博 士 ( 理 学 ) 佐 々 木 洋 平
学 位 論 文 題 名
回転球殻IVIHD ダイナモ:
初期磁場及びカ学的境界条件の影響に関する考察 学位論文内容の要旨
固有 磁場 を持 つ天 体は 多く 知ら れて いる,近年の計算 機能カの向上によって。天体 内 部の 流体 運動 とそ れに 伴な うダ イナ モ作用の数値計算 が精力的に行なわれる様にな った.しかしながら, 現在の計算機資源では実バラメータでの数値実験は困難であり,
現 状の 数値 計算 可能 な範 囲に おい てバ ラヌータや物理設 定に対する解の依存性を把握 す るこ とが .観 測さ れる 天体 固有 磁場 のダイナモ作用に ついての洞察を深めることに とって有益であると考 えられる,
本研 究で は, これ まで あま り調 べら れて い なか った ダイ ナモ 解の 初期 磁場 およびカ 学 的境 界条 件へ の依 存性 を数 値的 に調 ベパ ラ メー 夕空 間上 で整 理し た. 用い たモデル は 回転 球殻 中の ブシ ネス ク磁 気流 体モ デル で ある .計 算し たパ ラメ ー夕 範囲 はプラン ド ル 数Pr=l, 工 ク マ ン 数Ek=10‥ , 球 殻 の 内 径 外 径 比 ま=0.35, 磁 気 プ ラ ンド ル数 Pm‑ニニ1〜50,レイリ ー数は臨界値の2〜10倍であ る.力学的境界条件として,球殻両端 が 滑り 無し 条件 の場 合と ,球殻下端が滑り無し条件,球殻上端が応力無し条 件の場合,
初 期磁 場と して ,運 動工 ネル ギー の約100倍 の「 強い初期磁場」と運動エネ ルギーの約 0.01倍の「弱い初期磁 場」の場合の4ケースについ て数値実験を行なった,数値計算は,
初 期に 熱対 流計 算を 行な い統 計的 平衡 状態 を 求め ,そ の場 に対 して 磁場 を付 与するこ とでダイナモ計算を実 行した.
初 期 に 運 動 エネ ルギ ーに 比し て 磁気 エネ ルギ ーの 大き い磁 場を 付与 した ダイ ナモ 計算 では ,上 端境 界条 件を 応力 無し にし た場 合のダイナモ解の存在する領 域が両端と も滑り無し条件の場合に比して狭くなり,高レイ1」ー数側に移動した.しかしながら,
得ら れた ダイ ナモ 解は どち らの 境界 条件 設定 においても,これまでの研究 で良く知ら れたa2ダ イナ モで あっ た. 初期 磁場 が強 い場 合に境界条件の影響が表われ ず,特に熱 対流 計算 で形 成さ れて いた 強い 帯状 流の 影響 がほとんど表われないことは ,磁気エネ ルギ ーが 大き い場 合に は強 い磁 気圧 のた めに 流れ場の構造が高気圧性の循 環へとすぐ に移 行し てし まい ,低 気圧 性の 循環 であ る帯 状流は直ちに弱められてしま うことから 理解される.
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初期に運動エネルギーに比して磁気エネルギーの小さい磁場を付与したダイナモ 計算では,どちらの境界条件設定においてもダイナモ解の存在領域が高レイ1」ー数側,
高磁気プランドル数側に移動した.球殻両端に滑り無し条件を課した場合に得られた ダイナモ解は,初期磁場の大きさによらずd2ダイナモであった.一方で,上端に応力 無し条件を課した場合の計算では,磁気エネルギーが運動エネルギーに比して小さい 新しい弱磁場ダイナモ解が得られた,このダイナモ解は上下二層の空間的構造により 特徴づけられる.上層は,強い順行帯状流と動径外向きに広がった螺旋状の対流渦が 支配的である.この螺旋渦は自転と同方向に伝播し,あまり組織化されてはいない.
その一方で,下層は自転と逆向きに伝播する柱状の乱流対流渦が支配的である.上層 の強い帯状流は下層で形成された磁場が球殻表面に表れることを妨げている.このダ イナモ解は上下二層の空間的構造により特徴づけられる.上層は,強い順行帯状流と 動径外向きに広がった螺旋状の対流渦が支配的である.この螺旋渦は自転と同方向に 伝播し,あまり組織化されてはいない.その一方で,下層は自転と逆向きに伝播する 柱状の乱流対流渦が支配的である.上層の強い帯状流は下層で形成された磁場が球殻 表面に表れることを妨げている.
この弱磁場ダイナモ解の磁場生成過程を調べるために,下層と上層それぞれの伝播 速度で経度方向に移動する座標系で時間平均をとり,上層と下層それぞれの速度場と 磁場の特徴的な構造を抽出することに成功した.さらに,この弱磁場ダイナモ解の運 動エネルギーと磁気エネルギーの収支解析を行ない,運動および磁気エネルギーのト ロイダル成分とポロイダル成分のェネルギー変換を明確にした,これらの解析を合わ せることで運動エネルギーのト口イダル,ポ口イダル成分が磁場のトロイダル,ポロ イダル成分へと変換される領域を特定した.球殻下層において,対流渦によるト口イ ダル磁場の磁力線の引き伸ばしによって渦状のポ口イダル磁場が生成される.この渦 状の磁力線が間欠的に上層に貫入する対流運動によって持ち上げられ,球殻上層の螺 旋渦に巻き込まれ引き伸ばされてトロイダル磁場が形成される.このトロイダル磁場 が間欠的に下層に落ちてきて内側領域の対流渦に引き込まれ。再び渦状のポロイダル 磁場を形成する.これらの過程を繰り返すことで自励的な磁場が生成維持されてい る,
この新しい弱磁場ダイナモ解の存在は,天体表面における磁場が弱い場合であって も天体内部では活発に磁場が生成維持されている可能性があることを示唆している.
天体内部の磁場は観測できないため,その大きさについては未だ良くわかっておらず,
場合によっては,表面での磁場活動に比べて内部の磁場活動が強い天体が存在するか もしれなしゝ.また,新しい弱磁場ダイナモ解の存在は,ダイナモ解が初期磁場の大き さに依存すること,すなわち天体固有磁場の形成初期段階で「磁場の種」として外部 から 与えられ る磁場に よって, 現在の磁 場の構造が変わる可能性を示している.
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学位論文審査の要旨
主 査 准 教 授 石 渡 正 樹 副 査 教 授 渡 部 重 十
副査 教授 倉本 副 査 教 授 林
圭
祥 介 ( 神戸 大 学 大学 院 理学研究科)
副査 准教 授 竹広 真 一( 京 都 大学 数 理解 析 研 究所 )
学 位 論 文 題 名
回 転 球 殻 MHD ダ イ ナモ :
初期磁場及びカ学的境界条件の影響に関する考察
近年の 計算機能カの向上によって,天体内部の流体運動とそれに伴うダイナモ作用の数値計 算が精力的に行なわれる様になった.しかしながら.現在の計算機資源では実バラヌータでの数 値実験は困難であり,現状の数値計算可能な範囲においてバラヌータや物理設定に対する解の依 存性を把握することが,観測される天体固有磁場のダイナモ作用についての洞察を深めることに とって有益であると考えられる. .
本論文 は これまであまり調ぺられていなかった初期磁場およびカ学的境界条件を変えた場 合のダイナモ解の様相を数値的に調べ パラメー夕空間上で整理を行ったものである,回転球殻 中のブシネスク磁気流体モデルを用いて、プランドル数を1 エクマン数を103,球殻の内径外径 比を0. 35, 磁気 プ ラ ン ドル数を1から50,レイ リー数を 臨界値 の2か ら10倍の 場合につ い て考察している,力学的境界条件として,球殻両端が滑り無し条件の場合と,球殻下端が滑り無 し条件で球殻上端が応力無し条件の場合の二通りを用いている.
初期に運動エネルギーに比して磁気エネルギーの大きしゝ磁場を付与したダイナモ計算では,
上端境界 条件を応力無しにした場合のダイナモ解の存在するパラヌー夕領域が,両端とも滑り 無し条件 の場合に比して高レイリー数側に移動することが示された,またダイナモ解の存在領 域が両端とも滑り無し条件の場合に比べて狭くなった.しかしながら,得られたダイナモ解はど ちらの境 界条件設定においても,これまでの研究で良く知られたaLダイナモであった.初期磁 場が強しゝ場合に境界条件の影響が表われず 特に熱対流計算で形成されていた強しゝ帯状流の影 響がほと んど表われないことは,磁気エネルギーが大きい場合には強い磁気圧のために流れ場 の構造が 高気圧性の循環へとすぐに移行してしまい,低気圧性の循環である帯状流は直ちに弱 められてしまうことから理解される,
初期に運動エネルギーに比して磁気エネルギーの小さい磁場を付与したダイナモ計算では.ど ちらの境 界条件設定においてもダイナモ解の存在領域が高レイリー数側.高磁気プランドル数 側に移動 した.球殻両端に滑り無し条件を課した場合に得られたダイナモ解はa2ダイナモであ った.一方で,上端に応力無し条件を課した場合の計算では 球殻上層と下層の二層構造を持つ 新しい弱磁場ダイナモ解が得られた,
このダ イナモ解は上下二層の空間的構造により特徴づけられる.上層は 強い順行帯状流と 動径外向 きに広がった螺旋状の対流渦が支配的である.この螺旋渦は自転と同方向に伝播し,
あまり組 織化されてはいない.その一方で,下層は自転と逆向きに伝播する柱状の乱流対流渦
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が支配的である.上層の強い帯 状流は下層で形成された磁場が球殻表面に表れることを妨げて いる.この弱磁場ダイナモ解の磁場生成過程を調べるために,下層と上層それぞれの伝播速度で 経度方向に移動する座標系で時 間平均をとり,上層と下層それぞれの速度場と磁場の特徴的な 構造を抽出することに成功した .さらに,この弱磁場ダイナモ解の運動エネルギーと磁気エネ ルギーの収支解析を行なしゝ,運動および磁気エネルギーのトロイダル成分とポロイダル成分の エネルギー変換を明確にした. これらの解析を合わせることで運動エネルギーのトロイダル,
ポ口イダル成分が磁場のト口イダル,ポロイダル成分へと変換される領域を特定した.球殻下層 において,対流渦によるト口イ ダル磁場の磁力線の引き伸ばしによって渦状のポ口イダル磁場 が生成される.この渦状の磁力 線が間欠的に上層に貫入する対流運動によって持ち上げられ,
球殻上層の螺旋渦に巻き込まれ 引き伸ばされてトロイダル磁場が形成される.この卜口イダル 磁場が間欠的に下層に落ちてき て内側領域の対流渦に引き込まれ,再び渦状のポ口イダル磁場 を 形 成 す る , こ れ ら の 過 程 を 繰 り 返 す こ と で 自 励 的 な 磁 場 が 生 成 維 持 さ れ て い る , この新しい弱磁場ダイナモ解は 天体表面における磁場が弱い場合であっても.天体内部では 活発に磁場が生成維持されている可能性があることを示唆している.天体内部の磁場は観測でき ないため|その大きさについては未だ良くわかっておらず,場合によっては,表面での磁場活動 に比べて内部の磁場活動が強しゝ天体が存在するかもしれなしゝ.また,新しい弱磁場ダイナモ解の 存在は,ダイナモ解が初期磁場の大きさに依存することは天体固有磁場の形成初期段階で「磁場 の種」として外部から与えられる磁場によって,現在の磁場の構造が変わる可能性を示してしゝる.
これを要するに、著者は、惑星ダイナモの振る舞いのカ学的境界条件依存性について新たな新 知見 を 得た もの であ り、 天体 内部 構造 の理 解に 対し て貢 献す る とこ ろ大 なるものが ある。
よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 )の 学 位を 授与 され る資 格あ るも のと 認め る。
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