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親会社またはグループによる支援

168. 金融会社、証券会社とも、親会社またはグループからの支援が継続的かつ安定的で、

今後も継続が予想される場合には、「適切(adequate)」を下回る資金調達と流動性の 評価の引き上げにつながる可能性がある。ノンバンク金融機関単独の資金調達の評価が

「やや弱い(moderate)」または「弱い(weak)」、あるいは、流動性の評価が「適切

/低い(adequate-low)」「やや弱い(moderate)」「弱い(weak)」のいずれかに該当 し、かつ当該機関のグループ内での位置付けが「戦略的に重要」以上<定義については、

2013年11月19日付「Group Rating Methodology」(和訳版:2014年3月14日付「一般 格付け規準:グループ格付け手法」)を参照>である場合、以下に挙げるすべての特性 が該当すれば、証券会社、金融会社ともに、資金調達の評価を「適切(adequate)」に 引き上げる一方、流動性の評価を、金融会社については「適切(adequate)」、証券会 社については「適切/高い(adequate-high)」にそれぞれ引き上げる可能性がある<表 21(金融会社)と表24(証券会社)に示すように、これらの組み合わせの場合、スタン ドアローン評価に対する資金調達と流動性の影響は中立的となる>。

 親会社は当該ノンバンク金融機関の資金需要を満たす意向があり、かつそのための十分な 資金調達手段と流動性を有する。

格付け規準|金融機関|一般:ノンバンク金融機関の格付け手法|S&P Global Ratings 53

 親会社には、子会社に対して資金を提供し流動性を下支えした実績がある、または、その ようにする意向を表明している。

 親会社が子会社に対して支援を提供するうえで、規制上またはそのほかの大きな障害が存 在しない。

 親会社はそうした支援を継続的に提供している。

金融会社

169. 資金調達と流動性(スタンドアローン評価またはグループ信用力評価の4番目の分析

項目)では、金融会社が継続的な状況とストレス環境下の双方における流動性の必要額 を管理しつつ、効率的な資金調達を通じて業績を支える能力を評価する。通常、安定的 な長期資金調達源によって、流動性の劣る長期資産をファイナンスすべきであり、短期 のホールセールによる資金調達は通常、流動性の高い短期資産のファイナンスに制限す べきであるという、基本的な原則を分析の基礎とする。

170. S&Pでは、資金調達と流動性を3段階の分析で評価する。まず、安定調達比率と流動

性カバレッジ指標を分析し、資金調達と流動性を「強い」とする当初評価にそれぞれが 十分な水準であるかどうかを判断する。次に、キャッシュフローの予測をはじめとする 複数の定性的・定量的要因を考慮して、資金調達と流動性の評価を決めるとともに、妥 当性があれば「強い」という当初評価を引き下げる。最後に、資金調達の評価と流動性 の評価を組み合わせ、スタンドアローン評価またはグループ信用力評価への総合的な影 響を判断する(表21参照)。

21 金融会社の資金調達と流動性の評価を組み合わせ、スタンドアローン評価またはグループ信用力評

価への影響を決定する*

流動性*

資金調達 強い(strong) 適切(adequate) やや弱い(moderate) 弱い(weak)

強い(strong) +1 0 -1、上限「bb+」 上限「b-」

適切(adequate) 0 0 -1、上限「bb+」 上限「b-」

やや弱い(moderate) 0 -1 -2、上限「bb+」 上限「b-」

弱い(weak) -1 -2 -3、上限「bb+」 上限「b-」

*分析によって、流動性の調達源が今後12カ月分の使途必要額には不十分となる可能性があり、そのために、流動性評価

で、マイナスのキャッシュフロー見通し、またはその他の定性評価によりデフォルトへの道筋が特定された場合には、流動性 の評価として「非常に弱い」が適用され(表23参照)、その場合、2012101日付「Criteria For Assigning 'CCC+', 'CCC', 'CCC-' And 'CC' Ratings」(和訳版:2012112日付『一般格付け規準:「CCC+」「CCC」「CCC-」「CC」の付 与の格付け規準』)が適用される。

1)資金調達

171. 資金調達は、安定調達比率(SFR)と10の定性的特性(表22参照)に基づいて評価

する。金融会社のSFRは、S&Pの指標規準、2013年7月17日付「Quantitative Metrics For Rating Banks Globally: Methodology And Assumptions」で定義されている。SFRは、金融 会社の安定調達必要額に対する安定調達可能額についての全体的な見解を示すものであ る。

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172. 資金調達の評価が「強い(strong)」となるためには、110%以上のSFRが必要である。

特に銀行との比較では、ほとんどの金融会社の資金調達は「強い」と評価されない。SFR に定性評価を加えて資金調達の評価を決める。SFRが110%未満である場合、定性評価 がポジティブであれば、資金調達の「適切(adequate)」または「やや弱い(moderate)」

の評価の裏付けとなる。逆に、定性評価がネガティブであれば、たとえSFRが110%超 であっても、資金調達の評価を1段階以上引き下げる(たとえば、「強い(strong)」か ら「適切(adequate)に」)。定性評価には、SFRの算出における想定事項の評価と、

会社に固有の資金調達の強みと弱みが含まれる。

173. SFRを構成する想定は会社または国によって異なるわけではないため、定性評価が重

要となり、同評価が通常、SFRが110%未満の場合の金融会社の資金調達の評価を左右 する。

22 金融会社の資金調達の評価

以下に挙げる10の性質は、資金調達を下支えする。S&Pでは、これらのポジティブな性質のどれが該当するかに基 づいて、資金調達を「強い」「適切」「やや弱い」「弱い」のいずれかで評価する。

1 会社の資金調達の過半が安定的な預金や政府からの調達、かつ/または、満期がうまく分散された中長期の無担 保債務で構成されており、企業は短期債務には大きく依存していない。

2 会社が無担保・有担保の債務や預金の複数の資金調達源に、容易にアクセスできるとS&Pが考えている。

3 仮に、会社が資産のかなりの部分を、同社が債務を発行する通貨とは異なる通貨建てで保有している場合、その市 場リスクを管理・ヘッジするための信頼できるヘッジング体制(システムや手順など)が整っているとS&Pが考える。

また、海外の債務保有者からの資金調達に過度に依拠していない、もし、そうであれば、当該リスクはすでにアンカ ー値で捕捉されている。

4 SFRの計算に使用された想定が、会社の資産に照らした資金調達の安定性を正確に反映しており、結果として、

SFRを大幅に過大評価してはいないとS&Pが考えている。

5 会社が多額の資金を預金で調達している場合には、預金の大部分に保険が付されており、会社が多大なストレスを 受けた時でも、顧客による預金引き出しの可能性が低い。

6 償還期限や単一債権者への大きな集中(短期であれ長期であれ)があったとしても、いかなる時でも、これらのリス クが重大な借り換えリスクをもたらすことはないとS&Pが確信している。S&Pが高い信頼を置くのは、ファイナンスさ れる資産の流動性が高いうえ、信用リスクが低く、かつ/あるいは、当該債務の提供者が政府系機関または、会社 と密接な関係を持つ強固で安定した調達源である場合である。

7 会社は潜在的な追加証拠金要請の多大なリスクを抱えておらず、債務保有者の会社に対する信認喪失によって短 期間のうちに多額の資金調達へのアクセスを失うことはないと考えられる。

8 会社は過去に非常に不安定だったことが実証されている資金調達源――公開市場では信用力を容易に観測できな い資産で裏付けられた債務の形態(たとえば、民間住宅ローンや、複雑なオフバランスシート調達など)――に、大 きく依存していない。

9 金融会社またはセクターの資金調達または借り換えのコストが急騰することをS&Pが予想していない。

10 会社が翌年の資金調達の維持に困窮するとはS&Pが予想していない。

強い(strong)

SFR110%以上で、資金調達の10のポジティブな性質がすべて該当するとS&Pが考える。

適切(adequate)

SFR90%以上で、資金調達のポジティブな性質の3から10までが該当するとS&Pが考えるが、資金調達が

「強い」とは考えない。または、

SFR90%未満で、資金調達のポジティブな性質の2から10までが該当するとS&Pが考える。

やや弱い(moderate)

SFR90%未満で、資金調達のポジティブな性質の2から6までのうち、最低1つが該当せず、7から10まで

の性質が該当するとS&Pが考える。または、

SFR90%以上であるが、資金調達のポジティブな性質の3から9までのうち最低1つが該当せず、最後のポ

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ジティブな性質が該当するとS&Pが考える。

弱い(weak)

SFR90%未満で、資金調達のポジティブな性質の7から10までのうち、最低1つが該当しないとS&Pが考え

る。または、

SFR90%以上で、資金調達のポジティブな性質の最後の1つが該当しないとS&Pが考える。

訳注:SFR=安定調達比率

2)流動性

174. 流動性の評価はほとんどの場合、キャッシュフローの予測と定性評価に基づく。「強

い」の評価を検討するケースでは、3番目の評価、すなわち流動性カバレッジ指標を適 用する。流動性カバレッジ指標は、短期ホールセール資金調達に対する、広義の流動性 資産に無担保信用枠を加えた額の比率である。広義の流動資産と短期ホールセール資金 調達については、銀行の指標規準で定義されている銀行向けの定義と同じものを用いる。

コミット型無担保融資枠へのアクセスを流動性カバレッジ指標の算出に織り込む一方、

キャッシュフロー予測では、ストレス下におけるノンバンク金融機関がそうした融資枠 からの借り入れを実行できる可能性を評価する。流動性カバレッジ指標が2倍を上回る 場合、「強い」キャッシュフローと定性評価との組み合わせにより、「強い」という流 動性評価の裏付けとなる。たとえ流動性カバレッジ指標が1.5-2.0倍であっても、定性 的・定量的要因の組み合わせが、S&Pの指標が捕捉していない流動性の著しい高さを示 す場合は、「強い」という流動性評価の裏付けとなる。この分析において銀行の指標を 加えるのは、ノンバンク金融機関の格付け規準のもとで流動性が「強い」と評価される 金融会社であれば、格付け規準「銀行格付けの手法と想定」のもとでも「強い」と評価 されることを確保するためである。

175. しかし、キャッシュフローまたは定性評価との組み合わせが、「強い」という流動性

評価の裏付けとならない場合には、たとえ流動性カバレッジ指標が1.5-2.0倍を上回っ ていても「強い」とは評価されない。

176. キャッシュフロー予測は、ベースケースとストレスケースの両方のもとで算出する。

ベースケースは、企業の次年度のキャッシュフローについてのS&Pの予想を反映し、対

象期間にS&Pが予想するあらゆるストレスが織り込まれることになる。キャッシュフロ

ーのストレスケース予想には、企業固有のストレスシナリオを織り込む。採用されるス トレスシナリオは通常、対象企業に合わせて構築した発生確率の低いものの、発生する 可能性は否定できないシナリオである。たとえば、ストレスシナリオでは通常、企業が

(特に不安定な)短期資金調達手段を失うと想定する。そのほか、不良資産の増加、マ ージンコール、未使用の信用枠の利用による資金流出を想定することもある。また、預 金の一部を不安定で引き出される可能性があると想定することある。加えて、どの程度 保守的な割引率で、発行体が抵当権等の設定されていない資産を担保に借り入れを行な ったり売却したりすることが可能か、あるいは、貸出金の分割返済や現金収入からどの ようなキャッシュのインフローが生じるか、などについても考察する。最終的には、債 務の安定性、資産の担保差し入れ、資産のアモチゼーションなどがストレスケースの主

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