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博 士 ( 薬 学 ) 関 顕 照 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 関    顕 照

学 位 論 文 題 名

光 駆 動 ク ロ ラ イ ド イ オ ン ポ ン プ , / ヽ ロ ロ ド プ シ ン の 輸 送 分 子 機 構 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  古細菌に 属する高度 好塩好ア ルカリ菌Natronomonas pharaonisにはレチナール を発 色 団と す る 膜タ ン パク質,ハ ロロドプ シン( pHR)が 存在する .pHRは光駆 動によりCl・を細胞の外から内へ輸送するクロライドポンプであり,cr輸送によっ て電気化 学ポテンシ ャル勾配 を形成し ,光より 得られた エネルギ ーをATP合成に 役立てている. pHRを光により活性化させると複数の光化学中間体を経て元に戻る フォトサ イクルと呼ばれる光分解反応が起こり,1回のフォトサイクルで1個のCl‑

が輸送さ れる.パル ス光を与 えてから のcrの輸送に伴った光化学中間体の生成お よび崩壊は,各中間体の可視吸収の時間変化として捉えることができ,この方法は 他の膜輸送タンパク質にはなぃ研究上の利点のーっである.

  pHRによるcr輸 送は次の3つ の主要過 程から成り立っていると考えられている.

@EC(extracellular)側か らCP(cytoplasmic)側 へのcrの 移 動 ,◎CP側結 合 サイトか らのCl一の放出◎レチナールのプロトン化されたSchiff base (PSB)近傍 へのCl‑の結 合.この様 な3つの過 程は全て の膜輸送タンパク質に含まれる重要な 輸送過程であり,これらの性質を理解することが輸送担体の輸送分子機構を知るこ とであると考えられる.そこで,本研究では膜輸送タンパク質の輸送分子機構を研 究するた めのモデル タンパク 質の1っと してpHRを位置づけ,Cl・輸送活性および それに伴 った光化学中間体を様カな物理化学的手法により測定し,pHRの輸送分子 機構の解明を試みた.

  これまでは,直接的にCl‑輸送を測定し機能解析した報告はなく,精密な輸送活性 測定系が 望まれていた. pHRによるcr輸送はマイナス1価のCl一を細胞内へ輸送す る起電性 輸送であり ,crの輸送 速度が膜 電流とし て観測さ れる.そ こで,pHRの アフリカツメガエル卵母細胞発現系を構築し,ニ電極膜電位固定法を用いて光照射 によるpHRのCl・輸送を膜電流として精度良く検出できる実験系を確立した.この 実験系はこれまでに報告がなく,筆者らが世界で初めて成功した実験系である,こ の実験系の最大の特長は,任意の膜電位に固定することができ,その一定条件下で,

Cl・の輸送に伴う電流を測定することができることである.この実験方法を応用し,

pHR1分子 当 たり の 輸 送能カ と単位時間 当たりに 輸送でき るイオン の数を別 々に 見積もることができることを明らかとした.また,アフリカツメガエル卵母細胞発 現系へのpHRの発現量が 異なった としても 輸送能カ を的確に 見積もる ことができ た.さらに,レーザーフラッシュフォトリシス法を用いた光化学反応の解析結果とcr輸 送に伴う光誘導電流の速度論的解析結果を統合的に考察し,crの結合,解離過程を含む新 たな輸送モデルを構築した.その結果,crの結合過程が全輸送過程において律速段階であ

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る こ と , ま た , こ の 結 合 過 程 が 膜 電 位 依 存 的 で あ る こ と を 明 ら か に し た .   次にpHRと非常に相同性が高い(identity,66%;homology,97%)Halobacterium salinar um由来のHR(sHR)のX線結晶 構造に基 づき,cr輸送 に重要と 予想される アミノ酸残基の変異体を作製し,アフリカツメガエル卵母細胞発現系での輸送活性およ びレーザーフラッシュフォトリシス法を用いた光化学反応における光化学中間体を測定し た.

  まず,Ser130の 変異体に おける活 性の低下から,Ser130の水酸基およびその位 置がcr輸送 に 重要 で あ るこ と が示 唆 さ れた .3次 元構 造に よると,Ser130はEC 結合 サ イ トの 上 に位 置 し, レチナー ルと協調し て,EC側とCP側を隔て る役割を して い る と予 想 され る .そ こで,こ の役割を解 明するた めにS130T変異 体pHRに おいて解析したところ,光照射によって誘導される電流値と固定した膜電位の関係 は直 線 関 係を 示 した が ,VR値(reversal potential)は‑lOOmVとなり ,かかる膜 電位 の 違 いに よ り, 光 誘導 電流の符 号が変化し た.っま り,S130T変異 体pHRで はCl・が双方向に輸送されるチャネル様の挙動を示した.一方で,同じく輸送活性 の低 下 が 認め ら れたR123K変異体pHRでは逆向 きの電流は 観測され なかった .こ れら の 結 果か ら ,S130T変異体pHRに 認められ た逆向きの 電流は活 性の低下 によ るもので はなく,Ser130を変異す ることによ ルpHRが輸送 の方向性 を失ったため に生じたものと推察された.さらに,光化学中間体の挙動をフラッシュフォトリシ ス法にて解析したところ,全ての輸送過程において複数の光化学中間体が混在し,

細胞外と 細胞内の .Cl・の速い平衡(ECおよびCP側結合サイトをCI・が行き来して いる状態 )が観察 された.Ser130が特徴的な 位置に存在することも考慮すると,

Ser130の 水 酸基 はCl‑のCP側か らEC側 へ の逆 流 を 防ぐ 分子弁 およぴ一 方向の輸 送に重要なラチェットの役割を果たしていると考えられた.

  さらに,レチナール近傍に存在する唯一の酸性残基であるAsp252の変異体におけ る活性の 低下から ,Asp252が輸送 に必須であ ることが示された.Asp252の輸送に おけ る 役 割を 解 明す る ため に,D252N変異 体pHRを精製し ,フラッ シュフォ トリ シス法にて解析した,その結果,光励起後の初期段階の光化学中間体でフォトサイ クルが終 了し,元 の状態に 戻ることが 明らかとなった.よって,D252N変異体pHR は初期段階以降の輸送に重要な光化学中間体への移行(Cl一のEC側結合サイトから CP側結合サ イトヘの移行)ができない変異体であることが示された.また,azide 添加にお けるPSBから の脱プロ トンを指標 としてPSBのpKaの変化を 検討したとこ ろ ,D252N変 異 体pHRは 光 励 起 後 の 初 期 段階 に おい てPSBのpKヨ が充 分 に低 下 しない変異体であることも明らかとなった.

  光励起後 の初期段 階におけ るPSBのpKaの変化を明らかにするために,レーザー フラッシ ュフォト リシス法およびSn02ガラス透明電極法を用いて光照射に伴うPSB のpKヨ の変 化 を 野生 型pHRにお い て測 定 し た. い ずれ の 方 法に お いて もPSBの pKヨは光励起によって低下していることが観察された.これらの知見より,光励起 後,レチナールの異性化に始まるフォトサイクルの初期段階において,光エネルギ ーはPSBのpKaの 低 下へ と 変換され ,さらに ,cr輸送の駆 動カへと 変換され るメ カニズムが考えられる,さらに,このPSBのpKヨが充分に低下するためには,Asp252 とPSBの相互 作用が必要不可欠であることが示された,これまでにpKヨの変化が プロトン輸送の駆動カに変換されるというメカニズムは提唱されているが,別のイ オンにおいて,特に,Cl・輸送に関しては本研究が初めての例である.しかしながら,

PSBのpKaの低下 をCl‑輸送の 駆動カヘ と変換する メカニズ ムの詳細 は解明できて おらず, その変換 機構の解 明にはPSB周辺 のアミノ 酸残基に 関する更 なる検討が 必要である.

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

准教授 教授 教授 准教授

宮 内 正 二 加 茂 直 樹 井 関    健 菅 原    満

学 位 論 文 題 名

光駆動クロライドイオンポンプ,/ ヽロロドプシンの      輸送分子機構に関する研究

  古 細 菌 に 属 す る 高 度 好 塩 好 ア ル カ リ 菌Natronomonas pharaonお に は レ チ ナ ー ル を 発 色 団 と す る 膜 タ ン パ ク 質 , ハ ロ ロ ド プシ ン(pHR) が存 在す る.pHRは 光 駆 動 に よ りCrを 細 胞 の 外 か ら 内 ヘ 輸 送 す る ク ロ ラ イ ド ポ ン プ で あ る . 川Rを 光 に よ り 励 起 す る と 複 数 の 光 化 学 中 間 体 を 経 て元 に戻 るフ オト サイ クル と呼 ば れ る光 分解 反応 が起 こり ,1回 のフ ォト サイ クル で1個 のClーが 輸送 される.パル ス 光 を 与 え て か ら のCl− の 輸 送 に 伴 っ た 光 化 学 中 間 体 の 生 成 お よ び 崩 壊 は , 各 中 間 体 の 可 視 吸 収 の 時 間 変 化 と し て 捉 え る こ と が で き , こ の 方 法 は 他 の 膜 輸 送タ ンパ ク質 には ない 研究 上の 利 点の ーっ であ る.

   州Rに よ るCl一 輸 送 は 次 の3つ の 主 要 過 程 から 成り 立っ てい ると 考え られ て い る . ◎EC(extracellular)側 からCP(cytoplasmic) 側へ のClIの 移動 ,◎CP 側 結 合 サ イ ト か ら のC1. の 放 出 ◎ レ チ ナ ー ル の プ ロ ト ン 化 さ れ たSchiぱbase

(PSB) 近 傍 へ のCl・ の 結 合 , こ の 様 な3っ の 過程 は全 ての 膜輸 送タ ンパ ク質 に 含 ま れ る 重 要 な 輸 送 過 程 で あ り , こ れ ら の 性 質を 理解 する こと が輸 送担 体の 輸 送 分 子 機 構 を 知 る こ と で あ る と 考 え ら れ る . 関氏 の研 究で は膜 輸送 タン パク 質 の 輸 送 分 子 機 構 を 研 究 す る た め の モ デ ル タ ン パ ク 質 の1っ と し て シHRを 位 置 づ け ,C1・ 輸 送 活 性 お よ び そ れ に 伴 っ た 光 化 学 中 間 体 を 様 々 な 物 理 化 学 的 手 法 によ り測 定し ,pHRの輸 送分 子機 構の 解明 を行 った .

関 氏の 研究 の内 容は ,大 きく ニっ か らな る,

! !2丘 堕B堕 ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 卵 母 細 胞 発 現系 を遭 墓ヒ :二 電極 膜電 位固 定 法 を 用 い て 光 照 射 に 墨 盈 型RのCr輸 送 を 膜 電 流 と し て 精 度 良g食 出 で き る 実 験 系を 確立 した .こ の実 験系 はこ れ まで に報 告が なく ,. 関氏 らが 世界で初めて 成 功 し た 実 験 系 で あ る . こ の 実 験 系 の 最 大 の 特 長 は , 任 意 の 膜 電 位 に 固 定 す るこ とが でき ,そ の一 定条 件下 で ,C1一の 輸送 に伴 う電 流を 測定 することがで き る こ と で あ る . こ の 実 験 方 法 を 応 用 し ,pHRl分 子 当 た り の 輸 送 能 カ と 単 位 時 間当 たり に輸 送で きる イオ ンの 数 を別 々に 見積 もる こと がで きる ことを明らか と し た . ま た , ア フ リ カ ツ メ ガ エ ル 卵 母 細 胞 発 現 系 に お い てpHRの 発 現 量が 異

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なったとしても輸送能カを的確に見積もることを実証した.さらに,レーザーフラ ッシュフォトリシス法を用いた光化学反応の解析結果とcr輸送に伴う光誘導電流の 速度論的解析結果を統合的に考察し,Cl・の結合,解離過程を含む新たな輸送モ デルを構築した.その結果,Cl―の結合過程が全輸送過程において律速段階である こ と , ま た こ の 結 合 過 程 が 膜 電 位 依 存 的 で あ る こ と を 明 ら か に し た .

・・(2‑)アフリカツメ亙三Z塑E量麺堕を用いた電気生理学的手法およぴレ一荳‑Z乏2 2三Z左ヒ22冬法t三より,重要なZミZ酸残基cD国定を征2た:先ず,クロライドの 一方向 の輸 送に 重要 な役 割を 果たしているアミノ酸残基Ser130を同定した,

Ser130はEC結合 サイ トの 上に 位置し,レチナールと協調して;EC側とCP側を 隔て る 役 割 を 担 っ てお り, このSeri30の 水酸基 はcrのCP側か らEC側へ の逆 流を防 ぐ分 子弁 およ ぴ一 方向 の輸送に重要なラチェットの役割を果たしてい ると 推 察 さ れ た . 更に ,レ チナ ール 近傍 に存在 する 唯一 の酸 性残 基で ある Asp252が輸 送に 必須 であ るこ とを明らかにした.Asp252の輸送における役割 を解 明 す る た め に ,D252N変 異体 甜 択 を 用 い て ,光 化学 中間 体の 検討 を行 った.これより,D252N変異体:づHRは光励起後の初期段階においてPSBのpKユ が充分 に低 下し ない 変具 体で あることが明らかになった.光励起後の初期段 階におけるPSBのpKヨの低下が輸送に必須であることが明らかになった.これ らの知見より,光励起後,レチナールの異性化に始まるフォトサイクルの初期

、段階において,光エネルギーはPSBのpKヨの低下へと変換され,さらに,Cl―輸 送の駆動カへと変換されるメカニズムが考えられた.このPSBのpKヨが充分に 低下するためには,Asp252とPSBの相互作用が必要不可欠であることが示さ.

れた.これまでにpKヨの変化がプロトン輸送の駆動カに変換されるというメカニ ズム は 提 唱 さ れ て いる が,Cr輸 送に 関し ては本 研究 が初 めて の例 であ る,

PSBのpK。の低下をCl―輸送の駆動カへと変換するメカニズムの詳細は解明で きていないが,これら得られた知見は,これからの研究べと繋がるものである.

  副査の加茂教授,井関教授,菅原准教授の3先生方に,論文審査を行って頂 いた,どの先生方からも,内容的には学位論文に充分値する内容であるというコメ ントを頂いた.一部の先生から,誤字;不明瞭な点のご指摘を頂いたが,すべて訂 正 し , ご 了 解 頂 い た . 特 に , 審 査 会 を 殻 け る こ と は し な か っ た .

,この博士論文に関する一部の内容は,既に原著論文1報として発表されている また,現在,投稿直前のものが1報,投稿作成準備段階が1報ある.十分に博士論 文に値する内容である,

審 査 委 員 会 は , 関 顕 照 氏 の 提 出 論 文 を 学 位 論 文 に 値 す る と 評 定 し た .

参照

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