‑ 50‑
秋田県産天然ゼオライトに対するセシウム およびストロンチウムのイオン交換特性
荻 原 宏 二 郎
・
遠 藤 究 明 ・Cesium and Strontium Ion Exchange on Natural Z e o l i t e i n A k i t a ‑ P r e f e c t u r e
K o j i r o OGIWARA and Hiroaki ENDO ( 1 9 9 7
年1 1
月2 0
日受理)The i o n exchange o f c e s i u m and s t r o n t i u m on n a t u r a l z e o l i t e c o n s i s t i n g m a i n l y o f c l i n o p t i l o l i t e i n A k i t a ‑ P r e f e c t u r e was i n v e s t i g a t e d a t 2 5 ・ c .
The exchange c a p a c i t i e s o f c e s i u m i o n and s t r o n t i u m i o n were e v a l u a t e d . F u r t h e r , c e s i u m and s t r o n t i u m p o r e d i f f u s i o n c o e
伍c i e n ti n t h e n a t u r a l z e o l i t e s were o b t a i n e d e x p e r i m e n t a l l y by u s e o f t h e d i f f u s i o n e Q u a t i o n .
The c e s i u m p o r e d i
百u s i o nc o e
伍c i e n t sd e p e n d upon t h e i n i t i a l c o n c e n t r a t i o n o f s o l u t i o n
,and t h e s t r o n t ium p o r e d i f f u s i o n c o e f f i c i e n t s a r e s i m u l a t e d a s t h e f o l l o w i n g e Q u a t i o n .
D = a { Q t / q c o ) b
Wh e r e
,D i s t h e p o r e d i
任u s i o n c o e f f i c i e n t o f s t r o n t i u m
,Q t i s t h e u p t a k e o f s t r o n t i u m i o n a t t i m e
えらi s t h e exchanged amount o f s t r o n t i u m i o n i n e Q u i l i b r i u m w i t h s o l u t i o n
,and
aand b a r e c o n s t a n t s .
1
. 緒 雷原子力発電は核燃料中の
23SU
が核分裂する際に 生じるエネルギーを利用しているが,その結果核燃 料中に多くの核分裂生成物が蓄積される。これらの 核分裂生成物には大量に中性子を吸収するものもあ り,原子炉運転の障害となる。そのため,原子炉の 燃料体に化学処理(再処理)を行い,残存ウランと 生成した核分裂性物質を分離する必要がある。核分 裂生成物の多くからは長期間にわたりβ
線やγ線
の放射があり,環境に悪影響を与えるものも存産す る。特に.9 0 S
rや1 3 7 C s
などは半減期がそれぞれ2 8
お よび30年 と 長 <,β線も他の核分裂生成物と比べて 高い値を示している山。そのうえ,これらの物質は 水に溶解しやすいので,水に溶けにくい国化体とし て確実に生活聞から隔離する必要がある。秋田県では良質な天然ゼオライトが多量に産出す
‑秋田町専専攻科卒業生(現:森永エンジニアリン グ鮒勤務)
るため,その工業的有効利用技術の開発か望まれて いる。そこで本研究では,秋田県にて産出される天 然ゼオライトを利用して,使用済核燃料の再処理工 程 で 生 じ る 高 レ ベ ル 放 射 性 廃 棄 物 の
1 3 7 Cs
お よ び9 0 S r
を分離・固定化する方法の基礎的データを得るために,天然ゼオライトのセシウムおよびストロン チウムのイオン交換平衡ならびに粒子内拡散係数を 測定し検討した。
なお,天然ゼオライトの持つ特性として,①耐熱 性・耐酸性に優れている,②セシウムおよびストロ ンチウムイオンに対して選択的イオン交換特性を持 つ,③耐放射性特性に優れており,シリケートであ るため容易にガラス化あるいはセメント化しやす い,ことが挙げられる。これらの特性は,原子力発 電の安全性確立技術に大きな役割を果たすものと期 待できる
3‑5)
。2 . 猷 料
本研究では前報6)と同じ秋田県二ツ井町小掛地区 秋国高専研究紀要第
3 3
号‑ 5 1‑
秋田県産天然ゼオライトに対するセシウムおよびストロンチウムのイオン交換特性 表
1
天然ゼオライト試料試 料
A
ふるい径[ m e s h ]
平均粒径
[mm]
真密度
[ g / c m 3 ] ( 2 5
0C)
比表面積[m 2 / g ]
平衡含水率[%]・ 1 4 + 3 2
1.
1 5 2 . 1 5 1 8 . 8
5 . 0
試料
B
・ 3 2 + 4 2 0 . 5 8 3 2 . 1 5 1 6 . 6
4 . 7
から産出した天然ゼオライトを試料とした。
SEM
写真および粉末
X
線回折の結果,主成分はクリノプ チロライトであることを確認した。天然ゼオライト 岩を粉砕し,‑ 1 4 + 3 2
および一3 2 + 4 2
メッシュにそ れぞれふるい分けし,前者を試料人後者を試料B
とした。天然ゼオライトは種々の陽イオンとイオン 交換しているため,試料の交換基を
Na
型とした7)。すなわち,
A
およびB
試料それぞれについて,2M
匂NaC l
水溶液1 l
に対し,1 0 0 g
の試料を3
週間以上 授潰してNa
型とした。その後,イオン交換水で洗浄 および真空乾燥し飽和食塩水の入ったデシケータ 中に保存して,吸潜水量が平衡になったものを実験 に用いた。試料のふるい径,平均粒径,
2 5
0C
での真密度,比表面積および平衡含水率を表
1
に示す。ここで,真 密度および比表面積は前報と同様の方法により求め た。また,平均粒径は粒子の投影面積から求めた円 相当径である。3
.イオン交換平衡の測定試料
A
およびB
に対するセシウムのイオン交換 平衡を,ならびに試料B
に対するストロンチウムの イオン交換平衡を測定した。3. 1
実験方法3 . 1 . 1
セシウムのイオン交換平衡栓 付三角フラスコに試料
A
あるいはB
を3
g精 秤し,それにO . l M
硝酸セシウム水裕液の液量を0 . 03‑0.5l
の聞で9
種類変えて加え,2 5
0C
に保った 恒温水槽中で振とうした。振とう速度は7 0 min‑
1 で,振とう時間は約1 4 0
時間である。平衡に達した後,水溶液の初濃度と平衡時の濃度より試料に取り込ま れたセシウムイオン盆を求めた。ここで〉セシウム イオンの分析は原子吸光光度法によった。
平成
1 0
年2
月3 . 1 . 2
ストロンチウムのイオン交換平衡1 0 0 ml
栓 付 三 角 フ ラ ス コ に 試 料B
を3
g精 秤 し,これに濃度を0 . 0 1M‑0.1 M
と7
種類変えた硝 酸ストロンチウム水溶液を,それぞれ0 . 0 5 1
加え2 5
℃の恒温水槽中で振とう速度は
7 0min ‑
1とし,5 0 0
時間以上振とうした。平衡に達した後の処理はセシ ウムと同様の方法で,試料に取り込まれたストロン チウム量を求めた。
3. 2
結果および考察セシウムのイオン交換平衡について得られた結果 を図lに示す。多少のばらつきが認められるものの,
試 料
A
およぴ試料B
ともに平衡溶液濃度が1 0 0 0 0 mg / l
以上でイオン交換量がほぼ一定となった。そこで,ほぽ一定となったところの平均値より試料の セシウムのイオン交換容量を決定した。その結果,
本研究で使用した天然ゼオライトの乾燥試料として のイオン交換容量は,試料Aが1.
4meq/g
,試料B が1 . 6 meq / g
である。クリノプチロライトの理論陽 イオン交換容量は2 . 2 meq/g
であるのでベクリノプチロライト含有量は試料Aが
64%
,試料Bが7 3
%と推定される。
ストロンチウムのイオン交換平衡の結果を図
2
に 示す。イオン交換平衡値を( 1 )
式のL a n g m u i r
式で表 すことができた。図中の実線は(1)式による計算値で ある。q*
= 0 . 0 1 7 7 C * / ( 1 + O . 0 2 4 C
勺( 1 )
。 o
1.
8
1.6
1.4
1.2
日
も。ロ
ロ 。
ロ
ロ も 。 o c b
2 " 1 ~
白子
0 . 8
q
司0 . 6 0 . 4 0 . 2
0 o 5 0 0 0 1 0 0 0 0 1 5 0 0 0 C*(mglf]
図
1
セシウムイオンの交換容量荻原宏二郎
・
遠藤究明トロンチウム水溶液を
2 5 . C
に保った恒温水槽中で,6 0 0 rpm
で撹持しているところに精秤した5 g
の試 料を投入し,所定時間ごとにメンプランフィルタ(ポ アサイズ0.45μm )
をイ寸けたシリンジにより,セノマラ プルフラスコから港液を約1 0ml
採取した。採取し た洛液中のセシウムあるいはストロンチウム濃度を 原子吸光光度法により測定し,それより交換した陽 イオン量の経時変化を算出し,粒子内拡散係数を決‑ 5 2 ‑
,
、 。
。
実測値0 . 2
。 2 0 0 0 4 0 0 0
C
事[ m
g/l ]
図 2 ストロンチウムイオンの交換容量
6 0 0 0
4 .
粒子内拡散係数の測定4. 1
実験装置および方法実験装置には
1 1
のセパラプルフラスコを用い,その概略を図
3
に示す。所定濃度( 0 . 0 1
および0 . 0 2 M)
に調整した1l
の硝酸セシウムあるいは硝殿スメンフランフィルタ
ー /
ぽアサイズo .
45~m)
溶液採取口
¥ 、
シリンジ
(20m f
)〆 /
慢搾捧 試料投入口/
中
1 4 6
機 梓 翼 干
図
3
実験装置定した。
なお,セシウムについては試料
A
およびB
に対 しては2 4
時間,またストロンチウムについては試料B
に対して2 6 4
時間継続して測定した。4. 2
イオン交換速度の解析天然ゼオライト粒子内の物質移動過程では粒子内 拡散が律速と考える。さらに,
1 )
ゼオライト粒子は 半径一定の球である,2 )
粒子内拡散係数は一定であ る,3 )
粒子表面では粒子の内部溶液濃度は外部溶液 濃度に比例する,4 )
外部溶液濃度は一定である,と いう仮定のもとに均一球形粒子に対するF i c k
の拡 散方程式( 2 )
式を,境界条件( 3 ) ‑ ( 5 )
式て解くと( 6 )
式が 得られる九一
κ
一勧 )
2
↑Y r
向 山
一 7 7 0 一
一片
時‑ h
一
C
一 ぽ
一
D =
仏 仏 仏
一
C
一副
一 一 一 一
一 一
︐︿
‑ t r r
( 2 )
(3) (4)
( 5 )
f f = I
一長室長問( ̲ E ヂ L ) ω
時間
t
におけるイオン交換i
誌のおよび平衡に達 したときのイオン交換量恥を測定し,その結来よ り粒子内拡散係数をパラメータとして変化させ, q t /
らの計算値と実測値の差が最小になるD
を求めた。実際の測定においては,外部溶液濃度は時間と共 に変化している。しかし,外部溶液量と試料のゼオ ライト体積め比が
3 0 0
以上と非常に大きい本実験の 条件下では(6)式を適用しても差し支えないへ4. 3
結果および考察4. 3 . 1
セシウムイオンの粒子内拡散係数 試料A
およびB
について,播液のセシウム初濃 度 が0 . 0 1
およびO.02M
の場合のイオン交換率の経 時変化の測定結果を図4
に示す。これらの結果より,( 6 )
式を用いて粒子内拡散係数を求めた。それを表2
に示す。セシウムイオンの粒子内拡散係数は,粒径 および溶液初濃度により異なる値カf
得られた。秋田高専研究紀要第
3 3
号秋岡県産天然ゼオライトに対するセシウムおよびストロンチウムのイオン交換特性
‑ 5 3 ー
1 . 2
0 . 8
..........
S 0 . 6
、 、 、 。
0 . 4
初濃度 試料
。 O . O lM A
ロ O . 02M A
d . O . O l M B
o O . 02M B
01 0 2 1 0 4 1 0 5 1 0 6
t [ 8 ]
図
4
粒子内砿散係数の解析 (セシウムイオン)1 0 ' >
表
2
セシウムイオン粒子内鉱散係数D[m
2
/s] 5 . 3 9 x 10 ・ 1 2
6 . 95 x 10
・1 2
諮 問
B 3 . 8 2 x 10 ・ 1 2 4 . 0 4 x 10
・1 2
0 . 01 0 . 02
図
4
の実線または破線は,表2
に示した粒子内拡 散係数による( 6 )
式の計算値である。イオン交換率の 実担J I
値と計算値は比較的良く一致していることより, 求めた粒子内拡散係数の他は妥当なものと考え られる。
4. 3. 2
ストロンチウムイオンの粒子内拡散係数 溶液のストロンチウム初濃度を0 . 0 1
お よ び0 . 0 2 M
としたときの試料B
に対するストロンチウムのイオン交換率の経時変化を図
5
に示す。これらの全 笑測値を用いて粒子内拡散係数を求めると,初濃度 がO.OlM
では2 . 6 9 X I 0 ・ 1 3 m 2 / s
,初濃 度 がO . 0 2 M
では2 . 1 3X 1 0
幽1 3 m 2 / s
となった。このイ直による( 6 )
式 の計算値を図5
の実線および破線で示す。セシウムと 異なり,ストロンチウムでは粒子内拡散係数を一定として求めたイオン交換率の計算値と実測値は大き くずれている。特に,イオン交換率が大きいところ では,そのずれは更に大きいという結果となった。
そこで,ストロンチウムイオンの粒子内拡散係数 はイオン交換率に依存するものと考え,イオン交換 準の突iJIリ値より,それぞれに対する粒子内拡散係数 を
( 6 )
式より求めた。さらに粒子内拡散係数はイオン 平 成1 0
年2
月1 . 2
0.8
乏
0.6
、 1
0
0 . 4
0 . 2
0
1 0 2 1 0 3 1 0 4 t [ 8 ]
図
5
粒子内鉱散係数の解析 (ストロンチウムイオン)1 0 5 10 6
6 X 1 0 ・ 1 3
k e y 初濃度
一 。 ‑ O.OlM
一口一
0.02M
‑ 1 3
~. 4 x 1 0
e 、 a
E
Q2 X 1 0 ・ 1 3
0 o 0 . 2 0 . 4 0 . 6 0 . 8
q/ q ∞ [ ‑ ]
図
S
粒子内拡散係数のイオン交換率依存性 (ストロンチウムイオン)表 3 ( 7 ) 式の a および b
C o [M] α b 0 . 0 1 5 . 9 6 x 10 ・ u
‑1 . 51 0 . 02 7 . 8 8 x 10 ・ l
.j‑ 1 . 35
交換率に関係するものと仮定し,次に示す
( 7 )
式で表 されるとしてシミュレートした。万 =α
(qtfq<>>) b( 7 )
イオン交換率とここで求めた粒子内拡散係数の関 係を図6
に示す。 図中の実線はストロンチウム初濃 度が0 . 0 1M
,また破線は初濃度が0 . 02M
について( 7 )
式でシミュレートした結果である。これより得ら れた( 7 )
式の係数α
および指数bの値を表3に示す。‑
5 4
ー荻原宏二郎・遠藤究明
多少のバラツキが見られるが,粒子内拡散係数はイ オン交換曜に依存し,
( 7 )
式の形で表現できると考え らtLる。謝 辞
本研究の遂行にあたっては,財団法人マエタテク ノロジーリサーチファンドの研究助成資金を賜りま した。記して謝意を表します。また,試料の比表面 積の測定は秋田県工業技術センターのご厚意による
ものです。併せて謝意を表します。
使用記号
Co;外部浴液濃度
[meq/I]
で;粒子内部溶液濃度
[meq/I ] C
ぺ 平 衡 溶 液 濃 度[meq/l)
万;粒子内拡散係数[m 2 / s ]
k:
粒子内溶液漉度と外部溶液濃度の比{一]q t ;
時間t
におけるイオン交換量[meq / g ] q
曲;無限大時間におけるイオン交換量[meq / g ]
q* ,平衡イオン交換量
[meq/g]
r,粒子の半径方向距離
[ m) η;
試料粒子半径[ m ]
t ;時間[ s ]
参考文献