 的 で あ るべ きとの立場 を採 る もの と して、 ABA,A

Blackletter Statement of Federal Adlninistrative Law, 54 Adlnin.L.Rev l,

64,67(2001).;S.G.BREYER,R.B.STEWART,C.R.SUNSTEIN&A.

VERMEULE, ADA/11NISTRATIVE LAヽ V AND REGULATORY POLICY

(6th),683,686(2006)現 状の謙譲的な審査 に批 判 的 な立場 を採 る もの と して、 N.

Slegers, De Novo Review under the Freedoln of lnformation Act: The Case against 」 udicial Deference to Agency DecisiOns to  ` Arithhold lnformatiOn, 43 San Diego.L.Rev.209(2006).等 が あ り、学説 において も見解 は分 かれている。

なお、DO」 の上記解説 につ いて は、全文が連邦司法省 の HP<http://WWw.jus tice gov/Oip/fOia̲guide09.htm>よ り入手可能 であ る。

33な お、不開示文書 の検証物提出命令 は許容 されないとした最決平成 21年 1月 15日 (民 集 63巻 1号 46頁 )は 、現行 の民事訴訟法 の規定 とイ ンカメラ審理が相容れない 旨述べているに過 ぎず、泉裁判官や宮川裁判官 の補足意見 も加味すれば、 イ ンカメ ラ審理の導入 は立法政策に委ね られることになる。

‑109(402)一

(21)

号 の規定 につ いて、「犯罪 の予 防、

鎮圧又 は捜査等 に支 障 を及 ぼすか 否 か の判 断 は、専 門的、技術 的判 断 を要 す るな どの特殊性 が あ る こ とか ら、実施機関の第一次的な判 断 を尊重 した もの」 とい う前提 に 立 ち、「 不 開示処分が違法 とな る の は、実施機関の第一次的な判断 が合理性 のある判断 と して許容 さ れ る限度を超える場合、すなわち、

当該処分 が裁量権 を逸脱又 は濫用 した と認 め られ る場合 に限 られ る べ きである」 と述べつつ も、本件 条例 の趣 旨 (保 有個人情報 の原則 開示 )等 をか んが み、「実施機 関 が不 開示 と した根拠、理 由等 に照 ら してその判断がそ もそ も合理性 のあ る判断 として許容 され る限度 内の もので あ ると認 め られ ない」

場合 には、不開示処分 は裁量権 の 逸脱・ 濫用 によ り違法 となると し て、前述 の東京地裁半 J決 よ リー歩 踏 み込 んだ解釈 を行 って い る。

その上 で、本件 においては自殺 と判 断 されている以上、原告 の長 男 の死亡 に関す る将来 の捜査等 に 具体 的な支障が生ず るおそれがあ

るとはいえない こと、犯罪死体 で あ るか否かを判別す るために着 眼 す る部位 などの捜査手法等が記録 されていることにつ いて は、 この よ うな着眼点 も刑事事件 になれば 証拠 と して提 出す ることを予定 し て い るものであ ることであること 等 を指摘 し、本件死体検分調書等 を開示 す る ことによ って、「 将来 の捜査等 に支障が生ず るおそれが あ ると愛知県警察本部長が認 めた と して も、 その判 断が合理性 のあ る もの と して許容 され る限度 内の ものであるとは直ちに認め られず、

愛知県警察本部長 の当該判 断 につ いて相当の理 由が ある もの とい う ことはで きない」 と断 じている。

しか しなが ら、本判決 の控訴審 判決 で あ る名古屋高判平成 20年 7 月 16日 (平 成20年 (行 ウ )第 47号 )

は、不開示処分 につ いて裁量権 の

逸脱・ 濫用が認 め られない との判

断 を行 って い る。控訴審判決 にお

いて注 目され るの は、情報公開訴

訟 にお ける裁量審査 の一般論 を提

示 して い る点 で あろ う。

(22)

判決 で は、本条例 17条 6号 の趣 旨 につ いて、「 実施機 関 の第一次 的 な判 断を尊重 す る趣 旨を明確 に した もので あ って、 その裁量 を制 限す る趣 旨で はない」 とした上で、

次 の よ うに述 べて い る。

「 lAl裁 判所 は、17条 6号 に掲 げ る不開示情報 に該 当す るか否か に つ いての実施機関の判断が違法 と な るか ど うかを審理、判断す るに あた って は、 その判断が実施機関 の裁量権 の行使 として された もの で ある ことを前提 と して、 それが 合理性 を持 つ もの と して許容 され る限度 内の ものであ るか ど うか、

す なわ ち、不開示 の判断 の基礎 と され た重要 な事実 に誤認 が あ る等 によ り同判断が全 くの事実 の基礎 を欠 くか どうか、 あ るいは、事実 に対す る評価 が明 白に合理性 を欠 くこと等 によ り同判断が社会通念 上著 しく妥 当性 を欠 くことが明 ら かで あ るか ど うかな ど、裁量権 の 範 囲 を こえ又 はその濫用 が あ った と認 め られ る場合 に限 り違法 とす べ きものであ って、開示請求者 に お いて は、 かか る裁量権 の範囲を

公共安全情報該当性 に関す る司法審査のあ り方 について こえ又 はその濫用があ った ことを 基礎付 ける具体 的事実 につ いて主 張立証 す ることを要 す る もの と解 す るのが相 当で あ る。 [原 文 改行 ] lBlも っとも、不開示事 由の存在 は、

実施機 関 に上記 のよ うな裁量権 が 認 め られない場合 にあ って は、不 開示決定 が適法 で あ ることを主張 す る実施機関 の側 で主張立証すべ き もの と解 され ることや、 lCl不 開 示事 由の存否 が問題 にな る当該文 書又 はその うちの不開示部分 は開 示請求者及 び裁判所 の 目に触 れ る 状況 に置 かれ ることが ない ことか らすれば、 まず、実施機関 におい て、 当該情報 が、 その性質上 その 他 の理 由によ り、 17条 6号 所定 の

『 開示 す る ことに よ り、 犯 罪 の予 防、鎮圧又 は捜査、公訴 の維持、

刑 の執行 その他 の公共 の安全 と秩 序 の維持 に支 障 を及 ぼすおそれが あ る』 と判 断 し得 る情報 であるこ とにつ いて主張立証す る必要があ る とい うべ きで あ る (lAl〜 (Clは 筆 者 が付 した もの

)。

控訴 審判決 にお いて示 され た裁 量審 査基準 は、 引用 こそな されて

‑111(400)―

(23)

いない ものの、 lAlに つ いてはマク リー ン事件 (最 大判 昭和53年 10月 4日 ・ 民集32巻 7号 1223頁 )、 lBl

につ いて は大阪府水道部事件 (最 判平成 6年 2月 8日 ・ 民集48巻 2

号255頁 )、 lClに つ いて は伊方原発 事件 (最 判平成 4年 10月 29日 ・ 民 集46巻 7号 1174頁 )を 参考 に した

もの と解 され る

34。

情報公 開訴訟 にお ける裁量審査 の主張立証責任 について は、原告 側 にそのまま課 す もの と伊方原発

事件 を参考 に した と思 われ る主 張 立証責任軽減型 の二 つ に分かれて い ることが指摘 されているが、後 者 の手法 によ って も開示請求者 に とってのハ ー ドル はなお高 い旨の 指摘 が あ る (本 件控訴審判決 も最 終 的 には実施機 関 の判断 に裁量権 の逸脱・ 濫用 はないとの判断に至 っ て い る )昴 。一部判決 にお いて、 こ のよ うな裁量審査 の主張立証責任 への言及やその所在 につ いての言 及 が な され始 めた ことは望 ま しい 34判 決文 における文言 は異 なるが、名古屋地判平成 15年 10月 15日 (訟 月 52巻 8号 2473

頁 )に おいては、裁量審査基準 に関 しほぼ同趣 旨の見解を提示 した上で、マク リー ン事件・ 伊方原発事件を引用 している。稲葉 。前掲注

0の

「裁量問題審査」 295‑296 頁、第二東京弁護士会・ 前掲注 l141179‑180頁 参照。

35判 決文 にお ける文言 は異 な主張立証責任 に関す る判例の動向について、杉原丈史

「判批」 『 (法 セ ミ増刊 )速 報判例解説 Vol.5』 33頁 以下 (35頁

)。

なお、杉原準教 授の評釈 は本文で触れている仙台地判平成 20年 3月 31日 (平 成 17年 (行 ウ )第 18号 )

に関するものであるが、仙台地裁 は、裁量審査における主張立証責任 について、注

1341で

触れた名古屋地裁判決 に近 い判断枠組みを示 している (控 訴審判決 である、仙

台高判平成 21年 1月 29日 (判 時 2052号 24頁 )は 主張立証責任の問題 に深入 りす るこ とな く、非開示処分 に裁量の逸脱・ 濫用 はないとした

)。

また、東京地判平成 22年 4月 9日 (判 時 2076号 19頁 )は 、原告である開示請求者が、過去 のある時点 におい て当該行政機関の職員が当該行政文書を職務上作成 し、又 は取得 し、当該行政機関 がそれを保有するに至 ったことを主張立証 した場合 には、その状態がその後 も継続 していることが事実上推認 され、被告において、当該行政文書が廃棄、移管等 され たことによりその保有が失われたことを主張立証 しない限 り、当該行政機関は不開 示決定の時点 において も当該行政文書を保有 していたと推認 されるとの見解を示 し、

注 目された。 その他 の主張立証責任に関する判例 につ き、法曹会 。前掲注 00305‑

306頁 参照。

なお、伊方原発事件 に (ほ ぼ )沿 った形の主張立証責任の軽減のあ り方について は、賛意示す見解がある一方 (第 二東京弁護士会 0前 掲書 180頁

)、

最終的な立証責 任が開示請求者 にある以上、違法性の立証 は困難であるとの指摘がある (友 岡史仁

「判批」法学セ ミナー 648号 117頁

)。

(24)

ことであ るが、裁量統制手法 の確 立 にはまだ時間が必要であ るとい え よ う (記 述 の よ うに、最高裁 に お いて は (抽 象 的 な )お それ に関 して裁量追認型 の判断が相次 いで な されて い る

)。

4、 「情報公開法要綱案 の考 え方」

再考

(1)情 報公 開法 5条 3号 、 4号 の 規定 の あ り方 (裁 量審査 )に 大 き く影響 した と考 え られ るのが、注 仔 )に お いて触 れた行政改革委員会

「 情報 公 開法制 の確立 に関 す る意 見」 にお ける「 情報公 開法要綱案 の考 え方」 4(4)イ の次 の記述 であ る。

「第 3、 4号 に規定す る情報 につ いて は、 その性質上、 開示・ 不開 示 の判 断 に高度 の政策 的判 断 を伴 うこと、対外関係上 の又 は犯罪 に 関す る将来予測 と して の専 門的

0

技術 的判 断 を要 す る ことな どの特 殊性 が認 め られ る。諸外 国 にお い て も、 これ らの特殊性 に対応 して、

大統領命令 による秘密指定制度 や 大 臣認 定書制度 を設 け、法 の対象

公共安全情報該当性 に関す る司法審査のあり方 について クト (exclusion)  と し、   又 はデ 支半 J

所 は、   初審 的  (de nOvo)  に は審 査 せず、行政機関の長 が開示 の拒 否 を判 断す る合理 的 な理 由 (rea̲

sonable grounds)を 有 す るか ど うかを審査す るにとどめ るなど、

法 の適用又 は司法審査 の関係で、

他 の情報 とは異 な る特別 の考慮 が 払 われて いる場合 が少 な くない と ころで あ る。 [原 文改行 ]こ の よ う な事情 を前提 とす ると、司法審査 の場 においては、裁判所 は、第 3、

4号 に規定す る情報 に該 当す るか ど うか についての行政機関 の長 の 第一次 的 な判断 を尊重 し、 その判 断が合理性 を持 つ判 断 と して許容 され る限度 内の もので あるか どう か を審理・ 判断す ることとす るの が適 当で ある。」

(D文 面 か らも、情報公 開法制定 に当た り参考 にされたアメ リカの 情 報 自由法 (Freedom of lnfor―

mation Act=FOIA)に 関 す る 記述 と思 われ る ものが多 いが、本 稿 で は、公共安全情報 に関 して考 察 して い るた め、 FOIAに お け る

‑113(398)一

(25)

非 開 示 情 報 で あ る exernotion7 (法 執行情報)36と の関連性 につ い て検討 してみたい。

exemption7と の 関連 性 につ い て検討 すべ き ことは、「 法 の対象 外 (exclusion)」 及 び 「 初 審 的

(de novo)に は審 査 せ ず」 の 2 箇所 である

y。

まず、 FOIAに おいて、exemp―

tion7に 該 当す る情報 が そ の まま 対 象 外 (exclusion)に な るわ け で はない ことを確認 してお く必要

が あ る。 exemption7に 明記 され た lAlか ら lF)ま で に挙 げ られた不開 示情報 の中で、 lAl執 行手続 が阻害 され る場合、 lDl秘 密情報 源 も しく は秘密情報 を開示す ることになる 場合 の二つの事 由が あ る場合 のみ exclusionの 対象 にな る

38。

次 に、 初 審 的 審 査 (de nOvo review)の 問題 で あ るが、 注 儡 a お いて も触 れ たよ うに、 FOIAは

裁判所が初審的審査 を行 うことが で きる旨明示 してお り

39、

セ ンシ

365 US.C§ 552(bX7).

37ァ メ リカの情報公開に関 しては、宇賀教授や松井教授の詳細な研究がある。宇賀克 也『情報公開法 アメ リカの制度 と運用』 (2004年

)。

exemptiOn7に 関 しては、同書 281‑307頁 、 exclusiOnに 関 しては同書 319‑326頁 、松井・前掲注 Ga231‑259頁 にお いて、外交防衛情報及び公共安全情報に関す る日米比較がなされている。 また、 日 弁連 によるアメ リカ情報 自由法の紹介 として、 日本弁護士連合会 P情 報公開ナビゲー ター』 (2001年 )53頁 以下 (55‑56頁 にexemption及 び exclusionが 紹介 されている

)。

なお、 exclusionに 関す る詳細な解説 は、 アメ リカの行政法 テキス トにおいて も見 られ ない。DO」 ,supra note32の 解説書が詳細 に触れている他 は、 ABA,supra note32,at 70.;M.」 .Sherman,Symposium lsseu:‖ 9/11‖ :Effects on U.S Law:FOIA in the Aftermath Of 9/11, 19 St Thomas L.Rev.281, 282‑283

(2006).;E.GELLHORN&R.M.LEVIN,ADMINISTRATIVE LAW AND

PROCESS 6th),157(2006).等 が簡単に触れているくらいである。

なお、「又は裁判所 は、初審的 (de nOvo)に は審査せず・・・ 」の文面 は、 カナ ダの情報アクセス法 (Access to lnformation Act)に おける運用状況を述べてい るといわれ るが、 FOIAに おいて も初審的審査が原則 とされる関係上、本稿で検討 することに した。

385U.S.C.§ § 552(CXl)一

(2).

395U.S.C.§ 5520に )lBl)な お、 1920年 代か ら 30年 代にかけて、   憲法的事実 (consti―

tutional fact)"ま たは 管轄的事実 (jurisdictional fact)"の 名 の もと、初審的 審査 (事 実認定及 び法解釈 に対す る裁判所独 自の審査 )が なされたた時期があ った が、連邦最高裁 は明示的ではないにせよこのような審査手法 とは決別 しているとさ れる。 P.L.STRAUSS,T.RAKOFF,R.A.SCHOTLAND&C.R.FARINA, GELLHORN AND BYSEIS ADMINISTRATIVE LAW CASES AND COヽ 4‑

MENTS(9th),549‑554(1995).

参照

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