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大学での食育の試み

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(1)

椙山女学園大学

大学での食育の試み

著者

續 順子

雑誌名

生活の科学

35

ページ

7-17

発行年

2013

URL

http://id.nii.ac.jp/1454/00001941/

(2)

大学での食育の試み

管理栄養学科績 順子

はじめに  平成17年7月に施行された「食育基本法」の前文には、「食育を、生きる上での基本で あって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付けるとともに、様々な経験を 通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践すること ができる人間を育てる食育を推進することが求められている。」と記載されています。  椙山女学園は、「人間になろう」という教育理念に基づく人間教育の一環として、平成 19年度より椙山女学園食言推進センター(以下センター)を設けて、学園における世々に 関する事業を総合的かつ計画的に推進しています。この小論では、センターを中心とした 椙山女学園での食育の取り組みの中で、主に大学での活動・研究を紹介します。 椙山女学園食育推進基本指針  センターでは、学園における食育を推進するに当たって幼稚園から大学までと協働して、 学園で学ぶ園児・児童・生徒・学生に培いたい「食」に関する力を明らかにした「椙山女 学肉食育推進基本指針」を策定しています1)。その概要を図1に示します。初版は平成20 年7月に定められましたが、図1に示すのは、学習指導要領の改訂を受け平成23年3月 に一部改訂を加えたものです。  この図1は上述のように学習指導要領に基づくものですが、食育の学習項目の大半は中 学校までの義務教育で取り上げられ、高等学校、大学で学ぶべき事柄は、「食事バランスガ イドを利用できる」「食事摂取基準を利用できる」「自らの食が次世代の健康に与える影響 を知っている」と、「食品容器のリサイクルに協力する」の4項目にすぎません。  しかし、現実の生徒・学生がこのような食油の力を達成しているかどうかは、調査によっ て明らかにされることが必要です。

学園生徒・学生の食の実態調査

 センターでは、平成20年10月に園児・児童・生徒・学生の「食」に関する力の現状を 把握するための広範な実態調査を行っています。その内容は、センター報告として刊行さ れています2)が、図2では、調査結果の中から、中学生以上の一日の食事に対する質問へ の回答を抜き出し、まとめて示しています。  この図2の各調査項目への回答分布を見ると、食事の回数や摂り方、どのように食事を するかといった点で、中・高校生と大学生との問にギャップが生じていることが分かりま す。この調査の対象とした大学2年生では、「自分の食生活を適切と考えますか」「栄養バ ランスを考えて食べていますか」「食べ物を適切に選択できていますか」という問いに対し

(3)

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大学の食環境改善へ向けて

 大学での具体的な食行動の改善は、昼食に関する環境整備による支援が現実的であり、 また必要と考えられます。私たちは、まず一部学生を対象にした質的調査(フォーカス・ グループ・インタビュー)を行って食環境に対する問題点と解決への方策を探り3)、これ を踏まえてより広範な学生に対する量的調査(アンケート調査)によって全体像と検討課 題を明らかにすること4)を推進しています。

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質的調査

 一般学生を代表するものとして、本学教育学部子ども発達学科在学生に協力を依頼し、 同意が得られた5名と7名のグループについてフォーカス・グループ・インタビューを実 施しました。  インタビューは、①どのような食生活を送っているか、②栄養バランスに配慮した昼食 を選択できているか、③昼食の選択理由はどのようなことか、④中学・高校のときの家庭 科で習った知識・技術はメニュー選択に役立っているか、⑤より適切な「食の選択」がで きるためのキャンパス内飲食施設への要望、⑥より適切な「食の選択」ができるためにキャ ンパス内(飲食施設以外)でどのような環境があるとよいか、を話題として、司会者は事 前に検討・準備した台本に基づきながら、メンバーの発言を促しつつ録音を行いました。  録音から記述録を作成して、これに基づいて各話題についての回答項目を抽出し、それ らをKJ法を用いて分析・整理した結果を図3に示しています。  図3に見られるように、大学生になって家で食事を摂る回数が減り栄養バランスが悪く なる中、「食生活に関する基本的な知識」が乏しく、また「適切に昼食を選択する環境」に 乏しいため、昼食が適切に選択できていないと考えられました。また、「女子大らしい健康 に配慮したメニュー(ヘルシーメニュー)があるとよい。」「一日に必要とされる栄養のう ち、どのくらい摂れるのか表示されているとよい。」「バランスのよいパターンを示してく れると参考にする。」などの意見を踏まえた「適切に昼食を選択する環境」を整備すること が適当と考えられます。実践的な料理教室の開催なども「食」に関する知識とスキルを身 につける機会として検討されて良いと思われます。

量的調査

 質的調査の分析・検討を基にアンケート項目を設定し、調査で得られた方向性の検証を 進めました。質的調査は、一般的な大学生という視点で対象者を求めましたが、生活科学 部管理栄養学科の在学生は、将来栄養教育の実践・指導を行う者として教育を受けていま すから、食育についての知識もあり、食に対する意識も高いと考えられます。そこで、管 理栄養学管掌学生は一般学生と区分し、また、下級生と上級生もその知識量の違いを考え て分けて扱うこととしました。  集計データの統計的検討はKruska1−Wallisの検定またはん2検定により実施し、5%レベ ル以下での有意性が認められた場合には残渣分析によって残渣の絶対値が2.0以上の項目 を抽出しました。これらの項目は以下に示す野中では、背景を灰色にして強調されていま す。

大学生の食生活

 表1にまとめた食生活の実態とその自己評価に関する質問では、朝食の欠食率が全般的 に明らかで、管理栄養学科上級生で朝食を「ほとんど摂っていない」比率が相対的に高い 結果でした。知識と実践との乖離があると言わねばならないでしょう。

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 一般学生では、夕食を「ときどき食べない」が約4分の1に達しています。アルバイト 等により帰宅時問が遅くなることなどがその要因のようですが、大学生の生活様態がその 食行動に影響を与えているようです。  大学での食行動として支援・改善を図りたい昼食の栄養バランスについての自己評価で は、管理栄養学科上級生で低い評価が多く、改善の余地があると見られますが、学生食堂 の利用率が全体で12%なので、より良い食事とその食育情報の提供を進めながら、利用率 の向上を図ってゆくことが課題と考えています。  食事バランスの自己評価については、夕食、昼食、朝食とその評価が低下していて、食 に関する知識と現実の食行動にギャップを感じている学生が少なくないことを示している ようです。学習した知識に基づいて行動できる環境を整備する努力が必要であると言える でしょう。

学生食堂の利用改善

 学生食堂の環境をどのように改善すれば、食育への関心とともに利用率を向上させられ るかについて、質的調査で示された改善策への応答を表2にまとめています。  食堂での「メニューの選択理由は何ですか」での応答で、「栄養バランス」への注目度が 高い管理栄養学科上級生の利用率が一番低いことは、学生食堂の内容や環境を改善すべき 必要性が高いことが伺われます。  メニュー選択のための情報提供については、提案した五項目について全般に好意的な応 答が得られましたが、多くの項目で管理栄養学科生に比べて一般学生の期待・要求が低い 傾向がみられました。管理栄養学科生には既習事項の再確認となる内容が、一般学生には 新たな学習を追られるものという側面もあって、抵抗感が残るようです。提供情報の活用 に必要な基礎知識習得の機会を確保する必要があると思われます。  情報提供の形態については、ランチョンマット、卓上メモといった手軽な媒体に親しみ が高く、冊子状のパンフレット、フローシート、テレビ上映などにはやや抵抗感があるよ うです。食事前にしっかり読み込んで学習・確認することを求めても、受け入れられにく いのは頷ける反応と言えるでしょう。  希望するメニューに関する質問では、管理栄養学科下級生が新しいメニューに高い希望 を寄せている状況が見られました。それだけ現実の生活での食に関する興味関心が高いと 考えられます。大学生活での食環境改善を推進することで、上級生になってもぞうした興 味関心を維持・発展させられるよう、工夫と努力が求められていると感じています。

大学生の食の知識

 表3には、調査対象者の食育学習への関心や背景についての質問応答をまとめています。  戦野についての図書資料や映像教材については、管理栄養学科在学生がその所在を良く 知っていて、利用経験もあり今後の利用意欲も高いことは、当然のことと言えます。課題 は、一般学生の約半数がこれらを今後とも利用しない(だろう)と、低い関心しか持てて

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いないことでしょう。  中学・高校で学んだ食関連項目の知識とその活用については、バラツキのある応答が得 られています。図1で示した食育推進基本指針の描く学習イメージは、達成目標ではあり ますが、到達出来ている内容とは言えないようです。  一般学生にも大学での教育課程の中で、現在および将来の生活の基礎として食に関する 学習の必要性を認め、関心を寄せていけるような働きかけが必要だと思われます。大学食 堂がそうしたきっかけを与える一つの場となり得ると期待しています。 まとめ(大学食堂での食育推進)  食育の充実を目指す大きな流れの中で、椙山女学海食育推進センターを中心とした取り 組みの概要を紹介してきました。大学生の食意識と食行動を調べた限りでは、中学校・高 等学校での食育の成果が十分とは言えないようです。また、若い人々の食行動を支える環 境が十分整っているとも言えないでしょう。  椙山女学園ではセンターを中心とした上記の取り組みを発展させて、大学内での食育推 進活動を進めています。大学内の食堂を委託している業者および学内のコンビニ店舗と協 力して、管理栄養学科生による女子学生向けメニューおよび弁当の開発を行っています。 開発メニューや弁当だけでなく、全メニューについて成分値とバランスガイドを示すカー ドを添付し、食堂ではメニュー表にも同様の情報を提供しています。学生がこれから食べ ようとする食の情報を現場で目にすることを通じて、食意識の向上、食行動の改善を進め て行ければと期待しています。また、同様の取り組みを学園全体に広げ、初等・中等を含 めた学校教育全体の場で、食育がしっかり根付いて行けるよう、努力を重ねています。 参考文献  め椙山女学園.椙山女学園食育推進基本指針。2008.  h£tp://www.s撹giyama−u.acjp/shokuiku/shok撹ik穫/index.ht韻(2012年11月12日アクセス可能)  2)椙山女学園食育推進センター.平成20年度椙由女学園「食」に関する実態調査結果の概要,2009.  3)面輪正夫、績順子.椙山女学園大学における食環境整備,第1報:女子大学生の「昼食の選択」に関   する意識などについて(質的調査).椙山女学園大学研究論集第43号.2012.  4)績順子,中島正夫.椙山女学園大学における食環境整備,第2報:食行動および食育に関する一般学   生と專攻学生の比較.椙山女学園大学研究論集第43号.2012.

参照

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