中国では 1979 年より「独生子女政策(ひと りっ子政策)」が実施され,30 年間経った。 生まれてくる子供のほとんどは兄弟のいない ひとりっ子で,彼らが大きくなり,大人にな ったひとりっ子同士が結婚してまたひとりっ 子を生むと,その子は「六つポケットの小皇 帝や小公主(四人の祖父母と二人の両親とい う六つのポケットの持ち主から大事に育てら れ,お金をかけても惜しくないと考えられる 子供)」になる。これは,中国独特の社会現象 として注目されている。 大事に育てられる子供は家族の絶対的中心 であり,子供のためなら親が惜しまずお金を 使う。CMMS1)調査の最新データによると, 子供関連の消費はすでに子持ち世帯の世帯消 費の 33 %を占め,住宅ローンにつぐ 2 番目に 多い消費項目になっている。この子供市場は かなり大きく,12 歳未満の子持ち世帯だけで も,消費規模は月間 35 億人民元にのぼる。中 国国家統計局の発表によると,2007 年中国 14 歳以下の子供の人口数はすでに 3.3 億を超え, その数は 2016 年まで年間 1600 ∼ 2000 万人の 規模で増え続ける。 日本の読者の理解のために,中国の子供が 育つ家庭環境を説明しよう。父母が共働きで, 祖父母か住み込みのお手伝いさんと毎日過す 時間が長い。あるいは,寄宿学校に入ってい る子供も多くいる。子供はコマーシャルやキ ャンペーン,また仲間などいろいろなルート から情報を得ているから小さいながらも,昔 の子供より「何でも知っている」。今日の子供 たちは,兄弟がいないため,大人相手にいつ も会話をしている。大人も,彼らの意見を積 極的に取り入れようとし,結果としてはかな りの発言力を持つようになる。自分が直接消 費するものはもちろんのこと,場合によって は家庭の大きな買い物(親の携帯電話,家庭 のパソコン,自動車や不動産など)にまで意 見参加している。 身近で起きた実話がある,ある弁護士の友 達がマンションを買いにいった,かなりよい 条件で契約が出来るのに,最終的にあきらめ たという。その理由は,一緒に行った 8 歳の 子供が,自分が子供扱いされて,大人と一緒 にカタログが渡されなかったから機嫌を害し たからだ。親が困ったが,将来の相続者であ
中国の子供消費行動とマーケティング対応
張 旭
● 北京新生代市場監測機構霍 虹
● 北京新生代市場監測機構 笊 ――― 子供の消費特徴 笆 ――― 子供消費の影響要因分析 笳 ――― 本研究の発見および結論る子供の機嫌を優先に考え,他の不動産を購 入した。極端な例かもしれないが,そこに隠 された親の気持ちは共通している。 本研究は,彼らを子供や生徒としてではな く,立派な「一人の消費者」として捉えて, 小学校 3 年生∼ 6 年生の子供に焦点をあて, 彼らの消費特徴を捉え,子供消費の影響要因 を解明する。中国の子供市場を理解し,有効 なマーケティング対応する手助けになること を期待する。以下の報告では,2006 年に北京 新生代市場監測機構有限公司が行なった定量 調査と定性調査の結果を活用する2)。
笊――― 子供の消費特徴
中国でのマーケティング活動の鍵となる子 供の消費特徴を理解するために,まず,子供自 身の小遣いの使途,小遣い以外の意思決定へ の影響,子供の好きな買い物場所,消費理由, および,子供の価格意識について見て行きたい。 1.子供の小遣いの使途とその特徴 小遣いは子供が自由に使える「可処分所得」 であり,その使い道はもっとも子供の消費の 好みや特徴を表していると思われる。ここで は,入手できる日本の子供研究の結果3)と比 較しながら結果を報告する(図− 1)。 日中の子供が共通する答えとして「貯金す る」がもっとも多い。小遣いを使ってしまう 場合は,中国の子供は「学習用品」の購入 (50.3 %)が一番多く,「食べ物・飲み物・お やつ」の購入(36.9 %)が 2 番目,本・雑誌・ 漫 画 と い っ た 「 課 外 の 読 み 物 」 の 購 入 (34.8 %)は 3 番目である。ところが,日本の 子供の場合は,一番多いのは「本・雑誌・漫画」 (51.9 %)で,それに続いて「食べ物・飲み 物 ・ お や つ 」( 3 6 . 9 % ) と 「 学 習 用 品 」 (31.9 %)である。日本は漫画の大国として, 日本の子供はいろいろな漫画本や漫画雑誌に 恵まれている。おもちゃ・グッズに関しても 同じことがいえる。選択肢が多いから,当然 ■図―― 1 (貯金以外の)小遣いの用途 0% 20% 40% 60% 80% 100% 日中の子供に共通 するトップ3の用途 日本子供の贈物 はその他にある 50.3% 36.9% 34.8% 11.0% 10.2% 8.3% 7.3% 5.2% 16.1% 4.8% 4.2% 学習 用品 食べ 物・飲 み物 本・雑 誌・漫 画 友達 へ贈 物 おもち ゃ・グ ッズ スポ ーツ ゲー ムセ ンター 洋服・ 靴 ネット カフェ ー 友達 おごり その 他 CD・ DVD ゲー ムソフ ト 中国 50.3% 36.9% 34.8% 16.1% 11.0% 10.2% 8.3% 7.3% 5.2% 4.8% 4.2% 日本 31.9% 46.0% 51.9% 25.7% 14.5% 10.1% 6.5% 3.2% 9.0% 28.3% 目立つ中国の 子供の交際支出小遣いをたっぷりそれに使ってしまう。中国 の子供の場合は,自国の漫画よりも海外,特 に日本の漫画を読むことが多く,定期発行さ れているものではないから,親に纏め買いし てもらうことが多い。そのため,小遣いを一 番かける対象から外されている。したがって, これらの三つは,いずれも子供が好きなもの であり,数値が多少違っても,傾向が共通し ているともいえよう。 日本の子供と中国の子供に共通点が多いが, 目立った違いといえば,中国の子供が「交際 目的」に小遣いを使う傾向が日本の子供より 強い。例えば,中国の子供は小遣いの用途と して「友達への贈り物」(16.1 %)や「友達お ごり」(4.8 %)があったが,日本の子供は友 達にプレゼントをするが割合が低く,それは 「その他」(3.2 %)に含まれているという。こ れは,国柄の違いと考えられる。中国では, 大人の間で食事をするときには「割り勘」で はなく「誰か一人のおごり」という形が多く 取られる。大人を見習って,子供も影響され ている。また,ネットカフェの利用も中国の 子供に多いが,放課後に仲間と行く遊び場だ から,ある意味で交際の場でもある。もう一 つの違いは,日本の子供は CD ・ DVD やゲー ムソフトに小遣いを多く使っているが,この 点において中国の子供はちょっと違う。実は, 中国では,これらは子供自身よりも親が購入 するものになっている。 経済の発展につれて,中国の子供たちが暮 らす環境が昔よりかなり改善され,日本の子 供と似た環境に置かれている。両国の子供に 似た行動傾向が見られるが,国柄や事情によ って違いも見られる。 2.子供の小遣い以外の消費に対する影響 子供がその意思決定に影響を与えている消 費といえば,前述した自主消費のほかに,親 が買ってくれる日常用品や食べ物も含まれる。 これらの購入には,毎日仕事で忙しい母親よ り,子供が決めることが多い。食品を例に見 てみると,子供の健康によい食べ物・飲み物 (例えば,牛乳やヨーグルト,ビスケットなど) に関しては,親が満足させてくれるが,そう といえないもの(例えば,乾脆麺4),ポン菓 子,チューインガム,アイスクリームなど) は,子供が自主消費で補う。食べ物のほかに, 遊び関係のゲームカードも,親に制限されて いるため,子供が自ら買うことが多い(図− 2)。 「六つポケットの小皇帝や小公主」と呼ば れるように,家庭内の絶対的中心である子供 は,家庭消費への意見参加している(図− 3)。 旅行の行き先を子供が決めたり,デパートで 親に洋服を選んだりする子供もよく見かける。 車の販売店で子供の意見で車が決まる家族も いる。子供が日頃見たコマーシャルや自分な りの情報を駆使して,いろいろなところで意 見参加している。調査によると,子供の意見 参加は特にパソコンや携帯電話の分野で高く 出ている。小さい頃から,親の携帯電話をお もちゃ代わりにしてきた子供たちは,確かに 親よりもよく知っているようである。 そこで子供の発言力をうまく利用すれば, よいマーケティング活動が出来る。事例を紹 介しよう。 天安門前を通る長安街の西延長線上に,北 京国際彫刻公園がある。2002 年 9 月にオープ ンしたこの芸術公園には 40 ヶ国余りの芸術家 による 180 体余りの彫刻作品が展示されてい る。立派な場所であるが,市内からも離れ,
知名度も低いため,長い間入園者数が一日当 たり 1000 ∼ 2000 人程度に伸び悩んでいた。 観光客を動員するために,2009 年の旧正月連 休に合わせて「2009 年新春祭り」が企画され たが,すでに北京地域に「新春祭り」と名乗 るものは 108 もあり,中には知名度が高く, 歴史の長いものも多数含まれている。そこで, 担当者が子供に目をつけた。北京市の小学生 30 万人に入園券を贈り,「快楽新年,快楽廟 会(意味は,「楽しい新年,楽しい祭り」)」の 作文コンテストへの参加を呼びかけた。入選 作品は祭りのホームページで発表されるほか, 『北京科技報』の新聞小記者にも選ばれ,記者 証が発行される。もちろん,『北京科技報』に も自分の作品が登載される。この作文コンテ ストに協力した学校にも賞が用意される。子 供の影響力に,学校の支持もあって,2009 年 2 月 1 日の大晦日から連続一週間,親に連れ られた子供たちが大勢押し寄せた。入園者数 が連日 5 万人を超え,平年の同時期に比べて も 5 倍以上の記録になった。子供の力を借り た良い例だった。 ■図―― 2 食品の購入者 あまり食べて ほしくないもの 子供に食べてほしいもの は両親が進んで購入する 牛乳 ヨー グルト ジュ ース ビス ケット 乳酸 菌飲 料 チョコ レート ミネラ ルウ ォータ ゼリ ー 炭酸 飲料 キャ ンディ ー 茶飲 料 ポン 菓子 チュ ーイ ンガ アイ スクリ ーム 乾脆 面 自分購入 9.8% 12.5% 22.3% 18.9% 12.1% 20.3% 19.3% 14.5% 24.7% 21.7% 20.3% 27.4% 30.6% 35.7% 36.8% 両親購入 72.2%65.5% 55.7% 52.3% 50.3% 48.3% 46.9% 42.1% 41.9% 41.7% 41.2% 38.8% 41.9% 58.3% 25.7% 0% 20% 40% 60% 80% 100% ■図―― 3 子供の意見参加 0% 20% 40% 日常的な 子供の意見参加 耐久財にも広がる 子供の意見参加 パソコン 携帯電話 娯楽家電 暮らし家電 不動産 乗用車 旅行 日常用品 保険 洋服類 子供の意見参加 30.4% 29.7% 19.0% 10.5% 5.7% 2.0% 13.9% 11.3% 6.4% 3.8%
3.子供の好きな買い物場所 消費場所は消費者の消費習慣であり,消費 者の意思決定を理解する手助けになる。特に, 子供は大人のように理性的に分析したりはし ないので,その場の気持ちで購買行為に至る ことがよくある。子供の購買場所を見てみる と,専門店や大型総合スーパーを好む傾向が 見られる。文房具や,書籍などの学習用品を 購入する場合は,文房具屋や本屋で購入する ことが多いが,それ以外の日常用品はスーパ ーで購入する傾向が強い(図− 4)。 子供が好むお店にはどんな特徴があるのか。 まずは子供に親切であることは挙げられる。 それから好きなものが見つけやすいことや, 触れやすいことが挙げられる。現代のスーパ ーは,オープン式であるため,子供に楽しく 買い物できる印象を与えている。子供にとっ て,スーパーは動物園のように楽しい場所で あり,買い物はある意味で発見する旅でもあ る。したがって子供たちは大型スーパーを好 んでいる。子供のスーパー好きは,親との買 い物体験からくるもので,母親と小さい頃か らよくスーパーで買い物をしていたことが影 響しているだろう。 本調査によると,子供たちは平均して週 3 回以上スーパーを訪れている。また,毎週訪 れる店舗数は 2 店舗以上ある。商品に触れる ことや,知ることは買い物する前提であり, 子供の商品知識はたいしたものである。 4.子供が消費する理由 子供に消費動機を語らせるのが難しいため, ここでは子供消費にかかわるセンテンスを使 って,その消費願望を分析した。すべてのセ ンテンスにあなたと「まったく似ていない− あまり似ていない−多少似ている−似てい る−よく似ている」と 5 つの回答を用意し, 回答者の子供に 5 段階表示にしるしを付けさ せた。 人間にはたくさんのニーズがあるが,どの 商品が自分のニーズを満足させる機能を持っ ているかを理解する必要がある。子供がニー ■図―― 4 子供の好きな買物場所 0% 20% 40% 60% 80% 100% 6% 8% 13% 16% 25% 32% 33% 48% 53% 67% 8% 子供の好きな 買物場所 道端露店 ホテル 洋服屋 AV用品店 パソコンショップ スポーツ用品店 デパート おもちゃ屋 スーパー 食品店 本屋
ズと商品との対応を学習するときには,親や 友達が重要な役割を果たしている。親がいろ いろな商品を使って自分のニーズを満足させ ていることをみて,それらの商品を理解する ようになる。他方,同じ年頃の友達は,交流 の相手である。互いに交流や討論を通じて, 商品の機能を理解すると共に,ブランドのイ メージも確立されていく。 調査によると(図− 5),子供は人と同じも のを持つことによって,グループに帰属して いる,認められている安心感があるため,ク ラスメートと同じものを持ちたくなる。もう 一方,自分が他人と違うことを主張して,買 い物の際に自分の好きなものを選ぶ強い傾向 がある。また,30.7%の子供がブランド品を使 うのが好きだという。ブランドはある意味で 選択の正しさを保障する。「クラスで流行って いるもの」,「仲のいい友達が使っているもの」, 「好きなスターがイメージキャラクターを務め るもの」,商品の使用価値のほかに,流行が子 供の購買要因にあげられる。もう一つ目立つ 購買要因は,親からの褒美がある。よくでき た場合は,親からお金をもらったり,プレゼ ントをもらったりすることで,子供の消費意 欲や,実際の商品消費を促進している。 従って,子供の選択要因はどんどん多様化 している。自分自身のニーズによる消費,同 年齢の友達との交流によって刺激された消費, 親からの褒美による消費などに加えて,子供 の基本ニーズがすでに満足されている今日で は,ブランドや流行を追う心理が子供消費の 新たな動因になると予想される。 5.子供の価格意識 よく聞かれる質問として,「子供に価格意識 があるかどうか」がある。調査によると,子 供の価格意識は,自分の小遣いで買うゲーム カードなどにはよく働いている。ところが, 自分で買えないゲーム機や自転車のような高 額商品となると,子供に「いくらと思います か」と聞くと,「高そう」との回答が帰ってく る。それは自分には高くて買えないというネ ガティブな反応である。親は「子供に価格意 識がないから,欲しがる」と考えているが, 子供は「ほしいが,高くて自分で買えないの で,親を困らせて買ってもらおうとしている」 ■図―― 5 子供の購入要因 0% 10% 20% 30% 40% 50% 9.5% 11.9% 12.1% 15.1% 17.1% 29.4% 30.7% 36.7% 子供は常に周り の影響を受けて いる アイドルと同じものを使う 広告で宣伝されているものをよく親に買ってもらう 他人が持っているものを必ず親に買ってもらう 仲のいい友達と何時も同じおやつを食べる クラスで流行っているものを全部持っている 親がよくお金や贈り物を褒美にくれる ブランド物を使うのが好き 自分の好きなものをよく仲のよい友達に薦める
と率直に言う。つまり,子供には価格意識が あり,とても敏感である。親の行為や考え方 は知らず知らずのうちに子供に移されている。 親の価格に関する議論や反応が子供に価格意 識を植え付けている。何でも買い与えたい親 の強い気持ちが,企業にとって子供市場を魅 力的にしていく。
笆――― 子供消費の影響要因分析
1.外部要因 ① 家庭による影響 家族構成は子供の消費に影響を与えている。 例えば核家族に暮らす子供の消費参与度が他 の家族構成よりも強くなっている。核家族は, 今のひとりっ子世帯の典型でもある。 世帯月収が 5000 元を超えると,子供の参与 度も明らかに高くなることが報告5)されてい るように,今までの研究の中でも,収入の高 い世帯の子供は自動車や不動産の購入に意思 参加していることが観察されている。世帯月 収の低い世帯では,子供の参与度が低いが, 子供関連支出の割合が平均よりはるかに高く なる。つまり収入が限られるときに,子供が 最優先される。 ② 学校や仲間による影響 子供の消費において,購買段階では親によ る影響が大きいが,ニーズや願望の発生に関 しては仲間から受ける影響が大きい。同年代 の仲間同士間では,理解力も,認識水準も同 レベルであるため,頻繁な意見交換によって 共感しやすい。ここでは,私たちはクラスメ ートによる影響を観察することにした。 年齢の増加と共に仲間の影響が大きくなる。 子供の間では,仲間からの認可によって団体 への帰属感が強調され,また自信もつく。自 分より商品知識やブランド知識を多く持って いる仲間のほうが,影響力が強い。 本調査では,半分以上の子供はおやつや洋 服,玩具を買うときに「ほかの仲間の影響を 受けない」と答え,強い自己の意見を持って いる。しかし,「影響を受ける」商品カテゴリ に関しては,購入頻度の低い洋服や玩具より も,購入頻度の高いおやつにおいて受ける影 響が大きい。また,影響される対象者に関し ても,「勉強の良くできる子」からの影響がも ■図―― 6 子供の意思決定に影響を与えるクラスメート 0% 5% 10% 15% 20% 25% おやつ 洋服 おもちゃ 優秀な子から受 ける影響が大きい そ の 他 の ク ラ ス メ ー ト 芸 の あ る 子 運 動 が で き る 子 勉 強 の で き な い 子 お 金 持 ち の 子 ク ラ ス の 幹 部 勉 強 が で き る 子っとも高い(図− 6)。勉強ができるかどうか が影響力に直接結びついていることから,子 供商品のイメージキャラクターに「勉強ので きる子」を起用することに意義がある。 ③ 広告やスターによる影響 子供が媒体からも影響を受けている(表− 1)。好きなテレビ番組やウェブサイトで見た 広告商品を自ら買ったり,親に買わせたりす ることがよくある。広告は子供の主要情報源 でもある。洋服や靴の分野では親の意見が重 要だが,食品や飲料の分野では広告がトップ の情報源である。スターは洋服や靴といった ■表―― 1 子供に買物に関する情報ルート 15.6% 6.2% 3.7% 14.9% 35.3% 29.0% おもちゃ 9.4% 4.9% 11.1% 15.9% 29.2% 38.4% 14.7% 3.3% 9.4% 43.5% 9.3% 25.8% 靴 テレビ番組 12.7% 3.4% 10.2% 45.2% 11.0% 24.4% 洋服 12.0% 2.7% 6.6% 19.0% 22.1% 45.2% 10.7% 2.7% 5.9% 20.0% 27.3% 42.6% 食べ物 飲み物 10.2% 6.5% 7.3% 23.3% 29.4% 32.9% 雑誌 分からない 其の他 スター 親 仲間 広告 ■図―― 7 子供の好きなキャラクター 唐珠珠(子供新劇の主役) 小俊(ニコニコ動画の主役) ダヒとホジュン ニモ(Nemo) ぐるるん プンバァ テレタビーズ ピーターパン Mulan ハローキティー ウルトラマン 孫悟空そんごくう 藍猫BCCT ドナルドダック ちびまる子 カードキャプターさくら プーチャン ピカチュウ ミッキー ガーフィールド クレヨンしんちゃん スヌービー コナン ドラえもん 10.0% 10.0% 12.4% 15.5% 15.7% 17.7% 19.2% 25.2% 33.5% 33.9% 40.7% 42.0% 45.8% 46.9% 49.7% 50.6% 51.0% 52.8% 53.6% 54.1% 57.2% 67.0% 70.2% 11.6% 上位の中国のキャラクター 海外のキャラクター① 海外のキャラクター② 0% 20% 40% 60% 80%
より大きな買い物には影響力を発揮している。 子供の自主購買力に限りがあるが,自分で意 思決定のできる分野では,広告による影響が 大きい。 ④ アニメキャラクターによる影響 アニメ人気につれて,アニメキャラクター が情報の媒体として登場することも増えてき た。本調査では,子供にもっとも好きなアニメ キャラクターについて調査したところ,ドラ えもんやコナン,スヌーピーがトップ 3 に挙 げられた(図− 7)。調査によると,多くの子 供は自分の好きなキャラクターがプリントさ れた洋服やおもちゃ,文房具がほしいという。 2.内部要因による影響 外部要因のほかに,子供の性格といった内 部要因も子供の消費に影響している。子供の 性格を測定する際に「子供の性格測定センテ ンス」を確定し使用した6)。すべてのセンテ ンスにあなたと「まったく似ていない−あま り似ていない−多少似ている−似ている−よ く似ている」と 5 つの回答を用意し,回答者 の子供に 5 段階表示にしるしを付けさせた。 調査結果をまず因子分析にかけ,子供性格 を構成する 4 つの因子を抽出した。すなわち, 「自律/慎重/穏やか」,「外向/開放的/やさしい」, 「創造性」,「内向/情緒的」である。次に,因 子得点を用いて,日頃の研究経験と照らし合 わせながら,子供を性格によって 5 つのタイ プに分類した。 ■図―― 8 子供の 5 つの性格タイプ
① 子供に見られる 5 つの性格タイプ クラスター分析によって,分類された中国 都市児童の性格は 5 つのタイプである。すな わ ち , 内 向 孤 独 型 ( 2 0 % ), 外 向 奔 放 型 (17 %),内向平凡型(23 %),自信聡明型 (21 %)と落着成熟型(19 %)である(図− 8)。 ② 性格類型によって異なる子供の消費特徴 子供の消費特徴は性格によって異なる。例 えば「好きな贈り物」について聞いたところ, 性格的に静かな内向孤独型の子は,一人で遊 べる・楽しめる本・雑誌,電子機器を好み,ス ポーツ用品,外食,旅行において平均より低 い。しかし,子供の自己表現とされる飾り小 物に関しては,内向孤独型の子供は自信聡明 型の子供に続いて二番目に高い。また,おも ちゃへの愛着は内向孤独型の子供はほかより 遥かに高い。人との交流が苦手だが,おもち ゃとなら好きに遊べる。 ブランドについても内向孤独型,外向奔放 型と自信聡明型の子供のブランド意識が高い。 内気平凡型のブランド意識が全般的に低く, ないと答える割合が最も高い。落着成熟型の 子供は,全般的に平均に近い。 小遣いの使い道に関しては,内気平凡型の 子供はほかのタイプと違って,貯金率が一番 低く,使ってしまう傾向が最も強い。内気平 凡型の子供は「学習用品を買う」率が一番低 く,その代わりにお菓子やゲームに使ってし まう。自信聡明型と落着成熟型の子供の消費 は最も理性的である。
笳――― 本研究の発見および結論
中国でのマーケティング活動において,消 費者としての子供の重要性は強調してもしす ぎることはないだろう。子供は,子供自身の 小遣いを使った消費活動や,親や祖父母の子 供や孫に対する贈り物や褒美としての消費活 動に影響を与えるだけでなく,パソコンや携 帯電話選びなどの家庭消費に対しても意見参 加するなどその影響範囲が広い。さらに,子 供が直接購買に意見を述べない場合でも,マ ンション購入の実話にあるように,企業の子 供に対する接し方によってその世帯での購買 意思決定が左右される場合がある。 子供の消費に対する影響要因は多様である。 子供に社交の輪ができ,子供同士で影響しあ っている。そこに,広告やキャラクターの影 響があり,親の意見が係わっている。子供の 消費や消費に関する意思決定に影響を与えよ うとすれば,コミュニケーション戦略を立案 する際に,子供をその一部に組み込んだ情報 流通経路を分析することが検討されてよいだ ろう。 子供に着目してマーケティング活動に成功 している企業は,「大人を真似したい」子供の 心理や,「子供を喜ばせたい」親の心理をうま く掴んでいる。最近の成功例としては北京五 輪の宣伝がある。北京五輪のマスコットは 「福娃」だった。福娃を主役に「福娃奥運漫遊 記」(50 話)というアニメが製作され,アニ メチャネルで放送された。それを見た子供た ちは,オリンピックに因んだ歴史や知識を学 んだだけではなく,福娃がついたオリンピッ ク・グッズに熱中し,親にスポーツ観戦に連 れて行ってほしいと求める。これらの行動が, オリンピック・ビジネスの成功に貢献したと 考えられている。また,マクドナルドでは, 子供たちに店舗で誕生パーティーを開き,そ こに仲のいい仲間を招待することを勧めている。あるデパートの子供服売り場では,子供 の名前入りのカードを作って渡し,継続して 買い物に訪れるよう促して売上増大に成功し ている。 子供の取り巻く環境を理解し,子供の心理 を掴み,子供に有効に情報配信し,また子供 の影響力を借りれば,中国市場においてさら に効果的で効率的なマーケティング活動がで きるのではないかと思う。 注 1)CMMS は中国市場とメディア研究(China Mar-ket and Media Study)の略称で,北京新生代 市場監測機構有限公司(Sinomonitor Internation-al)によるシンジケート調査である。1998 年より 実施され,毎年中国主要 30 都市に住む 70,000 世帯 を対象に調査を行なっている。 2)本報告に用いる定量データは 2006 年に北京新生代 市場監測機構有限公司が行った 8 都市における小 学校 3 年生∼ 6 年生に対する調査によるものである。 調査都市は,北京,上海,広州,天津,南京,重 慶など 8 都市(中国国家統計局や中国経済景気監 測センターが共同発表される中国総合経済力トッ プ 100 都市より選出)である。調査対象は,小学 校 3 年生∼ 6 年生,すなわち 8 ∼ 12 歳の子供計 5,466 人(1 年生や 2 年生の子供にすでに自主消費 行為が観察されているが,まだ幼いため理想と現 実との区別がはっきりしないことがある 。また, 調査票の記入上で,一定の理解力と表現力が望ま れるため,3 年生∼ 6 年生の子供たちが対象であ る。)。調査方法には,学校通しの調査票自記式調 査,調査内容は,商品の消費状況(27 カテゴリー), 媒体の接触習慣(91 種類),レジャー・娯楽・アニ メ,ライフスタイル,属性情報を含む。定量調査 の他に,子供やその両親に対するデプスインタビ ューといった定性調査も行なわれた。 3)Benesse 教育研究開発センター「第一回子とも生活 実態基本調査報告書」,2005 年より,小学生のデー タを参考として表示した。 4)乾脆麺は,見かけ上はインスタントラーメンのよ うで,サクサクとした食感がいい。いろいろな味 付けがあって,特に中に入っているコレクション カードは子供の目当てで,一式そろうと景品と交 換できる。 5)黄昇民「多種形態の中国城市家庭消費」中国軽工 業出版社,2006 年による。 6)「子供の性格測定センテンス」は,北京師範大学 心理学院副院長鄒泓教授のアドバイスに基づき北 京新生代市場監測機構有限公司が開発した。 参考文献 陽寧 児童是人類之父 _ 従進化心理学看人類人類個体 童年期的本質;華南師範大学学報(社会科学版) 2003/10 王風雲:“藍猫”走進児童心;市場観察 2005/05 陳歓:試論広告伝播対児童消費心理的影響;中国広播 電視学刊 2005/06 徐紅: 6-12 歳児童対児童儿童電視広告的態度研究;華 中師範大学 黄昇民:多種形態的中国城市家庭消費,中国軽工業出版 社,2006 年 1 月版 北京美藍 :児童市場消費可観;科技智 2001/8 邵華東: 2005-2006 広告主児童用品市場営銷推广運作 全報告 児童用品市場分析報告及実施案例 http://www.yfu.cn/hyxx/sybg/200408/1329.html 王迪:電視広告対不同 SES 家庭児童的影響力研究;广 告大観 2007 馮 潔 : 電 視 広 告 対 児 童 的 影 響 不 容 忽 視 ; 記 者 揺 籃 2007/01 蔡放:誰在築造児童的消費観 陽林,劉衛華:透析児童広告;経済論壇 2002/02 陳磊:児童与電視的互動関係;受衆研究 2003/1 陳青文:児童頻道的経営哲学“声誉第一”及東森幼幼 的経験;新聞記者 2005/05 陳舒平:児童電視学 ;北京広播学院出版社 卜衛:大衆媒介対児童的影響影響 ;新華出版社 Restaurant Hospitality, 2001, “The Kids Marketing
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張 旭(チャン シュウ) 中国北京師範大学経済学科卒(経済学学士) 中国北京大学 EMBA(EXECUTIVE MASTER OF BUSINESS ADMINISTRATION)修了 1998 年より北京新生代市場監測機構に入社,現職は 副総経理兼消費財研究ディレクター 研究分野:消費者研究,流通研究,新商品研究など 霍 虹(ホウ ホン) 2001 年,北京新生代市場監測機構に入社,現職は副 総経理 日 本 東 京 工 業 大 学 大 学 院 社 会 理 工 学 研 究 科 修 了 (工学修士) 担当分野:日系企業に対するリサーチサービス全般