1
無機化学 2015 年 4 月~ 2015 年 8 月
水曜日
4時間目
116M講義室 第6回
5月27日回転運動:球面調和関数 角運動量とスピン
担当教員:福井大学大学院工学研究科生物応用化学専攻 前田史郎
:
[email protected]URL:http://acbio2.acbio.u-fukui.ac.jp/phychem/maeda/kougi
教科書:アトキンス物理化学(第8版)、東京化学同人
主に8・9章を解説するとともに10章・11章・12章を概要する
2
5月20日
(1)(応用問題:生物学とナノテクノロジー)9・31(p329)
β-カロテンが生体内で酸化されると、2つに割れて、2個のレチ ナール(ビタミンA)を形成するが、これは視覚を引き起こす色素の 前駆体である。レチナールの共役系は、C原子11個とO原子1個 からなる。レチナールの基底状態では、 n=6 までの各準位は2個
の電子で占められている。平均の原子核間距離を140pmと仮定 し、次の計算をせよ。
(a)基底状態と1個の電子が n=7 の準位を占める第1励起状態の 間のエネルギー間隔
ΔE(b)これらの2つの状態の間の遷移を起こすのに必要な電磁波の
振動数。
ビタミンAはβ-カロチンのようなカロチノイドから生合成される.
レチナール
112
・・・・・・
n
=1n
=6n
=7・・・・・・
ΔE
基底状態の 電子配置
励起状態の 電子配置
レチナール
レチナールは,11個の炭素原子と1個の酸素原子鎖に沿って5個 の単結合と6個の二重結合が交互に存在する。各CC結合長を
140pmとすると, 12個の原子が作る箱の長さは1.54nmとなる。12
個の原子から1つずつのp電子がπ共役系に参加している。
1
12
12個の電子は n
=6までのエネルギー準位を占めている。 レチ ナールに光を当てると光のエネ ルギーを吸収して、 n
=6から n
=7の準位に遷移する。
11
6
5月20日
(1)(応用問題:生物学とナノテクノロジー)9・31(p329)
β-カロテンが生体内で酸化されると、2つに割れて、2個のレチ ナール(ビタミンA)を形成するが、これは視覚を引き起こす色素の 前駆体である。レチナールの共役系は、C原子11個とO原子1個 からなる。レチナールの基底状態では、 n=6 までの各準位は2個
の電子で占められている。平均の原子核間距離を140pmと仮定 し、次の計算をせよ。
(a)基底状態と1個の電子が n=7 の準位を占める第1励起状態の 間のエネルギー間隔
ΔE( )
( )
( ) ( )
J 10 30 . 3
10 54 . 1 10
110 . 9 8
10 626 . 6 13
1 8 6 2
19
9 2 31
34 2 2
2 6
7
−
−
−
−
×
=
×
×
×
×
×
= ×
+
×
=
−
= Δ
mL h E
E E
m 10 54 . 1
pm 11
140
−9
×
=
×
=
L
C-C
結合距離を約
140pmとすると、
レチナールの箱の距離Lは、
7
(b)これらの2つの状態の間の遷移を起こすのに必要な電磁波の 振動数。
( )
( ) ( )
(
λ 602nm)
s 10 98 . 4
10 54 . 1 10
110 . 9 8
10 626 . 6 13 8
13
1 8
13
1 14
9 2 31
34 2
2 2
=
×
=
×
×
×
×
×
= ×
=
×
=
= Δ
−
−
−
−
mL h
h mL
h h ν E
nm 602 m
10 02 . 6
10 98 . 4
10 00 . λ 3
7 14
8
=
×
=
×
= ×
=
−
ν c
「箱の中の粒子モデル」で計算された振動数は4.98×10
14s-1、波 長は602nmである。all-trans-レチナールの吸収極大波長λ
max≈ 370nm(†)であり、計算値は1.6倍大きい。 β-カロテンでは計算された波長は実験結果の2.5倍であった。
(†http://www.chemistry.wustl.edu/~edudev/LabTutorials/Vision/Vision.html)
8
○回転運動
9・6 二次元の回転:環上の粒子
xy面内における半径rの回転運動を考える。
角運動量 J= ± rp
エネルギー E=p
2/2m
mr
2は慣性モーメントIであるから、
E=J
z2/2I ( J
zは J のz成分)
となる。量子力学では、エネルギー が量子化されるので、角運動量も離 散的な値しかとれない。
角運動量
=位置ベクトル×運動量
P r
L r r r
×
=
図9・27
xy面内にある半径 rの円形通路上の質点mの粒子
307
9
重心から質量m
Aの粒子Aまでの距離r
AはR・m
B/(m
A+mB).重心から質量m
Bの粒子Bまでの距離r
BはR・
mA/(m
A+ mB).慣性モーメントI=Σmr
2は、
I = mArA2
+
mBrB2=
mA{R・m
B/(m
A+mB)}2+
mB{R・
mA/(m
A+ mB)}2=R
2・m
AmB/(m
A+mB)=R
2・m
AmB/m
=
μR2実効質量(換算質量)を用いると
AとBの2粒子問題→質量μ
の1粒子問題
慣性モーメント EX
10
(a)回転の量子化の定性的な起源
角運動量の式 J= ± rp と ド・ブロイ の式 λ=h/p から,
J
z=± hr/ λ
波長 λ は自由な値を取ることができず、
角運動量も離散的な値に制限される。
1周回って出発点に戻ってきたとき、2 周目が1周目と位相が合っていれば定 常的な回転運動が保持されるが、位相 が合っていなければ消滅する。
図9・28 環上の粒子のシュレディンガー方程式の二つの解
307
11
根拠9・5 環上の粒子のエネルギーと波動関数
デカルト座標(x,y)と極座標(r,
φ)の変換式( )
( )
( )
φ φ φ φ
sin sin cos cos 2 2
1
12 2 2
12 2 2
12 2 2
=
=
∂ =
∂
=
=
=
= +
⋅ +
∂ =
∂
+
=
−
r r r y y r
r r r x
y x
x
x y
x x r
y x r
φ
=
φ
=
sin cos r y
r x
x y
y x
r
= +
= φ tan
2 2
2
同様に
y
y zx
x φ r
308
「量子力学を学ぶための解析力学入門」増補第2版,
高橋康著,講談社
12
デカルト座標(x,y)と極座標(r,
φ)の変換式r r
r x
x y x
x y x
x y
φ φ
φ φ
φ
φ φ φ φ φ
φ
sin cos
cos sin cos
1
) (tan tan
2 2
2 2 2
2
−
=
−
∂ =
∂
−
∂ =
∂
−
∂ =
∂
∂
∂
=
r r
y
x y
x y
x y
φ φ
φ φ
φ φ φ φ φ
φ
cos cos
cos 1 cos
1
) 1 (tan tan
2 2
=
∂ =
∂
∂ =
∂
−
∂ =
∂
∂
∂
=
x y
y x
r
= +
= φ tan
2 2
2
φ φ sin cos r y
r x
=
x
=
x r
y
φ
yz
根拠9・5 環上の粒子のエネルギーと波動関数 308
13 2
2 2 2
2 2
2 2
2 2
2 2
2 2
2
sin cos 1
cos sin
φ
∂
= ∂ φ
∂
∂ + φ
φ
∂
∂
= φ
∂ + ∂
∂
∴ ∂
φ
∂
∂
= φ φ
∂
∂
∂ φ
= ∂
∂
∂
φ
∂
∂
− φ φ =
∂
∂
∂ φ
= ∂
∂
∂
r r
r y
x
r y
y
r x
x
デカルト座標(直交座標)におけるハミルトニアンを極座標に 変換する準備が整った。
デカルト座標(x,y)と極座標(r,
φ)の変換式のまとめ2 2 2
2 2 2
2
1
φ
∂
= ∂
∂ + ∂
∂
∂
r y
x
根拠9・5 環上の粒子のエネルギーと波動関数 308
2 14
2
2 2 2
2
2 2 2
2 2 2 2
2 2 2 2
2 2
2 2
2
2 d
d
d d 2
2 1
2 2
h
h h
h h
h
m IE
m IE I E
E
I r
m y
x m
l
l
=
Ψ
−
=
Ψ
−
= Ψ
Ψ
= Ψ
−
Ψ
= Ψ
∂
− ∂
∂ =
− ∂
⎟⎟ =
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ + ∂
∂
− ∂
=
φ
φ
φ φ
H H
シュレディンガー方程式
ここで、
(慣性モーメント
I = mr2)
極座標を用いることによって,
シュレディンガー方程式を1つ の変数
φしか含まない簡単な 形に書き直すことができた.
(直角座標)変数 x , y ・・・2個
(極座標)変数
φ・・・1個
309
15
( ) φ Ne
imlφΨ =
±[ ]
2 1
2 * 0
* 2
0
* 2
0
*
*
2 1
1 2
1 d
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
= ⎛
∴
=
=
=
=
=
∫
∫
∫
−
π
π φ
φ φ
τ
π π π φ
φ
N
N N N
N d
N N d
e e N N
Ψ Ψ
im im
n m
( )
φφ π
ll
im
m
e
Ψ ⎟
±⎠
⎜ ⎞
⎝
= ⎛
21
2 1
シュレディンガー方程式 一般解は
ここで、N は規格化定数である。
したがって、
d Ψ Ψ
d 2
2 2
ml
−
φ
=309
16
波動関数は1価でなければならないので、
( ) 0 Ψ ( ) 2 π
Ψ =
r m
lλ = 2 π
K h , 0 , 1 , 2
2 = = ± ±
⋅
=
⋅
=
= m
lm
lm
lr h hr h
J
π λ
λ
I m I
J mr
J m
E p
z z l2 2
2 2
2 2 2
2 2
2
= = = h
=
したがって、
(波長のm
l倍)=(円周)
このとき角運動量
J は量子化されている。したがって,エネルギー
E も量子化されている。+、-は右回りと 左回りに対応している
1周回って出発点に戻ってきたと き、2周目が1周目と位相が合う ための条件.
309
17
(b)回転の量子化
回転のエネルギーEは量子化されている また、角運動量Jも量子化されている
h h K
l z
l l
m J
I m E m
=
±
±
=
= , 0 , 1 , 2 , 2
2 2
古典力学と量子力学の対応 変数 演算子
量子力学的角運動量演算子
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪ ⎪
⎪
⎨
⎧
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
y x x y
i J
x z z x
i J
z y y z
i J
z y x
h h h
ˆ ˆ ˆ
i x p
p
x x
x
x
∂
− ∂
=
→
→ ˆ h ˆ
309
18
角運動量
J=r×p( )
i( )
j( )
kk j i
x y
z x
y z
z y x
yp xp
xp zp
zp yp
p p p
z y x p
r
J = − + − + −
⎥⎥
⎥
⎦
⎤
⎢⎢
⎢
⎣
⎡
=
×
=
( )
( )
( )
⎪ ⎩
⎪ ⎨
⎧
−
=
−
=
−
=
x y
z
z x
y
y z
x
yp xp
J
xp zp
J
zp yp
J
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪ ⎪
⎪
⎨
⎧
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
⎟⎟ ⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
=
y x x y
i J
x z z x
i J
z y y z
i J
z y x
h h h
ˆ ˆ ˆ
i x p
p
x x
x
x
∂
− ∂
=
→
→ ˆ h ˆ
古典力学と量子力学の対応
変数 演算子
古典力学的 角運動量
量子力学的 角運動量演算子
y z
x
i j k
309
根拠9・6 角運動量の量子化
19
φ
∂
− ∂
⎟⎟ =
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
− ∂
∂
− ∂
= h i h
y x x y
i J ˆ
z極座標表示にすると
( )
φ φ φ
φ
φ φ φ
φ φ φ
φ φ
φ φ
∂
= ∂
∂ + ∂
=
∂
∂
− −
∂
= ∂
∂
− ∂
∂
∴ ∂
∂
= ∂
∂
∂
∂
− ∂
∂ =
∂
2
2
sin
cos
sin sin
cos cos
cos sin
r r r
r y x
x y
r y
r x
310
20
φ
∂
− ∂
= i h J ˆ
z( )
( )
( )
( )
( ) ( φ ) ( ) φ φ
φ φ φ φ
±
±
=
±
∴
±
=
±
=
±
−
=
±
−
∂ =
− ∂
=
±
±
±
±
l l
l l l l
m l
m z
l
im l
im l
im l
im z
Ψ m Ψ
J
Ψ m
Ne m
e N m i
e im N
i Ne
i Ψ
J
h h h
h h
h
ˆ ˆ
2
極座標表示を用いると
Jz
を
Ψml(φ)に作用させるΨml(φ)
は
Jzの固有関数であり、固有値は
±mlhである。
309
21
図
9・
31環上の粒子の波 動関数の実部。波長が短く なるにつれて、z軸のまわり の角運動量の大きさは
h単 位で大きくなっていく。
309
図9・28 環上の粒子のシュレディ ンガー方程式の二つの解
22
( ) ( )
( ) ( )
( )
( ) K
K
, 2 , 1 , 0 2 ,
1
, 2 , 1 , 0 2
cos
2 sin 2
cos 1
2 1 2
1
2 0
2 1 2
2 2 1 2
1
±
±
⎟ =
⎠
⎜ ⎞
⎝
= ⎛
±
±
=
∴
=
±
=
=
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
= ⎛
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
=
±
±
±
l im
m
l l
l l
m i
m i m
m
m e
Ψ
m m
m m
e
e Ψ
Ψ
l l
l
l l
l
φ π
π
φ π π
π π
π π
π
1周回って位相が合うための境界条件 309
m は整数でなければならない.
I m mr
E m
l l2 2
2 2
2 2
2
h = h
=
23
回転運動と水素原子の電子の運動
半径r ポテンシャル エネルギー
波動関数ψ
(r,
θ,
φ)動径部分R
n,l(r)角度部分Y
l,m(θ,
φ) Θ (θ) Φ (φ)平面(円)上の
2次元回転運動 一定 ゼロ 球面上の
3次元回転運動 一定 ゼロ
水素原子の
電子の運動 変数
クーロン引力
r V Ze
0 2
4πε
−
=
lφ
e
±im(
cosθ)
ml
Pl
l, n l Ln e n)
( 2
− ρ
ρ
l
Ln,
:ラゲール多項式
:ルジャンドル多項式
3L , 2 ,
=1 n
l l l
l
ml = − ,− +1,L, −1, 1 , , 2 , 1 ,
0 −
= n
l L
(
cosθ)
ml
Pl
EX
24
⎪ ⎩
⎪ ⎨
⎧
=
=
=
θ φ θ
φ θ
cos
sin sin
cos sin
r z
r y
r x
z V y
x
m ⎟⎟ ⎠ +
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
− ∂
=
2 22 22 22ˆ 2 h
H
9・7 三次元の回転:球面上の粒子 (a)シュレディンガー方程式
ハミルトニアン
半径rの球面を自由に運動する粒子の 場合、ポテンシャルエネルギーV=0であ り、半径rは定数であるから、波動関数 は
θと
φの関数Ψ(
θ,φ)である。x
r
yφ θ
z
(r,θ,φ)
311
25
(x, y, z)=(r, θ , φ )
⎪ ⎩
⎪ ⎨
⎧
=
=
=
θ
φ θ
φ θ
cos
sin sin
cos sin
r z
r y
r x
図9・35 球面極座標
311
26
三次元デカルト座標→三次元極座標
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪⎪
⎪
⎨
⎧
−
∂ =
∂
∂ =
∂
∂ =
∂
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪ ⎪
⎪
⎨
⎧
∂ =
∂
−
∂ =
∂
∂ =
∂
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪⎪
⎪
⎨
⎧
∂ =
∂
−
∂ =
∂
∂ =
∂
θ φ φ
φ θ
θ
φ θ
θ φ φ
φ θ
θ
φ θ
φ
θ θ
θ
sin sin
cos cos
cos sin
sin cos
sin cos
sin sin
0 sin cos
r x
r x
x r
r y
r y
y r
z
r z
z r
⎪ ⎪
⎪
⎩
⎪ ⎪
⎪
⎨
⎧
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂ ∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂ ∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
∂
= ∂
∂
∂
φ φ θ
θ φ
φ θ
θ φ
φ θ
θ
z z
r z r z
y y
r y r y
x x
r x r x
⎪⎩
⎪⎨
⎧
=
=
=
θ φ θ
φ θ cos
sin sin
cos sin r z
r y
r x
x
r y
φ θ z
(r,θ,φ)
311
27
2 2 2
2
2 2 2
2 2
2 2
2 2 2
2 2
2
1 1
sin sin 1
sin 1 1
r Λ r r
r r
r r
r r r r z y
x
⎟+
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
∂
∂
= ∂
∂ + ∂
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
∂
∂ + ∂
⎟⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
∂
∂
= ∂
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
∂
φ θ θ θ
θ θ
⎟ ⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
∂
∂ + ∂
∂
= ∂
θ θ θ
θ φ
θ sin sin
1 sin
1
2 2 2
Λ
2ここで、ルジャンドル演算子
Λ2は
球面上を運動する粒子の場合は、r=定数であるからrに関する微 分の項はゼロになるので、ルジャンドル演算子の部分だけを考え れば良い。
三次元デカルト座標→三次元極座標
311 根拠9・7 変数分離法の球面上の粒子への応用
z V y
x
m ⎟⎟ +
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
− ∂
=
2 22 22 22ˆ 2 h
H
半径rの球面を自由に運動する粒子のデカルト座標ハミルトニアン
2 2 2
2 2
2 2
2
1
r Λ z
y
x =
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
∂
r V Λ m
z V y
x m
+
−
=
⎟⎟ +
⎠
⎜⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ + ∂
∂ + ∂
∂
− ∂
=
2 2 2
2 2 2
2 2
2 2
2 ˆ 2
h H h
三次元デカルト座標から三次元極座標への変換
半径
rの球面を自由に運動する粒子の極座標ハミルトニアン
29
シュレディンガー方程式はポテンシャルエネルギーV=0として
2 2
2
2 2
2 2 2 2
, 2 2 2 1
2
h h
h h
mr EI I
Ψ E IΨ
Ψ E mr
Ψ Λ
EΨ Ψ
r Λ m
=
=
−
=
−
=
−
=
=
−
ε ε
( ) θ,φ Θ ( ) ( ) θ Φ φ
Ψ =
Ψ(θ,φ)
は変数分離することができる ここで、
311
30
をシュレディンガー方程式に代入する,
( ) θ,φ Θ ( ) ( ) θ Φ φ
Ψ =
ΘΦ
−
⎟=
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ Θ
∂
∂
∂ + Φ
∂ Φ
∂ Θ
ΘΦ
−
=
⎭ΘΦ
⎬⎫
⎩⎨
⎧ ⎟
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂
∂
∂ + ∂
∂
∂
θ ε θ θ
θ φ
θ
θ ε θ θ
θ φ
θ
sin sin sin
sin sin 1 sin
1
2 2 2
2 2 2
θ θ ε
θ θ θ φ
2 2
2
sin sin sin
1 ⎟−
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛
∂ Θ
∂
∂
∂
− Θ
∂ = Φ
∂ Φ
両辺を
ΘΦで割り,sin
2θをかけると,
左辺は
φだけ,右辺は
θだけの関数であり,この等式がなりたつた めには,両辺が定数でなければならない.定数を-m
l2とすると,
⎪⎪
⎩
⎪⎪⎨
⎧
=
⎟+
⎠
⎜ ⎞
⎝
⎛ Θ
Θ
− Φ = Φ
(B) d sin
sin d d
d sin
d (A) d 1
2 2
2 2
2
l l
m m
θ θ ε
θ θ θφ
311
31
(
A)は,二次元の回転運動で既に解いたものと同じである
( )
, 0, 1, 2,K2
1 ⎟21 = ± ±
⎠
⎜ ⎞
⎝
=⎛ ±im l
m e m
Ψ l
l φ
φ π
(B)は物理学でよく知られた方程式であり,ルジャンドル方程式 とよばれる.解はルジャンドル陪多項式で表される.
( ) θ = P
Jm( cos θ )
Θ
( 1 )
2
2
= +
= IE J J ε h
ここで,
でなければならない.
ルジャンドル陪多項式
( )
( )
θ θ θ
θ θ
θ
θ
2 2 2
1
sin 3 2
2
cos sin
3 1
2
1 cos
3 0
2
sin 1
1
cos 0
1
1 0
0
cos
±
±
−
±
m
PJ
m J
J = 0,1,2,…,J≧|m|である.
312
32
は 球面調和関数
Yl,m(θ,φ)とよばれる.
( ) θ , φ Ne
imlφP
lml( cos θ )
Ψ =
±波動関数
ここで量子数 m
lと l が現れる.
l l l
l m
l = 0,1,2,L, l = − ,− +1,K,0,K, −1,
これらは,水素原子の波動関数にも現れ, l は方位量子数,
m
lは磁気量子数とよばれる.
エネルギーEは,
であり,量子化されている.
( ) h , 0 , 1 , 2 , L
1 2
2
=
+
= l
l I l
E
(Nは規格化定数)
312
33
( ) θ , φ
φ( cos θ )
,
l l l
m l im m
l
Ne P
Y =
±球面調和関数
球面調和関数には、2つの量子数
ml,
lが現れる.
図9・34 球面上の粒子の波 動関数は2つの境界条件を満 たさなければならない。この要 請から、粒子の回転状態を表 す角運動量状態に対して2つ の量子数が生じる。
312
l l l
l m
l = 0,1,2,L, l = − ,− +1,K,0,K, −1,
34
三次元の回転のまとめ
(1)シュレディンガー方程式の解(つまり波動関数)
球面調和関数
( ) θ , φ
φ( cos θ )
, l l l
m l im m
l
Ne P
Y =
±( ) h , 0 , 1 , 2 , L
1 2
2
=
+
= l
l I l
E
(2)エネルギー準位と多重度
多重度 g
l= 2l + 1
l
の与えられた値に対して,
mlの許される値が
2l + 1個 ある。すなわち,各エネルギー準位の多重度は2l + 1で ある。
EX
l l l
l m
l = 0,1,2,L, l = − ,− +1,K,0,K, −1,
各
lに対して
2l + 1個の
ml35
( ) ( )
( )
( ) ( )
( )
( )
π φ π φ π
π φ π
π
θ
θ θ
θ θ θ
i
i i
m l l
e e
Y m
l
2 2 2
1 3215
2 1 815
2 2 1 165
2 1 83
2 1 43
2 1 41
,
sin 2
2
cos sin
1 2
1 cos
3 0
2
sin 1
1
cos 0
1
0 0
±
±
±
±
±
−
±
m m
表9・3 球面調和関数Y
l,m(θ,φ)EX
36
量子数
Yl,m(θ,φ) 概形 l, m0 0
定数
1 0 cosθ
1 ±1 sinθ sinφ
1
±
1 sinθ cos φ1
,±
1は有理化して,
と
を示してある。
(
1,1 1, 1)
2 1
+Y −
Y
(
1,1 1, 1)
2i Y −Y −
EX
37
0
0.25 0.50
0.75 1.00
-0.25 -0.50
-0.75 -1.00
z
x
30°
45°
60°
r = 0.866 r = 0.707
r = 0.500
極座標プロット
θ
rcos z =θ
r = 1.000
EX
25 . 0
5 . 0 5 . 0
60 cos
=
×
=
=r o z
5 . 0
2 1 2 1
45 cos
=
×
=
=r o z
75 . 0
2 3 2
3 30 cos
=
×
=
=r o z
図9・38
l = 2のときの角運動量の許される値 38ここまで,単に角運動量と言ってきたが,正確には軌道(オー ビタル)角運動量
†という.角運動量の大きさは{l(l+1)}
1/2hと一定 であり,かつ
z成分(
z軸方向への射影)が
ml=l,
l-1,…-l+1,-lとい うことは,角運動量ベクトルの向きが自由な方向をとれず,離散 的な限られた向きしか取れないことを意味する.
l = 2のときに許される配向は図のようになる.このことを空間量子化という.
†
他にスピン角運動量(9・8節)がある.
(c)空間量子化 314
39
図9.40 角運動量のベクトルモデル (a)は図9.38をまとめ たものであるが,z軸の回りの方位角は確定できないので,(b)
のように円錐上のどこかにあって方位は特定できないモデルの 方が良い.
316
40
9・8 スピン
1922年に,シュテルンとゲルラッハは角運動量の空間量子化を確
かめる実験を行なった.彼らは,銀の原子線を不均一な磁場の中 へ入射させた.原子核のまわりを,負の電荷を帯びた電子が回転 するならば,小さな磁石として振る舞い,磁場と相互作用するであ ろう.そして,古典力学と量子力学では,異なる実験結果が得られ ると予想された.
Ag
原子のビーム 不均一磁場
シュテルンとゲルラッハの実験
Hyper Physics (http://hyperphysics.phy-astr.gsu.edu/hbase/hframe.html)
318
41
古典力学と量子力学で予想される結果は次のようになる.
古典力学・・・角運動量の配向はどんな値でも取れるので,
幅広い帯状になるであろう.
量子力学・・・角運動量は空間量子化されているので,離散的な 配向しか取ることができないので,数本の鋭い 原子の帯が観測されるであろう.
不均一磁場
Ag原子のビーム古典力学からの予想 量子力学からの予想 磁場あり
磁場なし
318
42
図9・39 シュテルン-ゲルラッハ の実験
(a) 銀の原子線を不均一な磁場の中
へ入射させた。古典力学からは
(b)、量 子力学からは(c)の結果が予想された.
(b)
古典力学から予想される結果
角運動量の配向はどんな値でもとれ るから、幅広い帯状になる.
(c)量子力学から予想される結果
角運動量は量子化されているので 数種類の鋭い帯になる.銀原子を使っ た実験で観測された.
315
43
シュテルンとゲルラッハの実験から,
Ag
原子ビームの2本の帯
が観測された.古典力学から予想される結果とは明らかに違った.
しかし,量子力学から予想された結果とも少し食い違っていた.軌 道(オービタル)角運動量の大きさと
z 成分は,次のように量子化されている.
( )
{
+1}
1/2h, = 0,1,2,K= l l l 角運動量の大きさ
すなわち,角運動量は空間量子化されており,2l +1 個の配向を 生じる.Ag原子ビームが2本に分裂するのなら,l =1/2 になるが,
l
は
0を含む正の整数でなければならないことと矛盾する.
l l l
l m
ml , l =− ,− +1, ,0, , −1,
= h K K
角運動量の
z 成分318
44
シュテルンとゲルラッハの実験結果は,彼らが観測していたの は軌道(オービタル
)角運動量ではなく,電子の自分自身の軸の 周りの回転運動から生じるものであるという提案によって解決さ れた.新しい物理量であるスピン角運動量の発見である.
軌道(オービタル)角運動量と区別するために,次のような記号 が用いられる.
量子数
z軸成分 軌道(オービタル)角運動量 l m
lスピン角運動量 s m
sスピン角運動量の発見
318
45
Ag : [Kr]4d
105s
1価電子は
l = 0 の s 電子が1つ.l = 0 すなわち軌道角運動量はゼロである.したがって,軌道回転運動に起因する磁気的な性質は持た ない.しかし,シュテルンとゲルラッハの実験は,巨視的な磁石と同 じ振る舞いを示した.
電子に,軌道角運動量以外の新しい角運動量の寄与がある.
スピン角運動量
318
46
シュテルン・ゲルラッハの実験
不均一な磁場中を通過したAg原子線は,電子スピンの2つの値
ms = +(1/2) と ms = - (1/2) に対応する2本のビームに分かれた.S
N
ms = +(1/2)
ms = - (1/2)
不均一磁場
Ag原子のビーム
古典力学からの予想 量子力学からの予想 磁場なし
磁場あり
EX
47 パリティ
Vol.19, No.11, 17-26 (2004)
Physics Today, 56, 53-59(2003)
EX
48
EX
49
ドイツのフランクフルトでシュテルンとゲルラッハが実験をした建 物の入り口に2002年2月、彼らを業績を記念して掲げられた記 念プレート.中央の実験結果の拡大図を次のページに示す.
EX
シュテルンとゲルラッハの実験の模式図
50EX
シュテルンとゲルラッハの 業績を記念するプレートは 彼らが研究していた建物に 取り付けられている。
The Physical Tourist in Frankfurt (1)
http://backreaction.blogspot.jp/2007/08/physical-tourist-in-frankfurt-1.html
52
1922年2月8日付、ボーアに宛てたゲルラッハの葉書
Physics Today, 56, 53-59(2003)
53
スピン角運動量は,スピン量子数sと,z軸上への射影をあら わすm
Sを使って表す.
大きさ
{s(s+1)}1/2hz成分 mS =s,s-1,…,-s+1,-s 2s+1個の値をとりうる
シュテルン
-ゲルラッハの実験によると,
Ag原子ビームが
2本に 分裂したということは,電子スピン量子数は整数ではなく,半整 数の1/2であることを意味する.
スピン角運動量のまとめ
318
54