<論説>ドイツにおける消滅時効と除斥期間の関係についての研究--わが国における除斥期間概念に対する示唆として
72
0
0
全文
(2) 近畿大学法学. (一)は. 第57巻 第1号. じ め に. 日本 の 民 法 典 に は条 文 上 「除 斥 期 間 」 と い う明 確 な 表 現 が 存 在 して いな い。 しか し,こ の 除斥 期 間 と い う概 念 は広 く用 い られ て お り(1),一一 般的 に は次 の よ う に説 明 され て い る。 す な わ ち,除 斥 期 間 と は 「一一 定 の 権 利 につ いて 法 律 の 予 定 す る存 続 期 間 で あ る。 その 立 法 の 理 由 は,権 利 関 係 を 速 や か に確 定 しよ う とす る こ とで あ る」(2)と す る もの,「 法 律 関 係 の 速 や か な 確 定 を 目的 に設 定 され た純 然 た る権 利 行 使 期 間 で あ って,一 一 定 の 期 間 内 に権 利 の 行 使 を しな い と権 利 が 消 滅 す る」(3)と す る もの,ま た は,「 一 定 の 期 間 内 に権 利 を 行 使 しな い と,そ の 期 間 の 経 過 に よ って権 利 が 消 滅 す る」(4)と い う よ う に説 明 され て い る。 他 方,除 斥 期 間 と類 似 の 概 念 と して 消 滅 時 効 が あ る。 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 違 い と して,除 斥 期 間 に は. ① 中断 が 適 用 され な い,② 裁 判 に お いて. 援 用 の 必 要 が な く,職 権 で 採 りあ げ られ る,③ 起 算 点 につ いて,消 滅 時 効 は権 利 を 行 使 しう る時 か ら起 算 され,除 斥 期 間 は権 利 の 発 生 時 か ら起 算 さ れ る,④ 権 利 消 滅 の 効 果 は遡 及 しな い,と いわ れ る。 ただ し,停 止 につ い て は認 め る と い う考 え 方 が 多 数 で あ る(5x6>。 (1)除 斥 期 間 に関 す る総 合 的研 究 と して,椿 寿 夫 ほ か 「 特 集 ・除 斥 期 間 の 基 礎 」 法 律 時 報72巻7号4頁. 以 下(2000),同. 11号4頁. 以 下(2000)[椿. 2006)所. 収]が あ る。. 「 特 集 ・除 斥期 間 の 展 開」 法 律 時 報72巻. 寿 夫 ・三 林 宏 編 著 『権 利 消滅 期 間 の 研 究 』(信 山 社,. (2)我 妻 栄 『新 訂 民 法 総 則(民 法 講 義1)」437頁(岩 (3)内. 田貴 『民 法1」336頁. 波 書 店,1965)。. 以 下(東 京 大 学 出版 会,第4版,2008)。. (4)山 本 敬 三 『民 法 講 義1」514頁. 以 下(有 斐 閣,第2版,2005)。. (5)例 え ば,我 妻,前 掲 注(2)437頁,川 島武 宜 『民 法 総 則(法 律 学 全 集)」573頁 以 下(有 斐 閣,1965),幾 院 新 社,1969),内 務(3)権. 代 通 「民 法 総 則(現 代 法 律 学 全 集)」600頁 以 下(青 林 書. 田,前 掲 注(3)336頁 な ど参 照 。 前 田達 明 「時 の流 れ と権 利 義. 利 保 持 義 務(憲12条)違. 反 か 立 証 救 済 か?」 法 学 教 室269号69頁 は,/. 144.
(3) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. 除 斥 期 間 の 内容 と して は,以 上 の よ うな 消 滅 時 効 の 反 対 解 釈 と い う手 法 が な さ れ て き た とい わ れ る(7)。こ の こ と も,民 法 典 に お い て 除斥 期 間 に関 す る規 定 が 存 在 しな い こ との 帰 結 と いえ る。 しか し,規 定 が 存 在 しな い こ とか ら,反 対 解 釈 に よ って ど こ まで 除 斥 期 間 概 念 を 明 確 にで き るの か は難 しいで あ ろ う。 さ らに,な ぜ 規 定 の 上 に存 在 しな い除 斥 期 間 と い う概 念 を 認 め るの か と い う疑 問 も あ る。 も ち ろん,日 本 の 法 律 の 中 に存 在 しな い概 念 を 認 め る こ と は珍 しい こ とで はな い(例 え ば,意 思 能 力,債 権 者 平 等 の 原 則 な ど)(8)。 ま た起 草 者 自身 も,「本 法 に於 い て は,時 効 は明 らか に其 時 効 な る こ とを 示 し,他 の 法 定 期 間 は皆 予 定 期 間(筆 者 注:除 斥 期 間 の こ と)に. して,之. に. 時 効 の 規 定 を 適 用 す べ か らざ る もの な り」(9)(原文:片 仮 名,旧 漢 字)と. し. て お り,除 斥 期 間 概 念 を 明 確 に意 識 して 規 定 を して い た こ と も事 実 で あ る。 しか し,こ れ だ けで は除 斥 期 間 を 明 確 にす る こ と はで きな い。 で は, 規 定 の 存 在 しな い除 斥 期 間 と い う概 念 を どの よ う に捉 え るべ きか 。 これ に 関 して は以 下 の よ うな 問 題 が 生 じる。 第 一一に,起 草 者 意 思 か ら して,除 斥 期 間 概 念 の 存 在 が 民 法 の 解 釈 と して 認 め られ る と して も,そ の 内容 を どの よ う に明 確 にす べ きで あ ろ うか 。. \ 停 止 の 類 推 適 用 を 否 定 して い る。 (6)椿 寿 夫 「除 斥 期 間 論 に関 す る一 つ の 視 点 」 法 律 時 報72巻7号4頁(2000) [椿 ・三 林 編 著,前 掲 注(1)所収]に. よ る と,① 中断 の 有 無,② 援 用 の要 否,⑧ 停. 止 の 有 無,④ 確 定 判 決 に よ る期 間 延 長(民 法174条 の2),⑤. 起算 点,⑥ 遡 及 効,. ⑦ 債 権 消 滅 後 の 相 殺 につ い て 問 題 にで き る,と あ る。 (7)椿 寿 夫 「民 法 学 に お け る幾 つ か の 課 題(三)」. 法 学 教 室226号67頁(1999). [椿 ・三 林 編 著,前 掲 注(1)所収]。 (8)条 文 にな い概 念 につ い て は,星 野 英 一 「 条 文 に な い 『民法 」 の 原 則 」 法 学 教 室152巻11頁 以 下(1993),椿 評 論 社(2002)な. 寿 夫=中 舎 寛 樹 編 『解 説. 条 文 に な い 民 法 」 日本. どが あ る。. (9)梅 謙 次 郎 『訂 正 増 補 ・民 法 要 義(巻 之 一 総 則 編)」370頁(有 1915)。. 145. 斐 閣,第37版,.
(4) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. 第 二 に,い か な る規 定 が 除 斥 期 間 と され る の か 。 上 記 の よ う に起 草 者 は,規 定 に よ り区 別 して い る。 しか し,現 在 の学 説 は そ の よ うに は考 え ず, 条 文 の 趣 旨や 性 質 に よ り判 断 し,形 成 権,長 短 二 重 期 間 を そな え る規 定 の 長 期 期 間,さ. らに請 求 権 に関 す る短 期 期 間 制 限 が 除 斥 期 間 に服 す る と いわ. れ る。 す な わ ち,形 成 権 につ いて は時 効 を 観 念 す る こ とが で きず,除 斥 期 間 が 当 て は ま る とい わ れ る(1① 。 と い うの も,形 成 権 は一 方 的 な意 思 表 示 で 直 ち に法 律 効 果 を 生 ぜ しめ る た め,権 利 者 に よ る 中断 な ど は考 え られ ず, 承 認 に よ る 中 断 を 認 め る こ と も現 実 的 で な いか らと さ れ る(ll)。 長短二 重期 間 を そな え る規 定 の 長 期 規 定 を 除 斥 期 間 とす る理 由 は,短 期 消 滅 時 効 を 繰 り返 す と長 期 時 効 期 間 の 存 在 意 義 が な くな って しま う た め,ま た権 利 関 係 を確 定 さ せ る た め な ど と い わ れ る⑫。 請 求権 に 関 す る短 期 期 間制 限 につ い て,例. え ば 形 成 権 に該 当 す る部 分 につ い て(民 法564条,566条3項,638. 条 な ど)は 上 記 の よ うに 除 斥 期 間 と解 しつ つ,そ れ 以 外 で あ っ て も(193 条,195条,600条. な ど)起 草 者 意 思 か ら除斥 期 間 とす る説 が あ る。 しか し,. 出訴 期 間 とす る説(③,消 滅 時 効 との 説 もあ る⑭。 これ らを どの よ うに考 え ⑩. 川 島 武 宜 「時 効 お よ び除 斥 期 間 に 関す る一 考 察 」 『 民 法 解 釈 学 の 諸 問 題 』160 頁 以 下(弘 文 堂,1949)。. qD川. 島,前 掲 注(5)442頁,内. 537頁(悠. 々社,1992)は,形. まで も時 効 期 間 と しつ つ,そ. 田,前 掲 注(3)329頁 。 しか し,石 田穣 「民 法 総 則 」 成 権 で も承認 に よ る 中 断 は認 め られ る と し,あ く の性 質 上 行 使 に よ る 時効 中 断 を 認 あ な い とす る。. な お,判 例 に は形 成 権 の期 間制 限 を消 滅 時効 と解 して い る もの が あ る。 大 判 大 正4・7・13(大. 審 院 民 事 判 決 録21輯1384頁,再. 大 正6・11・14(大. 審 院民 事 判 決 録23輯1965頁,解. (最高 裁 判 所 民 事 判 例 集35巻4号763頁,解. 売 買 予 約 の 予 約 完 結 権),大 除権),最. 判. 判 昭和56・6・16. 除権)な ど。 判 例 の 検 討 につ い て は,. 新 井 敦 志 「判 例 を素 材 と した 除斥 期 間 に 関 す る一 考 察(1)」酒 田短 期 大 学 研 究 論 集 第9号80頁 ⑫. 以下を参照。. 中 川 善 之 助 『身 分 法 の 総 則 的 課 題 (岩波 書 店,1941),幾 404頁(弘. ⑱. 身分権 及 び身分行 為. 」26頁 以 下. 代,前 掲 注(5)603頁,四 宮 和 夫 ・能 見 善 久 「民 法 総 則 」. 文 堂,第6版,2002)な. 我 妻 栄 『債 権 各 論 ・中 巻 一(民. ど。 法 講… 義V2)」279頁(岩. 1984)。. 146. 波 書 店,第2版,.
(5) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. るべ きで あ ろ うか 。 第 三 に,除 斥 期 間 は どの よ うな 目的 を 有 す るの で あ ろ うか 。 起 草 者 自身 は,「 権 利 の 特 に速 に行 使 せ られ ん こ とを 欲 して 予定 期 間 を設 け た る に」 (原文:片 仮 名,旧 漢 字)⑮ と述 べ て い る。 そ うす る と,第 二 の 点 にお け る 長 短 二 重 期 間 規 定 に お け る長 期 規 定 を 除 斥 期 間 と解 す る こ と は,「 速 や か」 と い う概 念 と矛 盾 す る結 果 が 生 ず る こ と とな る⑯。 第 四 に,除 斥 期 間 に対 して 消 滅 時 効 に関 す る規 定 を 類 推 適 用 で き るの か ど うか が 問 題 とな る。 例 え ば 冒頭 で 述 べ た よ う に,停 止 の 類 推 適 用 につ い て は お おむ ね 学 説 で 認 め られ て お り,最 判 平 成10年6月12日. にお いて も認. め られ た⑰。 しか し,起 草 者 意 思 か らす る と,除 斥 期 間 とは 「速 や か さ」 を その 存 在 意 義 と して い た こ とか ら,停 止 は認 め られ な い はず で あ り,も しその よ う に類 推 適 用 の 範 囲 が 広 が れ ば広 が る ほ ど,除 斥 期 間 自体 の 存 在 意 義 が 失 わ れ るの で はな か ろ うか ⑱。 第 五 に,信 義 則 ・権 利 濫 用 の 法 理 の よ うな 一般 条 項 との 関 係 が 問 題 とな る。 除 斥 期 間 に対 して 消 滅 時 効 に関 す る規 定 を 類 推 適 用 で き な い と して も,こ れ らの 一般 条 項 は民 法 の 全 域,さ. らに民 法 以 外 の 領 域 にお いて も適. 用 さ れ る もの で あ る⑲。 そ の よ うに考 え るの で あれ ば,除 斥 期 間 に も一 般 条 項 の 適 用 が 認 め られ る はず で あ る。 消 滅 時 効 の 場 合 に は,最 判 昭 和51年 5月25日(20),最 判 平 成19年2月6日(21)が aD幾. 信 義 則 に基 づ い て 消 滅 時効 の 援 用. 代,前 掲 注(5)602頁 以 下 。. (15)梅,前. 掲 注(9)370頁 。. ㈲. 椿,前 掲 注(6)4頁 。. ⑰. 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集52巻4号1087頁. 。. (18)な お,三 藤 邦 彦 「時 効 ・除 斥 期 間 」法 学 セ ミナ ー92号85頁(1963)に. よ る と,. 消 滅 時 効 と 除 斥 期 間 とは,そ れ ぞ れ 適 用 さ れ る規 定 に よ り類 似 す る場 合 もあ る,と い う こ とを 指 摘 して い る。 (19)内[H,前. 掲 注(3)488頁 。. ⑳. 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集30巻4号554頁. 以下。. ⑳. 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集61巻1号122頁. 以下。. 147.
(6) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. を認 めな か っ た。 これ は,時 効 と い う一一 定 の 時 間 的 観 点 に基 づ く要 件 が み た され て いな が ら,そ の 効 果 を 認 めな い もの で あ る。 そ うす る と,同. じく. 時 間 的 観 点 を 要 件 とす る除 斥 期 間 の 場 合 に も,一 般 条 項 が 適 用 され る余 地 が あ るの で はな か ろ うか 。 しか し,除 斥 期 間 の 内容 を 消 滅 時 効 の 完 全 な 反 対 解 釈 に よ り把 握 す るな らば,一 般 条 項 の 妥 当す る可 能 性 が な い と いえ る か も しれ な い⑫ 謝。 以 上 の よ うな 問 題 点 を どの よ う に考 え るべ きか 。 こ こで 重 要 にな って く るの は,や は り除 斥 期 間 の 問 題 を 考 え る際 に必 ず 対 比 され る消 滅 時 効 の 規 定 で あ る。 起 草 者 も,「他 の法 定 期 間 は皆 予 定 期 間 に して,之 に時 効 の 規 定 を適 用 す べ か ら ざ る も の な り」⑳ と し,消 滅 時効 と の 関係 で 除 斥 期 間 を 論 じて い る。 消 滅 時 効 の 存 在 意 義 と して 挙 げ られ るの は,① 法 的 安 定 性,② 立 証 ・採 証 の 困 難 の 回 避,③ 権 利 不 行 使 へ の 非 難 性(権 利 の 上 に眠 る者 は 保 護 に値 しな い),④ 権 利 の 永 続 性 の 否 定,⑤ 権 利 者 側 の感 情 沈 静,⑥ 権 利 行 使 さ れ な い こ とへ の 信 頼 の保 護,な. どで あ る⑳。 こ れ らを通 じて,除 斥. 期 間 概 念 を 検 討 す る こ とが 重 要 とな ろ う。 ⑳. 内池慶四郎 「 消 滅 時効 の援 用 が権 利 濫 用 に あ た る と さ れ た事 例 」判 例 評 論217 号14頁(1977)は,「. 時 効制 度 上,信 義 則 の 無 制 限 な 適 用 が 及 ぼ す こ と あ るべ き. 危 険 性 に危 惧 の 念 を禁 じえ な い。 す な わ ち 時効 要件 が一 応 充 た され て い る限 り は,時 効 の 効 果 が 当事 者 の具 体 個 別 的 関係 に お い て 果 して適 切 妥 当 な もの か 否 か の 判 定 は,終 局 的 に は援 用 権 者 に委 ね る とす る の が民 事 時 効 制 度 の 構 造 で あ る」 とす る。 ⑳. な お,除 斥 期 間 と信 義 則 の関 係 に つ き,ド イ ツ に 関 す る研 究 と して,采 女 博 文 「除 斥 期 間 と信 義 則(一)(二)ド 集27巻1号123頁. 以 下,2号139頁. イ ツの 裁 判 例 の 検 討 」鹿 児 島 大 学 法 学 論 以 下(1991),日. 本 に 関 す る研 究 と して 石 松 勉. 「除 斥 期 間 の 経 過 と信 義 則 に関 す る一・ 考 察 」 岡 山商 科 大 学 法 学 論 叢1号53頁 下(1993)が. あ る。 また,最 判 平 成1年12月21日. 12号2209頁 以 下)の 評 釈 に お い て,大 村 敦 志,法 学 協 会 雑 誌108巻12号218頁 下(1991)が ⑳ ㈲. 以. 判 決(裁 判 所 民 事 判 例 集43巻 以. 除 斥 期 間 と信 義 則 ・権 利 濫 用 との 関 係 を 述 べ て い る。. 梅,前 掲 注(9)370頁 。 この 分 類 は,松 本 克 美 「消 滅 時効 ・除斥 期 間 と権 利行 使可 能性 」 立 命 館 法 学 261号103頁(1998)に. よ った 。. 148.
(7) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. しか し,消 滅 時 効 の 規 定 に も矛 盾 点 が あ る。 例 え ば,民 法167条 にお いて 「債 権 は… … 消 滅 す る」 と しな が ら,援 用 を必 要 と して い る。 ま た,法 的 安 定 性 が 必 要 とな るの は,第 三 者 の 信 頼 保 護 の 場 合 で あ るの に,時 効 は第 三 者 の信 頼 の 有 無 を 要 件 と して い な い と いわ れ る⑳。 この よ う に,消 滅 時 効 自体 が 必 ず しも明 確 な 概 念 と いえ な い状 況 で あ るた め,そ れ との 対 比 で 除 斥 期 間 を 理 解 しよ う と して も,さ. らな る困 難 が 生 じる と いえ る。. 判 例 を み て も,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ いて 統 一 的 に理 解 して い る と は い いが た く,反 対 に,共 通 の よ う に と らえ て い る と いえ る部 分 が あ る。 判 例 に お け る消 滅 時 効 の 解 釈 につ いて み る と,そ の 起 算 点 につ いて,最 判 平 成6年2月22日. は じん 肺 問 題 に関 連 して,損 害 賠 償 請 求 権 の 消 滅 時 効. の 起 算 点 を 行 政 上 の 「健 康 管 理 の 区 分 」 決 定 を 受 けた 場 合 と しな が ら も, 病 状 が 悪 化 した場 合 に は,そ の 決 定 よ りも さ らに重 い決 定 を 受 けた と きか ら消 滅 時 効 が進 行 す る と した⑳。 これ は,最 初 の 行 政 上 の 決 定 の 時 点 で 「権 利 を 行 使 し う る」 の に,そ の よ うに 考 え て い な い。 ま た 下 級 審 で は あ るが,富. 山地 判 平 成8年7月24日. は戦 後 補 償 問 題 に関 連 して,日 韓 協 定 が. 個 人 の 請 求 権 の 放 棄 を 意 味 す る もの で はな い,と い う政 府 見 解 が 明 らか に され た1991年8月. を 起 算 点 で あ る とす る考 え 方 を 示 し,消 滅 時 効 の 起 算 点. の 繰 り下 げ を は か った ㈱。 これ らは,消 滅 時効 の 起 算 点 を後 に ず ら し被 害 者 保 護 を 図 る と い う もの で あ るが,そ. うす る と,除 斥 期 間 満 了 後 に消 滅 時. 効 の 起 算 点 が 置 か れ る場 合 も生 じて しま う。 さ らに援 用 の 点 につ いて,上 記 の よ うに信 義 則 に基 づ いて そ れ を認 め な か っ た例 が あ る⑳。 時効 に援 用 を 認 めな いの で あれ ば,時 効 な ど必 要 が な い制 度 と も いえ る。 債 務 者 に よ ⑳. 内 田,前. 掲 注(3)312頁. 。. (2丁 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集48巻2号441頁 (28)判 ⑳. 例 タ イ ム ズ941号183頁. 前 掲 注 ⑳,⑳. 以下。. 以下。. 参照。. 149.
(8) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. る時 効 の 援 用 が,そ. も そ も信 義 則 に基 づ いて 判 断 で き る こ とな の で あ ろ う. か 。 これ に つ い て も例 え ば724条 の よ う に,前 段 の3年 に か か る消 滅 時 効 の 援 用 が 信 義 則 に基 づ き認 め られ な い と され た場 合 で あ って も,後 段 の20 年 を除 斥 期 間 と考 え,そ の20年 を 経 過 したの で あれ ば,除 斥 期 間 に よ り権 利 は消 滅 した と判 断 され るの で あ ろ うか 。 これ らと,除 斥 期 間 との 関 係 は 不 明 確 な ま まで あ る。 次 に,除 斥期 間 につ い て み る と,最 判 平 成1年12月21日. は724条 後 段 を 除. 斥 期 間 で あ る と し,援 用 も不 用 な の で,除 斥 期 間 に対 す る信 義 則 違 反 や 権 利 濫 用 の主 張 は,主 張 自体 失 当 で あ る と して い る⑳。 しか しそ れ 以 後,停 止 に つ い て最 判 平 成10年6月12日. は724条 後 段 に そ れ を 認 め て い る(31)。 起. 算 点 に つ い て,最 判 平 成16年4月27日. は724条 後 段 に つ い て,損 害 の性 質. 上,加 害 行 為 が 終 了 して か ら相 当の 期 間 が 経 過 した後 に損 害 が 発 生 す る場 合 に は,当 該 損 害 の 全 部 ま た は一一 部 が 発 生 した と きが 除 斥 期 間 の 起 算 点 と な る と した働。 これ は,権 利 の 発 生 時 を起 算 点 とす る除 斥 期 間 の考 え 方, も し くは724条 後 段 に お け る 「不 法 行 為 の 時 」 を 起 算 点 とす る とい う規 定 と異 な る もの で あ り,む し ろ,消 滅 時効 に 関 す る166条 の 「権 利 を行 使 す る こ とが で き る時 か ら進 行 す る」 と い う規 定 と類 似 して い る欝。 この よ う に判 例 を み て も,消 滅 時 効 で あ りな が ら消 滅 時 効 の 規 定 が 適 用 され な い場 合 も あ り,逆 に,除 斥 期 間 で あ って も消 滅 時 効 の よ うな 考 え 方. (3① 前 掲 注 ⑳ 最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集 参 照 。 ⑳. 前 掲 注 ⑰ 参 照 。 た だ し,こ の判 例 につ い て は,停 止 を類 推 適 用 した と考 え る もの と(四 宮 ・能 見,前 掲 注a2)403頁),信. 義 則 ・権 利 濫 用 法 理 に よ る援 用 権 の. 制 限 に近 い と考 え る もの が あ る(内 池 慶 四郎 「 近 時最 高 裁判 決 と民 法 七 二 四 条 後 段 の 二 〇 年 期 間 」 慶 大 法 学 研 究73巻2号197頁(2000)参 (32)最 高 裁 判 所 民 事 判 例 集58巻4号1032頁 判 所 民 事 判 例 集58巻7号1802頁 判 例 集60巻5号1997頁 ㈱. 照)。. 以 下 。 最 判 平 成16年10月15日,最. 以 下,最 判 平 成18年6月16日,最. 以 下 も同 じ よ う に判 示 して い る。. 松 本,前 掲 注 ㈱ は この 問 題 を 示 唆 す る もの で あ る。. 150. 高裁. 高裁判所民事.
(9) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. を と る もの が あ る。 それ ゆえ,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 概 念 は非 常 に不 明 確 な もの で あ り,ま た類 似 して い る場 合 も あ る こ とか ら,両 者 の 関 係 は本 当 に明 確 に分 け る こ との で き る概 念 で あ るの か ど うか も疑 問 とな って くる。 以 上 の よ う に,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 は非 常 にわ か りに くい。 これ まで の 議 論 を み て も,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 違 いを 見 出す た め に,除 斥 期 間 に 対 して 消 滅 時 効 の ど の制 度 が 類 推 適 用 され る の か ど う か を 検 討 した り,ま た,現 在 の 学 説 で は,条 文 の 趣 旨や 性 質 に よ り除 斥 期 間 で あ るの か ど う か を判 断 す べ きで あ る と して い る剛。 これ らは,概 念 の整 理 が な され て いな い除 斥 期 間 の 存 在 を まず 認 めて,そ れ か らそ の 内容 を 確 定 しよ う と い う逆 の 順 序 に な って い る よ うに 感 ず る。 さ らに,条 文 の 趣 旨や 性 質 に よ って 判 断 す る と して も,除 斥 期 間 の 内容 自体 が 明 らか で な いた め,両 者 を 具 体 的 に判 断 で き る と は思 え な い。 そ こで 本 稿 で は,上 に挙 げ た 日本 法 に お け る第 一 か ら第 五 の 問 題 を 考 察 す る た め に,そ の 手 が か りと して ドイ ツ法 に お け る除 斥 期 間 概 念 を 取 り上 げ,検 討 を 加 え て い くこ と とす る。 その 理 由 は,起 草 者 自身 は フ ラ ン ス法 の 影 響 を受 け て い る と いわ れ て い るが㈱,そ の 後 の 民 法 解 釈 の場 に お け る ドイ ツ法 の影 響 が 大 き い と い え る か らで あ る鮒。 そ して ドイ ツ法 を 取 り上 げ る意 義 と して,第 一一に,ド イ ツ法 は条 文 を み る と,い か な る規 定 が 消 滅 時 効 で あ る の か,除 斥 期 間 で あ る の か の 違 い が わ か る か らで あ る。 これ は,規 定 の な い 日本 との 比 較 に お いて,除 斥 期 間 を 明 文 で 判 断 で き る場 合 に どの よ うな 解 釈 が と られ,そ. して その 場 合 に両 者 が どの よ うな 関 係 にな. 憐. 川 島,前 掲 注(5)575頁,幾 代,前 掲 注(5)602頁,内[H,前. ㈲. 日本 の 期 間 制 限 に関 す る規 定 は フ ラ ンス法 を参 考 に して い る と して,新 井 敦. 掲 注(3)327頁 な ど参 照 。. 志 「フ ラ ン スの 予 定 期 間 論 とわ が 民 法 」 法 律 時 報72巻7号13頁(2000)[椿. ・三. 林 編 著,前 掲 注(1)所収]参 照 。 ㈹. 法 継 受 とそ の 影 響 につ い て は,加 藤 雅 信 「日本 民 法 典 の 編 纂 と西 洋 法 の 導 入 」 ジ ュ リス ト1361号159頁 以 下(2008)参. 照。. 151.
(10) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. るの か を考 え る うえ で 有 用 で あ る と いえ る。 第 二 に,ド イ ツ法 はBGB194 条 に お いて 請 求 権 と消 滅 時 効 の 結 び付 きを 明 確 に規 定 して お り,そ の 関 係 を考 え る うえ で 日本 に お け る解 釈 に も役 立 つ と思 わ れ る。 な お,本 稿 で は 形 成 権 と除 斥 期 間 の 関 係 に関 す る議 論 つ いて,形 成 権 自体 も複 雑 な 内容 を もつ 概 念 で あ るの で,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質 を 検 討 す る際 に必 要 な 限 りで しか 採 りあ げな い こ と とす る。 さ らに,考 察 の 対 象 を 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質,お. よ び それ らの 規 制. 内容 と に分 け,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質 は一一 体 どの よ うな もの で あ るの か,両 者 の 性 質 自体 が 停 止 や 中断 な どの 規 制 内容 を 直 接 に導 くもの で あ る の か,そ. して,規 制 内容 が その ま ま両 者 の 性 質 と合 致 す る もの な の か につ. いて,ド. イ ツ法 に お け る議 論 を 考 察 す る。 それ に よ り,両 者 は どの 程 度 異. な る もの で あ るの か,ど の 程 度 共 通 の もの で あ るの か を 確 認 し,上 記 の よ うな 問 題 点 を 解 決 す る た めの 基 本 的 視 点 を 得 る こ とが で き る と考 え る。 ま た,本 稿 で は既 にみ た よ う に,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 との 関 係 が 厳 格 に 分 離 で き るの か ど うか につ いて 疑 問 が あ る と し,こ の こ と につ いて,両 者 の 性 質 に関 す る問 題 と共 に ドイ ツ法 に お いて も現 実 に どの よ う に考 え られ るの か を 採 り上 げ る。 す な わ ち,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 とが 明 確 に判 断 で き る場 合 で あ って も,本 当 に両 者 の 性 質 か らみ る と,両 者 は異 な る もの で あ る と いえ るの か ど うか を 問 題 と して 考 察 す る。 この よ うな 問 題 を,ド. イツ. 法 に お け る議 論 を 通 じて 検 討 す る こ と は,た とえ 日本 法 と制 度 が 異 な る と して も,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質 自体 を 考 察 す る際 に,非 常 に客 観 的 に 日本 法 に対 して 有 益 な 示 唆 を 与 え て くれ る と思 わ れ る。 ただ し,問 題 点 の 第 五 と して 挙 げ た除 斥 期 間 と一般 条 項 との 関 係 につ いて は,一 般 条 項 に関 す る検 討 が 必 要 とな る た め,本 稿 で は と りあ げな い こ と とす る。 な お,本 稿 の 構 成 と して は,以 下 の(一うに お いて 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質,(三)に. お いて,両 者 の 目的 の 違 い,(四)に 152. お いて(二)で 検 討 した停.
(11) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. 止 の 適 用 可 能 性 につ いて 簡 単 に検 討 し,両 者 の 異 同を 考 察 す る。. (二)消. 滅 時効 お よび除斥 期 間の規 定 とその性質 ⑳. ドイ ツ 法 に お け る 消 滅 時 効 と 除 斥 期 間 の 関 係 を 概 観 す る と,い. かな るも. の が 消 滅 時 効 あ る い は除 斥 期 間 で あ るの か につ いて 条 文 か ら明 確 に判 断 で き る 。 消 滅 時 効 に つ い て はrverji'hren」. と い う 動 詞 が 規 定 さ れ,除. 斥期. 間 に つ い て は 「kannnurerfolgen」,「erlischt」,「istausgeschlossen」 期 間 は,こ そ れ ゆ え,ド. と規 定 さ れ て い る ㈱。 例 え ば,BGB124条1項 の よ う に 規 定 さ れ て い る こ と か ら,そ. と3項. の取消. れ は 除 斥 期 間 で あ る(39)。. イ ツ 法 に お い て は 日 本 法 の よ う に,い. か な る規 定 が 消 滅 時 効. あ る い は 除 斥 期 間 で あ る か の 解 釈 に 関 す る 問 題 は 発 生 し な い 。 ま た,除 斥 期 間 は 法 律 の 規 定 以 外 に,契. 約 に よ っ て も成 立 す る。 前 者 は 法 定 除 斥. 期 間(gesetzlicheAusschluBfrist),後 AusschluBfrist)と さ ら に,以. 者 は 約 定 除 斥 期 間(vertragliche. もいわ れ て い る。. 下 で 詳 し く見 て い くが,規. 斥 期 間 の 関 係 を み る と,BGBは. 定 内 容 を 基 準 と して 消 滅 時 効 と 除. 両 制 度 に つ いて 異 な る対 象 と効 果 を 規 定. して い る こ と が わ か る 。 規 定 内 容 だ け に 注 目 して 考 え る の で あ れ ば,消 時 効 と 除 斥 期 間 は 異 な る も の と い え る で あ ろ う ㈹。 し か し,そ (3丁. 本 稿 に お け る. 滅. こだ け に注. ド イ ツ 法 の 検 討 に つ い て は,Moufang,Oliver,DasVer-. haltnisderAusschluBfristenzurVerjahrung,1996を. 参 照. し,そ. こ か ら. 大 き く示 唆 を 得 て い る 。 (38)StaudingersKommenntarzumBGB,Buch1.AllgemeinerTeil5, 2004,Vorbem.zu§ ㈲124条1項. §194ff.,Rn.13[FrankPeters] に は. 「DieAnfechtungeinernach§123anfechtbaren. WillenserklarungkannnurbinnenJahresfristerfolgen.」,3項 は. に. 「DieAnfechtungistausgeschlossen,wennseitderAbgabeder. WillenserklarungzehnJahreverstrichensind.」. と あ る 。. ωStaudinger/Peters(Fn.38),Vorbem.zu§. §194ff.,Rn.13. 153.
(12) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. 目 し,さ らに そ こか ら両 制 度 の 性 質 さえ も異 な る と結 論 づ け る こ と に は問 題 が あ る よ う に思 わ れ る。 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 目的 や 性 質 に 着 目す る と,異 な る様 相 が見 え て くるω。 そ の よ うな 消 滅 時効 と除 斥 期 間 の 「性 質 の 違 い」 あ る い は 「根 本 的 違 い」 は,期 間 満 了 の 効 果 が 異 な る と こ ろか ら導 き 出 さ れ た もの で あ る と い わ れ る働。 これ に関 して も,個 々 の規 定 にお い て 効 果 が 異 な る もの で あ るか らと い って,そ. こか ら両 制 度 が 根 本 的 に違 う. もの で あ る と,直 ち に結 論 づ け る こ と に は疑 問 が あ る⑬。 それ ゆえ,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 が 本 当 に異 な る もの で あ るの か,あ. るい. は両 者 は 同 じ性 質 を 持 つ もの で あ るの か を 知 る た め に は,両 者 の 法 律 構 成 に対 す る検 討 と,両 制 度 の 性 質 的 特 徴 に対 す る検 討 を 明 確 に区 別 して 行 わ な けれ ばな らな いで あ ろ う。 す な わ ち,表 面 的 な 法 律 構 成 だ け に基 づ いて 直 接 に,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質 につ いて も結 論 づ け る こ と に は疑 問 が あ る。 本 稿 で は,BGBに. お け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 構 成 が 同 時 に 両 者. の 「性 質 」 に も 当て は ま るか ど うか,当 て は ま る とす れ ば どの 程 度 当て は ま るの か ど うか につ いて 考 察 し,両 者 の 違 い は本 当 に見 出せ るの か ど うか を検 討 す る。. 1)両 BGBの BGB194条. 制 度 の 適 用 対 象 につ いて 規 定 に よ る と,消 滅 時 効 と 除斥 期 間 と の対 象 は 異 な って い る。 に よ る と,消 滅 時 効 は他 人 に作 為 あ る い は不 作 為 を 請 求 す る請. 求 権 を その 対 象 と して お り,確 認 訴 訟 の 提 起 の よ うな 手 続 法 上 の 訴 権 を 消. ωWendt,Otto,UnterlassungenundVers註umnisseimBurgerlichen Recht,AcP92,1902,S.172 幽Soergel/NiedenfUhr,BGB,AllgemeinerTeil3(§. §13,14,126a-127,. 194-225),Band.2a,13.AufL,2002,vor§194,Rn.23 ⑬Rosenberg,Reinhard,VerjahrungundgesetzlicheBefristungnach dembUrgerlichenRechtdesdeutschenRechts,1904,S.23. 154.
(13) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. 滅 時 効 の対 象 とは して い な い と され る幽。 そ れ に対 し,除 斥 期 間 は す べ て の 権 利 に対 して 規 定 され て い る と い う㈲。 で は,BGBに. お いて 除 斥 期 間 の. 対 象 と され て い る もの は いか な る もの で あ るか 。 以 下 で 簡 単 に挙 げ る。. ①. 「BGB194条1項. の意 味 に お け る請 求 権 に含 ま れ る もの」. 同382条(供 託 金 に関 す る債 権 者 の 権 利 の 消 滅),同562条b2項2文(使 用 賃 貸 人 の 質 権 に関 す る 自助 権,返 還 請 求 権),同651条g1項(旅 に関 す る除 斥 期 間 ・消 滅 時 効),同703条1文(旅 に関 す る損 害 賠 償 請 求 権 の 消 滅)な ②. ど。. 誤 等 に 関 す る取 消 期 間),同124条1項. に関 す る取 消 期 間),同148条(契. ・3項(詐. 欺 ・強 迫. 約 に関 す る承 諾 期 間 の 取 決 め),同177条. 権 代 理 人 に よ る契 約 締 結),同318条(一. 指 定 の 取 消),同532条(贈 ③. 客 主 人 にお け る物 の 持 込. 「形 成 権 に含 ま れ る もの」. 同121条(錯. 2項(無. 行契約. 方 的 履 行 指 定 権 に関 す る. 与 に関 す る撤 回 の 排 除)な. ど。. 「そ の他 の権 利 に含 ま れ る もの」. 同973条(遺. 失 物 拾 得 に 関 す る拾 得 者 の所 有 権 取 得),同1965条(相. 続権. の 申 出 に対 す る公 告)。. 以 上 の よ う に,除 斥 期 間 の 対 象 に は請 求 権 も形 成 権 も含 まれ て い る。 そ こで,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 は対 象 に お いて 重 複 して い る部 分 が あ り,単 純 に消 滅 時 効 は請 求 権,除 斥 期 間 は形 成 権 と い う結 びつ きを 認 め る こ と はで 幽MtinchenerKommentarzumBtirgerlichenGesetzbuch,Band1, AllgemeinerTeil(§. §1-240),5.AufL,2006,§194,Rn.2[Grothe]. ㈹Staudinger/Peters(Fn.2),Vorbem.zu§. §194ff.,Rn.13;Palandt/. Heinrichs,BGB,66.Aufl.,2007,0berblickvon§194,Rn.13;Karl Larenz/ManfredWolf,AllgemeinerTeildesBtirgerlichenRechts,9. AufL,2004,S.291f.Larenzで. は,「 除 斥 期 間 は,行. 権 利 に つ い て 規 定 さ れ う る 」 と さ れ て い る 。. 155. 使 を 必 要 と す る す べ て の.
(14) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. き な い とい え る鱒。 さ ら に,形 成 権 で あ って も,消 滅 時 効 に 関す る規 定 を 準 用 す る もの が あ る。 例 え ば,BGB124条2項2文(詐 取 消 期 間),同1002条2項(所 滅),同1170条1項1文(抵 1317条1項(婚 同206条(不. 欺 ・強 迫 に関 す る. 有 者 に対 す る 占有 者 の費 用 償 還 請 求 権 の 消 当 権 に 関 す る知 られ ざ る債 権 者 の 排 除),同. 姻 取 消 に関 す る 申立 期 間)な. どが それ で あ る。 これ らは,. 可 抗 力 の場 合 の 消 滅 時 効 の停 止),同210条(行. で な い場 合 の 進 行 の 停 止),同211条(相. 為能力 が完全. 続 事 件 に お け る進 行 の 停 止)の 停. 止 規 定 を 準 用 して い る㈲。 この よ う に,194条 に お い て請 求 権 は消 滅 時 効 に か か る と さ れ な が ら,請 求 権 自体 は消 滅 時 効 ・除 斥 期 間 の ど ち らと も結 びつ け られ て い る。 それ ゆ え,両 者 の 関 係 を その 対 象 に基 づ いて 画 一一 的 に分 け る こ と は適 切 で はな い と いえ る。. 2)合. 意 に よ る期 間 の 変 更 可 能 性 につ いて. 消 滅 時 効 は法 的 平 和 と法 的 安 定 性 を その 目的 と し,除 斥 期 間 は法 的 安 定 性 と法 的 明確 性 を そ の 目的 と して い る㈹。 また,消 滅 時 効 と除斥 期 間 は, 法 的 安 定 性 と法 的 平 和 を 保 障 す る こ とを 共 通 の 目的 と して 有 して い る と も い わ れ る㈲。 そ れ ゆ え,消 滅 時 効 は,当 事 者 の 法 律 行 為 に よ る排 除 も加 重 もで きな い と され て い たが(BGB旧225条2文),し. ㈹. 効 果 の 違 い に つ い て は,本. ㈲. こ の よ う な 規 定 を 混 合 除 斥 期 間(gemischteAusschluBfristen)と る が,こ. の 名 称. Vorbem.zu§. 稿(二)4)参. に つ い て 否 定 的 な 見 解. 照 。. も あ る 。Staudinger/Peters(Fn.38),. §194ff.,Rn.15. ⑱MUnch-Komm/Grothe(Fn.44),vor§194,Rn.7,10;Larenz/Wolf, a.a.0.(Fn.45),S.292 (49)Becker-Bender,Ralf,Fristen,BB53,1953,S.962;Preis,Ulrich, AuslegungundInhaltskontrollevonAusschluBfristeninArbeitvertrtigen,ZIP89,Heft.14,1989,S.890. 156. か し2002年 の 債 務 法 現. も 呼 ば れ.
(15) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. 代 化 に よ り,同202条. に お い て 消 滅 時効 に つ いて も契 約 自 由の 原 則 が認 め. られ,当 事 者 に よ る期 間 の 加 重,軽 減 が 自 由 とな った 。 た だ し,故 意 に よ る責 任 の 場 合 に は軽 減 す る こ と は認 め られ ず,ま た30年 を 超 え る加 重 も認 め られ て いな い。 この よ う に,消 滅 時 効 につ いて は原 則 と して,契 約 に よ りその 期 間 を 定 め る こ とが で き る。 な お,約 定 除 斥 期 間 につ いて は と もか く,法 定 除 斥 期 間 につ いて は,明 確 に規 定 され て いな い限 り伸 長 す る こ と はで きな い と いわ れ て い る⑳。 しか し,消 滅 時 効 につ い て,改 正 前 に お い て もBGB旧477条1項2文 (環疵 担保 責 任 に 関 す る 消滅 時効),同 旧480条(種 類 売 買 にお け る担 保 履 行 義 務),同. 旧638条2項(請. 負 契 約 に お け る消 滅 時 効)が 例 外 的 に,請 求 権. に 関 す る消 滅 時 効 期 間 の延 長 を認 め て い た。 除 斥 期 間 に つ い て も,同 旧 503条(再. 売 買 に お け る行 使 期 間),同. と行 使 期 間),そ. 旧510条(先. して 同現 行801条3項(無. 買 権 に お け る通 知 義 務. 記 名 債 権 証 券 に関 す る消 滅 ・消. 滅 時 効)61)が,当 事 者 に よ る期 間 の合 意 を一 定 の範 囲 で認 め て い る。 こ こで も両 者 が 重 複 す る部 分 が 存 在 して い る。. 3)起. 算 点 と最 長 期 間(H6chfrist)に. ついて. 起 算 点 に お いて,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 との 違 い は見 出せ るで あ ろ うか 。 消 滅 時 効 の 起 算 点 につ いてBGB199条. は,「請 求 権 が発 生 し,か つ,債 権. 者 が 請 求 権 を 基 礎 付 け る事 情 お よ び債 務 者 が いか な る者 か を 知 りまた は重 過 失 が な けれ ば知 りえ た,そ の 年 の 終 了 に よ って 進 行 を 開 始 す る」 と規 定. ⑳Mtinch-Komm/Grothe(Fn.44),vor§194,Rn.12 S1)801条3項(無. 記 名 債 権 に 関 す る 消 滅,消. に つ い て は,振 な お,呈. 示 期. 滅 時 効)「 呈 示 期 間 の 長 さ と 起 算 点. 出 人 に よ り 文 書 に お い て 異 な る 定 め を お く こ と が で き る 」。 間. と あ. る が,本. 項. SchuldverschreibungaufdenInhabererlischt...」 る こ とが わ か る。. 157. に は. 「DerAnspruchauseiner と あ り,除. 斥期間であ.
(16) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. す る。 こ こで は,権 利 者 の 主 観 的 要 素 と起 算 点 とを 結 びつ けて お り,さ ら に年 末 時 効 制 度 が 取 り入 れ られ て い る。 他 方,BGB199条2項. か ら5項 で. は客 観 的 要 素 と起 算 点 とが 結 び つ け られ て い る。 す な わ ち,「 損 害 賠 償 請 求 権 以 外 の 請 求 権 」 は 請 求 権 の 発 生 時 か ら10年(同199条4項),「. 生命 ・. 身 体 ・健 康 ま た は 自 由の 侵 害 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 権 」 は損 害 を 惹 起 した 行 為 時 か ら30年(同199条2項),「. そ れ 以 外 の 損 害 賠 償 請 求 権 」 は請 求 権. の 発 生 時 か ら10年 で 時 効 消 滅 す る(同199条3項)。. つ ま り,原 則 と して 「総. て の 請 求 権 の た め に,10年 間 の 上 限 期 間 を 定 め,こ の 期 間 は請 求 権 の 発 生 と と も に進 行 す る と して い る。 この 厳 密 に算 定 され るべ き期 間 は,そ の 開 始 を専 ら客 観 的 状 況 の 存 在 に結 びつ けて い る。 その 上 限 期 間 は,一 一 身専属 的 の 法 益 の 侵 害 の た めの 損 害 賠 償 請 求 権 が 問 題 とな って い る場 合 の み につ い て は適 用 を 除 外 され る」6⇒ と説 明 され る。 そ れ に対 し除 斥 期 間 は権 利 の 存 続 期 間 を 定 め る もの で あ り,そ れ は,除 斥 期 間 に服 す る と規 定 され た権 利 が 発 生 した と きか ら進 行 を 開 始 す る と され る尉。 しか し,除 斥 期 間 は その よ うな 総 則 的 規 定 を 有 して いな いの で,一 概 に い う こ とが で きな い。 例 え ば,法 律 関 係 に関 与 す る人 の 一一 定の行為 によっ て 除 斥 期 間 が 開 始 す る場 合 が あ る。 す な わ ちBGB1002条1項 62)永. 田 誠=Fク. 2006)所. ー ニ ヒ編. 『法 律 学 的 対 話 に お け る ドイ ツ と 日 本 』(信. 収 の ク リス テ ィ ア ン ・ア ル ム ブ リ ュ ス タ ー(永. の消 滅時 効期 間. 勧 によ る 山 社,. 田 誠 ・山 下 良 訳)『 通 常. 特 に 主 観 的 要 素 と 客 観 的 要 素 の 結 合 に つ い て 」223頁. 以. 下 。 な お,Mansel,Heinz-Peter/Budzikiewicz,EinfUhrungindasneue Verjahrungsrecht,JURA25,2003,S.5に. よ る と,199条3項2号. 期 間 は 消 滅 時 効 期 間 で あ り,絶 で は な い の で,停. の最 長. 対 的 終 結 期 間(absoluteBeendigungsfristen). 止 等 の 規 定 を 適 用 で き る とあ る。. (53)Grawein,Alexander,VerjahrungundgesetzlicheBefristung,1 Theil,1880,§3 励1002条1項(所. 有 者 に 対 す る 占 有 者 の 費 用 償 還 請 求 権 の 消 滅)「 占 有 者 が 物 を. 所 有 者 に 返 還 し た 場 合 に,費 り,土. 用 償 還 に 関 す る 請 求 権 は 返 還 後1ケ. 地 に つ い て は 返 還 後6ケ. 裁 判 上 の 請 求 が な さ れ,あ. 月の満了 によ. 月 の 満 了 に よ り 消 滅 す る。 た だ し,あ. らか じめ. る い は 所 有 権 者 が そ の 使 用 を 認 め て い た 場 合 は こ の/. 158.
(17) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. と,占 有 者 が 真 の 所 有 権 者 あ る い は その 代 理 占有 者 に対 して 条 件 を 付 け る こ とな く任 意 で 物 を 返 還 した場 合,そ の と きが 費 用 償 還 請 求 権 の 起 算 点 と さ れ て い る6D。 ま た 同864条1項. の 除 斥 期 間 は,同858条1項. る 違 法 の 私 力(verboteneEigenmacht)の さ ら に,除. の意 味 に お け. 行 使 に よ っ て 進 行 を 開 始 す る66)。. 斥 期 間 で あ っ て も 消 滅 時 効 と 同 じ よ う に,起. 算点を一定の事. 実 の 認 識 と い う主 観 的 要 素 を 基 準 とす る もの も あ り,反 対 に一 定 の 客 観 的 要 素 を 基 準 と す る も の も 存 在 して い る 。 例 え ば,BGB124条60,同318条2 項68),同532条69),同703条. \ 限 りで はな い」,2項. ㈹,同1954条(6Dは. 権 利者 の 認 識 と い う主 観 的 要 素. 「この期 間 につ い て は,消 滅 時 効 に適 用 され る206条,210. 条,211条 の 規 定 が 準 用 され る。」 岡Moufang,a.a.O.(Fn.37),S.36 66)864条1項(占. 有 請 求 権 の消 滅)「861条,862条. の 行 使 の 後1年. に よ る請 求 権 は,違 法 の 私 力. の満 了 に よ り消 滅 す る。 た だ し,あ らか じめ 請 求 権 が 裁 判 上 で. 主 張 され た 場 合 は この 限 りで は な い 」。 な お,違 法 の私 力 と は 山 田晟 『ドイ ツ法 律 用 語 辞 典 」651頁(大. 学 書 林,改 訂 増 補 版,1993)に. が 第 三 者 の 違 法 な私 力(法. の禁 じた私 力)に. よ る と,「 占有者 の 占有. よ って奪 わ れ,ま た は 妨 害 され た. と き は 占有 者 は 占有 保 護 請 求 権 お よ び 自力 救 済 権 を あ た え られ る」 と され る。 ⑳124条(詐. 欺 ・強 迫 に関 す る取 消 期 間)1項. 取 消 可 能 性)に. 「123条(詐 欺 ま た は 強 迫 に よ る. よ り取 消 しう る意 思 表 示 を取 消 す こ とは,1年. す る こ とが で き る。」,2項. 以内にのみ行使. 「そ の期 間 は,詐 欺 の場 合 に は取 消 権者 が 詐 欺 を 発. 見 した 時,強 迫 の場 合 に は強 迫 の状 態 が や ん だ 時 に,開 始 す る。 期 間 の 進 行 に つ い て は,消 滅 時 効 に 適 用 さ れ る206条,210条. お よ び211条 の 規 定 が 準 用 され. る。」,3項 「意 思 表 示 を な した 時 か ら10年 が 経 過 した と き,取 消 は排 除 され る。」 68)318条(一. 方 的 履 行 指 定 権 に関 す る指 定 の 取 消)2項. 「 詐 欺,強 迫 あ るい は悪. 意 欺 岡 に よ る取 消 は,契 約 締 結 当事 者 に の み帰 属 す る。 取 消 相 手 方 は 他 方 当 事 者 とな る。 取 消 は,取 消 権 者 が取 消 理 由 を認 識 した 後 に,遅 滞 な くな され な け れ ばな らな い。」 69)532条(贈. 与 に関 す る撤 回 の排 除)「 撤 回 は,贈 与 者 が 受 贈者 に 引 き渡 した と. き,ま た は撤 回 権 者 が 自 己 の権 利 に 関す る要 件 の成 立 を認 識 した 時 か ら1年 が 経 過 した と き に排 除 され る。 受 贈 者 の 死 後,撤 回 は もは や 認 め られ な い 。」 ㈹703条(旅. 店 主 に お け る物 の持 込 に 関 す る損 害 賠 償 請 求 権 の消 滅)「701条,702. 条 に基 づ き旅 客 に帰 属 す る請 求 権 は,旅 客 が喪 失,損 失 も し くは 殿 損 を 知 った の ち に遅 滞 な く旅 店 主 に告 げ な か った場 合 は,消 滅 す る。 そ の 物 が 旅 店 主 に保/. 159.
(18) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. を基 準 と して い る。 反 対 に,客 観 的 要 素 を 基 準 とす る もの は,規 定 ご と に そ の 基 準 が 異 な っ て い る 。 例 え ば,BGB108条(6D,同177条R(63,同382条(eo な ど は,請. 求 や 通 知 を 受 領 し た 後 に 進 行 が 開 始 し,同1965条2項(6Dで. 申 出 期 間(Anmeldungsfrist)の. は,. 満 了 に よ って 除斥 期 間 の進 行 が 開始 す る。. 逆 に消 滅 時 効 で あ って も,BGB199条. に よ る請 求 権 の 発 生 を 基 準 とす る. \ 管 の た あ に 引 き渡 され た と き,ま た は喪 失,損. 失 も し くは殿 損 が 旅 店 主 も し く. はそ の 従 業 員 の 過 失 に よ る と き は,請 求 権 は 消 滅 しな い 。」 (61)1954条(相. 続 の 承 認 及 び放 棄 の取 消 期 間)1項. 「承認 及 び 放棄 が 取 消 し う る. 場 合 に は,取 消 は6週 間 以 内 に なす こ とが で き る。」,2項. 「そ の 期 間 は,強 迫. に よ り取 消 しう る場 合 に は強 迫 の状 態 が や ん だ 時 か ら,そ の 他 の 場 合 には 取 消 権 者 が 取 消 理 由 を認 識 した 時 か ら進 行 す る。 期 間 の進 行 に つ い て は,消 滅 時 効 に関 す る206条,210条 勧108条(法. 及 び211条 の 規 定 が 適 用 され る。」,3項,4項. 定 代 理 人 の 同 意 な き契 約 の 締 結)1項. 略。. 「未 成 年 者 が 法 定 代 理 人 の 必. 要 な 同 意 な く契 約 を締 結 した と き,そ の契 約 の 効力 は代 理 人 の 追 認 の 如 何 に よ る。」,2項. 「契 約 相 手 方 が 代 理 人 に追 認 の 意 思 表 示 を せ よ との 催 告 を 行 う と き,. そ の 意 思 表 示 は その 相 手 方 に対 して の み有 効 とな りえ,そ の 催 告 以 前 に未 成 年 者 に対 して な され た追 認 ま た は追 認 拒 絶 の意 思 表示 は無 効 とな る。 追 認 は 催 告 を 受 け た 後2週. 間 が 経 過 す る ま で 表 示 す る こ とが で き,追 認 が な され な い と. き,追 認 は拒 絶 され た もの とみ な す 。」,3項 ㈹177条(無. 権 代 理 人 に よ る契 約 締 結)1項. 略。 「あ る者 が 代 理 権 な く他 人 の 名 で 契. 約 を 締 結 す る と き,そ の契 約 の有 効 性 が本 人 に 帰属 す るか ど うか は,本 人 の 追 認 の 如 何 に よ る。」,2項. 「契 約 相 手 方 が本 人 に追 認 の意 思 表 示 を せ よ との 催 告. を 行 う と き,そ の意 思 表 示 は そ の相 手 方 に対 して の み効 力 を 生 じ,そ の 催 告 以 前 に代 理 人 に対 して な され た追 認 ま た は追 認 拒 絶 の意 思 表示 は無 効 とな る。 追 認 は,催 告 を受 け た後2週. 間 が経 過 す る ま で表 示 す る こ とが で き,追 認 が な さ. れ な い と き は,追 認 は拒 絶 され た もの とみ な す 。」 (64382条(供. 託 金 に関 す る債 権 者 の権 利 の消 滅)「 供 託 され た 金額 に 関 す る債 権. 者 の 権 利 は,債 権 者 が あ らか じめ寄 託 所 に届 出 て い な い 限 りに お い て,供 託 の 通 知 を 受 け た後30年 が 経 過 す る こ とに よ って 消滅 し,債 務 者 は,た. とえ 取 戻 権. を 放 棄 した と して も,こ れ を 取 戻 す こ とが で き る。」 (6D1965条(相. 続 権 の 申 出 に対 す る公 告)2項. 「申 出 期 間 が経 過 した 後3ケ 月 以. 内 に遺 産 裁 判 所 に対 して,相 続 権 が存 在 す る こ と,ま た は 国 庫 に 対 して 訴 え の 方 法 に よ り相 続 権 を主 張 した こ と を証 明 しな い とき,相 続権 は 継 続 して 考 慮 さ れ て いな い もの と され る。 公 告 が な さ れ な い とき は,そ の3ケ 月 の 期 間 は 相 続 権 また は訴 え の 提 起 を 立 証 す る とい う裁 判 所 の 催 告 の 時 か ら進 行 す る。」. 160.
(19) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. の で はな く,利 害 関 係 人 の 一一 定 の 行 為 に よ り期 間 進 行 が 開 始 す る と い う規 定 が存 在 す る。 例 え ば,同438条2項(売. 買 に 関 す る報 疵 請 求 権 の 消 滅 時. 効)㈹ が こ れ に 当 た る。 こ の規 定 に よ る と,請 求 権 の消 滅 時 効 は,土 地 つ い て は 引 渡 し(Ubergabe)に lieferung)に. よ り,そ. れ 以 外 に つ い て は 物 の 交 付(Ab-. よ り進 行 を 開 始 す る 。 同634条a2項. 間 は 引 取(Abnahme)に 1057条 ⑳,同1226条. ㈲ に よ る と,消 滅 時 効 期. よ り進 行 を 開 始 す る。 同548条 ㈹,同606条 σ1)の場 合,消. ㈹,同. 滅 時 効 は貸 主 等 が物 の 返 還 を受 け た 時 か. ら進 行 を 開 始 す る。 以 上 の こ とか ら,両 制 度 は起 算 点 につ いて も重 な る部 分 が あ り,全 く異 な る と は い え な い 。 そ れ ゆ え,例. え ば 法 律 の 規 定 が な い 限 り,原. 則 と して. 両 期 間 の 進 行 は権 利 の 発 生 に よ り開 始 す る,と い う法 解 釈 の 可 能 性 も あ る ㈹438条(売. 買 に関 す る環 疵 請 求 権 の消 滅 時 効)2項. 「消滅 時効 は,土 地 の 場 合. に は引 渡 に よ り,そ の 他 の 場 合 には 物 の 交 付 に よ り進 行 す る。」 (6D634条a(請. 負 契 約 に関 す る理 疵 請 求 権 の 消 滅 時 効)2項. 「時 効 は,第1項1. 号 お よ び2号 の 場 合 に は,引 取 の と きか ら進 行 す る。」 ㈱548条(使. 用 賃 貸 借 関 係 に関 す る賠 償 請 求 権 と除 去 権 の 消 滅 時 効)1項. 物 の 変 更 お よ び損 失 に よ る賃 貸 人 の賠 償 請 求権 は,6ケ. 「賃 貸. 月 で 時 効 消 滅 す る。 時. 効 は,賃 貸 人 が 賃 貸 物 の返 還 を受 け た 時 か ら進 行 す る。 賃貸 人 の 賃 貸 物 返 還 に 関 す る請 求 権 の 消 滅 時 効 と と もに,賠 償 請 求権 も時 効 消 滅 す る。」,2項. 「賃 借. 人 の 費 用 償 還 請 求 権 お よ び設 備 除去 の許 可 に よ る請 求権 は,賃 貸 借 関 係 の 終 了 後6ケ 月 で 時 効 消 滅 す る」 ㈹606条(使. 用 賃 貸 借 に関 す る短 期 消 滅 時 効)「 使 用 賃 貸 物 の 変 更 お よ び 損 失 に. よ る賃 貸 人 の賠 償 請 求 権,並. び に賃 借 人 の賃 貸 物 管 理 に よ る賠 償 請 求 権 お よび. 設 備 除 去 の 許 可 に よ る請 求 権 は,6カ. 月 で 時 効 消 滅 す る。548条1項2文. およ. び3文 並 び に2項 の 規 定 は,こ れ を 準 用 す る。」 ⑩1057条(物. に お け る用 益 権 に 関す る賠 償 請 求 権 の消 滅 時効)「 物 の 変 更 お よび. 損 失 に よ る所 有 者 の 賠 償 請 求 権,並. び に用 益 権 者 の使 用 に よ る賠 償 請 求 権 お よ. び設 備 除去 の 許 可 に よ る請 求 権 は,6ケ. 月 で 時 効 消 滅 す る。548条1項2文. お. よ び3文 並 び に2項 の 規 定 は,こ れ を 準 用 す る。」 ⑳1226条(動. 産 質 権 に 関す る賠 償 請 求 権 の 消滅 時効)「 質 物 の 変 更 お よ び損 失 に. よ る質 権 者 の賠 償 請 求 権,並 去 の許 可 に よ る請 求 権 は,6ケ. び に質 権 者 の使 用 に よ る賠 償請 求 権 お よび 設 備 除 月 で 時効 消 滅 す る。548条1項2文. 並 び に2項 の 規 定 は,こ れ を 準 用 す る。」. 161. お よ び3文.
(20) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. と い わ れ る ⑫。 す な わ ち,起 で しか な く,起. 算 点 と は 立 法 者 の 裁 量 に よ り決 定 さ れ る も の. 算 点 の 要 件 に お い て,両. 制 度 の 違 いを 見 出す こ と もで きな. い と 考 え られ よ う ⑬。 な お,債. 務 法 現 代 化 法 に よ り消 滅 時 効 は 原 則 と して,BGB199条. 的 要 素 を 基 準 と し た 年 末 時 効 を 採 用 し た 。 そ し て,同195条 (regelmaBig)消. 滅 時 効 期 間 を3年. け る 消 滅 時 効 制 度 は,年. で は通常 の. と し て い る 。 こ の こ と か ら,ド イ ツ に お. 始 を 起 算 点 と す る3年. い え る 。 しか し,上 述 の 同438条. の主観. の 消 滅 時 効 を 原 則 に した と. の よ う な 規 定 や,一 一 定 の 事 実(客 観 的 要 素). を起 算 点 とす る最 長 期 間 の よ う な消 滅 時 効 σ のな ど も あ る こ と か ら,通 消 滅 時 効 は 原 則 と い う よ り も,さ. 常の. ま ざ ま な 体 系 の 中 の 一一 種 で しか な い と も. 考 え られ る 。. 4)期. 間 満 了 の 法 律 効 果 につ いて. 期 間 満 了 後 の 法 律 効 果 は どの よ う に異 な るで あ ろ うか 。 除 斥 期 間 の 場 合 に は期 間 満 了 に よ り権 利 が 消 滅 し,消 滅 時 効 の 場 合 に は権 利 自体 は消 滅 せ ず に,請 求 権 の 相 手 方 にBGB214条1項. ㈲ に よ り給 付 拒 絶 権 が与 え られ,. それ が 援 用 され る こ と に よ り権 利 者 の 請 求 権 に関 す る強 制 的 な 実 行 可 能 性 が 奪 わ れ る と され て い る㈹。 (72,>Rosenberg,a.a.O.(Fn.43),S.72 ㈱Moufang,a.a.0.(Fn.37),S.38 ㈹. 前掲注働参照。. ㈲214条(消. 滅 時 効 の 効 果)1項. 権 利 を 有 す る 。」,2項. 「消 滅 時 効 の 完 成 後,債. 務者は給付を拒絶す る. 「時 効 消 滅 し た 請 求 権 に 対 す る 弁 済 の 履 行 は,た. 効 消 滅 を 知 ら ず に 給 付 さ れ た と し て も,返. に よ る 契 約 に 基 づ く承 認 お よ び 担 保 の 給 付 に つ い て も 同 様 で あ る 。」 (76)Mtinch-Komm/Grothe(Fn.44),vor§194,Rn.10;Palandt/Heinrichs (Fn.45),Uberblickvon§194,Rn.13;Staudinger/Peters(Fn.38), Vorbem.zu§194ff.,Rn.13;Soergel/NiedenfUhr(Fn.42),vor§194, Rn.23;Larenz/Wolf,a.a.0.(Fn.45),S.292;Mansel/Budzikiewicz,/. 162. とえ 時. 還 請 求 す る こ とは で きな い 。 債 務 者.
(21) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. しか し,消 滅 時 効 の 期 間 満 了 後 で あ って も,給 付 拒 絶 権 を 付 与 す る こ と な く,権 利 を 消 滅 させ る と い う規 定 が 存 在 す る こ とか ら,消 滅 時 効 の 法 律 効 果 と は消 滅 時 効 の 性 質 か らの 導 き 出 さ れ た もの で は な く,む しろ そ れ も,消 滅 時 効 に その よ うな 法 律 効 果 を 定 め る こ とが で き る立 法 者 の 裁 量 に 基 づ くも の で しか な い と い え そ う で あ る。 例 え ばBGB901条1文. ⑳によ. る と,不 当 に抹 消 され た土 地 に関 す る権 利 は,所 有 権 者 に対 す る権 利 者 の 請 求 権 が 時 効 にか か っ た と き に消 滅 す る と規 定 され て い る。 これ は,ド イ ツ の消 滅 時効 制 度 に お け る給 付 拒 絶 権 付 与 に対 す る例 外 と もい わ れ る⑱。 ま た 同1028条1項2文. に よ る と,地 役 権 は侵 害 工 作 物 を 除 去 す る請 求 権 の. 消 滅 時 効 と共 に,そ の 工 作 物 と地 役 権 が 衝 突 す る 限 りで 消滅 す る⑲。 この 規 定 は 同1090条 に よ り,制 限 的 人 役 権 ⑲一2に も準 用 され て い る。 反 対 に, \DasneueVerj註hrungsrecht,2002,S.38 ⑰901条(登. 記 簿 消 滅 時 効)1文. 「他 人 の 土 地 に関 す る権 利 が 不 動 産 登 記 簿 にお. いて 不 当 に抹 消 され た場 合 に は,所 有 者 に対 す る権 利者 の請 求 権 が 時 効 消 滅 し た と き に,そ の権 利 も消 滅 す る。」。 こ れ につ き,BGB197条1項1号. は,「所 有. 権 お よ び他 の物 権 的 権 利 に基 づ く返 還 請 求 権 」 は30年 の 消滅 時 効 の 服 す る,と 規 定 して い る こ との 帰 結 で あ る。 な お,こ の よ うな法 律 は 日本 に も存 在 す る。 地 方 自治 法236条2項. には 「金 銭 の 給 付 を 目的 とす る普 通 地 方 公 共 団 体 の 権 利 の. 時 効 に よ る消 滅 につ い て は,法 律 に特 別 の定 め が あ る場 合 を 除 く ほか,時 効 の 援 用 を 要 せ ず,ま た,そ. の利 益 を放 棄 す る こ とが で き な い もの とす る。 … … 」. 以下略。 ⑱. 於 保 不 二 雄(高 木 多 喜 男 補 遺)『 独 逸 民 法 皿」68頁(有. ⑲1028条(地. 役 権 の 消 滅 時 効)1項. 置 さ れ て い る 場 合 に,た. 斐 閣,復 刻 版,1955)。. 「地 役 権 を侵 害 す る工 作 物 が,承 役 地 に設. とえ 地 役 権 が 不 動 産 登 記 簿 に登 記 され て い る場 合 で. あ って も,地 役 権 者 の侵 害 除去 請 求 権 は消 滅 時効 に か か る。 この 請 求 権 が 消 滅 時 効 にか か った 場 合 に は,工 作 物 の存 在 が地 役 権 と衝突 す る限 り にお い て,地 役 権 は消 滅 す る。」 ⑲一2山. 田,前 掲 注66)によ る と,「 権 利 の 内容 は地 役 権 とほ ぼ 同 様 で あ るが,地. 役 権 は要 役 地 の 現 在 の所 有 者 に属 し,土 地 の譲 渡 に よ って地 役 権 も移 転 す るか ら,新 所 有 者 の た め に も便 益 を供 す る 内容 の もの で な け れ ば 地 役 権 と して 設 定 しえ な い(民 法1019条)。 こ れ に反 し,制 限 的 人 役 権 は 特 定 の 人 に属 す る権 利 で あ るか ら,そ の人 の便 益 にな る 内容(た. とえば 隣 の土 地 を テ ニ ス コー トと して 利. 用 す る権 利)を 制 限 的人役 権 と して設 定 す る こ とがで き る(同1090条)」. 163. と あ る。.
(22) 近畿大学法学. 同651条g1項. 第57巻 第1号. ⑳ は除 斥 期 間 満 了 後 の権 利 者 の権 利 行 使 につ い て,故 意 ・. 過 失 に よ って 期 間 が 満 了 して しま っ た場 合 に,そ の 権 利 の 主 張 の み を 排 除 して い る。 これ らの 消 滅 時 効 期 間 は,期 間 満 了 に よ って 権 利 を 消 滅 させ る もの で あ り,そ の 効 果 は一般 的 に いわ れ る除 斥 期 間 の 法 律 効 果 と 同 じで あ る。 も し 消 滅 時 効 が 除 斥 期 間 の 性 質 と一致 す る こ とが あ りえ な いの で あれ ば,そ も そ も立 法 者 は その よ うな 効 果 を,消 滅 時 効 に与 え る こ とが で きな い はず で あ る。 これ らの こ とが 意 味 して い るの は,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 は その 内在 的 性 質 に基 づ き,法 律 効 果 の 面 に お いて 絶 対 に重 複 す る こ とが な いの で は な く,ど の よ うな 内容 にす るか は立 法 者 の 裁 量 に基 づ いて 決 定 され る と い う こ とで あ る。 それ ゆえ,BGB214条1項. にお いて 消 滅 時 効 の 法 律 効 果 と. され て い る給 付 拒 絶 権 は,立 法 者 の 裁 量 に よ って 定 め られ た もの にす ぎな い と考 え られ る。 さ らに,SGB(Sozialgesetzbuch:社 項Bl)では,消 滅 時 効 の効 果 に つ い てBGBを. 会 福 祉 法)45条2. 準 用 す る とい う規 定 が 存 在 し. て い る。 も し,給 付 拒 絶 権 が 消 滅 時 効 の 性 質 と して 本 来 的 に備 わ って い る の で あ れ ば,わ ざ わ ざ この よ う にBGBを. 準 用 す る必 要 が な い。 逆 に い う. と,準 用 規 定 が な けれ ば,消 滅 時 効 につ いて 給 付 拒 絶 権 は発 生 しな い と も いえ るか も しれ な い。 ま た,BGB214条(旧222条:消. ⑳651条g(旅 か ら651条fに. 滅 時 効 の効 果)の 成 立 史 か らみ て も,こ. 行 契 約 に お け る 除斥 期 間,消 滅 時効)1項. 「 旅 行 者 は,651条c. 基 づ く請 求 権 を,契 約 に よ る旅 行 予 定 終 了 後1ケ 月 以 内 に 旅 行. 主 宰 者 に対 して 主 張 し う る。174条 は適 用 され な い 。 期 間 の 満 了 後 にお い て も, 旅 行 者 は 自 己の 過 失 な く期 間遵 守 を妨 げ られ た場 合 に の み,請 求 権 を 主 張 す る こ とが で き る。」,2項. 「651条cか. ら651条fに. 基 づ く旅 行 者 の請 求 権 は,2年. で 消 滅 時 効 にか か る。 消 滅 時効 は,契 約 に よ り旅 行 が 終 了 す る 日 と と も に開 始 す る。」 ⑳SGB45条(消. 滅 時 効)2項. 「停 止,進 行 の 停 止,再 開 お よ び 消 滅 時 効 の 効. 果 につ いて は,民 法 典 の 規 定 を 準 用 す る。」. 164.
(23) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. の 規 定 の 法 律 効 果 が 消 滅 時 効 概 念 に必 然 的 な もの で はな い と いえ る。 そ の成 立 に 関 す る議 論 にお い て,人 的権 利(pers6nlicheRechte)に いて,消 滅 時 効 の 満 了 後 に権 利 が 完 全 に消 滅 す るか,あ. つ. る い は権 利 が 自然. 債 務 と して その 後 も存 在 す るか と い う見 解 の 対 立 が あ り,理 由書 に よ る と 後 者 の見 解 が草 案 に採 用 され た㈱。 そ の理 由 と して,理. 由書 は次 の よ う に. 述 べ て い る㈱。 「草 案 に お い て も見 受 け られ る実 体 法 的 抗 弁(Einrede)の 概 念 に は,以 下 の よ うな 厳 格 な カ テ ゴ リーが 与 え られ て い る。 す な わ ち, 個 々の 法 律 … … に よ り生 じて しま う不 明 確 な 状 態 を 防 ぎ,問 題 を 解 消 す る と い う もの で あ る。 そ の 際,(消 滅 時 効 の)放 棄 可 能 性 や,裁 判 官 が職 権 で 消 滅 時 効 を 考 慮 で きな い こ と につ いて,特 別 な 指 摘 を す る必 要 はな い。 と い うの も,抗 弁(Einrede)の. 法 的性 質 は そ の 両 方 を 必 然 的 に もた らす. か らで あ る」。 この こ とか ら,後 者(権 利 の 自然 債 務 化)に 基 づ き 旧222条 に給 付 拒 絶 権 が 取 り入 れ られ た こ と は,消 滅 時 効 の性 質 に よ るの で は な く,私 法 に お いて 認 識 され て い る抗 弁 権 概 念 を 基 に した もの で あ る と され る鴎。 そ う して,旧222条. に お い て 給 付 拒 絶 件 が 取 り入 れ られ た こ とは,立. 法 者 の 裁 量 に よ る もの で あ り,そ の よ うな 構 成 を 採 る と い う必 要 が あ った と い う理 由で しか な か っ たの で あ る㈲。 以 上 の こ とか ら,消 滅 時 効 概 念 の 必 然 的 な 効 果 と い う もの が も と も と存 在 す るの で はな く,ど の よ うな 効 果 を 持 つ の か と い う こ と は,立 法 者 の 裁 量 に基 づ くもの な の で あ る。 その 結 果,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 性 質 に関 す る違 い は,BGB214条. に含 まれ て い る法 律 効 果 に よ って も,理 由付 け る こ. とが で きな い と いえ る。 (82,>Rosenberg,a.a.0.(Fn.43),S.117f. ㈱MotivezudemEntwurfeinesBurgerlichenGesetzbuchesfUrdas DeutscheReich.Band1.AllgemeinerTheil,1888,S.342 ㈹Moufang,a.a.0.(Fn.37),S.42 (85>Id.,S.42. 165.
(24) 近畿大学法学. 5)期. 第57巻 第1号. 間 満 了 の 法 律 効 果 が 発 生 す るた め の 要 件 につ いて. 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 違 い と して,除 斥 期 間 の 満 了 は訴 訟 に お いて 職 権 で 採 りあ げ られ,消 滅 時 効 は訴 訟 に お いて,義 務 者 が 消 滅 時 効 を 援 用 す る 必 要 が あ る,と い う こ とが いわ れ て い る㈹。 まず 確 認 して お き た い こ と は,ド イ ツ法 に お け る 「抗 弁 」の概 念 で あ る。 ドイ ツ法 にお け る抗 弁 に はEinredeとEinwendungの る。Einredeと. 二 通 りの もの が あ. は,相 手 方 の 権 利 が 存 在 す る場 合 に,そ の行 使 を 妨 げ る権. 利 の こ とで あ り,Einwendungは. 相 手 方 の権 利 の不 存在 を主 張 して,そ の. 権 利 の行 使 を妨 げ る権 利 の こ とで あ る。 明 文 はな いが,Einredeは の 援 用 が 必 要 で あ り,Einwendungは. 当事者. 当事 者 の 立 証 した事 実 か ら権 利 の 不. 存 在 が 明 確 にな っ た場 合 に は,裁 判 所 は援 用 が な くて も訴 え を 棄 却 しな け れ ばな らな い もの で あ る㈱。 そ こで,こ れ を 消 滅 時 効 と除 斥 期 間 に照 ら し合 わ せ て み る と,消 滅 時 効 はBGB214条1項. ㈱ にお いて給 付 拒 絶権 の付与 を規 定 して い る。 消滅 時効 期. 間 の 満 了 は4)で. み た よ う に,原 則 と して 権 利 を 消 滅 させ る もの で はな い. の で,訴 訟 に お い て被 請 求 者 が行 使 す る給 付 拒 絶権 とい う抗 弁 権(Einrederechts)は,訴 の 主 張(援 用)が. 訟 に お い て抗 弁(Einrede)と. して 主 張 され,裁 判 所 は そ. あ って は じめて それ を 判 断 で き る。 それ に対 し,も し消. 滅 時 効 期 間 の 満 了 が 直 接 法 的 地 位 や 権 利 を 消 滅 させ る場 合 に,そ の よ うな 消 滅 時 効 に か か っ た 権 利 が 主 張 さ れ た な ら ば,被 請 求 者 は抗 弁(Ein一 ㈹MUnch-Komm/Grothe(Fn.44),vor§194,Rn.10;Staudinger/Peters (Fn.38),Vorbem.zu§. §194ff.,Rn.13;Soergel/NiedenfUhr(Fn.42),. vor§194,Rn.23;Mansel/Budzikiewicz,a.a.0.(Fn.76),S.38 (8D山. 田晟. 『 ドイ ツ 法 概 論11」71頁(有. 書 に よ る と,「 同 時 履 行 の 抗 弁,消. 斐 閣,第3版,1989)参. が 善 良 な 風 俗 違 反 で あ る と の 抗 弁,取 抗 弁,す ㈱. な わ ち,権. 照 。 な お,前. 滅 時 効 の 抗 弁 はEinredeで. あ り,法. 掲. 律行為. 消 に よ って相 手 方 の権 利 が 消 滅 した 旨の. 利 不 存 在 の 抗 弁 はEinwendungで. 前掲注㈲参照。. 166. あ る」 とす る。.
(25) ドイ ツ にお け る消 滅 時 効 と除 斥 期 間 の 関 係 につ い て の 研 究. wendung)を. 行 使 す る こ と が で き,さ. ら に 裁 判 所 が 職 権 に よ りそ の 請 求 を. 棄 却 す る こ と が で き る 。 除 斥 期 間 に つ い て も,期 る の で,抗. 弁(Einwendung)が. 形 成 さ れ,裁. る こ と に な る ㈹。 そ れ ゆ え,例 に お け る 消 滅 時 効 は,そ で,裁. 間 満 了 後 は権 利 が 消 滅 す. 判 所 の 職 権 に よ り判 断 さ れ. え ばBGB901条1文. ⑲ ①,同1028条1項2文. の 形 態 か ら抗 弁(Einwendung)が. ⑲1). 形 成 され るの. 判 所 が 職 権 に よ って 判 断 で き る。. こ れ らの こ と か ら,訴. 訟 に お い て 消 滅 時 効 が そ の 効 果 と して 給 付 拒 絶 権. と い う抗 弁(Einrede)を. 形 成 す る こ と は,消. 質 か ら導 き 出 さ れ る も の で は な く,規 い の で あ る 。 そ れ ゆ え,給. 滅 時 効 とい う法 律 制 度 の 性. 定 ご と に 導 き 出 さ れ る も の で しか な. 付 拒 絶 権 あ る い は 抗 弁 を 基 準 と して 消 滅 時 効 と. 除 斥 期 間 の 性 質 の 違 い を 理 由 づ け る こ と は で き な い と い え る働。. 6)期. 間 満 了 後 の 弁 済 に対 す る不 当 利 得 返 還 請 求 の 可 能 性 につ いて. 期 間 満 了 後 に弁 済 され た もの につ いて,給 付 者 は不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 行 使 す る こ とが 出来 るで あ ろ うか 。 一般 的 に これ は,消 滅 時 効 と除 斥 期 間 に よ って 異 な る と いわ れ る。 す な わ ち,時 効 消 滅 した 請 求 権 に対 す る給 付 につ いて は,BGB214条2項. ㈱,同813条1項2文(9の. に よ り返 還 請 求 が 認 め. られ な い。 そ れ に 対 し,除 斥 期 間 が 満 了 す る と請 求 権 が 消 滅 す る こ とか ら,そ の 請 求 権 に対 して な され た給 付 につ いて は,少 な くと も義 務 者 が 除. ㈱Larenz/Wolf,a.a.0.(Fn.45),S.292;Mansel/Budzikiewicz,a.a.O. (Fn.76),S.38 (9① 前 掲 注 ⑰ 参 照 。 (91)前. 掲注㈲参照。. 働Moufang,a.a.O.(Fn.37),S.43 ㈱. 前掲注㈲参照。. (94813条(不. 当 利 得 に 関 す る 抗 弁 が あ る 場 合 の 履 行)1項. 給 付 さ れ た も の は,請 た と き に も,返. 「債 務 の 履 行 の 目 的 で. 求 権 の主 張 を継 続 的 に排 除 す る抗 弁権 が 請 求 に 向 け られ. 還 請 求 さ れ う る 。214条2項. 167. の 規 定 は,影. 響 を 受 け な い 。」.
(26) 近畿大学法学. 第57巻 第1号. 斥 期 間 満 了 を 知 らな か っ た場 合 に は,そ の 法 的 根 拠 が 消 滅 して い る た め に 不 当利 得 の 規 定(BGB812条. 以 下)に. よ って 返 還 を 求 め る こ とが で き る と. 考 え られ て い る㈱。 消 滅 時 効 の 場 合 に返 還 請 求 が 認 め られ な いの は,請 求 権 が 消 滅 時 効 期 間 の 満 了 に よ って も消 滅 して いな いか らで あ る。 す な わ ち,時 効 消 滅 した に もか か わ らず な され た給 付 は,本 来 の 義 務 に対 す る給 付 と解 され るの で あ る。 第 一 草 案 理 由書 も 同214条2項(旧222条2項)を,「. 自然 的 な法 感 情. と して,時 効 に か か った債 務 も,依 然 と して 債 務 で あ り続 けて い る」,と し て い る⑲ ⑤ 。 そ れ ゆ え,も. し消 滅 時 効 期 間 の 満 了 に よ り請 求 権 の 消滅 が 生 じ. る と い う規 定 の 場 合 に は,時 効 消 滅 した請 求 権 に対 す る給 付 で あ って も, 不 当利 得 返 還 請 求 が 可 能 と な る の で あ る㈱。 そ れ は除 斥 期 間 に つ い て も 同 じで あ り,除 斥 期 間 が 満 了 した場 合 で あ って も,請 求 権 の 消 滅 で はな く権 利 者 の主 張 の み を排 除 す る とい う規定 の 場 合(651条g1項 同214条2項. 参 照)鰍 に は,. の 類 推 適 用 が 認 め られ,不 当 利 得 返 還 請 求 権 が 認 め られ な い. こ と とな る⑲ ㊥。 さ らに理 由 書 は,「 返 還 請 求 の 排 除 は 消 滅 時 効 の 目的 か ら もた ら され た もの で はな い」,と も述 べ て い る こ とか らqOD,立法 者 が規 定 したBGB214条 2項,同813条1項. の 内容 は,消 滅 時 効 が も と も と有 す る性 質 の 特 徴 を 規 定. (9DMtinch-Komm/Grothe(Fn.44),§214,Rn.9;Staudinger/Peters (Fn.38),§214,Rn.39;Larenz/Wolf,a.a.0.(Fn.45),S.292;Mansel/ Budzikiewicz,a.a.O.(Fn.76),S.38 (96)MotivezumBGBI(Fn.83),S.343 (9TMtinch-Komm/Grothe(Fn.44),§214,Rn.9;Staudinger/Peters (Fn.38),§214,Rn.39;Palandt/Heinrichs(Fn.45),§214,Rn.4 ㈱. 前 掲 注 ⑳ 参 照 。. (99)Larenz/Wolf,a.a.0.(Fn.45),S.292;Mansel/Budzikiewicz,a.a.O. (Fn.76),S.38 aOO)MotivezumBGBI(Fn.83),S.343. 168.
関連したドキュメント
常時 測定 ※1 可能な状態において常に測定 ※1 することを意味しており,点 検時等の測定 ※1 不能な期間を除く。.
成される観念であり,デカルトは感覚を最初に排除していたために,神の観念が外来的観
ところで、ドイツでは、目的が明確に定められている制度的場面において、接触の開始
たRCTにおいても,コントロールと比較してク
今後 6 ヵ月間における投資成果が TOPIX に対して 15%以上上回るとアナリストが予想 今後 6 ヵ月間における投資成果が TOPIX に対して±15%未満とアナリストが予想
当第1四半期連結累計期間におけるわが国経済は、製造業において、資源価格の上昇に伴う原材料コストの増加
[r]
・ 世界保健機関(World Health Organization: WHO)によると、現時 点において潜伏期間は1-14