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博士(歯学)吉田重慶 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(歯学)吉田重慶 学位論文題名

血液幹/前駆細胞を標的とする ADA 欠損症における      遺伝 子 治 療基 礎 研究 : 至 適化 遺 伝子 導 入 法で の 遺伝子導入効率および遺伝子導入後の骨髄再構築能の検討

学位論文内容の要旨

    緒  言

  現在、臨床で行われている遺伝子治療は体細胞を標的として、病気を持った個体の 細胞に正常遺伝子を導入して治療を行おうとするものである。対象疾患としては先天 性代謝異常症や悪性新生物などが挙げられるが、口腔領域疾患を対象とした基礎研究 も近年盛んに行われている。

  今回の研究における対象疾患であるアデノシン・デアミナーゼ(ADA)欠損症は体 細胞に発現 する核酸代謝経路の触媒酵素ADAが欠損する先天性代謝異常症である。

患児は蓄積する代謝産物の細胞毒性のため、リンパ球の増殖および分化抑制、細胞死 が誘溝され、重篤な複合免疫不全症を呈する。

  治療としては主要組織適合抗原(HLA)の一致する血縁ドナ了からの骨髄移植のほ か、適合ドナーがいない患児では、HLAハプロタイプ一致の骨髄移植やポリエチレン グルコール処理Alニ)A (PEG− ADA)による酵素補充療法が選択されている。しかし、

どちらも治療法として完全とはいえず、永続的な治療効果が期待される遺伝子治療が、

これらに代わる根治療法として注目されている。

  剣ニ)A欠損症における遺伝子治療の試みは末梢血T細胞を標的としたものでは、一定 の臨床効果が認められている。しかし、末梢血T細胞を標的とした治療では、治療効 果の永統性に制限が生じること、T細胞以外の免疫細胞が補正されないことやT細胞 レセプターレパトアの多様性の限界などの問題が残る。一方自己複製能および多分化 能を持った血液幹/前駆細胞が含まれているCD34陽性細胞分画を標的とした治療で は 、 理 論 的 に 以 上 の 問 題 が 克 服 さ れ 、 理 想 的 な 標 的 と 考 え ら れ る 。   本 施設 で は、ADA欠 損 症患児2例に対して 自己骨髄血CD34陽性細胞を 標的とし た遺伝子治療臨床研究が計画されている。実施にあたり、CD34陽性細胞の採取、至 適サイトカインによる刺激、使用予定のべクターを用いた遺伝子導入操作、操作後の 細胞の骨髄への生着能および成熟細胞への分化能の解析等の検討が必要不可欠である。

(2)

  本 研 究 で は 、 健 常 人 臍 帯 血 お よ び 骨 髄 血か らCD34陽 性細 胞を 分離し 、2種類 のレ ト 口 ウ イ ル ス ベ ク タ ー(GCsapM―ADA、LASN)に よ る 遺 伝 子 導 入 を 行 い 、 比 較 検 討 を 行 っ た 。 さ らに 、遺 伝子 導入 操作 後のCD34陽 性細 胞が 生着 能お よび 多分 化能 を保 持 し う る か をNonobese diabetic(NOD) /SCIDマ ウ ス を 用 い たSCID Repopulating Cells (SRC) assayに て 検 討し た。 最後 に治 療対 象であ るADA欠 損症 患 児2例 、 の 骨 髄 血CD34陽性 細 胞 へ の 遺 伝 子 導 入 を 試 み 、ADA欠 損 細 胞 の 機能 的修 復 が 可 能 で あ る か を 検 討 し た 。

    結  果

  健 常 人 の 臍 帯 血 お よ び 骨 髄 血 よ り得 られ たCD34陽 性細 胞に 対し て、遺 伝子 導入 を 行い、リアルタイム定量PCR法で遺伝子導入効率を定量した。

  GCsapM―ADAの 臍 帯 血 お よ び 骨 髄 血CD34陽 性 細 胞 に 対 す る 遺 伝 子 導 入 効 率 は 、 そ れ ぞ れ0.41土O.11コ ピ ー 数 / 細 胞 、0.44+0.10コ ピー 数/ 細胞 であっ た。 一方 、 LASNの 臍 帯 血CD34陽 性 細 胞 に 対 す る 遺 伝 子 導 入 効 率 は0.10土0.03コ ピ ー 数 / 細 胞であった。

  GCsapM‑ADA遺 伝 子 導 入 操 作 後 のCD34陽 性 細 胞 が 骨 髄 生 着 能 お よ び 多 分 化 能 を 保 持 し う る か を 検 討 す る た め 、 遺 伝 子 導 入 操 作 後 のCD34陽性 細 胞 を 用 い て ´SRC assa.yを行い、マウス骨髄血の細胞表面マーカーをフローサイトメトリーにて解析した。

  臍 帯 血 お よ び 骨 髄 血CD34陽 性細 胞 を 用 い た 解 析 で は 、 自 血 球 共 通 抗 原 マ ー カ ー CD45陽 性細 胞群 の出現 (O.6〜41.9%)が認められ、このうち一部の細胞ではヒト血 液 幹 / 前駆 細胞 マー カーCD34抗原 の共 発現(0.2〜9.2% )が 認め られ た。 さら にB 細 胞 系 マー カーCD19およ び骨 髄球 系細 胞マー カーCD33陽性 細胞 の出 現(O.3〜35.O

%およびO.2〜1.8%)が認められた。

  ま た 、NOD/ScIDマ ウ ス 骨 髄 に 生 着、 分化 した ヒト 細胞 群に おけ る導入 遺伝 子の 存 在 を 確 認 す る 目 的 でnestedPCR法 を 行 い 、 各 々 の マ ウ ス の 骨 髄 お よび脾 臓よ り、 導 入遺伝子が検出された。

  次 い で 、ADA欠 損 症 患 児 の 骨 髄 血CD34陽 性 細 胞 に 対 し て 、 遺 伝 子導入 を行 った 。 GCsapM− .ADAに よ る 遺 伝 子 導 入 効 率 は 患 児1で0.29コ ピ ー 数 / 細 胞 、 患 児2で O.20〜O.39コピー数/細胞であった。問:)A酵素活性は遺伝子導入前ではO.5〜1.2U で あ っ た が 、 導 入 後 に は 患 児1で20.5U、 患 児2で9.2〜15.6Uと 増 加 を 認 め た 。   患 児 骨 髄 血CD34陽 性 細 胞 を 遺伝 子 導 入 後 にSRCassayを 行 い 、 遺 伝 子 導 入 さ れ た 患 児骨 髄血CD34陽性細 胞の 骨髄 生着 能お よび 多分 化能 を確 認するため、細胞表面マー カ ー解 析を 行っ た。い ずれ のマ ウス にお いて も、 ヒトCD45陽性細胞が検出され(O.2

〜1.O% ) 、 患 児 骨 髄 細 胞 の 生着 が 確 認 さ れ た 。 ま た そ れ ら の 細 胞 の 一 部 はCD19   (O.1〜O.6%)。CD33(O.1〜0.8%)、CD34(0.1〜O.5%)を共発現していた。

  さ ら に、 移植 後8週 にお いて 、患 児骨 髄細 胞を 移植 され たマ ウス 骨髄お よび 脾臓 中 に、導入遺伝子がnestedPCR法で検出された。

(3)

    考  察

  ま ず 、 健 常 人 臍 帯 血 お よび 骨 髄血CD34陽 性細 胞 を標 的 とし た 遺伝 子 導 入法 GCsapM−.ADAベクターがし丶SNベクターと比較して明らかに高効率の遺伝子導入を 可能にすることを示した。導入効率が改善された理由としては、使用したパッケージ ング細胞によって産生されるウイルスエンベローブタンパクの違いが挙げられる。

GCSapM― .ADAはGibbonApeLeukemiaVirus(GAIV) 由 来 の エ ンベ 口 ーブ を 有 しており、G1vr1はそれに対する受容体である。一方L鴿Nは觚1photropicエンベロー ブを有しており、G1vr2がその受容体である。ヒト血液幹/前駆細胞ではG1vr1の発 現がGlvr2と比較して高いことが知られており、GCsa・pMーADAはし゜心Nに比して、

高 い 効 率 を 持 っ て CD34陽 性 細 胞 に 導 入 さ れ る と 考 え ら れ る 。   次いで、我 々の今回の 実験では組換え型フィプロネクチン断片CH296をコートし たプレートを使用している。この分子はレトロウイルスに結合するドメインと血液幹

/前駆細胞に結合するドメインを持ち、両者を同一分子上に引き合わせることが可能 であり、遺伝子導入効率を上昇させる。

  血液幹/前駆細胞を標的とする遺伝子治療においては操作後の細胞が移植後に骨髄 に生着し、分化して成熟細胞を産生し続ける能力、すなわち骨髄再構築能を損失する ことなく遺伝子導入が行われることが望ましい。今回の研究においては、遺伝子導入 操作後の血 液CD34陽性細胞 の骨髄再構 築能の保持 を、SRCassayを行い、細胞表面 マーカーの 解析およびnestedPCR法にて検討した。細胞表面マーカーの解析ではヒ トCD45陽性細胞群の出現により、移植した細胞の一部がマウス骨髄に生着している ことが示された。

  このうち一部の細胞ではCD34抗原の共発現が認められ、生着した細胞群中の血液 幹/前駆細 胞の存在が 示され、さ らにCD19およびCD33陽性細胞の出現は生着した 細胞のB細胞および骨髄球系細胞への分化を示すことから、遺伝子導入操作後の血液 CD34陽性細胞集団の中に骨髄再構築能を有する細胞が存在することが証明された。

  また、nestedPCR法でマウス骨髄および脾臓より導入遺伝子の検出が認められた ことにより、骨髄再構築能を有する細胞群の一部は遺伝子導入された細胞であること が証明された。

    結  論

  GCsapM−ADAに よ り、 至 適化 さ れた 遺 伝子 導 入法 の 下 で臍 帯 血お よび 骨髄血 CD34陽 性 細 胞 に 対 す る 導 入 効 率 は 、L嶋Nと 比 較 し て 明 ら か に 優 れ て い た 。   NOD/SCIDマ ウスを用い た検討で、 遺伝子導入 操作後の臍帯血および骨髄血CD34 陽性細胞における骨髄再構築能の維持が示された。また、レシピェントマウスの造血 系に導入遺伝子の検出が可能であった。

  患児骨髄血CD34陽性細胞に おいても、 健常人骨髄 血CD34陽性細胞と同程度の遺 伝子導入が 可能であり 、導入操作後にADA酵素活性の上昇と骨髄再構築能の保持が 確認された。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

   血液幹/ 前駆細胞 を標的と する ADA 欠 損症における      遺 伝子 治 療 基礎 研 究: 至 適 化遺 伝 子導入法 での 遺伝子導入効率および遺伝子導入後の骨髄再構築能の検討      ´

  審査は 柴田、田 村両名合 同、崎山お よび小口 審査委員 それぞれ個別に、学位申請者 に対し て提出論 文の内容 とそれに関 連する学 科目につ いて口頭 試問の形式によって行 われた 。以下に 、提出論 文の要旨と 審査の内 容を述べ る。

  学 位 申 請 者 は 、 ア デ ノ シ ン ・ デ ア ミ ナ ー ゼ(ADA)欠 損 症 に 対 し て 自 己 骨 髄 血 CD34陽 性細 胞 を標 的 と した 遺 伝子 治 療臨床 研究の実 施にあた り、血液 幹・前駆細 胞 群 の含 ま れるCD34陽 性 細胞 の 採取 、 至適サ イトカイ ンによる 刺激、使 用予定のべ ク ターを 用いた遺 伝子導入 操作、操作 後の細胞 の骨髄へ の生着能 および成熟細胞への分 化能の 解析等の 検討を行 った。

  健 常 人 臍帯 血 およ び 骨 髄血 か らCD34陽性細 胞を分離 し、レト ロウイル スベク夕一 に よる 遺 伝子 導 入 を行 い 、 比較 検 討を 行った。 さらに、 遺伝子導 入操作後のCD34陽 性 細 胞 が 生 着 能 お よ び 多 分 化 能 を 保 持 し う る か をNonobese diabetic (NOD)/ SCIDマ ウ ス を 用 い たSCIDRepopulating Cells (SRC) assayに て 検 討 し た 。 最後 に 治 療 対 象 で あ るADA欠 損 症 患 児2例 の 骨 髄 血CD34陽 性 細 胞 へ の 遺 伝 子 導 入 を 試 み、ADA欠 損細胞の 機能的修 復が可能で あるかを 検討した 。

  以 上 の 方 法 に よっ て 得ら れ た 結果 は 次の よ う であ る 。 レト ロ ウイ ル ス ベク タ ー GCsapM‑ADAの 臍 帯 血 お よ び 骨 髄 血CD34陽 性 細 胞 に 対 す る 遺 伝 子 導 入 効 率 は 、そ れ ぞれ0.41コ ピ ー 数/ 細 胞 、O.44コピー数 /細胞で あった。 一方、LASNの 臍帯血

久郎 人雄       一 春 健 正 幸 口 田 村 山 小柴 田崎 授授 授授 教教 教教 査査 査査 主副 副副

(5)

CD34陽 性 細 胞 に 対 す る 遺 伝 子 導 入 効 率 は0.10コ ピ ー 数 / 細 胞 で あ っ た 。   さ らに、遺伝子導入操作後のCD34陽性細胞を用いてSRC assayを行い、マウス 骨髄血の細胞表面マーカーをフローサイトメトリーにて解析した結果では、自血球共 通抗原マーカーCD45陽性細胞群の出現が認められ、このうち一部の細胞ではヒト血 液幹/前駆細胞マーカーCD34抗原の共発現が認められた。さらにB細胞系マーカー CD19お よ び 骨 髄 球 系 細 胞 マ ー カ ーCD33陽 性 細 胞 の 出 現 が 認 め ら れ た 。   また、NOD/SCIDマウス骨髄に生着、分化したヒト細胞群における導入遺伝子の 存在を確認する目的でnested PCR法を行い、各々のマウスの骨髄および脾臓より、

導入遺伝子が検出された。

  次 いで、ADA欠損 症患 児の 骨髄 血CD34陽性 細胞 に対 して、 遺伝 子導入および SRC assayを 行い、 健常 人由 来骨 髄血CD34陽 性細 胞と 同様な 結果 が得られた。

  以上のことにより、健常人臍帯血および骨髄血CD34陽性細胞を標的とした遺伝子 導入 法ではGCsapM‑ADAベ クター がし 气SNベクターと比較して明らかに高効率の 遺伝子導入を可能にすることを示した。

  また、血液幹/前駆細胞を標的とする遺伝子治療においては操作後の細胞が移植後 に骨髄に生着し、分化して成熟細胞を産生し続ける能力、すなわち骨髄再構築能を損 失することなく遺伝子導入が行われることが望ましい。今回の研究においては、遺伝 子導 入操作 後の 血液CD34陽性細 胞の 骨髄再構築能の保持を、SRCassayを行い、

細胞 表面マーカーの解析およびnestedPCR法にて検討した。細胞表面マーカーの 解析ではヒトCD45陽性細胞群の出現により、移植した細胞の一部がマウス骨髄に生 着していることが示されたことにより、遺伝子導入操作後の血液CD34陽性細胞集団 の中に骨髄再構築能を有する細胞が存在することが証明された。また、nestedPCR 法でマウス骨随および脾臓より導入遺伝子の検出が認められたことにより、骨髄再構 築能 を有す る細 胞群 の一 部は遺 伝子 導入された細胞であることが証明された。

  さらに、心)A欠損症患児の骨髄血CD34陽性細胞に対する遺伝子導入の結果によ り 、 創 ) A欠 損 細 胞 の 機 能 的 修 復 が 可 能 で あ る こ と が 示 さ れ た 。   学位申請者に対して論文内容に関連する質問が行われたが、これらの質問に対しそ れぞれ適切な回答が得られ、また、本研究はAI)A欠損症患者の遺伝子導入細胞にお ける機能回復による免疫能再建の可能性を示唆するもので、諸疾患の究明、治療法の 確 立 に お い て 基 本 と な る研 究 で あ り 、 将 来 の 展 望 につ い て も 評 価 さ れ た 。   したがって、学位申請者は博士(歯学)の学位授与に相応しい者と認められた。

参照

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