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パーキンソニズムと痴呆の研究 第1編 臨床症状の分析

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( 東 女 医 大 誌 第54巻 第 附 ) 頁 1047-1055昭和59年10月J

ミーキンソニズムと痴呆の研究

1

編 臨 床 症 状 の 分 析

東 京 女 子 医 科 大 学 脳 神 経 セ ン タ ー 神経内科学教室(主任:丸山勝一教授〉 ス グ エ

須 田 恵 美 子 *

〔 受 付 昭 和59年8月2目)

Parkinsonism and Dementia -Clinical Analysisー

Emiko SUDA

M.D.

Department of Neurology (Director: Prof.Shoichi MARUYAMA), Neurological Institute Tokyo Woman's Medical College

Department of Neurology, Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital

Twenty-seven hundred autopsy cases of the Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital were reviewed from June 1972 to December 1982.

Clinical records and neuropathological specimens from 67 cases demonstrated idiopathic parkinsonism and those from 60 cases showed vascular parkinsonism.

1) Forty-one cases (61.2%) of 67 cases with idiopathic parkinsonism showed moderate or severe dementia. Thirty-four c呂 田s(56.7%) of 60 cases with vascular parkinsonism showed moderate or severe

dementia.

2) Mental disorders (hallucination, illusion, delirium, depression etc.) were recognized in both idiopathic and vascular parkinsonism. These symptoms were observed more often in idiopathic parkin -sonism with dementia.

3)Itwas observed that idiopathic parkinsonism with dementia tended to increase proportionaly to their age. The same things were not observed in vascular parkinsonism.Itwas observed that vascular parkinsonism with dementia were more related to the distribution of the lacunar formation.

4) Twenty-nine percent of idiopathic parkinsonism with dementia showed the parkinsonian trias. In idiopathic parkinsonism without dementia, 68% of them showed parkinsonian trias. Thirty-nine percent of vascular parkinsonism with dementia showed parkinsonian trias, while the vascular parkinsonism without dementia

43% of them showed the same symptoms.

5) The duration of illness and the prognosis of idiopathic parkinsonism was better than those of vascular parkinsonism. There were no difference between parkinsonism with dementia and those without dementia. 序 論 対象と方法 成績 1.痴呆の頻度 2.随伴精神症状 目 次 *現在:東京都立養育院神経内科 -1047ー 3.年齢別度数分布 4. 臨床症状との関連 5.脳波との関連 6. 治療との関連 7.擢病期間 考 察 総括 文献

(2)

1817年JamesParkinsonが,現在パーキンソン 病と呼ばれている病態を, Shaking palsyとして 報告してから 1世紀半余経過し,その間,黒質, 線状体ドーパミン系を中心とするパーキンソン病 の病態の解明や治療はめざましい進歩をとげた. しかしまだ未解決の問題も少なくない.その一つ は原著では本症は「痴呆を伴わなL、」としている が,その後の症例の蓄積により,痴呆の定義には 問題点はあるにせよ,パーキンソン病のなかにも 痴呆を伴う症例があるばかりか,痴呆症状が前景 に出て,パーキンソニズムの症状がはっきりしな い症例もあり,新たな問題を投げかけている.パー キンソン病に痴呆を伴う症例の頻度には,報告者 によって20-80%の聞きがある. そこで本論文では,老年者連続剖検2,700例から 臨床的にパーキンソニズムの症状を呈した症例に つき,痴呆を含む生前の精神症状を検討した.特 発性パーキンソニズムと脳血管病変を有する血管 性パーキンソニズムに分けて分類し,それぞれ痴 呆を有する群と,それらを有しない群との4つの 群に分け,痴呆を有する頻度, さらに随伴する精 神症状,異常行動の頻度,年代別度数分布,臨床 症状の分析,擢病期間と予後について検討した. なお痴呆とは,症候名であり,その定義には多 くの問題がある.病前の性格も考慮し,精神面で 脱色素(十) 87例 特発性ノマーキンソニズム 67例 (痴呆 15例) その他 J並行性妓上麻的

4

1

1

線 状 体 ・ 黒J'l

l

変 性 症 5 fJjJl 神料品:状無か 記載不充分 1117IJ の社会生活の自立を失なった状態を痴呆とした. ここでは末期までの経過中に,脳波ならびに,併 発症状から意識障害を疑われた例は除外し,長谷 川 式 テ ス ト が 施 行 さ れ て い る 例 は10点 以 下 を と り,施行されていない例は丹念に病歴記録さらに 看護記録から,長谷川式テストの項目に合う記載 を選び出し,評価点数が10点以下をその目安にし た.したがってノミーキンソニズムの症状が進行し, あらゆる聞にいかなる方法をもってしても反応せ ず,無言無動に近い状態の例も痴呆に含まれてい る 対 象 と 方 法 対象は東京都養育院付属病院における過去10年 7カ月間の連続剖検2,700例から,臨床的にパーキ ンソニズムの症状が認められ,かつ黒質・青斑核 の脱色素が認められた症例72例とパーキンソニズ ムの症状を呈し,黒質・青斑核の脱色素が認めら れなかった症例

7

4

例, さらに臨床的に痴呆症状が 前景にみられ,病理学的に黒質,青斑核の脱色素 が認められた症例15例 , 合 計161例である. 黒質,青斑核の脱色素を有する87例の内訳は, 特発性パーキンソニズム67例,進行性核上麻実草4 例,線状体,黒質変性症5例,神経症状の記載が 無か不充分な症例11例であった. 一方,黒質,青斑核の脱色素を有しない

7

4

例の 脱色素(-) 74 j!i~ 続発性(血管!;!病変を有する) ノfーキンソニズム 60例 その他 l Ji泊主折、大のみ 4 fijlJ 脳IJ唱痕 3 iリタ 硬 膜 下l印服 6 i何 Fahr病 1j>iIJ 図l 対象例の疾患別分類

(3)

1048-内 訳 は , 脳 血 管 病 変 を 有 す る 血 管 性 パ ー キ ン ソ ニ ズム

6

0

例 , 硬 膜 下 血 腫

6

例 , 脳 室 拡 大 の み

4

例, 脳 腫 蕩3例, Fahr病1例であった.黒質・青斑核 の 脱 色 素 が あ り , 脳 血 管 病 変 も 合 併 し て い る 症 例 は,主たる病変で分類した(図1). 成 績 1.痴呆の頻度(表1) 全対象

1

6

1

例 中

9

1

(

5

6

.

5

%

)

に精神症状および 痴 呆 が み ら れ , 特 発 性 パ ー キ ン ソ ニ ズ ム

6

7

例 中 で は

4

1

(

6

1.

2%)

,脳血管病変を有する血管性パー キンソニズム

6

0

例 中 で は

3

4

(

5

6

.

7

%

)

であり, 両者聞には有意差がみられなかった.

2

.

随 伴 精 神 症 状 多い順にみると,幻覚が

1

4

例みられ,妄想6例, せ ん 妄4例 , 被 害 的 念 慮3例 , 抑 う つ3例 , 人 格 崩壊2例 , 拒 絶 症1例 , 興 奮1例にみられた.精 神 症 状 が 伴 い 易 い 群 は , 痴 呆 を 伴 う 特 発 性 パ ー キ ンソニズムであった(表

2)

.

表 l パーキンソニズムの症状を呈する疾患の精神 症状および痴呆の出現頻度 正常一軽度 中程度局度 計 特発性 26伊j 41% 67 例 パーキγソニズム (38.8%) (61.2%) 続発す性〔〕血パ管病変を 26 34 有 る ーキンソ (43.3%) (56.7%) 60 ニズム 麻変そ薄性の,症他線な(進状ど行体〕性・核黒上質 (52.9%) 18 (47.1%) 16 34 言 十 (43.5%) 70 (56.5%) 91 (1100%) 61 表2 随伴精神症状 パーキンソニズム 特 発 性 血 管 性 計 痴呆(十〉 痴呆〔ー〕 痴呆(+)痴呆〔ー〕 幻 覚 7

4例目 1

2O1J 14

妄 想 3 1 1 1 6 せ ん 妄 3 1

。 。

4 被害的念慮 2

l

3 抑 う つ 2

。 。

1 3 人格崩壊 2

。 。 。

2 拒絶症 1

。 。 。

l 興 奮 1

。 。 。

1 計 21 6 3 4 34 異常行動は,俳佃が9例で最も多く,弄便5例, 脱 衣3例,狂暴2例, oral tendency 1例で,痴呆 を伴う特発性パーキンソニズムに異常行動が多く み ら れ る 傾 向 に あ っ た ( 表3入 3.年 齢 別 度 数 分 布 ( 図2) 特発性パーキンソニズム

6

7

例中,

6

0

歳 代

1

2

例,

7

0

歳 代

3

4

例,

8

0

歳 代

1

8

例,

9

0

歳 代

3

例で,そのう ち痴呆を有する例は

6

0

歳 代 で

6

(

5

0

.

0

%

)

7

0

歳 代 で

1

8

(

5

2

.

9

%

)

8

0

歳 代 で

1

4

(

7

7

.

8

%

)

9

0

歳 代 で

3

(

1

0

0

%

)

で,特発性パーキンソニズム では,高年齢になるにつれて,痴呆を有する頻度 は高い傾向にあった. 脳 血 管 病 変 を 有 す る 血 管 性 パ ー キ ン ソ ニ ズ ム に ついては,

6

0

歳 代 が

3

例,

7

0

歳 代 が

3

1

例,

8

0

歳 代 が

2

2

例,

9

0

歳 代 が

4

例 で あ り , そ の う ち 痴 呆 を 有 す る 例 は

6

0

歳 代 で

2

(

6

6

.

7

%

)

7

0

歳 代 で

1

8

(

5

8

.

1

%

)

8

0

歳 代 で

1

3

(

5

9

.

1

%

)

9

0

歳 代 で

1

(

2

5

.

0

%

)

となり,痴呆を伴う例は年齢とは無関係 である結果を得た.血管性パーキンソニズムは, 特発性パーキンソニズムに比し,高年齢に認めら れた.これは統計学的にも有意差

(

p

<

0

.

0

5

)

がみ 表3 異常行動 パーキンソニズム 特 発 性 血 管 性 計 痴呆(+)痴呆(-)痴呆(+)痴呆〔ー〕 俳 御 7f列 1例j 1

例 。

9 弄 便 5

。 。 。

5 脱 衣 2

1

3 狂 暴

。 。

1 1 2 oral

1

1 tendency

言 十 14 1 4 l 20 仙 川 い 50 仁コ特発件-~血管性 25 図2 パーキンソニズムの年齢別度数分布 -1049ー

(4)

られた.

4

.

臨床症状との関連 臨床症状をみると,痴呆を有する特発性パーキ ンソニズムでは,筋強剛,振戦,寡動症の3徴候 を有する比率が2

9

%

.

いずれか

2

つの徴候を有す る比率は

5

4

%

.

1

徴候は

8%

で.

r

e

t

r

o

s

p

e

c

t

i

v

e

に みても,パーキンソニズムの症状がはっきりしな かった症例は3例 (8%)であった. 痴呆を伴わない特発性パーキンソニズムでは,

3

徴候をもつもの

68%

と多く

2

徴候は2

0

%

.

1 徴候は

12%

で,痴呆 (+)群は,痴呆 (ー〉群に 比し,パーキンソニズムの3徴候の症状は,そろ いにくい結果

(

p

<

O

.

O

l)を得た. 脳血管病変を有するパーキンソニズムでは,痴 呆 (+)群,痴呆 (一〉群ともに

3

徴候を有す る例は50%以下で,痴呆 (+)群と痴呆 (一〉群 では,差はみられなかった (図

3

)

.

上方視障害,下方視障害,水平眼球運動障害に 圃 3徴候 図 2徴候 問 1徴候 口痴呆のみ % 100

r-

p<O.Ol一寸 n=37 n=25 50 0 痴 呆 n=33 n=23 ( + ) ー ( + ) ー ) 特発性 血管性 図3 臨床症状(1) 限ってみると,特発性パーキンソニズムの痴呆 (十〉群では3

5

%

.

痴呆 (一〉群では33%とほぼ同 頻度にみられた.脳血管病変を有する血管性パー キンソニズムでは,痴呆(+)群で3

8

%

.

痴呆(一〉 群で

4%

と有意

(

p

<

0

.

0

0

5

)

に,痴呆 (+)群は, 痴 呆 (一〉群に比し,眼球運動障害が認められる 例が多かった (図4). 5.脳波との関連 (図5) 脳波に関してほ, α披が主体で,時に θ波が混 在している程度の異常所見は正常とし, α波に0 波がかなり頻発に混在している異常を軽度異常,

α

波に

O

b

u

r

s

t

あるいは時に6波 が認 め ら れ る異常を中程度異常, α渡はみられず.8波と δ 波のみの異常を高度異常とした.脳波異常例は特 発性パーキンソニズム,脳血管病変を有する血管 性パーキンソニズムともに,痴呆 (+)群で高頻 度に認められたが,特発性パーキンソニズムでは, 有意差

(

p

<

0

.

0

5

)

がみられ,血管病変を有する血 1 1ft球運動障害

4 有 q J 図 M y m u

% n=34 n=24 100 50 96 65 67 62 0 痴 呆 (+) ー) 特発性 ( + ) ー ) 血管性 図4 臨床症状 (2) -1050

(5)

脳 波 ,----p<0.05一 「 % n=26 nニ19 100 n=25 nニ13 50 37 15 12 15

痴 呆 ( ー ト ( - ) 血管件 (+) (-) 特 発 性 園 高 度 異 常 国 中 程 度 異 常 図 軽 度 異 常 口 正 常 図5 臨 床 症 状 (3) 管性パーキンソニズムでは,有意差 (p<O.l)は みられなかった. 6.治療との関連(図6) 治療についても検討したが,バーキンソニズム の過去10年間の治療はめざましい発達を遂げて多 くの新しい薬物療法が行われるようになった.本 論文の対象例は過去約10年間の症例であるため, L-dopaに対する反応に限った.L-dopaにより,軽 度および著明な改善をみた症例は,特発性パーキ ンソニズムの痴呆(+)群では

64%

で,痴呆(一〉 群では

80%

に認められた.脳血管病変を有する血 管性パーキンソニズムの痴呆(+)群では

33%

, 痴呆(一〉群では

75%

の効果が認められた(図

6)

.

血管性パーキンソニズムでも軽度改善も含めて検 討すると,痴呆(+)群に比し,痴呆(一)群に L-DOPAの反応: % n=22 n=20 100

h

吋 < 1 ( 戸 50 36 20 25

痴 呆 (+) (-) 特 発 性 図 有 効 口 無 効 図6 臨床症状(4) ( 十 ( - ) 血管性 有意に (p<O.01) 効果がみられた.

7

.

橿病期間(図7) 特発性パーキンソニズムの平均擢病期間は,痴 呆(十〉群で

6

.

3

7

::1::

7

.

8

8

年,痴呆(-)群で

8

.

2

5

::1::

8

.

2

2

年であり,血管病変を有する血管性パーキン ソニズムでは,痴呆(+)群で

4

.

0

8

::1::

4

.

4

2

年,痴 呆(一〉群で

3

.

6

1

::1::

4

.

2

0

年であった.特発性,血 管性パーキンソニズム共に痴呆(+)群と痴呆(一〉 群では擢病期間に有意差はみられなかった.

5

年 毎の度数分布をみると,特発性パーキンソニズム は血管性パーキンソニズムに比し,擢病期聞は長 い傾向がみられ,予後は良い傾向にあったが,有 意差はなかった. 過去10年間の当施設での剖検総数に対する特発 性パーキンソニズムと血管性パーキンソニズムの 割合をみると,図

8

に示すように,最も低い

1

9

7

7

年度は

3.4%

,最も高い

1

9

7

9

年度は

6.5%

で,平均

(6)

1051-例 数 50 25 n=41 仁 コ 特 発 性 医~血管性 n=l n=l 0 5年未満 5年以上 10年以上 15年 以 上 初 年 以 上 25年 以 上 30年 以 上 35年以上 10年未満 15年未満 20年未満25年未満 30年未満 35年未満 40年未満 ?軍病期間 図7 パーキンソニズムの擢病期間の度数分布 % 8 E I~~ 匝 ~州呆布 図8 年度別剖検数に対するパーキンソニズムの割合 4.4%であった. (なお当施設の新病院移転は1973 年6月8日なので, 1973年6月9日-1974年6月 8日までを1973年度とした.) 考 察 古くから痴呆の定義は多くの人々によって論じ られているが,現在それらの定義には幾多の問題 点を残している.最近広く用いられているのは, DSM III 1977年の精神障害の診断基準1)である. 本論文では,病前の性格も考慮し,精神面で社会 生活の自立を失なった状態を痴呆とし,長谷川式 テストを施行されている例は, 10点以下をとり, 施行されていない例は丹念に病歴記録および看護 記録から,長谷川式テストの項目に合う記載を選 び出し,評価点数が, 10点以下を目安にした. 4ーキンソニズムに伴う痴呆の頻度の最近の報 告では, Lorangerら2)は,パーキンソニズムの症 例にWAISを行ない,動作性テストが言語性テス トよりも著しくスコアが低く, 25点以上の差を異 常とみなすと, 36.5%の例が異常であると述べて いる.Martinら3)は, 81%の知能障害がみとめら れ,高度異常は6 %,中程度異常は17%,軽度異 常は58%と報告し, Pollockら引は, 20%に知能障 害がみられ, Selby5)は23%に知能障害, 17%に精 神障害がみられたと報告し,またSweetら6)は, 1/ 3に知能障害がみられたと述べており,報告者によ り , 20-80%の幅がある.本邦では東儀7)の報告が あり,パーキンソニズムを呈した臨床例140例,剖 検例46例のうち,痴呆の頻度は34%であった.剖 検例については黒質の脱色素が認められて,特発 性パーキンソニズムと考えられた17例のうち10例 -1052

(7)

(59%)

に痴呆が認められ,動脈硬化性パーキンソ ニズムの

2

8

例中

1

5

(

5

4

%

)

に痴呆を有していた と述べている. 今 回 著 者 が 行 な っ た 多 数 の 剖 検 例 で の 検 討 で は,特発性パーキンソニズム

6

7

例中

4

1

例,

6

1.

2%

に痴呆をみとめ,また脳血管病変を有するパーキ ンソニズムでは,

6

0

例中

3

4

例,

56.7%

に痴呆をみ とめた. 随伴する精神症状をみると,幻覚,妄想,せん 妄,被害的念慮,抑うつなどが目立った.これら の症状は, L-dopaの副作用で, dopamineの過剰 のための精神症状であるとの報告8)-11)もあり,一 方,軽度痴呆を伴うパーキンソン病はL-dopaの 治療で,パーキンソニズムの症状のみならず,痴 呆も軽快するとの報告川-15)もある.近年,痴呆と コ リ ン 作 動 性 ニ ュ ー ロ ン 系 の 関 係16-19)が論じら れているが,痴呆を伴う特発性パーキンソニズム とコリン作動性ニューロンの障害については,最 近 い く つ か の 論 文 が あ る . 中 野 制 ら はParkin -sonism-dementia complexで 大 脳 皮 質 に 直 接 投 射していると考えられているコリン作動性ニュー ロンのMeynert核の神経細胞が著明に減少して いることを報告している.またWhitehouseら18) はアルツハイマー病で,吉村ら2山幻は,痴呆を伴っ たパーキンソン病で,同様の結果を報告している. 本対象例のうち,痴呆を伴わない特発性パーキ ンソニズムでは 2例が経過中に知能低下が指摘 されたが, L-dopaの投与とともに軽快した.その うち 1例は脳波も θ波が著明に

i

減少し,ほぼ正常 に近い脳波を呈するに至った.L-dopaがこれらの コリン作動系にも影響を与え,痴呆を改善する可 能性も充分考えられる. 年齢別にみると,特発性パーキンソニズムでは, 高年齢になるにつれて,痴呆を有する頻度が高く な る 傾 向 が み ら れ , 脳 血 管 病 変 を 有 す る 血 管 性 パーキンソニズムでは,痴呆を有する例は年齢と は無関係であり,病変部位によるものと考えられ る.高齢者になるにつれて,痴呆の出現頻度が高 くなることはよく知られている.しかし一般に特 発性パーキンソニズムにおいて痴呆出現率が正常 者の6倍も高いとL、う報告却もある. 臨床症状については,パーキンソニズムの

3

徴 候である筋強剛,振戦,寡動症がそろっている例 は,特発性パーキンソニズムの痴呆(-)群で

68%

と最も多く,そのほかの群では,いずれも

50%

以 下であった.特発性パーキンソニズムの痴呆(+) 群では,

29%

と低く,パーキンソニズムの症状よ りも,痴呆症状が前景にみられた症例もあった. 小阪24)ら,吉村25)が指摘しているように,脳幹のみ な ら ず 大 脳 皮 質 に も 大 量 にLewy小体の出現を みる症例があり,このような症例はむしろパーキ ンソニズム症状よりも痴呆が前景にみられると報 告している.この場合には問時に大脳皮質に高度 の老年性変化(老人斑,アルツハイマー原線維変 化など〉が出現するのが特徴である. 脳波に関しては,特発性パーキンソニズムの痴 呆(+)群で,脳波異常例は有意に高頻度にみら れた.血管病変を有する血管性パーキンソニズム の痴呆(+)群でも脳波異常例は高頻度の傾向が みられたが,有意差はみられなった.金子町』土老年 期痴呆患者で,長谷川式テスト得点と脳波の異常 の程度との聞には相関が認められたと述べてい る.白質障害を主とする脳血管性痴呆においては 'Periventricular lucency 徐 波 化 Perfor -mance IQの低下」これに対して老年痴呆におい ては「大脳皮質機能の低下 Verbal IQの低下」 で,脳波異常は軽度にとどまり進行とともに「視 床 非 特 殊 核 の 変 性 一 脳 波 の 徐 波 化-Perfor -mance IQの低下」が加わり,人格荒魔に到るもの と考えられると述べている. L-dopaに対する反応については,特発性パーキ ンソニズム,血管性パーキンソニズムともに,痴 呆(+)群は痴呆(-)群に比し,効果はみられ なかった.特に血管性パーキンソニズムについて は痴呆(一〉群で有意に有効であった.これは軽 度改善まで含めたためと考えられるが,特発性 ξーキンソニズムと血管性パーキンソニズムの鑑 別を困難なものにしている理由でもあると思われ る. 権病期間については,特発性パーキンソニズム は血管性パーキンソニズムに比し長く,予後は良 い傾向がみられたが,有意差はみられなかった. 1053ー

(8)

また痴呆(+)群と痴呆(-)群の聞に大差はみ ら れ な か っ た . Guam島 の Parkinsonism句 dementia 203例の症例では,L-dopaの治療を受け たParkinsonism患者の平均擢病期間は6.2年, L-dopa治 療 を 受 け な か っ たParkinsonism患 者 は 4.1年であり,推計学的に有意差があったと報告27) している. Guam島のParkinsonism-dementiaの 平 均 擢 病期聞は4 - 5年と報告28)29)されている. 本報告では特発性パーキンソニズムの痴呆(+) 群の平均擢病期間は6.37年 , 痴 呆 ( -)群の平均 擢病期間は8.25年で, Guam島の Parkinsonism-dementiaよりは長い.L-dopa治療が開始され,20 年以上の年月が経つが,L-dopa治療が平均擢病期 聞を延長したか否かの判断は必ずしも容易でな い.今回の検討ではParkinsonism症状を呈して いる例の,ほとんどがL-dopaの治療を試みられ ており,非治療群との対比が不可能であったため 明らかにはで、きなかった. 当施設での全剖検数に対するパーキンソニズム の割合は平均4.4%で,過去10年間では増加の傾向 も減少の傾向もみられず,痴呆を有する例が増加 しているとは言えない結果を得た. 総 括 東京都養育院付属病院における10年7カ月間の 連続剖検2,700例から,臨床的にパーキンソニズム の症状が認められ,かつ黒質,青斑核の脱色素が 認められた症例72例と,パーキンソニズムの症状 を呈し,黒質・青斑核の脱色素が認められなかっ た症仔H74例,さらに臨床的に痴呆症状が前景にみ られ,病理学的に黒質・青斑核の脱色素が認めら れた症例15例,合計161例について,生前の精神・ 神経症状を検討した.この内,黒質・青斑核の脱 色素を有し,特発性パーキンソニズムと診断され た例は67例で,黒質・青斑核の脱色素は認めず, fーキンソニズムの症状の責任病変が,血管性病 変と考えられた血管性ノfーキンソニズムは60例で あった. 1)痴呆の頻度は,特発性パーキンソニズム67例 中41例, 61.2%,脳血管性パーキンソニズム60例 中恒例56.7%であった. 2)随伴精神症状は幻覚14例,妄想6例,せん想、 4例,被害的念慮 3例,抑うつ 3例,人格崩壊 2 例,拒絶症 l例,興奮1例であり,異常行動は俳 個9例 , 弄 便5例 , 脱 衣3例 , 狂 暴217"U, oral tendency 1例で,痴呆を伴う特発性パーキンソニ ズムに多くみられる傾向にあった. 3) 年齢別にみると,特発性パーキンソニズムは 高年齢になるにつれて,痴呆を有する頻度は高い 傾向にあった.脳血管性パーキンソニズムは,痴 呆を伴う例は年齢とは無関係であり,血管性の病 変部位がより強く関与しているものと思われた. 4)パーキンソニズムの3徴候は特発性パーキ ンソニズムの痴呆(+)群で29%,痴呆(一〉群 で68%,脳血管性パーキンソニズムでは,疾呆(十〉 群で39%,痴呆(-)群で43%であった. 5)

.

A

病期間に関しては,特発性パーキンソニズ ムは血管性パーキンソニズムに比し,権病期間は 長く,予後は良い傾向がみられたが,痴呆(+) 群と痴呆(-)群では,両者とも大差はみられな かった 本論文の要旨は第25回日本老年医学会総会に(昭和 58年10月〉おいて報告した. 文 献

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参照

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