Title
大腸腺腫の悪性化過程における分子生物学的検討 1) 大腸腺
腫の悪性化過程における細胞増殖能と変異型p53蛋白発現に
関する免疫組織学的検討 2) 大腸腺腫の悪性化過程における
アポトーシス関連蛋白の影響に関する免疫組織学的検討( 内
容の要旨(Summary) )
Author(s)
堅田, 昌弘
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1221号
Issue Date
1999-11-17
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15050
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 堅 田 昌 弘(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 1221 号 平成11年11月17 日
学位規則第4条第2項該当
大腸腺腫の悪性化過程における分子生物学的検討
1)大腸腺腫の悪性化過程における細胞増殖能と変異型p53蛋白発現に関する 免疫組織学的検討 2)大腸腺腫の悪性化過程におけるアポトーシス関連蛋白の影響に関する免疫 組織学的検討 (主査)教授 佐 治 重 豊 (副査)教授 高 見 剛 教授 森 脇 久 隆 論 文 内 容 の 要 旨 大腸粘膜の発癌には.Vogelsteinや中村らにより,APCの不活化から軽度異型腺膵が生じ,K-raS,p53など の点突然変異によって大腸癌へ進展し,DCC異常が浸潤・転移に関与するという遺伝子変異の蓄積モデルが報 告されて以来急速な進展がみられている。一方,大腸腺腫に関する遡及的画像診断による詳細な解析結果から, 腺腫は経時的に形態や大きさを変化させながら癌化する過程が報告されている。そこで,申請者らは内視鏡的に 摘除された大腸腺腫を用い,腫瘍の占居部凪 大きさ,形態,細胞異型度を詳細に観察後,prOliferating cell nuclearantigen(PCNA)から細胞増殖能を,変異型p53蛋白(p53)の発現程度から癌化への過程を推察し, 論文1にまとめた。また.アポトーシスの発癌過程への関与に関しては,アポトーシスの実行段階で癌抑制遺伝 子p53が情報処理過程で主要な役割を演ずると考えられている。そこで申請者らは論文1と同じ症例を用い,Bcト2蛋白の発現程度から悪性化過程におけるアポトーシスの役割を検索し,TdT-mediated dUTP-biotin nickend labeling(TUNEL)染色によるapoptoticindex(AI)値から細胞死実行程度を評価した。また,論文1でのp53 の発現程度も併せて検討し,大腸腺腫の悪性化過程におけるアポトーシスの役割を検討し,論文2にまとめた。 研究対象と研究方法 1992年1月から4年間に教室および関連病院で内視鏡的に摘除された大腸腺管腺腫10鋸軋174病変を研究対象に 用いた。また,同時期に内視鏡的に摘除した早期大腸癌10例,10病変と,大腸正常粘膜組織10例,16個を対興群 として比較検討に用いた。研究の方法は摘除検体を10%ホルマリン固定パラフィン包埋後,4〃mの連続薄層切 片を作製し,Hematoxylin&Eosin(HE)染色を行い大腸癌取扱い規約に従って病理組織学的診断と異型度を 評価した。免疫組織染色の方法は,PCNA染色はEPOS-PCNA(PC-10,DAKO社)を用い,判定は核が発色し たものを陽性細胞とし,光学顕微鏡下で腫瘍細胞数500個中の陽性細胞数を百分率で算出し,1abelingindex(LI) 値で表示した。P53染色は抗p53マウスモノクローナル抗体(DO-7,DOKO社)を用い,判定は核内が顆粒状に 染色されたものを陽性とした。一方,アポトーシス関連で,Bcl-2染色は抗Bcl-2マウスモノクローナル抗体(clone
124,DAKO社)を用い,判定は細胞質が染色されたものを陽性と判定した。TUNEL染色はApop Tag Plus TM-Peroxidasein situ ApoptosisDetectionKit(Oncor社)を用い,判定は核が茶褐色に染色されたものを
陽性細胞とし,光学顕微鏡下で腫瘍細胞1000個中の陽性細胞数を百分率表示し,AI値として評価に用いた。 研究結果 1)細胞増殖能と変異型p53蛋白に関する免疫組織学的検討の結果 PCNALI値とp53陽性率は大腸腺腫の異型度の進行に伴って有意に増加し,早期癌ではさらに高値を示した。 また,PCNA LI値とp53陽性率は腫瘍径別で6mm以上群が,形態別ではIspとIp群が何れも有意の高値を示した。 以上の結果,組織異型度が中等度以上で6mmをこえる1spあるいはIp型で,腺隆が多発する例は生物学的悪 性度が高いと思われた。また,6mm未満の病変でも変異型p53が陽性で,PCNALI値が高値を示す例では遺伝子
-97-異常の蓄積が推察された。 2)アポトーシス関連蛋白の影響に関する免疫組織学的検討の結果 Bcト2の陽性率は異型度が軽度から中等度に進行すると有意に増加し,高度および早期癌では逆に低下する傾 向を示した。一方,変異型p53陽性率は異型度の進行に伴って増加し,早期癌ではさらに高値を示した。AI値は 正常粘膜に比べ軽度群,中等度乳 高度群および早期癌がいずれも低値を示した。また,変異型p53とBcト2陽性 率は腺腫径では6mm以上 形態ではIsp,Ip型が有意の高値を示した。 以上の結果,大腸腺腫の増大や異型度の早期にはBcl-2が,癌化の段階には変異型p53が関与する可能性が高い と推察された。また,異型度が中等度以上で,大きさが6mmを越える有茎性腺腫は生物学的悪性度が高いと推察 された。 考察と結語 内視鏡で発見される限局型隆起性病変は原則としてポリペクトミーされるが,6mm未満の微小病変は病理組織 学的に癌腫の可能性が低いため経過観察のみの場合が多い。申請者らはこの判断基準の妥当性を免疫組織学的に 検討した訳であるが,臨床病理学的には腫瘍径が6mm以下で,結腸に存在するIs型ポリープは良性腺腫である可 能性が高い。今回の検索では,細胞増殖能は異型度の進行および癌化に伴って有意に増加し,腫瘍径で6mm以上 群,形態別でIp瓢 病変数で4個以上群が有意の高値を示した。それゆえ,PCNAIJI高値の多発例は将来癌化 する可能性が高いと推察された。一方,変異型p53蛋白は腺腫の異型度に伴って増加し,早期癌では更に高値を 示し,adenoma-CarCir10ma SequenCeでの癌化段階でp53遺伝子異常が重要な役割を演ずると考えられた。 一方イニシエーション段階で,癌抑制遺伝子やDNA修復遺伝子が効率的に機能すれば異常細胞の増殖が抑制 され,癌化へのステップが中断される。すなわち,野生型p53はc-fosやc-myCなどの増殖・分化に関わる遺伝子 を制御して,Gl期からS期への細胞周期移行を抑制し,Baxの転写を賦活することでアポトーシスを誘導し,異 常細胞の増殖を制御する。今回の検索でもp53陽性率は異型度の進行に伴って有意に増加し,早期癌ではさらに 高値を示した。
結語として,Bcl-2陽性例はPCNA LI値が有意の高値を示し,PCNA LI高値群ではAI値が高値を示したこと から,発癌過程の早期段階では細胞増殖能とアポトーシスによる細胞喪失がともに高く,このバランスで癌化へ の過程が抑制されるが,その後アポトーシス細胞が減少し早期癌へと進展する可能性が確認された。また,変異 型p53は腺管腺腫の中等度異型段階で発現し,その後有意に増加したことから腺魔の増大や異型度の増加段階で はbcl-2遺伝子の活性化が優位で,癌化の段階ではp53遺伝子異常がアポトーシスによる細胞死回避を惹起し,細 胞不死化状態に至ると推察された。 論文審査の結果の要旨 申請者堅田昌弘は,大腸腺腫の悪性化過程を分子生物学的指標を用いて検索し,PCNA LI値とp53陽性率が腺 腫の異型度の進行に伴って有意に増加すること,およびアポトーシスとの関連ではBcト2陽性率が異型度の進展 にともない有意に増加するが,早期癌では逆に低下することを明らかにした。この研究結果は,大腸腺旺切除後 の追跡検査の指針として有用で,腫瘍外科学の発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌] 大腸腹腔の悪性化過程における分子生物学的検討 1)大腸腺障の悪性化過程における細胞増殖能と変異型p53蛋白発現に関する免疫組織学的検討 1999年 日本大腸肛門病学会雑誌 52:193∼199 2)大腸腹腔の悪性化過程におけるアポトーシス関連蛋白の影響に関する免疫組織学的検討 1999年 日本消化器外科学会雑誌 32:2224∼2230