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日本の公社債流通市場における 価格形成の特徴

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Academic year: 2022

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(1)

1 は じ め に

 近年,日本の公社債市場は,全体としての取引金額も増大してきてお り,種類も多様になりつつある。国債では10年長期債,20年超長期債の2 種類から,各種中期債や30年超長期債といった種類も増えてきているし,

社債の銘柄もかつてに比べ増えてきている。

 本稿は,公社債流通市場において,金利スワップ市場からみた相対価値 評価である,いわゆる「アセット・スワップ・スプレッド」(“asset swap

spread”)の計測を通じ,市場参加者が公社債に対して,どのような評価を

行っているかを明らかにする試みである。

 アセット・スワップは,相対的な価格形成をみるために最適なツールで ある。固定利付債のキャッシュ・フローの変動金利キャッシュ・フローへ

商学論纂(中央大学)第55巻第5・6号(2014年3月)  643

日本の公社債流通市場における 価格形成の特徴

──アセット・スワップ・スプレッドを利用した実証分析──

高 橋 豊 治

   目   次 1 は じ め に

2 日本の公社債市場の現状

3 アセット・スワップを用いた相対価値分析 4 スプレッドの変動要因

5 お わ り に

(2)

の変換は,全般の金利水準のリスクやクーポンの効果を限定的にする。さ らに,どちらのポジションもイールド・カーブを同じ金利水準で落ちてく るため,イールド・カーブの形状によるリスクを限定的にする。どのポイ ントでもアセット・スワップのパッケージのNPVは,スワップの解約と 債券の売却により求めることができるわけなので,債券とスワップの利回 り格差により生じる価値が,債券のアセット・スワップ・スプレッドとし て求められることになる。こうした理由から,実務家はアセット・スワッ プ・スプレッドを債券市場の分析に頻繁に活用してきた。

 アセット・スワップ・スプレッドを利用した研究は,それほど多くない

が,Tonge, D.(2001)は,アセット・スワップ・スプレッドの分析を通じ

てCEEMEA固定利付債投資戦略への活用を試みている。日本の市場につ

いては,家田・大庭(1998)は,1997年5月から1998年3月までの期間に ついて,日本の社債市場でのアセット・スワップ・スプレッドを計測 し1,スプレッドに対する重要な影響要因を検証し,残存年数,利率,格 付が重要な要因であることを明らかにしている。高橋(1999)では,国債 市場におけるアセット・スワップ・スプレッドを検証している。

 一方で,T-noteと金利スワップとのスプレッドに代表される,国債と金 利スワップとの間の利回り水準の差(スワップ・スプレッド)に関しては,

様々な形で検討が加えられている。Grinblatt(2001)は,スワップ・スプ レッドが,国債とユーロドル金利との流動性の格差によるものであるとし ている。Longstaff and Schwartz(1995),Duffie and Huang(1996),Lekkos and Milas(2001),Blanco, et al.(2005),In, Brown and Fang(2003),and Afonso and Strauch(2007)などでは,スワップ・スプレッドをスワップの

1) 日本では,「アセット・スワップ・スプレッド」は「LIBORスプレッド」

と呼ばれることが多い。ここで取り上げた家田・大庭(1998)や高橋(1999)

は,その代表例である。

(3)

相手方の様々なリスクを補償するために必要なリスク・プレミアムである とし,実証分析によりそのことを確認している。しかし,Lekkos and

Milas(2001)は,金利の期間構造の変化のスワップ・スプレッドへの影響

はスワップの満期によって一様ではないことを明らかにしている。Huang

and Chen(2007)は,流動性プレミアムが,金融引き締め期の2年物のス

ワップ・スプレッドの動きに対する唯一の影響因であること,デフォル ト・リスクの影響は,金融環境とスワップの満期構成によって異なること を明らかにしている。決定要因の相対的な重要性と,スワップ・スプレッ ドが形成される過程は,アメリカにおける金融環境の違いにより変わるこ とを分析している。

 日本の市場については,Eom, et al.(2000),Eom, et al.(2002),Fehle

(2003),Huang et al.(2008)らの研究がある。これらの研究では,日本の スワップ・スプレッドに対する影響要因を検討し,スワップの相手方のデ フォルト・リスク,金利のボラティリティ,LIBORの流動性リスク,イ ールド・カーブの傾きなどが,スワップの契約期間,分析対象期間に応じ てスワップ・スプレッドに影響を与えることを明らかにしている。

 本稿の構成は,以下の通りである。まず2節では,取引データから,日 本の公社債流通市場について概観するとともに,金利スワップ市場につい ても確認する。第3節では,アセット・スワップについて確認し,相対価 値を認識する手法について,明らかにする。第4節では,2004年から2009 年の期間を対象に,流通市場で取引されている個々の銘柄についてアセッ ト・スワップ・スプレッドを計測するとともに,その主要な影響要因を検 討する。最後に第5節で,要約と結論を述べる。

2

 日本の公社債市場の現状

 公社債流通市場のうち店頭売買市場の現状を日本証券業協会の公表する

(4)

公社債種類別店頭売買高からのデータをもとに確認することにしよう2。 図1は1998年12月から2013年8月までの期間について公社債の種類別に店 頭売買状況を示したものである。いずれも単位は億円で,国債のみ左目 盛,それ以外は右目盛である。

 この期間においては,周期的な動きがあるものの,おおむねトレンドと しては売買高が増大していることが読み取れる。次に,国債の内訳ごとの 売買高を示したものが,図2である。この図をみると,全期間を通じて長 期国債の売買高が大きいことがわかる。また,中期国債の売買高の伸びが 著しく,超長期国債の売買高も伸びてきている。

 次に,売買高の割合を示したものが図3である。これをみると売買高に 占める国債の割合が圧倒的に大きく,他の債券は全体でも1割にも満たな いことがわかる。社債等の種類は増えてきたものの,依然として国債中心 で市場が形成されているということができよう。

 さらに,国債以外の公社債の売買高に占める割合をみたものが図4であ る。

 以上の状況から公社債市場での売買高としては,国債の割合が圧倒的に 大きく,中でも長期国債の占める割合が大きいことがわかる。

 一方,金利についてのデリバティブ,特に金利スワップは,ここ10年間 で指数的に増大している。最近の推計によると,民間の店頭デリバティブ 契約の名目残高は,1997年の29兆米ドルから,2007年12月末には310兆米 ドルに増大している3。主要な参加者のうち,日本円の金利スワップは,

2) 日本証券業協会のウエブサイトhttp://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/shu rui/index.htmlよりダウンロードした。

3) この期間において,金利スワップのすべての相手方に対する通貨ごとの(純)

名目元本の残高は,ユーロ119,米ドル96,日本円49,英ポンド23だった(単位 は,それぞれ100万米ドル)。また,通貨ごとの金利スワップのシェアは,ユー ロ40%,米ドル34%,日本円17%,英ポンド8%だった(BIS(2009)より)。

(5)

図1 公社債種類別店頭売買高の推移 出所:日本証券業協会ウエブサイト(http://www.jsda.or.jp/shiryo/toukei/shurui/index.html)のデータをもとに作成

14,000,000 12,000,000 10,000,000 8,000,000 6,000,000 4,000,000 2,000,000 0

100,000 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0

(億円)(億円)

1998 12 .. 1999 03 . 1999 06 . 1999 09 . 1999 12 . 2000 03 . 2000 06 . 2000 09 . 2000 12 . 2001 03 . 2001 06 . 2001 09 . 2001 12 . 2002 03 . 2002 06 . 2002 09 . 2002 12 . 2003 03 . 2003 06 . 2003 09 . 2003 12 . 2004 03 . 2004 06 . 2004 09 . 2004 12 . 2005 03 . 2005 06 . 2005 09 . 2005 12 . 2006 03 . 2006 06 . 2006 09 . 2006 12 . 2007 03 . 2007 06 . 2007 09 . 2007 12 . 2008 03 . 2008 06 . 2008 09 . 2008 12 . 2009 03 . 2009 06 . 2009 09 . 2009 12 . 2010 03 . 2010 06 . 2010 09 . 2010 12 . 2011 03 . 2011 06 . 2011 09 . 2011 12 . 2012 03 . 2012 06 . 2012 09 . 2012 12 . 2013 03 . 2013 06

財投機関債等 特定社債国債 交通債・放送債 新株予約権付社債

公募地方債 金融債 円貨建外国債

政府保証債 社債 非公募債

(6)

図2 公社債種類別店頭売買高の推移(国債の内訳) 出所:図に同じ公募地方債 社債

100,000 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0

(億円) 特定社債政府保証債財投機関債等 新株予約権付社債交通債・放送債 円貨建外国債金融債 非公募債

1998 12 .. 1999 03 . 1999 06 . 1999 09 . 1999 12 . 2000 03 . 2000 06 . 2000 09 . 2000 12 . 2001 03 . 2001 06 . 2001 09 . 2001 12 . 2002 03 . 2002 06 . 2002 09 . 2002 12 . 2003 03 . 2003 06 . 2003 09 . 2003 12 . 2004 03 . 2004 06 . 2004 09 . 2004 12 . 2005 03 . 2005 06 . 2005 09 . 2005 12 . 2006 03 . 2006 06 . 2006 09 . 2006 12 . 2007 03 . 2007 06 . 2007 09 . 2007 12 . 2008 03 . 2008 06 . 2008 09 . 2008 12 . 2009 03 . 2009 06 . 2009 09 . 2009 12 . 2010 03 . 2010 06 . 2010 09 . 2010 12 . 2011 03 . 2011 06 . 2011 09 . 2011 12 . 2012 03 . 2012 06 . 2012 09 . 2012 12 . 2013 03 . 2013 06

(7)

図3 公社債種類別店頭売買高の推移 出所:図に同じ

100 98 96 94 92 90 88 86 Government Bonds Convertible BondsTransportation & NHKGovt. Guaranteed Private OfferingCorporateFILP‑Agency Bonds Specified Asset Backed SecuritiesPublic Offering Municipal Yen-Denominated ForeignBank Debentures 1998

.12 2010 .08

2010 .03

2009 .10

9 200 .05

2008 .12

2008 .07

2008 .02

2007 .09

7 200 .04

2006 .11

2006 .06

2006 .01

2005 .08

2005 .03

2004 .10

2004 .05

2003 .12

2003 .07

2003 .02

2002 .09

2002 .04

2001 .11

2001 .06

2001 .01

2000 .08

2000 .03

1999 .10

1999 .05

2011 .01

(%)

(8)

図4 公社債種類別店頭売買高の推移(国債以外) 出所:図に同じ Convertible BondsTransportation & NHKGovt. Guaranteed Private OfferingCorporatePublic Offering Municipal Yen-Denominated ForeignBank Debentures FILP‑Agency Bonds Specified Asset Backed Securities

1998 .12

2010 .08

0 201 .03

2009 .10

2009 .05

2008 .12

8 200 .07

2008 .02

2007 .09

2007 .04

6 200 .11

6 200 .06

2006 .01

2005 .08

5 200 .03

2004 .10

2004 .05

2003 .12

2003 .07

2003 .02

2002 .09

2002 .04

2001 .11

2001 .06

2001 .01

2000 .08

2000 .03

1999 .10

1999 .05

2011 .01

100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

(%)

(9)

総残高の平均約17%と,世界のデリバティブ取引のうちで重要な役割を果 たしている。円の国際取引や金融における重要な役割からすれば,日本円 の金利スワップが米ドルに次ぐ大きな位置を占めるのは,決して不思議な ことではないだろう。円金利スワップ取引の拡大は,スワップの金利設定 メカニズムを理解することの重要性を物語っていると考えることができ る。

 スワップ金利はしばしば,スワップの満期日に近い満期の国債利回りに 対する利鞘,あるいは,スプレッドの形で提示される。これは,国債がス ワップ取引やスワップ・ポートフォリオに対する,(部分)ヘッジのツー ルとして利用されるためである。しかし,円金利スワップの場合には,異 なった提示方法が採用されるのが一般的である。円金利スワップの場合,

取引の金利は,(米ドルのスワップのように)国債に対するスプレッドの形で 提示されるのではなく,金利の形で提示されるのが一般的である。これ は,円金利スワップ取引の歴史的な経緯を反映したものと考えられる。

 1980年代半ばに,日本の金利スワップ取引がスタートした,多くの邦銀 がスワップデスクを開設し,スワップ・ポジションのヘッジを始めた。

1986年には,米銀が日本において円金利スワップのマーケット・メイクを 始めた。当時の国債市場は,「歪んだ」市場(“kinky” market)であると考 えられていた。国債の取引は,「指標銘柄」に集中し,銘柄間の裁定取引 は活発ではなかった。こうしたことから,長期国債ではなく,円金利スワ ップが,中長期金利の指標として重要な役割を果たして,金利の提示は国 債利回りに対するスプレッドの形で行われていなかった。こうした状況 は,1990年代終りごろから変化が生じ始めた。金融の規制緩和が加速し,

大蔵省(当時)は,国債発行において満期の多様化を図るようになった。

取引は多様化し,裁定取引が活発になり,指標銘柄は,1999年3月に役目 を終えることになった。

(10)

3 アセット・スワップを用いた相対価値分析

3.1 アセット・スワップ・スプレッド

 相対価値分析の基本は,キャッシュ・フローを,通常ベイシス・リスク をとることにより,より少ないコストで合成することにある。ミスマッチ のキャッシュ・フローの評価を中心におく,イールド・カーブ分析と対照 的である。アセット・スワップは,合成FRNを創造することで,次のよ うな観点の同じ評価基準を提供することができるため,国債の相対価値分 析に最適である。

・ 国債については,クレジット・リスクの変数はない

・ スワップで債券の固定金利キャッシュ・フローを合成することで,

次のミスマッチをヘッジできる。

・ クーポン(coupon)

・ 金利のデュレーション(方向性のリスク)interest-rate duration(direc- tional risk)

・ イールド・カーブのリスク(curve exposure)

・ アセット・スワップは取引可能

 完成したアセット・スワップ・パッケージの価格と想定元本はパーに固 定される。典型的な価格がパーでない債券の場合,価格をパーに設定する ために,アップ・フロントのキャッシュ・フロー交換が発生する。このよ うなパーのアセット・スワップ・パッケージは,それ以外のアセット・ス ワップよりも多く取引されている。この場合,出来上がりの(合成された)

変動利付債(Floating Rate Notes : FRNs)は,実質的には図5のようなキャ ッシュ・フローになる。

(11)

        ti, j−ti, j−1

 ここで,図5においてli, j=100(Li, jαi )─────である。

       360

 個々の銘柄の債券を,同じ時期に利払が行われる変動利付債へ置き換え るという再評価は,図6にみられるようなアセット・スワップを行うこと で可能である。したがって,ある債券のアセット・スワップ・スプレッド

図5 Synthetic FRN cash flow

0 1 2 3 4 5 6 7… n−5 n−4 n−3 n−2 n−1 n

100

100+

li,1 li,2 li,3 li,4 li,5 li,6 li,7 li,n−5 li,n−4 li,n−3 li,n−2 li,n−1

li,n

FRN cash flow

図6 synthetic FRN のためのアセット・スワップ・キャッシュ・フロー 0 1 2 3 4 5 6 7… n−5 n−4 n−3 n−2 n−1 n

100

li,1 li,2 li,3 li,4 li,5 li,6 li,7 li,n−5 li,n−4 li,n−3 li,n−2 li,n−1 li,n

asset swap cash flow

PiAi

Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2 Ci

2

(12)

は,次式を満たすことが必要となる4。    Cin      n      ti, j−ti, j−1

  ──

Σ

d(ti, j)100

Σ

(Li, jαi)・─────・d(ti, j)+(Pi+Ai ) ⑴    2 j=1     j=1       360

 したがって,債券iのアセット・スワップ・スプレッドαiは,次式で 推計することができる5

     Cin

    ──

Σ

d(ti, j)100(Pi+Ai)100{1d(ti, n)}

     2 j=1

  αi=───────────────────── ⑵        n    ti, j−ti, j−1

         100

Σ

──────・d(ti, j)

       j=1   360

 こうして推計されるスプレッドは,投資収益率を示すものであり,スプ レッドの低い銘柄は収益率が低い訳であるから価格が相対的に高い(割 高),逆に高い銘柄は価格が相対的に安い(割安)ことを意味している。

3.2 データと推計

 以上の考え方をもとに,高橋(2005)などでの分析対象を拡張し,2004 4) ⑴式における記号は以下の通り。

  n:債券iの償還日までの利払回数

  ti, j:債券ij番目(j=1, 2, . . . , n)の利払日までの日数   Ci:債券iのクーポン

  d(t):t日のディスカウント・ファクター

  Pi:債券iの時価(裸値,額面100円あたり)

  Ai:債券iの評価時点における経過利息

  Li, j:(債券iのキャッシュ・フローに対応する)区間[tj-1tj-1]の変動金利   αi:債券iのスプレッド

5) なお一般には,アセット・スワップ・スプレッドαは,basis point(0.01

%)を単位として表記されることから,最終的には ⑵ 式で推計したαの値 を10000倍して表示するのが一般的である。本稿でも計測結果の表現等では,

この表記法に従った。

(13)

年1月から2009年12月までの,毎月20日時点(休日の場合は翌営業日)のデ ータをもとに,公社債流通市場のアセット・スワップ・スプレッドの計測 を行った。計測にあたって利用したデータは以下の通り。

・ 国内公社債流通市場のデータとしては,日本証券業協会の公表する

「公社債店頭売買参考統計値」データのうち,日本格付研究所(JCR)

からBBB−以上(2008‑2009年はBB+以上)の格付を得ている銘柄と 長期国債(以下JGBと略記する)を対象とする6

・ スワップ市場でのディスカウント・ファクターは,休日も考慮した 実際のスワップ・キャッシュ・フローをもとに推計することとした。

不足する情報に関しては市場金利を線型補間することで推計し,債券 キャッシュ・フローに対応するアセットスワップ・キャッシュフロー 評価に必要なディスカウント・ファクターも同様に線型補間により推 計した7

4

 スプレッドの変動要因

4.1 グラフによる分析

 図7は,こうした推計結果のうち,2004年1月〜2005年12月のものをグ ラフにしたものである。グラフでは横軸に残存年数を,縦軸にbp表示の スプレッドをとり,各債券のスプレッドをプロットしている。さらに2004 年1月と2005年1月については,格付ごとのグラフにしたものを図8から 6) ただし,クレジット・モニター,依頼を受けない格付の銘柄は除いている。

7) 市場金利としては,LIBORはBBA(British Bankers Assosiation)LIBOR を,スワップ・レートはTSR(Tokyo Swap Reference Rate)を利用した。

なお,スワップ・レートに関しては,この他にも,ロイター(Reuter)の ISDAFIX1やブルームバーグ(Bloomberg),データストリーム(DataStream),

日経NEEDSなどの情報を利用することも可能である。ディスカウント・フ

ァクター推計方法の詳細に関しては,高橋[2002]等を参照のこと。

(14)

図18へ,2004年12月20日時点のデータの計測結果を図19から図29へ,2005 年1月20日時点のデータの計測結果を図30から図40に示している。また,

格付ごとのスプレッドの平均の時系列的な推移を図41から図43に示してお いた。

 グラフから読みとれるが,格付が低くなるほどアセット・スワップ・ス プレッドは高くなり,いくつかの例外はみられるものの,ばらつき(分散)

が大きくなる傾向にあると考えられそうである。

図7 アセット・スワップ・スプレッドの計測結果    (2004/1─2005/12)overall

Asset swap spread

Year to maturity 350.00

300.00 250.00 200.00 150.00 100.00 50.00 0.00 -50.00

2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 16.00 18.00 20.00 22.00 24.00 01JGB 02AAA 03AA+ 04AA 05AA- 06A+

07A 08A- 09BBB+ 10BBB 11BBB-

(15)

図9 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)AAA

AAA (2004/01/20) 30.0

20.0 10.0 0.0

−10.0

−20.0

−30.0

−40.0

−50.0

30.00 30.00 0.00

0.00 55..0000 1010..0000 1515..0000 2020..0000 2525..0000 図8 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)JGB 0.0

−5.0

−10.0

−15.0

−20.0

−25.0

−30.0

−35.0

−40.0

12.00 12.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000

JGB (2004/01/20)

(16)

図11 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)AA 30.0

25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0

−5.0

−10.0

AA (2004/01/20)

12.00 12.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 図10 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)AA+ 14.0

12.0 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0

−2.0

−4.0

12.00 12.00

AA+(2004/01/20)

16.00 16.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1414..0000

(17)

図12 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)AA− 35.0

30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0

−5.0

−10.0

AA−(2004/01/20)

12.00

12.00 1616..0000 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1414..0000

図13 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)A+

A+(2004/01/20)

20.00 20.00 18.00 18.00 16.00 16.00 14.00 14.00 12.00 12.00 10.00 10.00 8.00 8.00 6.00 6.00 4.00 4.00 2.00 2.00 0.00 0.00 100.0

80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

−20.0

(18)

図14 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)A 120.0

100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

−20.0

A (2004/01/20)

14.00 14.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1212..0000

図15 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)A− 100.0

80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

−20.0

A−(2004/01/20)

9.00 9.00 0.00

0.00 11..0000 22..0000 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000 77..0000 88..0000

(19)

図16 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)BBB+ 180.0

160.0 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

BBB+(2004/01/20)

12.00

12.00 1616..0000 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1414..0000

図17 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)BBB 250.0

200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

BBB (2004/01/20)

7.00 7.00 0.00

0.00 11..0000 22..0000 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000

(20)

図18 格付ごとのスプレッド(2004/1/20)BBB− 350.0

300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

BBB−(2004/01/20)

9.00 9.00 0.00

0.00 11..0000 22..0000 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000 77..0000 88..0000

図19 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)JGB 0.0

−5.0

−10.0

−15.0

−20.0

−25.0

−30.0

−35.0

−40.0

12.00 12.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000

JGB (2004/12/20)

(21)

図20 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)AAA

AAA (2004/12/20)

30.00 30.00 5.00

5.00 1010..0000 2020..0000 2525..0000 0.00

0.00 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0

−10.0

−20.0

−30.0

−40.0

−50.0

−60.0

15.00 15.00

図21 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)AA+ 20.0

15.0 10.0 5.0 0.0

−5.0

−10.0

AA+(2004/12/20)

14.00 14.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1212..0000

(22)

図22 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)AA

AA (2004/12/20)

25.00 25.00 20.00

20.00 15.00

15.00 10.00

10.00 5.00

5.00 0.00

0.00 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0

−5.0

−10.0

図23 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)AA−

AA−(2004/12/20)

12.00

12.00 1414..0000 1616..0000 10.00

10.00 8.00 8.00 6.00 6.00 4.00 4.00 2.00 2.00 0.00 0.00 30.0 25.0 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0

−5.0

(23)

図24 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)A+

A+(2004/12/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0

−10.0

−20.0

−30.0

図25 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)A 70.0

60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0

−10.0

A (2004/12/20)

12.00 12.00 10.00

10.00 8.00

8.00 6.00

6.00 4.00

4.00 2.00

2.00 0.00

0.00

(24)

図26 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)A−

A−(2004/12/20)

16.00 16.00 14.00 14.00 12.00 12.00 10.00 10.00 8.00 8.00 6.00 6.00 4.00 4.00 2.00 2.00 0.00 0.00 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0.0

−10.0

−20.0

図27 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)BBB+ 140.0

120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

BBB+(2004/12/20)

14.00 14.00 0.00

0.00 22..0000 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 1212..0000

(25)

図28 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)BBB

BBB (2004/12/20)

12.00 12.00 2.00

2.00 44..0000 66..0000 88..0000 1010..0000 0.00

0.00 160.0 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

−20.0

−40.0

図29 格付ごとのスプレッド(2004/12/20)BBB− 180.0

160.0 140.0 120.0 100.0 80.0 60.0 40.0 20.0 0.0

BBB−(2004/12/20)

8.00 8.00 0.00

0.00 11..0000 22..0000 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000 77..0000

(26)

図30 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)JGB

0.00 0.00

JGB (2005/01/20) 2.00

2.00 1.00

1.00 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000 77..0000 88..0000 99..0000 1010..0000 350.0

300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

図31 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)AAA

AAA (2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 1.00

1.00 0.00

0.00 22..0000 350.0

300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

(27)

図32 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)AA+ 350.0

300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

AA+(2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 1.00

1.00 0.00

0.00 22..0000

図33 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)AA

AA (2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 1.00

1.00 22..0000 0.00

0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

(28)

図34 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)AA−

AA−(2005/01/20) 350.0

300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.000..0000 11..0000 22..0000 33..0000 44..0000 55..0000 66..0000 77..0000 88..0000 99..0000 1010..0000

図35 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)A+

A+(2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

(29)

図36 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)A

A (2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

図37 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)A−

A−(2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

(30)

図38 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)BBB+

BBB+(2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

図39 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)BBB

BBB (2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

(31)

図40 格付ごとのスプレッド(2005/1/20)BBB−

BBB−(2005/01/20)

10.00 10.00 9.00 9.00 8.00 8.00 7.00 7.00 6.00 6.00 5.00 5.00 4.00 4.00 3.00 3.00 2.00 2.00 1.00 1.00 0.00 0.00 350.0 300.0 250.0 200.0 150.0 100.0 50.0 0.0

−50.0

図41 平均スプレッドの推移(2004─2009 JGB〜BBB−)

1200 1000 800 600 400 200 0

−200 bp

Jan‑2004 Jul‑2004

Jan‑2005 Jul‑2005

Jan‑2006 Jul‑2006

Jan‑2007 Jul‑2007

Jan‑2008 Jul‑2008

Jan‑2009 Jul‑2009 JGB

A

AAA A−

AA+

BBB+

AA BBB

AA−

BBB−

A+

(32)

図43 平均スプレッドの推移(2004─2009 JGB〜AA−)

60 50 40 30 20 10 0

−10

−20

−30

−40

−50 bp

Jan‑2004 Jul‑2004

Jan‑2005 Jul‑2005

Jan‑2006 Jul‑2006

Jan‑2007 Jul‑2007

Jan‑2008 Jul‑2008

Jan‑2009 Jul‑2009

JGB AAA AA+ AA AA−

図42 平均スプレッドの推移(2004─2009 JGB〜A−)

250 200 150 100 50 0

−50

−100 bp

Jan‑2004 Jul‑2004

Jan‑2005 Jul‑2005

Jan‑2006 Jul‑2006

Jan‑2007 Jul‑2007

Jan‑2008 Jul‑2008

Jan‑2009 Jul‑2009 A

AA A AA JGB

AA AAA A

(33)

4.2 回 帰 分 析

 計測されたアセット・スワップ・スプレッドの決定要因について,より 詳細に検討するため,残存年数・直接利回り(直利)・格付(ダミー)を説 明変数としたクロス・セクションでの回帰分析を試みた。

 まず,予想される符号条件を考えてみよう。残存年数に関しては,前述 の通り残存期間が長いほど,同じ企業が発行する社債であっても信用力が 低くなる可能性があるため,投資家はそれだけ高い収益性を求めるであろ う。この考え方に従えば,残存年数が長いほどスプレッドは高くなるはず であり,回帰係数の符号はプラスとなると予想される。直利に関しては,

利率は同じ時期に発行される債券については,信用力が低いほどあるいは 償還期間が長いほど高く設定されるのが一般的である。この利率と現在の 債券価格から計算される(キャピタル・ゲイン部分を除いた)現在の収益率 を示すものであるから,直利が高いほどスプレッドは高くなるはずであ り,回帰係数の符号はプラスとなると予想される。格付については,信用 力を示す指標であるから,投資家は,格付が低いほどより高い収益率を要 求すると考えられる。ここでの分析では,格付をプラス・マイナスのノッ チも含めたダミー変数の形で回帰を行っているため,回帰係数としては,

プラスの符号となることが予想される。

 表1から表3は,各時点での回帰結果を示したものである。表では5%

水準で有意な係数に関しては網掛けをして表している。すべての時点にお いて,切片CNSTの符号は有意にマイナスの結果となっている。切片の 値がマイナスなのは,この計測式での基本となっているJGB(残存ゼロ年)

のスプレッドがマイナスであることを示しているもので,納得できる結果 であろう。残存年数YRと格付ダミーについては,表1,表2に示されて いる2004〜2007年までの期間と,表3に示されている2008〜2009年の期間 では大きな違いがみられる。

(34)

表1 スプレッドの回帰分析結果(2004‑2005) dateCNSTYRCYAAAAA+AAAA‑A+AA‑BBB+BBBBBB‑R2 2004/01/20‑2922518162224363952791021290.6831 2004/02/20‑283141817232436394975951260.6236 2004/03/22‑25355615202131344465771100.6046 2004/04/20‑2125771419212730395664970.5701 2004/05/20‑2222281621222832405561980.5661 2004/06/21‑2128471419192629385356950.5601 2004/07/20‑222‑4971520202930385355740.6474 2004/08/20‑242‑4891721223131395357820.6159 2004/09/21‑192‑3461318182526344849730.6212 2004/10/20‑192‑4161317182627314547710.5888 2004/11/22‑202‑6981417202628334546680.5857 2004/12/20‑172‑1161214182324304143620.5876 2005/01/20‑182‑2871215182425304043630.5974 2005/02/21‑181‑7791516192425314047560.5639 2005/03/22‑182‑5471114172224293749460.5566 2005/04/20‑182‑4371314172323293848510.5511 2005/05/20‑192‑6781517192626314050530.5591 2005/06/20‑172‑3471315172424293847490.5591 2005/07/20‑182‑3871315172424294047500.5545 2005/08/22‑192‑4891417182325304047480.5397 2005/09/20‑182‑3871315172023283755400.5677 2005/10/20‑182‑571316162023293759400.5779 2005/11/21‑2014381417212124303967470.5206 2005/12/20‑20122161316202023304180460.4249 (注)Shadowed cells show 5% sinnificance level.

(35)

表2 スプレッドの回帰分析結果(2006‑2007) dateCNSTYRCYAAAAA+AAAA‑A+AA‑BBB+BBBBBB‑R2 2006/01/20‑21215891419222427314484510.4502 2006/02/20‑241151101621242731354989580.4776 2006/03/20‑2911811115212728323763109750.4518 2006/04/20‑3002771216262938443964100790.3921 2006/05/20‑2311851217273040444366102800.3924 2006/06/20‑3012381418283138424059101730.4008 2006/07/20‑2411681921293643464366106750.4059 2006/08/21‑252162022313946484870114830.5015 2006/09/20‑262681819293744474572114830.5201 2006/10/20‑2811811924313745464870711390.5546 2006/11/20‑2621541923303745464869701390.5313 2006/12/20‑2422331721273442434571661390.5061 2007/01/22‑2422031721273343454670681400.5219 2007/02/20‑2621141723263241444667671270.5222 2007/03/20‑2922531620263140404571651240.5424 2007/04/20‑3111661822263141404769661230.5147 2007/05/21‑2911961824253141384666681190.4986 2007/06/20‑2512611521222838354460601120.4717 2007/07/20‑2813241521213040364463631150.4760 2007/08/20‑382‑1302422272638405548661000.4502 2007/09/20‑361‑211242126273638525373750.4788 2007/10/20‑312‑80222125263539685375750.3648 2007/11/20‑36184252228283949735476810.3614 2007/12/20‑311‑144242226304350765378800.8462 (注)Shadowed cells show 5% sinnificance level.

(36)

表3 スプレッドの回帰分析結果(2008‑2009) dateCNSTYRCYAAAAA+AAAA‑A+AA‑BBB+BBBBBB‑R2 2008/01/22‑311206242226304251775380890.3942 2008/02/20‑542756282432386273107671031220.3546 2008/03/21‑542756282432386273107671031220.3229 2008/04/21‑511884312635386077112691041210.2893 2008/05/20‑431781302533375468109681001190.2885 2008/06/20‑580211928193133496710666973260.2674 2008/07/22‑399‑173025145‑4641‑1413284‑28‑26‑93900.2038 2008/08/20‑510159033233637617414376108740.2342 2008/09/22‑520204431223536646815277107710.2144 2008/10/20‑600264034233835807617481136900.2173 2008/11/20‑741318536214748908318493158980.2364 2008/12/22‑7913681182446451141362161321941510.3054 2009/01/20‑8904298382753531201442281432271550.2986 2009/02/20‑7613582402953581211121691763831760.3704 2009/03/23‑7503357403053611341211831983701870.3954 2009/04/20‑7013238342548591251161832093552130.3976 2009/05/20‑6813194302046571171051671973752240.3878 2009/06/22‑71133772315345299921501764222050.3534 2009/07/21‑89‑147552512335192901541634842000.3171 2009/08/20‑116‑47647289344382881391476354380.2631 2009/09/24‑5421474171628498579991482044330.4071 2009/10/20‑5311562181527488474961311824500.3647 2009/11/20‑52115711715264456989211415610690.5228 2009/12/21‑73‑1377017102338508811320015111320.4208 (注)Shadowed cells show 5% sinnificance level.

(37)

 残存年数YRの係数は,2007年9月までは,2006年4月を除いて,有意 にプラスという結果になっている。切片がマイナスという状態を基準に,

残存年数に関してはプラスであるから,スプレッドと残存年数のグラフは 右上がりの曲線として描けることを示している。さらには,2008年6月ま では,各格付ダミーもすべてプラスで有意であり,数値を比較すると格付 が低いダミーほど係数の値が大きくなっていることがわかる。ということ は,スプレッドと残存年数の右上がりのグラフが,格付ごとに(低格付ほ ど)上方にシフトした形で描けるということになる。しかしながら,表3 に示した,2008〜2009年の計測結果では,自由度調整済みの決定係数の値 が大きく低下し,残存年数・格付(ダミー)の影響が有意でないものが増 えているし,一部にはマイナスで有意なものもあった。

 一方,直利CYに関しては,表1をみると,2004年の1月20日と2月20 日,2005年12月のみ有意でプラスの値となっているが,それ以外の時点に 関しては有意でなく,符号も一定していない。表2をみると,2007年の8 月,9月,10月,12月を除いて,有意でないか有意にマイナスである。と ころが表3では,直利の影響がプラスで有意な期間が圧倒的に多くなって いる。

 当初は有意でプラスであったものの3月22日以降の推計結果に関しては 有意でなくなり,当初はプラスであったものが7月20日以降はマイナスの 符号(有意ではない)となっている。これは,かつて言われていた投資家 の直利志向が,この期間では観察できないことを意味している。

 それ以外の回帰係数に関しては,すべて有意で符号も予想した方向とな っている。

5 お わ り に

 本稿では,市場参加者の企業価値評価の状況を知るため,スワップ市場

(38)

情報を利用して債券の評価を行うアセット・スワップ・スプレッドと呼ば れるアイデアを紹介し,それを債券流通市場「全体」としての特徴を明ら かにするために活用した。アセット・スワップ・スプレッドの推移を格付 ごとに分類した平均スプレッドで観察した。一部の格付でスプレッドに逆 転する期間があるものの,一般的には格付が低いほどスプレッドが高いと いう予想通りの結果が得られている。

 さらに,計測されたスプレッドの決定要因について,より詳細に検討す るため,残存年数・直接利回り(直利)・格付(ダミー)を説明変数とした クロス・セクションでの回帰分析を試みた。結果は2004〜2007年と2008〜

2009年では大きく異なっている。

 2004〜2007年の期間では,残存年数は全期間で有意にプラスの影響が観 察された。これは予想した通りの結果といえよう。次に,直接利回り(直 利)は2004年1,2月と2005年12月有意にプラスの影響が観察された。こ れは予想した結果とは異なるものであった。また,その他の期間は有意な 影響はないことが確認された。格付については,全期間ですべての格付

(ダミー)が有意にプラスの影響が観察されている。これは予想した通りの 結果といえよう。この結果から,この計測式での基本となっているJGB

(残存ゼロ年)のスプレッドがマイナスであり,さらにそこからスプレッド と残存年数のグラフは右上がりの曲線として描けることを示している。さ らには,スプレッドと残存年数の右上がりのグラフが,格付ごとに(低格 付ほど)上方にシフトした形で描けるということになる。一方で,従来言 われていた投資家の直利志向は,この期間では観察されないことが示され ている。

 しかしながら,2008〜2009年の計測結果では,自由度調整済みの決定係 数の値が大きく低下し,残存年数・格付(ダミー)の影響が有意でないも のが増えているし,一部にはマイナスで有意なものもあった。また直利の

(39)

影響がプラスで有意な期間が圧倒的に多くなっている。

 今回のアセット・スワップ・スプレッドの計測結果は,主として残存年 数,格付との関連で整理したが,このほかにグラフをより詳細にみると,

(特に低格付の場合)同じ格付の中でも,スプレッドが大きく異なるいくつ かのサブ・グループに分けられそうなものがあった。こうしたものを詳細 に観察してみると,同じ企業(あるいは企業グループ)の発行する社債であ ることが少なくない。このことは,市場参加者は格付以上に詳細な情報を もとに,公社債の取引を行っているということであり,運用対象を単純に 格付等で分類し,ある一定以上の格付に限定する方法は,注意する必要が あることを示しているといえよう。いずれにしても,これらの点は今後の 検討課題としたい。

付記 本稿は,科学研究費補助金(課題番号:19530287)の助成を受けた研究の 一部である。また,以前のバージョンは,2010年度日本金融学会春季大会,

2010年度証券経済学会春季全国大会,Australian Conference of Economists 2011, 24th Australasian Finance and Banking Conferenceにおいて報告したも のである。米澤康博氏(早稲田大学),横山史生氏(京都産業大学),Satjaporn Tungsong氏(Thammasat University),Jonathan Dark氏(University of Melbourne)をはじめ,多くの方に貴重なコメントを頂戴した。ここに記し て感謝したい。もちろん,誤りが残っているとすれば,筆者の責任であるこ とは言うまでもない。

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高橋豊治(1999)「スワップ・マーケット情報を利用した国債の評価手法と国債流

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通市場の特性」『財務管理研究』(財務管理学会)第9号。

───(2002)「スワップ・マーケット情報を用いた債券流通市場分析」(大野・小 川・佐々木・高橋著『環太平洋地域の金融資本市場』第5章)高千穂大学総合 研究所TRI01‑28。

───(2005)「公社債流通市場におけるLIBORスプレッドの最近の動向」『商学 論纂』(中央大学)第46巻第3号 2005年。

───(2006)「公社債流通市場におけるイールド・カーブの計測」『企業研究』

(中央大学)第9号。

───(2007)「日本における公社債流通市場の近年の特徴─イールド・スプレッ ドの観点から─」『企業研究』(中央大学)第11号 2007年。

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参照

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