成果と課題
著者 堀池 美衣
雑誌名 研究紀要 : 共に創りあげる授業
巻 20
ページ 115‑115
発行年 2020‑03
出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校
URL http://doi.org/10.14945/00027162
静岡大学教育学部附属静岡中学校 研究紀要(第20号)
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成果と課題
子どもたちが普段それほど意識していない生活の一場面に焦点を当て,生活を見直したり新たな価値観 にふれたりして,よりよい生活を追い求めて実践することを繰り返すことができるように授業実践を重ね てきました。その中で以下のような成果と課題が見えてきました。
1 成果
(1) 生活に対する捉え方が広がったこと
本年度の授業実践では,当たり前のように存在している衣服と日常生活の中で何気なく行っている「着 る」ということを,「思い」という切り口から見直しました。子どもたちは衣服に込められている思いを探 ることで,昔の人の願いや作り手の思いが具現化したものが衣服であり,着る人が思いを込めることがで きるものでもあると認識するようになりました。平成30年度の「静岡おでんの魅力を伝え隊」の授業実践 でも,子どもたちにとっては家庭での食事や給食の献立の一つである静岡おでんという料理の魅力を,具 材,栄養素,煮汁・味付け,調理方法の視点から追求しました。個人の追求と全体での共有を通して子ど もたちは,静岡おでんを作る人たちの思いや現在まで受け継がれてきたことも含めて魅力と捉えるように なりました。新たな価値観にふれ,生活を見直す視点が増えた子どもたちは,衣服に思いを込めたり地域 の食文化としての静岡おでんについて考えたりする際に「何を一番大切にすべきか」「両立できないか」
「どの方策がよいか」など,世の中の人々と同じように悩みながらよりよい方策を追求していきました。
これらの活動を通して,作り手をはじめとする「もの」に携わる様々な人たちの思いに意識が向いたり,
これからの衣生活,食生活について考えたりする子どもたちの発言や記述が見られたことから,子どもた ちの生活に対する捉え方は確かに広がったと言えます。
(2) 題材を超えて学ぶことができたこと
子どもたちの対話の中に以前の題材で学習した素材の機能について言及する発言があったり,その際に 使ったワークシートを参考にしようとする姿が見られたりしたことから,子どもたちが既習事項を活用し ながら考えようとしていることがわかりました。平成 30 年度の授業実践でも,静岡おでんという料理は
「人々のコミュニケーションが生まれる」「楽しみを作ってくれる」ものであると考えた記述が見られ,食 事にはふれあいの場となり,楽しみとなる役割があると学んだことを改めて実感したと捉えることができ ます。つまり,子どもたちは一つの題材だけでなく前の題材とのつながりを自然に見いだしていたと考え られます。また,作り手の存在にも目を向けたり,地域の一員や文化を継承する立場から考えたりした発 言や記述が見られたことから,子どもたちは生活に対する新たな思いや課題意識をもつようになったと言 えます。これらをふまえると,製作する活動も含め,題材を通して広がった子どもたちの視点を後の題材 で活用できるように構想することで,子どもたちにとっても前後の題材のつながりが実感できるようにな ると考えます。
2 課題
子どもたちの対話の中には,既習事項や生活経験を基にしているものもあります。しかしながら,本年 度の授業実践においてグループの対話で出てきた「快適ということは水をかけてすぐに乾くやつ」「吸水性 がよい?」「そうそう」というやりとりのように,正しく理解しているとは言えない姿があったり,「いつ もそうしているから」という理由にとどまり「なぜいつもそうしているのか」まで考えがせまっていなか ったりする場面がありました。さらに,限られた時間の中では,子どもたちだけで根拠となる資料を集め ることが難しい状況もありました。科学的に間違った知識や個人的な感覚だけを理由としていては,考え た方策によってよりよくなったと実感することが難しいでしょう。そこで,科学や法律によって裏づけら れている資料や異なる立場の人の考えを知ることができる資料が必要となります。根拠となる資料の精選 や適切な場面での提示方法を工夫することにより,根拠を基に「こうすればよくなるのではないか」とい う見通しをもって解決策を検証したり,自分の生活の中で実践したときに実感を伴って「だからこうすれ ばよいのか」と納得できたりする子どもたちの姿につなげたいと考えます。