顔‑ 嶋
B. napus campestris
図7 アプラナ属植物花粉由来歴におけるLEA遺伝子の発現 プローブとしてpLEA76を用いた
ABA+は100FEM ABA (B. napus), 10/JM ABA (B. campestris)を7
日間処理し, ABA‑は処理しなかったもの
5.おわ り に
以上述べてきたように,アブラナ属植物の単離花粉からの不定腫形成系
は, 「遺伝的固定」という場面だけでなく, 「遺伝的変異の拡大」や「増殖」という場面でも十分利用できることが明らかとなった。また,形態的に種 子腔と似た発達を示すだけでなく,貯蔵タンパク質の蓄積, LEA遺伝子の
発現と乾燥耐性の獲得等,生理学的にも種子腔と類似したパターンを示す
ことが判明した。この乾燥耐性をも含めた不定腔分化系は種子形成機構の
解析だけでなく,乾燥耐性,発芽のメカニズムの研究にも, 今後有力な実 験系を提供するものと思われる。参考文献
1) Fan, Z., K.C.Armstrong and W.A.Keller: Protoplasma 147: 191‑199.
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2) Zaki, M.A.M. and H.G.Dickinson: Sex. Plant Reprod. 4: 48‑55. 1991.
3) Takahata, Y., Y. Takani and N. Kaizuma : Plant Tissue Culture Letters lO: 49‑53 1993.
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13) Harada, J, A.DeLisle, C.Baden and M.Crouch: Plant M()1. Biol. 12:
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受精時における突然変異誘発と アミノ酸アナログ耐性植物の作出
亀 谷 寿 昭
は じ め に
植物細胞培養によって,突然変異体を得ようとする研究には,単一細胞 起源の変異体が作出できること,限られた空間で多量の材料を扱うことが でき,さらに,適当な標識があれば,培養条件とくに培地条件によって変 異体を選抜できるという利点がある。すでにこれまでに,薬剤,塩,重金 属,植物病原菌毒素などに対する耐性株が得られ,耐性機構の解明に利用 されている。これらの変異株から植物体も育成されているが,選抜過程の
長期培養のために,植物再分化能が消失し,植物体が得られない変異株も
少なくない。また,植物体の不稔の場合や,他の変異も伴い,耐性の遺伝 様式が明確になった耐性株は,予想外に少ない。アミノ酸アナログ耐性株 も細胞培養によってこれまでにいくつか育成されてきたが,これらは,再 分化能を消失し,植物体に成らなかったり,植物体になっても,他の変異 をともなうものが多い。これまでの耐性株の例として,タバコ,朝鮮アサ ガオ,オオムギ,イネ,などがある。これらは,劣性遺伝子によって支配 されるか,または,その遺伝様式は明確ではない。アミノ酸アナログ耐性株の特徴の一つは,アナログに対応するアミノ酸 の過剰生産である。これまでのアミノ酸アナログ耐性に関する研究は,醍 酵工学の分野において,効率的なアミノ酸生産のための微生物育種の一環 として,おこなわれてきた。植物において,最も多く研究されたのは,細
東北大学遺伝生態研究センター
胞培養による耐性株の選抜である。その中でもトリプトファンのアナログ である5‑メチルトリプトファン(5MT)耐性株についての研究例が多い。
5MT耐性株は,野生株と比較して, 10‑30倍以上の遊離のトリプトファン を細胞内に蓄積する。この株の特性は,トリプトファン合成系に関連する 変異に基づくと考えられるが,明白ではない。これは,耐性の遺伝様式が 明確でないことも一つの要因であると思われる。
我々の研究室では,イネ,トウモロコシの花を突然変異剤で処理し,そ こから得られた種子の後代を用いて, 5MT耐性株を選抜,育成することが 出来たのでその概要を紹介したい。
1.突然変異剤処理とクロロフィル突然変異
イネ(品種:ササニシキ)の開花2時間前と開花2時間後,及び5日, 10 日, 15日後の5段階の穂を0.1‑0.3%エチレンイミン(EI)あるいはエチル メタンサルフォネイト(EMS)溶液に24時間, 18‑25C,暗所の条件下で 浸漬し,その後,十分に水洗した。トウモロコシ(品種:ダンギン)の場 合は,脱脂綿にEI, EMS溶液を含ませ,受粉0‑48時間後に雌性器宮上に おき,乾燥を防ぐため,ポリエチレンの袋で覆い, 2日後に水洗した。その 結果, Ml世代において,イネでは,開花2時間後の突然変異剤処理区にク ロロフィル変異の頻度が最も高いことがわかった(表1)。トウモロコシで は,受粉後, 6時間目の処理区でその頻度が最高であった。このように,イ ネとトウモロコシにおいて,クロロフィル変異の出現頻度の高い区は, 各々,受精時あるいはその直後のステージであると推定された。
2. 5MT耐性株の選抜
Ml世代の各処理区のうち,高頻度でクロロフィル変異が出現した処理 区から緑色植物を育成し,播種し(M2),さらに,次世代(M3)の種t‑を 選抜材料とした。幼植物を5MT (25‑50ppm)を含む水耕液で栽培し,耐 性株の選抜を行った。およそ22,000のイネ種子から24個体の耐性植物が 得られ,その中から,さらに稔性のある耐性個体(TRl,TR2)が選抜され た(図1)。トウモロコシの場合は,およそ16,000種子から同様に耐性株
表1種々の開花期におけるEI処理とクロロフィル突然変 異の頻度
処理時間
観察したM2世代 クロロフィル 頻度 の個体数 突然変異数 (%)5 2 8 6 0 5 8 4 7 9
2 1 2 2 2 0 0
21 11.5
3 2.2
0 0
0 0
図1 TR(1),TR(2),ササニシキ(3,4)の芽ばえの生長。 1, 2,3: 25ppm の5MT,4:5MTなしの培養液で培養した。 ‑
(MRl)が選抜された1),2)0
3. 5MT耐性株の諸特性
1)遺伝様式
イネのTRl,TR2の自殖後代における5MT耐性を調査した結果, TRl は耐性と非耐性のものが3:1に分離した(図2)。さらに次世代のホモとヘ テロの分離比から, TRlの5MT耐性は単一優性の核遺伝子に支配されて いることが明らかとなった。 TR2の場合,その日殖後代から耐性ホモ個体 が得られず,その遺伝様式は複雑で,いまのところ明白でない。トウモロ
コシの耐性株MRlの自殖後代はすべて耐性であり,非耐性系統(C66)と のFlはすべて耐性であり, F2における分離比から, MRlの耐性は,イネ のTRlと同様に,単一優性の核遺伝子に支配されていることが確認され
た。
これえでに,選抜,育成されたアミノ酸アナログ耐性株の耐性形質の大
部分は,劣性あるいは半優性であり,耐性が優性形質として選抜された植
25
20
15 義 塗 杏
慧10
5
0 2 4 6 8 10 12 14 16
幼植物の長さ(cm)
図2 TRlの自殖後代の芽ばえの伸長と個体数の頻度分布 芽ばえは10日間, 25ppm, 5MTで培養した。
物はトウモロコシの一例のみである。本研究で得られた耐性株の形質が,イ ネ,トウモロコシにおいてともに優性であったことは,突然変異剤処理が 受精時であったことに起因するものかどうか興味がもたれる。
2)カルスの5MT耐性
培養紳胞を用いた選抜法によって,薬剤耐性植物を作出する試みが,こ れまでに数多くなされてきたが,しばしば薬剤耐性カルスからの復元植物 が耐性でない例や,逆に耐性植物由来のカルスが非耐性である例も知られ ている。これらは,それぞれ耐性機構の差異に基づくものと考えられる。そ こで,イネのTRlの耐性機構の解明の一助とするため,カルス段階におけ る耐性について検討してみた。 TRlと野生株(ササニシキ)の穫子,樵,節 を用いて, 5MT (25ppm)を含む培地でカルスを誘導したところ, TRlの それぞれからカルスが形成されたが,ササニシキではいずれからもカルス は形成されなかった。また, 5MTを含まない培地で誘導されたカルスの 5MT培地における生長を見たところ, TRlカルスは, 50ppmの5MT対 しても耐性であったが,ササニシキでは,25ppmでも生長できなかった(図 3)oさらに,両カルスを5MTを含む再分化培地で培養したところ,TRI力 ルスから植物体が分化したが,ササニシキでは,植物体は分化しなかった。
このように, TRlの耐性形質は,カルス形成(脱分化),カルスの生長,再 分化の各段階において発現していることから,すでにイネの細胞融合の研 究で示されたように, TRlの5MT耐性はマーカーとして使用できると考
えられる3)。
トウモロコシを種々の濃度の5MT培地で培養した時のシュートと根の 生長を, MRl,MRlとC116(コントロール)及びそれらのFlを比較する
と,図4に示したように, MRl,Flの方が耐性であった。
3)遊離アミノ酸含量
TRlの種子,芽ばえ,カルスの遊離アミノ酸を分析し,野生株(ササニ シキ)と比較したところ,総遊離アミノ酸含量において, 2‑4倍増加して いた(表2)。まず種子の結果をみると, 5MTに直接詰抗するトリプトファ ン(TRY)がササニシキに比べて8倍も増加していることが明らかとなっ た。その他,ヒスヂジン(HIS),フェこルアラニン(PHE),アラニン(ALA)
‑●一一」‑TR 1 o o ム ササニシキ
0 25 50 100 tITl.I")
5MT濃度
図3 5MTのカルスの生長に及ぼす影響
●, ○ 種子, I, 【]:根, ▲, △:節
も4.9,5.4,3.2倍増加した.芽ばえでは,アスパラギン(ASN),プロリン (PRO),アラニンがそれぞれ2.6,2.5,2.7倍,カルスにおいてもアスパラギ ン,プロリン,アラこンがそれぞれ18.5,24.5,12.0倍とササニシキのものよ り著しく増加していた。
このように5MTと直接詰抗しないアミノ酸が増加する理由について は,特定のアミノ酸のみが増加してアミノ酸プールの不均衡を招かないよ うに,細胞が反応した結果と考えられるが,その機構については明らかで はない。
以上の結果において,特に注目すべき点は, TRlの種子において,トリ プトファン含量が増加したことである。これまで育成されたアミノ酸アナ ログ耐性株で種子のアミノ酸含量が増加した例はあまり多くなく,イネの アミノエナルシステン(AEC)耐性株のリジンや,ハイドロオキシプロリ
(u∈) 仙叫Qエーr'・
5MTの強度(p pm)
図4 種々の濃度の5MT培地で培養したときのシュート(A)と根の生長,
MRl (■),C116とMRlのFl (△),C166 (コントロール) (H)
表2 親ササニシキと比較したTRlの種子,芽ばえ,カルスの酸含量
アミノ酸
㌫慧G L。pR。G LYA LA詣温TY R諾誌甜
ササ二ノキ TR l 非耐性に対する耐性の割合 種子 芽はえ カルス 種子 芽ばえ カルス 種子 芽はえ カルス
8 154983 27956799660川̲ 51 8331 5251 7鍋3
1 9 1 1 ▲q
016537475417錨512652567187801800144
9 1 (U 8 3 I 1 1
L 2 6
847̲ 20349緋569m6058244941 331 92那7 ll 071 71 5 1‑25 I;4り 4りr・;ーh 1. ノ
ン(HYP)耐性株のプロリンの増加が知られているのみである。 5MT耐性 株の種子のトリプトファン含量が増加した例は,本研究が最初である。同 様に,トウモロコシの5MT耐性株(MRl)のアミノ酸を分析したところ, 種f・内にトリプトファン,スレオこン(THR),セリン(SER)がそれぞ れ4.5, 5.9, 6.3倍増加していることが判明した。
4)その他の特性
TRlの自殖に由来するホモ系統(TR‑No)水田において栽培し,玄米の 形質を調査したところ,耐性系統はササニシキと比較して,玄米長が大き く,玄米幅は小さかった。また,内生蛋白質およびアミロース含量には大 差はなく,遊離アミノ酸含壷の大幅な増加に,これらは影響されないこと がわかった(表3)0
5MT耐性の培養細胞がオーキシン独立栄養性であることはよく知られ ていることである。 TRlの種子からカルスを誘導する場合,野生株(ササ ニシキ)と比較して低濃度のオーキシンしか要求せず,また,再分化はホ ルモンフリーの培地で良好であった。このことは, TRlの内生ホルモンの 代謝機構に変異が生じていることを示唆している。
本研究で作出した5MT耐性株TRlは他のアミノ酸アナログであるパ ラフルオロフェこルアラニン(PFP),アミノエナルシスナン(AEC),ア