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一次的コントロールと二次的コントロールの概念を用いた高校生のコントロール感尺度作成の試み

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Academic year: 2021

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(1)〔資 料〕. 日本健康学会誌 Jpn J Health & Human Ecology. 2021;87(2):66‒83. 一次的コントロールと二次的コントロールの概念を用いた 高校生のコントロール感尺度作成の試み 朝倉 隆司 1 菅原 里美 2 笹原 和子 3 柳沼 早苗 4 青木 鮎実 5 竹鼻ゆかり 1 Preliminary Development of Sense of Control Scale for High School Students Using the Concept of Primary and Secondary Control Takashi ASAKURA 1, Satomi SUGAWARA 2, Kazuko SASAHARA 3, Sanae YAGINUMA 4, Ayumi AOKI 5 and Yukari TAKEHANA 1 The sense of control of high school students is an important psychological resource for successfully adapting to the challenges and changes of this period, and personal development of it is an important issue for health education and school health. In this study, a scale to measure high school students’ sense of control has been developed and was examined the psychometric properties, i.e. validity and reliability, of a novel six-item scale. Following the definition by Rothbaum et al., the scale comprises three items representing a sense of “problem-focused” control (primary control) and three representing “self-focused” control (secondary control). We collected data from 2,514 students who responded to anonymous self-administered questionnaire surveys conducted at six high schools in Fukushima, Miyagi, and Tokyo, 2012–2016. We then used these data to perform exploratory factor analysis and confirmatory factor analysis, as well as subsequent statistical examinations. We found the goodness-of-fit indices of the two-factor measurement model were satisfactor y (root mean square error of approximation = 0.081, comparative fit index = 0.962, standardized root mean residual = 0.037) and the reliability coefficients of the scale were acceptably high (α = 0.86, ω = 0.86). We also confirmed evidence on associations with external variables that was consistent with findings in earlier studies. Accordingly, the scale’s construct validity and reliability were generally satisfactory. Future research should examine the relationship with other variables concerning high school students and study the construct validity of the scale with regard to how it can contribute to students’ health and academic performance. 1 1 2 2 3 3 4 4 5 5. 東京学芸大学・養護教育講座 Tokyo Gakugei University, Department of School Health Care and Education 横浜市立釜利谷中学校 Kamariya Junior High School, Yokohama City 福島県緊急スクールカウンセラー Emergency School Counselor in Fukushima 蔵王町立平沢小学校 Hirasawa Elementary School, Zao Town 東京学芸大学大学院・連合学校教育学研究科 Tokyo Gakugei University Graduate School.

(2) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 67. Key words:high school students, primary control, secondary control, construct validity, reliability. 高校生,一次的コントロール,二次的コントロール,構成概念妥当性,信頼性 身につけながら発達していく時期なのである 1).. Ⅰ はじめに. 縦断研究では,10 代後半が始まる高校生にとって. 高校生は思春期から大人への移行期の始まりで. コントロール感は,大人への移行期の様々な課題. あり,彼らが有するコントロール感(あるいは統. と変化にうまく適応していくうえで,教育等の働. 御感:mastery)は,この時期の課題と変化にう. きかけにより育成が可能な重要な心理的資源だと. まく適応していくうえで重要な心理的資源であり,. 報告されている 2,3).加えて,このコントロール感. その後の人生の健康,学業や職業など生活面にお. は,認知を通して把握される特性であり mastery. いてポジティブな影響をもたらすと考えられてい. と同義に使用されているが 10),逆境から回復する. .したがって,高校生のコントロール感をい. 力である resilience や対処行動を規定する要因と. かに育成するかは,社会人となっていく彼らの将. 考えられている 11,12)点からも重要な特性と言えよ. 来を見据えて「生涯を通じて心身ともに健康で安. う.. 全な生活を送るための基礎を培う」ことを目指す. 以上のことより,コントロール感は,高校生の. 健康教育や学校保健の重要な課題である 5,6).この. メンタルヘルス不全の予防,精神健康の保持・増. 課題に取り組むためには日本の高校生のコント. 進を図る上で重要であり,発達を促すべき健康や. ロール感を測定できる信頼性と妥当性が確保され. 学業達成に資する心理的資源だと考えられる.し. た尺度が必要であり,本研究はその作成を試みた.. かも,思春期・青年期というパーソナリティ形成. まず思春期・青年期におけるコントロール感と. 期において育成が可能なコントロール感は,成人. 健康に関する海外の先行研究をみると,大学生の. 期における健康的なライフスタイルや良好な職業. 知見ではあるが,コントロール感は,抑うつ,精. 生活,ウェルビーイングにも寄与する心理的資源. 神的ストレス,くよくよと考えたり心配したりす. だと言える 1).しかし,日本においてコントロー. る傾向を弱めて,ストレスフルな状況下でもより. ル感と健康に関する研究は数少なく 13,14),高校生. よく発達し,学業成績も上がり,行動変容を容易. を対象にコントロール感を測定し,健康との関連. にするなど,大学生の健康や発達,学業成績にお. を検討した研究は,我々の知る限り見られない.. けるポジティブな結果との関連があげられてい. では,そもそもコントロール感とはどのような. る.  1-4).  4). る . 同 様の関 連は他の文 献でも指 摘されてい. 概念なのか,測定尺度を考案する上で吟味してお. る 1,7).また,コントロール感は,先を見通す力を. く必要がある.これまで概ねコントロール感とは,. 人にもたらす特性でもあり,それによってストレ. 人生経験を通して形成されていくパーソナリティ. スフルな状況を避けたり,自分の見方を切り替え. 特性(あるいは自己概念)を指しており,人々が. て,問題がもたらす心理的影響を緩衝したり解消. 自らの日常生活に重要な影響を与える出来事,状.  7). することが容易になると考えられている .. 況や環境をどの程度コントロールできるとみなし. さらに,コントロール感は,児童期から早期成. ているか,自身に統御する逞しさがあると見てい. 人期にかけて,社会関係や生活上の出来事におけ. るか,を指す概念と考えられてきた 15,16).このよ. る相 互 作 用を通して発 達すると考えられてい. うにコントロール感は,自己と環境のダイナミッ.  1, 8, 9). .とりわけ思春期は,自立・自律に向けて. クな関係の捉え方を表す概念であるが,実は,近. 自分自身を模索し自己を評価する心理社会的活動. 年コントロール感をめぐり大きく異なる 2 つの概. が高まる年齢期であり,社会関係や社会的役割が. 念あるいは立場から議論されており 10,17),我々は. 広がっていく過程で問題解決や生活上のスキルを. その 2 つのコントロール概念を踏まえた尺度の作. る.

(3) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 68. 成が必要であると考えている.. ment of self)ことの 2 点 17)であり,周囲の状況や. そのひとつは,欧米文化を背景にしたコントロー. 環境との対立を避けて良好な関係性の維持に寄与. ル理論に基づく概念で,コントロール感とは個人. すると考えられている 17).すなわち,二次的コン. が自分の置かれた状況や自分を取り巻く環境に対. トロール感の水準が高いと所属感,調和感,自己. し影響を及ぼしているとの認知を指し,自己のニー. の一貫性が高まり,低いと孤立や孤独,不調和感. ズを満たすよう意図した事態を引き出すことがで. が高まる可能性がある.加えて,二次的コントロー. との考えを指している.その信念が個. ル感は,日本の文化に適していると指摘されてお. 人の適応に貢献し,その水準が低いと無力感に繋. り 17-19,22-24),日本の教育分野では,自分の考えを. がると考えられている.これがコントロール感の. 調節して状況や集団に合わせることができるよう. 主流となる概念であり,一次的コントロールと呼. になることを成長や成熟の表れと捉えており,主. ばれている.一次的コントロールの対象は,直面. 体的な問題解決への取り組みと共に,協調的な問. している問題状況であり環境である.この概念に. 題解決の方法として強調されている 14,25,26).この. 基づくと,強いコントロール感の保持は,個人に. ように二次的コントロール感の保持は,日本の社. 有能感,自己肯定感,主体感覚をもたらし,コン. 会文化において適応的であり,対立や葛藤を回避. トロール感の喪失は無能感,無力感をもたらす .. した調和的な関係性の構築において重要と言える.. 実際に,コントロール感の喪失は,うつ病,スト. ただし,Rothbaum ら 10)は,一次的コントロール. レス,不安関連障害との関連が報告されており ,. と二次的コントロールは明確に分けられるもので. 一方強いコントロール感は,人々の情緒的ウェル. はなく複雑に関係しあっていると指摘し,Morling. ビーイングを保護する要因であったと報告 21)され. らは 17)両者の関連は研究間で一貫性がないと概括. ており,コントロール感は個人の精神的健康に寄. している.したがって,2 種類のコントロール概. 与する要因であると言える.. 念で構成した尺度を作成して,両者の関係やそれ. しかし,我々が日常生活で出会う状況や環境は,. ぞれと健康や学業等との関係を検討することが課. 個人の力で変えられることばかりではない.たと. 題である.. えば,我々は,阪神・淡路大震災,東日本大震災. さて近年,国内外で健康との関連でコントロー. のような大きな災害や不慮の事故,感染症のパン. ル感を測定する尺度として広く使用されている尺. デミック,人間関係におけるトラブル,障害や慢. 度のひとつは Pearlin Mastery Scale(PMS) 15,16)で. 性疾患など個人で状況を変えることが困難な事態. ある.その日本語版 13,14)も作成されているが,PMS. にしばしば遭遇している.このような重大事態で. は一次的コントロール感を測定する尺度であり,. なくとも,困難な状況や環境に自己を調節して適. 日本においても注目されている二次的コントロー. 合することで対処しようとすることは日常生活に. ル感 17-19,22-24)は含まれていない.しかも,妥当性. おいてしばしば経験することである.このように. や信頼性の面で尺度の心理測定特性の問題点が指. 自己を状況や環境に合わせて変化させ,状況や環. 摘されている.PMS は否定的表現 5 項目と肯定的. きる.  10, 17-19).  10).  20). 境を受容することで,適応や発達が促されると指. 表現 2 項目の計 7 項目からなり,Pearlin らの研. 摘されている 18).そこで Rothbaum ら 10),Morling. 究 15,16)では一元的因子構造が示されているものの,. ら 17),Weisz ら 19)は,一次的コントロールに対し. 日本語版 13,14)や中国語版 27), スペイン語版 28)で. 二次的コントロールという新たな概念を提案し,. は,否定と肯定の表現の混在により因子相関の低. 詳細に議論している.それによると二次的コント. い 2 因子構造になり,尺度の一元的構造が再現さ. ロールの概念規定のポイントは,変え難い状況・. れないとの指摘である 27-29).そのため,しばしば. 環境を受容(acceptance)し,それと調和するよ. 一次的コントロール感が低下した状態である無力. うに努力して自己の見方や考えを変える(adjust-. 感を表わす否定的表現の 5 項目尺度として使用さ.

(4) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 69. れており 28-30),直面している問題状況や環境を自. わせて環境や問題状況を変えようとする指向性). 分のニーズに合致するように変えようとする積極. と二次的コントロール(自分を現実に合わせて,. 的な側面を捉えきれていない可能性がある.. それを受容しようとする指向性)を概念規定し,. 以上より,新たに日本の高校生のコントロール. 高校生のコントロール感を測定する肯定的な表現. 感尺度を作成する際には,積極的な対処方略の動. の 6 項目からなる尺度の作成を試みた.そして,. 因となる一次的コントロール感と,欧米のコント. これまで我々が複数の高等学校で実施した調査. ロール理論からすると受動的で不適応とみなされ. データを用いて,高校生のコントロール感尺度の. ているが,日本をはじめ東アジアの文化に適した. 構成概念妥当性と信頼性について検討した.. 自己調節的で受容的な対処の動因である二次的コ. Ⅱ 対象と方法. ントロール感の両者を捉える必要があると考える. この考えには,前述の理論的背景に加え,未曽有 の大災害を体験する中で,高校生個人の力では変. 1.対象者 分析に用いた調査 1 から調査 4 の高校生のデー. えられない困難な状況や環境変化に対処する力を. タ(表 1)は,福島県 1 校を 2 度(延べ 2 校) ,宮. 生み出す心理的資源としてコントロール感に関心. 城県 2 校,東京都 2 校の調査データである.調査. を持ち,一次的コントロール感のみでなく二次的. 年は 2012 年から 2016 年であり,延べ 6 校の高等. コントロール感が彼らの精神的健康と関連するの. 学校で合計 2,514 人の高校生から回答を得た.. ではないかとの問題意識を著者らが持っていたこ. 各調査は,固有の研究目的に即した概念枠組み. と,が大きく影響している.. と変数を用意しており,それらに従い作成された. そこで,本研究は,Rothbaum ら 10)が最初に提. 無記名自記式質問紙を用いて実施した.本研究で. 案した概念が最もシンプルで 2 種類のコントロー. 用いた変数は,各質問紙に共通の変数である.最. ル 感 の 区 別 が 明 確 で あ る こ と,Morlin ら の レ. 初の調査は 2012 年 1 月から 2 月にかけて実施して. ビュー でも acceptance と adjustment という二次. おり,東日本大震災の約 1 年後に被災地である福. 的コントロールの操作的概念のポイントが広く支. 島県の高校で行った調査である.2014 年の福島県. の定義に. 調査は同じ高校の調査であるが,調査間隔からし.  17). 持されていることから,Rothbaum ら.  10). 立ち帰り一次的コントロール(自己のニーズに合. て重複する調査対象者はいない.. 表 1 調査対象者の特性 基本特性 調査年 調査協力校. 調査 1(N=656) 2012 年 福島県 A 高校. 調査 2(N=533). 調査 3(N=373). 2013 年. 2014 年. 調査 4(N=952 人). 全調査(N=2,514人). 2016 年. 2012 年から 2016 年. 宮城県 B 高校(315 人) 福島県 A 高校. 東京都 D 高校(471 人). 延べ 6 校. 宮城県 C 高校(218 人). 東京都 E 高校(481 人). 学年 1 年生. 198 人(30.2%). 183 人(34.3%). 193 人(51.7%). 471 人(49.5%). 1,045 人(41.6%). 2 年生. 228 人(34.8%). 180 人(33.8%). 180 人(48.3%). 481 人(50.5%). 1,069 人(42.5%). 3 年生. 230 人(35.0%). 170 人(31.9%). −. −. 400 人(15.9%). 性別 男子. 315 人(48.0%). 237 人(44.5%). 187 人(50.3%). 467 人(49.1%). 1,206 人(48.0%). 女子. 341 人(52.0%). 293 人(55.0%). 185 人(49.6%). 447 人(47.0%). 1,266 人(50.3%). 無回答. 0 人(0.0%). 3 人(0.5%). 1 人(0.1%). 38 人(3.9%). 42 人(1.7%). CES-D10 得点 1). 11.95(5.65). 10.18(5.26). 10.09(5.68). 10.21(4.91). 10.63(5.35). 身体症状得点 2). 20.61(7.01). 21.17(5.97). 19.73(6.77). 21.17(6.48). 20.81(6.58). CES-D10 の得点範囲は 0 から 30.数値は平均(標準偏差)である. 身体症状の得点範囲は,10 から 40.数値は平均(標準偏差)である.. 1) 2).

(5) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 70. 2.測定変数. せることで,長期的には良い結果が得られるとの. 1 )コントロール感尺度の作成. 意図である 31)が,本研究では二次的コントロール. 本研究で作成したコントロール感を測定する項. 感を尋ねる質問項目に位置づけて作成した.M5. 目は 6 項目であり,前述の 2 種類のコントロール. と M6 は,環境にうまく関りながら,自己を調整. 感を理論的に踏まえて, 「自分の問題は自分で解決. して調和的な問題解決を可能にする特性と考えら. できると思う(M1)」 「自分の身に起きるできごと. れていることより,辛く悲しい状況,厳しい現実. の多くは,自分でコントロールできると思う(M2)」. や出来事に直面しても,それに自己を適応させて. 「心の準備をすれば,たいていのことは対処できる. 受容する二次的コントロール感を捉える質問項目. と思う(M3)」 「自分の努力次第で,自分の人生を. として作成した.これら 3 項目のコントロールの. 良い方向に導くことが出来ると思う(M4)」 「自分. 対象は,「M4:努力を要する自分」「M5:立ち直. には,辛さや悲しさで落ち込んでも,そこから立. りをはかる自分」 「M6:受け止める自分」といっ. ち直る力が備わっていると思う(M5)」 「厳しい現. た自己の在り方であり,その変化を要請している. 実や困難な出来事に直面しても,受け止められる. のは自身が直面する状況や出来事,環境なのであ. と思う(M6)」を作成した.. る.. M1 から M3 は,Rothbaum ら ,Morlin ら の. これらの質問項目を作成する際に,対象者が回. 文献に準じて「個人が自分の置かれた状況や自分. 答しやすいように,逆転項目による回答パターン. を取り巻く環境を自分のニーズに合わせて作り出. への影響 32)を考慮して,ワーディングをより直接. せる」という認知であると操作的に定義し,一次. 的で理解しやすい肯定的表現で統一した.回答選. 的コントロール感 10-15)を捉える質問項目として作. 択肢は, 「全く当てはまらない」 「あまり当てはま. 成 を 試 み た. ま ず M1 と M2 は,Pearlin ら の. らない」 「まあ当てはまる」 「非常に当てはまる」. PMS 15,16)の項目を参考に,肯定的で積極的なコン. の 4 段階で,尺度得点を算出するために順に 1 か. トロール感を把握する内容の質問文にして一次的. ら 4 の得点を与え,得点が高いほどコントロール. コントロール感を捉える質問項目とした.M3 は,. 感が強いことを表している..  10).  17). 「心の準備をすれば」との条件づきではあるが,. 調査項目の作成に当たり,2012 年 1 月から 2 月. 「たいていのことは対処できる」とネガティブな生. にかけて実施した福島県での調査に先立ち,著者. 活上の出来事やストレスフルな状況であっても対. の一人が約 1 週間にわたり対象の高校で参加観察. 処して状況を変えることが可能であるという,自. を実施し,生徒,教員,養護教諭から被災後の生. 身の内にある強いコントロール感を尋ねており,. 活や精神健康,体験している問題への対処に関す. 一次的コントロール感を捉える項目として作成し. る情報を得た.その情報を踏まえて,先に述べた. た.これらの項目において, 「自分」はコントロー. プロセスを経てコントロール感を含む調査票を作. ルする主体であり,コントロールの対象は「M1:. 成し,数名の生徒にプレテストを実施すると共に,. 問題」 「M2:できごとの多く」「M3:たいていの. 養護教諭や教員,共同研究者からの意見を得て修. こと」といった外部の問題となる状況や出来事,. 正を重ねて完成させた.作成した項目の内容的妥. 環境である.. 当性は,他の高校の養護教諭やスクールカウンセ  10). 一方,M4 から M6 は,同様に Rothbaum ら ,. ラーを経験し,高校生をよく知る共著者らが高校. Morlin ら 17)の文献に準じて「状況に合わせて自己. 生に対する質問内容として適切であることを確認. を変え,状況を受け入れようとする」認知である. した.2 度目以降の調査では,事前に回答可能性. と操作的に定義し,二次的コントロール感を捉え. を確認するために,少数の高校生を対象にしたグ. る質問項目として作成を試みた.M4 は,自分が. ループインタビューやプレテストを実施した.. 努力して自身を現実や環境に適合するよう変化さ.

(6) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 71. この結果を踏まえ,統合したデータでベースモデ. 2 )抑うつ性尺度 精神健康の指標として,一般集団の抑うつを測. ルの確認的因子分析を行った 34,35).さらに,本調. 定する尺度である Center for Epidemiologic Stud-. 査項目の因子構造が 1 次的コントロール感と 2 次. ies-Depression Scale の 10 項目短縮版(CES-D10). 的コントロール感の 2 因子で構成される統合的な. 「普段はなんでもないこ を用いた 33).質問項目は,. コントロール感であるという仮説に合致した 2 因. とが,わずらわしかった(めんどくさかった)」 「も. 子構造と判断された場合,一元性を確認するにあ. のごとに集中できなかった」などの 10 項目で構成. たり,モデル識別のために 2 次因子から 1 次因子. されている.回答選択肢は「まれにあった,ある. への因子負荷量に等値制約を課した 2 次因子分析. いは全くなかった(1 日未満)」から「ほとんどの. モデルの検討を行った 37).. 日,あるいは毎日あった(5 ~ 7 日)」までの 4 段. 本研究で EFA と CFA を調査単位で分析した理. 階で頻度を尋ねており,頻度が多いほど抑うつ傾. 由は,それぞれの調査内容,地域性,時期が異な. 向が強くなることを表すように合計した.得点の. り,調査間は独立のサンプルと見なせると考えた. 配点は, 「ない」が 0, 「毎日」を 3 とし,0 点から. からである.なお,学校単位の分析も行い,結果. 30 点の尺度である.なお,対極表現の項目が 2 項. を比較検討した.. 目あり,得点を逆転処理して加算した.. 具体的には,CFA は,Mplus 34,35)を用いて,非 正規性の修正を行うrobust maximum likelihood 法. 3 )身体症状の訴え 身体的健康の指標として, 「おなかが痛い,胃が. により推定を行い,解の単純構造を担保しつつ複. 痛い」「頭が痛い」など身体症状の訴え 10 項目を. 雑性も許容する geomin 回転により因子の抽出を. 測定した.回答選択肢は「よくある」から「ない」. 行 っ た. 適 合 度 指 標としては,Comparative Fit. の 4 段階で,順に 4 点から 1 点までを配点し,得. Index(CFI) ,Root Mean Square of Approximation. 点が高いほど身体的訴えが多いことを表すよう合. (RMSEA) ,Standardized Root Mean Square Residual(SRMR)を用いて評価した.一般に良好な適. 計した.. 合度を示すために用いられる基準は,CFI>=0.95,. 3.分析方法 本研究で作成したコントロール感尺度の各項目. RMSEA<0.05,SRMR<0.05 で あ る 38).CFI>=. について記述統計を算出した後,調査 1 から調査. 0.90,RMSEA<0.08,SRMR<0.08 であれば, 許. 4 の調査データを用いて探索的因子分析(EFA:. 容可能な適合とみなされるが,評価は複数の指標. exploratory factor analysis)を行った.具体的に. により総合的に行った 39).. は, 因子数を決定するために,Mplus version8.3 34,35). ちなみに,EFA と CFA 共に欠損値の推定は,. により因子数ごとの適合度,平行テスト(parallel. Mplus のデフォルトである完全情報最尤推定法. analysis)による検討を行った .それらの結果を. (full information maximum likelihood method,.  36). 総合的に判断し,因子数を決定した後,調査 1 か. FIML)により行った.. ら調査 4 の因子パターンの適合度と類似性を検討. 尺度の信頼性は,調査単位と全調査に対する. し,全てのデータを統合して探索的因子分析を行っ. Cronbachのα係数とMcDonald のω係数 36,40)を算. た.その因子構造から確認的因子分析(CFA: Con-. 出した.信頼性係数の算出には,SPSS version24,. firmatory Factor Analysis)のためのベースモデル. JASP0.12.1(Jef freys’s Amazing Statistics Pro-. を作成し,調査 1 から調査 4 のデータに対し順番.  41) を用いた. gram). に確認的因子分析を行い,ベースモデルがどのサ. さらに,尺度得点の性差,学年差を検討するた. ンプルにも共通してよく適合することを確認した.. めに,各項目に与えた得点の合計の平均が比較可. そのうえで多母集団同時分析を行い,ベースモデ. 能であることを,性別並びに学年別にベースモデ. ルが 4 つのサンプルに適合することを確認した.. ルを用いて多母集団同時分析を行い確認した.こ.

(7) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 72. の結果に基づき,コントロール感尺度の性差,学. 得点は,調査 1 から調査 4 において,やや異なっ. 年差,CES-D10 と身体症状との関連性を統計的に. ており,CES-D 10 の得点は調査 1 で高く,身体. 分析し,構成概念妥当性を検討した 40,42,43).  2 群. 症状は調査 2 と調査 4 で高かった.. 間の平均値の比較は,等分散の検定の後に Welch. コントロール感の項目の平均と標準偏差を見る. の検定を行い,3 群の比較は一元配置分散分析を. と,各項目の傾向は,調査 1 から調査 4 でほぼ同. 行った後,ボンフェローニの方法による多重検定. 様であった(表 2) .項目別にみると, 「M4 自分の. を行った.相関関係は,ピアソンの積率相関係数. 努力次第で,自分の人生を良い方向に導くことが. により検討した.. 出来ると思う」の平均がどの調査でもやや高くて. 4.倫理的配慮. 肯定されやすく,全体の平均は 3.21 であった.逆. 校長,クラス担当の教員に文書と口頭で趣旨の. に,どの調査でも平均が低い傾向にあった項目は,. 説明,守秘義務やプライバシー保護等の倫理的配. 「M6.厳しい現実や困難な出来事に直面しても,. 慮について説明を行い,了承を得た.生徒にはク. 受け止められると思う」であり,全体の平均は 2.90. ラス担当の教員が説明を行い,調査への協力は任. であった.. 意であること,調査趣旨に賛同を得た質問に回答. 2.探索的因子分析(EFA)の結果. すること,回答したくない質問には無理に回答し. まず,因子数を決定するために,Mplus を用い. なくて良いことなどを説明した.それぞれの調査. て因子数 1 から 3 までを仮定した探索的因子分析. は,東京学芸大学研究倫理審査委員会の承認を得. を行い,因子数ごとの適合度を比較した.同時に,. て実施した(東学教研第 227 号,東学教研第 231-1. 平行分析 36)による因子数の検討も行った.その結. 号,東学教研第 231-2 号,東学教研第 253 号).. 果,探索的因子分析によると,調査 1 から調査 4. Ⅲ 結果. まで第 1 因子の初期固有値が大きく全体の分散の 55%から 62%を説明していた.平行分析を行った 結果も,1 因子構造を強く示唆していた.ところ. 1.記述統計 男女は,ほぼ同じ割合とみなせた.学年は,調. が,因子数ごとの適合度を見ると,2 因子のモデ. 査 3,調査 4 では,3 年生が受験期のために調査を. ル適合度が,調査 1 から調査 4 の全てにおいて最. 実施できなかった.そのため,3 年生の割合が全. も良好であった(表 3) .具体的に例を示すと,調. 体では小さくなっている.CES-D10 と身体症状の. 査 1 では,1 因子のモデル適合度は,χ 2=127.564,. 表 2 コントロール感の項目の基本統計(平均と標準偏差) 質問項目 M1.自分の問題は自分で解決できると思う. 調査 1 調査 2 調査 3 調査 4 全調査 (n=649) (n=526) (n=369) (n=948) (N=2,492) 2.96(0.68) 3.06(0.68) 3.05(0.63) 2.96(0.71) 2.99(0.69). M2.自分の身に起きるできごとの多くは,自分でコント 2.95(0.69) 2.99(0.75) 3.05(0.65) 2.88(0.74) 2.94(0.72) ロールできると思う M3.心の準備をすれば,たいていのことは対処できると 2.89(0.79) 2.98(0.75) 3.01(0.68) 2.92(0.76) 2.94(0.76) 思う M4.自分の努力次第で,自分の人生を良い方向に導くこ 3.20(0.78) 3.28(0.78) 3.22(0.71) 3.17(0.75) 3.21(0.76) とが出来ると思う M5.自分には,辛さや悲しさで落ち込んでも,そこから 3.01(0.79) 2.96(0.82) 3.01(0.73) 2.97(0.75) 2.98(0.77) 立ち直る力が備わっていると思う M6.厳しい現実や困難な出来事に直面しても,受け止め 2.86(0.79) 2.86(0.84) 2.92(0.74) 2.94(0.75) 2.90(0.78) られると思う 注 1)得点は,非常に当てはまる=4,あてはまる=3,あまり当てはまらない=2,全く当てはまらない=1,である. 注 2)分析対象者は,コントロール感の全ての項目に回答した生徒である..

(8) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 73. 表 3 2 因子モデルによる探索的因子分析の結果 (n=653) 調査 21) (n=527) 調査 31) (n=372) 調査 41) (n=950) 全サンプル 2) (n=2,502) 調査 11) 因子 1 因子 2 因子 1 因子 2 因子 1 因子 2 因子 1 因子 2 因子 1 因子 2 共通性 0.70 0.07 0.60 0.16 0.65 0.15 0.66 0.15 0.66 0.14 M1.自分の問題は自分で解決できると思う 0.46 (0.09) (0.11) (0.12) (0.11) (0.14) (0.15) (0.07) (0.07) (0.05) (0.05) M2.自分の身に起きるできごとの多くは,自分 0.87 −0.02 0.88 −0.01 0.93 −0.01 0.93 −0.00 0.90 −0.01 0.81 でコントロールできると思う (0.04) (0.02) (0.06) (0.01) (0.07) (0.01) (0.04) (0.00) (0.02) (0.00) M3.心の準備をすれば,たいていのことは対処 0.55 0.20 0.47 0.28 0.41 0.37 0.42 0.40 0.47 0.31 0.32 できると思う (0.10) (0.11) (0.17) (0.15) (0.13) (0.13) (0.07) (0.06) (0.06) (0.06) M4.自分の努力次第で,自分の人生を良い方向 0.16 0.52 0.08 0.46 0.09 0.57 0.11 0.57 0.13 0.52 0.29 に導くことが出来ると思う (0.09) (0.09) (0.19) (0.14) (0.12) (0.10) (0.07) (0.06) (0.06) (0.05) M5.自分には,辛さや悲しさで落ち込んでも, −0.01 0.89 −0.04 0.84 −0.01 0.90 −0.09 0.92 −0.03 0.87 0.76 そこから立ち直る力が備わっていると思う (0.01) (0.05) (0.21) (0.10) (0.09) (0.10) (0.04) (0.04) (0.04) (0.01) M6.厳しい現実や困難な出来事に直面しても, 0.17 0.60 0.05 0.77 0.01 0.83 0.02 0.84 0.08 0.75 0.57 受け止められると思う (0.12) (0.11) (0.29) (0.21) (0.05) (0.07) (0.02) (0.03) (0.08) (0.06) 因子間相関 0.57(0.05) 0.62(0.18) 0.70(0.08) 0.62(0.04) 0.60(0.04) 3.66 0.83 3.48 0.83 3.32 0.86 3.27 0.85 3.76 0.73 ― 初期固有値 (55.3%)(14.3%)(54.5%)(14.2%)(62.7%)(12.7%)(61.0%)(13.8%)(58.0%)(13.8%) RMSEA=0.074, RMSEA=0.041, RMSEA=0.031, RMSEA=0.064, RMSEA=0.060, CFI=0.983, CFI=0.995, CFI=0.998, CFI=0.989, CFI=0.990, 2 因子解の適合度 3) SRMR=0.018 SRMR=0.014 SRMR=0.011 SRMR=0.014 SRMR=0.013 1) Mplus8 による探索的因子分析(ロバスト最尤法,Oblimin 回転)の結果,2 因子解の適合度が最も良好であった.表中の数値は各因子の標準化された因子負 荷量(標準誤差)である.欠損値は Mplus のデフォルトである完全情報最尤推定法(full information maximum likelihood method, FIML)により推定した. そのため,表 2 と比べ若干サンプル数が多くなっている. 2) 探索的因子分析の 2 因子モデルが 4 つの調査データに当てはまりが良かったため,調査 1 から調査 4 をプールして分析を行った. 3) 適合度は RMSEA, CFI, SRMR で総合的に判断しているため,表記が煩雑となるχ2 値の表記は省略した. 質問項目. df=9,P<0.001,RMSEA=0.143,CFI=0.861,. M1. SRMR=0.057 であるのに対して,2 因子のモデル 適 合 度はχ 2=18.406,df=4,P<0.001,RMSEA 第1因⼦. =0.075,CFI=0.983,SRMR=0.018 と顕著に改善 していた.モデルの比較を行うと,Δχ 2=102.818,. M2. M3. Δdf=5,P<0.001 であった.なお,3 因子構造は 抽出因子数の過剰により不適解となった.. M4. 4 つの調査データを個別に分析した結果,方法 で述べた通り,1 次的コントロール感と 2 次的コン. 第2因⼦. M5. トロール感で構成するという仮説に合致した 2 因 子モデル(図 1)が共通して最もデータに適合す ることが明らかになった.したがって,2 因子モ デルを採択して 4 つの調査データを統合して探索. は因⼦負荷量が⼤きいと仮定 は因⼦負荷量が⼩さいと仮定し, 確認的因⼦分析では0と設定. 図1. M6. 探索的因⼦分析における2因⼦相関モデル. 図 1 探索的因子分析における 2 因子相関モデル. 的因子分析を行った.その結果,M1 から M3 は 第 1 因子への因子負荷量(順に 0.66,0.90,0.47). の項目が第 1 因子と第 2 因子に負荷する問題点も. が大きく,M4 から M6 は第 2 因子への因子負荷. 変わらず認められた.. 量(順に 0.52,0.87,0.75)が大きくなっており,. 3.確認的因子分析(CFA)の結果. 2 因子モデルが最もデータに適合していた(χ =. 探索的因子分析により 2 因子モデルがデータに. 40.596,df=4,P<0.001,RMSEA=0.060,CFI=. よく適合することが示されたので,確認的因子分. 0.990,SRMR=0.013) .ただし,M3 は第 2 因子に. 析により 2 因子の測定モデルの検討を行った.ま. もやや大きめの因子負荷量(0.31)を示していた.. ず,調査 1 から調査 4 まで個別に 2 因子の測定モ. ちなみに,調査 2 と調査 4 の複数校をそれぞれ. デルを仮定した確認的因子分析を行った.それぞ. 分けて検討しても,2 因子構造の適合度が良く,. れの独立したデータでモデルが適合することを確. 因子負荷のパターンの結果は,まとめた結果とほ. 認し,多母集団同時分析を行い,4 つの集団に同. ぼ同様であった.東京都の調査 4 の 2 校は,M3. じモデルが適合するか,検討した.その適合度の.  2.

(9) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 74. 表 4 確認的因子分析と信頼性係数の結果 調査 1 1) (n=653). 調査 2 1) (n=527). 調査 3 1) (n=372). 調査 4 1) (n=950). 全サンプル 2) (n=2,502). M1.自分の問題は自分で解決でき ると思う. 0.75(0.03). 0.73(0.03). 0.79(0.04). 0.78(0.02). 0.77(0.02). M2.自分の身に起きるできごとの 多くは,自分でコントロール できると思う. 0.82(0.03). 0.81(0.04). 0.86(0.03). 0.84(0.02). 0.83(0.02). M3.心の準備をすれば,たいてい のことは対処できると思う. 0.70(0.03). 0.70(0.03). 0.73(0.05). 0.75(0.03). 0.72(0.02). 質問項目 第 1 因子「問題焦点」コントロール感. α信頼性係数. 0.80. 0.79. 0.83. 0.83. 0.81. ω信頼性係数. 0.80. 0.79. 0.84. 0.83. 0.82. M4.自分の努力次第で,自分の人 生を良い方向に導くことが出 来ると思う. 0.63(0.04). 0.52(0.04). 0.64(0.05). 0.64(0.03). 0.61(0.02). M5.自分には,辛さや悲しさで落 ち込んでも,そこから立ち直 る力が備わっていると思う. 0.83(0.03). 0.79(0.03). 0.89(0.02). 0.85(0.02). 0.83(0.01). M6.厳しい現実や困難な出来事に 直面しても,受け止められる と思う. 0.73(0.03). 0.81(0.04). 0.83(0.03). 0.86(0.02). 0.81(0.01). 第 2 因子「自己焦点」コントロール感. α信頼性係数. 0.77. 0.74. 0.82. 0.82. 0.79. ω信頼性係数. 0.78. 0.76. 0.83. 0.83. 0.80 0.74(0.02). 因子間相関. 0.72(0.04). 0.74(0.05). 0.79(0.05). 0.73(0.03). 全体のα信頼性係数. 0.84. 0.83. 0.88. 0.87. 0.86. 全体のω信頼性係数. 0.84. 0.83. 0.88. 0.87. 0.86. RMSEA=0.076, CFI=0.965, SRMR=0.035. RMSEA=0.055, CFI=0.980, SRMR=0.029. RMSEA=0.051, CFI=0.986, SRMR=0.028. RMSEA=0.103, CFI=0.946, SRMR=0.046. RMSEA=0.081, CFI=0.962, SRMR=0.037. モデルの適合度 2) 多母集団同時分析の適合度 3). χ 2=233.53, df=59, p=0.000, RMSEA=0.069, CFI=0.951, SRMR=0.055. ―. 表中の数値は標準化された因子負荷量(標準誤差)である. 適合度は RMSEA, CFI, SRMR で総合的に判断しているため,表記が煩雑となるχ 2 値の表記は省略した. 3) 確認的因子分析の 2 因子モデルを多母集団同時分析(強測定不変モデル)で検討し,適合度が良好であったので,調査 1 か ら調査 4 をプールして分析を行った. 1) 2). 良好さを確認したのち,データを統合して確認的. ることを示している.モデルの適合度は,RMSEA. 因子分析を行った.. =0.076,CFI=0.965,SRMR=0.035 と概ね良好と. 具体的には,まず,調査 1 のデータで 2 因子の. みなせた.. 測定モデルを仮定した確認的因子分析を行った.. 同様に,調査 2 から調査 4 まで同じ 2 因子の測. その結果,M1 から M3 は第 1 因子に,0.75,0.82,. 定モデルを用いて確認的因子分析を行った.その. 0.70 と大きい因子負荷を示した(表 4).M4 から. 結果は,調査 1 と同様に因子負荷量の大きさ,適. M6 は第 2 因子に 0.63,0.83,0.73 と大きな因子負. 合度指標共に概ね良好であり,2 因子の測定モデ. 荷量を示した.そして,第 1 因子と第 2 因子の相. ルがデータに対して適切であることを示していた.. 関は,0.72 と高い相関を示し,統合的なコントロー. なお,調査 4 のモデル適合度は,RMSEA=0.103,. ル感として 1 元的に尺度構成することが可能であ. CFI=0.946,SRMR=0.046 と RMSEA が基準より.

(10) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 大きな値であったが,他の指標も合わせると.許. 75. ロール感への因子負荷量(標準誤差)は,それぞ. 容可能な適合であると判断した.. れ 0.81(0.02),0.91(0.02)と高い値を示し,一. そこで,調査 1 から調査 4 を用いて多母集団同. 元性が確認できた.これらの因子負荷量の積(0.81. 時分析(強測定不変モデル)を行ったところ,χ 2. ×0.91)の値は因子間の相関係数(r=0.74)に等. =233.53,df=59,p=0.000,RMSEA=0.069,CFI. しいことから,表 4 に示した因子間相関の高さは. =0.951,SRMR=0.055 と良好な適合度であること. 各調査単位においても 2 次因子モデルによる一元. が分かり,因子構造,因子負荷量,測定誤差分散. 性が確認できることを示している.実際に,調査. が等価であるとみなせた.そこで最後に,データ. 単位,学校別の全てのサンプルを検討したところ,. を統合して確認的因子分析を行った.その適合度. コントロール感から 1 次因子の「問題焦点」コン. は,RMSEA=0.082,CFI=0.961,SRMR=0.037. トロール感への因子負荷量は 0.78 以上, 「自己焦. と概ね良好であった.. 点」コントロール感への因子負荷量は 0.90 以上で. EFA の分析と同様に 6 校に分けて 2 因子の測定. あった.. モデルによる CFA を行ったところ,調査 1 から調. 4.信頼性のα係数とω係数. 査 3 の高校は,学校別の適合度も良好であった.. これまで尺度開発の研究では,潜在因子に対す. M3 の項目の因子負荷の識別が良くなかった東京. る各項目の因子負荷量が等しいという古典的テス. 都の 2 校は,因子負荷量のパターンは良好であっ. ト理論に基づきα係数を用いて尺度の信頼性を検. たが,モデルの適合度は表 4 の調査 4 に示した結. 証している.それにならってα係数を算出したと. 果と同様であり,CFI と SRMR はいずれの学校も. ころ,6 項目を合計したコントロール感尺度では,. 基準を満たし良好だが,RMSEA は 0.09,0.11 と. 調査 1 から調査 4 まで順に 0.84,0.83,0.88,0.87. 良好な適合度とは言えなかった.しかし,2 因子. といずれも 0.8 を越えて高い値であった.全体の. の測定モデルをベースモデルにした 6 校の多母集. データでは,0.86 であった.また,下位尺度とな. 団同時分析の結果は,RMSEA=0.070,CFI=0.948,. る「問題焦点」コントロール感は,順に 0.80,. SRMR=0.065 であり,調査単位の分析結果と同様. 0.79,0.83,0.83 であり,全体では 0.81 であった.. に,概ね良好であった.. 「自己焦点」コントロール感は,順に 0.77,0.74,. これらの分析結果と方法で述べた尺度項目作成. 0.82,0.82 であり,全体では 0.79 であった.. の概念的な仮定を考え合わせると,第 1 因子は「問. さらに,α係数に加えて,最近推奨されている. 題焦点」コントロール感,第 2 因子は「自己焦点」. McDonald のω係数 36,40)を,統計ソフト JASP 41)に. コントロール感を表していると解釈できた.これ. より計算した.その結果,調査 1 から調査 4 のコ. らの因子間相関は,4 つの調査全てで 0.70 以上を. ントロール感尺度のω係数は順に0.84,0.83,0.88,. 示しており,強い相関関係が認められた.. 0.87 とほぼα係数と同じであり,全体のデータで. 一元性を確認するために Mplus により第 1 因子. は 0.86 であった.また,下位尺度となる「問題焦. 「問題焦点」コントロール感と第 2 因子「自己焦. 点」コントロール感は,順に 0.80,0.79,0.83,. 点」コントロール感の上位に潜在する 2 次因子と. 0.83 であり,全体では 0.82 であった. 「自己焦点」. して統合的な「コントロール感」を仮定したモデ. コントロール感は,順に 0.78,0.76,0.83,0.83 で. ルを,調査単位,学校別,そして統合したデータ. あり,全体では 0.80 であった.. で検討した.統合した全サンプルの結果を述べる. これらの結果から, 「問題焦点」コントロール感. と,適合度は 2 因子の測定モデルと同等であり(n. と「自己焦点」コントロール感の 2 つの下位尺度,. =2,502,RMSEA=0.081,CFI=0.962,SRMR=. 並びにコントロール感全体の尺度の信頼性は,良. 0.037) ,2 次因子のコントロール感から 1 次因子の. 好であるとみなせた.. 「問題焦点」コントロール感,「自己焦点」コント. ちなみに,全体のデータでコントロール感尺度.

(11) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 76. 表 5 性別,学年別における 2 因子モデルの多母集団同時分析の結果 質問項目. 性別. 学年. 男子 1) (n=1,202). 女子 1) (n=1,260). 1 年生 1) (n=1,041). 2 年生 1) (n=1,064). 3 年生 1) (n=397). M1.自分の問題は自分で解決できると思う. 0.78(0.02). 0.75(0.02). 0.77(0.02). 0.77(0.02). 0.75(0.03). M2.自分の身に起きるできごとの多くは, 自分でコントロールできると思う. 0.84(0.02). 0.82(0.02). 0.84(0.02). 0.83(0.02). 0.80(0.03). M3.心の準備をすれば,たいていのことは 対処できると思う. 0.74(0.02). 0.70(0.02). 0.73(0.05). 0.73(0.02). 0.70(0.03). M4.自分の努力次第で,自分の人生を良い 方向に導くことが出来ると思う. 0.60(0.02). 0.62(0.02). 0.61(0.02). 0.62(0.02). 0.59(0.03). M5.自分には,辛さや悲しさで落ち込んで も,そこから立ち直る力が備わってい ると思う. 0.85(0.02). 0.82(0.02). 0.84(0.02). 0.83(0.02). 0.84(0.03). M6.厳しい現実や困難な出来事に直面して も,受け止められると思う. 0.80(0.02). 0.81(0.02). 0.80(0.02). 0.81(0.02). 0.79(0.03). 0.75(0.03). 0.73(0.03). 0.69(0.03). 0.77(0.03). 0.77(0.05). 第 1 因子「問題焦点」コントロール感. 第 2 因子「自己焦点」コントロール感. 因子間相関 多母集団同時分析の適合度 2). χ 2=178.64, df=25, p<0.001, RMSEA=0.071, CFI=0.955, SRMR=0.045. χ 2=229.91, df=42, p<0.001, RMSEA=0.073, CFI=0.946, SRMR=0.066. 表中の数値は標準化された因子負荷量(標準誤差)である. 強測定不変モデルの検討結果である.. 1) 2). の得点と M1 から M6 の項目との調整項目―尺度. 平均点を比較してよいか確認するために,性別と. 得点の相関(adjusted item-total correlation)を検. 学年別に 2 因子測定モデルの適合度を多母集団同. 討したところ,順に 0.63,0.66,0.66,0.55,0.68,. 時分析(強測定不変モデル)により検討した.そ. 0.68 と中程度の相関を示した.コントロール感尺. の結果,男女 2 集団のモデルの適合度は,χ 2=. 度と下位尺度との相関では,「問題焦点」コント. 178.64,df=25,p<0.001,RMSEA=0.071,CFI=. ロール感と 0.90, 「自己焦点」コントロール感 0.91. 0.955,SRMR=0.045 であり,学年 3 集団のモデル. と強い相関であるが,下位尺度間の相関は 0.63 と. の適合度はχ 2=229.91,df=42,p<0.001,RMSEA. 中程度の相関であった.. =0.073,CFI=0.946,SRMR=0.066 であった.い. 5.性,学年,抑うつ性尺度,身体症状との関. ずれも適合度は良好であり,比較可能であること を確認できた(表 5) .そこで全体サンプルのデー. 連の検討 本コントロール感尺度の構成概念妥当性.  40, 42, 43). タを用いて 2 つの下位尺度とコントロール感尺度. するために,本研究が先行研究の知見や理論から. を構成する各項目(1 点から 4 点)の合計点の平. 仮定した検証可能な他の概念との関連性は,コン. 均の性差,学年差を検討した.. トロール感尺度の得点には,性差があり男子が女. 性差を Welch の t 検定により検討すると, 「問題.  2, 3). , 年 齢が上がるほど得 点が高. 焦点」コントロール感, 「自己焦点」コントロール. い 2,3,8,44,45), 抑うつ性 尺 度 得 点と負の関 係にあ. 感,コントロール感の 3 つの尺度得点で性差が認. 子より高い.  1, 15, 16, 20,  46, 47). ,身体的症状得点と負の関係にあ. められ,男子の方が平均値は有意に高かった.順. る 1,48,49),の 4 点である.ここでは,この 4 点を. に,男子生徒の平均(標準偏差)は 9.05(1.94) ,. 検討した.. 9.18(2.00),18.22(3.57)であり,女子生徒の平. 性差,学年差を検討するに先立ち,尺度得点の. 均(標準偏差)は 8.72(1.73) ,8.99(1.88) ,17.70. る.

(12) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 77. 表 6 コントロール感尺度と基本属性,CES-D10,身体症状との関連(全サンプル) 基本特性,CES-D10,身体症状. コントロール感 問題焦点. 自己焦点. コントロール感尺度. 全体. 8.88(1.84). 9.09(1.94). 17.97(3.41). 性 男子(n=1,200 ~ 1,203). 9.05(1.94). 9.18(2.00). 18.22(3.57). 女子(n=1,253 ~ 1,258). 8.72(1.73). 8.99(1.88). 17.70(3.24). t=4.47, df=2400.6, P<0.001. t=2.42, df=2425.7, P=0.016. t=3.80, df=2403.3, P<0.001. 学年 1) 1 年生(n=1,035 ~ 1,038). 8.69(1.83). 8.83(1.92). 17.51(3.35). 2 年生(n=1,059 ~ 1,062). 8.98(1.84). 9.19(1.95). 18.16(3.45). Welch の t 検定. 3 年生(n=398). 9.13(1.80). 9.50(1.85). 18.63(3.30). F=10.91, df(2,2495), P<0.001. F=20.42, df(2,2494), P<0.001. F=18.99, df(2,2489), P<0.001. CES-D10(n=2,437 ~ 2,441). −0.24 **. −0.32 **. −0.31 **. 身体症状(n=2,467 ~ 2,472). −0.14 **. −0.18 **. −0.18 **. 一元配置分散分析. ボンフェローニの方法による多重比較の結果 問題焦点 1 年<2 年(P<0.01) ,1 年<3 年(P<0.01) 自己焦点 1 年<2 年(P<0.01) ,1 年<3 年(P<0.01) ,2 年<3 年(P<0.05) コントロール感尺度 1 年<2 年(P<0.01) ,1 年<3 年(P<0.01),2 年<3 年(P=0.059) ** P<0.01 1). (3.24)であった(表 6).学年差を一元配置分散 分析により比較したところ,「問題焦点」コント. 康が良好な傾向にあることを示している. 6.尺度得点の分布の観察. ロール感, 「自己焦点」コントロール感,コント. コントロール感尺度の合計得点の分布を観察す. ロール感の 3 つの尺度得点とも,学年が上がるに. ると,コントロール感尺度の平均点は選択肢の「あ. つれて平均値は高くなっていた.4 つの調査のう. てはまる」に相当する 3 点を 6 倍した 18 点をピー. ち 2 つで 3 年生の調査データが得られていないと. クとする正規分布に近い分布を描いていた.この. いう難点はあるが,3 年生の平均値が最も高く順. 分布の観察から,満点である 24 点に相当する「非. に 9.13(1.80) ,9.50(1.85) ,18.63(3.30)であっ. 常にコントロール感の高い」群の割合が,それ以. た.. 下の得点の割合の推移からすると突出して大きい. また,抑うつ性尺度である CES-D10,身体症状. ことが分かった.この高得点者の割合は男子では. を外部の構成概念として取り上げ,コントロール. 13.5%に対し,女子は 6.8%と低い割合であった.. 感尺度の得点との関連性を検討した.その結果,. この一群の存在は,対象が異なる 4 つの調査で共. コントロール感尺度は CES-D10,身体症状と有意. 通しており, 調 査 1 から調 査 4 の順に 7.5%,. だが弱い負の相関を示し(それぞれ r=−0.31,r. 10.9%,10.9%,11.1%を占め,一定程度の割合で. =−0.18) ,コントロール感が高い者ほど抑うつ傾. 存在していた.. 向や身体症状が軽減する相関関係にあることが示. Furr の心理測定学のテキスト 41)を敷衍すると,. せた.同様に,「問題焦点」コントロール感,「自. コントロール感尺度において極端な回答を全て選. 己焦点」コントロール感の得点と CES-D10,身体. 択する者は,他の尺度でも同じ極端な回答選択を. 症状の関連を検討したところ,前者とはr=−0.24,. すると予想される.反応バイアスの可能性である.. r=−0.14,後者は r=−0.32,r=−0.18 とやはり. そこで,極端な回答者(238 人)の抑うつ尺度と. 負の相関関係が認められた.このことは,2 種類. 身体症状の項目の回答を検討したところ,共に各. のコントロール感は,いずれも強いほど心身の健. 調査では 30%~ 60%の者は「ない」以外の選択肢.

(13) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 78. を選んでおり,意図的に極端な回答パターン(反. には構成概念妥当性に収斂すると考えられてい. 応バイアス)を示しているとは言えなかった.. る 40,42,43).. Ⅳ 考察. 新たな妥当性のパラダイムによると 40,42,43),構 成概念妥当性には 5 つの観点がある.すなわち,. コントロール感は,大人への移行後期にある高. 尺度の内容,反応プロセス,内的構造,他の変数. 校生の課題を解決し,変化に適応する上で重要な. (構成概念)との関連,実際に使用してみて適切な. 心理的資源であり,健康や学業にポジティブな影. 結果が得られるか,である.同様に,村山 42)は,. 響を与える育成が可能な特性である.そこで,本. 妥当性の再考という文脈で,内容的側面の証拠(内. 研究は,従来の一次的コントロール感に加え,日. 容的妥当性を含む) ,本質的な側面の証拠(反応プ. 本をはじめ東アジアの文化に適したコントロール. ロセスに相当) ,構造的な側面の証拠(因子構造の. 感として注 目されている二 次 的コントロ ー ル. 理論的一致,信頼性係数など) ,一般化可能性の側. 感 10,17,19,22-24)を下位尺度とする合計 6 項目からな. 面の証拠(たとえば他集団への一般化が可能か) ,. る高校生のコントロール感を測定する尺度を作成. 外的な側面の証拠(理論的予測と整合性のある外. し,その因子構造,信頼性係数,性差,学年差,. 的変数との関連など)を例示している.両者が挙. 抑うつ性尺度,身体症状との関連性から,尺度の. げた側面は,概ね一致している.ちなみに,信頼. 信頼性と妥当性を検討した.その結果,本尺度は,. 性も構成概念妥当性の一部に含まれている.. 一次的コントロール感と二次的コントロール感に. そこで,本尺度の作成プロセス並びに分析結果. 対応した「問題焦点」コントロール感と「自己焦. を,5 つの構成概念妥当性の考え 40,42)を軸に整理. 点」コントロール感の 2 因子からなる測定モデル. し,考察した.. の適合度は良好であり,信頼性係数も高く,先行. 1 )尺度の内容的側面. 研究からの予測と整合性のある性差,学年差,抑. 本研究で対象としたコントロール感は,2 種類の. うつ性尺度,身体症状との関連性を確認でき,妥. 異なった認知的特性である.すなわち,自分が主. 当性が良好であることを示せた.今後の課題は,. 体となり環境や状況を自分のニーズに合わせて変. 本尺度と他の変数との関連性を検討し,一次的コ. えようとする一次的コントロールと,容易には変. ントロール感,二次的コントロール感がどのよう. えられない環境や状況に自分を合わせて,その困. に高校生の健康や学業成績に寄与するのか,検証. 難な環境や状況が自分に及ぼす影響を緩和するこ. を重ねることである.. とでコントロール感を保持しようとする二次的コ. 1.構成概念妥当性について. ントロールである 10,17).欧米の西洋文化圏では前. 近年,妥当性の概念が大きく変わってきている.. 者が中心であり,東アジア文化圏たとえば日本で. これまで尺度開発研究において妥当性の検討とは,. は後者が重要であると指摘されている 10,17-19,22-24).. 3 つの観点から妥当性を検証することを意味して. 本研究で提案したコントロール感尺度(6 項目)は. いた 40,42,43).すなわち,内容的妥当性(たとえば,. この概念と指摘を踏まえたものであり,3 項目は. 測定項目が,標的の構成概念の全ての側面をカ. 自分が状況や環境に影響を与えるという能動的な. バーしているか) ,基準関連妥当性(外的基準とな. コントロール感を捉え,残り 3 項目は自らを調整. る変数と理論的に想定される関係性が認められる. して現実や環境に適合することで,現実や環境か. か) ,構成概念妥当性(たとえば,別の構成概念と. ら生じる好ましくない影響を和らげるという自己. 理論的に想定される関係性,あるいは CFA による. 調節的で受容的なコントロール感を捉えており,. 理論的概念構造とデータの一致,が認められるか). 日本の社会文化的な文脈 19,23)を踏まえた高校生の. を検討することであった.しかし,これまでの様々. コントロール感を捉える内容として適切であった. な妥当性の概念はそれぞれ重複しており,最終的. と考える..

(14) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 79. トロール感が育まれやすい内容になっていること. 2 )内的な構造的側面 次に,内的な構造的側面を,因子分析によって. を指摘している.今後は,児童生徒が発達の過程. 示される理論的な構成概念とデータの一致度,内. でどのように一次的コントロール感,二次的コン. 的一貫性の観点から考察する.まず前者について. トロール感を身につけていくのか,探究を深める. は,2 種類のコントロール感という理論的な構成. ことが課題である.. 概念に合致した 2 因子の測定モデルの適合度が良. 3 )他の変数(構成概念)との関連性の側面. 好であり,確認的因子分析により構成概念モデル. 先行研究を基にコントロール感と他の構成概念. とデータが良好に適合するという観点から妥当性. に関して本研究が立てた仮説は,先に示した 4 点. を示すことができた.. である.その 4 点から,本尺度の構成概念妥当性. また,内的一貫性を表す信頼性係数は,全体の. について検証する.. と. まず,性別は高校生にとり彼らの社会的地位を. もに 0.8 を越える高い値であり,内的一貫性は良. 表す特性の一つであり,Falci の縦断調査 3)では,. 好とみなせた.したがって,内的な構造面と信頼. 性別による学校生活等での社会経験の違いがコン. 性とから評価した構成概念妥当性は良好であると. トロール感の発達に影響し,高校生期では男子が. コントロール感尺度では,α係数,ω係数.  36, 40). 考えられる.この内的一貫性の良好さは,2 種類. 女子に比べてコントロール感は有意に高く,コン. のコントロール感に中程度の正の相関関係が認め. トロール感の上昇率においても男子が大きく性差. られたことによっている.. を認めている.日本では,本研究で取り上げた観. Morlin ら は,これまでの研究では両者の関係. 点からのコントロール感の研究は少ない.したがっ. 性の有無について知見が一致していないと指摘し. て,コントロール感における性差の要因の探求は. ているが,本研究の結果では,日本の高校生は両. 今後の課題であるが,本研究はこれまでの知見 3). 者を併用する傾向があり,学校教育による社会化. と一致しており,妥当性を示唆する一つの論拠を. の影響が考えられる .どの文化でも問題解決に. 示せた.. おいて一次的コントロール感は重要 8,10)であり個. 理論的には,コントロール感は,若者の成熟に. 人の資質能力として獲得されていく.それに加え. つれて発達する能力であり,年齢と共に生活経験. て日本では,学校教育における問題解決の学習に. が増すことで自律性が身に付き,自己概念も洗練. おいて,他者を受容して自分の考えに固執せず周. されることにより高まる能力だと理解されてい. 囲との折り合いをつけるという二次的コントロー. る 8,17,44).この理論と一致して,思春期・青年期. ル感が育成される教育環境が背景にあると考える.. におけるコントロール感と年齢の関係は,10 代の. たとえば文部科学省の教育課程部会の資料「総合. 年齢期において年齢と共に高まるという結果が,. 的な学習の時間について」 をみると,問題解決の. 数は少ないが報告されている 2,4,45).本研究で得た. 能力やそれに向けた態度が育成すべき目標に掲げ. 知見もこれまでの理論や研究結果と一貫性があり,. られており,小学校から高等学校まで一貫して,. 学年によって得点が有意に高まっており,高校生. 課題の解決に主体的に取り組むこと,課題の解決. 期である 15 歳から 18 歳の間にコントロール感が. に向けて協同的に取り組むこと,さらに異なる意. 高まると解釈できる.. 見や他者の考えを受け入れて取り組むこと,が含. コントロール感は,ネガティブな生活上の出来. まれている.塘ら 26)は,日英の小学校の国語の教. 事やストレスフルな状況を凌いでいくことを可能. 科書を分析し,個人が他者と対立する際には,他. にする特性であり,健康的なライフスタイルを選. 者と直接対立することを良しとしない記述が英国. 択し良好な社会関係を築くなど,良好な社会生活. に比べて日本に多く,積極的に自らの要求などを. を送ることを可能にする特性である 1).したがっ. 変化させて他者を受け入れようとする二次的コン. て,抑うつ症状の強さとコントロール感の低さは.  17).  26).  25).

(15) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. 80. これまでに確認されている関係性であり 4,46,47),. らに CES-D10 との関連,身体症状との関連,信. 思春期・青年期の若者を対象にした研究において. 頼性係数(α係数とω係数)は大きく異なるはず. も,同様にコントロール感の高さは抑うつ症状を. である.しかし,集団による多少の違いはあるが,. .本研究におい. これらの結果は概ね一致しており,著しく大きな. ても,抑うつを測定する CES-D10 の得点とコン. 食い違いは見られなかった.よって,高校生に対. トロール感尺度得点の間では有意な負の相関(r=. して一般化の可能性はあるが,東京都の高校での. −0.31)を示しており,先行研究と整合性のある. モデルの適合度指標 RMSEA が良好でなく,今後. 得点の解釈が可能である.. さらに異なる地域や特徴の高校生を対象に検証し. コントロール感と身体的健康の関係に関しては,. ていく必要がある.. 軽減することが示されている.  46, 47). コントロール感の高い者はストレスフルな状況や 出来事に対処して,その影響を緩和することがで. Ⅴ 本研究の限界と今後の課題. きる心理的資源を持っており,身体面におけるス. 本研究は,一次的コントロール感と二次的コン. トレス反応,身体症状や生理学的機能 に及ぼす. トロール感からなるコントロール感尺度の構成概. 影響も軽減されると推測できる.実際に,成人で. 念妥当性を,5 つの観点から検討したところ,そ. は身体的健康とコントロール感の関連性はしばし. の得点はコントロール感という構成概念を一定程. ば指摘されている 1,4).若者の身体的健康とコント. 度適切に反映していると解釈が可能であることを. ロール感の関係を検討した研究,例えば,スイス. 示した.. の大学生を対象にした研究では,SF-12 の身体的. しかし,近年の高校は多様化している 50).今回. 健康度の得点(身体的問題による生活活動の制限. の調査協力校は全て普通科高校であるが,世界で. や,生活に支障となる痛みなどの少なさ)とコン. 活躍できる人材の育成を目指すスーパーサイエン. トロール感の得点は弱い相関関係(r=0.14)があ. スハイスクール,あるいは不登校経験の生徒が多. ることが示されている .本研究で取り上げた身. く在籍する定時制高校や通信制高校などは含まれ. 体的健康の指標はそれと異なり身体症状の多さで. ていない.したがって,どこまで多様な高校生の. あるが,コントロール感尺度得点とは r=−0.17 と. コントロール感を測定できるか,一般化の検証は. 同程度の弱い負の相関関係が認められ,先行研究. 今後の課題である.. と整合性のある解釈が可能な結果が得られた.. また本尺度では,非常に高いコントロール感を. このように本研究では,性,学年(年齢) ,精神. 有している高校生のコントロール感を測定しきれ. 健康,身体的健康の変数とコントロール感尺度得. ていない可能性があるため,反応プロセスの検討. 点の関係において,先行研究の成果に基づき想定. が必要であり,どのようにして測定範囲を精度よ. された関連性を検証できたので,他の変数(構成. く広げられるかが課題である.また,M4 の項目. 概念)との関連性に関わる構成概念の妥当性を示. は control via self-improvement 31)という自己を向. す論拠が一定程度得られたと言える.. 上させることで,長期的には自分の望む状況を生.  48).  49). 5 )一般化可能性の側面. み出すという一次的コントロール感と二次的コン. 最後に,村山 42)があげた他集団への一般化可能. トロール感の中間に位置する概念に当たる可能性. 性について考察すると,4 つの調査のサンプルは,. があり,コントロール感をめぐる概念の洗練や質. コンビニエンス・サンプルであるとの限界はある. 問項目のワーディングの改善も必要かもしれない.. が,本研究で扱ったデータは異なる独立した高校. しかし,コントロール感尺度は両方のコントロー. 生集団から得たものである.もし,集団によって. ル感を統合した尺度として使用することも可能で. 本尺度の心理学的特性が不安定であるとすれば,. あり,教育場面でメンタルヘルスやウェルビーイ. コントロール感の項目の基本統計,因子構造,さ. ングにおいて問題となるのはコントロール感の低.

(16) 日本健康学会誌 第 87 巻 第 2 号 2021 年 3 月. い生徒であるから,コントロール感を育て高める 目的で行う健康教育や学校保健の実践においては, 大部分の高校生に適用可能であると考える. 今回検討した以外の変数との関連においてもコ ントロール感の構成概念から理論的に期待される 関連が得られるか,という構成概念妥当性の課題 に関しては今後さらに検討していく必要がある. たとえば,本研究で使用した 4 つの調査は,それ ぞれ固有な研究目的に即した概念枠組みと変数を 用意して実施しており,これらの変数とコントロー ル感尺度の関連を検討し,報告していきたい.そ の際に,課題の解決において対立より調和や協調, 受容を重んじる日本社会の文化の特徴を踏まえる と 23),一次的コントロール感と二次的コントロー ル感がバランス良く発達することが望ましいと考 えられるので,それらの変数を使った分析を通し てそれぞれのコントロール感が健康や学業,問題 行動とどのような関係があるのかを探求するのが 課題である.もし,両コントロール感の関連が密 接であれば,他変数との関連性は類似の傾向にな ると予想される.その場合は,統合的なコントロー ル感の尺度を使用すればよいことになるだろう.. Ⅵ 利益相反(conflicts of interest: COI) 本論文に関して,開示すべき利益相反関連事項 はない.. 文  献 1)Conger KJ, Williams ST, Little WM et al. Development of mastery during adolescence: The role of family problem solving. J Health Soc Behav, 2009; 50: 99-114. 2)Surjadi FF, Lorenz FO, Wickramaa KAS, et al. Parental support, partner support, and the trajectories of master y from adolescence to early adulthood. J. Adolesc, 2011; 34: 619-628. 3)Falci CD. Self-esteem and mastery trajectories in high school by social class and gender. Soc Sci Res, 2011; 40: 586-601. 4)Aycock KJ. Coping resources, coping style, master y, social support, and depression in male and female college students. Dissertation. 8-13, Georgia State University, GA, USA, 2011. http://scholarworks.. 81 gsu.edu/cps_diss/60 (cited June 22, 2019). 5)平成 9 年(1997)生涯にわたる心身の健康の保持 増進のための今後の健康に関する教育及びスポー ツの振 興の在り方について ( 保 健 体 育 審 議 会 答申) .文部科学省. http://www.mext.go.jp/b_ menu/shingi/old_chukyo/old_hoken_index/ toushin/1314691.htm(2019 年 6 月 26 日). 6)平成 30 年(2018)高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)解説 保健体育編 体育編 197-216 文 部 科 学 省.http://www.mext.go.jp/a_menu/ shotou/new-cs/1407074.htm(2019 年 7 月 19 日) . 7)Mirowsky J, Ross CE. Education, personal control, lifestyle, and health: A human capital hypotheses. Res Aging, 1998; 20: 415-449. 8)Heckhausen J, Schulz R. A life-span theory of control. Psychol Rev, 1995; 102: 284-304. 9)Shanahan MJ, Bauer DJ. Developmental properties of transactional models: The case of life events and master y from adolescence to young adulthood. Dev Psychopathol, 2004; 16: 1095-1117. 10)Rothbaum F, Weisz JR, Snyder SS. Changing the world and changing the self: A two process model of perceived control. J Pers Soc Psychol, 1982; 42: 5-37. 11)Kronborg L, Plunkett M, Gamble N, et al. Control and resilience: The importance of an internal focus to maintain resilience in academically able students. Gifted and Talented International, 2017; 32: 59-74. doi:10.1080/15332276.2018.1435378 (cited June 13, 2020). 12)Sandra P-E. Assessing personal resiliency in school settings: The resiliency scales for children and adolescents. Journal of Psychologists and Counsellors in Schools, 2015; 25: 55-65. doi 10.1017/jgc.2014.22 (cited June 22, 2019). 13)Togari T, Yonekura Y. A Japanese version of the Pearlin and Schooler’s sense of master y scale. Springerplus, 2015; 4: 399. DOI 10.1186/s40064015-1186-1 (cited June 22, 2019). 14)熊谷たまき,小竹久実子,藤村一美.看護師にお ける日本語版統御感尺度の信頼性と妥当性の検 討.大阪市大看誌,2018;14:10-16. 15)Pearlin LI, Schooler C. The structure of coping. J Health Soc Behav, 1978; 22: 2-21. 16)Pearlin LI, Menaghan EG, Lieberman MA, et al. The stress process, J Health Soc Behav, 1981; 22: 337-356. 17)Morling B, Evered S. Secondary control reviewed and defined. Psychol Bull, 2006; 132: 269-296. 18)竹村明子,仲真紀子.二次的コントロール概念の 多様性と今後の課題.教育心理学研究,2012;60:.

参照

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先に述べたように、このような実体の概念の 捉え方、および物体の持つ第一次性質、第二次