B4で印刷 実施: 2018年7月8日(月) 14:50-16:20, 4-203室
2019 年度 前 期 中 間 試 験 (問題
兼解答用紙)
開講学部 評点小計理工学部
問題枚数 両面印刷 別紙解答用紙 試験時間 試 験 科 目 名 出 題 者
2/1 有 なし 80分 代 数 学 I 月曜教科書2: Original時限, 大 西 良 博
持込許可物件 所属学部 所属学科 学年 クラス 学 籍 番 号 (9桁) 氏 名
なし 理工学部 数学科 年
評 点
注意1. 最終的な答に至る途中の説明をできるだけ詳しく書くこと. 最終結果だけでは得点できない. 注意2. 学生証,記名用のペン,鉛筆またはシャープペンシル,消しゴム以外は机の上に置かないこと.
注意3. 試験場の静粛を保つために,途中退出は開始60分後の時点の一回限りとする. 注意4. 6a , 6b , 6c は選択問題である. 1問を選んで解答せよ.
1 (10点) Gを群,H < Gとする. また任意にg∈Gをとり固定する.
このときGの部分集合g−1HgはGの部分群であることを示せ.
2 (10点) (1)行列
[ 0 1 0 0 0 −1
1 0 0
]
の位数を求めよ. 但し,演算は行列 の乗法とする.
(2)⋆ 成分のすべてが整数である2次の 正方行列で, その位数が 6 であ るものを1 つ見出せ.
3 (10 点) S4 の部分集合 H ={ε, ( 1 2 ), ( 3 4 ), ( 1 2 )( 3 4 )} は部 分群であることを示せ.
4 (10点) 位数42の巡回群 ⟨a⟩の生成元はいくつあるか. またそれら 生成元をak (0< k <42)の形で列記せよ.
5 (10点) 位数2021の元aから生成される巡回群Gがある. このとき,a5 はGの生成元であるか. 生成元であれば (a5)m=aとなる整数mが 存在する. その場合は,その様なm(但し0≦m <2021)を求めよ. さもなくば,生成元ではない理由を述べよ.
6a (10点) d= gcd(m, n)とする. このとき次を示せ: 連立方程式 {x≡a modm,
x≡b modn が解を持つ⇐⇒a≡b modd.
6b (10点) 素数pに対し, Z/pZの元を成分とする行列の集合 GL(
2,Z/pZ)
=
{[a b
c d] a, b, c, d∈Z/pZ, ad−bc̸= 0 }
は群である. 但し演算は通常の行列の積をZ/pZの演算により行ふもの である. GL(
2,Z/7Z)
(p= 7)において, [ 3 1
0 1 ]
の位数を求めよ.
6c (10点) f(x) =x4−4x2+ 1∈(Z/7Z)[x]を因数分解せよ.
( Hint : 1次式を約元に持つとは限らない.x4+x2+ 1 = (x2+ 1)2−x2を真似る. )
7 (15点) 次の問に答へよ.
(1)Z/2021Zにおいて5の乗法に関する逆元を求めよ.
答は0< n <2021なる整数nによつてnの形で与へよ. (2)⋆ 2021を素因数分解せよ. ( Hint : 2021は素数ではない!)
(3) Euler函数の値φ(2021)を求めよ.
(4)51931 および51934 を2021で割つた余りを求めよ.
( Hint : Eulerの定理と(1), (3) )
学籍番号
8 (10 点) S4 の部分群H ={ε, ( 1 2 ), ( 3 4 ), ( 1 2 )( 3 4 )} に関す る左剰余類分解S4/H を要素を列記して記せ.
9 (15点) 位数が素数の群は巡回群に限ることを示せ. ( Hint : 位数が2
以上であるから,単位元以外にも元がある.その1つaをとり,部分群⟨a⟩を考へよ.こ
れにLagrangeの定理を適用. )
既習事項のまとめ
(1)Nは自然数全体,Zは整数全体のなす環,Qは有理数全体のなす体,Rは実数全体のなす体,Cは複素数全体のなす体.(2)a,b,···,c∈Zに対して,{ax+by+···+cz|x,y,···,z∈Z}=dZとなるd∈Z(d≧0)が唯1つ存在する.このときd=gcd(a,b,···,c)である.(3)1つの演算(a,b)7→abが定義された集合Gが群であるとは,次のG0,G1,G2,G3の4つが成り立つときをいう:(ただしa,b,cはGの任意の元を表す.)
G0演算G×G→G,(a,b)7→abが定義されている.この演算について,以下が成立:G1結合法則:(ab)c=a(bc).G2単位元の存在:ある元1∈Gが存在して任意のa∈Gについて1a=a1=aが成り立つ.1は単位元と呼ばれる.
G3逆元の存在:任意の元a∈Gに対し,ax=xa=1を満たす元x∈Gが存在する.その様なxをaの逆元と呼ぶ.一般的な状況では,その様なxをa−1と記すことがある.さらに G4交換法則:ab=baが満たされているとき,GはAbel群または可換群と呼ばれる.(4)部分群とは群の部分集合であって,その群の演算について,それ自体で群になっているもののことである.(5)群Gがあるa∈GについてG={am|m∈Z}と表されるときGをaによつて生成された巡回群と呼ぶ.この状況を
G=⟨a⟩と記し,aをGの生成元と呼ぶ.
(6)Gをxで生成された位数mの巡回群とする.Gの任意の部分群Hはまた巡回群であり,d|mなるdが存在して,xdがHを生成する.(7)加法と呼ばれる演算(a,b)7→a+bと乗法と呼ばれる演算(a,b)7→abの定義された集合Rが可換環であるとは,Rが次の5つの条件を満たすことである:(ただしa,b,cはRの任意の元を表す)R1Rは加法に関して可換群である.(単位元は通常0で表す)R2乗法の結合法則:(ab)c=a(bc).
R3左右の分配法則:a(b+c)=ab+ac,(b+c)a=ba+ca.R4単位元の存在:加法の単位元0とは異なるある元1∈Rが存在して,Rの任意の元xに対して1x=x1=x.R5乗法の交換法則:ab=ba
(8)可換環Rの部分集合M⊂RはI1a∈M,b∈Mならばa+b∈M,I2a∈M,x∈Rならばxa∈Mが成り立つとき,Rのidealと呼ばれる.たとへば,qR(q∈R)はRのidealである.(9)可換環Rの0以外のどの元も乗法に関する逆元を持つとき,Rは体であるといはれる.(10)可換環Rについて1の約元は単元と呼ばれる.単数の全体R×と書く.これは乗法に関して群をなす. (11)Rを零因子をもたない可換環とする.0でもなく,Rの単元でもないq∈Rは,任意のa,b∈Rに対し,「q=abならばa∈R×またはb∈R×である」が成り立つとき,Rの既約元であるといはれる.
0でもなく,Rの単元でもないq∈Rは任意のa,b∈Rに対して「ab∈qRならば,a∈qRまたはb∈qR」が成り立つとき,素元であるといはれる.
(12)この科目で登場した可換環には,Z[i]={a+bi|a,b∈Z},Z[ √2]={a+b √2|a,b∈Z},Z[ √−5]={a+b √−5|a,b∈Z}や下の(17)に記すZ/mZなどがある.
(13)(Euclidの)互除法を使うとgcd(a,b)=dのときにax+by=dとなるx,y∈Zを見付けることができる.
(14)群GとH<Gに対して{xi|i∈Λ}が存在してG= ⊔
i∈Λ xiHとなる.これをGのHによる左剰余類分解と称する. (15)(Lagrangeの定理)有限群Gと部分群H<Gについて|H|は|G|の約数である.(16)有限群Gが巡回群であるためには,任意のm∈Nについて,#{x∈G|xm=1}≦mであることが必要十分.
(17)Z/nZは法nによる剰余類(kmodn)(=kと略記する)達のなす可換環.
例えばZ/5Z={(0mod5),(1mod5),(2mod5),(3mod5),(4mod5)}={0,1,2,3,4}.
(18)φ(n)=“(Z/nZ)×の要素の個数”=“1,···,n−1の中でnと互いに素なものの個数”.ただしφ(1)=1.(19)(Z/nZ)×={(jmodn)∈Z/nZ|gcd(j,g)=1}.これは積に関して群をなす.法nに関する既約剰余類群と呼ばれる. (20)pを素数とする.(Z/pZ)×は巡回群である.その生成元を法pの原始根と呼ぶ.