100 nm
50000 倍
50000 倍 100000 倍
50 nm
100 nm
134
CNF の添加が気泡核生成並びに気泡成長に与える影響を明らかにするため、LCBPP、
LCBPP/CNFコンポジットのバッチ発泡挙動を可視化した。図5-13 (a) に発泡温度180℃の
条件下で発泡させた際の映像より切り出した気泡の画像を示す。CNF の添加により、生成 する気泡数が増加すると共に気泡径が小さくなる傾向が得られた。図 5-13 (b) にこれらの 画像より算出した単位面積当たりの気泡数の経時変化を示す。CNF の添加により気泡が生 成するまでに要する時間が短くなり、また生成する気泡数、気泡生成速度が増加した。これ は不均質核生成の促進に起因する。図5-13 (c) に平均気泡成長速度を示す。CNFを添加し た場合、気泡の核生成が支配的となって溶存ガスを消費したことにより、相対的に気泡成長 速度が低下し、気泡成長速度が低下した。
図5-14 (a)に結晶化開始(ヒータ温度154℃)より1分後(ヒータ温度152℃)でLCBPP/CNF
コンポジットをバッチ発泡した際の映像より切り出した画像を示す。また図 5-14 (b) に単 位面積当たりの気泡数の経時変化を示す。結晶が存在する場合、生成した気泡数が増加する 傾向が得られた。前述のとおり発泡中に結晶化が進行する場合、結晶部分の物理発泡剤の溶 解度が低下し、結晶周辺にガスが吐き出されること、また不均質核生成により、結晶周りか ら発泡が促進されることが知られている。CNF を添加した場合、結晶化の進行により結晶 周りから気泡の核生成が促進されたことにより、生成した気泡数が増加したと考えられる。
図5-13 (a) LCBPP、LCBPP/CNFコンポジットの180℃でのバッチ発泡挙動
200 µm
200 µm 200 µm
200 µm 200 µm 200 µm
Before foaming 2.10 s 2.30 s
LCB PP alon e C NF 5 wt .%
第5章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNFナノコンポジットの発泡射出成形
135
図5-13 (b) 180℃でのバッチ発泡時のLCBPP、LCBPP/CNFコンポジットの単位面積当たり
の気泡数の経時変化 (c) 平均気泡成長速度
図5-14 (a) LCBPP、LCBPP/CNFコンポジットの152℃でのバッチ発泡挙動
200 µm
200 µm 200 µm
200 ℃ 152 ℃ (1 36 ℃ )
100 µm 100 µm 100 µm
0.80 s 0.90 s
2.10 s 2.30 s
Before foaming Before foaming
1 1.5 2 2.5 3
0 10000 20000 30000 40000 50000
Time after decompression [s]
T ot a l num be r of c e ll s pe r uni t a re a [c m -2]
LCBPP aloneCNF 5 wt.%
(b)
0 1 2 3
0 2000 4000 6000 8000 10000
C e ll gro w th ra te [ m /s ]
Weight fraction of CNF [wt.%]
0 5
(c)
136
図5-14 (b) 発泡温度180℃、152℃でLCBPP/CNFコンポジットを発泡させた際の単位面積
当たりの総気泡数の経時変化
5. 3. 2 低発泡倍率のLCBPP/CNF発泡体の気泡構造と力学的強度
図5-15に発泡温度を変更し、発泡倍率2倍の条件で作製したiPP発泡体、LCBPP発泡体
並びにLCBPP/CNF発泡体のコアバック方向に垂直な断面SEM画像を示す。また、これら
のSEM画像から算出した平均気泡径を図5-16 (a)に、気泡個数密度を図5-16 (b)に示す。iPP
とLCBPPを比較すると、LCBPP発泡体の気泡径はいずれの発泡温度でも低くなる傾向が得
られた。図5-12に示した通り、LCBPPの形成する結晶はiPPと比較して微細であり、比表 面積が大きいことから気泡核剤としての効果が高い。加えて、歪み硬化性に起因して気泡合 一が抑制されるために、気泡径が iPP と比較して低下したと考えられる。LCBPP と
LCBPP/CNFコンポジットを比較すると、CNFの添加により気泡径が低下し、気泡個数密度
が増加する傾向が得られた。これは気泡成長速度の低下効果と、前述の可視化バッチ発泡で 示したとおり気泡核生成の促進効果に起因する。図5-17に発泡倍率2倍の発泡体のOCCの 発泡温度依存性を示す。CNFの添加により、OCC自体は上昇する傾向が得られた。これは
LCBPPとCNFの接着性、並びに添加剤界面との応力集中によるものと考えられる。本研究
で用いたCNFはヒドロキシ基の一部を疎水変性することにより分散性を確保している材料 であるが、CNF自体は親水性の材料であるためLCBPPとの接着性は高くないものと考えら れる。また、CNFはPPと比較して弾性率や引張強度が高く[33-37]、気泡壁に延伸が加わっ た際に歪みにくい。これら延伸時の歪みの差により、気泡壁の一部にボイドが形成され、
OCCが上昇したと考えられる。
図5-18 (a)に発泡倍率2倍のLCBPP/CNF発泡体の比強度を示す。CNFの添加により、比
強度は高水準になる傾向が得られた。CNF の添加により気泡壁が補強されたことに加え、
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0
1 2 3 4 [10
5] 5
200°C
152°C (136°C)
Time after decompression [s]
T ot a l num be r of c e ll s pe r u ni t a re a [c m
-2]
第5章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNFナノコンポジットの発泡射出成形
137
気泡が微細化され、気泡壁にかかる応力が分散されたことにより、比強度が上昇した。図
5-18 (b) に発泡倍率2倍での引張破断伸びを示す。CNFの添加により引張破断伸びは低下す
る傾向が得られた。これは、CNFの添加により樹脂の延伸性が低下したことに起因する。
図 5-15 発泡倍率2倍の条件で作成したLCBPP、LCBPP/CNF発泡体の断面SEM画像
図 5-16 発泡倍率2倍の条件で作成したiPP発泡体、LCBPP、LCBPP/CNF発泡体の断面SEM 画像より計算した (a) 平均気泡径 (b) 気泡個数密度
50 µm
50 µm
102
oC 106
oC
50 µm
LCBPP
alone
50 µm
LCBPP
/CNF 5 wt.%
110
oC
50 µm 50 µm
90 100 110 120 130 10
610
710
810
910
10LCBPP alone CNF 5 wt.%
iPP alone
Foaming temperature [°C]
Ce ll n um be r d e ns it y [c m
-3]
90 100 110 120 130 0
20 40 60 80
Foaming temperature [°C]
Ce ll di a m e te r [ m]
LCBPP alone CNF 5 wt.%iPP alone
(b)
90 100 110 120 130 0
20 40 60 80
Foaming temperature [°C]
Ce ll di a m e te r [ m]
LCBPP alone CNF 5 wt.%iPP alone
90 100 110 120 130 0
20 40 60 80
Foaming temperature [°C]
Ce ll di a m e te r [ m]
LCBPP alone CNF 5 wt.%iPP alone
(a)
138
図5-17 発泡倍率 2倍の条件で作成した LCBPP、LCBPP/CNF発泡体の OCCの発泡温度依
存性
図5-18 発泡倍率2倍の条件で作製したLCBPP、LCBPP/CNF発泡体の(a) 比強度 (b) 破断
伸び
1.8 1.9 2 2.1 2.2 20
30 40 50
LCBPP alone CNF 5 wt.%
Expansion ratio [-]
S pe c if ic s tr e ngt h [ M P a/ (g c m
-3)]
1.8 1.9 2 2.1 2.2 20
30 40 50
LCBPP alone CNF 5 wt.%
Expansion ratio [-]
S pe c if ic s tr e ngt h [ M P a/ (g c m
-3)] (a)
90 100 110 120 130 0
5 10 15 20 25
Foaming temperature [°C]
O pe n c e ll c on te nt [%]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
1.8 1.9 2 2.1 2.2 0
200 400 600
Expansion ratio [-]
Bre a ki ng e longa ti on [m m ]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
(b)
1.8 1.9 2 2.1 2.2 0
200 400 600
Expansion ratio [-]
Bre a ki ng e longa ti on [m m ]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
1.8 1.9 2 2.1 2.2 20
30 40 50
LCBPP alone CNF 5 wt.%
Expansion ratio [-]
S pe c if ic s tr e ngt h [ M P a/ (g c m
-3)]
第5章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNFナノコンポジットの発泡射出成形
139
5. 3. 3 高発泡倍率のLCBPP/CNF発泡体の気泡構造と力学的強度
図5-19に、発泡温度を変更して作製した発泡倍率 10倍のiPP、LCBPP、LCBPP/CNF発 泡体の、コアバック方向に対して垂直な断面のSEM画像を示す。iPPでは発泡倍率10倍の 条件ではフィブリル構造を形成した。一方、LCBPP、LCBPP/CNFコンポジットでは歪み硬 化性に起因して、気泡壁の延伸が抑制されたことによりセル構造が形成された。図5-20 (a) に発泡倍率10倍の発泡体の気泡径、図5-20 (b) に気泡個数密度を示す。iPP発泡体はフィ ブリル構造を形成したため、気泡径、気泡個数密度の測定はできなかった。LCBPP と
LCBPP/CNFを比較すると、CNFの添加により高空隙率条件でも気泡が微細化される結果と
なった。図5-21 に発泡倍率約10倍の条件でのLCBPP、LCBPP/CNF発泡体のOCCを示す。
発泡倍率2倍の条件と比較すると、いずれの条件でもOCCは上昇し、コアバック距離の増 大により気泡壁にかかる延伸が増大したことに対応する結果が得られた。また、発泡倍率10 倍の条件でも2倍の条件と同様にCNFの添加により連通性が上昇する結果となった。
図5-22 (a), (b)に、発泡温度100℃で作製した発泡倍率10倍のLCBPP、LCBPP/CNF発泡
体の応力-歪み線図の一例を示す。いずれのサンプルでも歪みに対して応力が線形に上昇す る弾性領域が表れたのち、応力が歪みにほぼ依存しないプラトー領域が表れた。圧縮荷重を 開放した後(測定後)の発泡体サンプルにおいて、歪みが回復しなかったことから、このプ ラトー領域は気泡壁の破壊、塑性変形により荷重が吸収されたことにより生じたものと考 えられる。図5-22 (c) にこれらの応力-歪み線図より得られた圧縮弾性率を示す。CNFの添 加により、圧縮弾性率が上昇する結果が得られた。これは、繊維状構造を持つCNFを添加 したことにより、樹脂が補強された結果を示している。図5-22 (d) に降伏応力を相対密度に 対してプロットした結果を示す。いずれの相対密度でも降伏応力が上昇した。これは、CNF の添加により気泡壁が補強され、気泡壁の強度が向上したことに加え、気泡が微細化され応 力が分散したことに起因すると考えられる。
気泡構造の影響を除外し、CNF の気泡壁への補強効果を主体的に明らかにするため、表 5-2に示す条件で同程度の気泡構造を有するLCBPP、LCBPP/CNF発泡体を作製した。図 5-23にこれらの発泡体の垂直断面SEM画像を示す。平均気泡径は双方、約80 µmであり、本 条件ではほぼ同程度の気泡径を有する発泡体となった。これは、CNF 添加により、樹脂圧 が上昇し、LCBPP/CNFコンポジットでは溶存ガス量が低下したことに起因する。前述のと おり、溶存ガス量が低下した場合、気泡核生成速度が低下するため、気泡径が増大する傾向 がある。その結果、LCBPP/CNFコンポジットにおいても発泡体の気泡径が増大し、結果的 に同程度の気泡径を有する発泡体となった。図5-24にこれら発泡体の気泡径とOCCを測定 した結果を示す。OCCにおいてもLCBPP/CNF発泡体とLCBPP発泡体において同程度の数 値となり、気泡径と併せてほぼ同様な気泡構造を有する発泡体を作製することができた。
140
図5-19 発泡倍率10倍の条件で作製したLCBPP単体、LCBPP/CNFコンポジット、iPP発泡
体の断面SEM画像の比較 (発泡温度110℃)
図5-20 発泡倍率10倍の条件で作製したLCBPP単体、LCBPP/CNFコンポジットの(a) 気泡
径, (b) 気泡密度
50 µm
50 µm
iPP alone LCBPP alone
50 µm
Perpendicul ar
50 µm
Parall el
CNF 5 wt.%
50 µm 50 µm
100 110 120 130 10
20 30 40 50
Foaming temperature [°C]
Ce ll di a m e te r [ m]
LCBPP alone CNF 5 wt.%(a)
100 110 120 130 10
20 30 40 50
Foaming temperature [°C]
Ce ll di a m e te r [ m]
LCBPP alone CNF 5 wt.%100 110 120 130 10
710
810
9Foaming temperature [°C]
C e ll n u m b e r d e n si ty [ c m
-3]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
(b)
第5章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNFナノコンポジットの発泡射出成形
141
図5-21 発泡倍率10倍の条件で作製したOCCの発泡温度依存性
図5-22 発泡倍率10倍、発泡温度120℃の条件で作製したLCBPP、LCBPP/CNF発泡体の
圧縮試験における応力歪み線図 (a) 歪み0-100 % (b) 歪み0-40 %
100 110 120 130 50
60 70 80
O pe n c e ll c on te nt [%]
Foaming temperature [°C]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
0 20 40 60 80 100 0
1 2 3 4 5
Strain [%]
S tre ss [M P a ]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
(a)
0 10 20 30 40
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
Strain [%]
S tre ss [M P a ]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
(b)
142
図5-22 発泡倍率10倍の条件で作製したLCBPP単体、LCBPP/CNF発泡体の (c) 圧縮弾性
率 (d) 降伏応力
図5-23 発泡温度120℃で作製した(a) LCBPP、(b) LCBPP/CNF発泡体のコアバック方向に
垂直な断面のSEM画像(表5-3の発泡条件で作製)
0.13 0.135 0.14 0.145 0.1
0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
LCBPP alone CNF 5 wt.%
Relative density [-]
E la st ic m odu lus [M P a ]
0.13 0.135 0.14 0.145 0.3
0.4 0.5 0.6 0.7
Relative density [-]
Y ie ld s tre ss [M P a ]
LCBPP alone CNF 5 wt.%
(c) (d)
200 μm 200 μm
(a) (b)
第5章 長鎖分岐ポリプロピレン/CNFナノコンポジットの発泡射出成形
143
図5-24 発泡倍率10倍の条件で作製したLCBPP、LCBPP/CNF発泡体の (a) OCCの発泡温
度依存性、(b) 気泡径の発泡温度依存性。これらの発泡体は表5-3で示した射出条件で作製 した。
図 5-25に、表5-3で示した発泡射出成形条件で作製した LCBPP、LCBPP/CNF 発泡体の 圧縮試験結果を示す。いずれのサンプルに対しても、連通性の指標であるOCCが上昇する ことにより、降伏応力が低下した。連通気泡構造の場合、気泡壁として残る部分は骨格部分 のみであり、また、圧縮により気泡内部の気体が外部へと流出するため、圧縮挙動にはほぼ 気泡壁の骨格部分のみが関わる。一方、独立気泡構造の場合、気泡壁の薄膜部分と気体の圧 縮による抗力が加わるため、圧縮強度は上昇する[10]。OCCが上昇した場合、気泡壁の薄膜 部分と気体の圧縮による抗力の寄与が小さくなるため、降伏応力が低下したものと考えら れる。また、いずれの OCC に対しても、降伏応力が上昇し強度が上昇する結果となった。
本実験条件で作製したLCBPP/CNF発泡体の気泡径、並びにOCCはLCBPP発泡体とほぼ同 等であり、これら気泡構造は圧縮強度に影響をほぼ与えないと考えられる。すなわち、これ ら圧縮強度の上昇は、CNFにより母材強度が強化された結果と考えられる。CNFの添加に より、発泡体を構成する気泡壁の強度が上昇し、圧縮強度が発泡倍率10倍という高発泡倍 率条件下においても上昇した。
以上の結果より、CNF 添加による気泡生成速度の上昇と気泡成長速度の低下により、高 発泡倍率条件でも気泡が微細化された。また、気泡の微細化効果と気泡壁の補強効果により、
発泡体強度が著しく低下する高発泡倍率条件においても、強度の低下の抑制を達成した。
80 90 100 110 120 0
50 100 150
LCBPP alone CNF 5 wt.%