菱刈金山周辺地区の白色粘土
著者
島田 欣二, 小牧 高志, 福重 安雄
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
9
ページ
23-32
別言語のタイトル
The white clays in the circumjacent districts
of Hishikari gold mine, Kagoshima prefecture
URL
http://hdl.handle.net/10232/11120
菱刈金山周辺地区の白色粘土
著者
島田 欣二, 小牧 高志, 福重 安雄
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
9
ページ
23-32
別言語のタイトル
The white clays in the circumjacent districts
of Hishikari gold mine, Kagoshima prefecture
URL
http://hdl.handle.net/10232/00002145
菱 刈 金 山 周 辺 地 区 の 白 色 粘 土
島田欣二*・小牧高志**。福重安雄***
( ) 'RHEWHITEC][』AYSINⅡHECIRCUMJACENTDISTRICTS OFHISHIKARIGOLDMINE,KAGOSHmIⅦAPR1FFmCTURE KinjiSHIMADA,*TakashiKOMAKI** andYasuoFUKUSHIGE*** WhiteclayresourcesarcveryabundantinHishikari,KurinoandYoshimatsudistricts,ThethirteenwhiteclaysamPlesselectedinthesedistrictsaretestedbychemicalanalysis,
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fraredspectraandelectronmicroscopicobservation・ Theclaysoftheseditrictsaremainlycomposedofhydratedhalloysitcandincluded cristobaliteandquartz‘ ま え が き 鹿児島県内には窯業原料あるいは化学工業用原料と して活用しうる白色粘土が各地に広く賦存している. われわれは鹿児島県の援助のもとに,昭和39年度大 口市地区の白色粘土')昭和40年度に指宿・山川地区 の白色粘土2)について調査研究を行い,その賦存状況 や性質について既に報告した. さらに,昭和41年度においては菱刈町および栗野 町に賦存している白色粘土について現地調査を行な い,その賦存状況の観察およびこれら白色粘土の基礎 的性質を検討した.現地調査期間が短期間であったた め,その賦存状況を詳細に検討する余裕はなかったの で,主として,白色粘土の物理的,化学的,熱的性質 について検討した結果を報告する. 1.地形・地質概要 菱刈・栗野地区一帯は川内川の本流を擁し,多くの小支流が周りの山地に谷を形成している。本地域は川
内川の中流に当り,狭い河岸段丘を形成し,平坦な部
分は水田に利用されている.北には国見岳,白髪岳の 結ぶ県境の霧島連山を控える地域で300∼600mの高 さの山々を有している.菱刈・栗野地区一帯には藩政時代から開発された菱刈,布計,大口および山ケ野金
山など多くの鉱山が知られている. 率 鹿 児 島 大 学 工 学 部 応 用 化 学 教 室 * * 同 上 ; i 亀 * 水 同 上 教 授 助 教 授 助 手 本調査域一帯は第三紀火山岩よりなる山々が重な り,霧島火山,姶良火山の噴出物によっておおわれて いる.基盤岩は主として普通輝石安山岩または紫蘇輝 石安山岩であって,当地域の白色粘土もおそらく,こ れらの母岩が浅熱水作用をうけて生成したものと思わ れる.3) 血.位置および交通 菱刈および栗野町地区の白色粘土の賦存する領域は 鹿児島市より北東方約60∼70kmの距離にあり,特 に菱刈町池永,栗野町御前野,竹迫地区の粘土はパス 通り沿線に産出する.本領域のうち最大の賦存域と推 定される吉松町目倉越および獅子間野地区白色粘土は 国鉄山ケ野線菱刈駅より約7kmの国有林中に賦存し ている。山元近くまで山道が通じ小型トラックの通行 は可能である.図1は試料の採取地点を示したものである.図中
09は菱刈金山鉱床中の粘土である. 皿 . 化 学 成 分各地区より採取した白色粘土は風乾後,乾燥器中
60℃,8時間保持したものを常法により化学分析を行 い,その結果を表1に示した.表1に示すとおり,菱刈および栗野地区白色粘土は
いずれも類似した化学成分である.カオリン系粘土の
SiO2/A1203の比は1.18であるから,この比の大きな池永,獅子間野(04)は多少遊離のケイ酸分の多い
ことを示している.すなわち,石英やクリストバライ1V・X線回折による構成鉱物の判定 東芝製APX-103形自記式X線回折装置を用い,
粉末X線回折法により,原土の構成粘土鉱物および随
伴鉱物の同定を試み,その結果を図2∼図4に示し
た. 24 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 9 号 名 31.76 38.09 33.67 34.93 36.02 35.09 35.61 37.60 産 地 菱 刈 町 吉松町 〃 菱メリ町 〃 〃 ノ ノ ノ ノ 栗mfmI ノ ノ ノ ノ ノ ノ 〃 池永 目倉越 〃 11m子間野 ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ ノ 芦 谷 徳辺 御前野 竹 辿 12345678901230000000001111 kn ’ 図 1 試 料 採 取 地 点 表1菱刈および栗野地区白色粘土の化学成分(錫) 卜などのケイ酸鉱物を含有するものであろう、 池永粘土以外の白色粘土の鉄分含有量は4.07∼4.93 %であって,ほぼ一定の値を示している.山川・指宿 地区の白色粘土2)に比較して鉄分が多いので化学工業 用原料として用いる場合には脱鉄精製することが必要 であろう. 0.18 0.02 0.20 0.08 0.14 0.05 N.D、 0.10 36359705 10200010 丹$9■■⑤■● 00000000 100.51 100.32 101.79 100.39 101.00 100.88 101.69 101.40 65628220 40321221 。■●。●■●印 11111111 57330486 60493391 ①■■be●G甲 54444444 72119727 26326634 ●q町■■P■4 00100010 試料 No. Igl
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gOlK201Na201TotallSiO2/A1203 菱刈および栗野地区の粘土はいずれも類似した回折線を示し,7.2∼7.5A(001),4.3∼4.5A(020),お
よび3.3∼3.7A(002)のハロイサイトに相当する回 折線が現われている.しかし熱分析・加熱減量等の熱的 試験や電子顕微鏡観察を考慮するとハイドロハロイサ イトが加熱脱水して生じたハロイサイトと判定すべき であろう.ハイドロハロイサイトは極めて低温(50.c以下)においても容易に脱水して10Aの回折線が高
角側に移動することが知られている.4) これら試料の回折線は強度が弱く,一般にbroad であることから粘土鉱物の結晶度は低いことが想像さ れる.また,試料01,04,08,09および13では石英 45.86 42,69 42.63 42.90 43.30 41.23棚
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1.41 0.97 0.80 0.79 0.94 1.32 0.97 1.00 14.29 16.73 15.47 16.77 15.92 16.35 15.50 16.48 菱 刈 町 池 永 吉 松 町 目 倉 越 菱 刈 町 獅 子 間 野 〃 〃 〃 〃 栗 野 町 徳 辺 〃 御 前 野 〃 竹 迫 13467012 0000011103 25 1 0 2 0 2 e 図 2 X 線 回 折 図
の特徴線である3.34A,4.25Aの回折線が認めら
れ,また01および08ではクリストバライトの回折線 が現われている. 一般に指宿粘土のように安山岩質母岩か熱水作用を うけて生成した粘土には,石英,クリストバライト, アルナイトあるいはルチルなどを随伴しているが.栗 野・菱刈地区粘土にも石英,クリストバライトが混在 していることからその成因を熱水作用によるものと推 定している.lM
島 田 ・ 小 牧 ・ 福 重 : 菱 刈 金 山 周 辺 地 区 の 白 色 粘 土 O’ 20 2 e 図 3 X 線 回 折 図 02 0 6 '0 04 0 7 30一卵
05 08 0 926 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 9 号 0 11 12 i3 ’ 1 0 2 0 2 e 図 4 X 線 回 折 図
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30 V , 示 差 熱 分 析 理学電機製自記式示差熱分析装置を用い原土の示差 熱分析を行い,その結果を図5∼図7に示した. 各試料のDTA曲線はいずれも類似した曲線を示 している.すなわち,100°C附近の吸熱ピークにつづ いて575∼580°Cの吸熱ピークが認められ,さらに 920∼960°Cに発熱ピークが現われている.このよう なDTA曲線はハイドロハロイサイトの特徴であっ て,100℃附近の吸熱ピークは結合水の脱出に起因 し,575∼585℃の吸熱ピークは2分子の構造水の逸 脱によるものである, 100.C Al2(Si205XOH)4.2H20−→Al2(Si205)(OH)4 +2H20↑ 575∼580.C Al2(Si205XOH)4−−→Al2Si207+2H20↑ Kerr5)によると,ハロイサイト系粘土の構造水の逸 脱による吸熱反応は約500℃から開始し,その吸熱 ピークの形状は低温側でなだらかで高温側で急激な曲 線となり対称的でない.一方,カオリナイト系粘土で は吸熱反応の開始温度もさらに,低温側,高温側とも に同じような傾斜をもつ吸熱ピークを示すことを明ら かにしている.菱刈および栗野地区粘土もKerrの説 にしたがえばハロイサイト系の特'性曲線を示してい る。 X線回折の結果と照合して,各粘土の示差熱分析を O’ 0 2 03 04 05 0 図 5 示 差 熱 分 析 曲 線02 27 0 8 検討すれば,結晶度の低いものほど575∼580℃の吸 熱ピークの最深温度は低温となっている.また,γ一 A1203の生成に起因するといわれる’000℃附近の発 熱ピークは結晶度の高いものほど発熱ピークの最高温 度は高温となる傾向が認められた. 05 − シ
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07 − 一 03 0 6 Ⅵ 、 加 熱 減 量 菱刈産白色粘土の原土の60℃乾燥物を東工試式熱 天秤を用いて加熱減量を測定し,その結果を図8に示 した. 図8に示すように,いずれの試料も類似した加熱減 量曲線を示している.すなわち,200∼300℃までの 徐々な減量ののち,いったん平坦となるが400℃から 急激な減量を始め500∼550℃でふたたび平坦とな る.200∼300℃までの減量はハイドロハロイサイト の2分子の結合水の脱出によるものであり,400∼ 500℃の急激な減量は脱水ハロイサイト中の構造水の 逸脱に起因するものである. 0 7 0 8 0 4 0 9 01 13 00 L ) p O O 4 0 0 、 1 6 0 0 8 0 C25637200000011
。C 図 6 示 差 熱 分 析 曲 線 四一些叫 ’0 02 島田・小牧・福重:菱刈金山周辺地区の白色粘土 Cl 12 望嬰一匁一四|尼 %T1jilイJ1イ411斗上086420
1 図 7 示 差 熱 分 析 曲 線 6 2 C O 4 C O G O O B o o I o o o oC 図 8 加 熱 減 量 曲 線 0 9 四一些叫 13 Cl 0 00 0 2 0 0 4 0 0 、 6 0 1 0 B O C03 鹿 児 勘 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 9 号 03 カ オ リ ン 鉱 物 は 一 般 に O H の 吸 収 線 の 現 わ れ る 高 波数の領域があり,3690∼3700cm-1,3650∼3660cm-1, 3624∼3628cm-'の三重線および3410∼3420cm−1に 幅広い吸収をもつことを特徴とするが,菱刈および栗 野地区粘土にもこのような吸収が認められる. また,900∼1200cm−1の吸収線の分離の状態によ り,粘土鉱物の結晶度が判定されることが知られてい るが,菱刈および栗野地区白色粘土はいずれもこの吸 収線の分離が悪く,結晶度がかなり低いことを示して いる. 高波数の3000∼4000cm−1にみられる吸収線はOH 基の伸縮振動によるもので,ハイドロハロイサイトの 場合は3410∼3420cm-’に幅広い吸収が認められ本 試料においても現われている. V 皿 . 熱 膨 脹 原土に少量の水を添加して,混練して棒状試料を 作製し,これを乾燥後900°Cに焼成したものを熱膨 脹収縮率測定用試料とした.供試休の大きさは約径 5mm長さ5cmの棒状試料であって,これを立花 式熱膨脹計にて膨脹率を測定し,その結果を図9に示 した. 図9に示すように,各原土の900℃焼成物の1100℃ までの熱膨脹はいずれも類似した曲線を示し,約 1000℃までは加熱温度の上昇にともなって直線的に 膨脹し,その膨脹率は4∼5%である.その温度以上 では粘土の焼結あるいはムライトの生成にともなって 急激に収縮する. 04 13 ’2 2
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d 2 0 0 1 4 0 0 1 2 0 0 J O O O B O O cM−I 図 1 0 赤 外 線 吸 収 ス ペ ク ト ル 図 0 2 0 1 ’ ’ 3 8 0 0 3 2 0 0、
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% 5 09 07 02 09竺叫
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3 28 Soo 05 V 皿 . 赤 外 線 吸 収 ス ペ ク ト ル 赤外線吸収スペクトルにより,粘土の結晶構造につ いて検討を行った。赤外線吸収スペクトルは日本分光 KK製装置を用い,KBr法により測定し,その結果 を図10∼図12に示した. 0 2 0 0 4 0 0 6 0 0 8 0 0 I o o o pC 図 9 熱 膨 張 曲 線 04 一= 1 1 / 、 』3 12総 29 菱刈町および栗野町白色粘土の電子顕微鏡写真は図 13に示すように,いずれも類似した形態で一般に無定 Ⅸ 、 電 子 顕 微 鏡 観 察 菱刈金山周辺地区に賊存する白色粘土について,化 学的,物理的・熱的性質をしらべ,電子顕微鏡観察, 示差熱分析,X線回折および赤外線吸収スペクトルに よってその構成鉱物を明らかにした.この地区の白色 粘土は形態的には大部分が無定形球状で一部分中空管 状と木片状のものが観察され,主成分鉱物はハイドロ
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a z O O l 4 0 0 1 2 0 0 1 0 0 0 8 0 0 6 Q p clv「I 図 1 1 赤 外 線 吸 収 ス ペ ク ト ル 図いい
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形球状を呈している.このような形態を示すものに大 口産白色粘土があり,ハイドロハロイサイト特有のも のである. 各試料を詳細に観察すると,無定形球状中に木片状 あるいは中空管状のものが認められるが,これはハロ イサイトと考えられる. 括,ョ−、〆
3 2 0 0 ’ 今 0 0 1 2 0 0 1 0 0 0 8 0 0 6 0 0 −1 CM 図12赤外線吸収スペクトル図 また,l600cm-1の吸収は吸着水の変角振動によ るものであり,1200∼650cm−1の吸収のうち1100 cm--1,1000cm−1および800cm-’の吸収はSi−O結 合による吸収である.さらに,750cm−1附近の吸収 はSi−O−AIの振動による吸収で950∼900cm−1附 近の吸収はH−O−Alに起因する吸収である. Marel6)は3700cm−1,3660cm-’および3640 cm−1の吸収は粘土構造中のOH吸収によるものと し,また3440cm−1の吸収は層間水のOHに起因す るものとしている. 1 1 3 8 0 0 3 2 0 0 3 8 0 0 3 2 0 01 130 鹿 児 砧 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 9 号 菱 刈 町 池 氷
蟻
蕊 jモモ砥 蕊鍵
鷲
鴬 ;鯉騨 班 菱 刈 町 獅 子 間 野 ( 0 6 ) 図 1 3 電 子,lhI田・小牧・福軍:菱刈金'11周辺地区の白色粘土 31
菱 刈 町 獅 子 間 野 ( 0 5 )
栗 野 町 竹 迫
32 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 9 号 ハロイサイトであり,随伴鉱物は主として石英および クリストバライトである.