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術前に浸潤型縦隔腫瘍と診断した肺平滑筋腫の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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平成11年4月1日

術前に浸潤型縦隔腫瘍と診断した

肺平滑筋腫の1例

山梨医科大学 第2外科 石川成津矢 高橋渉 水谷栄基 保坂茂 吉井新平 多田祐輔 要旨:肺原発の平滑筋腫を経験した。症例は21歳、男性。労作時呼吸困難で   発症。術前診断は、縦隔腫瘍の左肺門部浸潤とし、左主気管支内腔を   閉塞する病変の組織生検で、精上皮腫・リンパ腫を否定後左肺全摘術を   行い、術後の組織学的診断で、肺平滑筋腫と確定した。術後8か月の   現在、再発なく健在である。   肺原発の良性腫瘍は、肺腫瘍の数%を占める疾患にすぎず、なかでも   平滑筋腫は非常に稀で、本邦でも70例程度の報告をみるのみであり、   気管・気管支型でも術前診断が得られないことが多い。 Key words:肺平滑筋腫、気管支型平滑筋腫  はじめに  肺の良性腫瘍は、肺腫瘍の数%を占める疾患にすぎず、なかでも肺平滑筋腫は 非常に稀で、本邦でも70例程度の報告をみるのみである。肺平滑筋腫は、気管・ 気管支型と、肺実質型に分けられるが、いずれも術前診断が困難とされている。  今回我々は、術前に縦隔腫瘍の左肺門部浸潤と診断した、気管支型肺平滑筋腫 の1例を経験したので報告する。  症例

 症例:21歳、男性

 主 訴:労作時呼吸困難  現病歴:1998年2月上旬頃より主訴出現。β2刺激剤吸入で症状軽快し、同5月 健診の胸部X線検査で異常陰影を指摘されるまでには、主訴は改善傾向にあった。 近医での胸部CT検査で、前縦隔に腫瘤影を認めたため、同6月19日、精査・加 療目的で当科に紹介入院となった。  既往歴:小児期より喘息でβ2刺激剤吸入中  家族歴:特記すべきことなし  背 景:喫煙歴なし、機会飲酒程度 一25一

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      山梨肺癌研究会会誌 12巻1号 1999  現 症:身長162cm,体重46kg,脈拍74/分・整血圧100/60mmHg左右差なし      呼吸数16/分,体表リンパ節触知せず,頚静脈怒張なし,バチ状指なし      胸郭:呼気時 対称、吸気時 左胸郭運動なし      呼吸音:右・清、左・聴取せず 心音:異常なし  検査所見:WBC 6890/pt 1, RBC 5.53×106/μ1, Hb 16.7g/dl, Ht 48%       Plt 26.5×104/μl       TP 7.4g/dl, Alb 4.1g/dl, GOT 271U/1, GPT 411U/1, LDH l491U/l       BUN lOmg/dl, Cr O.78mg/dl, CRP O.3mg/dl       Na 140mEq/1, K 4.4mEq/1, Cl 100mEq/l       IgG 1530mg/dl, IgM 112mg/dl       CEA 1.8ng/ml,αFP 3ng/ml, NSE 6.47ng/ml       血清hCG 1.OmlU/ml以下,尿中hCG陰性,抗Ach・R抗体0.2nM/1以下       BGA(room air)pH 7.43 pO283mmHg PCO242mmHg  胸部X線写真(図1):上縦隔から左肺門部にかけて腫瘤影を認める。左肺上 葉の無気肺に基づく肺動脈の挙上と、下葉の過膨張を認める。1年前の健診時X 線写真でも肺動脈の挙上は読影できる。  胸部CT検査及び2°1Tlシンチグラム(図2):前縦隔に、内部不均一なdensity の充実性腫瘤が認められ、頭側では境界明瞭であるが、左肺門部にかけて不明瞭 となる。特に左肺動脈・気管支との境界は不明瞭であった。2°iTlは腫瘍に集積し ているが、肺門部の情報は得られなかった。  気管支鏡所見及び肺動脈造影(図3):気管分岐部から3cm末梢、左主気管支 の内腔をほとんど閉塞している粘液腫様のやや柔らかい腫瘤を認めた。生検では、 不十分な組織量で診断に至らなかったが、悪性リンパ腫と精上皮腫は否定的であっ た。肺動脈造影では、左肺動脈の血流低下、頭側への圧排、左房への還流遅延を 認めた。  以上から手術治療を第1選択とすべき縦隔腫瘍の左肺浸潤症例として、縦隔腫 瘍摘除・左肺上葉切除または全摘術を予定し、手術に踏み切った。  手術所見及び切除標本(図4) :正中切開で開胸、胸骨裏面への腫瘍の癒着 はなく、左肺下葉は過膨張し、腫瘍と虚脱肺からなる上葉が、縦隔胸膜を伸展し、 右室流出路に癒着・浸潤なく騎乗していたため、肺原発の腫瘍であることが判明 した・肺動脈、気管支と腫瘍との関係から下葉の温存ははかれず、心嚢内操作で 左主肺動脈・肺静脈を処理し、左肺全摘術を行った。術中迅速病理検査では、間 葉系の腫瘍で悪性が否定できないとの返信を得たため、縦隔リンパ節郭清も行っ 一26一

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平成11年4月1日 た。切除標本では、くびれを有する割面となっているが、不整形の単発性腫瘍で あった。肺動脈は著しく圧排されているものの、血管壁の破壊・浸潤は認められ なかった。気管支は主気管支レベルで完全閉塞していた。  病理組織像(図5):細胞異型に乏しい、紡錘形の核を有する細胞が密に配列 しており、核分裂像もほとんどなく、腫瘍表面が正常の線毛上皮で覆われていた。 また、腫瘍はB1+2に茎を有し気管支内腔を充満するように発育していたため、気 管支から発生した平滑筋腫と診断した。各切除断端は十分確保され、リンパ節転 移も認めなかった。

 考察

 肺の良性腫瘍の発生頻度は、全肺腫瘍の2∼5%といわれている1)2)が、さらに 肺原発の平滑筋腫は比較的稀3)で、本邦でも70例程度が報告されているのみであ る4)。発生部位により、気管型、気管支型、肺実質型の3型への分類がなされて おり、肺実質型では他の臓器、特に子宮筋腫との合併例が多いため、臨床的にも 推察されるが、いずれの病型でも術前に組織学的に平滑筋腫と判明した症例はな い1)。症状として興味がもたれるのは気管型で、長年気管支喘息として治療され ていた症例が報告されている5)。症状の現れやすさからみると、気管支型が最も 顕著で、喘鳴・咳鰍・喀疾・血疾などが出現しうる5)。  本症例では、術前に縦隔腫瘍と診断し、左肺門部に浸潤性に増殖したと考えた カミ腫瘍周囲の10w density areaは、虚脱に陥った肺実質として認識できること、 肺門部への浸潤ととらえた所見は肺内の腫瘤ゆえに不明瞭となっていたことを読 影すれば、肺腫瘍との診断は可能であった。  腫瘍の組織学的診断には、最も侵襲が少なく、確実と思われた気管支鏡下生検 を行ったにもかかわらず肺平滑筋腫の術前診断は得られなかったが、縦隔腫瘍で、 外科的切除以外を治療法とする疾患を否定する意味では有用であった。肺実質型 に比べ・本症例のような気管支型では、その発生部位から、手術侵襲は大きくな りうるが、良好な予後が得られているようである1)。 おわりに 術前に浸潤型縦隔腫瘍と診断した気管支型肺平滑筋腫の1例を報告した。 文 献 1)味元宏道、冨田良照、中原康治K澤 祥幸、田中春仁、羽田 淳、加地秀樹 一27一

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      山梨肺癌研究会会誌 12巻1号 1999  肺平滑筋腫の1例.胸部外科44:773−776,1991 2)伊藤元彦:肺の良性腫瘍.日胸外会誌19:L1971 3)Arrigoni MG, Woolner LB, BernatZ PE et al:Benign tumors of the lung,A  ten・year surgical experience, J Thorac Cardiovasc Surg 60:589,1970 4)中山治彦、加瀬昌弘、山田耕三、国頭英夫、渡辺古志郎、中山宣夫:肺平滑  筋腫の1切除例.胸部外科46:895−898,1993 5)井上雅晴、田中 勲、槙島敏治、渡辺幸康、増田 亮、武村民子:肺平滑筋  腫の2例,日胸外会誌35:145−151.1987 1 1997年8月胸部X−P   1998年6月胸部X−P   健診時      入院時 図1         図3 入院時胸部CT検査 開胸時所見 図2  eoaTiシンチグフム 切除標本 割面所見 図4   病理組織像   HE stain×100 図5 −28一

参照

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