工業技術研究所プロジェクト研究報告 : 好塩性酵
素の精製・諸性質の解析
著者名(日)
水木 徹, 宇佐美 諭
雑誌名
工業技術 : 東洋大学工業技術研究所報告
号
33
ページ
38-42
発行年
2011
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00002082/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja**プロジェクト研究報告** =工業技術研究所プロジェクト研究報告=
好塩性酵素の精製・諸性質の解析
水木 徹*,宇佐美 諭** 1.はじめに 醤油は小麦・大豆を原料とする麹に食塩水を加え,発 酵させて絞った液体で,日本の伝統的な調味料である. 現在醤油醸造には麹菌等の生産する酵素が利用されてい る.これらは食塩水と混合する仕込み直後に失活あるい は急激に活性が低下してしまう.そのため,遊離したグ ルタミンはγ一glutamyl transpeptidase(γ一GTP),グ ルタミナーゼによる変換を受けることなく,呈味性のな いグルタミンとして醤油中に存在することになる.また, 遊離したグルタミンは非酵素的反応で呈味性のないピロ グルタミン酸に変換されてしまう. グルタミンのグルタミン酸への効率的な変換により,ピロ グルタミン酸への環化を防ぐためには,高塩濃度下でよく 作用する安定なγ一GTPおよびグルタミナーゼが必要である. そこで,高度好塩菌の生産する好塩性酵素の使用を考え た.好塩性酵素は高塩濃度下で高い活性と安定性を有す るため,麹菌の生産する酵素に加え,好塩性古細菌由来 の好塩性γ一GTPおよびグルタミナーゼを添加することに より,諸味中でも酵素反応が長期間安定に進行する.ま た5一オキソプロリナーゼを用いてピログルタミン酸からグ ルタミン酸へと分解することで,旨味成分であるグルタミ ン酸およびγ一グルタミルペプチド含量の高い醤油の生産 や,醸造期間を短縮できる可能性があると考えられる. 2.好塩性古細菌および生産される酵素 2.1 古細菌とは 古細菌(ArchaebacteriaあるいはArchaea)という概 念が提出されて31年近く経過した.本研究では,高度 好塩菌にスポットを当てて研究を行ったが,その大部分 は一部の例外を除き古細菌に属する.古細菌とは,核を 持たない原核生物でありながら,分子生物学的,生化学 的性質が他の原核生物(真正細菌)とは大きく異なって いる一群の単細胞生物である.いくつかの生化学的分子 生物学的性質は,真正細菌よりもむしろ真核生物に似て いる.古細菌の定義は小サプユニット・リボソーム RNA(ssu RNA)の塩基配列によってなされている. 古細菌の発見はWoeseとFoxにより最初の報告が行 われた.彼らは遺伝子の塩基配列を基に微生物を分類し, 進化系統を解析する研究を精力的に行っていた.1977, rRNAの一次構造から生物群は3つのグループ,真核生 物,真正細菌,それに古細菌に大別される事を報告した1). 真核生物と真正細菌を区別することに関してはそれまでも 多くの研究者の支持するところであるので,問題は真正細 菌と古細菌がどれだけ区別できるのかという点にある. まず一番大きな古細菌の特徴は,その膜脂質構造にあ る.古細菌は真正細菌とも真核生物とも全く異なった膜 脂質を持っている.すなわち他の生物が全てグリセロー ルに脂肪酸がエステル結合したエステル脂質を持ってい るのに対し,古細菌はグリセロールにアルコールがエー テル結合したエーテル脂質を持っている.アルコールも 直鎖のアルコールではなく,側鎖を持つイソプレノイドを 骨格としたアルコールである.さらに,グリセロールに 対する疎水性基の結合位置がsn−1,2位ではなく,sn−2,3 位となっている.こうした膜脂質の特徴が,他の二つの 生物群(真正細菌および真核生物)から古細菌を区別す る最も大きな特徴である.もう1つの特徴は,原核生物 でありながらそれまで真核生物に特有の性質と思われて いた様々な生化学的,分子生物学的性質を持っているこ とである.例えば真核生物のDNAポリメラーゼαに類 似したDNAポリメラーゼを複製酵素として持つこと, 翻訳開始のtRNAがフォルミル化していないメチオニル tRNAであることなど,それまで真核生物特有の性質と 思われていた性質を持っていることがあげられる.まと めて言うならば,ある性質を考えたときは真正細菌型で あり,また他の性質を考えたときには真核生物型である という点で,古細菌は真核生物と真正細菌の中間の性質 を持っているという言い方も可能である.また個々の性 質を見たときにも古細菌が中間の性質を示すことはいく つか見られる.例えばタンパク質合成系に対する抗生物 質の阻害スペクトルは両者の中間型である.この性質は 系統樹上の真核生物と真正細菌のほぼ真ん中に位置して いるということと関連している. 古細菌そのものも既に非常に大きな放散進化を遂げて おり,古細菌に属する生物種の間でも既に非常に大きな 差を生じている.メタン菌,硫黄代謝菌,光化学反応を 行う高度好塩菌など,その独立栄養性の一次代謝系は大 きく異なっている.原核生物を分類する際の重要な指標 であるDNA塩基のGC含量も様々な値を取っている. 古細菌は全体としては以上述べたような様々な性質を持 っており,それらは古細菌の系統樹上の位置で説明する *理工学部 **理工学部 応用化学科 東洋大学工業技術研究所報告一38一
水木徹 宇佐美諭
ことができる.しかし,古細菌のある性質の研究を行っ た時には,その取り扱った性質によって,上で議論した ような性質の内のどれか1つの特徴を強く持つことはし ばしばある.しかしその性質に関してはその特徴は成り 立つとしても,その特徴を古細菌に関する唯一の特徴と して強調することは不適当である. 以上述べてきたことの詳細は古賀,亀倉の成書2)に詳 しい. 最近古細菌を含めて多くの生物のゲノム全DNA塩基 配列解析がおこなわれ,全ゲノムレベルでの生物間の系 統関係の議論が活発になってきた.しかし機能の判らな い遺伝子が依然大量に残されているし,古細菌ではまだ 全く調べられていないタンパク質,特に酵素タンパク質 が多数存在するのも事実である. 2.2 好塩菌およびその酵素 原核生物は,その増殖に最適な食塩(NaCl)濃度により, 次のような四つの範疇に分けられる.a)非好塩菌(non halophile,(NO.2 M):殆どの土壌細菌がここに入る. b) 低度好塩菌(slight halophile,0.2−O.5 M):海洋細菌の 多くはこの範疇に入ると考えられている.c)中度好塩菌 (moderate halophile,0.52.5 M):さまざまな含塩試料 中から多数分離される.なかには微量の食塩があれば 1.5M Licl,3−4M Kcl,2.5 M cscl添加培地でも増殖 するMicrOCOCCUS van’ans ssp.haloPhilUSのような株もあ る(Kamekura and Onishi,1982). d)高度好塩菌 (extreme halophile,2.5−5.2 M):Halobacteriumsalinarumに代表される高度好塩菌は,増殖に最低
1.5M以上のNaClを要求する好気性細菌であり,大部分 は古細菌に属する. 高度好塩菌の分離源としては世界中に分布する塩湖が 最適であるが日本には無い.イスラエルの死海,アメリ カの大塩湖を筆頭とする,出口が無く流入水の少ない乾 燥地帯の内陸湖,アラル海のような内海は多かれ少なか れ塩湖になる.一方,アフリカや中国にはアルカリ性の塩 湖も存在する.たとえばケニアのマガディ湖やガール湖の pHは10ないし11であり, Mg2+イオン濃度は検出出来 ない程低い.ここからは好アルカリ性の高度好塩菌が分離 される.中国奥地やチベット高原の多くの塩湖についても最 近微生物学的研究が行われ始めた.日本の海岸近くの塩 がこびり付いた砂からはNatrialba asiatica strain 172P1 が,また観光用の塩田の砂からはHaloarcula jαPonica が分離されている.近年,塩専売制度の廃止により日本 国内でも様々な天然塩が容易に手に入るようになった. 我々の研究グループではこれらの市販天然塩からも多数 の好塩菌を分離している.Ginzburg等は死海から分離された高度好塩菌
Haloarcula marismortuiの菌体内のイオン濃度を詳細 に調べ,定常期の値として,0.5mol Na+/kg cell water; 3.8mol K+/kg;2.3 mol Cl−/kgを得た3).通常の生物 でのタンパク質間,あるいはタンパク質と核酸間の結合 が破壊されるこのような条件の中で,高度好塩菌は DNA複製,転写,タンパク質合成を初め,様々な生化 学反応,酵素反応を進めている.高度好塩菌の好塩性機 構を分子レベルで探る試みは古くから行われており,Zaccai らのグループによるHar. marismortuiのリンゴ酸脱水 素酵素の2.6AでのX線構造解析の研究や, Har. maris− mortuiの50Sリボソームサブユニット結晶の5A分解能で のX線構造解析などの研究として実を結びつつある4}. しかしDNAポリメラーゼ, RNAポリメラーゼ等,高度 好塩菌の他のサブユニット構造をとるタンパク質の研究は 少ないといえる.これらの研究により,属,科,目,さら には界(キングダム)を超えた生物間でサブユニットを入れ 替えたキメラ酵素の形成等の実験も可能となり,タンパク 質化学的にも魅力にあふれた研究対象であると考える. 我々はこれまで好塩性タンパク質の好塩性機構を探る ため,また一次構造の比較から生物の系統関係について 論ずるためという目的で,好塩性古細菌由来の二つの酵 素,ウレアーゼとNucleoside diphosphate kinaseにっ いて研究し,成果を報告している5’・ 6). 3.好塩性酵素の探索 本研究ではγ −glutamyl transpeptidase(γ一GTP), グルタミナーゼ,5一オキソプロリナーゼおよびキチナーゼ に着目し、好塩菌を対象としたスクリーニングを行った。 グルタミナーゼはグルタミンをグルタミン酸とアンモ ニアに加水分解する酵素であり,動物,植物,微生物に 広く分布する.基質特異性は起源によって異なり,L一 型にのみ作用する酵素と両光学異性体に作用する酵素と がある.また,グルタミナーゼは抗がん性を示す. γ一GTPはグルタミル化合物を基質とし,その加水分 解とγ一グルタミル基の転移反応を触媒する酵素であり, グルタチオンの生成と分解パスウェイであるγ一グルタミ ルサイクルのキーエンザイムである.一方,納豆菌のγ一 GTPは,納豆の粘りの本体であるγ一ポリグルタミン酸 の生合成に関与する酵素であるとされている.これらγ一 GTPは動植物界に広く分布し,動物では腎臓,肝臓に多 く存在する.5一オキソプロリナーゼはピログルタミン酸好塩性酵素の精製・諸性質の解析 を旨味成分であるグルタミン酸へと加水分解する酵素で ある.本酵素は全生物を通して報告例に乏しく、まだま だ未知の部分の多い酵素である。 高度好塩菌のグルタミナーゼ,γ一GTPおよび5・オキ ソプロリナーゼに関する報告はこれまで一切無いもの の,これらの酵素は醤油生産などに応用可能と考えられ, 発見・諸性質の解析が進めば有用な酵素となる可能性が 高いと思われる. 一方、キチナーゼはバイオマスとしてセルロースに匹 敵する量が存在するにも関わらず大部分が未使用のまま であるキチンを加水分解する酵素である。高度好塩菌の キチナーゼとしてはHalobacterium sp. NRC−1について 報告があるのみである。 3.1 L一γ一glutamyl−p−nitroanilideを用いたγ一GTP およびグルタミナーゼのスクリーニング 既知の好塩性古細菌および分離株100株をJCM168液 体培地(5.O g/1 Casamino acids(Difco),5.O g/l Yeast extract(Difco),1.O g/l Sodium glutamate,3.O g/l Trisodium citrate,2.O g/1 KC1,20.O g/l MgSO4・ 7H20,200.O g/1 NaC1)に植菌し,37℃で培養した.7 日後,培養液を遠心分離し,培養上清と菌体に分けた. 菌体は25%NaCl,10 mM Tris−HCI buffer(pH 7.6)に 懸濁後,超音波破砕して菌体抽出液とした.培養上清お よび菌体抽出液について,L 7 −glutamyl−p−nitroanilide を用い,グルタミナーゼ活性を確認した.Lγ一glutamyl− p−nitroanilideはγ一グルタミル結合が加水分解され,γ一 グルタミル基が遊離することで溶液が黄色く呈色する. 陽性だった22株のうち,活性の高かったHalobacterium salinarum(cutir”brum)NRC34001, NCIMB2288, Haloarcula strain Toen−14,15,」Haloterrigena strain GS】[ゾ11, Aidin−1,6,7,8A 8B,13,、陥仇αJbαasiatica strain 172P1をJCM168液体培地で再度培養し, glyCy1− glycine存在下,非存在下で活性を測定した. glycyl− glycineを添加することにより,Halobacterium sali− narum NCIMB 2288以外は黄色の呈色が強くなり,γ一 glutamy1基の転移活性が高いことが示唆された.また Toen・14,−15以外は,塩濃度が高いほど強い活性を示す 好塩性酵素だった. 3.2 Haloterrigena strain GSL−11の生産するγ一
GTPの精製
活性の再現性が良いHalotern’gena strain GSIrllの 酵素について性質を調べるとともに,精製を試みた. GSL11株の菌体抽出液を種々塩濃度の基質と反応させ ることで至適塩濃度を測定した.その結果NaCl濃度か 高くなるにつれ活性が高くなる好塩性酵素であることが わかった. 本酵素について疎水クロマトグラフィーによる精製を 試みた.5L容ジャーファーメンターにJCM168液体培 地4Lを調製し, GSL11を植菌,37℃,21/minの通 気,100rpmの撹絆という条件で,5日間培養した.取 得した菌体からはフラスコ培養と同程度の活性が確認で きた.集菌後NaCl−bufferに懸濁して,濃厚な懸濁液約 70mlを得た.その後,デオキシコール酸を用いた菌体 抽出液の取得を試みた.70m1の内10mlをNaCl−buffer 50mlにより希釈した.撹絆しながらデオキシコール酸 ナトリウム(3mg/m1)を少量ずつ加えたところ2.3m1 入れたところでほぽ完全に溶菌した.活性は低下してい なかった.しかし菌体DNAのため菌体破砕液の粘性が 非常に高かったので,超音波処理することにより粘度の 低い菌体抽出液を取得した. 23.7%(NH4)2SO4,25%NaC1,10mM Tris−HCIで平衡化したPheny1−TOYOPEARL 650Cを充填したカラ
ム(1.5x10 cm)を調製した. GSIrllの菌体抽出液を (NH4)2SO4飽和にしカラムにチャージした.硫安濃度 を75,50, 25,0%飽和と下げていったが活性は溶出しな かった.NaCl freeの10 mM Tris−HCI, pH 7.6を流した ところγ一GTPが溶出してきた.反応液にglycylglycine を添加するとより高い活性が認められた.活性各分を Centriprepで濃縮し, Sephacryl S300を用いたゲル濾 過を行い,SDSおよびNative−PAGEを行うことでほぼ 単一と見られるバンドが確認された(図1). 250kDa 150kDa 100kDa 75 kD8 50 kDe 37kD8 25kDa 20kD8 tskDa 10kDa マーカー精製後のサンプル ドい .恒 禦㍗、・ 箆 十 い で 野 ’呉 漫 ,轡滅 ’爵 昧w・ SDS−PAGE Native−PAGE 図1 電気泳動による精製の確認 東洋大学工業技術研究所報告一40一
水木 徹 宇佐美諭 3.3 5一オキソプロリナーゼの探索 5一オキソプロリナーゼはピログルタミン酸を旨味成分で あるグルタミン酸へと加水分解する酵素である.そのた め,別名ピログルタミナーゼとも呼ばれている.動物の 各種臓器,特に腎臓に含まれ,植物,一部の微生物に存 在する.よく知られているラット由来のものは活性には ATP, Mg2+, K+を必要とする.また,微生物由来のも ので活性にATP, Mg2+, K+を必要としないものもある. ピログルタミン酸を旨味成分であるグルタミン酸に変換 するため,食品工業に大いに有用であると考えられる. 高度好塩菌の5一オキソプロリナーゼに関する報告はグル タミナーゼおよび7−GTPと同様にこれまで一切無い. 既知の高度好塩菌45株,および中度好塩菌100株を 液体培地で培養後,培養上清を取得した.上清に含まれ るグルタミン酸を透析膜やMicrocon(Millipore)を用い て除去後,基質溶液(4mM(0.05164%)LPyroglutamic acid,5mM(0.2756%)ATP,0.2%KCI,2%MgSO4・ 7H20,25%NaC1,0.1M Tris−HCI Buffer, pH 7.0)と混 ぜ,反応させた.反応液のグルタミン酸量をF一キットL一 グルタミン酸(J.Kインターナショナル)を用いて測定した. しかしながら全ての株に活性が確認できなかった.そこ で市販天然塩を用いた高度好塩菌のスクリーニングを行っ た.培地はJCM168培地, JCM298培地,0.5%SWYE 培地(5.O g/l Yeast extract(Difco),500 ml 30%SW (0.8g/l NaBr,0.2 g/l NaHCO3,6.0 g/l KCI,1.45 g/l CaCl2・2H20,59.4 g/l MgSO4・7H20,41.5 g/l MgCl2・6H20,234.O g/l NaCl),100ml H20), Sucrose−Pyroglutamic acid培地(5.O g/l Sucrose, 0.3g/lK2HPO4,1.Og/1(NH4)2SO4,20.Og/1 MgSO4・7H20,4.Og/l KCI,250.Og/l NaCl,5.Og/l Pyroglutamic acid)の4種類を用い,分離源として256 種類の市販天日塩を用いた.これにより取得した266株 について上記と同様の手法で活性を測定したところ, JCM298培地で取得した95株の中で11株のみに活性が 確認された.中でも活性が最も高かった342株について 16S rRNA遺伝子塩基配列の解析を行ったところ新属の 可能性があることがわかった.現在,34−2株の同定およ び生産する酵素の精製を行っている. 3.4 キチナーゼの探索 キチナーゼはキチンをキチンオリゴ糖に加水分解する 酵素である.キチンオリゴ糖は免疫賦活作用,整腸作f乱 難消化性を有する事から機能食品への応用が期待されて いる.5糖以上のキチンオリゴ糖はキチンの酸分解では 効率よく得られないため,近年キチナーゼの利用による 5糖以上のキチンオリゴ糖の産生が試みられている. キチン添加JCM298培地(3.Og/1コロイダルキチン, 2.5g/l glycerol,2.5 g/l sodium pyruvate,0.5 g/l K2HPO4,1.O g/1(NH4)2SO4,20 g/1 MgSO4・7H20, 4.O g/l KCI,250 g/l NaCl,2.O ml Trace metal solution)を調製し既知の好塩性古細菌を植菌および天 然塩サンプルの塗布を行った.コロイダルキチンの分解 によるハロー(クリアスポット)の形成により7株のキ チナーゼ陽性株を取得した.現在、陽性だった7株のう ち,活性の高かったHalotem’gena sp. strain GSL−11の 生産するキチナーゼについて精製を行っている. 4.考察 本研究ではグルタミナーゼ,γ一GTP,5一オキソプロリ ナーゼおよびキチナーゼを生産する高度好塩菌を探索 し,取得した.今後は精製がほぼ完了したγ一GTPにつ いては,諸性質やアミノ酸配列・遺伝子配列の解析を進 めていく。一方、他の精製標品が得られていない酵素に ついては今後精製を行い、精製酵素の諸性質やアミノ酸 配列を解析していく必要がある.好塩性古細菌由来のグ ルタミナーゼ,γ一GTP,5一オキソプロリナーゼはどれも これまで報告がなく,これらが非好塩性の酵素と性質や 構造にどのような違いを有するのか興味深い. タンパク質の好塩性は二つの面から考えることが出来 る.一つは高い塩濃度で活性が最大になる性質,もう一一 つは安定性に高い塩濃度を要求する性質である.本研究 で取得した酵素はいずれも好塩性酵素であった.これら の好塩性酵素を醤油の製造工程で添加することで,グル タミンやピログルタミンを分解し,旨味成分であるグル タミン酸にすることができれば味の向上・製造時間の短 縮などのメリットが得られる可能性がある(図2). 将来的に酵素の精製・本酵素の遺伝子塩基配列の解析 後は,大腸菌もしくは好塩性古細菌を宿主とした酵素の 大量発現を試みるとともに醤油の製造工程への応用の可 能性を模索していく.
大豆
↓麹薗 各租アミノ酸←
醤油図2
グルタミン ピログルタミン酸 (酸味) グルタミン酸 (旨味) 5−oxo−L−P「〔}linase 醤油の製造工程への好塩性酵素の利用好塩性酵素の精製・諸性質の解析 参考文献 1)Woese,C.R. and GE.Fox,:Phylogenetic structure of the prokaryotic domain:The primary kingdoms, Proc.NatLAcad.Sci. U.S.A., voL74, pp.5088−5090(1977) 2)古賀洋介, (1998) 亀倉正博,古細菌の生物学,東京大学出版会, 3)Ginzburg,M., LSachs, and BZ.Ginzburg,:Ion Metabolism in a Halobacterium:1. Influence of age of culture on intracellular concentrations J.Gen.Physiol., voL55, pp.187・ 207 (1970) 4)Madern,D., C.Pfister, and G.Zaccai,:Mutation at a Single Acidic Amino Acid Enhances the Halophilic Behaviour of Malate Dehydrogenase from Haloarcula Marismortui in Physiological Salts, Eur.JBiochem, voL230, pp.1088−1095 (1995) 5)Toru Mizuki, Masahiro Kamekura, Shiladitya DasSarma, Tadamasa Fukushima, Ron Usami, Yasuhiko Yoshida. and Koki Horikoshi,:Ureases of extreme halophiles of the genus H㎡oa1℃ula with a unique structure of gene cluster, Biosci. Biotechnol. Biochem, voL68, No.2, pp.397406(2004) 6)Toru Mizuki, Masahiro Kamekura, Ishibashi Matsujiro, Ron Usami, Yasuhiko Yoshida. Tokunaga, Masao and Koki Horikoshi,:Nucleoside diphosphate kinase of halobacteria −Amino acid sequence and salt−response pattern’, J. J. Soc. Extremophiles, voL3, pp.1827(2004) 東洋大学工業技術研究所報告