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年 3 月 31 日 格付け規準 金融機関 一般 : ノンバンク金融機関の格付け手法 日本における問い合わせ先

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*本稿は、2014 年 12 月 9 日付英語版「Criteria | Financial Institutions | General: Nonbank Financial Institutions Rating Methodology」を翻訳したものです。ただし、格付け規準リポートの和訳版では、付随的な 情報で現行格付け規準の理解に直接影響しない事項の一部(日本国外での問い合わせ先や当初公表後の 沿革など)は、原則として訳出を省略しています。それらについては英語版でご覧になれます。本和訳版は 2019 年 4 月 16 日に再公表したものです。

【編集注】本格付け規準の「ボックス 3 証券会社の RAC 比率の算出方法」は、2017 年 7 月 20 日付「Criteria | Financial Institutions | General:Risk-Adjusted Capital Framework Methodology」(和訳版:2017 年 9 月 8 日付「格付け規準|金融機関|一般:リスク調整後自己資本の枠組みによる評価の手法」)により取って代わ られました。 【訂正】 *段落 168 の中の記述に誤りがあり、本和訳版の該当箇所を 2018 年 12 月 10 日に以下のとおり訂正しまし た。具体的には、段落 168 の上から 2 段目の「適切(dequate)」を「適切(adequate)」に、上から 3 段目の「適 切(moderate)」を「やや弱い(moderate)」に、それぞれ訂正しました。この訂正による格付けへの影響はあり ません。 *表 21 の中の記述に誤りがあり、本和訳版の該当箇所を 2019 年 4 月 16 日に以下のとおり訂正しました。具 体的には、資金調達の「強い(very strong)」を「強い(strong)」に訂正しました。この訂正による格付けへの影 響はありません。

1. S&P グローバル・レーティング(以下「S&P」)は、ノンバンク金融機関(nonbank financial institutions、NBFI)に格付けを付与する手法を改訂する。本格付け規準は、2011 年 2 月 16 日付「Principles of Credit Ratings」(和訳版:2011 年 3 月 2 日付「一般格付け規準: 信用格付けの原則」)に関連する。 2. 本格付け規準は、ノンバンク金融機関の発行体格付けの元となる、事業体単独ベース の信用力評価(事業体向け)、または特別支援の可能性を考慮する前のグループベース の信用力評価(グループ向け)を導出するプロセスを明確にしている。本格付け規準は、 金融機関の格付けの出発点となる「アンカー値(anchor)」を決定する際に経済リスク と産業リスクの重要性を強調するなど、多くの面で S&P の銀行の格付け規準<2011 年

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2015 年 3 月 31 日

格付け規準|金融機関|一般:

ノンバンク金融機関の格付け手法

日本における問い合わせ先: 松尾俊宏、東京 電話 03-4550-8225 館野千鶴、東京 電話 03-4550-8578 大洞聖子、東京 電話 03-4550-8704

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 2 11 月 9 日付「Banks: Rating Methodology And Assumptions」(和訳版:2011 年 12 月 27 日 付「格付け規準|金融機関|銀行:銀行格付けの手法と想定」)>に基づいている。次 の段階として、事業ポジション、自己資本・レバレッジ・収益性、リスクポジション、 資金調達と流動性など、事業体に固有の要因によりアンカー値から調整し、「特別支援 の可能性を考慮する前のグループ信用力評価」または「スタンドアローン評価(SACP)」 を決定する<2010 年 10 月 1 日付「Stand-Alone Credit Profiles: One Component Of A Rating」 (和訳版:2011 年 2 月 15 日付「一般格付け規準:スタンドアローン評価は格付けの一 要素」)参照>。ある分析要素が、たとえば「弱い」のような低い評価となる場合には、 スタンドアローン評価や特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評価が制約さ れることがある。最後に、政府やグループ企業などによる特別支援や介入の可能性に関 する S&P の見解を反映させて、発行体格付けまたはグループ信用力評価(政府など外部 からの特別支援や介入の可能性の影響を織り込んだ評価)を決定する。本稿では、「ス タンドアローン評価」という用語を、スタンドアローン評価(特別支援の可能性を考慮 する前の事業体単独ベースの信用力評価)と、ノンバンク金融機関がグループを支配し ている場合には特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評価の両方を意味する ものとして使用する。本格付け規準の適用方法については、2018 年 3 月 22 日付ガイダ ンス「Guidance | Criteria | Financial Institutions | General: Assumptions For Liquidity Stress Test Analysis Under "Nonbank Financial Institutions Rating Methodology"」を参照されたい。

本格付け規準の適用範囲

3. 本格付け規準は、証券会社(securities firm)と金融業者(financial company)<「ノン バンク金融機関(NBFI)」と総称>に適用される。 4. 証券会社(またはブローカー)には、地域的な証券会社と独立系の証券会社が含まれ る。ノンバンク金融機関のブローカーには、リテールのブローカーと、ホールセールに 注力するブローカー・ディーラーが含まれ、これらは通常、組織階層内に銀行を持たな い、あるいは持っていたとしても、銀行が組織の事業プロフィールの主要な構成要素で はない。こうした証券会社は、銀行に対する健全性規制の恩恵を受ける場合もあるが、 貸出業務が事業全体に占める割合は小さい。銀行に対する健全性規制の恩恵を受け、か つ、相当の貸出業務を手がける証券会社、または大規模で複雑な事業をグローバルに営 む証券会社は通常、本格付け規準案の対象外であり、そうした証券会社には通常、格付 け規準「銀行格付けの手法と想定」に基づき格付けが付与される。 5. 本格付け規準案の対象となる金融業者のほとんどは「金融会社(finance company、finco)」 と称される。S&P は「金融会社」を、一般に銀行として登録されておらず、かつ、個人 や事業向けの貸出業務を手がける会社と定義する。概して預金取扱機関ではなく、債券 の発行等によって、運用業務および貸出業務の資金を調達する。金融会社の主な貸し出 し先は、消費者、事業会社、商業用不動産セクターである。金融会社は特別目的事業体 (SPV)でも投資ファンドでもない。S&P が格付けする金融会社には、ノンバンク金融 会社、金融サービス金融会社(financial services finance companies、FSFC)の 2 種類があ る。ノンバンク金融会社が抱える最大のリスクが、資産の質、資金調達と流動性、有形 資本――銀行が直面する主なリスクのいくつか――に関連していると考えれば、S&P は そのノンバンク金融会社をノンバンク金融機関の格付け規準に基づいて格付けする。金

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 3 融サービス金融会社は、金融事業に従事してはいるが手数料収入に大きく依存しており、 バランスシートのリスクが限られている。S&P はそうした事業体を通常、金融サービス 金融会社の格付け規準に基づいて格付けする(2014 年 12 月 9 日付「Key Credit Factors For Financial Services Finance Companies」参照)。

6. 一部の政府系機関のノンバンクも適用対象に含まれる。本格付け規準は、銀行や銀行 持ち株会社として登録されていない機関に主に適用されるが、銀行または銀行持ち株会 社として登録されているものの、格付け規準「銀行格付けの手法と想定」の対象外であ る機関にも適用される。通常、そうした機関は、規制対象機関としてのトラックレコー ドが短いか、従来ノンバンクが手がけてきた事業に従事しているか、あるいは預金以外 の資金調達への依存度が非常に高い。

7. 本格付け規準は、2011 年 11 月 9 日付「Banks: Rating Methodology And Assumptions」 (和訳版:2011 年 12 月 27 日付「格付け規準|金融機関|銀行:銀行格付けの手法と想 定」)または、2013 年 5 月 7 日付「Insurers: Rating Methodology」(和訳版:2013 年 7 月 24 日付「格付け規準|保険会社|一般:保険会社の格付け手法」)の適用対象となる 銀行と保険会社には適用されない。

本格付け規準の要旨

8. 本格付け規準の手法では、以下の項目を以下の順で決定する。 9. アンカー値 本手法ではまず、任意の国のノンバンク金融機関のセクターごとに、アン カー値を設定する。アンカー値には、セクターが直面する経済リスクと産業リスクが反 映されている。アンカー値設定の起点として、銀行のアンカー値<2011 年 11 月 9 日付 「Banking Industry Country Risk Assessment Methodology And Assumptions」(和訳版:2012 年 2 月 23 日「格付け規準|金融機関|銀行:銀行業界のカントリーリスク評価の手法と 想定」)に基づき導出される>を使う。予備的アンカー値は、金融会社の場合、各国の 銀行アンカー値を 3 ノッチ(段階)下回る水準、証券会社の場合、各国の銀行アンカー 値を 2 ノッチ下回る水準である。金融会社のアンカー値は、銀行との比較で、中央銀行 へのアクセスが欠如している、規制・監督が緩い、競合リスクが高い――といった要因 により産業リスクが高いことを反映している(2014 年 8 月 13 日付英文リポート「Industry And Idiosyncratic Risks For Finance companies Are Generally Higher Relative To Banks」を参 照)。証券会社のアンカー値は、通常はなんらかの形で業界に対する規制・監督が存在 することを反映して、銀行アンカー値を 2 ノッチだけ下回る水準となっている(2014 年 8 月 13 日付英文リポート「Industry Risk For Securities Firms Is Generally Higher Than For Banks」を参照)。場合によっては、国とセクターに固有の特徴を勘案し、この標準的な 2 または 3 ノッチ差を調整して(つまり、各ノッチ差を拡大または縮小して)、金融会 社や証券会社の最終的なアンカー値とすることがある。国とセクターに固有の要因によ る調整を加えなかった場合、予備的アンカー値と最終アンカー値は同一となる。 10. スタンドアローン評価(SACP)または特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評 価 アンカー値を設定したら、次に、4 つの要因と 2 つの調整項目を考慮して、スタン ドアローン評価を決定する。S&P が事業体に固有の要因として分析する項目は、事業ポ

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 4 ジション、自己資本・レバレッジ・収益性、リスクポジション、資金調達と流動性であ る。事業体に固有の 2 つの調整は、「アンカー値調整」(金融会社については、政府系 機関、健全性規制の対象かまたは銀行システムにとって重要な金融機関、および独占企 業などに適用される可能性がある)と、比較格付け調整(最終的な 1 ノッチの調整を適 用するかどうかを決めるための同業他社との比較分析)である。特別支援の可能性を考 慮する前のグループ信用力評価は、他のグループメンバー会社が異なる格付け規準に基 づいて評価されるのでない限り、スタンドアローン評価と同じ要因と調整項目に基づく。 グループ信用力評価の分析対象はグループ全体に及ぶ。一方、各グループメンバー会社 のスタンドアローン評価の分析対象は、事業体単独であるか、または当該事業体が子会 社を持つ場合にはサブグループが対象となる。 11. 発行体格付け スタンドアローン評価または特別支援の可能性を考慮する前のグループ 信用力評価を決定したら、該当するすべての、政府、グループ、またはその他の特別な 外的影響(「外的影響」と総称)についての S&P の見方を織り込み、発行体格付けまた はグループ信用力評価を決める。一部の発行体の発行体格付けには、別の格付け規準を 適用したことが反映される。たとえば、政府系機関(GRE)の発行体格付けは通常、2015 年 3 月 25 日付「Rating Government-Related Entities: Methodology And Assumptions」(和訳 版:2015 年 11 月 12 日付「一般格付け規準:政府系機関の格付け:手法と想定」)を適 用して決める。グループ会社の影響は、2013 年 11 月 19 日付「Group Rating Methodology」 (和訳版:2014 年 3 月 14 日付「一般格付け規準:グループ格付け手法」)に基づき評 価する。可能性は低いが、ノンバンク金融機関に所在するソブリンを上回る格付けを付 与する場合には、2013 年 11 月 19 日付「Ratings Above The Sovereign--Corporate And Government Ratings: Methodology And Assumptions」(和訳版:2014 年 4 月 28 日付「一般 格付け規準:ソブリン格付けを上回る格付けの手法と想定:事業法人・金融法人・公的 部門」)を適用して、ソブリン格付けを上回る最大ノッチ数を決める。すべての場合に おいて、2012 年 10 月 1 日付「Criteria For Assigning 'CCC+', 'CCC', 'CCC-', And 'CC' Ratings」 (和訳版:2012 年11 月 2 日付『一般格付け規準:「CCC+」「CCC」「CCC-」「CC」の付与 の格付け規準』)における条件が当てはまれば、発行体格付けは「CCC+」以下となり、またス タンドアローン評価またはグループ信用力評価は「ccc+」以下となる。 表 1 ノンバンク金融機関の格付けの枠組みの概要 パート I: アンカー値 A. 予備的アンカー値 <各国の銀行アンカー値を 2 ノッチ(証券会社の場合)または 3 ノッチ(金融会社の場合) 下回る水準に設定> B. 国とセクターに固有の調整(該当する場合、ただし、当該国の銀行アンカー値が上限) A+B=アンカー値 パート II: 事業体に固有の スタンドアローン評価 (SACP) A. 事業体に固有のアンカー値調整(該当する場合) B. 事業ポジション C. 自己資本・レバレッジ・収益性 D. リスクポジション E. 資金調達と流動性 F. 比較格付け調整 パート I+パート II=SACP

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 5 パート III: 外的影響と ソブリン格付けによる制約 A. グループの影響 B. 政府の影響 C. 保証またはその他の外的影響 D. ソブリンを上回る格付け <ソブリン格付けを上回る最大ノッチ差(該当する場合)> パート I+パート II+パート III=発行体格付け

12. 本段落は削除された。「変更とアップデート」を参照。 13. 本段落は削除された。「変更とアップデート」を参照。

手法

14. 本格付け規準案では、以下の項目を以下の順で決定する(図参照)。  アンカー値 アンカー値には、セクターが直面する経済リスクと産業リスクが反映される。 アンカー値は、セクターと国ごとに付与される(たとえば、米国の証券会社に対して1 つ のアンカー値が、米国の金融会社に対して別の1 つのアンカー値が、それぞれ付与される)。  スタンドアローン評価または特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評価 スタン ドアローン評価または特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評価は、表2 の通 り調整を加えたアンカー値に、事業体に固有の要因と調整項目――アンカー値調整、事業 ポジション、自己資本・レバレッジ・収益性、リスクポジション、資金調達と流動性、比 較格付け調整――のプラスまたはマイナスの影響を調整したものである。  発行体格付け 該当するすべての、政府、グループ、またはその他の特別な外的影響(「外 的影響」と総称)についての S&P の見方を反映するため、本格付け規準では、グループ 信用力評価と、通常はスタンドアローン評価を組み合わせて、発行体格付けを決定する。 一部の発行体の場合、発行体格付けが他の格付け規準の適用を反映していることがある。 たとえば、政府系機関の発行体格付けには、2015 年 3 月 25 日付「Rating Government-Related Entities: Methodology And Assumptions」(和訳版:2015 年 11 月 12 日付「一般格付け規準: 政府系機関の格付け:手法と想定」)を適用する。グループメンバー会社の影響は、2013 年11 月 19 日付「Group Rating Methodology」(和訳版:2014 年 3 月 14 日付「一般格付け 規準:グループ格付け手法」)に基づき評価する。最後に、稀ではあるが、ノンバンク金 融機関に対し、所在するソブリンを上回る格付けを付与する場合には、2013 年 11 月 19 日付「Ratings Above The Sovereign--Corporate And Government Ratings: Methodology And Assumptions」(和訳版:2014 年 4 月 28 日付「一般格付け規準:ソブリン格付けを上回る 格付けの手法と想定:事業法人・金融法人・公的部門」)を適用して、ソブリンを上回る 最大ノッチ数を決める。すべての場合において、2012 年 10 月 1 日付「Criteria For Assigning 'CCC+', 'CCC', 'CCC-', And 'CC' Ratings」(和訳版:2012 年 11 月 2 日付『一般格付け規 準 :「CCC+ 」「 CCC」「 CCC-」「 CC」 の付 与の格 付け 規準 』) におけ る条 件を 満 たせば、発行体格付けは「CCC+」以下、スタン ドアローン評価またはグループ 信用力評価は「ccc+」以下となる。 15. アンカー値、事業ポジション、比較格付け調整、ならびに潜在的な外的影響とソブリ ン格付けによる制限――においては、証券会社と金融会社の両方に対し同一の手法で評

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 6 価をする。自己資本・レバレッジ・収益性(規制自己資本を除く)、リスクポジション、 資金調達と流動性――においては、これら 2 つのノンバンク金融機関セクターの財務リ スクの違いを反映させるために、異なる手法で評価する。 注:ハイブリッド資本証券が支援の対象となると S&P がみなす場合には、その証券を(スタンドアロ ーン評価でなく)発行体格付けとの比較で格付けすることもある。

I. アンカー値の設定

16. 本格付け規準では、ノンバンク金融機関に格付けする出発点は、アンカー値の設定で ある。まず国ごとに銀行アンカー値を決定して、それぞれの国の各セクターのアンカー 値を設定する<2011 年 11 月 9 日付「Banks: Rating Methodology And Assumptions」(和 訳版:2011 年 12 月 27 日付「格付け規準|金融機関|銀行:銀行格付けの手法と想定」) の表 2 参照>。証券会社の場合は銀行アンカー値を 2 ノッチ下回る水準を、金融会社の 場合は銀行アンカー値を 3 ノッチ下回る水準を、それぞれ予備的アンカー値とする。発 行体が 2 カ国以上で事業活動をしている場合は、それらの国々の経済リスクを反映させ てアンカー値を設定する。つまり、各国の経済リスク・スコアを加重平均して、産業リ スクと組み合わせてアンカー値を決めるための経済リスク・スコアを計算する。通常、 エクスポージャーまたは収入によって加重する<2011 年 11 月 9 日付「Banks: Rating Methodology And Assumptions」(和訳版:2011 年 12 月 27 日付「格付け規準|金融機関 |銀行:銀行格付けの手法と想定」)の段落 29-35 参照>。次に、国とセクターに固有 の調整があればそれを織り込んだうえで、アンカー値を決定する。アンカー値に最終的 な調整を加える可能性もある(段落 28-29 参照)。最終的な調整は事業体に固有のもの であり、セクターや国に適用するものではないため、スタンドアローン評価の一部であ る。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 7

A.予備的アンカー値

17. S&P の銀行業界のカントリーリスク評価の手法<2011 年 11 月 9 日付「Banking Industry Country Risk Assessment Methodology And Assumptions」(和訳版:2012 年 2 月 23 日「格 付け規準|金融機関|銀行:銀行業界のカントリーリスク評価の手法と想定」)>で定 めた通り、ノンバンク金融機関のアンカー値の出発点となる銀行アンカー値は、経済リ スクと産業リスクに対する S&P の評価を反映している。この評価を組み合わせて、各国 に固有の銀行アンカー値を決める(格付け規準「銀行格付けの手法と想定」の表 2 参照)。 銀行業界のカントリーリスク評価は、各国のマクロレベルのリスクの評価である。経済 の耐久力と経済の不均衡、信用リスクの分析が、経済リスクの評価を構成し、産業リス クは、制度的枠組みと競争のダイナミクス、システム全体の資金調達から成る。 18. ノンバンク金融機関セクターの予備的アンカー値は、銀行と比べた場合のノンバンク 金融機関に典型的なリスクを、追加的リスクとして反映している。そのため、すべての 国について、銀行アンカー値を 3 ノッチ下回る水準を金融会社の予備的アンカー値とし て、銀行アンカー値を 2 ノッチ下回る水準を証券会社の予備的アンカー値として、それ ぞれ設定する(たとえば、ある国の銀行アンカー値が「bb+」の場合、その国の金融会 社の予備的アンカー値は「b+」、証券会社の予備的アンカー値は「bb-」となる)。 S&P の見方では、銀行と比べた場合のノンバンク金融機関の追加的な産業・経済リスク は、以下の通りである。  金融会社と証券会社のいずれも、通常は中央銀行へのアクセスがない。そのため、流動性 と資金調達に関するリスクが銀行に比して高い。  金融会社と証券会社のいずれも、総じて銀行との激しい競争に直面している。これは、銀 行のほうが資金調達コストが低いためである。加えて、金融会社と証券会社は、業界内で も銀行との比較でも、競合リスクが高い。これは、参入障壁が低いことと、事業環境がよ り変動的であったり細分化されていたりすることによる。  金融会社には通常、銀行に対し行われている規制・監督が行われておらず、それが投資家 の信認の変化に対する感応度を高めている。証券会社は一般に、金融会社よりも厳しい規 制・監督下にあることの恩恵を受けているが、銀行ほどではない。  証券会社の経済リスクは、銀行が直面するリスクを超える場合がある。証券会社は所有資 産の現金化を市場の流動性に依存しているため、株式市場の変動に左右されやすいことに よる。 19. こうした産業リスクと経済リスクが、各セクターの格付けのパフォーマンスに表れて いる(2013 年 7 月 25 日付英文リポート「2012 Annual Global Financial Institutions Default And Rating Transition Study」参照)。金融会社は高い財務力を示すかもしれないが、デ フォルトの頻度は銀行よりも高い。証券会社については、市場が不安定な時期に資金調 達を失った結果、デフォルトが突出していた。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 8 アンカー値の導出 予備的アンカー値(証券会社は 2 ノッチ、金融会社は 3 ノッチ、それぞれ銀行アンカー値を下回る水 準)および国とセクターに固有のアンカー値調整は、各国の銀行業界のカントリーリスク評価(BICRA) から導出される。金融会社、証券会社のいずれの場合も、経済の耐久力、経済の不均衡、経済活動に おける信用リスクが経済リスクの評価要因であることに変わりはない。証券会社のほうは、経済リスクの 評価要因として株式市場の変動性が追加された。両セクターとも、産業リスクの評価要因――制度的枠 組み、競争のダイナミクス、銀行システム全体の資金調達――は、各国の BICRA要因の再採点(リスコ アリング)を通じて、セクターごとに調整された。 各国の BICRA を再評価した結果は、大多数の国において、証券会社セクターが銀行アンカー値を 2 ノッチ下回る水準、金融会社セクターが銀行アンカー値を 3 ノッチ下回る水準――となった。S&P は、こ れらの値を予備的アンカー値として用いる。一部の国とセクターについては、この 2 ノッチと 3 ノッチとい う幅は、銀行アンカー値との差異に関する S&P の見解を反映していない。その場合は、国とセクターに 固有の調整を適用する。調整については段落 20-24 にまとめており、各国の各セクターに適用される BICRA 要因の再評価の結果を反映している。

B.国とセクターに固有の調整

20. 各国の各セクターのアンカー値は、予備的アンカー値と同一であることが多いと S&P は考えている。しかし場合によっては、国とセクターに固有の調整を加えた結果、アン カー値が予備的アンカー値を上回ることや下回ることがある。あるセクターについて、 銀行と比較した場合のノンバンク金融機関セクターの追加的リスクが、段落 18 で述べら れているものよりも小さい場合には、アンカー値は予備的アンカー値を上回ること(ま たは追加的リスクが大きい場合にはその逆)があるが、銀行のアンカー値を上回ること はない。 21. このような国とセクターに固有の調整は通常、次に挙げる 2 つの状況のうちのいずれ かで発生する。 22. ノンバンク金融機関のアンカー値と銀行アンカー値のノッチ差を縮小する状況として 第一に、同じ国の銀行と比較した場合のノンバンク金融機関セクターの追加的リスクが、 段落 18 で述べられたリスクよりも小さいと考えられる場合が挙げられる。このような場 合、証券会社については 1 ノッチまたは 2 ノッチ、金融会社については 1 ノッチから 3 ノッチの幅で、ノッチ差を縮小する。たとえば、ある国の銀行アンカー値が「bbb」の場 合、その国の金融会社の予備的アンカー値は、それを 3 ノッチ下回る「bb」となる。分 析に基づき、金融会社の予備的アンカー値が「bb+」「bbb-」または「bbb」となるよ うに、その 3 ノッチ差を縮小する。ノッチ差を縮小する理由として、次のようなものが 挙げられる。  ノンバンク金融機関セクターが、より堅固な制度的枠組み(政府の監督)の恩恵を受けて いる。国によっては、金融会社は規制対象であるか、またはその他の支援的な制度的枠組 みの要素を有する。  ノンバンク金融機関セクターの資金調達がより強固である(同セクターが中央銀行へのア クセスを持つなど)。国によっては、金融会社に中央銀行への直接的アクセス、または間 接的アクセス(政府系開発銀行を通じた資金調達)がある。  金融会社または証券会社に対し、規制が競合的地位を保護する(そのため競合リスクが低

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 9 減する)。国によっては、規制当局が、特定の事業への参入について、ノンバンク金融機 関に付与する免許の数を制限している。 23. 反対に、ノンバンク金融機関が付加的な資金調達、経済、競争のリスクに直面する場 合、または、予備的アンカー値の想定よりも制度的枠組みが弱い場合には、ノッチ差は 1 ノッチ拡大する。たとえば、証券会社については、規制・監督が存在しない場合や、 資本市場の低い流動性や高い変動性によって経済リスクと資金調達リスクが高まってい る場合には、国に固有のアンカー値は予備的アンカー値を 1 ノッチ下回る。 24. ノンバンク金融機関のアンカー値と銀行アンカー値のノッチ差を縮小する第二の状況 は、銀行アンカー値が低く、S&P がノンバンク金融機関セクターの典型的なリスクとし て認識する追加的リスクをすでに反映している場合である。銀行とノンバンク金融機関 が同水準のリスクに直面している国では、銀行アンカー値とノンバンク金融機関アンカ ー値のノッチ差は縮小する。具体的には、ある国の銀行アンカー値が「b-」から「bb +」までの範囲であれば、S&P はノッチ差を縮小するかまたはゼロにする。

II. 事業体に固有のスタンドアローン評価

25. アンカー値を設定したら、事業体に固有の分析を開始し、場合によってはアンカー値 を調整する。この事業体に固有のアンカー値調整が適用されるのは、ごく少数の金融会 社だけになるだろうと考えている。次に、スタンドアローン評価の主な要因――事業ポ ジション、自己資本・レバレッジ・収益性、リスクポジション、資金調達と流動性―― を考慮する。最後に、該当する場合には比較格付け分析を織り込む。これらの要因は、 アンカー値に対するスタンドアローン評価または特別支援の可能性を考慮する前のグル ープ信用力評価を決定する。それぞれの要因は、追加的に、スタンドアローン評価また は特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用力評価をアンカー値から最大 2 ノッチ 引き上げるか、またはスタンドアローン評価または特別支援の可能性を考慮する前のグ ループ信用力評価を、アンカー値から最大で 5 ノッチ引き下げる、また場合によっては、 格付け、スタンドアローン評価、または特別支援の可能性を考慮する前のグループ信用 力評価を制約する(表 2 参照)。 26. 事業ポジションは、企業の事業面での強さを同業他社との比較で評価する。自己資本・ レバレッジ・収益性は、企業の損失吸収能力――企業が継続企業(ゴーイングコンサー ン)である間に優先債権者に対してプロテクションを提供する――を評価する。リスク ポジションは、自己資本・レバレッジ・収益性の分析における標準的な想定から導かれ る結論を超える、当該企業が現実に直面する特定のリスクに関する S&P の見解を精緻化 するための相対的評価である。資金調達と流動性は、継続的な状況とストレスのかかっ た環境の双方において流動性需要を管理しつつ、効果的な資金調達を通じて業績を支え る企業の能力を評価する。最後に、比較格付け分析は、他の調整要素を織り込んだ後で も、スタンドアローン評価の結果に微調整を加える必要のある場合があることを反映し ている。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 10 27. 本格付け規準では、金融会社と証券会社の自己資本・レバレッジ・収益性(規制上の 自己資本を除く)のすべての側面、リスクポジション、資金調達と流動性を評価するた めに、異なる手法を用いる。事業体に固有の分析のその他の部分――アンカー値の調整、 事業ポジション、比較格付け分析――については、両セクターに同じ手法を用いる。 表 2 事業体に固有の要因が SACP または GCP に及ぼす影響 分析項目と評価区分 アンカー値*からの引き上げ・引き下げによる SACP または GCP への影響(ノッチ数) 事業ポジション 非常に強い(very strong) +2 ノッチ 強い(strong) +1 ノッチ 適切(adequate) 変更なし やや弱い(moderate) -1 ノッチ 弱い(weak) -2 ノッチ 非常に弱い(very weak) -3 ノッチ** 自己資本・レバレッジ・収益性 NBFI が所在する国の銀行アンカー値***が「bbb-」以上である場合、自己資本・レバレッジ・収益性は SACP と GCP に以 下の通り影響する。 非常に強い(very strong) +2 ノッチ 強い(strong) +1 ノッチ 適切(adequate) 変更なし やや弱い(moderate) -1 ノッチ 弱い(weak) -2 から-3 ノッチ 非常に弱い(very weak) -3 から-5 ノッチ NBFI が所在する国の銀行アンカー値***が「bb-」、または「bb」「bb+」である場合、自己資本・レバレッジ・収益性は SACP と GCP に以下の通り影響する。 非常に強い(very strong) +2 ノッチ 強い(strong) +1 ノッチ 適切(adequate) 変更なし やや弱い(moderate) 変更なし 弱い(weak) -1 ノッチ 非常に弱い(very weak) -2 から-3 ノッチ NBFI が所在する国の銀行アンカー値***が「b-」、または「b」「b+」である場合、自己資本・レバレッジ・収益性は SACP と GCP に以下の通り影響する。 非常に強い(very strong) +2 ノッチ 強い(strong) +2 ノッチ 適切(adequate) +1 ノッチ やや弱い(moderate) 変更なし 弱い(weak) 変更なし 非常に弱い(very weak) -1 から-2 ノッチ リスクポジション 非常に強い(very strong) +2 ノッチ 強い(strong) +1 ノッチ 適切(adequate) 変更なし やや弱い(moderate) -1 ノッチ 弱い(weak) -2 ノッチ 非常に弱い(very weak) -3 ノッチ 資金調達と流動性 資金調達と流動性が SACP と GCP に与える影響は、資金調達と流動性に対する評価を 組み合わせた結果から生じる(金融会社については表 21 を、証券会社については表 24 を参照)。 訳注:SACP=スタンドアローン評価、GCP=グループ信用力評価、NBFI=ノンバンク金融機関

注:事業体が、2012 年 10 月 1 日付「Criteria For Assigning 'CCC+', 'CCC', 'CCC-', And 'CC' Ratings」(和訳版:2012 年 11 月 2 日付『一般格付け規準:「CCC+」「CCC」「CCC-」「CC」の付与の格付け規準』)の条件を満たす場合には、事業体 には「ccc+」の SACP が、グループには「ccc+」以下の GCP が付与される。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 11 **経営陣とガバナンスが「弱い」と評価される場合、(段落 31 で述べられた事業ポジションへの影響に加えて)、発行体のリ スクプロフィールに及ぼす悪影響の大きさ次第では、SACP または GCP がさらに引き下げられる結果となる場合がある。 ***本表における自己資本・レバレッジ・収益性の評価は、各国の銀行アンカー値を参照している。リスク調整後自己資本 (RAC)は、銀行アンカー値と銀行の損失予想に基づいて調整される。S&P では、銀行と NBFI の間の、損失予想と資産の 質における差異について、リスクポジションを調整する。

A.事業体に固有のアンカー値調整

28. 事業体に固有のアンカー調整を加えることによって、当該事業体に適用されるアンカ ー値が、そのセクターの他の事業体のアンカー値を上回ることや下回ることがある。そ の事業体に対し、国またはセクターに固有のアンカー値調整で考慮されていない調整を この段階で行う場合がある。国とセクターに固有のアンカー調整と同様に、事業体に固 有のアンカー調整の結果、ノンバンク金融機関のアンカー値が銀行アンカー値を上回る ことはないと S&P は考える。事業体に固有のアンカー値調整は、政府系機関の格付け規 準の表 1 に記したように、通常は、政府の特別支援を受ける可能性が「非常に高い(very high)」「極めて高い(extremely high)」「ほぼ確実(almost certain)」の政府系機関に 適用されると考える<2015 年 3 月 25 日付「Rating Government-Related Entities:

Methodology And Assumptions」(和訳版:2015 年 11 月 12 日付「一般格付け規準:政府 系機関の格付け:手法と想定」)>。銀行として健全性規制の対象となっていなくても、 政府系機関は、規制対象にあるかあるいは事実上の独占(または寡占)状態にある場合、 政府との関係に基づくより有利な資金調達や、規制当局の監督、または低い競合リスク の恩恵を継続的に受ける。 29. 政府系機関でない一部の金融会社についても、段落 28 で述べたように、その事業体が 同じ国のほとんどの金融会社と大きく異なる特性を持つことを反映するべく、事業体に 固有のアンカー値調整を適用する。通常は、銀行監督当局の規制下にある純粋持ち株会 社(nonoperating holding company)が存在する、あるいは規制当局による許認可または影 響力によって準独占状態が存在する――といった恩恵を受けている金融会社に適用され る。

B.事業ポジション

30. 事業ポジションはスタンドアローン評価の第一の要因であり、企業の事業面での強さ を、同業他社との比較で評価する(同業他社グループの選択方法について詳細は「比較 格付け調整」のセクションを参照)。評価は、事業の安定性(表 6 参照)、事業の多様 性(表 7 参照)、経営陣とガバナンス(表 8-10 参照)――の 3 つの内訳項目(表 3 参 照)に基づく。分析は定性的かつ定量的である。 表 3 事業ポジションの評価の内訳項目 内訳項目 内容 評価区分 指標 事業の安定性 (段落 36-47) 企業の事業基盤と 業績の安定性 または脆弱性 (事業サイクルを通じて) 非常に強い(very strong) 強い(strong) 適切(adequate) やや弱い(moderate) 弱い(weak) 非常に弱い(very weak) 事業構成、収益の安定性、市場地位、顧客 基盤(顧客とその他の外部取引先の信認に 対する感応度)。収益性が市場地位に重大な 悪影響を及ぼしている場合には、これが評価 の上限となる場合がある。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 12 事業の多様性 (段落 48-59) 事業活動の集中と分散 強い(strong) 適切(adequate) やや弱い(moderate) 弱い(weak) 事業ラインごと(および事業ライン内での商品 ごと)、地域ごと、顧客ごとの収益寄与におけ る集中度。 経営陣とガバナンス (段落 60-61) 経営陣、戦略、企業統治 の質 強い(strong) 中位(satisfactory) 特に不足はない(fair) 弱い(weak) 戦略的な位置付け、業務効率、財務管理、企 業統治・財務方針

31. 事業ポジションは、「非常に強い(very strong)」から「非常に弱い(very weak)」 までの 6 段階で評価する(表 4 参照)。最初に、事業の安定性と事業の多様性を、表 5 に沿って統合する。経営陣とガバナンスの評価(表 10 参照)が「特に不足はない(fair)」 または「弱い(weak)」であれば、表 5 から得られた全体的な評価の上限となるかまた は評価を引き下げるが、全体的な評価を引き上げることはない。 32. 事業ポジションの評価は、アンカー値で行った想定を反映している。たとえば、ある 企業が、政府系機関でもシステミックに重要でなくても、事業体に固有のアンカー値調 整として認識されていない経済的または産業としての強みがメリットとなっている場合 がある。これはアンカー値の想定に照らしてみると、同業他社に対する相対的な強みを 表し、通常は事業ポジションの評価水準を 1 段階引き上げる(「やや弱い」から「適切」 など)。 表 4 事業ポジションの評価 評価区分 意味 非常に強い (very strong) ある NBFI の事業ポジションが、アンカー値が同程度の他の NBFI よりはるかに強く、その強さによ り、アンカー値が示唆する以上に事業環境の悪化に耐える力が強い。 強い (strong) NBFI の事業運営は、アンカー値が示唆するよりも、事業環境の悪化の影響を受けにくくなってい る。 適切 (adequate) NBFI の事業リスクはアンカー値と一致しており、アンカー値が同水準の同業他社と類似している。 やや弱い (moderate) その事業運営により、NBFI はアンカー値が示唆する以上に事業環境の悪化の影響を受けやすく なっている。 弱い (weak) その事業運営により、NBFI はアンカー値が示唆するよりもはるかに事業環境の悪化の影響を受け やすくなっている。 非常に弱い (very weak) アンカー値は、NBFI の事業リスクの大きさや事業環境の悪化からの影響の受けやすさを十分に表 していない。 訳注:NBFI=ノンバンク金融機関 33. 事業ポジションの評価が「適切(adequate)」であることは、アンカー値(事業体に 固有の調整後の値)が企業の事業活動のリスクをほぼ捉えていることを意味する。「非 常に強い(very strong)」「強い(strong)」の評価は、そのノンバンク金融機関の事業 活動のリスクが、アンカー値が同程度の企業の平均よりも低いことを意味する。競合企 業が成長しつつあるなかで事業と収益が縮小している場合に、評価が「非常に強い」「強 い」となる可能性は低い。「やや弱い(moderate)」「弱い(weak)」「非常に弱い(very weak)」の評価は、平均よりもその企業の事業活動のリスクが高いか、または安定性が 低いことを意味し、アンカー値に反映されているものを上回る付加的リスクが存在する ことを表す。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 13 34. 企業の事業ポジションの強さは、その事業基盤の相対的な安定性と、事業環境の悪化 に対する抵抗力を反映している。そのため表 5 の通り、事業の多様性の重大な弱み、ま たは稀なケースでは強みによって相殺されない限り、通常は事業の安定性の評価の比重 が最も高い。複数の指標と内訳項目によって、集合的に、アンカー値で想定されている リスクに対し、リスクを付加したり、軽減したりする場合がある。たとえば、収益の高 い変動性、弱い価格決定力、低い市場地位はいずれも、収益、価格、競争に対する規制 の影響がない限り、事業ポジションを圧迫する。定量指標に関連性があり利用できる場 合は、内訳項目の評価の基準として(事業の多様性の分析では事業ラインの収入貢献を 検討する)、もしくは非常に大きなリスクを抱える企業を特定するために、定量指標が 利用される。特に、投資家の信認や市場の変動性の変化に対する感応度の高い事業から 収入の大半を創出している場合には、事業の安定性は通常、「やや弱い」が上限となる。 35. 事業の多様性と事業の安定性を組み合わせた時に、2 つ以上の結果が得られる場合(表 5 参照)、経営陣とガバナンスが「特に不足はない(fair)」または「弱い(weak)」と 評価されていれば、通常は、その 2 つの結果のうち低いほうに制限される。また、経営 陣とガバナンスは、事業ポジションに以下の通り上限を定める。  経営陣とガバナンスの評価が「特に不足はない」場合、事業ポジションの上限は「強い」 となる。通常は、経営陣の弱みが事業の安定性を損ねる可能性が低い場合に限って、「強 い」の評価が可能となる。  経営陣とガバナンスの評価が「弱い」場合、事業ポジションの上限は通常は「やや弱い」 となり、事業の安定性が経営陣の弱みによって損ねられている場合、上限は「弱い」また は「非常に弱い」となる。 表 5 事業ポジションの評価* 事業の 多様性 事業の安定性 非常に強い (very strong) 強い (strong) 適切 (adequate) やや弱い (moderate) 弱い (weak) 非常に弱い (very weak) 強い (strong) 非常に強い /強い 強い 強い /適切 適切 /やや弱い やや弱い /弱い 弱い /非常に弱い 適切 (adequate) 強い /適切 強い /適切 適切 やや弱い 弱い 非常に弱い やや弱い (moderate) 強い /適切 適切 /やや弱い 適切 /やや弱い やや弱い 弱い 非常に弱い 弱い (weak) 適切 /やや弱い 適切 /やや弱い やや弱い /弱い やや弱い /弱い 弱い 非常に弱い *事業ポジションの評価は、本表の結果に段落 35 の修正を加えたもの。 1)事業の安定性 36. 事業ポジションの評価における最初の内訳項目である事業の安定性では、経済や市場 の変動に直面した場合に、現在の取引量を継続できるかについての予見可能性を評価す る。企業の中核事業の過去の業績が同業他社を下回るか、またはその変動性がより高い 場合は通常、事業の安定性の評価が「強い(strong)」または「非常に強い(very strong)」 となることはない。アンカー値において、ノンバンク金融機関セクターの事業の安定性 は本質的に銀行の事業よりも変動性が高いということが認識されている。ある企業の事 業の変動性が、アンカー値と事業体に固有の調整による影響を加味した期待値と一致し

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 14 ている場合には、事業の安定性の評価は「適切(adequate)」となろう。収益と収益性 の安定性(純損益の黒字)が著しく劣ることが示すような、事業体がより高リスクの事 業を行っている場合の評価は通常、「やや弱い(moderate)」となる。企業が収益性を 達成する見込みがなければ、評価は「弱い(weak)」となり、企業が収益性を恒常的に 達成できない見通しであれば、評価は「非常に弱い(very weak)」となる。ただし、低 い収益性が市場地位の欠如ではなくリスク軽減策に起因する場合には、長期化が予想さ れない限り、「弱い(weak)」または「非常に弱い(very weak)」が上限となることは ない。 37. 事業の安定性に関する S&P の見解を形作る指標は、事業構成、収益の安定性、市場地 位、顧客基盤である(表 6 参照)。事業構成では、事業ラインの構成のリスクと、事業 ラインそのもの(およびその事業ラインの商品)のリスク、特に信認に対する感応度の 高い事業へのエクスポージャーのリスクを考慮する。収益の安定性では、企業の収益の ダイナミクスと過去の収益の安定性を考慮する。市場地位では、市場シェアの規模と安 定性、ならびに収益性を考慮する。顧客基盤では、顧客の信認に対する感応度へのエク スポージャー(つまり、顧客の関係の安定性と信頼性)を反映させる。収益性によって、 前段落で述べたように、事業の安定性の評価の上限が「やや弱い」となることがある。 38. 重要な点は、事業の安定性の各評価における S&P の事業の安定性の期待値に、アンカ ー値をそれぞれの国の銀行アンカー値から引き下げるという、産業リスクによる調整が 考慮されることである。たとえば、企業の事業にある程度の不安定さがみられても、事 業の安定性は「適切」と評価されうるが、それは、何よりもアンカー値に高い競合リス クがすでに織り込まれているからである。また、事業体に固有のアンカー値調整まで至 らなかったとしても、その企業の従来のおよび将来予想される事業の安定性が、同じ国で 事業を行う平均的な銀行に匹敵する場合には、事業の安定性の評価が「強い」または「非 常に強い」となることがある。 表 6 事業の安定性の評価 評価 ガイダンス 非常に強い(very strong) 同業他社に比して、事業構成が安定しリスクは低く、重大な高リスクの事業ラインがない。非 常に安定した、または堅固な市場地位を持ち、定着性の高い顧客との関係が顧客基盤の大 半をもたらしている。あるいは、契約により経常的に発生する収入が非常に高水準であり、収 益の非常に高い安定性を支えるとともに、同業他社やアンカー値で把握されているものと比 べて、かなりの追加的な強みを示している。 強い(strong) 同業他社に比して、事業構成が安定しリスクは低い。加えて、安定した、または堅固な市場 地位を持ち、顧客との安定した関係が収益の大半をもたらしている。堅固な市場地位と安定 した顧客基盤が欠如していても、契約により経常的に発生する高水準の収益によって補わ れ、収益の高い安定性を支えることができる。もし事業の安定性が同業他社よりも高いこと が収益の高い安定性につながっているのであれば、事業の安定性の評価は「強い」となる。 適切(adequate) 事業の安定性は同業他社の平均並みで、相殺し合う強みも弱みもなく、市場地位と事業の 性質、収益、商品、顧客との関係は、アンカー値で把握されているものを上回る追加的リスク を示していない。S&P は同業他社と同程度の収益の安定性を見込む。 やや弱い(moderate) 脆弱な市場地位、高いリスク、または信認に対する感応度の高い事業構成は、なんらかの 強みによって部分的に補われるため、収益の安定性は同業他社よりも低いと見込まれる。し たがって、アンカー値で把握されているものを上回る追加的リスクを示している。 弱い(weak) 事業構成のリスクまたは不安定さ、市場地位のなんらかの点、顧客の信認に対する感応 度、または予想収益の安定性が、平均を著しく下回るか、またはアンカー値で把握されてい るものを上回る多大なリスクを示している。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 15 非常に弱い(very weak) リスクが高い、または信認に対する感応度が高い、または不安定な事業への多大なエクスポ ージャーを抱えているか、あるいは市場地位と収益の安定性が同業他社に比べて非常に低 い。事業リスクと信認に対する感応度、低い市場地位や収益の低い安定性が、個別または 集合的に、非常に弱い評価につながっている。 *スタンドアローン評価またはグループ信用力評価でのアンカー値について述べている場合、「事業体に固有のアンカー値調 整」のセクションで述べられた、事業体に固有の調整を含む。 i) 事業構成 39. 以下に挙げる条件に該当する場合、事業構成は事業の安定性の裏付けとなる。  事業構成のリスクが同業他社よりも低い。  信認に対する感応度の高い事業へのエクスポージャーが、同業他社よりも小さい。  収益の大半が、信用力に対する市場の認識への感応度が低い。 40. 以下に挙げる条件のいずれかが該当する場合、事業構成は事業の安定性を損なう(該 当する指標が多いほど、事業の安定性は低くなる)。  事業構成のリスクが同業他社よりも高い。  信認に対する感応度の高い事業へのエクスポージャーが同業他社よりも大きく、それが不 利な契約条件としてみられることもある。具体例として、財務制限条項(コベナンツ)、 信用トリガー、担保要件などが、同じ種類の事業に従事し、アンカー値が同程度の同業他 社の条件よりも厳しいことなどが挙げられる。  収益の大半が、信用力に対する市場の認識の影響を受けやすい。  考えられる規制・法律上の変更によって、企業の事業が大幅に損なわれる可能性がある。 ii) 収益の安定性 41. 収益の景気後退や市場の混乱期の影響の受けにくさの度合いに応じて、収益の安定性 が事業の安定性を下支えする。たとえば、経常的な手数料収入や金利収入、または長期 にわたる顧客との関係から生じる収益の総収入に占める割合が同業他社よりも高い場合 など。 42. 以下に挙げる条件のうち 1 つ以上に起因して、環境が悪化した時に収益が同業他社よ りも変動に左右されやすい場合、収益の安定性は事業の安定性を損なうことになる。  同業他社と比較して、トレーディング収益やその他の市況に左右されやすい収益、不安定 な事業や相関の強い事業の収益の割合が高い。  経常的な手数料収入や金利収入、または長期にわたる顧客との関係から生じる収益の総収 入に占める割合が、同業他社よりも低い。  収益の安定性が同業他社よりも低い。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 16 iii) 市場地位 43. 中核事業における収益性とプレゼンスについての確固たる実績があり、以下に挙げる 条件のうち少なくとも 1 つが該当する場合、その企業の市場地位は事業の安定性の裏付 けとなる。  市場シェアが同業他社の平均より高く、少なくとも同業他社と同程度に安定しており、か つ低価格による顧客つなぎとめへの依存度が同業他社と比較して高くはない。  次に挙げる理由のうち少なくとも 1 つが該当することを理由に、その企業の市場シェアが 伸長するか、または同業他社よりも持続可能であるとS&P が予想する――1)政府の施策 や規制によって、同業他社に対するよりも競争が制限されている、2)事業ライン全般に わたり、極めて高い市場シェアを持つ、3)非常に守りに強く変動性の低いニッチ事業、 特に参入障壁の高い事業に従事している、4)高い競争力を(平均よりも高い商品リスク を取ることなく)示している。 44. アンカー値が同程度の同じノンバンク金融機関セクターの他社に比べて、市場地位が 低いかまたは安定性が低い場合、市場地位は事業の安定性を損なう。同業他社に比べて、 収益性が弱いかまたは安定性が低いことは通常、市場地位が低いかまたは安定性が低い ことを示す。 iv) 顧客基盤 45. 以下に挙げる条件のうち少なくとも 1 つが該当する場合、顧客基盤は事業の安定性を支え る。  顧客基盤に確実な「粘着(定着)性」があると考えられる事業から、収益の大半を得ている。 つまり、会社が顧客と長期にわたる関係を築いているか、または顧客の行動の変化からの影響 を受けにくい(収益が契約によって経常的に発生するか、または両当事者にとって戦略的であ るため)ことを意味する。  顧客の大半がホールセールだが、過去の複数の経済混乱期にも、顧客ロイヤルティが維持 された。  複数の顧客、スポンサー、シンジケートパートナー、カウンターパーティが、自身の事業 プラットフォームを当該企業と連携して築いてきた。 46. 同業他社と比較して、収益の顧客の信認に対する感応度が高く、かつ以下に挙げる理由に より、会社の財務の逼迫時に、顧客やビジネスパートナーが当該企業との取引を続けるとい う確信を S&P があまり持てなければ、顧客基盤によって事業の安定性が損なわれることに なる。  顧客、スポンサー、シンジケートパートナー、カウンターパーティが、自身はほとんど影 響を受けずに、手を引くことができる。  顧客と当該企業との関係が、同業他社より弱いと考えられる。 47. 以下の理由により、同業他社より関係が弱い。

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 17  最終顧客(取引先)との直接的な関係がほとんどない。会社は事業の供給を第三者に依存 している。  顧客と当該企業との関係は、コモディティ化した商品に類似した一過性の取引が続いてい るもので、顧客は通常、顧客関係とは無関係に、最もコストの低い業者と取引する。 2)事業の多様性 48. 事業の多様性は事業ポジションの評価の 2 番目の内訳項目である(表 7 参照)。事業 の多様性の評価では、3 つの指標――事業ライン別収益の分散、地理的分散、顧客別収 益の集中――を分析する。事業の多様性は事業の安定性の内訳項目として位置付けられ てはいないが、企業の事業の安定見通しを強めたり弱めたりする。 表 7 事業の多様性の評価 評価 ガイダンス 強い(strong) 事業ラインの分散または地理的分散が、同業平均と比較して、非常に広範囲でかつ成功してい ることから、景気循環を通じて収益がさらに安定することが予想される。 適切(adequate) 同業平均と比較して、事業の集中度は特に大きくも小さくもなく、アンカー値で想定されたリスク を高めることも緩和することもない。 やや弱い(moderate) 同業平均と比較して、事業はやや集中しており、アンカー値で把握されているものを上回る若干 の追加的リスクを示しているが、信用上の重大な弱みとはなっていない。 弱い(weak) 事業が変動の激しい部門に集中しているおり、アンカー値で把握されているものよりも著しく大 きな付加的リスクを示している。そのため、信用上の大きな弱みとなっている。 49. 事業ライン別収益の分散 ここでは、収益に焦点を当て、市場の求めるものが収益に主 に寄与しているものから他のものにシフトすることに対して、企業が抱えているリスク を評価する。一事業ラインの著しい低迷や一事業ライン内の商品の販売停止によって、 収入が大幅に減少する企業は、事業の多様性の評価が「やや弱い」または「弱い」とな る。 50. 地理的分散 ここでは、特定の地理的な区域に対する企業のエクスポージャーを評価す る。通常は、1 国で得られた収益の割合として測定されるが、国の規模によっては、1 国の中の 1 地域、または複数の国にまたがる 1 地域を国とみなすこともある。1 国また は 1 地域における事業の著しい低迷や中止によって、収益が大幅に減少する企業は、事 業の多様性の評価が「やや弱い」または「弱い」となる。 51. 顧客別収益の集中 ここでは、1 件または少数の顧客の喪失の可能性に対するエクスポ ージャーを評価する。通常は 1 顧客または少数の顧客が収益に多大な貢献をしていると 考えるため、そのような顧客の喪失によって収益が大幅に減少すると予想される場合、 「ネガティブ(negative)」と評価する。証券会社については、カウンターパーティの集 中に基づいて評価する。会社の収益が顧客の流出に対して高い抵抗力があるのでない限 り、顧客別収益が分散していても、事業の多様性の評価が必ずしも「強い」となるわけ ではない。 52. S&P は、事業の多様性を「強い」と評価する企業はほとんどないと考える。集中の度 合いは通常、異なる事業ラインと地域の収益全体に対する寄与度を、同じセクターで類 似した産業リスクを持つ企業との比較することによって測定する。3 つの指標を併せて、

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 18 産業構造の変化、地域経済の変化、および 1 件以上の主要顧客の喪失に対する企業の抵 抗力を分析する。指標の 1 つが圧倒的に優位にあるのでない限り、以下のように評価す る。  すべての指標が「ネガティブ」の場合、事業の多様性の評価は通常、「弱い(weak)」となる。  指標の1つが「ネガティブ」であるために事業の安定性が損なわれる場合、評価は「弱い(weak)」 となる。  すべての指標が「ポジティブ(positive)」の場合、事業の多様性に優れ、「強い(strong)」と 評価される。  指標の 1 つが「ネガティブ」だが、指標の組み合わせがアンカー値における当該産業の評価 の典型である場合、「適切(adequate)」と評価される。  事業の多様性の指標のうち、すべてではないが、1 つ以上が「ネガティブ」と評価され、指標 の組み合わせがアンカー値における当該セクターの評価の典型より劣る場合、評価は通常、 「やや弱い(moderate)」となる。 53. 以下に、S&P がどのように事業の多様性を評価するかについての例を挙げる。 54. 多様性についての予測がポジティブであれば、内訳項目としての事業の多様性は「強 い(strong)」と評価される。ポジティブな予測が裏付けとなって「強い」と評価される のは、国内の景気下降局面において、業界と比べて相対的に強い収益力を過去に示して いた場合のみである。将来の予測はポジティブであるにもかかわらず、それを測るため の実績がない場合は、「適切(adequate)」と評価する。経済成長下では、多くの場合、 事業は成長過程にあり、収益源の分散が進む。しかしほとんどの企業にとっては、経済 が縮小するときにその分散は消滅し、そのため、信用力は悪化する。S&P では、市場環 境が変化すると複数の事業チャネルが縮小する事業の多様性の評価について、潜在的な 景気循環による影響を抑制するために、最近の景気後退期の企業の実績が入手可能であ ればそれに注目する。 55. 事業ラインの集中や、一定の所在地への事業の集中、比較的少数の顧客への事業の集 中があっても、集中が事業ポジション全体に大きな影響を及ぼすと予想されなければ、 「適切(adequate)」(ただし「強い」とはならない)の評価を裏付ける。規模の小さ い企業またはニッチの企業は、景気循環と事業サイクルを通じて、強い競合的地位と収 益の安定性を示すことがある。その場合、この内訳項目の評価は「適切(adequate)」 となる。 56. 競合的地位を容易に守れず、収益の安定性が低下する可能性があると考える場合、商 品の範囲や地理的な幅が限られていると、特に、地域、商品、顧客が高度に集中してい る企業では、同業他社より地域経済の悪化に対して脆弱であり、この内訳項目の評価は 「やや弱い(moderate)」または「弱い(weak)」となる。 57. 収益源が魅力的な地域、商品、顧客セグメントに集中していても、収益が安定してい る場合には、事業の多様性の評価が「適切(adequate)」以上となることがある。収益

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格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 19 源が集中しており、かつ変動的であれば、評価は「やや弱い(moderate)」以下となる。 地域経済の規模やノンバンク金融機関業界と市場の規模を踏まえて評価した場合に、収 益源が地理的に分散していれば、評価は「適切(adequate)」以上となる。集中度が高 くても、安定した収益が見込まれるかまたは収益が増加する見通しであれば、「適切 (adequate)」以上の評価となることがある。不安定な収益や収益の減少が続くと S&P が予想する場合には、事業の多様性の評価は「やや弱い(moderate)」が上限となる。 58. 限られた専門知識しか持たない新規の商品や国に参入することによって、事業ライン ごとの収益の多様化を図ることは、ポジティブな要因とはならない。また、市場で主導 的地位にある同業者と互角に勝負するのに最低限必要な供給量や普及率(クリティカル マス)が不足している場合も、ポジティブとはならない。この場合、新規分野・市場へ の参入リスクが伝統的な中核事業よりも高ければ、この内訳項目の評価は「やや弱い (moderate)」となる。 59. 買収については、買収資産が会社のバランスシート上にすでに存在するものと同類の 場合は、集中リスクを高める。会社が資産とリスクに照らしてリスク調整自己資本を増 強しない場合は、なおさらである。収益力にとって中立的またはポジティブで、事業ラ インの多様性、収益の地理的分散、顧客の分散を改善させる場合、買収の評価は、「適 切(adequate)」以上となる。 3)経営陣とガバナンス 60. 事業ポジションにおける 3 番目の内訳項目である経営陣とガバナンスでは、経営陣の 戦略的な力量、組織運営能力、リスク管理、ガバナンスの慣行が、どのように市場にお ける発行体の競争力と財務リスク管理力、ガバナンスの健全性を形成しているかを評価 する。重要な戦略と財務リスクの管理に、より優れていれば、信用力を高めることがあ る。

61. 経営陣とガバナンスについては、2012 年 11 月 13 日付「Methodology: Management And Governance Credit Factors For Corporate Entities And Insurers」(和訳版:2013 年 1 月 9 日 付「一般格付け規準:手法:事業会社と保険会社の経営陣とガバナンスに関する信用力 評価要因」、以下「経営陣とガバナンスの格付け規準」)をもとに、2 つの調整を加え て適用する(表 8-9 参照)。経営陣とガバナンスは、「強い(strong)」「中位(satisfactory)」 「特に不足はない(fair)」「弱い(weak)」で評価される(表 10 および段落 31 参照)。

表 8 経営陣の評価の指標

ポジティブ(positive) 中立的(neutral) ネガティブ(negative)

経営戦略の策定と遂行の評価に用いる指標 1. 戦略策定プロセス(経営 陣とガバナンスの格付け規 準の段落 16-17) 具体的な財務・事業目標と、そ れを達成する手段が明確に盛 り込まれた戦略策定が存在す る証左がある。 戦略策定が存在する証左はあ るが、深みに欠けるか、具体的 な財務・事業上の目標が欠如 している。達成する手段が不明 確。 戦略策定が存在する証左が 極めて限定的か、計画が表 面的である。

表 26  証券会社の資金調達の評価  スコア  意味  指針  非常に強い  (very strong)  安定調達カバレッジに関して非常に強い超過 資金調達源 があるとの S&P の見方を反映 している。証券会社の資産、事 業、そして市場を考慮すると、 調達需要に対する安定調達源 の超過額がある。こういった潤 沢な余剰能力があること、およ び、高品質の安定した資金調 達、中央銀行の資金調達への アクセスにより、資金調達リス クは限定的。  条件 3 および 1 または 2 のどちらかが該当。

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