頭蓋冠骨欠損部における骨髄幹細胞由来抽出蛋白質
浸漬HAシート被覆による骨再生法
著者
?田 孝俊
号
52
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
歯博第886号
URL
http://hdl.handle.net/10097/00130040
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論 文 内 容 要 旨
「目的」 本研究では線維状ハイドロキシアパタイトを凝集させた厚さ0.1mmのシートに様々な成長因子を 有する骨髄幹細胞由来抽出蛋白質を含浸させ,頭蓋骨の骨欠損部の脳硬膜露出部と同形のものを貼り 付け骨再生の効果について組織学的に検討した。 「方法」 動物には,12週齢の雄性ラット,24匹を用いた。全身麻酔下にて,頭部正中切開を行って骨膜を露 出させ,トレフィンバーを用いて,頭頂骨部に8.8mmの骨欠損部を作製した。骨髄幹細胞由来分泌蛋 白を染み込ませたハイドロキシアパタイトシート(HAシート)を骨欠損部の脳硬膜を覆うように設置 した(実験群)。剥離した骨膜を丁寧に戻して周囲の骨膜と縫合した。対照群として,生理食塩水を染 み込ませたHAシートを同様に設置した。HAシート周囲の組織の組織学的観察および形態計測を行っ た。 「結果」 HAシートは,表面構造ではナノファイバーが錯綜,凝集する材料であった。また切り出し断面では, 多層構造を示していることが確認された。 実験群では,2週ではHAシートの皮膚側に肉芽-線維性結合組織がみられ,脳側には既存骨の辺縁 や中央部に新生骨が確認された。4週,8週は,皮膚側の菲薄化した線維性組織がみられ,脳側の新 生骨は水平的方向に拡大すると同時に厚さも増加した。対照群は,2週では,皮膚側に,肉芽-線維 性結合組織がみられ,脳側では新生骨の形成が確認された。4,8週では,皮膚側には薄い線維結合組 氏 名(本籍) : 髙たか 田だ 孝たか 俊とし(東京都) 学 位 の 種 類 : 博 士 ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号 : 歯 博 第 8 8 6 号 学位授与年月日 : 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件 : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻 : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻 学 位 論 文 題 目 : 頭蓋冠骨欠損部における骨髄幹細胞由来抽出蛋白質浸漬 HA シート被覆 による骨再生法 論 文 審 査 委 員 : (主査)教授 市 川 博 之 教授 洪 光 准教授 髙 田 雄 京- 31 - 織,脳側に新生骨の形成がみられた。組織標本から計測した新生骨面積は,2,4週では,対照群に比 べ,実験群が多かったが有意な差はみられなかった。対照群では,2週から8週にかけて有意に増加 したのに対し(p<0.05),実験群では変化がみられなかった。マイクロX線CT像からのHAシートを 含む新生骨の体積については,対照群に比べ,実験群で有意に多かった(p<0.05)。実験群の4週が最 も体積が大きく,2週から優位な増加を示した(p<0.05)。 脳側の新生骨表面は2,4,8週のいずれ も新生骨表面に骨芽細胞の活性を示すアルカリフォスファターゼ活性を示した。実験群と対照群で明 らかな違いはみられなかった。TRAP陽性破骨細胞様細胞は,2週からみられたが,4週,8週で徐々 に増加した。またHAシートの皮膚側に比べ,脳側が多く,この違いは8週まで同様であった。皮膚側 に対し,脳側は有意に高い値を示した。 「結論」 今回検討したHAシートを硬膜に直接貼り付ける方法は,皮膚側の線維性組織の侵入を遮断できると 同時にハイドロキシアパタイトそのものの骨伝導,骨誘導作用により広い範囲で脳硬膜からの骨形成 を誘導することが期待できると思われた。HAシートによる成長因子担持の利用法は,骨膜を有する頭 蓋冠欠損での応用により,早期の骨再生と広範囲の骨誘導を可能にすると思われた。
審 査 結 果 要 旨
本研究は,新しい骨再生治療法の開発を目的として,ハイドロキシアパタイトシートに骨髄幹細胞 由来抽出蛋白を含ませ,骨形成能の効果を確認している。はじめにハイドロキシアパタイトシートの 吸水性を確認するために走査型電子顕微鏡を用いて超微形態的観察を行い,ハイドロキシアパタイト シートが線維状結晶を凝集させた構造で,吸水に優れていることを確認している。主たる実験は動物 実験で,ラットの頭蓋冠の骨欠損部を使用している。麻酔下にてトレフィンバーを用いて脳硬膜を開 放する円形の骨欠損部を作製し,骨髄幹細胞由来抽出蛋白を浸漬させた欠損部と同形の円形ハイドロ キシアパタイトシートを骨欠損部の脳硬膜に設置し実験群としている。また対照群として生理食塩水 を浸漬したものを設置している。手術後,2,4,8週で観察した。実験部位を切り出し,マイクロX 線CTで撮影した後,EDTA溶液にて脱灰し,パラフィン包埋標本を作製し,各種染色を行って組織学 的に検討している。マイクロX線CT写真の立体像から,実験群,対照群ともに4,8週にかけて骨欠 損部の境界を不明瞭とする欠損部への新生骨形成を確認している。このような新生骨形成は皮膚側に 比べ脳側で明瞭であった。CT画像から形態計測を行った結果,ハイドロキシアパタイトシートを含む 欠損部新生骨量は,2,4週で対照群に比べ,実験群で有意に多いことを明らかにしている(p<0. 05)。また前頭断面での組織標本からは,ハイドロキシアパタイトシートの表層に新生骨形成を確認 している。新生骨は脳硬膜およびハイドロキシアパタイトシートに接して形成されたが,脳側で多く, 皮膚側では少ないことを明らかにしている。皮膚側でみられたハイドロキシアパタイトシート近傍の 線維性組織では為害作用を示す炎症等の反応はなく,良好な治癒を示す線維性結合組織による被包を 確認している。新生骨形成は,組織化学染色のアルカリフォスファターゼ染色でハイドロキシアパタ イトシート表層の陽性反応からも確認している。一方,組織化学染色による破骨細胞の検討では皮膚 側に対して脳側で有意に多くみられたことを確認している(p<0.05)。特に脳側の4週では実験 群比べて有意に多いが(p<0.05),8週では激減している。以上のことからハイドロキシアパタ イトへ骨髄幹細胞由来抽出蛋白を浸漬した方法は効果的に新生骨形成を示している。また骨形成反応- 32 - は,硬膜側で顕著で皮膚側の骨膜に比べ,脳硬膜に連続する骨膜の反応が有意であることを明らかに している。さらにこのような反応が破骨細胞と密接な関わりを持つことを考察している。 以上のことから本論文は,ハイドロキシアパタイトシートと骨髄幹細胞由来抽出蛋白が新しい骨再 生治療法へ応用できる可能性があることを明らかにするとともに,骨形成メカニズムの解明に寄与す るところが大きい。よって本論文は博士(歯学)の学位授与に値するものと認める。