Title
マレーシアの会計士法
Author(s)
奥山, 正剛
Citation
沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 18(1): 79-85
Issue Date
1994-12-10
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/6854
<資料〉
マレーシアの会計士法
奥山正剛
1.はじめに マレーシアの会計制度に対して法的規制を行っているのは、会社法(COlPA-NIESACT)、会計士法(ACCOUNTANTSACT)、証券事業法(SECURITIESINDUS-TRYACT)である。会社法と証券事業法はおもに企業の財務情報開示に関する
規制を行っているのに対して、会計士法は会計士の登録資格に関する規制を行
っている。会計士法は1967年に制定され、1972年の改訂を経て現在に
至っている。 マレーシアには、マレーシア会計士協会(MalaysianlnstituteofAc-countants,MIA)とマレーシア公認会計士協会(HalaysianAssociationof CertifiedPublicAccountants,MACPA)の2つの会計士団体があるが、MIAがこの会計士法の下で設置された団体である。そのため、MIA及びそのメ
ンバーは会計士法の規制を受けることになる。会計士法は31のSectionと2つのScheduleから成っている。本稿では
この会計士法を概説する。以後、(S、)はAccountantsActのSectionを 意味する。(注) 2.MIAの権限と機能 この会計士法の下で設置されたMIAは法人団体であり、永続性と真正の証としての印章を持ち、この法の規制の下で一定の権限を持つ。この法はMIA
の機能として以下のことを規定する。(S、6) (a)MIAにメンバーとして入会できる資格を決定する -79-(b)MIA自身あるいは他の団体によって、会計職に就いている、あるい は就こうとする者の訓練、教育、試験のための環境を整備する (c)マレーシアでの会計専門職の諸規制を行う (。)マレーシアでの会計専門職への関心を高める (e)メンバーの利益を保護するという立場から、金銭的その他の援助を行 う (f)これらの目的を達成するために必要と思われる行為を行う MIAは、この法の主旨が生かされるべく、また法の執行に必要と思われる 以下のような事に係る規制を、総会で決定できる。(S、7) (a)マレーシアでの会計専門職の規制 (b)メンバーの加入、加入の際の手数料、退会の手続き (c)加入メンバーの資格 (d)入会希望者の訓練、教育、試験とその手数料 (e)公共会計士(publicaccountants)あるいは登録会計士(registered accountants)として登録されるのに必要な実務経験と、その経験を積む ために業務に従事した場所の協議会あるいは委員会の承認 (f)メンバーの区分 (9)協議会メンバーの選出、任命、辞職、解任 (h)MIAの会長及び副会長の選出、任命、辞職、解任 (i)協議会の会議及びメンバーの会議の開催 (j)協議会の会議及びメンバーの会議での投票方法 (k)調査委員会と懲戒委員会の手続きと、その委員会に対する申し立ての 手続き (1)懲戒委員会の報告・調査結果の年報・新聞・その他による公表 (、)協会の印章の使用と保管 (、)協会の資金・財産の保管・投資・支払い (o)協会の規制と管理 (p)準会員の承認と付与される特権に関する規定 (q)その他 -80-
3.協議会の構成 MIAには協議会が設置され、以下のような構成がこの法によって定められ ている。(S8) (a)マレーシア経理局長もしくはその代理 (b)公共会計士(publicaccountants)であるメンバーによって選出され た7人の公共会計士 (c)登録会計士(registeredaccountants)であるメンバーによって選出 された7人の登録会計士 さらに、MIAの会長と副会長はそのメンバーの中から協議会によって選出 される。 4.協議会の権限 MIAとその資金は協議会によって管理される。MIAも権限・行動は会計 士法の明文化されたもの、あるいはMIAの総会で決定された事柄に従うが、 それ以外の権限・行動においては、会計士法あるいは規則に従って、また総会 で決定された決議に従って協議会によって行使される。(S、9) それ以外に協議会は以下のような特別な権限を有している。(S・10) (a)健全な会計業務の教育、違法かつ不誠実な業務の防止、会計職への関 心の増進などに関するMIAの内規を作ること (b)事務職員あるいは用務員を臨時にあるいは終身の雇い入れをし、かつ、 彼らの義務や業務の条件を決定すること (c)MIAあるいはそのメンバーの業務に関係し、MIAにとって重要あ るいは業務の利害に関係する問題を総会の議題にし、提案をし、なんらか の行動をとること (d)メンバーの利益になるような情報を収集し、広報するために、他の類 似団体あるいは海外の専門職組織と交流し、また、メンバーの地位につい -81-
て相互に認識し合うためにそうした団体と協議し、調整し合うこと。 (e)MIAの支部を作ること (f)ある程度の権限や特権をその支部に託すること (9)MIAの諸委員を任命すること
(h)会計士法に規定されていなくとも、総会で決定されたあらゆる権限、
特権、裁量権を行使すること (i)MIAの公式の印章を使用すること 5.MIAのメンバー区分 この法の下で、メンバーは以下のように区分され、協議会はこの登録を保持 しなければならない。(S、13(1)) (a)公共会計士 (b)登録会計士 (c)免許会計士(licensedaccountants) 6.メンバーの資格会計士法はメンバーとして承認されるための資格を定めている。その内容は、
年齢が21才以上に達していること、協議会によって適格な人物であると認め
られ(S、14(3))、かつ、以下のいずれかの試験に合格するか、または以
下のいずれかの会計士団体のメンバーであることが必要である。(S、14
(1)(a),PartlandHofFirstSchedule) (a)MIAの最終試験(b)Halayaの大学の会計学の卒業免状取得のための最終試験
(c)Halayaの大学の会計学の学士号取得のための最終試験
(。)KebangsaanMalaysia大学の会計学の学士号取得のための最終試験
-82-(Honours)
(e)IlARAInstituteofTechnologyの会計学の上級卒業免状のための最終
試験 (f)UtaraHalaysia大学の会計学の学士号取得のための最終試験 (Honours) (9)PetraniaHalaysia大学の会計学の学士号取得のための最終試験 (Honours) 承認されている会計士団体は以下のようである。 (a)マレーシア公認会計士協会 (b)スコットランド勅許会計士協会 (c)イングランド・ウェールズ勅許会計士協会 (。)アイルランド勅許会計士協会 (e)公認会計士協会(英国) (f)オーストラリア勅許会計士協会 (9)オーストラリア会計士協会 (h)ニュージーランド会計士協会 (i)カナダ勅許会計士協会 (j)インド勅許会計士協会 (k)原価・管理会計士協会 7.メンバーとしての実務経験年数 会計士法は、メンバーとして承認されるための実務経験年数を定めている。 公共会計士として承認されるには、公共会計士の事務所または上述の会計士 団体に属し海外で業務する会計士の事務所で5年以上の実務経験を有するか、 もしくは、会社法第8条(2)と(6)の下で、企業の監査人として何ら制限 なく監査業務を行う権限を有していることが必要である。 但し、この実務経験年数は高等学校卒業者の場合は4年に短縮され、協会が -83-承認した大学・協会の学士号保持者は3年に短縮され、また、上記の試験に合 格しまたは会計士団体のメンバーになった後に実務経験を積んだ場合は3年に 短縮される。(S,15(1)) また、登録会計士として承認されるには、公共会計士事務所、政府部局、銀 行、保険会社、地方当局、その他協議会によって承認された商業・財務・工業 団体などに勤務し、5年以上の会計実務経験を有することが必要である。 但し、経験年数の短縮は公共会計士の場合と同様に適用される。(S、15 (3)) S、14のメンバー資格取得要件に拘らず、会社法第8条(6)の下で企業 の監査人としてある程度の範囲内で活動することが認められているか、あるい は、この会計士法が施行される前に、会計士として、税コンサルタントとして、 税アドバイザーとして公的な業務に就いていた者は、免許会計士として協会の メンバーになることができる。 8.委員会 会計士法は、協議会の任命によって、調査委員会(InvestigationCommit-tee)と懲戒委員会(DisciplinaryCommittee)の2つの委員会を設置するこ とを求めている。調査委員会は3人のメンバーで構成され、懲戒委員会は5人 のメンバーで構成される。両委員会のメンバーの重複は許されない。(S、1 9)調査委員会は、メンバーに対する訴えがなされたとき、それを内規に定 められた方法で調査し、懲戒委員会に結果を報告する。 懲戒委員会は、妥当と判断した場合、そのメンバーに対して、内規にしたが って懲戒権を行使する。 懲戒委員会の決定に不服な者は最高裁に訴えることができる。(S、20) -84-
9.処罰 この法の違反があった場合、協議会の作成した内規違反があった場合、会計 士としての品行・清廉に問題があった場合など、会計士法は罰金規定などを定 めている。(S25-29) 10.おわりに 以上、マレーシアの会計士法を、概要だけであるがみてきた。会計士法も当 該国の会計制度を形成する-要因であろう。近隣諸国の会計士法との比較によ ってその特徴が明らかにされ、ひいてはその会計制度が明らかにできると考え る。 (注)HDCLegalAdvisers,AccoutantsAct,1967/AuditAct,1957,Kua-laLumpur:HDCSdnBhd.,1994 (参考文献) (1)Chang,YoungHangAComparativeStudyoftheAccountingSys-temofFiveComtriesinEastandSouthemAsia, (2)平松一夫監修、的手美与子・御園恵著『タイ・マレーシアの会計・開 示制度』中央経済社平成4年 -85-