毛利篤人 内容の要旨
論文内容の要約(要旨)
【背景】
抗PD-1 抗体により免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events ; irAE)を生じた患者で は、抗腫瘍効果が高い傾向向があると報告されている。有効症例であっても irAE を生じて治療 中止を余儀なくされることが少なくない。非小細胞性肺癌治療に対する免疫チェックポイント阻 害薬治療において、有害事象により投与中止となった後、再投与をすべきかそのまま休薬とすべ きかということについては、明確な指針はない。 【目的】 irAE を生じて休薬期間を設けた症例に対して抗 PD-1 抗体(Nivolumab)の再投与を行った場合 と行わなかった場合を比較し、有効性や安全性を明らかにすることとした。 【方法】 当院において2015 年 12 月から 2018 年 8 月までの期間で Nivolumab が投与された症例を対象 とし、Complete Response(CR)、Partial Response(PR)もしくは 9 週以上の Stable Disease (SD)を得たもののうち、irAE により 4 週以上の休薬期間を設けた症例を抽出した。49 例の有 害事象休薬例のうち、21 例の再投与群と 28 例の非再投与群に分けて比較した。 【結果】 irAEにより休薬に至った49例の有害事象の内容は肺臓炎が59.2%、副腎不全が8.2%、肝機能障 害が8.2%、腎機能障害が8.2%、腸炎が6.1%、甲状腺機能低下症が4.1%、皮膚障害が2.0%であっ た。Grade3以上の有害事象には両群に差がみられなかったが、肺障害は非再投与群に多く、腎機 能障害と腸炎については再投与群で多かった。再投与群と非再投与群において、ステロイド使用 率や入院期間に群間差はみられなかったが、有害事象の転帰については非再投与群で改善不良で あった。再投与群におけるNivolumabの奏効割合は15%であり、何らかの有害事象が再び出現す る割合は71.4%であったが、再投与後の有害事象死亡例はみられなかった。1年時点での無増悪割 氏 名 毛利 篤人 学位の種類 博士(医学) 学位記番号 乙第1435 号 学位授与の日付 令和元年11 月 29 日 学位授与の要件 学位規則第3条第1項第4 号に該当 学位申請論文タイトル及び掲載誌
Clinical difference between discontinuation and retreatment with nivolumab after immune‑related adverse events in patients with lung cancer
肺癌における免疫関連有害事象発症後のニボルマブ非継続治療と再投与の臨床的相違に ついての検討
Cancer Chemotherapy and Pharmacology Accepted: 7 August 2019 学位審査委員(主査)教授 畝川 芳彦
合において再投与群60%、非再投与群48%と再投与群の方が良い傾向にあったが、両群における 無増悪生存期間と全生存期間は有意な差はみられなかった。初回のNivolumab治療における効果 (CR/PR,SD)毎の生存期間曲線においても両群に有意な差はみられなかった。 【結語】 免疫チェックポイント阻害薬治療において有害事象による休薬後に再投与をした群の方が、非継 続投与群よりも良好な効果が得られる傾向にあったが、irAE により治療中断した場合、再投与の 有無で無増悪生存期間に有意差はみられなかった。
論文審査の結果の要旨
毛利篤人氏(日高キャンパス呼吸器内科学)の学位審査委員会は、委員全員が出席し、令和元年 10 月 21 日(月)に日高キャンパス国際医療センターで開催された。はじめに申請書類により資 格条件が満たされていることが確認された。学位申請論文のタイトルは「Clinical difference between discontinuation and retreatment with nivolumab after immune-related adverse events in patients with lung cancer」であり、 Cancer Chemotherapy and Pharmacology 誌に 2019 年 8 月 7 日付で受理され、掲載予定である。 本研究は診療情報を後方視的に調査した臨床研究であり、埼玉医科大学国際医療センター臨床研 究IRB における審査並びに施設長の承認(2019 年 6 月 12 日付)を得て実施されている。なお、 本学位申請論文を毛利篤人氏の学位申請のみに用いることを共著者9 名全員が同意されている。 学位審査委員会では、学位申請論文の内容に沿って約15 分間の口頭発表が行われ、その後質疑 応答が行われた。審査委員による質疑応答の概要は以下の通りである。 ① 本研究では2015 年 12 月から 2018 年 8 月までの期間に埼玉医科大学国際医療センターにお いてnivolumab が投与された 187 例の非小細胞肺癌(NSCLC)症例のうち、腫瘍縮小効果 としてcomplete response (CR)/ partial response (PR)/ 9 ヵ月以上の stable disease (SD)が得 られたものの、免疫関連有害事象(immune-related adverse events: irAE)のため 1 カ月を 越えて nivolumab の投与休止を余儀なくされた 49 例を対象として、nivolumab の投与が再 開されたretreatment 群(21 例)と再開されなかった discontinuation 群(28 例)の 2 群に 分けて、それぞれの臨床的背景を比較検討されている。 1) これら 2 群の症例背景では(Table 1)、年齢、性別や病期において偏りは認められないも のの、retreatment 群では既治療のライン数が少なく(p <0.01)、初回の nivolumab 投 与においてCR/ PR が得られた症例が多く認められている(p =0.06)。nivolumab 再投与 可否の判断においてバイアスが働いた可能性がないか説明されたい。
群においてはステロイド薬を用いながらnivolumab の再投与が行われたのか説明された い。