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呼吸器疾患患者の在宅末期医療を経験して 利用統計を見る

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(1)

平成9年9月1日

呼吸器疾患患者の在宅末期医療を経験して

大久保修一 宮下義啓 青野ひろみ 安田公彦

佐藤里恵 浅野ひろ

1)大久保内科呼吸器科クリニック、2)山梨県立中央病院呼吸器内科、

     3)山梨県看護協会貢川訪問看護ステーション

要旨

 在宅での終末期医療を希望した呼吸器疾患患者7症例の背景を検討した。そ

の結果、在宅終末期医療は常に最高の選択とは限らず、状況により変化する

ために再評価が常に必要であると考えた。また慢性呼吸不全患者では悪性疾

患患者と比較して終末期医療の”開始”と”終了”が明確でないため、この

再評価がより困難であると思われた。

はじめに

 近年、在宅医療が充実されていくなか、今まで社会的入院を強いられてき

た患者や、治癒困難な疾患の患者にとって、病院内での非日常的な医療から

解放され、 自宅という日常生活の中で医療を受けることが可能となりつつ

ある。在宅医療のなかでも、とりわけ終末期医療は質の高い量的にも多くの

ケアを必要とし、さらに、呼吸器疾患患者では、人工呼吸器の装着などきわ

めて繊細な問題を含んでいる。

目的

 今回我々は、患者または患者と家族が在宅での終末期医療を希望し、結果

として自宅または病院で死亡した7名を経験した。この経験を踏まえて一診療

所で可能な在宅終末期医療の在り方について少し検討した。

対象および方法

 対象は肺癌3例、縦隔腫瘍1例、悪性リンパ腫1例の悪性疾患5例と非定型抗

酸菌症1例、肺気腫1例の慢性呼吸不全症例2例の合計7症例である(表1)。こ

れらの症例について、在宅での介護に本当に適当であったか評価するための

在宅介護スコア、主介護者、訪問看護の有無、最終的に終末期を迎えた場

所在宅終末期医療に移行するまでの入院回数、在宅療養期間、終末期の入

院期間について検討した。

一96一

(2)

山梨肺癌研究会会誌 10巻2号 1997

結果および考察

性別および年齢は男3例、女4例で、年齢は53才∼83才、平均71.8才。告知

の内容については症例ごとさまざまで、症例D日ま告知をされてはいるもの

の、病名を告知し、それが治らない状態であることを告知し、さらに予後に

ついて告知した、完全な告知をした症例はなかった。非悪性疾患の2症例につ

いては長期にわたる入工呼吸器の装着は本人は否定的であるものの、家人と

もどもの意見の一致は得られていなかった。

表1対象および患者背景

iliEiasEscMiS1lpt

A

B

C

D

E

F

G

83

78

53

70

61

80

78

女  前縦隔腫瘍

男肺癌T3N3MI IV

男   悪性リンパ腫

女   肺癌T2N2MO・IIIA

女肺癌T3N3MI IV

女   非定型抗酸菌症

男  肺気腫

無し

不明

在宅介護スコアは川崎市立井田病院で使用している在宅介護スコア表を使

用した(図1)。調査項目は介護者、収入、住宅環境と患者のADLについて

総括的に評価できるように16項目にわたっている。各項目の合計点数が高い

ほど在宅介護の可能性が高まり、11点以上で在宅介護が可能であると考えら

れている。今回の対象症例では11∼15点で、すべての症例で11点以上であっ

た。スコア点数の高さと、終末期を自宅で迎えることが出来たか否かは関係

無かった(表2).結局終末期を病院で迎えた症例については、その理由に介

護力不足があったとは考えにくかった。

表2 介護者、在宅介護スコア、終末期医療

lilit−一“;&2 ZMigXltEflfi2EigUk2SZewl

A

B

C

D

E

F

G

11

12

15

15

11

12

11

実娘

ヘルパー

有(昼)

有(昼)

有(24血)

有(昼)

有(昼)

無し

有(24h)

(24血)は24時間対応の訪問看護

自宅→自宅

自宅→自宅

自宅→自宅

自宅→病院

自宅→病院

自宅→病院

自宅→病院

主介護者は、妻が3名、夫が2名、実の娘とヘルパーさんが各々1例であった。

一97一

(3)

平成9年9月1日

 訪問看護の有無では、非定型抗酸菌症による慢性呼吸不全患者のFさん以外

はすべて訪問看護を受けた。Fさんは、急性増悪を繰り返し、入院回数が多い

ために、独居でもあり急性増悪予防のため地域の保健所へ訪問看護を依頼し

たが、結果として地域の保健所にその必要性は理解されず、改めて慢性呼吸

不全患者の病態の理解の浅さを痛感した。患者や家族の安心感、機動力のあ

る訪問診療を行うためには、訪問看護は24時間対応の出来る訪問看護ステー

ションが望ましいと感じた。

 在宅医療に至るまでの入院回数、在宅療養期間、終末期の入院期間、と当

初自宅での終末期医療を希望しながら、末期を病院で迎えた理由を表3に示

す。

 悪性腫瘍(A∼E)では入院回数が1∼2回と少なく、診断、治療をある程度

終了した時点で、早期に在宅終末期医療へ移行していることがわかる。悪性

疾患では、その病期から予後が比較的予測しやすいため終末期医療の開始と

終了を判断しやすいためと思われた。

 一方非悪性疾患では、繰り返す急性増悪のため入院回数が6∼7回と多く、

どの時期を終末期とするのかの判断が困難になっているようであった。

 症例Gは、肺気腫による慢性呼吸不全状態で在宅酸素療法およびNasal

BIPAPによる在宅人工呼吸器療法を行っていた。退院してはCO2ナルコーシ

スをくりかえし、そのたびに気切による陽圧式人工呼吸器の適応について再

三、訪問看護婦も交え家族と話し合いがもたれた。今回、人工呼吸器装着の

問題に結論がでないまま、救命救急外来で死亡した。

 当初在宅を希望しながら、末期状態で入院した理由は様々であったが

(表3)、病期の進行から来る不安感から本人から申し出のあった症例

(D)、患者の意識状態が悪化してから家入より申し出のあった症例(E)、

家人と医師の説得により入院した症例(F)があった。最後の入院期間は、1

日から17日であった。

表3

一口

A

B

C

D

E

F

G

1

2

2

2

2

6

7

59

6

12

78

22

84

16

15

 1

 17

 1

  本人希望

意識障害後家人希望

家人、医師希望

 家人の判断

 在宅医療の導入時には、在宅医療の適応、在宅医療のメリットとデメリッ

ト、主たる介護者の必要性と家族の支援、通常時、緊急時の支援体制が家人

へ説明されなくてはならない。今回の7例を検討して、在宅医療の導入に無理

があった症例はなっかたと思われた。しかし、退院時に選択した在宅終末期

医療は最後まで継続しなくてはならないものではなく、常に状況によって変

       一98一

(4)

山梨肺癌研究会会誌 10巻2号 1997

化するものであることを前提とし、在宅医療を中止するときの判断基準を充

分に

   話し合っておく必要があると思った。

図1

在宅介護スコア

川崎市立井田病院保健医療部

患者氏名

年齢

性別

lD

介護者

年齢

性別

続柄

病名

現  状

記載者

評価日

年  月  日

 介護者は” . 一 ≡ 一 壺 一 一 一 一 一 一 一 一 ≡ ≡ ’ ● ・ 一 一 一 ≡ 一 一 一 一 一 一 A , 一 . 一 ・ 一 ・ 一 一 , , @介護者の専念一 一 ・ 一 ’ ≡ ・ 一 一 ≡ 一 ’ 一 亀 一 . 一 一 ’ 一 ’ ← 一 一 一 ▼ 一 一 . . 一 ← 一 ’ 一 ・ 一 一 一 ≡ _ 一 @介護を代われる者は一 一 ’ ・ ’ 一 ≡ 一 一 一 ” 一 一 一 一 ’ ■ 一 一 ● 一 ● ● 一 一 一 一 一 ’ r ’ 一 一 ≡ 一 ← ● 一 ・ . 一

@公的年金以外の収入、’一”一一’一一一一一一・一’・一・≡’一・一・一・_≡よ_一一_一一●一・−7一

@患者の病室≡ 一 ≡ ・ ’ 一 ’ 一 一 一 一 一 一 一 一 ■ ● ● ● ■ 一 一 一 一 一 ● 一 ’ 一 ● 一 一 ■ ■ ・ ● ● ^ ’ 一 一 一 @住宅← 一 ・ ’ . 一 一 一 一 一 一 一 ・ 一 一 ・ 一 ・一 ’ ≡ ’ ■ ’ ・ ・ ’ ≡ 一 一 ’ ウ r , 一 一 ● ・ ・ ← 一 一

@食事  ・

 健康 1● 一 工 一 一 ’ ・ ・ 一 一 . . 一 一 ” 一 一 ← 一 一 一 一 一 . 一 @可 能 1・ . − P − 一 一 一 一 一 一 . 一 一 一 一 一 一 ● ’ ● ● ● 一 ’ 一 @い る 1− 一 ← ≡ 一 一 一 ” 一 一 一 一 一 ‥ ■ , 一 一 一 ’ 一 一 , 一 一 h A ●  −  ’  一  ∋  ●  一  一  一  一  一  ●  ■  一  一 ●  一 一 一 合  ’  一  一

 1−●A●一一一一一一一

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@16

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@患者の闘病意欲

 病 弱 0← 一 一 一 . 一 . ・ .  甲 一 ≡ 一 ’ ・ 一 一 一 亀 A ≡ 一 ← 一 一 ‘ @不可能 0’ 一 ‘ . ・ 一 一 一 ← ’ 一 一 一 一 一 一 一 一 ・ 一 ・ 甲 ・ 一 ・ ・ @いない 0←  ←  一  一 一  ■  ●  ■  ●  一 ●  ・  ●  一  ■  ■ 一  一 一 ± 一  ,  ←  一  一 , @な し 0−  一 ・  一  .  ’  一 一  ’  一  一  .  ’  一  一  ≡ 一  ← 一 ←  一  一  一  ≡  一  一 @な し 0− . 一 ・ ● ・ ・ …      ⇔ ・ . 一 一 一 ▲ 一 ← 一 一 ≡ 一 一 ≡ ∋ @借家 0. 一 ・ A − 一 識 一 → 一 一 ・ ’ . 一 . 一 一 一 ・ 一 ・ . 一 ・ 一 @介 助 0− ・ ⇒ 一 = 一 ・ 一 一 ・ 一 一 一 一 一 ’ ← . 一 一 ● , , 一 _ _ @介助 0− 一 甲 ・ ● . . ⇔ 一 一 一 ・ ・ ’ 一 ≒ 一 一 一 一 ← 一 , ・ . ・ @介助 0● 亀 . . 一 ● 合 一 ≡ 一 ^ 一 , 一 一 ≡ 一 ・ ・ . ・  ・ . ・ ≡ 一 @介助 0一 ヨ = 壺 ≡ 一 一 ’ 一 一 一 一 , 楡 一 . . ・ 一 ≡ ≡ …      一 ・ @介助 0−  .  ←  ←  一 一  一 一  一  ≡  一 一  一  一 一 ,  一  一  ±  亀  一  一  _ 一  ,  _ @あ り 0− ・ ・ 合 ● ≡ ’ 一 一   ‥ − 一 一 一 ・ 一 一 ■ 一 一 一 , 一 , 一 @あ り 0− 一 ≡ ≡ ” 一 一 一 一 ≡ ■ . . 一 、 ・ 一 ・ 一 , 一 一 _ 一 一 @あ り 0. A ・ 一 一 一 一 ← 一 一 一 一 ● , ・ . ・ ・ ■ 一 一 ・ 一 一 一 亀 @不良 0≡ ひ . ・ ● . 一 一 ’ 一 一 一 一 ’ ・ ・ . 一 , , 一 ≡ ≡ ≡ , 一

@不良 0

←  ・  ・  ●  ’  ←  一  一  一 一  ・  一  ’  一  一  ● ■  一  ≡  一  一  一  ’  ■  一 A 一 〟@≡ 合 一 一 一 ’ ’ ’ ” ● ・ ◆ 一 一 一 一 ∼ ’ 一 一 一 一 A ・ 一 ゚  一  ≡  一  ’  .  一  A  −  ●  一 一  一  ≡  ⇒  ●  ■  一  一  .  ■  ■  一  一  ’  ●  一

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@良好 2

合計

在宅介護スコア(   点)

結 果

(施設介護 ・ 在宅介護)

【評価基準】

*単身患者の場合は,介護者のポイントを0として評価を試みる.

*(1)介護者に病気はなくとも高齢で介護が十分にできない場合は「病弱」とする.

*(2)介護専念の可能性は,IHの関心と昼間の時間の大部分を介護に割き得るかにある.日中介護者と同義.介護者に幼児の

   育児や賃金労働があれば,専念は不可とする.

*(3)介護を代われる者とは,介護者が何日間か代わってもらえる家族などの日中介護がいるか杏か.短時間のヘルパーや訪問

   看護は含まれない.

*(4)公的年金以外の収入とは,本人家族の生活に必要十分な勤労収入や取り崩せる資産があるか杏か.公的年金や生活保護だ

   けの場合は「なし」とする.

*(5)患者の病室は専用の病室が確保できるか否かの問題.

*(12)意志疎通障書は失語や痴呆で介護に協力を得られない程度のものを「あり」とする.

*(13)異常行動とは痴呆などに伴う行動異常で講妄,幻覚,興奮,弄便,など

*(14)医療処置とは,尿道カテーテル,気管切開孔処置,経管栄養などの処置で,一般に病院では医療従事者のする作業を示す

*(15・16)患者や家族の意欲は,医療者が主観的に評価して記載する.積極的に在宅介護に意欲の感じられる場合は良好とす5,

意識障害のため患者の意欲の不明な場合は不良とする.

*各項目の点数を合計した評価スコアで在宅介護の可能性と困難度を予測する.高いスコアほど在宅介護の可能性は高くなり,

低いスコアほど困難度は高い.スコア10点以下では在宅介護の困難な可能性が高く,11点以上では在宅介護の可能性が高し、

*在宅介護スコアは家族介護力を示す.家族介護力の低い場合は地域介護力を必要とする.

参考文献

1柏木哲夫 夕一’一’一’tミナルケアマニュアル 第3版 最新医学社

2在宅療養の手引き一在宅医療を行う入々のために一一 ミクス

一99一

参照

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