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論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の要旨 博士の専攻分野の名称 博 士 ( 教 育 学 )

氏名 山 中 真 悟 学位授与の要件 学位規則第4条第1・2項該当

論 文 題 目

高等学校理科における批判的思考力の育成に関する研究

論文審査担当者

主 査 教 授 前 原 俊 信 審査委員 教 授 柴 一 実 審査委員 教 授 蔦 岡 孝 則 審査委員 准教授 木 下 博 義

〔論文審査の要旨〕

本研究は,市民に必要不可欠な能力である批判的思考力を理科教育において育成するた めに,批判的思考力について概念規定を行い,その能力とともに態度の育成を試みるため,

批判的思考態度の尺度を構成し,実際に理科教育において育成するための指導法を開発す ることを目的としている。

本論文は,序章,終章を含め,全9章から構成されている。

序章および第1章では,批判的思考力について概念規定を行い,本研究の意義と目的に ついて述べている。批判的思考についてのさまざまな定義の分析をもとに,本研究では「批 判的思考」を「合理的側面」「反省的側面」「目標志向的側面」の3つの側面を持つ思考 であると規定している。そして,批判的思考の能力だけでなく,態度も育成できるよう,

批判的思考態度の評価法を確立し,心理学ベースの指導法と論理学ベースの指導法を考案 して検証することが目的であると述べている。

第2章では,批判的思考力を評価する方法について先行研究の分析をもとに,批判的思 考態度の測定のための尺度を構成したことについて報告している。特に,理科における批 判的思考態度の評価のための質問紙を作成し,調査結果より3因子『合理的な思考』『探 究心』『慎重さ』を抽出し,それぞれ,批判的思考の3側面「合理的側面」「目標志向的 側面」「反省的側面」に対応した因子と考えられると主張している。

第3章は,心理学ベースの指導法として,自己の思考過程を可視化し吟味させる活動を 取り入れるため,「因果関係マップ」を用いた授業を提案している。物理分野の単元にお いて授業を実践し,事前・事後の質問紙調査を通して,因果関係マップを書かせる指導に より『合理的な思考』を育成できることを明らかにしている。

第4章は,前章で育成できなかった「目標志向的側面」の育成のために,観察・実験場 面での因果関係マップの利用を計画し,実験計画を吟味するためのワークシートを開発し ている。ここでも物理分野の単元で授業を実践し,生徒自身が書いた実験計画を因果関係 マップを用いて吟味させる指導法により『合理的な思考』『探究心』の2因子について有 意に向上したことを受け,「合理的側面」「目標志向的側面」を育成できると主張してい る。

(2)

第5章は,「反省的側面」の育成のために,他者の思考についての信頼度,生徒自身の 思考についての確信度について判断させる指導法を開発している。やはり,物理分野の単 元で授業を実践し,他者の書いた因果関係マップの信頼度判断を行わせるワークシートと 生徒自身の書いた実験計画を吟味して確信度を判断させるワークシートを用いた指導法に より「反省的側面」が育成できることを明らかにしている。

第6章は,論理学ベースの指導法として,「論証カード」を用いた学習活動を提案して いる。証拠と主張との間に暗黙に仮定されている論拠を書かせる活動を通して批判的な吟 味を行う態度を育成することを試みている。化学分野の単元において授業を実践し,論拠 の究明の重要性を認識させる指導が『探究心』『慎重さ』を向上させ,「目標志向的側面」

「反省的側面」の育成に効果があることを示している。

第7章は,論証カードを用いた指導に加え,観察・実験の結果を予想する場面で論証の 枠組みを用いさせることで「合理的側面」を育成する試みについて報告している。物理分 野の単元で授業を実践し,他者の実験結果予想に対する生徒自身の考えを論証の形式で記 述させる指導により「合理的側面」を育成できることを明らかにしている。

終章は本研究の成果をまとめ,今後の課題として,実践ごとの教育効果の違いについて の検討,開発した指導法の実践のための事例研究,3側面のバランスよい育成のための指 導法の検討の3点を挙げている。

本論文は,次の3点において評価できる。

(1) 批判的思考の先行研究について概観し,批判的思考を「合理的側面」「反省的側面」

「目標志向的側面」の3つの側面を持つ思考として規定し,その態度を評価するため の質問紙を作成して,『合理的な思考』『探究心』『慎重さ』の3因子として抽出で きることを示したこと。

(2) 心理学ベースの指導法として,自己の思考過程を可視化し吟味させる活動を取り入れ るため,「因果関係マップ」を用いた授業を提案し,3段階の実践授業によって,批 判的思考の3側面を総合的に育成する指導が可能であることを示したこと。

(3) 論理学ベースの指導法として,暗黙に仮定されている論拠の存在を操作的に理解させ るため,「論証カード」を用いた授業を提案し,2段階の実践授業によって,批判的 思考の3側面を総合的に育成する指導が可能であることを示したこと。

以上,審査の結果,本論文の著者は博士(教育学)の学位を授与される十分な資格があ るものと認められる。

平成28年 2月 15日

参照

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