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植物の系統分化及び遺伝変異の誘導と解析

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(1)

植物の系統分化及び遺伝変異の誘導と解析

著者

東北大学遺伝生態研究センター

雑誌名

IGEシリーズ

18

ページ

1-89

発行年

1994-03

URL

http://hdl.handle.net/10097/49104

(2)

植物の系統分化及び遺伝変異の

誘導と解析

lG∈

東北大学遺伝生態研究センター

Inst托ute of Genetic Ecology

(3)

I GEシリーズの発刊にあたって

地球上の環境は,今,かってない大きな問題に当

面しております。世界各地で進行している生態系の

急速な変化のなかには,人間生活に深刻な影響をも

たらす可能性のあるものが,多数含まれています。一

方,人間の活動が宇宙空間へと拡がるにつれ,地球

外生態系の構築が,新しい課題として登場しつつあ

ります。生態系の崩壊を防ぎ,より豊かな環境を創

造するための科学的努力が,今日ほど強く求められ

ている時はありません。

本研究センターは, DNA分子技術を中心に遺伝

子的段階にまで到達した生物研究の諸成果を生か

し,生態系における生物の生活を一層深く解明し,釈

たな人間環境の創造に貢献することを目指しており

ます。いうまでもなく,この課題はきわめて学際的

であり,多分野の研究者との相互交流と協力によっ

て,はじめて達成されるものであります。本研究セ

ンターでは,ワークショップによる研究者間の討論

と意見交換を重視するとともに,その成果をより多

くの方々にご利用いただく出版活動にとり組んでお

り ます。ここに発刊しますIGE(Institute of Genetic Ecologyの略)シリーズも,こうした努力

(4)

本シリーズの内容は,多岐にわたる可能性をもっ

ておりますが, 3つのタイプに大きく類別されるだ

ろうと考えております。すなわち, (i)特定のテー マ,又はトピックについての解明に関するもの(* 印を付します), (ii)特定のテーマ又はトピックに

関する最新の文献,実験法の紹介に重点をおくもの

(**印),そして(iii)新しい可能性を求める学際的

交流,対話を試みるもの(***印)であります。

このIGEシリーズが,多方面の万々のお役に少し

でも立つことを願って,発刊の辞とします。

1989年3月

東北大学遺伝生態研究センター

(5)

はじめに 笹原 健夫-・・-・----・

新手法による遺伝変異の解析と生態分化

に関する最近の動向 笹原 健夫 イネ欠失色素体ゲノムの分子構造と

非光合成的機能

原田 竹雄 イネミトコンドリアDNAの勤的解析 中園 幹生,金沢  章,平井 篤志-・-・---25 ミトコンドリアDNAからみたイネ属植物の

系統分化

阿部 利徳 イネおよびアズキのRAPD法による系統

分類

ヒ島 備忘

花粉からの不定腿誘導とその細胞工学

的利用

高畑 義人

受精時における突然変異誘発とアミノ

酸アナログ耐性植物の作出

亀谷 寿昭 79

(6)

はじめに

笹 原 健 夫

植物育種においては遺伝変異の拡大とその解析および有用な変異体の選

抜は最も重要な部分である,そこで本ワークショップでは遺伝変異の誘導 と解析に関する最近の技術の進歩をとりあげ,さらにオルガネラゲノムを 中心にその動的な構造と変異および系統分化に至るまで最新の情報を盛り 込んだ。以下にその一一端を紹介する。 植物培養細胞から効率的に植物体を再生させる培養系の確立は, in lJilro での培養細胞を利用した変異源処理による変異体の誘発と選抜,あるいは 形質転換体の作出のために不可欠である。本課題研究の手始めとして,ま

ずアプラナ属作物の花粉培養系を例として,不定腔誘導の方法ノー腔発生機

構の形態的特性,人為突然変異源による変異体誘導の方法について,実験 結果を踏まえて概説する。次に,イネ荊培養による色素体DNAの変異につ いて見てみると,イネ荊培養由来のアルビノ個体には色素体DNAの大規 模な欠失分子が観察された。このような欠失変異色素体DNAの構造につ いて,正常な色素体DNAと詳細に比較した。また分析手法としてはパルス フィールド電気泳動法と二次電気泳動法が有効であることが示された0 イネオルガネラゲノムの/うち,ミトコンドリアDNAについて,その構造 および進化にともなう動的な変化を見てみると,ゲノムサイズは400kbを 超え,相同配列を介して,組換えが生じて, 5種類の環状DNAを形成して いる。またミトコンドリアDNAには葉緑体のDNAが至るところに挿入 されており,さらにトランスポゾン様の60塩基からなる断片が10ヶ所に 挿入されている。このようにミトコンドリアDNAは複雑な構造になって いるが,変異性に富み絶えず構造の変化を起こしている。次にイネ属ミト

(7)

コンドリアDNAのRFLPについて7種のプローブを用いて調べ,その多 型から遺伝距離を求め類縁性を推定するとAゲノムを持つ0.saiiua, 0.

glaberrimaおよび0. ruhogonは類縁性が高く,一つのクラスターに属

し,またAゲノム以外の0.punctata (B, BC), 0.eichingeri (C), 0.

latlforia (CD)および0. 0jWcinalis (C)はおのおの極めて類縁性が高いこ と,また0. australiensis (E)はいずれとも類縁性は低いが, 0. minuhz

(BC)や0.alto (CD)は他のBCやCDゲノムを持つものとの類縁性は必 ずしも高くないことが明かとなった。 またRFLPに代わるDNA多型の分析法として,ランダムプライマーを 用いてPCRで特異的DNAを増幅させて,その多型から類縁関係を推定 するRAPD法によって系統分類を行なった。イネ16系統を28種類のプラ イマーを用いて増幅させRAPDをみると,日本型,インド型,およびジャ ワ型に明瞭に分類することが出来た。 RAPD法はRFLP分析よりも技術 的にシンプルであることからRFLPに代るものとして用いることができ, 多型の検出が容易であることから,遺伝子地図の作成にも利用可能である ものと考えられる。 一方,生化学的変異に関する研究は,育種ばかりでなく,物質の生合成

や代謝を研究する上でも重要である。本研究課題では受精時に雌性器官を

突然変異剤で処理し,得られた後代の種子を選抜することによって,イネ, トウモロコシに於て遺伝的に安定な5MT耐性株を育成することが出莱 た。この手法は薬剤耐性株の作出に広く適用出来ることが考えられ,細胞 培養による選抜法との併用で一層効果的な変異休作出が可能であろう0

本ワークショップを通じて植物組織培養が遺伝変異の創出や遺伝子発現

の研究に有効に利用できること,またDNAレベルでの解析が全く新しい 知見をもたらし,生態分化の研究にも応用可能であるということをご理解 していただけるものと思う。 本ワークショップに御協力くださった万々に心から感謝を申し上げる。

(8)

新手法による遺伝変異の解析と

生態分化に関する最近の動向

笹 原 健 夫

1.遺伝変異の誘発と解析の歴史

1)遺伝変異の誘発

生物における遺伝子の存在は,変異の誘発によって認識される。遺伝変 異の誘発は,メンデルーモルガン遺伝学の基礎であり,非メンデルーモルガ ン遺伝学に属するとされる細胞質遺伝子についても同じことが言える0 初期の遺伝変異の誘発は,雌雄の交雑,すなわち「有性生殖」によって いた。この趨勢は,あるいは実際の育種現場でのこの手法の使用は今日で も基本的姿である。この手法の特徴は,年月をかけて農業実用上有用な形 質を組み替えによって集積することである。 しかし,この手法の使用限界は,リンネの分類の「属」までてあろう。こ

の手法による遺伝変異の誘発と見られる異種ゲノムを有する作物の育成

は,有性生殖によって古く達成きている。 例えば,小麦,十字花科植物などでは異種ゲノムを有する植物がすでに 育成されている。とくに,十字花科植物では小麦と同様なAABBCCの3種 のゲノムを有する植物が有性生殖によって育成されている。これは,遺伝 変異の誘発であるとともに「雑種強勢」の固定とも見ることができるO徒つ て,最近のイネ科,ナス科植物などでの属間の「細胞融合」などは,現象 的にはこれらの歴史からみれば特に新しいことではない。 むしろ,今後の課題は,科間の細胞融合の場合,一方の染色体が除去さ 山形大学農学部

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れていく機構の解明が必要であり,これが明らかになれば進化・生態分化 の機構の解明へとつながることになろう。 遺伝変異の誘発は,放射線,マスタードガスに始まる各種アルキレート 剤の使用によって行われてきた。この手法も,MNUなど今日でもより発展 して,使用されている。また,培養と各種変異誘発剤の併用による培養変 異の拡人も実施されている。 一方,最近の手法は, 「有性生殖」の限界を遥かに越えたことが特徴であ る。原核生物の遺伝子を真核生物に導入可能となった。その手法も,エレ クトロポレーション,マイクロインジェクション,パーテクル・ガン,PEG, TiおよびRiなど各種ベクターの使用を含め多岐にわたる。しかし, 「Gus 遺伝子」, 「ルシフェリン遺伝子」, 「各種抗生物質耐性遺伝子」など,なお レポタ-遺伝子ないしマーカー遺伝子の導入が中心となっている。 ただし,最近イネへの絹業枯病ウイルスのコートタンパク質遺伝子の導 入,イネおよびト-モロコシへの除草剤抵抗性遺伝子の導入など「実用形 質」の導入が成功している。今後の課題は,これらより農業実用的に有用 な形質に関与する遺伝子をマーカー遺伝子に連結し,作物特性,種特性を 克服して任意に導入可能な手法の開発が重要となろう。 一一一万,核遺伝子の塩基配列の解明と遺伝子との対応の解明が進展してお り,特に発現調節領域の改良および有用遺伝子の切り出しが進展している。 このうち,遠縁・近遠植物(作物)からの耐病性遺伝子の栽培種への導 入は,イネいもち病の場合を例にとれば,長年月をかけて有性生殖の手法 によっても取り組まれてきた(図1)。しかし,耐病性の基本的課題は,輿 型的な例としてイネのいもち病遺伝子導入に見られるように,病原菌側か らみた「レース分化」と作物側からみた「抵抗性崩壊」の歴史の繰り返し である(図2)。新手法がこの基本的課題の解明にどれだけ迫れるかが重要 な課題である。

2)遺伝変異の解析

遺伝変異の解析は,古くは「連鎖分析」, 「トリゾミック分析」, 「モノゾ ミック分析」などが中心であったが,最近の動向は,制限酵素断片長多型 とウオーキング法による塩基配列と染色体の物理地図の解明,遺伝子との

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農林10号× - (関東53号) - クサブェ - 抵抗性崩廉 嘉子打(P1-k) (中間母本)  1960年    1963年

L l17年_‥  】 」。年」

(近畿4 5号×近畿1 1号) l zenHbX59 7 → 54B C-68-54B C-68×ハツニシキ 1950年      1 L    ー15年 フクニシキ 1964年 1 6年 抵抗性崩壊 1969年 図1イネいもち病抵抗性遺伝子導入と抵抗性崩壊の暦史 (渡辺, 1980年から改写) 対応の解明へと進展している。さらに,先述のごとく,主要作物自体およ びそれから遠縁の植物からの実用形質に関与する遺伝子の切り出し,それ の重要作物への導入についても着実に取り組みが行われている。 現在は,核遺伝子よりも遥かに小さい葉緑体およびミトコンドリア DNAなど細胞質遺伝子が解析の対象となっている。しかし,植物引いては 動物の生命維持の根幹に関わる光化学系と炭素還元回路系については,こ れらオルガネラDNAの解析とともに関与する核DNAについても行われ る必要がある。 C3とC。型植物の有性生殖による交雑,さらに両者の細胞融合が必ずし も成功していない。それ故, C3型植物の光呼吸によるエネルギーの損失が 起こらないような変異の誘導と解析が必要である。 光呼吸は,光化学系と炭素還元回路系の速度が後者が前者の1/10-1/ 100であることに起因するといわれている。従って,光化学系で生成する高 エネ)i,ギ-化合物であるDPNH2をより有効に利用し得る変異の誘導が 必要である。 一方,ミトコンドリアDNAが担う呼吸回路の変異解析の目標はどこに 置くべきであろうか? Ql。-2の反応速度をダルにするのも一つの戦略 であろう。このようなことが可能になれば,熱帯,亜熱帯に限らず高緯度

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5 確 病 ま で の 年 数 4 3 ;書伝子型 P卜k F-l-k Pいk Pl-k Pl-a Pl-A 品  種1一桁  峰光 クり Ⅰ クu-I ティ1        ウユー二.Jl たち粍なみ 紙抗牲 lLl米TIEll)稚苗干江 北支太米 古手江 芯子江 壮 掘 て蕃 T まし = やに T- M pi 耽 -aa, 巾_P 、y i r L 列 1 r p 加 ヽ 「 p   ク

芯17'一子工  芯子江 筋子7工 Tadukan TaLtukarl Zenlth Zen(th

戦1才旭北沖逆 費 知 落 城?l 鳥 山 烈 麦 畑 神勅ll 青 森 山 形 諸 島 山 形 '62・'64 'u5-'仙 '6卜●63 '64-'69 '61--GLL '63・.64 -6卜■67 't,2JLi9 JL7-'69 '朗JL,9 ■L7-'77 1 栃 未 古 山 埼 玉 群 馬 秋 口 山 形 '61-'83 'tiか'64 'tsl・'63 ■631'65 '631'uS 'l娼・■t刃 図2 イモチ病抵抗性遺伝子導入と抵抗性崩壊 (渡辺, 1980から作図)

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地帯での収量増加に結びつく可能性がある。

ただし,一個の器官で測定した呼吸速度と群落単位で測定した呼吸速度

は異なる。後者の場合は,群落の構造と密接に関係している。すなわち,秤 落の葉面積指数に比例し,群落が倒伏などによって乱れていれば,同じ葉 面積指数でも呼吸速度は高くなる。この点は,後述の植物の組織化との関 連で検討しておく必要がある。

2.生態分化と変異の誘発・解析

1)新手法と生態分化

これまで,形態的形質と若干の化学薬品に対する反応などの特徴を用い て,多変量解析などの手法によって,生態分化が研究されてきた。アイソ ザイム分析を取り入れた場合もなおこの範暗に入ろう。しかし,すでに進 行しているように,アミノ酸配列ないし塩基配列などのホモロジーを用い た手法,さらに品種・雌雄同定などにすでに使用されているフィンガープ リント, PCR, RAPD法などが,今後の生態分化に関する研究の主力とな り,生物間の類縁関係,進化の道筋がより鮮明になろう。 生態分化に関するこのような手法の適用は,遺伝変異の誘発と解析に とって極めて重要である。すなわち,解析の成果は,そのまま有用遺伝子 のホモロジーを利用した,遺伝子導入に利用可能である。貯蔵タンパク質 など一定の時期に集中的に発現する物質についての解析が進んでいるが, 生命現象の根幹に関わる物質についても解析を進める必要がある。

2)生態分化と環境

生態分化は,とくに環境要因と生物との相互作用の産物である。生態分 化のDNAレベルでの解析と環境要因,さらには進化の過程での環境の変 化への適応の仕方の関係の解析が進むことが期待される。現在は,機能し ていないDNAも,かっては重要な役割を果たしていたと思われる。同様 に,遺伝子の重複の意味も解明されよう。 今日的課題は,アトラジン,パラコートなどの除草剤に見られるように, 薬剤抵抗性雑草が出現していることである。この課題も,先述の耐病性の 場合に酷似している。環境負荷を減少させるためには耐病性の場合と同様

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な課題が新手法に求められていると言える。

3.分子水準の改良と植物の組織化

食糧生産ないし農業生産は,一般に群落単位で行われる。これまでの収 量性向上のための改良は,群落一個体一器官までの水準で行われてきた。器 官以下の組織一細胞一細胞内小器官一分子水準の改良は,上述のように緒につ いた段階である。属の異なるイネとヒエ(C3とC4型植物)の葉組織構造は 異なる。 「ヒネ」のたどった運命は,このような組織構造の異なる作物と植 物の細胞融合の困難さを示唆していると見られる。

葉緑体または重縁素など太陽エネルギー固定に関与する細胞内小器官お

よび高分子タンパク質は,炭酸ガスを吸収し,酸素を放出するわけである が,これらは裸のままで大気に曝されているわけではない。作物ないし植 I. 物質生産と 光合成の 反応速度 (秒) 収穫 細胞分裂と 成分合成、 生長 10+1 100 炭素同化 10 4 光化学系L lⅠ 炭素還元物質10 ・9 光圭子吸収、 タロロヒイル 励起 10 15 (反応速度はKAMEN. 1963から推定) 組織化の水準

細胞内

分 子 原 子

素粒子

(プ),I,

A 8 c

Ru 円U.1日==u

Y車Ⅰ曲Wl◎I?

図3 植物の組織化の階層性と光合成の時系例の模式図 A :従来の育種および栽培技術で改良可能な水準 生態.生理学的水準 物理、化学的水準 改良のためには新手法の開発が必要であり,とくにCに関しては 「遺伝子工学」などの手法が有効となろうC

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物は,分子一細胞内小器官一細胞一組織一器官一個体一群落に組織化されてその 機能を発揮している(図3)。従って,このような組織化された状態で改良

された分子(葉緑素など)の能力を発揮できなければ改良の意味がなくな

ることになる。 これまでの研究では,例えば炭酸ガスの拡散は,分子一細胞内小器官一細 胞一組織一器官までは炭酸ガスの濃度勾配による分子拡散であるとされてい る(図4)。さらに,器官一個体一群落水準において太陽エネルギー獲得を支 配する法則は,真の溶液のある一定の深さの光強度を推定するLambert-(Cl: :光合成活性中心の炭酸ガス濃度- 0? ) 図4 光合成活性中心への炭酸ガス分子離散のモデル (矢吹, 1985から改写) 注: 1).光合成速度: P。-(C。-Ci)/ira+(raxr。)/(rs+r。)+rm〉-Co/∑r 2). ra, rs, r。, rmはそれぞれ,葉面境界層,気孔,クチクラ及び葉肉の 拡張抵抗。 3).下線部分( )は,分子と分母をr。で割ると,分子はrsとなり, 分母は1+rs/r。となるorcは通常無限大なので分母は1と-なり,下線部分 は,結局分子のrsとなる。 4). raとrsは気層における拡散であり,rmは液層における拡散であるo 液層拡散は,気層拡散の1/10,000の速度であるo しかし,原形質流動な どによって炭酸ガス拡散速度はより速まっていると見られる。 5).静止気層〔菓面境界層〕の厚さは風速が強まれば薄くなる。

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葉面積層(∑Fl)

0  1  2   3   4   5   6 図5 植物の違いによるKの違いを示す模式図 (門司,佐伯, 1953から改写) 注:巣子葉と双子葉植物では減光係数(KlとK2)が異なり,双子葉植物 型では群落内で急激に減光する(K2>K.) Ln (I/Io)ニーK∑Fl (Lambert-Beerの法則)真の溶液に適用される Lamber卜Beerの法則が群落の葉群に適用される0 Beerの法則であるとされている(図5)。真の溶液と植物の葉群における光 強度が同じ法則で規定されていることの発見は重要である。 これらのことは,各種の分子水準の改良が,より上位の水準に関与する 法則の束縛によってその能力を発揮できない場合があることを示唆してい る。目下のところ精力的に研究されている細胞内小器官の遺伝子の解明,そ の後の各種変異の作出などがどのようにこれまでの研究成果と噛み合うか が今後の課題であろう。 同じように,核内遺伝子で太陽エネルギー,大気成分と関与する形質の

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改良の場合に問題となる。この課題は,病原菌との相互作用が問題となる 場合よりも複雑である。

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イネ欠失色素体ゲノムの分子構造

と非光合成的機能

原 田 竹 雄 1.は じ め に 高等植物の色素体は細胞の分化の方向に従い,葉緑体,白色体,有色体 などへとその形態を変える。色素体のDNAには光合成に関与する多数の タンパク遺伝子がコードされていることから,色素体の主機能が葉緑体と しての光合成であることには疑いの余地がない。植物細胞には全能性があ ることから,葉緑体以外の色素体からも葉緑体となることが可能である。こ のため,どのような色素体にも完全なゲノムが保持される必要がある。事

実,非光合成下では光合成に関与する遺伝子群の発現はメチル化や翻訳の

段階で抑制されてることが判明している。 寄生植物の一種であるEplfagus uirginianaの色素体DNAは,光合成に 関与する遺伝子群を欠失しているが, rRNA・tRNA・リボソームタンパク 遺伝子・数個のORFが残されている。このことから,この寄生植物のゲノ ムには非光合成的な生理機能を有する何らかのタンパクがコードされてお り,この転写・翻訳のために色素体ゲノムが残存している可能性が示唆さ れている4'。--一一万,植物の5-ラミノレプリン酸(ポルフィリンの前駆物質)は グルタミン酸から生成されるが,この生合成の過程には,色素体DNAに コードされるtRNAglu分子が必要とされる9)o ポルフィリンはクロロフィ ルやチトクロームなどの電子伝達系に機能する必須化合物である。 Howe and Smith6)は,非光合成植物の色素体DNAがこのtRNAgluを生産する 弘前大学農学部

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ためのRNAポリメラーゼを生産しているものと考えている。 イネ,コムギ,オオムギの荊培養による再分化個体にはアルビノが多発 するが,アルビノの中には色素体DNAに欠失構造を示すものがある。イネ の葉緑体DNAは全塩基配列が決定されており,色素体ゲノムの変異に関 しても優れた研究材料となる。ここでは,イネ色素体ゲノムの大規模な欠 失構造,その欠失形態から判明した非光合成的機能,さらにこれらの構造 的特徴が葉緑体ゲノム内にも観察されたことについて紹介したい。

2.アルビノの欠失色素体DNA

薪培養由来のアルビノより全DNAを抽出し,制限酵素処理後ゲルプ ロット解析で色素体ゲノムを検討した。イネのミトコンドリアゲノムには rbcL-atpB-trnM-trnVの葉緑体遺伝子クラスターが存在する。このため, この領域を含む葉緑体プローブDNAは,ミトコンドリアDNAの相同領 域をも検出する。すなわち, mndlll分解の全DNAに対する結果は, 9.5 kbpの色素体DNAと6.9kbpのミトコンドリアDNAが検出される。し かし,いくつかのアルビノ植物では6.9kbpの断片のみが検出されたこと から,色素体DNAのrbcLの領域が欠失していると判断された。そこで, 葉緑体DNAの全域をカノトするイネのプローブDNAを使用し欠失領域 を調べたところ,アルビノ20個体のうち7個体では断片の欠夫が認められ た。すなわち,小単一一配列(SSC)領域が検出されないもの, SSC領域に 加え逆位反復配列(IR)がないもの,さらに, Pslト2の領域近傍のみしか 残されていないものが存在した。これらの検出パターンには欠矢の結果生 じたと考えられる新たな断片も認められた。図1に示すように欠矢の領域 はアルビノ個体によって異なったが,欠失色素体DNAの全てはPsII12の 領域を保持していた。 アルビノの根より誘導されたカルスから,再度再分化を試みたところ,全 てアルビノとなった。これらの再誘導カルスはもとのアルビノと同一一の欠 失領域を示したことから,欠失色素体DNAはカルス内で保持されること が判明した。

(20)

図1欠失色素体ゲノムの残存領域。曲線5はC20カルスの領域を示す。

3.欠失色素体DNAの構造解析

アルビノ由来カルス内の色素体DNAの構造解析を進めた。残存する領

域の制限酵素認識部位は,コントロールとして使用した種子由来カルスの DNA及び塩基配列から構築された物理地図と一致するものであった。よ り詳細な構造を検討するため, C20カルスを使用して解析を進めた。まず, プローブDNAが図1の領域Aを有している限り, 6種の制限酵素断片総 てに2本のバンドが観察された(図2B)。プローブDNA領域と検出される 断片のサイズから,図2Aのドット領域が消失し末端が形成されたと判断 された。もう一方の末端部位を決定するため,図1の領域Bを含むプロー ブを使用しDNAゲルプロットを行った結果, atpHの領域側が失われて いること,すなわち, atpIの3′側で末端が形成されていることが明らかに された。

(21)

B

pst I BamHI HindIII HincTI EcoRI KpnI

1 2   1 2 1 2  1 2   1 2   1 2 図2 A.塩基配列から求められた物理地図。 B., HincII 0.8kbpをプローブと したDNAゲルブローット解析.レーン1;緑葉,レーン2; C20カルス 図2Bに示す各制限酵素によって検出される2本のサイズは,大きなも のは小さい断片の2倍であった。また,もう一方の末端においても同様の 結果が得られた。これらの断片は他の領域をプローブとした場合には検出 されないことから,両末端が向かい合った形式で連結しているものと結論 された。さらに,パルスフィールド電気泳動により,無処理のDNAでは19, 38,57,76kbpと単量体から4量体と考えられる各分子が認められること から, 19 kbpの線状分子がHead-to-Head, Tail-to-Tailの様式で連結し た分子種が存在しているものと判断された(図3)0 図4BはAIOカルスの色素体ゲノムの全領域を検出するプローブDNA を用いて, 1次元目は1XTAEで2次元目は50mM NaOHで電気泳動を 行った結果である。 AIOの色素体は図4Aに示した約19kbpであり,さら

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PFGE

図3 C20色素体ゲノムとその構造。写真はパルスフィールド電気泳動の結果。 にC20と同様,単量体から4量体分子が確認されている。これらの分子に おけるPstIの切断片のサイズを図4Aに示したが,これらの全ては1次元 目で確認された。しかし,同一の消化断片をアルカリ条件下で泳動した場 合にはそのうち4.4と11kbpが消失してしまう。2次元電気泳動の結果は, これらの2つの断片がアルカリ条件下でサイズを倍加したことを明確に示 した(図4B)。アルカリ変性ではDNAの2本鎖が解離し1本鎖になる8)0 このため, AIO色素体DNAの両末端がヘアピンで閉じていることが判明 した。同様の結果はC20カルスにおいても得られた。 両末端がヘアピンで閉じており, Head-to-Head, Tail-to-Tailの連結 様式で多量体を形成する構造は,動物ウイルスである,ワクシニアウイル スDNAにおいても報告されている。このウイルスの複製初期における電

子顕微鏡観察やラベリング実験から,末端に複製開始点が存在するものと

考えられている。また,末端のヘアピン部にニッタが形成され,フリーの 3′末端が複製のプライマーとして機能するという複製モデルが提唱され ている1)。ヘアピン末端を有する線状のプラスミドDNAがRhizoctonia

(23)

11 3B. 88 .39.   22   .33. 8JB .39」」」 山 39    22   .39. 8.8 .39.   22   .39.L・4 4L. 39.   22     39. 88 .39. ll ュnd NaOH 8.8      3.9 図4 A. AIO色素体DNAの構造。 B. 2次元電気泳動の結果。 sohmiにも報告されており,ワクシニアウイルスと基本的には同じ複製機 構のモデルが考えられており7),ヘアピン構造及びHead-to-Head, Taiレ to-Tailと連結する多量体分子種の構成機構を説明可能である点で注目さ れよう。

4.色素体DNAのコピー数と色素体の形態

A5欠失色素DNAのコピー数をゲルプロット解析のシグナルの強さか ら概算したところ,正常な色素体DNAを有する種子由来カルスのDNA

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表1葉およびカルス内の色素体DNA量の比較 ミトコンドリア* i i ツ「 緑葉 10,000 アルビノの葉 5,000 種子カルス 迭テ 8,000 A10カルス 迭テ 8,000 ★核ゲノム当たりのコピー数 図5 AIOカルスの電子顕微鏡写真 量とほぼ同レベルであり,細胞当たり約8,000コピー存在していた(表1)0 また,このコピー数は同-lカルス内のミトコンドリアDNAのコピー数と ほぼ一致していた。 次にカルス内の微細構造を電子顕微鏡により観察したところ,内部にデ ンプン粒を蓄積している色素体が観察された(図5)。その大きさは径が約 0.5JJmのやや楕円形であり,ミトコンドリアに比べ小さかった。緑葉の葉 緑体サイズは長径が2-3/Jm,短径が約1/`mであることから,その容積比 はおよそ1/40である。種子由来のカルスでも同様の色素体構造が多数観察

(25)

されたことから,欠失色素体ゲノムを有する色素体も活発に分裂を続けて いるものと判断された。

欠失ゲノムを有する色素体内では,独自の翻訳系が機能しないことから,

色素体の分裂およびそのゲノム複製には,色素体ゲノム上の遺伝子の翻訳

が必要とされないことが明らかにされた。

図6 A. C20およびAIO色素体DNAの領域。B. tmEに特異的なオリゴヌク

(26)

5.欠失色素体DNAからのtRNAの転写

AIOおよびC20カルスはそれぞれ約19kbpの欠失色素体ゲノムを有し ているが,その残存領域が異なる(図6A)。しかし,両者間には共通する 領域約3kbpがあり,この領域内にtRNAgluが存在している。tRNAgluは 前述の通りポルフィリン合成系に必須のtRNAであることから,この遺伝 子の転写が予想された。そこで合成オリゴヌクレオチドDNAをプローブ とし, RNAゲルプロット解析を行った。まず, AIO色素体DNAのみに残 存するtrnKについて検討したところ, C20カルスのRNAに対してはシ グナルが得られないのに対し,AIOおよび正常カルスでは約2.7kbと約70 bにシグナルが得られた。 trnKには約2.6kbpのイントロンが存在してい ることから,スプライシングの前後の転写産物が検出されたと判断された。 次に同様の解析をtrnEについて行ったところ, AIOとC20の両カルス RNAに転写物のシグナルが得られた(図6B)0 以上の結果は,欠失色素体ゲノムからもtRNAが転写されることを示 す。 trnEは欠失色素体ゲノムに共通して残存する。また,この遺伝子はポ ルフィリン合成系に不可欠の分子であることから,分裂細胞と■して生存す るためには色素体ゲノムのこの領域が不可欠であるものと考えられた0

6.正常色素体DNAの多量体分子とヘアピン末端構造

緑葉および種子由来カルスを使用し,パルスフィールド電気泳動を行っ た。その結果,Pst1-2をプローブとした場合,4本のバンドが確認された(図 7)。各サイズは,約130,260,390,520kbpであり,イネのゲノムサイズを 基本とする倍数分子であ-;たo これらのバンドはミトコンドリアDNAの プローブcoxIを使用した場合には確認されなかった。 次に,図4と同じ手法の2次元電気泳動による色素体DNAの解析を 行った。図8に示すように,緑葉と種子由来カルスを制限酵素無処理で泳 動した場合,対角線上の強いシグナルに加え2次元目で分子サイズが1次 元目の2倍となるライン上にも連続したシグナルが確認された。このこと はアルカリ変性条件下でヘアピン構造が検出されたことを意味することか

(27)

_.図7 緑葉および種子由来カルスの色素体ゲノムのパ/レス フィールド電気泳動の結果

ら,正常な色素体や葉緑体にはヘアピン末端構造を有するDNA分子群が

存在すると考えられた。オオムギ葉緑体では,この様なヘアピン末端を有 する分子は全体の約2%であると概算されているが3),今回得られたイネ の実験結果からは,その量比を算出することは出来なかった。 7.おわ り に

欠失色素体DNA分子を有するカルスの増殖速度は,正常な色素体

DNAを有する種子由来カルスとほとんど同じであった。また,これらのカ

ルスの色素体DNA量を概算したところ,活発な増殖を続ける懸濁培養条

件下ではミトコンドリアDNA量とほぼ一致するコピー数/ゲノムが存在 していたo光合成を行わないカルス内で,何故このような高コピー数の色 素体DNAを必要とするのであろうか? もし,カルス増殖のためになん

らかの生理学的な機能を有する遺伝子が色素体DNA上に存在するとすれ

ば,その遺伝子は欠失DNAに共通して残存する領域に存在することにな ろう。一方,この様な大規模な欠失色素体DNAはrRNAや多くのtRNA

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2nd (NaOH)

i.   Lr)  O n a t0    寸      でヾ 寸.6 S.9 C.寸 (山<トこSl ll C.e 0.e 撰8 イネ葉緑体DNAの2次元電気泳動の結果 遺伝子が失なわれていることから,翻訳産物が存在するとは考えられない。 今までの実験結果から得られた結論は次の通りである。 tRNAgluが核コードのRNAポリメラーゼにより転写される(色素体ゲ ノムにコードされるRNAポリメラーゼによるものではない)。この tRNAgluがカルス細胞内のポルフィリン合成系に機能する。

葉緑体ゲノムが物理地図としては環状であるが実際は単量体から4量体

までの線状分子として構成されていることがホウレンソウなどで明らかに されている2,5)。イネのカルス内の色素体及び緑葉の葉緑体においても,ゲ ノムサイズを基本とするoligomericな分子種の存在が明らかにされた。こ れらの線状DNA分子の末端はヘアピン構造であるのか? また,ヘアピ ン構造は複製起点として働くのか?残された課題の解明が待たれる。

(29)

参考文献

1) Baroudy, B.M., S. Venkatesan and B. Moss : Cold Spring Harbor Symp. Quant. BIol. 47 : 723-729. 1983.

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7) Miyashita, S., fI. Hirochika, J.Ikeda and T. Hashiba: Mol. Gen Genet

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の動的解析

中圃 幹生・金沢  章・平井 篤志

Ⅰ.は じ め に ミトコンドリアは細胞呼吸に関係する多数の酵素を含み,エネルギーの 変換・産生に重要な働きをする細胞内小器官である。ミトコンドリアの中 には独自のゲノムが存在し,その遺伝情報を発現する系がある。しかしミ トコンドリア内にある遺伝情報はこのオルガネラを支えるのに十分ではな く,大部分を核の遺伝情報に助けられて初めて自分自身を維持している。ミ トコンドリアは周知の通り動物細胞にも存在し,早くからミトコンドリア DNAの全塩基配列が決定されその全容が明らかとなっているo・-それによ ると,晴乳類のミトコンドリアDNAは16kb前後の・種類の環状DNA で, 22種のtRNA遺伝子の他に14個の遺伝子がコンパクトに収められて いる。さらに動物種問でゲノムの大きさや構成の大きな変動はみられない。 ところが,高等植物のミトコンドリアDNAはアブラナ属の200kb前後か らマスクメロンの2,400kbまで様々な大きさが報告されており,動物のミ トコンドリアDNAに比べて非常に大きくかつ複雑である,.同じ種でもミ トコンドリアゲノムの大ぎさや構成が異なっていることが知られている。 その原因として,高等植物のミトコンドリアDNAの分子内・分子間での組 換えを伴う再編成が比較的頻繁に行われているということが挙げられる。 下等植物ではミトコンドリアDNAが比較的単純な構造を-していることか ら,ゲノムの再編成の頻度が高いのは高等植物のミトコンドリアゲノムの 東京大学農学部放射線遺伝学研究室

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特徴といえるかもしれない。

また,作物の育種において非常に重要な性質である細胞質雄性不稔の遺

伝形質が,ミトコンドリアゲノム上に存在すると指摘されて以来,細胞質 雄性不稔に関連づけてミトコンドリアDNAの解析が精力的に行われてい る。

ⅠⅠ.ゲノムの構造と再編成

高等植物のミ`トコンドリアDNAはゲノムサイズが大きく複雑であるの で,植物体から単離したDNAで構造を解析するのは難しい。また同じ理由 から葉緑体DNAをクローニングしたときのように,プラスミドベクター を用いてクローニングして解析を行うのは一部の例外を除いて非常に国難 である。そこでミトコンドリアDNAの場合には,制限酵素で部分消化した 断片をコスミドやファージベクターにクローニングして, DNAライブラ リーを作製し構造を解析する方法が一般的である。いくつかの特定の遺伝 子をプローブにしてDNAライブラリーの中から相同性のあるクローンを 選抜し,各遺伝子付近の物理地図を作製する。さらにその断片の両端をプ ローブして隣接する領域のクローンを選抜していく"genome walkingM という手法で,いくつかの植物種のミトコンドリアDNAの制限酵素地図 が得られている。 高等植物では, 1984年にPalmerらによってカブ(B71aSSica campestris) のミトコンドリアDNAの制限酵素地図が作製されたのが最初であるI)。彼 らは,カブのミトコンドリアDNAは218kbの環状構造で,その内部に約 2kbの反復配列があり,その反復配列で相同組換えを起こし135kbと83 kbの環状分子が現れることをみつけた。その後,トウモロコシ,コムギ,イ ネなどのミトコンドリアDNAの制限酵素地図が次々に報告された。これ らのゲノムはカブに比べてさらに巨大で,多数の反復配列が存在すること が明らかとなった。これらの反復配列間で組換えを行うことによって,様々 な大きさの環状分子が多数現れることが示唆される。しかし唯 一の例外は シロガラシ(BylaSSicahirta)のミトコンドリアDNAで208kbの単一の環 状分子からなる。

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このような多数の分子が現れる複雑なゲノム構造(multi-partite構造) をとって,いったいどのようにDNAが複製されるのであろうか。この疑問 を説明するために,ミトコンドリアゲノムの全領域を含む単一の環状分子 であるマスターサークルが想定された。つまり,マスターサークルの形で DNAを複製し,そのあと反復配列間で組換えを行い様々な大きさのサブ ゲノムが生ずるというものである。図1にイネで想定されたマスターサー クルを示してある2)0 しかし,マスターサークルの存在は実験的には確認されていない。最近,

Levyらがトウモロコシ(Black Mexican Sweet cultivar)のミトコンド

リアの巨大DNAを,パルスフィールド電気泳動法により分離しサザンハ イブリダゼ-ションをおこなったところ, 120,115,70,60,30kbのサブゲ ノム環状分子が存在することが明らかとなった。その中にもマスターサー rz・n26 atp9   atp6 図1イネで想定されたミトコンドリアDNAのマスターサ」クル。 内側に重複配列,外側に遺伝子の位置を示す。

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クルに相当する大きさの分子は検出できなかったそうである。 高等植物のミトコンドリアゲノムの特徴として分子内・分子間での再編 成の頻度が高いことがある。例えば,トウモロコシにおいてN型(稔性)と CMS-T(細胞質雄性不稔性),さらにはその稔性回復系統V3のミトコンド リアDNAの制限酵素地図が作成されているが,それぞれのゲノムの大き さや構成が異なっており,しかも共有している反復配列も一部しかないと いうことである。これは明らかに組換えによる配置の変換がダイナミック に行われた結果であると考えられる。また,ミトコンドリア内でゲノムの 再編成がダイナミックに行われていることを示唆する分かりやすい例とし て,細胞融合によって種間体細胞雑種を作成してミトコンドリアDNAの 解析を行うと,両親の2種にはみられない新しい分子が出現するという現 象がある3)。これは細胞融合を行うと高頻度にミトコンドリアが融合する らしく,その中でヘテロなミトコンドリアDNAが相同領域を介して組換 えを起こしたためだと考えられる。 高等植物ミトコンドリアDNAの一部の塩基配列をみても偽遺伝子が比 較的多く,またカブのミトコンドリアゲノム(218kb)においては全体のう ちの約30%(61kb相当分)しか発現していないという報告があり,高等植 物以外の生物に比べてゲノムサイズが大きいわりには機能している遺伝子 はあまり多くないのではないかと予想される。ではなぜ高等植物のミトコ ンドリアゲノムだけサイズが大きく,ダイナミックな再編成が起こってい るのであろうか。今のところの疑問を解決するにはまだまだ情報が少ない ので,より詳細な機構解明のためにはさらに分子レベルの解析が必要であ る。

ⅠⅠⅠ.葉緑体DNAと相同性の高い配列

植物の細胞核,葉緑体,ミトコンドリアのゲノムの進化の過程で,オル ガネラ間のDNAの転移が幅広くさらに頻繁に行われているということが 最近の研究で明らかになった。転移の方向性として葉緑体からミトコンド リアの他に,葉緑体から核,ミトコンドリアから核,核からミトコンドリ アの例が報告されている。なぜか葉緑体への転移は認められないが,その

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理由として葉緑体ゲノムは遺伝子がコンパクトに収められているので,

DNAの転移があった場合に機能的な遺伝子が壊れてしまうことが挙げら

れる。 Ellisはこのような細胞内の2つ以上のゲノムの中に存在するDNA を"promiscuous DNA"と名付けた4)。 植物ミトコンドリアゲノム上にpromiscuous DNAの存在が明らかに なったのは,1982年にSternらによって葉緑体DNAの16SrRNA遺伝子 を含む12kbの断片と相同性の高い領域が,トウモロコシのミトコンドリ アゲノム上に存在することが確かめられて以来のことである。その後,様々 な植物種のミトコンドリアゲノムの中に葉緑体DNAと相同性の高い領域 が存在することが分かった。イネではミトコンドリアゲノム中の葉緑体 DNA由来の断片がすべて特定され,その塩基配列も明らかになっている Im26 aLp9    aLp6 図2 イネミトコンドリアゲノム内の葉緑体DNAとの相同配列。 内側の葉緑体DNAの番号で示した配列がミトコンドリアDNAの同じ 番号の場所に挿入されている。

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(図2)。それによると挿入された断片は16本あり,その長さの合計はミト コンドリアゲノムの約6%を占めていた5)。 植物ミトコンドリアゲノム上への葉緑体DNA断片の転移はatrandom であり,移っている領域も植物種によって様々である。ここで興味が持た れるのは,長い進化の過程でいつ葉緑体DNA断片がミトコンドリアゲノ ムへ転移したのかということ,さらにはある特定の時期に移ったのかまた は徐々に移ってきたのかということである。下等植物(苔類等)のミトコ ンドリアゲノム七こは葉緑体DNAと相同性のある領域が存在しないことか ら,葉緑体DNAの転移の時期は高等植物に分化した後だと予想される。 Nugentらはアプラナ科植物を6種類選び,いくつかの葉緑体DNA断片 をプローブにしてミトコンドリアDNAとサザンハイプリダイゼ-ション を行ったところ,葉緑体DNAが徐々に転移してきたことを示唆するよう な結果を得ている。このことより葉緑体DNAの転移は,進化上のある時期 に短時間に移ったのではなく徐々に移ったと考えられる。 葉緑体DNAのミトコンドリアゲノムの転移の機構として少なくとも次 の4つが考えられる。 (∋葉緑体とミトコンドリアが直接接触(融合)する ことによる両ゲノム間のDNAの組換え, (診トランスポゾンやウイルス 様の因子の介在による転移, ③葉緑体DNA断片をミトコンドリアが取 り込むことによる転移, ④葉緑体転写産物をミトコンドリアが取り込み, 逆転写を伴った組換え。現在のところ,どれかの可能性を強く支持するよ うな証拠はないが,エノテラのミトコンドリアゲノム上に逆転写酵素と相 同性の高いORFが見つかって以来,可能性④が注目されている。この可能 性を支持するものとして,一部のRNAがミトコンドリア内に積極的に取 り込まれているという証拠がある。つまり,植物のミトコンドリアゲノム 上にはタンパク質を合成するのに必要なtRNA遺伝子がそろっておらず, 不足分のtRNAを細胞質から直接取り込むことによって補っているとい うことである。この他にササゲの核のゲノム上にあるcoxII (cytochrome oxidasesubunitII)遺伝子やペチュニアのミトコンドリアゲノム上のPcf 遺伝子にみられるcoxII偽遺伝子の塩基配列は,転写産物がRNAエディ ティングやスプライシングのようなプロセシングを受けた後の配列と同じ

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であるという証拠がある。このことはRNA転写産物が逆転写されて他の ゲノムに組み込まれたことを示唆するものである。また,ミトコンドリア ゲノム上のある葉緑体様tRNA遺伝子の中にはコードしている領域の相 同性は90%以上あるのに対し,その隣接領域の相同性はほとんどなくなる ことから, tRNAが逆転写されて組み込まれたのではないかと予想されて いるものもある。しかし,可能性④を否定する証拠もある。図3に示すよ うにイネのミトコンドリアDNAには,葉緑体DNAのrbcL,atpB,atpE, trnM, trnVを含む約5.4 kbの断片が,葉緑体DNA上の別な領域のゆ12, trnHを含む約2.1kbの断片とつながった形で存在するが, rbcLとatPB

の転写される向きが違うにもかかわらず両遺伝子の間の塩基配列まで保存

されている。このことは明らかにRNAレベルではなくDNAレベルで転 移したことを示唆するものである。これらのことより葉緑体DNAの転移 の機構は単一ではなく, DNAレベルで転移したものもあれば, RNAレベ ルで転写し逆転写されて組み込まれたものもあるのかもしれない。 イネのミトコンドリアDNAの中には葉緑体DNAのrPoB,ゆoCl, rpoC2の一部を含む約6.8kbの断片が挿入されている。おもしろいこと に,図4に示すようにこの挿入配列のrPoB側のジャンクションイ寸近の配 列が,ミトコンドリアゲノム上に別な領域にも存在することが分かった。こ のことはまず葉緑体DNA断片がミトコンドリアゲノムに転移し,そのあ と分子内の再編成により一部の配列が他の領域に重複したことを示してい る。 ミトコンドリアゲノム上にある葉緑体様DNAのほとんどが端の切れた (truncated)遺伝子であったり,挿入,欠夫や塩基置換のた.めに途中で終止 コドンが出てくる遺伝子であったりして,ミトコンドリア内で機能してい

//Illl Oltト137 'I/♪IJ (I/PLTで ¢hlTV

JbL L ITllM ()Tくtt82 /I'/_' ゆり)/_!'' I kl) 図3 イネのミトコンドリアDNA上にある葉緑体DNAと相同配列(丑 :葉緑体DNAとの相同配列.矢印はrbcLとatpB, atpEの転写産物の人 ききと転写方向を示す。

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←-.一一一一一も・臥♭ -.一一一一→: i l M T① rr;S,Trl;JMJr」竺-芦「哲 1、・.、暮、 、 、 、ぞ卵鮒 thTIPOB

・T②壷三

¢nLtdle ¢LLLp6 0RF 図4 イネのミトコンドリアDNA上にある葉緑体DNAとの相同配列② 黒色が葉緑体DNAとの相同配列で点で示した部分はミトコンドリア固 有の配列。 るとはあまり考えられない。しかし,いくつかの葉緑体様tRNA遺伝子に ついては-ミトコンドリアの中で発現し,さらにタンパク質合成にも使われ ているようである。 長い進化の過程になぜ葉緑体DNA断片がミトコンドリアゲノムに転移 したのか,またミトコンドリアの中で機能していないにもかかわらずなぜ 塩基配列が保存されていろのか現在のところ全く不明である。ただオルガ ネラのゲノムというものはそれぞれ別々のしかも隔離された存在という概 念から,お互いの関係はよりダイナミックなものであるという概念に我々 の認識が変わりつつあるということははっきり言えると思う。

ⅠⅤ.プラスミド様DNA

高等植物のミトコンドリアゲノムは巨大で複雑であることはすでに述べ てきたが,いくつかの植物のミトコンドリアの中にはさらに線状,環状の 低分子のプラスミド様DNAや,一本鎖や二本鎖のプラスミド様RNAが 存在することが知られている。細胞質雄性不稔性(CMS)の系統に特異的 に存在するものもあれば,稔性,不稔性に関係なく存在するものもある。ミ トコンドリアゲノムに比べてモル比が高く,またDNA複製の中間体が電

子顕微鏡で観察されていることから自律増殖できる分子種だと考えられる

(38)

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が,その存在意義については不明なままである。 イネのミトコンドリアにおいてはこれまでにBl/-B4と呼ばれる4種の 小環状プラスミド様DNAがみつかっている。イネの分化とこれらの分子 の分布の関連性を調べるため,クローン化したプラスミド様DNAをプ ローブとして85種の栽培イネ(Oryza satiua L.)を用いてサザン解析を 行った。その結果,これらの分子は主にインディカ亜種に多くみられ, 0. satiuaは4種の分子の有無に関して9つのタイプに分類された。 Bl∼B4に関してみられる興味深い特徴のひとつは,これらの分子に相 同な配列が核ゲノム内に存在することである。これらの配列が核ゲノム内 でどのように存在するかを知るために,インディカとジャポニカ両亜種間 でみられたRFLPを利用して,遺伝学的解析を試みた。その結果,相同配 列を含む制限断片はメンデル遺伝をしており,核の染色体上に組み込まれ ていることが明らかになった6)。次に,これらの断片の染色体上の座位を調 べるために,複数のF2集団を用いて,他のRFLPマーカーとの連鎖分析を 行ったところ,図5に示すように解析されたプラスミド様DNAに相同な 断片のほとんどがイネの12本の染色体上,第1,第2,第8染色体上の限 られた領域で連鎖して存在しており,これらの配列の核ゲノムへの組み込 みがランダムなものではないと推察された。相同な断片の安定な伝達がイ ネの系統分化の過程において継続的なものであるとすると,これらの配列 のいくつかは核ゲノムに独立に挿入されたと考えられた6)。このことは,多 型性の程度が系統関係と相関していることと矛盾しない結果であった0 現在のところ,植物ミトコンドリア内に観察されるプラスミド様DNA の機能についてはほとんど分かっていないが,メインゲノムに比べてコ ピー数がかなり高いのでミトコンドリアに遺伝子導入をする際のベクター として利用できるかもしれない。

Ⅴ.トランスポゾン様配列

トウモロコシやコムギのミトコンドリアDNAには約60塩基対の反復 配列が存在することが知られている。イネのミトコンドリアDNAにも全 体でこの配列は10カ所存在していた。この配列は図6に示すようにステム

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ループ構造を取りうるので,トランスポゾンのようにそれ自身転移しうる DNAかもしれない。この配列付近の塩基配列を決定したが,イネの配列は 10カ所で非常に似ていたが,トウモロコシやコムギのそれと少し違うこ と,入っている場所がイネ属植物ではほぼ同じであるが,他の植物では異 なることなどから,イネ属植物分岐後にミトコンドリア内で転移したと考 えている。約60塩基の配列がミトコンドリアDNA内に多数あれば,そこ で組み替えを起こす可能性があるが,実際に組み替えを起こしている証拠 もすでに得られている。 G A A C A G一c c-G G:T A-T T-A C-G

A EA

C-G G一c c-G AG-C I TT_A A一丁 G-C G一c c-G A一T A一丁 G-CT A-T A-T C-G 5●一ccAAA CTCC-3■ 図6 イネ・ミトコンドリアのトランスポゾン様DNAの構造。

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図7 イネ属にのみ存在するtrnNの上流のトランスポゾン様DNAo A:トランスポゾン様DNAの位置とPCRのプライマー。

B: PCR産物の電気泳動図。イネ属のみ挿入のためサイズが大きくなっ

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VI.お わ り に 今回,高等植物のミトコンドリアゲノムについて,構造やその再編成を 中心に述べてきたわけであるが,ミトコンドリアにしても葉緑体にしても 細胞内の小器官である以上,やはり核ゲノムとの関係は絶対に無視できな い。恐らく,核の因子がミトコンドリアゲノムの複製や維持をコントロー ルしているのであろう。ミトコンドリアゲノムの構成に関する核ゲノムの 役割という観点で,遺伝学的・分子生物学的な解析を進めていくことが,も しかしたら高等植物のミトコンドリアゲノムへの理解がより深まる近道に なるかもしれない。 また,高等植物のミトコンドリアに関しては転写レベル・翻訳レベルで の研究がまだまだ遅れており,さらに遺伝子導入の系も確立されていない。 今後,これらの問題が解決されれば,細胞質ゲノムの分子育種が現実のも のになると期待される。

参考文献

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(43)
(44)

イネ属植物の系統分化

阿 部 利 徳

1.イネ属植物の系統分化に関するこれまでの研究

イネ属の類縁関係は従来,形態的特徴,染色体数やその構造,交配時の

生殖的隔離障壁および染色体対合の状況などから研究されてきた。 Tateo-ka (1962)はイネ属は2つの栽培種と約20の野性種から構成されており, 多くの種がアジアとアフリカに存在し,一部の種が南アメリカとオースト ラリアに認められることを示した。 Morishimaら(1963)は野性のAゲノ ム種が0. rujipogonと0.breuiliguhZhZに分類できること,このうち0. breuih'gulaklは西アフリカ地帯にのみ認められ,栽培種である一-0. gklber-rimaを分化したことを示した。また彼らは0. rujtPogonは4つの型,すな わちアジア型,アフリカ型,アメリカ型およびオーストラリア型に分けら れ,このうちアジア型の0. rujipogonから0.satiua種が分化したことを

示した(Okaら1962, Morishimaら1963)0 0. satiua種内では生態種への

分化が認められ,大きく日本型とインド型に分けられること,またこの分 類は複数の形質,たとえば塩素酸カリ抵抗性,低温感応性,樺毛の長さ,フェ ノール反応などの形質を指標にして行うのが適当であることが示されてい る。一方, Takahashi (1984)は0. satiuaを3つの生態種すなわち日本型, インド型,ジャワ型に分けることが妥当であるとした。 以上のような類縁関係の推定に用いた指標はすべて核ゲノムに関するも のであった。近年オルガネラDNAの制限酵素切断断片を指標とした分析 山形大学農学部

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が系統発生的関係(phylogenetic relati()nship)を研究するのに有効である

ことが示されている。植物におけるこのような研究は最初に葉緑体ゲノム

の多様性にもとづきト-モロコシ(Doebleyら1987),豆科作物(Palmer

ら1987),コムギ(OgiharaandTsunewaki1988)およびイネ(Ichikawa

ら1986, Ishiiら1986, Dalli and Second 1990, Kanno and Hirai 1992)な

どで行なわれた。 Ichikawaら(1986)はイネ属の13種の類縁関係をフラ クションタンパク質(Rubisco)の等電点電気泳動パターンと葉緑体DNA のBamHIによる制限酵素パターンを分析し, BB,BBCC,およびccゲノ ム間で類縁関係が大であること, AAゲノムを持つ0.satiua種はCCDD の0. hZtlfolia種とパターンが類似していること,さらに0. latlfolia種内 でもcpDNAのBamHI断片パターンは異なっており,またEEゲノムの 0. aushlaliensisは他の種とは異なるcpDNAのパターンを示すことなど を報告した。 Ishii (1986)は0.Satiuaと0.gklberrimaの間および0. satiua内の葉緑体ゲノムの差異を詳細に明らかにした。さらにIshii (1988) は2倍体AAゲノム野性種および栽培種の間の系統発生における関係を 調べた。彼らは野性種と栽培種合計66系統のcpDNAを分析し, AAゲノ ム内の葉緑体ゲノムタイプを9つの型に分類した。すなわち0. rujipogon は5つの型, 0.saliua内では日本型とジャワ型で1つの型,インド型では 3つの型に分けた。 0.gklberrimaは0. breL,iligulataと全く同一で, 0. sativaとC). rujPogonのアジア型はcpDNAに関して共通のものがあるこ とを示した。 DalliandSecond (1990)はイネ属13種, 247系統と制限酵 素EcoRI,AuaIを用い,cpDNAの制限酵素パターンを詳しく分析した。彼 らはまた7種の制限酵素を用い電気泳動パターンの違いを詳細に調査し,

共通バンドによる遺伝距離の推定,突然変異数および突然変異の様相の推

定より系統間の相対的位置関係を明らかにした。 Kannoand Hirai (1992) は制限酵素BamHIおよびPstIを用い, 0.satiua以外のイネ属3種の cpDNAのクローニングを行い,0.sativaのcpDNAと構造を比較した。彼

らは精密な分析によって,塩基置換等による制限酵素部位の生成や消失が

あることや0.panctataと0. 09icinalisに別々の欠夫が認められることを

報告し,さらに塩基配列分析の結果,欠矢に短い直列反復配列が介在する

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ことを示唆した。また彼らはBB,cc,CCDDゲノム種をそれぞれ数系統用 いて分析し, BBCCゲノム種はBBおよびccゲノム種の交雑により生じ た複二倍体種であることを明らかにした。 以上のようにオルガネラゲノムのうち葉緑体ゲノムに関する系統発生的 研究ではかなりの知見が得られているが,ミトコンドリアゲノムに関する

制限酵素断片の多型や系統発生的な研究は十分には行なわれていない0

Kadowakiら(1988)は0.sativa種のミトコンドリア内のプラスミド様の 多型について分析した。彼らはまた0. satiuaの雄性不稔系統と正常な系統 のミトコンドリアゲノムを数種のプローブを用いて分析し, cms-BO細胞 質の雄性不稔系統に変異が認められることを報告している(Kadowaki

and Harada1989)。 Ishiiら(1993)は最近0. satiuaの8品種, 0.

glaber-rimaの2系統を用いてcpDNA,mtDNA,および核DNAの制限酵素断片 長多型の分析を行い,ミトコンドリアと核ゲノムの遺伝的多様性は比較的 大きいが,葉緑体ゲノムの多様性は少ないことを報告している。 以上みてきたようにイネ属植物の系統分化に関しては,これまで主に核 および葉緑体ゲノムで研究され,ミトコンドリアゲノムに関しては十分な 情報が得られていない。そこで著者らはミトコンドリアゲノムからみたイ ネ属植物の系統分化に関して研究を行った。

2.イネ栽培種ミトコンドリアDNAのRFLP分析

これまで0.sativaの種内分化,すなわち日本型およびインド型への分 化に関しては,両群を明確に区別できる単一の形質はなく,複数の形質ま たは遺伝子の特定の組合せによって始めて両群を区別でき′ることが示され

ている。 Morishima and Oka (1981)は11形質の測定値の主成分分析に

よって,あるいは塩素酸カリ抵抗性(K),低温感受惟(C),梓毛の長さ(H) およびフェノール反応(Ph)等のデータの組合せた判別函数によって分類 するのが妥当であるとした。近年,両生態種の核ゲノムにおける制限酵素 断片長多型(RFLP)も明らかになり, RFLP地図が作成されている (McCouchら1988)。また前述のように葉緑体ゲノムの制限酵素断片の分 析によっても2つの生態種を区別しうることが示されている(Ishiiら

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1986),さらにDallasら(1988)は核にコードされている10-50bpと短い 直列反復配列のミニサテライトDNAをプローブにしてフィンガープリン ティングを行い, 0. satiuaと0.gklberrimaの識別はもとより, 0. satiua 内でも品種の識別の可能なことを報告している。そこで著者らは分析がま だ不十分であったイネ栽培種のミトコンドリアゲノムを7種のミトコンド リアプローブを用いるサザン解析によって分析した。イネ0.satiuaの日本 型,インド型,ジャワ型に含まれる11品種と0′glaberrimal系統を用い, 3-4葉期の菓鞠および葉身から全DNAを抽出し,分析に用いた。サザン解 析はIwahashiら(1992)の結果を参考にして,全DNAをSalIまたは XbaIで切断し,ジコキシゲニンでラベルしたプローブとハイプリグイズ させア7L,カリフオスファタ-ゼの発色反応により検出した.用いたプロー ブはシトクロム酸化酵素サブユニットI,II (coxI,coxII),アポシトクロム b (cob), ATP合成酵素サブユニット6と9 (atp6, atp9),および18S

rRNA遺伝子(rrn18)を含むDNA断片である。 これらのプローブを用いて解析を行った結果, atpA,atp9,およびcoxII では多型は認められなかったが,4種のプローブで多型が検出された。この うち3種のプローブで差異が明瞭であったので図1-3に示した。 α砂9を 含むDNA断片をプローブ,に用いた場合, E]本型およびジャワ型に存在す る3.7kbの断片はインド型と0.ghlberrimaには存在しなかった(図1)o coxIを含む断片をプローブに用いた場合にはE]本型およびジャワ型品種 に存在する1.9kbの断片はインド型の3品種と0.glaberrimaには存在し なかった。しかしながらインド型品種BlueBelleには日本型品種に存在す る1.9kbの断片が同様に存在した(図2)。 rrn18をプローブに用いた場合 もcoxIをプローブに用いた場合と同様の傾向が認められた(図3)。すなわ ち日本型とジャワ型は同じパターンを示し,インド型の3品種と0. gh2berrimaは同一のパターンであった。インド型のBlueBelleは日本型と 同じパターンを示した。またrrn18をプローブに用いた場合,インド型の 3品種には0.7kbの欠夫が認められた。 以上のことから日本型とジャワ型品種は全く同一のパターンを示し,用 いた7種のプローブでは差異のないこと, BlueBelleを除くインド型品種

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図1イネ0.satiueのミトコンドリアDNAのRFLPパターン1 プローブはatp6を含むsal I断片(12.8kb)

1.日本晴, 2.ササニシキ, 3.台中65号, 4. Calrose

5l BlueBelle,6. Panbihz, 7. Tadukan,8. TN-1 9. Arbon'0,

10l Lady Wn'ght, 11・ Secia, 12. 0.glabem'ma

図2 イネ0.sativeのミトコンドリアDNAのRFLPパターン2

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図3 イネ0.saiiveのミトコンドリアDNAのRFLPパターン3 プローブはエンドウのrrn18を含むBamHI断片(2.6kb)品種は第1図 を同じ は日本型やジャワ型品種と比較して,部分的な欠矢のあることが推察され た.ただし,インド型に分類されているものでもBlueBelleのように用い るプローブによっては日本型品種と同じミトコンドリアDNAパターンを 示す品種があり,このような品種は過去の育種過程で日本型あるいはジャ ワ型品種を母本にして交配が行なわれたであろうことを示している。 Ishii ら(1993)ち,イネ0.sativaの日本型2品種,ジャワ型2品種,およびイ ンド型4品種を用いて葉緑体ゲノムの分析を行い,インド型品種で日本型 イネ品種と同一の制限酵素パターンを示すものがあることを報告してい る。このような品種は日本型と全く同じ細胞質を持つというものではなく, プローブによってはインド型の特徴を示すので,過去にミトコンドリアゲ ノムの組換えが起こったことを示しているのかも知れない。

3.イネ属ミトコンドリアDNAのRFLP分析

イネ栽培種の種々の形質について,広範囲にわたる改良を行うためには, 栽培種の起源を明らかにするばかりでなく,ゲノムを異にする多くの種を

(50)

用い,系統発生的および進化的な関係を明らかにすることが重要である。著 者らは0.saliva(AAゲノム)の2系統(日本型1系統,インド型1系統), 0・ gkzberrima (AA), 0. rujiz,ogon (AA), 0. functahZ (BB), 0.funchzta

(BBCC), 0. eichingeri (cc), 0. Oj7icinalis (cc), 0. minuhZ (BBCC), 0.

hZtlfolia (CCDD) , 0. alta (CCDD) , 0. anstraliensis (EE)の各1系統の葉

身から全DNAを抽出し,上記7種のイネミトコンドリア遺伝子プローブ を用いて制限酵素断片長多型(RFLP)の分析を行った。その結果,用いた 7種のプローブすべてで多型が検出された。例として2つのプローブを用 いた場合の多型を示した(図4,5)。またバンドパターンの比較からNei 図4 イネ属植物ミトコンドリアDNAのRFLPパターン1 プローブはcoxIを含むsalZ断片(7.5kb)

Al : 0・ saliva (japonica), A2 : 0. saliva (indica), A3 : 0. glabem'ma, A4: 0. rujipogon, B: 0.punctata (BB), BCl : 0.9unchthz (BBCC), CDl : 0・ kltifolia, Cl : 0, obicinalis, C2 : 0. eichingeyi, CD2 : 0. alto,

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図5 イネ属植物ミトコンドリアDNAのRFLPパターン1 プローブはエンドウrm18を含むBamHI断片(2.6kb)供試した種は第 4図と同じ (1987)の方法により遺伝距離を求め, UPGMA法によりクラスタリングを 行った(図6)0 0.sativa複合体(AAゲノム種)に関して, 0.sativaのインド型品種は むしろ0.glaberrimaと同様のパターンを示し,ミトコンドリアDNAか らみた両者の類縁関係は極めて大きいことが推察された。また同じAAゲ

ノムの0. saliva, 0. glaberrin∽および0. rujiI,ogonは類似のパターンを

示し,一つのクラスターを形成した.この結果はまた0.satiuaの日本型イ ネが0. rujiz'ogonから分化したとする説を支持している。本研究では0・

rujipogonは1系統しか供試しなかったため0. sativaの日本型およびイン

ド型の祖先種についての知見は得られなかった。また追加実験で0.

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