博士(理学)金子明人 学位論文題名
多次元の非線形情報解析と時系列解析に関する研究
(A study on multi‑dimensional non‑linear information analysis and time senes analysis)
学位論文内容の要旨
本論文では、次の7っのことを研究した:
(a)局所時間域の多次元の確率過程に対する非線形J庸報解析にっいて研究し,入れ子式の 確率過程からなる生成系を構成した
(b
(c
局 所 時 間 域 の 多 次 元 の 確 率 過 程 に 対 す る 非 線 形 予 測 子 を 求 め た 多次元の非線形J晴報解析を応用したっ新しい因果関係の概念である弱因果陸と非瞬時 的弱因果性を定式化しっその特徴付け定理を示した
(d)応 用 上 必 要 不 可 欠 で あ る 部 分 的 非 線 形 情 報 空 間 に っ い て 議 論 し た (e)部 分 的 非 線 形 情 報 空 間 に 基 づ く 有 限 階 数 の 非 線 形 因 果 性 を 定 式 化 し た
(f) 各 因 果 解 析 の 手 法 に 適 し た モ デ ル 選 択 の 方 法 と そ の 予 測 公 式 を 求 め た (g)丁一タ 解析に応 用するた めの,多 次元の非線 形情報解 析の使い 方にっいて示した (h)実際のデータの予測に対して,多次元の非線形J時報解析および多次元の非線形因果解 析の有効性を示した
定常過程に対する非線形予測問題はMasani―Wienerによって始めに解決された.彼ら が対象にした確率過程は有界で退化しないものであった.そこでは理論的に解決されたも のの、現実的に計算可能なアルゴリズムが欠けていた.
その後,岡部一大塚によって,KM20−ランジュヴァン方程式論の応用という形でアルゴリ ズムについての解決がなされた,さらにっ松浦―岡部は,対象とする確率過程を時間域が局 所的で退化する場合にまで一般化しっ有界性の条件を可積分性の条件に弱め精密化した.
また、KM20ーランジュヴァン方程式論の枠組の中で,非線形時系列解析が様々な方法一 定常解析っ因果解析,モデル解析,予測解析ーを用いて行なわれてきた.そこでの研究に使 用 さ れ て い る 非 線 形 性 は す べ て1次 元 の 確 率 過 程 に 対 す る も の で あ っ た . 現実の世界のデータに対して時系列解析を行う中でっ1次元の非線形性では解析できず〕
多次元の非線形性を取リ込んだ情報解析の理論カく必要であることがわかってきた.このこ とは、単純に1次元から多次元の拡張としての非線形性の解析としてではなく,本質的に 多次元の非線形性の解析を必要とすることを意味する.このことを例を挙げて説明する.
X=(X(n);0≦n<―N)を解析を行ないたい1次元の確率過程,Y〓(y(n);0≦n≦ ル1をXに なんらか の意味で影響を与えていると考えられる別の1次元の確率過程とし,
共に共通の確率空間(Q,8,P)上で定義されているものとする.さらにっX(n)っY(n)(0≦ n≦N) は2乗 可積 分 とす る , 従来 の 方法 で も ,YからXへ の 因果 関 係 をYの非 線形 性 を用いて調べることが可能であった.この場合は次の量を見る:
PNn0(Y)X(n).
二 こ で ,B0(Y)はY(た ) (0≦ た 〈 −n) を 可測 に す る 最小 の げ 一加 法 族であり っN0(Y)は 己 ゜(QっB0(Y)っP)で与え られる, またPNo (Y)はE (Qっ8,P)からN0(Y)への射影作用素 と す る . と こ ろ がN0(Y)はYの み の 非 線 形 性 し か 使 っ て お ら ず 、Yの 情 報 とXの 過 去 の 情 報 の 相 互 作 用 を 含 め た 非 線 形 の 解 析 を行 な う 場合 は 不 十分 で あ る. そ の 為 にXとY を 組 に し た 非 線 形 情 報 空 間 が 必 要 と な る , す な わ ち ,No(X、Y)を 用 い て 次 の 量 PNふ (x Y)X(・n)
を 見る必要 がある, 二こで ,B0(XっY)はX(m)(O<−m≦nー1)とY(た)(0<―た<n)を 可 測 に する 最 小の げー加法 族であ り,N0(XっY)はL2(C,Bo(X,Y),P)で与え られる .また PNぎ ( x, Y) はL゜ ( Q, ぢ , P)か ら N0(X, Y)へ の 射 影 作 用 素 と す る . こ の よ う な解 析 の 為 には 多 次 元の 非 線 形情 報 解 析が 必 要 であ る . もち ろ んYが多 次 元 の 場合なら ばなおさ らであ る,
以下に本論文の内容にっいて述べる.
時間域が局所的な多次元の確率過程に対する非線形庸報解沂の理論について述べた((a)).
ま た そ の理 論 とKM20−ランジ ュヴァ ン方程式 論を用 いること によって ,退化 した場合 も含 む非線形予測子を理論的に求めた((b)),
ま た、 多 次 元の 非 線形情 報解析 の結果を 受けてっ 他の確 率過程と の相互 作用も考 慮した 新 しい因果 関係であ る弱因 果性と非瞬時的弱因果性にっいて議論した((c)).さらに,既存 の 場 合 も含 め て 、従 来で は無限の 時間域 で定義さ れてい た因果性 の概念 を局所的 な時間域 の場合に定式化し、それを定量的に特徴付けた,
理 論的 に は 、無 限 に多く の非線 形性を用 いること で非線 形予測子 や非線 形因果性 は完全 に 表 現 でき る . しか しっ 実際のデ ータ解 析では無 限に多 くの非線 形情報 を使うこ とはでき ず 、 部 分的 な 非 線形 性を 用いて近 似をし なければ ならな い,その ために っ理論と の橋渡し をするための部分的非線形情報空間にっいて論じた((d)).
上 で述 べ た 部分 的 な非線 形性は っ何らか の基準で 最良と なるもの を選択 するのが 望まし い .そこで っ本論文 では因 果関係を 用いて その基準 を提案 する.その為にっ因果性と部分的 非 線 形 情報 空 間 の間 の関 係を有限 階数の 非線形因 果性と いう概念 を用い て表現し ,一般の 場 合の因果 性との関 係につ いて論じ た((e)). また,こ の有限階数の非線形因果性を用いて モ デ ル 選択 す る 方法 を提 案し、そ れぞれ の場合に ついて 非線形予 測子を 求める公 式を示し た((f)).
以 上が 理 論 的に 得 られた 結果で ある,さ らに、以 上で示 されたこ とをも とにっ実 際に時 系列解析をするための手順を示した((g)).
最 後に、実 際のデ ータ解析 の例とし て、工 ルニーニ ョに関連したデータに適用してっ多次 元の非線形J晴報解析が,因果解析とそれに基づく予測解析に有効であることを示した((h)),
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 津 田 一 郎 副 査 助 教 授 井 上 昭 彦 副 査 助 教 授 三 上 敏 夫
副 査 教 授 岡 部 靖 憲 ( 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 )
学 位 論 文 題 名
多次元の非線形情報解析と時系列解析に関する研究
(A study on multi‑dimensional non‑linear information analysis and time series analysis)
多 次 元 の 確 率 過 程 に 対 す る 非 線 形 情 報 解 析 は そ の 応 用 上 の 重 要 性 に も 関 わ ら ず 、 応 用 可 能 な 形 で の 数 学 は 十 分 発 展 し て い な か っ た 。 最 近10年 間 に 岡 部 ら に よ る KM.2一0ラ ン ジ ュ バ ン 方 程 式 の 理 論 が 進 展 し 、 こ の 問 題 に 数 学 的 な 基 礎 づ け を 与 え る ま で に な っ て い る 。 申 請 者 の 金 子 氏 は 岡 部 理 論 に も と づ き 、 非 線 形 因 果 解 析 を 行 な い 、 理 論 を 実 デ ー タ に 応 用 可 能 に な る よ う に 再 構 築 す る こ と で 、 確 率 過 程 論 に 実 験 数 学 的 手 法 と ぃ う 新 し い 道 筋 を つ け た と 言 っ て よ ぃ 。
金 子 氏 は 岡 部 氏 と 共 同 で 、 局 所 時 間 域 の 多 次 元 確 率 過 程 に お ぃ て 、 入 れ 子 の 確 率 過 程 か ら な る 生 成 系 を 構 成 し 、 非 線 形 予 測 子 をKM 20ラ ン ジ ュ バ ン 方 程 式 を 使 っ て 求 め た 。 さ ら に 、 理 論 を 実 デ ー タ に 応 用 す る 場 合 、 従 来 の 因 果 性 の 概 念 は 強 す ぎ る の で 、 弱 因 果 性 と 非 瞬 時 的 弱 因 果 性 を 定 式 化 し 、 そ の 特 徴 付 け に 関 す る 定 理 を 得 た 。 金 子 氏 は さ ら に 実 際 の エ ル ニ ー ニ ョ の デ ー タ に 対 し て 計 算 が 爆 発 し な い ア ル ゴ リ ズ ム を 構 築 す る こ と で 、 理 論 が 実 デ ー タ に 応 用 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。
以 上 の よ う に 、 本 申 請 論 文 は 、 確 率 過 程 論 を 実 験 数 学 的 に 研 究 す る 典 型 的 な 手 法 を 提 案 し て い る 点 で 、 応 用 数 学 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。 よ っ て 申 請 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。