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セリウム触媒を用いる二置換ベンジンアルコールの酸素酸化反応

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セリウム触媒を用いる二置換ベンジルアルコールの

酸素酸化反応

吉 國 忠 亜・須 田 裕 美 群馬大学教育学部理科教育講座化学教室 現在、群馬県佐波郡境町立剛志小学 (2004年 9 月 22日受理)

The oxidation of disubstituted-benzylalcohol

by molecular dioxygen using serium catalyst.

Tadatsugu YOSHIKUNI and Hiromi SUDA

Department of Chemistry, Faculty of Education, Gunma University Maebashi, Gunma 371-8510, Japan

Present address : Goushi Elementary School established by Sakai town.

(Accepted September 22, 2004)

1.緒 論

抗気管支炎症治療薬、食品添加物、染料、農薬や化学薬品などの中間体として用いられている二 置換ベンズアルデヒドを得る方法は多く発表されているが 、天然物原料供給難、低収量、 害廃 棄物、合成中の位置異性化など種々の制約がある 。しかし、クレゾール誘導体を原料にして酸化 すれば構造が確立しているので、かなり合成工程を短くして目的の二置換ヒドロキシベンズアルデ ヒドを合成できると予想できる。しかしながら、クレゾール類を直接酸化すると、フェノールカッ プリングを受けて多量体を形成し、本来の反応が行われないなどの欠点が多く報告されている 。 汎用な化学酸化剤を用いると、予期されたように過剰な酸化反応が起こり、黒い粘性物のポリマー が生成し、わずかに生成した目的物も後続および並列反応により収量が激減した。 これらの要因を解決するために、触媒としてセリウム塩およびセリウム錯体を 一触媒として存 在させ、酸素 子を酸化剤とするクレゾール類からヒドロキシベンズアルデヒド類を得る方法を開 発した 。セリウム錯体を触媒とし、酸素 子で酸化反応を行うと、キノンや二量体を副生せず にクレゾールから高収率でヒドロキシベンズアルデヒド類を得ることが可能となった。 セリウム 一触媒を用いるクレゾール類の酸素酸化反応によって、目的物の二置換ヒドロキシベ

(2)

ンズアルデヒドが高収率で得られる様になった。同時に、副生成物としてベンジルエーテル、カル ボン酸およびエステルも条件の違いで少量生成するので、これまで行われた合成上の反応機構を解 明する手段として、目的物のアルデヒドや反応中間体エーテルの生成速度定数および熱量測定が行 われた。この理由としては、本来、クレゾールの酸化反応において、クレゾール誘導体のアルキル 基から系統的に生成すべきベンジルアルコールの割合が極端に少なく、アルコールの誘導体である エーテルの割合が多く生成する為に、反応機構の解明が急がれていた。 ここでは、ジメトキシヒドロキシベンジルアルコールを原料とし、酢酸セリウムを触媒として用 いて酸化剤となる酸素 子の存在下に反応させ、アルデヒド生成過程の速度論的実験を行い、熱化 学的データを比較した結果、良い知見を得たので報告する。

2.実 験

2.1 装置: 高速液体クロマトグラム 析装置は、島津 LC-6A と 9C 型を用いた。 2.2 反応物の 取と同定: カラムクロマトグラフ装置にワコーゲル C200(20g)を入れ、ヘキ サン/酢酸エチル=2:1混合溶液で調整した。反応後の抽出処理した残留物を、少量の酢酸エチル に溶かして上記装置に入れ、ヘキサン/酢酸エチル=2:1混合溶液を用いて展開抽出した。各 画 の抽出液は、エバポレーターで溶媒留去し、酢酸エチルで再結晶した。各々の結晶は、元素 析、 NMR、IR 及び MS スペクトルの測定により同定した。 2.3 生成物の HPLC 定量: 反応生成物の処理後、内部標準品を含む定量液は、逆相カラムを用 いて高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)により、検出波長 279nmで測定し、別種未反応標準品 を封入した内部標準法により定量した。収率は合成した各々の純品と内部標準品(エトキシ安息香 酸)との面積比から、求めた各成 の理論値より算出した。固定層は、YMC―ODS―A312を用い、 移動層は CH CN/H O/H PO (300ml/700/0.6)の混合溶媒を用いて行った。 2.4 薬品: 全ての溶媒と試薬は、市販品を精製して用いた。薄層クロマトグラフ(TLC)は、 メルク製 SILG ―200UV254を用い、カラムクロマトグラフ用充塡剤は、和光シリカゲル C200を用 いた。

3.結果と 察

原料のジメトキシベンジルアルコール 1は、メタノール溶液中において酢酸セリウムを 一触媒 として存在させ、酸素 子を酸化剤として用いて高収率で目的物のジメトキシヒドロキシベンズア

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ルデヒド 2を生成するが、反応条件によっては並行してエーテル 3、カルボン酸 4およびエステル 5 も生成する(スキーム 1)。 これまでの系統的な実験からジメトキシクレゾールの酸素酸化反応では、前駆体として化合物 3 が順次生成しながら目的化合物 2に変化し、厳しい条件においてエステル 5が生成していく。本来 の反応過程から えると化合物 1が生成すべきだが、実際には かしか検出されなかった。 図 1は、各成 の標準品を同一溶媒に溶かした混合溶液を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)に よって測定したクロマトグラムである。最後のピークは内部標準品として封入したエトキシ安息香 酸であり、原料の酸素酸化反応後に処理した反応生成物に別途加えて、全ての 画を同時に測定す る事により定量精度を高める事を念頭に置いてある。

Fig.1. Chromatograms of HPLC for the sample, oxidation products and intra-standard compound.

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図 2は、HPLC で測定した各成 の 離シグナルを示したものである。測定用固定剤は、最蜜充 塡逆相カラムを用い,移動層の調整により各成 の保持時間(リテンションタイム)において、定 量 析に必要なランバート・ベール則に適合する良い直線を得ることが出来た。

図 3は、化合物 1をオートクレーブに入れ、メタノール溶液中で触媒を用いずに酸素 子の 囲気 下に加熱攪拌して得られた化合物を経時的に表したものである。

Fig.3. Oxidation by dioxygen molecule of compound 1 without the presence of catalyst. □ : 1, ○ : 2.

Fig.4. Effect of reaction temperature. Compound 2: ■ ; 80℃, ◆ ; 90℃, ▲ ; 100℃, ● ; 110℃. Compound 1: □ ; 80℃, ◇ ; 90℃△ ; 100℃, ○ ; 110℃.

(5)

原料の化合物 1は 1時間後から急速に減少して変化しているが、目的のアルデヒド化合物 2は 3―5 時間でも約 2―3%しか生成しなかった。カルボン酸もエステルも生成していない事から、原料化合 物 2 子が保持する弱酸性フェノール基とベンジルアルコール基によるダイマーが生成した為、 HPLC のカラムにトラップされて検出されなかったものと思われる。触媒が存在しなければベンジ ルアルコールは、酸素 子の関与する自然酸化の反応が極めて乏しいことがわかった。 図 4は、化合物 1の酸化反応における反応温度の変化による収率変化を表したものである。80℃ から 110℃までの反応温度において、反応温度が高いほど急激に化合物 1が減少している。90℃から 110℃では、反応時間が約 3時間で原料は消失しているので、いずれかの酸化生成物に変換されたと えられる。化合物 2の生成は、90℃から 110℃まで反応温度で 80%から 90%の最大収率を示して いる。最大値は温度が高いほど短時間になるが、得られた目的化合物が に酸化反応されてカルボ ン酸やエステルを生成する副反応が起こるため、化合物 2の収率が徐々に減少している。 図 5は、80、90、100、110℃の反応温度を設定し、それぞれの一定温度において規定時間の 0.5, 1.0、1.5、2.0、2.5時間のそれぞれで得られた収率から求めた速度定数をプロットしたものである。 90℃から 110℃までの範囲では各線が原点を通過するが、80℃のみが負の切片を持っている。 80℃の切片は、1 子ベンジルアルコール基と 1 子フェノール基の緩い 子会合と二量体結合に 起因するものと思われるが、反応前駆体であるので再度反応して目的物を生成する。 表 1は、80℃から 110℃までの反応温度を絶対温度に換算し、図 5からそれぞれの温度で得られた 速度定数(k)を自然対数(ln k)として表したものである。 図 6は、反応の活性化エネルギー(Ea)を求める為に用いられるアレニウス式 k=f exp(-Ea/ RT)を変形して ln k=ln h -Ea/RT とし、それぞれ測定した絶対温度(T)の逆数(1/T)と速度 定数の自然対数(ln k)をプロットしたものである。

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アレニウス式の変形式から判る様に、ln kと絶対温度の逆数(1/T)は比例関係にあり、その傾きか ら活性化エネルギーが求められる。図 6の直線の傾きから得られた活性化エネルギー(Ea)は、6.55 kcalすなわち 27kJ/Kmol であった。

著者等の既報によれば 、化合物 1のエーテル化合物 3から目的化合物 2への反応活性化エネル

ギーは 81.4kJmol であった(スキーム 2)。

化合物 DM C → 3への変化は 67 kJ/Kmolの Eaを要し、化合物 3→ 2の変化は 81 kJ/Kmolと に大きな Eaを必要とした。それと比べれば、化合物 1→ 2の活性化エネルギーは約 3割と小さい値 (27 kJ/Kmol)を示している。それだけ化合物 1→ 2の酸化反応が容易である事を示唆している。 実際に化合物 DM C の酸素酸化反応の生成物として化合物 1は、微量しか検出されておらず、生成 しても速やかに酸化されて化合物 2になる。化合物 DM C の酸素酸化反応によって化合物 1が微量 しか生成しないので、パラメーターは測定されていないが、化合物 3が生成する活性化エネルギー の 67kJ/Kmolよりもかなり大きな活性化エネルギーを必要とするものと思われる。セリウム錯体に 配位した酸素 子による基質変化が逐次的に進む事を示唆している 。

Fig.6. Arrenius plot for cerium acetate in methanol solution. Condition : see in Table 1. Table 1. Effect of the reaction temperature

Sample Reaction temperature Reaction constants No T/K (1/T)1000 k/min. ln k 1 383 2.611 1.03 0.0291 2 373 2.681 0.5593 −0.5811 3 363 2.755 0.3942 −0.9308 4 353 2.833 0.3151 −1.1549 Conditions: 1, 2 mmol;Methanol,10ml; O , 3kgcm ; Cerium acetate, 0.01 mmol.

(7)

アルコールを酸素 子で酸化する方法は、近年になって 子レベルでの反応物解析が行われるよ うになったが 、生成物はケトン やカルボン酸が主であり、本研究のように不安定なカルバアル デヒド類が容易に得られるのは貴重な反応とある。

謝 辞

本研究の一部は、EH ㈱深江・技術科学研究基金と三菱化学㈱研究基金の援助によって行われたの で、深く感謝の意を表します。 参 文献

( 1)D.J.P. Yeardley, G. Ungar, V. Percec, M.N. Hplercaand G. Johansson, J. Am. Chem. Soc., 122, 1684(2000). ( 2)E.S.B. Ferreira, A.N. Hulme, H. McNab and A. Quye, Chem. Soc. Rev., 33, 329(2004).

( 3)D.A. Sawyer, R.M. Beams and G.J. Blackwell, J. Med. Chem., 38, 2130(1995). ( 4)A.E. Shilov and G.B. Shulpin, Chem. Rev., 97, 2879(1997).

( 5)K.Auty,B.C.Gilbert,C.B.Thomas,S.W.Brown,C.W.Jones and W.R.Sanderson,J.Mol.Cat.A : Chem.,117. 279(1997)

( 6)Z. Bodner, T. Mallat and A. Baiker, J. Mol. Cat. A : Chem., 110, 55(1996)

( 7)S. Mandal, Y. Lee, M. M. Purdy and L. M. Sayer, J. Am. Chem. Soc., 122, 3574(2000). ( 8)M. Okamoto and T. Yamaji, Chem. Lett., 212(2001).

( 9 )P.J. Baeajou, W.L. Driessen, G. Challa and J. Reedijk, J. Am. Chem. Soc., 119, 12590(1997). (10)T. Yoshikuni, J. Chem. Tech. Biotechnol., 59, 353(1994).

(11)T. Yoshikuni, J. Mol. Cat. A : Chem., 148, 285(1999). (12)T. Yoshikuni, J. Mol. Cat. A. Chem., 187, 143(2002).

(13)M.I. de Heer, P. Mulder, H.G. Korth, K.U. Ingold and J. Lusztyk, J. Am. Chem. Soc., 122, 2355(2000). (14)E.A. Lewis and W.B. Tolman, Chem. Rev., 104, 1047(2004).

(15)T. Mallat and A. Baiker, Chem. Rev., 104, 3037(2004).

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参照

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