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第14回国際ウイルス学会に参加して

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Academic year: 2021

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〔ウイルス 第 58 巻 第 2 号,pp.223-224,2008〕 2008 年の夏,8 月 10 日から 15 日の間にトルコの最大都 市であるイスタンブルにおいて,国際ウイルス学会が開催 されました.午前中はメイン会場においてシンポジウムが 開かれ,午後は 3 ∼ 8 会場に分かれて各ウイルスや研究分 野ごとに分かれたセッションが開かれた.口頭発表が約 300 題,ポスター発表が約 500 題と大きな会でした.学会に参 加し,多くの有意義な研究発表を聞くことができたので, その中の 2 つの発表を取り上げて紹介します. 興味深い発表の 1 つは,Peter D. Nagy(University of Kentucky, USA)らによるもので,植物ウイルスである Tombusvirus 属(ゲノムはプラス鎖一本鎖 RNA)のトマト 矮化病ウイルス(Tomato bushy stunt virus; TBSV)とキ ュウリ壊死ウイルス(Cucumber necrosis virus; CNV)のゲ ノム複製に関わる宿主因子の機能解析です.彼らは,ウイ ルスゲノム複製に関わる宿主因子を網羅的に同定し,その 機能解析を積極的に進めています.TBSV や CNV は,酵 母細胞内でもゲノム複製反応が再現できることから,酵母 を用いてウイルス RNA 合成機構の解析や,転写・複製に 関わる宿主因子のスクリーニングが行なわれています.今 回は酵母細胞の抽出液を用いて,ウイルス RNA ポリメラ ーゼと相互作用する細胞性因子を結合実験とプロテオミク ス解析により探索した結果,ウイルス RNA 合成活性を正 に制御する因子として Tdh2p および Tdh3p が同定されま した.Tdh2/3p の動植物細胞ホモログは,解糖系で働く酵 素 の 一 つ , G A P D H ( g l y c e r a l d e h y d e - 3 - p h o s p h a t e dehydrogenase)です.TBSV のゲノム複製の場は,細胞 内オルガネラであるペルオキシソーム膜上で行なわれるこ とがわかっており,ウイルスポリメラーゼもその場に局在 します.彼らは,GAPDH がウイルスポリメラーゼと相互 作用することでペルオキシソームに移動し,さらにゲノム 複製過程においてプラス鎖 RNA ゲノムから合成され子孫 ゲノム合成の鋳型となる「マイナス鎖 RNA ゲノム」に特 異的に結合することを明らかにしました.GAPDH は,マ イナス鎖 RNA 内の AU が連続する配列に結合し,マイナ ス鎖をペルオキシソーム膜上に留まらせ,効率よくポリメ ラーゼにリサイクルさせることで複製活性を促進している と考えられます.増幅されたプラス鎖の子孫ゲノムは,感 染拡大のためにすばやくポリメラーゼから離し,鋳型マイ ナス鎖からの複製サイクルのみを増進させるメカニズムは 非常に興味深いものだと思いました.数少ないウイルス因 子のみでは制御しきれないウイルスゲノム複製の調節を, 宿主因子が支えていることを示唆する報告でした. GAPDH は,A 型や C 型肝炎ウイルス,およびヒトパラ インフルエンザウイルスのゲノムにも結合します.また, 解糖系の酵素といえば GAPDH の次の反応段階に働く phosphoglycerate kinase も,センダイウイルスの RNA 合 成を促進する宿主因子です.生命の生まれた初期の頃に, 細胞内に組込まれたと考えられる解糖系は,嫌気性微生物 を含むほとんどの生物が利用する必須システムです.ウイ ルスは,生物間においても機能や構造が変わることが少な い細胞内タンパク質を積極的に利用することで,ウイルス の種を増やしていったのかもしれない,と想像しています.

2 つ 目 は , Karla Kirkegaard( Stanford University, USA)らによるもので,ポリオウイルスの薬剤耐性ウイル ス株に,「薬剤感受性」の野生株を共感染させることによ り,薬剤耐性株の増殖が抑制されるという発表です.これ は,ドミナントネガティブ効果を応用したもので,薬剤耐 性株の増殖を制御する抗ウイルスの手法の一つになると考 えられます.通常,薬剤耐性株は薬剤の標的となるウイル スタンパク質に変異が導入されていて,薬剤に対する抵抗 性を獲得します.彼女らは,薬剤の標的となるキャプシド タンパク質(VP1)が多量体を形成して機能することを利 用し,薬剤耐性ウイルスの感染と同時に野生株のウイルス RNA を細胞に導入して,薬剤耐性型 VP1 と野生型 VP1 の 複合体を作らせることで薬剤耐性能を低下させました.子 孫ウイルス粒子に野生型 VP1 が取り込まれることでそのウ

トピックス 3

4. 第 14 回国際ウイルス学会に参加して

内 藤 忠 相

筑波大学大学院 人間総合科学研究科 連絡先 〒 305-8575 茨城県つくば市天王台 1-1-1 筑波大学大学院 人間総合科学研究科 TEL : 029-853-3942 FAX : 029-853-3942 E-mail : [email protected] 第 14 回国際ウイルス学会(若手旅費援助者) イスタンブール報告

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224 〔ウイルス 第 58 巻 第 2 号,pp.223-224,2008〕 イルスは薬剤に感受性になり,薬剤耐性ウイルスの増殖が 抑制されるということになります. このアイデアは,さまざまなウイルスに応用できる可能 性があります.例えば,インフルエンザウイルスの抗ウイ ルス薬であるタミフルやアマンタジンは,それぞれ多量体 を形成して機能する NA や M2 タンパク質を標的としてい ます.それら薬剤の耐性株が蔓延したときの対処法として, 弱毒性の野生株を投与することにより薬剤耐性ウイルスの 増殖を遅らせることが可能になるかもしれません.実際の 応用には,今後の臨床的な試験を含めた検討が必要だと思 われます. 最後に,学会期間中における貴重な体験について述べさ せていただきます.私の所属する研究室のボスが,イスタ ンブル大学のとある先生と親しい知人であるということか ら,一週間その先生宅に宿泊させてもらったことです.そ こで,実際にトルコでの生活様式や習慣を体験し,レスト ランでは食べられないトルコの家庭料理をいただき,その 町の住人しか行かないようなマーケットで買い物をしたり と,普通の学会旅行では味わえない経験をさせていただき ました.また,ボスは現地の食材を使って日本風のカレー やてんぷらや煮物の料理を振る舞いました.トルコの先生 も「美味しい!初めて食べた!」と喜んでいらっしゃいま した.今回,とても親切にして頂いたトルコの先生との出 会いやボスの振る舞いを見ることにより,私がこれまでも っていなかった大切な価値観を学ぶことができました.こ れからも世界各地の文化を体感し,人生経験の豊かな研究 者を目指すため努力しようと思いました.最後になりまし たが,今回,ウイルス学会松本基金より旅費を援助してい ただき誠にありがとうございました.

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