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高分子素材中でネットワーク構造を 形成する添加剤を用いた 高分子微細発泡体の作製 石原彰太

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(1)

Author(s)

石原, 彰太

Citation

Kyoto University (京都大学)

Issue Date

2018-03-26

URL

https://doi.org/10.14989/doctor.k21131

Right

許諾条件により要旨は2018-04-01に公開

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

ETD

(2)

高分子素材中でネットワーク構造を

形成する添加剤を用いた

高分子微細発泡体の作製

(3)

1. 1 プラスチック発泡体の性質と気泡構造 ... 2 1. 2 物理発泡法の概説... 3 1. 3 物理発泡成形における気泡微細化への取り組み ... 6 1. 4 本研究の目的と各章の概要 ... 11 引用文献 ... 13 第 2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 ... 17 2. 1 緒言 ... 18 2. 2 実験方法 ... 19 2. 2. 1 使用した試料... 19 2. 2. 2 発泡方法 (コアバック式発泡射出成形法) ... 20 2. 2. 3 SEM を用いた気泡構造の観察 ... 26 2. 2. 4 連通率の測定... 29 2. 2. 5 粘弾性特性の測定 ... 31 2. 2. 6 高速 DSC を用いたポリ乳酸の結晶化挙動の解析 ... 32 2. 3 結果と考察 ... 33 2. 3. 1 ポリ乳酸発泡体の気泡構造に発泡温度が与える影響 ... 33 2. 3. 2 ポリ乳酸発泡における OCC の発泡温度依存性に対する考察 ... 38 2. 3. 3 発泡倍率(コアバック距離)が気泡構造と連通率に与える影響 ... 54 2. 4 結言 ... 55 引用文献 ... 56 第 3 章 ポリ乳酸/PTFE コンポジットの発泡射出成形 ... 58 3. 1 緒言 ... 59 3. 2 実験方法 ... 60 3. 2. 1 使用した試料... 60 3. 2. 2 発泡方法 (コアバック式発泡射出成形法) ... 61 3. 2. 3 SEM を用いた気泡構造の観察 ... 61 3. 2. 4 連通率の測定... 62 3. 2. 5 粘弾性特性の測定 ... 62 3. 2. 6 DSC、高速 DSC を用いたポリ乳酸の結晶化挙動の解析 ... 65 3. 2. 7 溶媒エッチング法を用いたポリ乳酸中の PTFE 分散状態の観察 ... 66 3. 2. 8 可視化バッチ発泡によるポリ乳酸の発泡挙動の観察 ... 67 3. 3 実験結果と考察 ... 69 3. 3. 1 PTFE がポリ乳酸粘弾性と結晶性に与える影響 ... 69

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3. 3. 2 PTFE が気泡構造に与える影響 ... 76 3. 4 結言 ... 82 引用文献 ... 83 第 4 章 ポリプロピレン/PTFE コンポジットの 発泡射出成形 ... 85 4. 1 緒言 ... 86 4. 2 実験方法 ... 87 4. 2. 1 使用した試料... 87 4. 2. 2 発泡方法 (コアバック式発泡射出成形法) ... 87 4. 2. 3 SEM を用いた気泡構造の観察 ... 88 4. 2. 4 連通率の測定... 88 4. 2. 5 粘弾性特性の測定 ... 89 4. 2. 6 高速 DSC を用いた iPP、iPP/PTFE の結晶化挙動の解析 ... 89 4. 2. 7 可視化バッチ発泡による iPP/PTFE の発泡挙動の観察並びに気泡生成・成長速度 の解析 ... 92 4. 2. 8 溶媒エッチング法を用いた iPP 中の PTFE 分散状態の観察 ... 93 4. 3 実験結果と考察 ... 93 4. 3. 1 PTFE が iPP 粘弾性と結晶性に与える影響 ... 93 4. 3. 2 PTFE が iPP 発泡体の気泡構造に与える影響 ... 101 4. 4 結言 ... 107 引用文献 ... 108 第 5 章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNF ナノコンポジットの発泡射出成形 ... 111 5. 1 緒言 ... 112 5. 2 実験方法 ... 113 5. 2. 1 使用した試料... 113 5. 2. 2 発泡方法 (コアバック式射出発泡成形) ... 114 5. 2. 3 SEM とピクノメータを用いた気泡構造の評価 ... 115 5. 2. 4 溶媒エッチング法を用いた LCBPP 中の CNF 分散状態の観察 ... 116 5. 2. 5 粘弾性特性の測定 ... 117 5. 2. 6 LCBPP/CNF コンポジットの結晶構造の解析 ... 117 5. 2. 7 可視化バッチ発泡による CNF と結晶の気泡核剤効果の解析 ... 120 5. 2. 8 力学試験による機械的強度の測定 ... 120 5. 3 実験結果と考察 ... 124 5. 3. 1 CNF が樹脂物性と発泡挙動に与える影響 ... 124 5. 3. 2 低発泡倍率の LCBPP/CNF 発泡体の気泡構造と力学的強度 ... 136 5. 3. 3 高発泡倍率の LCBPP/CNF 発泡体の気泡構造と力学的強度 ... 139 5. 3. 4 CNF が LCBPP 発泡体空隙率に与える影響 ... 144

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引用文献 ... 161 謝辞 ... 162 本論文に関する著者の論文 ... 163

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第1 章 緒論

1

第 1 章

緒論

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2

1. 1 プラスチック発泡体の性質と気泡構造

プラスチック発泡体(以下、発泡体)は樹脂材料中に気泡が分散した構造を持つ多孔質材 料であり、気泡とそれらを隔てる気泡壁により構成される。気泡(空隙)の存在により、軽 量性、断熱性、吸音性、衝撃吸収性、絶縁性といった数多くの有用な特性を有し、これらの 特性を活かして断熱材、吸音材、クッション材をはじめ、スポンジのような日用品から、ス ポーツ用品、包装用品など非常に多岐にわたる用途に用いられている[1-4]。例えば、ビーズ 発泡ポリスチレン(Expanded polystyrene, EPS)は発泡スチロールと称して緩衝材や包装材と して広く普及している[5]。架橋ポリエチレン(Cross-linked polyethylene, XPE)発泡体は架橋剤 を用いた架橋反応と化学発泡を同時進行することにより製造され、耐衝撃性を活かして自 動車部材に用いられている[6]。空隙率の低いポリウレタン(Polyurethane, PU)フォームは断熱 材や車のバンパー、空隙率の高いものは靴底などのクッション材として使われている[7, 8]。 これら汎用樹脂に加え、耐熱性・強度に優れるナイロン(Nylon、主に Polyamide 6 (Nylon 6), PA6)[9, 10] や ポ リ カ ー ボ ネ ー ト (Polycarbonate, PC)[10] 、 ポ リ エ チ レ ン テ レ フ タ レ ー ト (Polyethylene terephthalate, PET)[11]に代表されるエンジニアリングプラスチックの発泡体の 開発・改良・市場展開も進められている。 近年では、発泡体の多種多様な用途の中でも特に、軽量性と断熱性を活かした省資源・省 エネルギー材料としての用途展開が注目されている。この重要な展開に自動車をはじめと したモビリティ分野への応用がある。自動車業界においては、燃費向上、省エネルギー化へ のさらなる要求のために、樹脂部材の導入による軽量化が進められている。例えば強化ポリ プロピレン(Polypropylene, PP)の発泡体はドアモジュールや内装に使用され[12, 13]、ナイロ ンの発泡体はエンジンカバーに応用されている[13]。自動車の PP 発泡部材は、後述する発 泡射出成形法により作られることが多く、現状、空隙率 30-50%程度の発泡体が使用されて いる[14]。発泡体は軽量性に加えて断熱性に優れるため、冷暖房のためのエネルギー消費の 低減が可能であり、省資源・省エネルギー化のため更なる活用が期待されている。 発泡体の省資源・省エネルギー性を活かした材料開発においては、発泡体の空隙率と気泡 径の制御が重要である。気泡径は発泡体の強度と断熱性に影響が大きい。発泡体の気泡構造 は気泡径に応じて直径数十~数百 µm オーダーのファインセル、数 µm オーダーのマイクロ セルラー、nm オーダーのナノセルラーに分類される[15]。一般的に樹脂に空隙を分散させ ると曲げ弾性率や引張・圧縮弾性率などの機械的強度は発泡させない樹脂(ソリッドと呼ぶ ことがある)に比して低下する。一方、気泡を微細化することにより、この強度低下を抑制 することが可能である。また、気泡径をナノオーダー、気泡内の気体の平均自由行程より小 さくできれば Knudsen 拡散により、熱伝導率が大きく低下することが期待される[16, 17]。 そのため、現在、低熱伝導率の発泡体の作製のために、気泡径をナノオーダーまで微細化す る研究が進められている。 空隙率に関しては、高空隙率な発泡体は空隙の割合が大きいため、軽量で材料としては軟

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第1 章 緒論 3 質な挙動を示し、衝撃吸収性が高い[18]。また、発泡体の断熱性は空隙に存在する気体の熱 伝導率、材料の熱伝導率、輻射による伝熱で決まる。気体の体積(空隙)が上昇すると、熱 伝導率が低下し、断熱性が高くなる。しかし、空隙率が過剰に大きいと輻射熱の影響が高く なり、断熱性が低下する。一方、空隙率が上昇すると機械的強度は低下するため、材料強度 が要求される場合には空隙率を低く保つ必要がある[18]。 軽量性と断熱性のさらなる向上には、発泡体の高空隙率化と気泡微細化を同時に達成す ることが必要である:軽量性や断熱性を上げるために、空隙率を高めると気泡合一が進むた め、機械的強度が低下する。気泡の微細化は、空隙率の上昇による強度低下を抑制するため にも重要で、自動車部材・構造部材をはじめとする強度が求められる用途においては必定な 技術となる。現状では高空隙率条件下で気泡径を微細化させることは技術的に困難であり [15]、発泡手法や樹脂物性の改善による気泡微細化技術の開発・研究が進められている。

1. 2 物理発泡法の概説

発泡手法は、気泡形成に使用する気体の発生手法の観点から化学発泡法と物理発泡法に 大別される。化学発泡法は、化学反応により発生する気体を用いて樹脂を発泡させる手法で ある。代表的な事例はポリウレタン発泡であり、ポリオールとイソシアネートの重合中にイ ソシアネートと水を化学反応させ、二酸化炭素を発生させることにより、重合と発泡を同時 に行う。また、熱可塑性樹脂の発泡には、化学発泡剤(Chemical blowing agent, CBA)と呼ばれ る化学物質を用いた化学発泡法が工業的に広く用いられている。これは化学発泡剤を樹脂 中に混錬・分散した後に熱分解することで、気体を樹脂中に発生させる手法である。化学発 泡 剤 に は 、 重 曹 を は じ め と し た 炭 酸 塩 ・ 炭 酸 水 素 塩 系 、 ア ゾ ジ カ ル ボ ン ア ミ ド (Azodicarbonamide, ADCA)、アゾイソブチロニトリル(2, 2’-Azobis(isobutyronitrile), AIBN)に代 表されるアゾ系、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(p, p’-Oxybis (benzenesulfonyl hydrazide), OBSH) [19, 20]などがある。発泡剤の種類によって、二酸化炭素、一酸化炭素、窒 素、アンモニアなど発生する気体の種類やその量、熱分解する温度が異なり、樹脂種と所望 の発泡倍率に応じて使い分けられている[19]。化学発泡は、温度や添加量などを調整するこ とで比較的安定に発泡体を製造することができるとされる。その一方で、分解により一酸化 炭素やアンモニアなどの人体に有害な気体が発生するものや、臭いが伴い VOC の問題を生 じる化学発泡剤があり、環境安全の観点から公的に使用規制が掛かる恐れがある。また、発 泡成形後でも化学発泡剤が樹脂中に残るためリサイクルができないという問題もある。 物理発泡法は、気体の発生に化学反応が伴わない手法であり、気体そのものや揮発性の高 い物質を樹脂に溶解させたのちに相分離させ樹脂を発泡させる発泡法である。発泡に使用 する物質は物理発泡剤(Physical blowing agent, PBA)と称され、古くはフロンガス、最近では 窒素、二酸化炭素、ブタンなどノンフロン系のものが使用されている。物理発泡法では次の 4 つの過程により樹脂が発泡すると考えられている[15, 21]。

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4 第 1 の過程は物理発泡剤の溶解である。通常、気体の熱可塑性樹脂への溶解度は、ヘンリ ー則に従い、圧力に比例して増加する。従って、物理発泡剤の樹脂への溶解は、加圧下で行 われる。 第 2 の過程は気泡核生成である。図 1-1 に、2 成分系の相分離曲線の一例を示す。図中の 青線は、バイノーダル曲線とよばれる 2 相共存曲線であり、赤線はスピノーダル曲線を表 す。バイノーダル曲線の外側では、安定的に 2 成分が均一相として存在できるが、スピノー ダル曲線の内側では、混合系の自由エネルギーが高く自由エネルギー障壁が低い不安定な 状態で、濃度揺らぎを伴いながら相分離が進行する。このような相分離形態はスピノーダル 分解と呼ばれる。スピノーダル曲線とバイノーダル曲線で囲まれた領域は熱力学的に準安 定的な状態であり、特定のエネルギー障壁を越えた場合に相分離が起こる。この相分離過程 は核生成と呼ばれる。 物理発泡の場合、スピノーダル曲線の内側に至る組成まで、物理発泡剤を樹脂に溶解させ るためには、低温でかなり高い圧力での処理過程が必要であり、通常の物理発泡法では、核 生成による相分離が生じる。核生成には均質核生成と不均質核生成が存在し、不均質界面か ら核生成が進行する場合は不均質核生成と呼ばれ、明確に核生成サイト(部位)が特定でき ないものは均質核生成と呼ばれる。タルクなどの核剤や、本論文で取り扱う繊維状の添加剤 は気泡核剤(核生成サイト)として機能する。 スピノーダル分解による発泡成形の事例は皆無ではない。畑中ら[22]は PC を二酸化炭素 でバッチ発泡し、その発泡過程を可視化し、圧力 15 MPa で二酸化炭素を含浸し室温から発 泡温度200℃に昇温した場合、核生成により相分離が進行するのに対し、発泡温度 120℃で は、スピノーダル分解により発泡が進行すると報告している。また、Xu と Costeux らはポ リメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate, PMMA)/二酸化炭素系において準安定条件か ら相分離する際の自由エネルギー障壁の温度・圧力に対する依存性を、密度汎関数理論を用 いて計算し、二酸化炭素の相分離過程における核生成挙動について論じた。彼らは、減圧に よる発泡前の初期圧力を高くすると、PMMA と二酸化炭素の液相の準安定状態における自 由エネルギー障壁が特異的に低下し、これが二酸化炭素の液相のスピノーダル曲線の挙動 と一致すると報じている[23]。 このようにスピノーダル分解による発泡の可能性やスピノーダル曲線の挙動が発泡過程 における相分離に影響を与える可能性があることを示す報告は存在するが、工業的に実施 する物理発泡[24]ならびに本論文で実施する物理発泡は核生成によるものである。一方、昇 温により発泡を誘起する場合、二酸化炭素をはじめとする殆どの物理発泡剤の溶解度は低 下するため、スピノーダル分解を招く可能性が示唆されている[24]。 第 3 の過程は気泡成長である。これは、核生成した気泡が時間の経過と共に、気泡の内外 圧の差を駆動力として、その気泡径を増大させる現象であり、同時に樹脂中に溶解した物理 発泡剤の気泡中への拡散が生じる過程である。気泡成長過程では、気泡同士を隔てる樹脂の 壁(気泡壁)が形成され、核生成や気泡成長により 2 軸伸長による変形を受けて薄肉化して

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第1 章 緒論 5 いく。このとき、気泡壁の破断が生じ、気泡同士が連通した構造を形成する場合は特に連通 気泡構造と呼ばれる。対して、気泡同士が独立した構造は独立気泡構造と呼ばれる。気泡壁 が破断した後に、複数の気泡が変形を伴いながら 1 つの気泡となる現象が生じる場合があ る。これは合一と呼ばれる。気泡壁の薄肉化が進行すると、樹脂中に溶解した物理発泡剤の 気泡への拡散が促進されるとの報告もある[25]。 第 4 の過程は気泡の安定化・固定化過程である。この過程で、核生成による気泡核の発生 ならびに気泡成長を止め、気泡を固定化し発泡体として取り出す。熱可塑性樹脂の場合は温 度を下げ、樹脂粘度を上げて気泡を固定化すること、熱硬化性樹脂の場合は架橋を進めるこ とにより樹脂粘度を上げ気泡の固定化が行われる。 以上のように、物理発泡法における現象の解析や理論の構築は、発泡プロセスを 4 つの過 程に分けて行われてきたが、これらは同時に進行することが知られている。これらの過程に おける挙動は、ガス溶解・拡散性、粘弾性特性、結晶性、表面張力など樹脂物性や温度、圧 力など成形条件に影響を受け、最終的に多様な気泡構造が形成される。 図 1-1 二相系の相分離曲線の模式図

Pressu

re

Concentration

Binodal

Spinodal

One-phase region

Two-phase region

Metastable region

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6

1. 3 物理発泡成形における気泡微細化への取り組み

物理発泡では、主に ① 物理発泡剤の溶解 ② 気泡核生成 ③気泡成長 ④ 気泡の安定 化・固定化という 4 つ過程を経て発泡体が製造される。各過程において起こる挙動(現象) は、樹脂物性や成形条件によって大きく変動し、最終的な発泡体の発泡倍率や気泡構造に影 響を与える。これらの過程を踏まえ、物理発泡法における気泡微細化のために行われてきた 技術開発さらには、現状、検討されている手法を以下にまとめる。 フロン類は、気体の中でも樹脂への溶解性が高いため従来広く用いられる物理発泡剤で あったが、オゾン層破壊特性、温室効果が高いため、モントリオールプロトコールの採択 (1987)以来、使用規制が強化されている。工業的にはフロンに代わって代替フロンやブタン、 ペンタンが物理発泡剤として用いられてきたが、引火性や毒性、温室効果の高さが問題視さ れ、窒素や二酸化炭素の使用が進められている。二酸化炭素や窒素はフロン類やブタン等炭 化水素系発泡剤と比較して可塑性樹脂への溶解度が低いために[26]、高発泡倍率の発泡体の 作製には適さないが、過飽和度を高くしやすいため気泡微細化には適した物理発泡剤とい われている。 窒素や二酸化炭素を物理発泡剤として用いた微細気泡発泡体の嚆矢となったのが、MIT の Suh らによるマイクロセルラー発泡体の提案である。これは、1980 年代に MIT の Suh らに よって提唱された概念であり[27, 28]、気泡微細化により強度を損なわず、軽量化が可能で ある発泡体として注目された。マイクロセルラー発泡の初期の研究は二酸化炭素を使った バッチ発泡で行われた。Martini ら[29]は、ポリスチレンシートを高圧容器内に設置し、ガラ ス転移温度 Tg以上で高圧窒素若しくは二酸化炭素を導入し、ガスを溶解させた後に急減圧 することで、相分離を引き起こし、微細な気泡構造を持つ発泡体を作製した。また、Youn ら [27]は、ポリエステル系樹脂/ガラス繊維コンポジット材料を用いて同様の手法で微細発泡体 を得ている。その後、バッチプロセスで様々な樹脂のマイクロセルラー発泡体が製造されて いる。例えば、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride, PVC)[30]、poly(DL-lactide-co-glycolide)[31]、 ポリスルフォン(Polysulfone, PSF)[32, 33]、styrene-co-acrylonitrile[34]が挙げられる。 このマイクロセルラー発泡体における発泡機構を先に述べた 4 つの過程に基づいて解明 する研究も進められた。Colton、Suh ら[35-37]は主にポリスチレン/ステアリン酸亜鉛系にお いて核生成速度の古典核生成理論による解析を行い、ステアリン酸亜鉛の添加量と不均質 核生成速度の関係を明らかにしている。その後、Han ら[38]や Shafi ら[39]などにより、気泡 核生成理論における相分離の自由エネルギーの改良が行われた。例えば Han らは、高分子 の配置、気泡成長による発泡剤濃度の低下に起因したエントロピー変化を古典的核生成理 論により導かれるエネルギー障壁から引き、新たに自由エネルギー障壁を定式化すること で、良好に PS/トルエン系の発泡実験結果を再現している[38, 40]。Shafi ら[39]は自由エネル ギーに、気体の弾性係数、活量係数、圧縮係数を組み込み、定式化を行った。

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第1 章 緒論 7 気泡成長過程に関しては、気泡成長速度の定式化による解析が試みられた。Rosner ら[41]、 Han ら[42]、Shafi ら[39, 43]など多くの研究者は、気泡成長速度を内圧と外圧(樹脂圧)の差 の関数として表現した。気泡内圧の変化は、樹脂中に溶解した物理発泡剤が気泡へと拡散す ることにより生じる。彼らは、気泡周辺において物理発泡剤濃度がバルクより低い領域(イ ンフルエンス領域)が存在するとし、この濃度分布を表現する関数を仮定することで、偏微 分方程式を直接解かずに、気泡に流入する物理発泡剤量を計算できるように気泡成長過程 をモデル化している。粘弾性流体中の気泡成長については、前述の Shafi ら、Goel[44]らな どにより、せん断速度と応力の関係式に粘弾性を考慮した構成方程式を導入することなど が試みられている。 バッチプロセスから始まったマイクロセルラー発泡体は、成形プロセスの改良が進めら れ、連続プロセス化に向けた研究が行われた。Suh や Park らは、押出機を使用した押出発 泡成形について検討している。押出発泡成形では、次のような手順で発泡体を製造している。 押出成形機中に物理発泡剤となる二酸化炭素や窒素を高圧で導入し、混練により樹脂に溶 解させる。この際、スクリュによる樹脂と物理発泡剤の圧縮混錬により、物理発泡剤を樹脂 に分散・溶解させ均一相を形成する。物理発泡剤が均質に分散溶解した樹脂をダイ(口金) から大気中に押し出すとき、樹脂圧が低下する。この圧力減少により相分離が誘起され樹脂 が発泡する。押出発泡プロセスにおいて、ダイ形状や、シリンダ形状、減圧速度といった成 形条件と気泡生成の関係を、Suh、Park、Baldwin[45]、Xu[46]ら多くの研究者が、先に述べ た 4 つの過程の中で検討している。Baldwin ら[45]は PET の押出発泡シートプロセスにおい て、ダイ形状と操作圧力・温度などの成形条件と気泡生成・成長の相関性について研究を行 い、操作圧力の上昇により気泡個数密度が上昇し気泡が微細化すること、発泡温度の低下に より気泡径が低下することを見出している。また、Xu ら[46]はダイ形状に着目し、ダイ中の 圧力勾配が高いほど気泡生成が促進されることを見出した。また、Park ら[47]は押出発泡プ ロセスにおいてダイ内での樹脂の減圧速度が気泡生成に与える影響を検討し、減圧速度が 速いほど気泡生成数が増え、気泡径は微細化することを明らかにした。 これらの研究を受け Suh らにより、1992 年に連続成形法に関する基本特許[48]が提出さ れた。1996 年には Suh ら MIT の研究チームよりライセンスを受けた米国 Trexel 社により射 出成形プロセスにおいて実機開発が進められ[49]、1997 年に連続プロセスに関する特許[50] が提出された。発泡射出成形プロセスでは以下の手法で発泡体が製造される。まず、射出成 形機シリンダ内に物理発泡剤を導入し、溶融樹脂に溶解・混錬させ均一相を形成させる。次 に物理発泡剤が均質に溶けた樹脂を金型内に射出する。このとき樹脂圧が低下し、気泡核生 成が誘起され樹脂が発泡する。発泡射出成形法は、金型内で成形を行うため寸法安定性に優 れ、サイクル時間が短く生産性にも優れる手法であり、様々な形状の樹脂部品、自動車部品 の成形に用いられている。現在は特に、ガス注入部分やシャットオフノズルの改良によりシ リンダ内で高いスクリュ背圧を保ってガスを溶解させることが可能となっている。シリン ダ内では、溶融樹脂が圧縮混錬されるため、樹脂圧が高い。その樹脂圧に抗して物理発泡剤

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8 を導入せねばならず、二酸化炭素を物理発泡剤として使用するとき自然と導入圧は二酸化 炭素の臨界圧(7.38MPa)より高くなる。このようにして超臨界二酸化炭素を用いた微細発泡 射出成形プロセスが誕生し[48-50]気泡径が数十 μm~100 μm、気泡数密度が 108~109個/cm3 度のマイクロオーダーの発泡体が製造されている。 発泡射出成形プロセスで発泡体を製造する際の操作法に① ショートショット法 ② フルショット法 ③ コアバック法がある。これらの発泡手法の模式図を図 1-2 に示す。 ショートショット法では、金型キャビティ内に射出する樹脂の量をキャビティ容積より 少なくし、その樹脂不足分を発泡による樹脂の体積膨張により補う。ショートショット法は、 空隙率が 30%程度[51-53]の発泡倍率の発泡体を作製することが可能であるが、均一で微細 な気泡を作製することが難しい。 フルショット法では、金型キャビティ容積分の樹脂を射出する。その後、金型内で樹脂は 冷却され、体積収縮が生じる。この体積収縮分を発泡による樹脂の体積膨張で補う。フルシ ョット法では、ショートショット法と比較して微細で均一な気泡を形成することが可能で あるが、空隙率は 15%程度[51-53]であり高空隙率発泡体を作製することが難しい。 コアバック法は、金型内に射出した樹脂を、保圧後、急激に金型を開くことにより、発泡 体を製造する手法である。金型を開く操作(コアバック)により、金型内の樹脂は急減圧され、 溶解しきれなくなった発泡剤が相分離することにより発泡体が得られる。この急激な減圧 操作により、微細かつ均一な発泡体の作製が可能であり、ショートショット法、フルショッ ト法と比較して高発泡倍率の発泡体作製が可能である。しかし、金型のコストが高くなるこ と、発泡で樹脂を膨張させる方向がコアバックする方向に限定されるなどの制約がある。 図 1-2 各発泡射出成形法の概略図 コアバックによる減圧・発泡 金型 (コア側) (キャビ金型 ティ側) 溶融樹脂 気泡 金型 (キャビ ティ側) 溶融樹脂 流動方向 金型 (コア側) 射出時の減圧で発泡 体積収縮分を発泡で補う ① ショートショット法 金型 (キャビ ティ側) 流動方向 金型 (コア側) 溶融樹脂 ② フルショット法 ③ コアバック法

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第1 章 緒論 9 マイクロセルラー発泡体がプロセスの開発を伴って事業展開される一方で、気泡径のさ らなる微細化(ナノセルラー発泡体)の検討がなされている。微細化の手法として検討されて 事項を整理すると次の 5 つに分類できる。 ① 樹脂中に溶解させる物理発泡剤濃度を上昇させ気泡核生成量を増加させる。 ② ナノスケールの気泡核剤(ナノクレイ、カーボンナノチューブなど)を添加し、 比表面積を上げ気泡核生成サイト数を増加させる。 ③ 発泡温度の低温化による発泡時の樹脂粘度の上昇ならびに樹脂の改質あるいは添加 剤の添加による増粘効果により気泡成長の抑制ならびに破泡の抑制し、気泡の粗大化 を防ぐ。 ④ 結晶性樹脂の発泡の際、結晶を発泡核剤として利用する。結晶を微細化させ気泡核生 成サイト数を増加させる(②とは異なり、溶融状態では結晶が存在せず、均質液体で 流動性が高い。冷却時に相分離で生成する結晶核を発泡に利用する)。 ⑤ 高分子共重合体あるいはブレンドの相分離構造を鋳型として、分散相に選択的に気泡 を発生させ、分散相のサイズの気泡サイズを形成し微細化する。 ①の発泡剤濃度の上昇による微細化は、物理発泡剤の溶解時の圧力と温度の調整により 行われる。濃度が増加するに伴い、減圧による発泡時の過飽和度は高くなる。二酸化炭素の 樹脂への溶解度は、温度が低いほど高くなる。これらの溶解度特性を活かして、低温で樹脂 に物理発泡剤を溶解させた後に昇温し、気泡核生成数を増加させ微細発泡体を得る手法も 用いられている。 ②の添加剤を用いた微細化技術は、発泡核剤の添加による不均質気泡核生成速度の上昇 効果を活かしたものである。従来から、発泡核剤としてタルクやガラス繊維が使用され、不 均質核生成の促進により気泡が微細化されることが明らかになっている[54-56]。ナノスケ ールの添加剤は比表面積が大きいため気泡核剤としての性能が高い。これまで、ナノクレイ [57-59]、ナノシリカ[60]、カーボンナノチューブ[61]等のナノコンポジットを用い、不均質 核生成を促進することで、気泡微細化を達成した研究が報告されている。岡本ら[58, 59]は PP/ナノクレイコンポジットを二酸化炭素でバッチ発泡し、ナノクレイを気泡核剤として使 用することで気泡を 33 µm まで微細化している。また、Zhai ら[60]は PC/ナノシリカコンポ ジット系に対して CO2を用いたバッチ発泡を行い、ナノシリカ添加量の増加と共に不均質 核生成により気泡が微細化され、また、気泡径分布が狭くなることを報告している。 ③ の手法は、樹脂の改質やブレンドにより樹脂の粘弾性を調整し気泡成長を抑え、気泡 を微細な状態で冷却固定化して微細発泡体を得ようとするものである[61-63]。合一による 気泡の粗大化を防ぐ意味では、樹脂の溶融張力あるいは樹脂の歪み硬化性の影響が大きい。 Park ら[64]は直鎖 PP、架橋 PP に対して、押出発泡成形を行い、架橋 PP では溶融張力の上 昇による合一の抑制によりその気泡構造が均一化・発泡性が向上することを明らかにして

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10 いる。溶融張力が低い樹脂や歪み硬化特性を有さない樹脂の場合は、気泡合一や破泡が生じ やすく、一般的に発泡性に乏しいとされる。例えば、直鎖 PP やポリ乳酸(Polylactide、 Poly(lactic acid)、PLA)の場合、その溶融張力の低さから、高空隙率発泡体の作製は難しいと されている[65, 66]。高溶融張力化(歪み硬化性の発現)のための樹脂改質として、架橋・分 岐鎖導入[67-70]やコンポジット化[71, 72]によるものが報告されている。Nam ら[67]は、過酸 化物系架橋剤を用いて分岐鎖構造を有する PP 樹脂を作製し、これを押出発泡して発泡体を 作製した。その結果、分岐鎖構造を有する場合、増粘効果と歪み硬化特性により、気泡連通 化が抑制され、均一な気泡構造が得られたと報告している。コンポジット化による伸長粘度 の上昇に関しては、Zhai[69]らより多層カーボンナノチューブとポリエチレン-co-オクタン のコンポジット系の発泡が報告されている。Zhai らはオクタン鎖とカーボンナノチューブ の親和性の高さより、絡み合いが増強し歪み硬化特性が表れると共に、合一が抑制され、こ の効果により気泡径の均一化・気泡微細化効果が表れたと報告している。 ④の結晶微細化は、気泡の核生成の促進を狙ったものである。結晶性樹脂の場合、樹脂の 発泡はアモルファス部分で進行し、剛性が高い結晶部分は発泡しにくい。そのため、過度に 結晶化度が高い状態では、樹脂は殆ど発泡しないことが知られている[70, 71]。一方で、発泡 途中で結晶化が進行する場合、結晶部分ではガスの溶解度が低く、結晶化の進行と共に周囲 のアモルファス部分にガスが流出する。そのため、結晶近傍ではガス濃度が局所的に高くな り、加えて結晶界面から不均質核生成が進行することで結晶は気泡核剤として機能する[72]。 宮本ら[73]は、PP にソルビトール系結晶核剤を用いることで結晶を微細化させ、気泡径を 20 µm ほどに微細化させると共に最大空隙率 80%の発泡体を作製した。また、近年では、結 晶の微細構造を活かした微細発泡技術が報告されている[74]。Bao ら[69]は射出成形で作製 した iPP の結晶部分の一部を溶解させ、CO2を用いてバッチ発泡することで、100-200 nm 程 度の気泡径を有する発泡体を作製している。彼らは、スキン層付近では延伸によりシシ-ケ バブ構造が形成され、その一部が溶融した部分から発泡が進行していることを報告してい る。一方、コア層では球晶が形成され、その中心のアモルファス部分が溶融した部位から発 泡が進行していることを明らかにしている。 ⑤のテンプレート法は、コポリマーやブレンド系の微細な相分離構造を用い、その微細空 間中に気泡を局在化させることで、マイクロ・ナノセルラー発泡を実現するという手法であ る[75, 76]。Costeux ら[75]は、二酸化炭素と親和性が非常に高い EMA などの骨格と MMA の コポリマー系を用いてバッチ発泡を行い、二酸化炭素と親和性が高い部分を局所的に発泡 させることで 300-1200 nm のナノセルラー発泡体を作製している。 以上のように発泡体の気泡微細化技術の進展により、近年ではマイクロセルラーのみな らずナノセルラー発泡体の作製が進んでいる。一方で、現状でも連続発泡プロセスでは気泡 の微細化は難しく、マイクロオーダーの発泡体が主流である。加えて、発泡倍率(空隙率)の 上昇と気泡微細化を両立することは現状でも技術的に困難である。近年、Okolieocha ら[15] は、現状でのバッチ発泡、押出発泡、発泡射出成形における微細発泡技術についてレビュー

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第1 章 緒論 11 を行い、現状報告されている気泡径・発泡倍率のデータをまとめている。彼らは、いずれの 発泡プロセスにおいても気泡微細化を進めると共に発泡倍率は低下することを報告してお り、高い発泡倍率 (高い空隙率)を持った微細発泡体の製造技術は未だに確立されていない ことを示している。

1. 4 本研究の目的と各章の概要

現状では、発泡手法や樹脂物性の改善による気泡微細化技術が進み、マイクロセルラー発 泡のみならず、ナノセルラー発泡体の製造が取り組まれている。一方で、これら多くの技術 の進展・研究があるにもかかわらず、依然として気泡径の微細化を進めると発泡倍率が上昇 しないという問題が生じている[15]。例えば発泡射出成形法で報告されている最大の発泡倍 率は 4 倍で、気泡径は 15 μm 程度であり、発泡射出のみならずバッチ発泡や押出発泡でも 孔径の微細化を進めると発泡倍率が低下することが報告されている[15]。また、現状作成さ れているナノセルラー発泡体の殆どはバッチ発泡系であり、特に発泡射出成形など連続プ ロセスにおいてはマイクロオーダーの発泡体が主流である[15]。以上のように、高発泡倍率 条件下での連続発泡プロセスにおいての気泡微細化技術は未だに発展途中であり、これを 達成する技術の確立が求められている。本研究では、特に発泡体製造分野において汎用性が 高く、生産性に優れる発泡射出成形、その中でも気泡微細化・高空隙率化に有用な手法であ るコアバック式発泡射出成形法に焦点を当て、繊維材料添加剤を用いて樹脂物性を改質す ることにより、高空隙率条件下での気泡微細化に取り組む。 繊維材料と樹脂のコンポジット系の発泡については、ガラス繊維[77]、木材やジュートな どの植物繊維[78, 79]、セルロースナノコンポジット[80, 81]、ナイロン繊維[82]、アラミド繊 維[83]、カーボンナノファイバー[84]などが報告されている。これらの研究を 1. 3 章で述べ た気泡微細化の手法に従ってまとめると、繊維材料を使用する効果としては以下の効果が 期待される。 まず、第 1 に粘弾性特性の向上効果である。特に繊維材料のような 3 次元的なネットワ ーク構造を形成する添加剤は、その樹脂の分子鎖の絡み合いを増強することにより、増粘効 果を有することが知られている。また、これらの構造は伸長粘度の上昇にも有効であると考 えられる。Rizivi ら[85]は、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene, PTFE)を押 出成形中にミクロフィブリル化し、これを PP と混錬することで、PP/PTFE コンポジット系 の発泡を行っている。この繊維構造により、溶融張力が上昇し、破泡の抑制により発泡性の 向上並びに、気泡の微細化に成功している。以上のように、繊維材料を発泡に用いる場合気 泡成長の抑制、並びに溶融張力の上昇により、気泡合一・破泡抑制する効果が高いと考えら れる。また、特に溶融張力が低く、破泡が生じやすい樹脂系においてその効果が大きく表れ るものと期待される。 第 2 に結晶性の改善、不均質核生成の促進による気泡核生成促進効果である。結晶化の促

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12 進、結晶の微細化は、気泡核生成の促進効果が高く、気泡微細化に有力な手段である。不純 物を添加した場合、特に結晶生成においてもその界面から核生成が進行することにより結 晶の核生成が促進する。また、これら界面では気泡核生成自体が不均質核生成により促進さ れる。特に繊維材料の場合、そのアスペクト比が大きく、比表面積が高いことから、結晶化 の促進効果が高いことが期待され、気泡微細化効果が大きく表れることが期待される。 第 3 に、樹脂材料の補強効果である。繊維材料添加剤は樹脂強度を向上させる効果を有 し、発泡による強度低下の抑制に効果が高いと期待される。繊維材料と樹脂のコンポジット 系としては、前述のガラス繊維[86, 87]、炭素繊維[88, 89]、ナイロン・PET 繊維[90]、セルロ ースナノファイバをはじめとする植物由来繊維[91-93]が未発泡の樹脂に対して使用されて おり、それぞれ繊維材料の補強効果により樹脂の機械的強度を上昇している。 以上のように、繊維材料は物性改質による気泡微細化や高空隙率化に効果が高い添加剤 であると考えられるが、特にコアバック法を用いた発泡射出成形においては、その気泡構造 や空隙率、成形条件に与える影響について未だに包括的な研究は行われていない。本研究で は、繊維材料を用いた樹脂物性の改善により、高空隙率条件下での気泡微細化を達成するこ とを目的とする。これら発泡体の気泡構造、並びに発泡倍率・発泡温度等の条件に、樹脂特 性と繊維材料の特性が与える影響を、特に粘弾性特性・結晶化特性の観点から明らかにし、 繊維材料を用いた発泡体の気泡構造制御技術の確立を目指す。以下に、各章の概要について 述べる。 2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 ポリ乳酸材料を対象として、コアバック式発泡射出成形法により、微細発泡体を作製する。 ポリ乳酸は、結晶化速度が低く歪み硬化性を持たないため、気泡の合一が生じやすい樹脂と して知られている。このような合一が生じやすい樹脂において、発泡条件が気泡構造に与え る影響を明らかにすると共に、気泡壁の破断・合一挙動に与える影響を実験結果とシミュレ ーションの双方から考察し、繊維材料を添加しない系のコアバック式発泡射出成形法にお ける気泡合一挙動が気泡構造に与える影響を明らかにしている。 3 章 ポリ乳酸/PTFE コンポジットの発泡射出成形 2 章で検討したポリ乳酸材料に対して、PTFE を添加しコアバック式発泡射出成形法によ り、微細発泡体を作製する。ポリ乳酸は結晶化速度が遅い樹脂であるため、本系においては、 特に粘弾性特性が気泡構造と成形可能な条件範囲に対して支配的と考えられる。本章では PTFE が気泡構造と成形可能な条件範囲に与える影響を、特に粘弾性特性と各発泡過程にお ける挙動に着目して明らかにし、高空隙率化、気泡微細化を試みた。 4 章 iPP/PTFE コンポジットの発泡射出成形

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第1 章 緒論 13 PTFE が気泡構造・成形可能な条件範囲に与える影響を明らかにした。iPP は結晶化の進行 がポリ乳酸に比べて非常に速いため、結晶化特性が気泡構造・成形条件に与える影響が大き いと考えられる。本章では、前章で主に議論した粘弾性特性、不均質核生成の効果に加え、 結晶化特性の影響についても議論している。 5 章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNF コンポジットの発泡射出成形

本 章 で は 、 歪 み 硬 化 特 性 を 有 す る 長 鎖 分 岐 ポ リ プ ロ ピ レ ン (Long chain branched polypropylene, LCBPP)を対象として、これに樹脂補強効果が高いセルロースナノファイバ (Cellulose nanofiber, CNF)を添加し、コアバック式発泡射出成形法を用いて発泡体を作製し た。LCBPP 自身の持つ歪み硬化性並びに樹脂への補強効果が高い CNF を用いることによ り、高空隙率条件下においても強度が高く、従来の発泡体製造分野で問題とされていた発泡 による強度低下を抑制することを目的とした。これらの実験を通して、CNF が結晶化並び に粘弾性特性に与える影響を明らかにし、粘弾性特性、結晶性、各発泡過程での発泡挙動の 観点から CNF が気泡構造並びに強度に与える影響を明らかにした。また、直鎖 iPP 発泡体 との気泡構造の比較より、LCBPP の長鎖分岐構造が気泡構造に与える影響を明らかにした。

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(22)

第2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形

17

第 2 章

(23)

18

2. 1 緒言

前章 1. 4 節で述べた通り、繊維構造を有する添加剤は、複素粘度の上昇効果や伸長粘度の 改善により合一や破泡の抑制に効果的であると期待される。また、コアバック式発泡射出成 形法は発泡時の温度や圧力、減圧速度などの成形条件を厳密に制御することが可能である ため、連続発泡プロセスの中でも気泡の微細化・合一や破泡の制御による高空隙率化に有用 な手法であるといえる。本章では、歪み硬化性を持たないため合一が生じやすいポリ乳酸樹 脂を用いて、繊維材料を使用しない場合、コアバック式射出発泡成形法における成形条件が 気泡構造に与える影響を明らかにすることを目的とした。とりわけ、成形条件が気泡壁の破 断、合一挙動に与える影響について検討し、高倍率化に必要な最適な操作条件について明ら かにした。 ポリ乳酸は高い環境適合性を有する最もよく知られたバイオポリマーであり、従来汎用 的に使用されてきた石油由来プラスチックの代替材料として包装、日用品等に利用されて いる[1-3]。また、生体適合性を有することから医療用途への展開も検討されている[4-7]。工 業的にも学術的にも、環境負荷の低減につながる生分解性プラスチックの活用は重要であ り、発泡成形を含むポリ乳酸の成形加工に関する研究が行われてきた。ポリ乳酸の発泡成形 は、主に材料消費を低減し、ポリ乳酸の抱えるコストの問題の解消を目的としている。また、 細胞培養の足場材料への応用研究も行われており、本用途については気泡構造を連通化す ることが求められている[4-7]。しかし、ポリ乳酸は結晶化速度が遅く溶融張力が低いことか ら、発泡性が低く発泡成形時に気泡の合一・破泡が生じ易い樹脂として知られている[8, 9]。 そのため、均質な気泡構造を有するポリ乳酸発泡体の製造は難しく、成形条件範囲も狭い [9]。既往の研究では、主にポリ乳酸の改質により、結晶性と溶融張力の改善が試みられてき た[9-17]。Grancher ら[10]はポリ乳酸の L 体と D 体の比率を変更することで、結晶化速度を 制御し、結晶化度や融点の向上に成功した。Corre ら[11]は、高分子鎖の延長剤を用いてポリ 乳酸の分子量を増加させることで複素粘度、伸長粘度、結晶性を改善した。彼らは分子量を 変更したポリ乳酸をバッチ発泡し、その気泡構造の観察結果から分子量が大きく、複素粘度 と伸長粘度が高いポリ乳酸樹脂ほど気泡が微細化されることを報告している。Pilla ら[12]は 分岐鎖構造を導入したポリ乳酸を発泡射出成形し、直鎖ポリ乳酸と比較して気泡が微細化 されることを明らかにした。彼らは、この結果は分岐鎖構造によりポリ乳酸の溶融張力が増 加し、気泡合一が抑制されたことによると考察している。このほか高分子鎖延長剤を用いた 溶融張力の改善は Mihai ら[13]、Di ら[14]により報告されており、それぞれ溶融張力の改善、 歪み硬化性の付与により発泡倍率の向上、気泡の微細化を達成している。また、Di ら[15]は ポリ乳酸にナノクレイを添加することにより、粘弾性と結晶性を向上させ、発泡性の改善に 成功している。 一方、ポリ乳酸の発泡成形法の観点からも発泡性の改善が取り組まれており、バッチ発泡 [11、18]、押出発泡 [19、20]、ビーズ発泡 [21]、発泡射出成形 [22-24] など様々な発泡手法

(24)

第2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 19 での製造が試みられている。これらの発泡手法の中でも発泡射出成形は樹脂に高背圧を印 可してマイクロセルラー発泡体を製造する手法であり、成形条件の制御により気泡構造の 制御が容易という利点を持つことから合一が生じやすいポリ乳酸に適した発泡手法といえ る。しかし、ポリ乳酸単体で得られる発泡体の空隙率は約 5-15 %と報告されており[15] 高 空隙率発泡体を作製することは難しいとされている。この問題の解決のため、発泡時に金型 を開く (コアバック) 操作を加えた発泡射出成形法をポリ乳酸発泡に応用する研究が報告 されている[16, 17]。Ameli [16]らはポリ乳酸/ナノクレイコンポジットに対して高背圧発泡射 出成形法にコアバック操作を加えて発泡させることで、最小気泡径 38 µm、空隙率 65%の ポリ乳酸コンポジット発泡体を作製した。彼らはポリ乳酸/ナノコンポジット系について、 ショートショット法を用いた検討も行っており[16]、コアバック法と比較するとショートシ ョット法を用いた場合の最大空隙率は 30 %と報告されている。これらの研究においては、 タルクやクレイといった添加剤が気泡核剤として機能していることが微細で空隙率の高い ポリ乳酸発泡体を製造する上で重要であることが示唆されている。 以上のように、ポリ乳酸の発泡の研究においてはポリ乳酸の発泡性を向上させることに 主眼が置かれ、主に材料の改質と発泡手法の改良について研究が行われている。種々の発泡 成形法の中でも、コアバック式発泡射出成形法は、金型キャビティ内での気泡核生成を誘起 するタイミングを、射出からコアバック操作を行うまでの時間により正確に制御すること が可能である。そのため、発泡温度や圧力をはじめとした発泡条件の調整が可能であり、ポ リ乳酸のように合一が生じやすいために発泡可能な条件範囲が狭い樹脂の場合でも、より 微細な気泡構造を有する発泡体の作製が可能であると期待される。一方で、ポリ乳酸の発泡 成形においては気泡壁の破断や合一過程が気泡構造に与える影響が大きいため、成形条件 がこれらの挙動に与える影響の検討は微細発泡成形の上で重要である。 本章では、成形条件を変更してコアバック式発泡射出成形法によりポリ乳酸を発泡成形 し、得られた発泡体の気泡構造を気泡径と連通性、発泡倍率により評価し、コアバック式発 泡射出成形法を用いたポリ乳酸発泡体の微細化、高空隙率化について粘弾性特性の観点か ら検討した。また、以上の結果より、歪み硬化性を持たない樹脂をコアバック式発泡射出成 形法した際、気泡壁の破断、気泡合一が気泡構造に与える影響を実験・シミュレーション双 方から考察した。

2. 2 実験方法

2. 2. 1 使用した試料 ポリ乳酸は図2-1の化学式で表されるポリエステル系の熱可塑性樹脂であり、繰り返し単 位中にヒドロキシ基とカルボキシ基を有する。これらが縮合重合し、エステル結合を形成す ることで高分子化する。ポリ乳酸は吸水性を有し、多湿で高温の環境で長時間放置した場合 は、加水分解により樹脂が劣化し特性が低下する。本研究ではこれを考慮して、すべての成

(25)

20 形・実験に50℃に設定した温風乾燥機で1日間乾燥させたペレット並びにサンプルを用いた。 図2-1中のアスタリスクは不斉炭素原子を表しており、ポリ乳酸はそれぞれL体とD体が存在 する。そのため、L体とD体の比率により主に熱的・結晶化の特性が変化する。例えばL体 100%のポリ乳酸(PLLA)の場合、同種同士で結晶化の際に阻害が起こらないため、結晶性は 高くなり耐熱性が上がる。本研究では、母材となる樹脂には、メルトフローレート(Melt flow rate, MFR)が 3 g/10 min、D体を1.5 %を含むポリ乳酸樹脂(TP-4000、ユニチカ)を使用した。 図2-2 にペレットの外観写真を示す。発泡成形においては、純度99.7 %の窒素ガス(泉産業) を発泡剤として使用した。 図 2-1 ポリ乳酸の繰り返し単位の化学式 図 2-2 実験に使用したポリ乳酸ペレット 2. 2. 2 発泡方法 (コアバック式発泡射出成形法) 図 2-3 に本研究で使用した 35 トン型締め力射出成形機(J35EL III-F、MuCell®、日本製鋼 所)、並びに高圧ガス供給装置 (SCF system SII TRJ-10-A-MPD、Trexel Inc.) の概略図と外観 写真を示す。ここでは、窒素ガスを発泡剤としたコアバック式発泡射出成形法によりポリ乳 酸発泡体を作製した。コアバック式発泡射出成形法では主に、① 樹脂の融解、② 高圧ガス の混錬・溶解、③ 射出、④ 保圧、⑤ コアバック操作(気泡核生成・成長、合一) ⑥ 冷 却による安定化、という 6 つの工程で発泡体を製造する。 ①の樹脂の融解工程では、射出成形機ホッパに樹脂ペレットを投入し、予め成形温度まで 昇温したシリンダ内で溶融させる。成形温度は融点やガラス転移温度の違いにより異なる ため、一般的に樹脂の種類、グレード、添加物などにより推奨される成形温度範囲が定めら れている。本グレードのポリ乳酸の結晶融点は165℃付近であり、成形温度は 180-220℃、 MFR が 3 g/ 10 min と低い(粘性の高い)グレードであったため、本実験においては 210℃ で成形を行った。

O

O

n

*

(26)

第2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 21 図 2-3 (a) 射出成形機並びに高圧ガス供給装置の概略図 図 2-3 (b) 射出成形機外観写真

Computer

Gas flow

N

2

Mold

Temperature and pressure sensor

Hopper

SCF

instrument

Core-back

金型

ホッパ

シリンダ

ガス供給部

(27)

22 図 2-3 (c) 射出成形機外観写真(ガス供給部分) ②の高圧ガスの混錬・溶解工程では溶融樹脂と SCF 供給装置で昇圧された高圧ガスを混 錬し、樹脂に物理発泡剤であるガスを溶解させる。供給されたガスは、シリンダ内のスクリ ュにより高圧・高せん断を掛けながら混錬され、溶融樹脂に溶解する。スクリュの回転によ って溶融樹脂はシリンダ先端部に送り出され、圧縮される。このとき、先端に送られた樹脂 の圧力によりスクリュは後退する。 ③の射出工程で、ガスが溶融した溶融樹脂を金型内に射出する。このとき、シリンダ内の 圧力が解放されるため、樹脂は発泡する。射出後、スクリュは樹脂に背圧を掛けながら回転・ 後退し、シリンダ先端部分に樹脂を送り出す(②の工程、次の射出の準備が行われる)。こ のとき、射出量はノズル径、射出速度、スクリュの後退位置(計量と呼ぶ) により決定さ れる。スクリュの前進により樹脂は射出される。主に設定された保圧切り替え位置に達した ところで射出は終了し、保圧の工程に切り替わる。 ④の保圧工程では、射出後、金型内樹脂に圧力を掛ける。射出された樹脂は、金型内で所 定の温度(時間)まで冷却される。保圧中、樹脂は金型内で冷却されるため、体積が収縮す る。この時、金型内樹脂に圧力を加えることで、金型内に不足分の樹脂を充填する。また、 ③ 射出の工程で発生した気泡を圧力の印可により消泡する。本成形手法では次に説明する コアバック操作において、樹脂が発泡するため、保圧を掛ける時間(保圧時間)を調節する ことにより発泡温度の調節および発泡時の樹脂粘弾性の調節が可能である。 ⑤ コアバック操作 (型開き操作)では一定の時間保圧を掛けた後に、急激に金型キャビ ティのコア側を開く。この操作により、金型内の樹脂は急減圧され、ガス溶解度が急激に低 下し、溶解したガスが相分離する。コアバック法では、その手法上、金型を開く方向に優先

(28)

第2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 23 的に気泡が成長するため、気泡壁がコアバック方向に延伸を受け、気泡はコアバック方向に 長軸を持つ楕円体となる。また、発泡射出成形法では、金型と接する部分は急速に冷却され、 樹脂粘弾性が急激に上昇することにより、発泡体表面にスキン層と呼ばれる未発泡層(発泡 しない層)が形成される。一方で、発泡体(樹脂)の中心に向かうに従い、冷却速度は低下 し、樹脂温度は上昇するため、スキン層近傍の気泡は微細になり、中心に向かうに従い気泡 径は増加する。発泡層の部分はスキン層に対してコア層と呼ばれる。 ⑥の冷却工程では、コアバック操作の完了後、所定の時間、金型内で樹脂(発泡体)を冷 却する。この過程において、発泡体外観並びに気泡構造が安定化される。射出成形において は成形中、樹脂は溶融状態にあり、金型内で徐々に冷却され、最終的には固化する。本研究 においては、発泡体構造を安定化させるために、ポリ乳酸のガラス転移温度 55℃以下の温 度である50℃に金型温度を設定した。また、冷却時間は 60 秒と設定した。 以上が発泡射出成形における各工程の概要である。すなわち、コアバック式発泡射出成形 法では、図 2-4 に示すように次の 4 つのプロセスで、樹脂が発泡する。 ① 発泡剤ガスのポリマーへの拡散・溶解 ② (昇温)減圧操作により熱力学的不安定状態を起こして気泡を発生させる気泡核生成 ③ 気泡の成長と合一(②と同時進行) ④ 冷却による固定化(安定化) 図 2-5 に実際に作製したポリ乳酸発泡体の外観写真を示す。金型はゲート径が 4.5 mm、 先端部分の寸法が幅 50 mm、長さ 70 mm、初期厚み 2 mm の箱型のものを使用した。図 2-6 はキャビティ内圧力・温度計測システム(Mold Marshalling System、双葉電子)を用いてポリ 乳酸発泡時の金型内の圧力・温度を計測した一例である。ポリ乳酸樹脂が金型内に射出され たとき、金型内の温度と圧力は急激に上昇する。射出後、金型内で樹脂は冷却されるため、 時間の経過と共に樹脂温度、圧力は低下する。図中の金型内の樹脂温度と圧力が急激に低下 した点は、コアバック操作を行った瞬間を表す。この急激な圧力低下により、物理発泡剤(窒 素ガス)の溶解度は急激に低下するため、過飽和状態となり気泡核生成が誘発される。また、 前述のとおり本実験系では、コアバック速度、すなわち金型の一部が開く速度とコアバック 距離(金型の一部が初期位置から移動した距離)を制御することで、減圧速度と発泡倍率を 調整することが可能である。通常、発泡倍率は、発泡体の嵩密度 ρfoamと発泡前の樹脂の密 度 ρsolidの比によって求められるが、コアバック式発泡射出成形では金型の形状上、コアバ ック方向にのみ発泡体が膨張していくため、本研究では発泡倍率 ER を次の 2-1 式のように 定義した。

𝐸𝑅 =

𝜌

foam

𝜌

solid

𝑑

open

𝑑

initial

=

𝑑

initial

+ 𝑑

coreback

𝑑

initial

(2-1)

(29)

24 ここで、dopen はコアバック後の金型厚み、すなわち、金型初期厚み dinitialとコアバック距離 dcorebackの和である。本研究では、コアバック速度を 20 mm/s で固定し、コアバック距離を 2、4、8 mm と変更することで作製可能な最大の発泡倍率を規定した。すなわち、本実験で は設定上の最大の発泡倍率が 2 倍、3 倍、5 倍の発泡体を作製した。 図 2-6 の温度プロファイルに示すように、コアバック操作を行った瞬間に発泡が開始する ため、射出からコアバックまでの時間を調節することにより、発泡温度を制御することが可 能である。この金型へ樹脂を射出してからコアバック操作を行うまでの時間を保圧時間と 規定する。本研究では保圧時間(発泡温度)を 3 s から 8 s の間で調節し、発泡温度を変更 してポリ乳酸発泡体を作製した。表 2-1 に発泡射出成形時の成形条件を示す。本射出成形機 のシリンダは 7 か所に分けられ、それぞれの個所の温度を先端からホッパにかけて 210、 210、210、210、210、200、190 °C と設定した。 図 2-4 コアバック式射出成形法における気泡生成、成長過程の模式図

(30)

第2 章 ポリ乳酸の発泡射出成形 25 図 2-5 (a) 射出成形品の外観写真、(b) 金型センサーの位置 図 2-6 射出成形プロセスにおける金型キャビティ内の温度・圧力の経時変化の一例

0

2

4

6

8

10

50

100

150

200

250

0

20

40

60

80

100

Time [s]

T

e

m

pe

ra

ture

i

n

m

ol

d c

avi

ty [

°C]

P

re

ss

ure

[M

P

a

]

Temperature Pressure

(a)

(b)

表 3-2 に DSC を用いた低冷却速度領域での測定条件を示す。温度履歴は以下のとおりで ある:サンプルを初期温度 30℃から 10℃/s で 200℃まで昇温し、 5 分間保持した。サンプル を完全に融解させた後、10℃/min で冷却し、冷却過程における DSC 曲線を測定した。  表 3-3 に高速 DSC を用いた際の測定条件(温度履歴)を示す。図 3-1 は、温度履歴を時 間に対してプロットしたものである:測定前にサンプルを 200℃で予熱した後、初期温度 30℃から 100℃/s で 200℃
図  3-7 (c) 172℃でのポリ乳酸/PTFE (PTFE 1.5 wt.%)の伸長粘度  (d)  歪み硬化度の真歪み依 存性
図 3-7 (g)  ポリ乳酸/PTFE コンポジットの SSH の歪み速度依存性
図 3-11 (a)  ポリ乳酸単体  (b)  ポリ乳酸/PTFE  (PTFE 重量分率 3.0  wt.%)の可視化バッチ発泡
+7

参照

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