博士(工学)田中智雄 学位論文題名
セラミックスとアルミニウム合金接合のための 低融点ろう材と応力緩衝構造の開発
学位論文内容の要旨
セラミックスは軽量・高温強度・耐摩耗性・電気絶縁性などに優れた性能を有し、
一方、 アルミニ ウム合金 は塑性加工や熱処理を行うことにより強度と剛性に優れた 特性を 発揮する 。従って 、両者を複合化させることにより、耐摩耗性に優れた軽量 材の開発が期待されている。
本論文 では、低 融点ろう 材を開発し、熱応カを緩衝することのできる構造・熱処 理 手法 を開発す ることに よってセ ラミック スとアルミ ニウム合 金の高強 度接合体 を得る ことを目 的として 行われたものであり、接合機構の解明とともにこの接合法 を用いてセラミック超音波ホーンを開発・実用化している。
本論文は7章より構成されている。
第1章では 、セラミッ クスとア ルミニウ ム合金の 特性に関する基礎的特徴を述べ た後、両 者を接合す るために 解決すべき課題を抽出し、その工学的背景と本研究の 目的につ いて詳述し ている。 本研究のセラミックスとアルミニウム合金のろう付技 術の開発 において下 記4つの課 題を挙げ 検討を行 った。
@高 強度 アルミニ ウム合金 に対して 、773K程度で ろう付が 可能な低融 点ろう材 の 開発。
@実用性 を高めるた めの低融 点ろう材 の箔化技 術の開発 。
◎セ ラ ミッ ク ス とア ル ミニ ウ ム 合金 の 接 合に よ る残 留 応 カを 緩 和する構 造の開 発。
@セ ラミ ックスと アルミニ ウム合金 の接合体 の溶体化 処理・水冷 および時 効処理 法の開発 。
第2章と3章 において 、上記課題@の項目にっいて、検討した結果を述べている。
低融 点 ろ う材 の 開発 に お いてJISアル ミ ニ ウム 合 金ろ う 材 の融 点 より約60K低 い Al―27. lCu−4.7Si合金に着目し、セラミックスとアルミニウム合金の接合における ろう材へ の適用を 検討した 。接合温度813Kでは、接 合強度は数MPaと低いが、833K では 約65MPaの 接合 強 度 が得 ら れ、 さら に、接合 後に723Kの低 温後熱処 理を施す こと に よ り813Kで の 接合 温 度 で最 大約65MPaを得るこ とができ た。これ らの結果 から、本 合金がろ う材とし て適用が可能であると判断し、本研究の低融点ろう材の 開発における基本組成と決定した。
また、接合強度は、接合温度の上昇や接合後の低温熱処理によって増加するのは、
接 合時に界 面に形成し たAl:Cu連続 層が分解 し、接合 界面Al2Cu層が不連続化する こ とに起因 する。また 、Al:Cu層が不連続化を補助するものとしてアルミニウム合 金 に微 量含まれるMgが表層の 酸化物皮 膜を破壊 し、ろう 材成分、 特に、Cuのア ル ミ ニ ウム 合 金 内部 へ の 拡散 を 促進 させてAl2Cu相 の晶出を 低減させ ることを明 ら か にした。 ろう材の基 本組成であるAl―27.1 mass%Cu−4.7mass96Si合金の融点を さ ら に 低 下 さ せ る 第4元 素 と し て 、Znが 最 適 元 素 で あ る と 明 ら か に し た 。 第4章で は、上記 ◎の項目 にっいて、 ろう材箔 の製造法 として液体急冷法を提案 し、ろ う材箔の 製造条件 を明らかにした。このろう材箔を用いることにより、窒素 中733Kでのアル ミニウム合 金とセラ ミックス め接合が 約180MPaと高強 度で可能 と な った 。Znが 最 適元 素 で ある の は、ZnがAlに 対す るCuの 固 溶限 を 増加させ 、Cu のアル ミニウム 合金内部 への拡散を 促進する とともに 、接合界面Al2Cu層の生成を 抑 制す るた めであるこ とを明ら かにした 。最大接 合強度が 得られた ろう材組成 は Al‑13. 6mass% Cu―2.4mass%Si―50mass%2nであった。その固相点および液相点は693K と697Kであった 。接合強度 は接合層 のアルミ ニウム母 相の硬度 と相関が あり、硬 度 が最 も低 い場合、接 合強度は 最大値と なる。こ の接合層 の硬度に ついて、低Zn 添 加域 ではZnはCuのアルミ ニウム合 金内部へ の拡散を 促進し、 接合層の 粒界への Al2Cu晶出が 減少する ことによ り、接合層 のアルミ ニウム母 相の硬度は低下し接合 強度は 高くなる 。しかし 、50mass%2n以上では 、Znは接合 層のアルミニウム母相の 硬 度を 高く するため接 合強度を 低下させ る。っま りZnと接合 強度の相 関(メカニ ズム)が明らかになった。
第5章で は、上記 ◎と@に っいて、接 合熱処理 により焼 き鈍され た接合体 のアル ミニウ ム合金に 対する溶 体化・水冷 および時 効処理の手法を検討することにより、
高強度接合体の開発を行った。セラミックスとアルミニウム合金の接合においては、
熱膨張 係数差に 起因する 残留応力、 更には溶 体化・水冷および事項処理により負荷 される 熱応カを 低減する 応力緩衝構 造を検討 した。その結果、下記応力緩衝構造と 接合後 のアルミ ニウム合 金に対する 溶体化・ 水冷処理に部分水冷法を適用すること に より 、 時効 処 理 後も200MPaの 接合強度 を得ること ができ、 高強度接 合体とし て 構造材への適用が可能となった。
セ ラ ミ ッ ク7A1050( 厚 さ0.5mm) 7A5052( 厚 さ0.5mm)/A2024 ま た、 ア ルミ ニ ウ ム合 金A2024とA7075との接 合比較検 討におい て、A7075との 接 合 では 強度が大 幅に低下す ることが 分かった 。これは 、A2024よりA7075の 熱膨張 係 数が 大きいこ と、更には 熱処理に おけるA7075の 寸法変化 がA2024より大 きく、
残 留 応 カ が 大 き い た め 接 合 強 度 を 低 下 さ せ た と 考 え ら れ た 。 第6章 では 、 この よ う に新 規の 低融点ろ う材およ び接合技 術を応用 し、製品 化し たセラ ミック超 音波ホーンにっいて紹介し、アルミニウム合金の特性を生かし、弱 点 で あ る 耐 摩 耗 性 を セ ラ ミ ッ ク ス で 改 善 し た 事 例 を 示 し た 。
第七章は、本論文の総括である。
学位論文審査の要旨
学位論文題名
セラミックスとアルミニウム合金接合のための 低融点ろう材と応力緩衝構造の開発
セラミックスは軽量・高温強度・耐摩耗性・電気絶縁性などに優れた性能を有し、
一 方、 アルミニウム合金は塑性加工や熱処理を行うことにより強度と剛性に優れた 特 性を 発揮する。従って、両者を複合化させることにより、耐摩耗性に優れた軽量 材の開発が期待されている。
本論 文では、セラミックスとアルミニウム合金の特性に関する基礎的特徴を述べ た 後、 両者を接合するために解決すべき課題を抽出し、その工学的背景と本研究の 目 的に ついて詳述している。低融点ろう材を開発し、熱応カを緩衝することのでき る 構造 ・熱処理手法を開発することによってセラミックスとアルミニウム合金の高 強 度接 合体を得ることを目的として行われたものであり、接合機構の解明とともに こ の 接 合 法 を 用 い て セ ラ ミ ッ ク 超 音 波 ホ ー ン を 開 発 ・ 実 用 化 し て い る 。 本研 究では、セラミックスとアルミニウム合金のろう付技術の開発において解決 すべき下記の4課題を抽出し、実験的に検討した。
@ 高強 度ア ルミ ニウ ム合 金に 対し て、773K程度 でろう 付が 可能 な低融点ろう材の 開発。
◎実用性を高めるための低融点ろう材の箔化技術の開発。
◎セ ラミ ック スと アル ミニ ウム 合金 の接 合に よる残 留応 カを 緩和する構造の開 発。
@セ ラミックスとアルミニウム合金の接合体の溶体化処理・水冷および時効処理 法の開発。
上 記 課 題 ◎ の低 融点 ろう 材の 開発 におい てJISア ルミ ニウ ム合 金ろう 材の 融点 より約60K低いAl−27. lCu−4.7Si合金に着目し、セラミックスとアルミニウム合金 の 接合 に韜 ける ろう 材へ の適 用を 検討した。接合温度813Kでは、接合強度は数MPa と 低 い が 、833Kで は約65MPaの接 合強 度が 得ら れ、 さら に、 接合 後に723Kの 低温 後 熱 処 理 を 施 すこ とに より813Kでの 接合温 度で 最大 約65MPaを得 ること がで きる こ とを 示した。これらの結果から、本合金がろう材として適用が可能であると判断 し、本研究の低融点ろう材の開発における基本組成と決定した。また、接合強度は、
夫 雄
明 哉
敏 哲
惣 一
田 利
貫 川
成 毛
大 黒
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
接合温度の上昇や接合後の低温熱処理によって増加するのは、接合時に界面に形成 したAlユCu連続層が分解し、接合界面Al:Cu層が不連続化することに起因すること を提案している。また、Al2Cu層が不連続化を補助するものとしてアルミニウム合 金に微量含まれるMgが表層の酸化物皮膜を破壊し、ろう材成分、特に、Cuのアル ミニウム合金内部への拡散を促進させてAl2Cu相の晶出を低減させることを明ら かにした。ろう材の基本組成であるAl‑ 27.1 mass%Cu―4.7mass(x)Si合金の融点を さらに低下 させる第4元素と して、Znが最適元素であると明らかにしている。
上記◎の項目、ろう材箔の製造法、として液体急冷法を提案し、ろう材箔の製造 条件を明らかにした。このろう材箔を用いることにより、窒素中733Kでのアルミ ニウム合金とセラミックスの接合が約180MPaと高強度で可能となった。Znが最適 元素であるのは、ZnがAlに対するCuの固溶限を増加させ、Cuのアルミニウム合 金内部への拡散を促進するとともに、接合界面Al2Cu層の生成を抑制するためであ ることを明らかにした。最大接合強度が得られたろう材組成はAl−13. 6mass%
Cuー2.4mass%Si−50mass%2nであった。その固相点および液相点は693Kと697Kであ った。接合強度は接合層のアルミニウム母相の硬度と相関があり、硬度が最低のと き接合強度は最大値となることを明らかにしている。この接合層の硬度について、
低Zn添加域ではZnはCuのアルミニウム合金内部への拡散を促進し、接合層の粒 界へのAl2Cu晶出が減少することにより、接合層のアルミニウム母相の硬度は低下 し接合強度は高くなることをていあんしている。しかし、50mass%2n以上では、Zn は接合層のアルミニウム母相の硬度を高くするため接合強度を低下させる。っまり Znと接合強度の相関(メカニズム)性を明らかにした。
上記◎と@にっいて、接合熱処理により焼き鈍された接合体のアルミニウム合金 に対する溶体化・水冷およぴ時効処理の手法を検討することにより、高強度接合体 の開発を行った。セラミックスとアルミニウム合金の接合においては、熱膨張係数 差に起因する残留応力、更には溶体化・水冷および事項処理により負荷される熱応 カを低減する応力緩衝構造を検討した。その結果、下記応力緩衝構造と接合後のア ルミニウム合金に対する溶体化・水冷処理に部分水冷法を適用することにより、時 効処理後も200MPaの接合強度を得ることができ、高強度接合体として構造材への 適用が可能となった。
セラミック/A1050(厚さ0.5mm) 7A5052(厚さ0.5mm) 7A2024 また、アルミニウム合金A2024とA7075との接合比較検討において、A7075との 接合では強度が大幅に低下することが分かった。゛これは、A2024よりA7075の熱膨 張係数が大きいこと、更には熱処理におけるA7075の寸法変化がA2024より大きく、
残留応カが大きいため接合強度を低下させることを明らかにした。本研究で提案し た低融点ろう材およぴ接合技術を応用し、アルミニウム合金の特性を生かし、弱点 である耐摩耗性をセラミックスで改善した事例として、セラミック超音波ホーンを 開発した。
これを要するに、著者は、低融点ろう材とその接合技術を開発することによって アルミニウム合金ノセラミック製超音波ホーンの開発に成功したもので、セラミッ クス材料と接合工学に貢献するところ大なるものがある。よって著者は、北海道大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。