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硫黄鳥島の土壌動物 第一回調査(多足類・アリ・ササラダニ類を中心にして): 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

ダニ類を中心にして)

Author(s)

大嶺, 哲雄; 中玉利, 澄男; 高嶺, 英恒

Citation

沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(3): 11-39

Issue Date

1983-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/5681

(2)

硫黄鳥島の土壌動物第一回調査

(多足類・アリ・ササラダニ類を中心にして)

註1)註2)

大嶺哲雄・中玉利澄男・高嶺英恒

I.はじめに Ⅱ島の自然環境 A地形及び地質と歴史的背景 B・植生と生態環境 C・硫黄烏島と動物地理学的意味 Ⅲ土壌動物相からみた特徴 A)採集対象の区分及び採集方法 B)各土壌動物相の特徴 1)多足類a)ムカデ類 b)ヤスデ類 2)アリ類 3)ササラグー類 Ⅳ.まとめ 参考文献及び参考書 1.1まじめに 硫黄烏島はトカラ列島系に属する沖縄県唯一の活火山島である。 筆者は1976年8月以来これまで数回にわたり奄美大島を中心にトカラ列島 (中之島及び宝島)を観察する機会があった。その関係で奄美大島や沖縄本島 などと比較する意味もあって硫黄鳥島は一度是非訪ねてみたいと願っていた。 幸いに、烏島郷友会(七嶽会々長東江芳隆氏)の御好意で1983年8月同島に立 .・・....・・..。..・・・・・・・・・●・■・・・・・●●・・・・●●・・●・・・・・・・・・・●●・・・・・・●●●●●●・・●●●●●●●●●●●●●●●c●●●●●●●●●●●●◆●●●●●● 註1)沖尚高校教諭註2)沖尚高校教諭 -11-

(3)

ちよる機会を与えて戴いたので、とりあえず土壌動物に関する若干の知見を報

告したい。

本稿を草するにあたって、調査に協力して下さった七嶽会の皆様をはじめ、

琉球大学地質調査団の加藤祐三郎助教授や地理学の目崎茂和助教授御一行と同

行することができて、地理や地誌について多大な御教示をいただきました。

ここに諸先輩をはじめ、御指導、援助をいただいた多くの方々に衷心より厚

く謝意を表します。

第一回('83)沖大硫黄烏島調査団として参加したメンバーは次の通り、

沖尚高校の中玉利澄男教諭(ササラダニ担当)、同高校高嶺英恒教諭(アリ類

を担当)。写真及び設営担当に大嶺智(沖大学生)、筆者は多足類その他土壌

動物一般の採集を担当した。 Ⅱ島の自然環境 A・地形及び地質と歴史的背景

硫黄鳥島は、1906年(尚寧21年)、薩摩が琉球を侵略した際、北緯27度以

北の島を自らの領土としたが、琉球から中国への進貢に必要な硫黄を得るため

に政治的意図から琉球領として残したと伝えられろ。

地理的にみれば奄美大島の徳之島西方65km、北緯27.52'・東経128.14'の

位置にあり、トカラ火山列島の最南端に当る。

現在、沖縄県久米島具志川村に属するが無人島のため連絡船がない。国頭村

本部町の本部新港よりチャーター船フェリー「城山」で約6時間を要する。

人が交流しはじめたのは何項からか定かでないが、1534年(尚清8年)、陳

侃「使琉球録」によれば、「硫黄山」として知られていた。古くから硫黄採掘

や杵の産地として注目され、17世紀の頃には既に人夫が送り込まれ毎年2万斤

の硫黄と摺貝800枚の上納が義務づけられていたという。

1903年(明治36年)には世帯数も100戸・人口676人と増加した。しかし、

-12-

(4)

硫黄鳥島地形図 ■■・-●■の●。S■⑪●●●●●●■■■●■■●。□。C■。■P●●いウー●●□●■。●吟■。●■●。■●◆句◆。q●⑥●q●。 『 … 》l1iI…11

~トー

-1TNNり門111鵬鹿児島儒

諸一島轌為鵜一

28。

Ⅶ鯵

伊平屋島

鼻是鴻

27。 沖繩県

P粟国島

渡名喜島

久米曇

;WP

O 慶良間列島 26。 129. 127◎ 128。 地図 1 13

(5)

島は平野部が狭く、水源に乏しいため、農耕に適さず、その上、火山のため自 然災害が頻発したので島の生活は厳しいものであった。 1664(尚質17年)、地震飛沙、1829年(尚彰26年)火山爆発、1903年大 鳴動などがあり、1954年(昭和34年7月)には全住民85人が那覇などに移住 し、現在は山羊数十頭を残し、時折、徳之島方面からの漁民やダイバー達の休 憩地となっている。

、島は長径(北西~南東)約3km・短径(北東~南西)約1km、面積約261,12

の楕円に近い小さな火山島である。 海岸線は沖縄本島で見るようなサンゴ礁はほとんど見当らない。海底火山噴 火で噴出物の堆積によってできたのであろうか。島は二つの新旧の火山体から 成っており、火山活動は二つの時期に分かれて起ったと考えられろ。島の中央 部と南部に1日火山活動があり、その後、活動の中心が北部に移って来たと考え られろ('82加藤)。それが、現在噴煙をあげているトリノトコヤギーイノ山(標 高217m)とその隣りにある硫黄岳(210m)である。 島の周囲は一部を除いて、20m以上の断崖絶壁に囲まれ、洋上にそそり立つ

形となっていろ。北端の北東斜面は噴火の際、火口が崩れ、お椀の縁が欠けた

形となって、一部に段丘をつくる。 土質は主に①溶岩性の岩石、②火砕岩(凝灰岩)、③火山灰性土壌(火岩砂 や火山礫)で覆われろ。(地図-2参照) B植生と生態環境 これまでの植生調査では78種類の植物が記録されている('76.琉大,新納 義馬教授、’82,尾川原氏)。 ①海岸線ではグンパイヒルガオ、ホソバワダン、ハマセンナ、ツハブキが目 立つ。②段丘の斜面では、ソテツ、マルパニッケイ、シャシャンポ、シラタマ カヅラなどに覆われ、黒い岩壁にうるおいを与えているようにみえる。 ③新火山体の噴火口付近はいずれも無植物地帯で、赤茶けた酸化鉄を多分に -14-

(6)

稔 函豊。。 hl-----… …四期国領笈賦U

》熟調.

▽璽網 特職歴聴鰹・特躍座蕊営川・肝靭 麗藤・歯礎■卜・遜叙・亟俳 、うゃ・砥(霜・閉騰・け〔v代・笹 日頃鞆毎 冨屡e娼曇0厘国欝涛 Z 必凹 鳳匿 腹● ̄古Ⅱ- 四《躍迩巴伽匝・叩報嚢伽) 町蝦・刊函暑田幽蝿廷 咽口輪、 冨亟

一辱三淫一 ・月二雲霞誼 ●、・・

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§: ヨ掴巨 弓0 円 Cl 函碧 -15-

(7)

含んだ、サラサラした火山灰性の砂でおわれろ。日中は焼付くような暑さであ る。しかし火口より数十米も離れたところでは、わずかに、ハチジョウススキ

倭少化したシャシヤンポが自生する。これに隣接する硫黄岳(210m)の裾野

の植生は豊かで、特に盆地には2mもあるススキやリュウキュウマツ・シヤリ ンバイ.オオシマコバンノキなどの風衡低木が茂り、強い太陽の反射をやわら げてくれろ。 したがって、このあたりから南部にかけて動物相も豊かになる。

島の三分の二壱占めろ'日火山帯(外輪)にはグシク山(131m)と前岳(210雁)

があり、その間に盆地が形成され、旧部落跡がみられる。このあたりでみられ る主な植物は前述した植物とかわらないが、方々にマルバニヅケイや、ハチジ ョウススキ、スズメノコピエ、コシダ、シャリンバイが繁る。

特に、グシク山の裾野には傾斜を利用して雨水を貯水する池が数箇所につく

られてあり、島の水事I盾の厳しさを偲ばせる。 C・硫黄鳥島と動物地理学的意義

DavidBraus(1884)は日本の動物相において東洋区系(中国南部、東南ア

ジア.台湾)と旧北区系(ヨーロッパ全域とアジアの大部分を含む動物相)との 間に一線を画す重要な境界線が九州南部にあることを指摘した。

以来、屋久島の南を通る渡瀬線(1921年、哺乳類、鳥類で異なることを渡瀬

圧三郎博士により、提唱)。また、江崎1悌三博士は陸棲哺乳類(たとえば、ア

マミクロウサギ<特殊化>・鳥類(ルリカケス)・il1i''三類、は虫類(トカラハ

ブ)、昆虫類、クモ類や陸産貝などの分布について大隅海峡間に分布上の特性

があることを主張した。(三宅線。1929)

このように琉球弧はわずかに1200kmの間に渡瀬線、三宅線、沖縄線(蜂須賀

正、1926)などの提唱があるように動物相が著しく異なっており、これが東洋

のガラパゴスと呼ばれる所調である。 Darlington(1957)は島喚分布の型を3つの型に分けていろ。 -16-

(8)

第1の型は古種保存型である。島の動物は通常大陸からの移住した種が、地

殻の変動などにより隔離され、特定の島にとじこめられて特殊化する例である。

たとえば、西表のイリオモテヤマネコや沖縄本島のヤンパルクイナ、奄美大島

のアマミクロウサギなどにみられる型で遺留型分布をする場合である。 これらはその地域で絶滅の危機にさらされている場合が多く、天然記念物に 指定され保護されている。

第2の型は移動型分布型である。鳥類や昆虫のように飛翔力のあるものが近

隣の島から移動し、生活条件が適し、しかも天敵がいなければ、その島で繁殖

し、棲み着く例である。

しかし、琉球列島のハブの分布のように、ある時期に大陸や隣接する島を移

動し(陸橋形成の頃)、拡散したが、島の隆起や陥没のため、生息している島

とハブのいない島が飛び飛びに分布する結果となったケースもある。

衆知のように、ハブはクサリヘピ科の毒ヘビで台湾から先島に渡り、これが

やがてサキシマハブとなり、さらに北上し、沖縄本島各地に拡がり、リュウキ ュウハブとなった。

ハブはこのように南から北上し、奄美大島を経てようやくトカラ列島の南端、

宝島、小宝島でlこり、とれがトカラハブとなった。

硫黄烏島にはハブの生息は未だ聞かない。別に硫黄を産する島だからではな

い。多分、島の形成が前述したように古代の陸橋時代のつながりがなかったか。

島の面積から、侵入して生活条件が適さないため消滅したか、また新しい島で

あるため、渡るチャンスがなかったのか。その原因はよくわからない。

第3の分布型は偶然に棲みつぐ場合が考えられろ。つまり、島喚問で動物が

どのような移動のしかたをするのか、侵入、拡散、そして遺留するのか、その 要因は複雑でいろいろの型があると思われる。

Darhngton(1957)によれば、①島の大陸からの距離、②他の島の存否(孤

島、列島、群島)、③海峡の広さや深さ、④地史的古さや変遷、⑤季節や海流

-17-

(9)

⑥動物自体の拡散能力、⑦島内の生態環境、⑧島の広さと地形、高さ、⑨人為 的影響等を挙げていろ。(動物地理学_黒田S47) 特に土壌動物の場合、自力で海峡を渡る能力や飛翔力に乏しく、結局、流木 や他の動物に附着または寄生して移動するか対人によって運搬されたりするこ とが考えられる。 兎角、移動能力の弱い土壌動物がどのようにして移動、侵入対拡散、定着す るか十分解明されていない。 この分布開拓の機構の解明に大きなヒントになった有名な話がある。 Dammerman(1948)のスマトラとジャワ間にある小島(Krakatau)の報告 がある。 「Krakatau島は火山性で1883年の噴火で-部を残して海没し、動物相は完 全に灰におおわれて死滅した。しかし25年後の1908年にはシダなどの植生が 回復し、ハト、カワセミ、ヒヨドリの鳥13種、トカゲ類、クモ、アリと192種 もの動物が回復し、さらに1921年には森林が発達した」という。 硫黄鳥島の場合、島の面積が狭く、火山の影響で自然条件が厳しく、今の所、 70種余の動物が記録されていろ。 また近年は山羊を捕えるために火入などをするため、純粋な形で自然が保存 されているわけではない。しかし沖縄唯一の火山島である島の自然がどのよう に変化するか、動物の種数や個体数の変動などを観察し記録するために自然の 絶好な実験室として貴重な存在である。また、琉球弧における奄美小区と沖縄 小区における動物地理分布の上から、各自の動物相の解明と同時に、各島々を 結び目として人為的影響の少ない硫黄烏島の生態系の研究は今後、重要な意義 をもつものと信じろ。 Ⅲ、土壌動物相から見た特徴 A)採集対象の区分及び採集方法 -18-

(10)

硫黄烏島地形図 ゴ火山地帯(B鋤 ヲTソ(山瓦nF旨(A地 )

鱒鐵

』βと凶QQ6;ロ , /( し- AB のH1J目、作 曰火山i2lh雷(B帥 ヲT火山期行うP(Arlm コカゴ比鞭、臂盟凛 m-

iiiI

の1つ侃永 や麹 甲の夢 ■の嚢, U-- 約3.0km 北西 南東 AB線切断面図 地図-3 -19-

(11)

一口に土壌動物といっても広範囲にわたる分門にまたがるので、到底限られ た陣容では手におえない。 1)大きさで分けろと以下の4つのfaunaに区分できる。 ①microfauna②mesofamn③macrofauna④megafauna 今回は主にムカデ類、ヤスデ類、アリ類、ササラダニ類を含むmesofauna からmegafauna(オオムカデ類、ミミズ類、ネズミ類)を対象にした。 2)採集方法 島の概観を把握するため、3人の採集者はできるだけ広範囲に採集できるよ うに島の南端を起点に縦列に西側列、中央側、東側列に沿うように分散して採 集を行った。 o多足類については方形区を取ってハンドソーティングによる方法。 oアリ類についても同様の方法で吸虫管使用。 oササラダニ類は一定の場所からlitterlayer落葉層及び腐殖層を取り、こ れをビニール袋に取り、後日ツルグレンにかけて分離、採集を行った。 B)各士壌動物相の特徴一多足類(ムカデ・ヤスデ類)・アリ類及びササラダ ニ類における種群構成とその特色(表-1参照) ’)多足類 a)ムカデ類は2目3科3属3種を採集。 奄美大島本島や沖縄本島と同系統であるが同島からはこれが新記録種とな る。 イシムカデ科、ヒトフシムカデ属 1.ムラサキヒトフシムカデ 学名MonotarsobiuspurpureusTAKAKUWA 2ナガズジムカデ科の1種(TaiwaneUa屋?) 3.サキブトジムカデ ①ヒトフシムカデの形態的特徴を略記すると、全体の体色は赤褐色。体の -20-

(12)

表-1硫黄鳥島の主な土壌動物 -21- 旧火山地帯(B区) 新火山地帯(A区) 硫黄岳 トリノトコヤ」ニイノ山 動物名 大型土壌動物 ネズミ 類 クマネズミ(死骸・頭骨のみ) 中型土壌動物 昆虫類 ゴキブリ類 コオロギ.〃 カマキリ〃 シロアリ〃 甲虫〃 ハネカクシ サツマゴキプリ チャバネゴキブリ 2種 コオロギ類1種 シロアリ類1種 カマキリ(麓)① 甲虫類① ハネカクシ類④ アリ類 20種 クロヒメアリ アメイロハヤアリ シリアゲアリ ① 真jEクモ類 4種 ダニ(目) ササラダニ27種 (全域) カニムシ(目) カニムシ1種 等脚(目) 端脚(目) ワラジムシ(科)1〃 オカダンゴムシ(科)1〃 ハマトピムシ(科)1〃 ① ムカデ類 ムラサキヒトフシムカデ サキプトジムカデ ナガズジムカデ 3種 ヤスデ類 ヤケヤスデ オオギヤスデ ポウニンジヤスデ フサヤスデ 4種 麓① 結合綱 コムヵデ1種 ① 陸産貝 オキナワウスカワマイマイ1〃 リュウキュウキセルモドキ? ① ミミズ類 ン上 マメ ヘミ『く 「く『ミ 掌ス学ス 11 〃〃 合計70種

(13)

の前後両端が暗紫色で、他の種と区別される点となる。顎歯の基節には東リ毛 はなく基節前縁の歯は左右各々2、中央は深くかつ丸く陥入する。 愛知県(片浜)、静岡県(佐久来)から知られろ。沖縄県では西表島('69. 大富)、沖縄本島でも採集されているが、本来北方系(旧北区及び全北区系種) に属する種である。 他地域ではイッスンムカデが優先種となるのが普通であるのに、この地では イッスンムカデに代ってムラサキヒトフシムカデの個体数が多いのが特徴とな っている。 ②ナガズジムカデ科の1種でTaiwanella属(タイワンジムカデ属)と思わ れる個体を採集したが、残念ながら、個体数が1頭であるため、十分確認され ていない。 仮りに、タイワンジムカデであれば、日本からの新記録種となり、硫黄烏島 がその北限とされるわけで、今後注目される種である。 ③サキブトジムカデは、沖縄全島の落枝葉や腐植土の中からみつかるポピ ュラーな種である。 b)ヤスデ類3科3属3種 ムカデ同様、①タケヤスデ、②オオギヤスデ、③ポウニンジヤスデ、④フ サヤスデの4種を確認。いずれも新記録である。 ①のタケヤスデは琉球各地で極く普通に知られる種でヤスデの代表種である。 島の優占種となり、圧倒的に個体数も多い。 ②オオギヤスデは小型のヤスデで、広葉樹の落葉や腐植土中から採集される種 類で、琉球弧の各地の山地でみられろ。③ボウニンジヤスデsp・の記録は小笠原 父島('45.高桑)から、初めて知られたが、戦後、筆者は沖縄県伊平屋(野甫 島)と那覇市識名('65.大嶺)から採集していろ。しかし、沖縄では稀にしか 採集されていないが、今度数個体得ることができたし、同種の北限が更新され たわけである。 -22-

(14)

以上、ムカデ・ヤスデ類はいずれも旧火山地帯の低木層の植生のある地帯か ら採集されているが、オオムカデ目の種類は’個体も採集されていないのが今 度の特色となっていろ。 2)アリ類高嶺英恒('83.8.7.) アリは社会性昆虫の中で最も優勢で全世界で約4,000種が知られている。 8亜科の中5亜科は日本産である。 食性も雑食性が多く、ハリアリ亜科やフタフシアリ亜科の一部は昆虫の幼虫 やクモ、多足類なども捕食する。一部のものは植物性の餌をとろのも知られろ。 一般にアリの分布の傾向`性をみると、温帯から暖帯そして亜熱帯と南下するほ ど、種類が増加すると言われるが、硫黄鳥島のアリは4亜科15属20種を記録 できた。 島全体に分布する代表的なアリにはクロヒメアリとアメイロハヤアリがあげ られろ。 同島のアリ分布では噴煙を吐いている硫黄岳の頂上付近で、クロヒメアリと シリアゲアリがみつかり、また旧火山地域のカルデラ盆地のススキの中からは クピレハリアリ(sp)が1種みつかっている。またウロコアリはトカラ列島よ り知られていろ。 次に各pointで採集された種名を参考までに掲げろ。(次頁) -23-

(15)

注)Pointl Point2 Point3a 〃3b Point4 Point5 Point6 硫黄岳頂上付近 硫黄岳麓付近 島の中央部(道端付近) 〃(木) 前岳(松の木) 前岳(ススキ原の中) 端の浜(海岸線) -24- NbL種名 Point 2 3 3a 3b 4 5 6 7 1クロヒメアリ ● ● ● ● ● ● ● 2アメイロハヤアリ ● ● ● 3ルリアリ ● ● ● ● 4オオズアカアリ ● ● ● 5ハダカアリ ● 6シリアゲアリ ● ● 7アメイロアリsp、1 ● 8 sp. 2 ● ● 9 sp. 3 ● ● ● 10 sp。 4 ● 11 sp. 5 ● 12 sp. 6 ● 13シワアリ ● ● ● ● 14オオアリ ● ● ● ● 15ウロコアリ ● 16オオシワアリ ● 17クピレハリアリ ● 18アワテイキイコヌカアリ ● 19ムネボソアリsp. ● 20トフシアリ sp. ●

(16)

3)ササラダニ群の概要中玉利澄男 全島から22科25属27種を確認。 ダニ類は動物に寄生する吸血性ダニ(中気門亜目)と複毛群に群する隠気門 亜目(植物性ダニ)-ササラダニ群に大別できる。 と>ではササラダニだけを取扱うことにする。

同島の優先種としてリュウキュウマルコソデダニとScheloribotessp・で占め

られろ。 1つの興味ある分布を示しているのは前者のマルコソデダニである。同種は 西表島だけから知られているだけで、宮古、沖縄本島を飛び越えて硫黄鳥島に 分布することを知った。その点で、今後注目すべき種類である。 また、ササラダニ類に関しては同島からの記録はほとんどないので今回の採 集で知られる以下の種群は新記録である。(表-4参照) Ⅳ.まとめ 今回の調査は土壌動物を中心とする第1回調査であるが、台風4号、5号で 順々延期となり、やつと8月6日に出航となったが、台.風6号接近の1盾報で日 程を早め、上陸2日目で引き揚げざるを得なかった。 本調査で採集確認した土壌動物の総数は70種である。(※-部琉球新報紙夕 刊掲載′83.10.20.上27.下) その内訳は、①多足類7種、②アリ類20種、③ササラダニ類27種、④ミミ ズ類2種、⑤陸産貝4種、⑥クモ類4種、節足動物6種(甲虫を含む)、その 他ネズミ1頭(クマネズミ死骸)。 今度の調査目的は同島がどんな生態環境をしているか、どのような土壌動物 が生息しているか、などの基礎資料を収集するためであった。短時間で甚だ不 十分ではあったが、一応の成果はあったと思う。 1)先づ、島内の生態環境を大別して、新火山地域(A区と名付けよう)と -25-

(17)

旧火山地域(B地域)に分けられる。 A地区には、現在さかんにガスの噴出があるトリノコヤギーイノ山(217祝)

の頂上付近とその山麓及び硫黄岳付近の生態系が含まれる。

この地域は植相も貧弱で土壌は赤く酸化して、乾燥し、日中は30℃を越す暑

さである。したがって土壌動物はほとんどみあたらない。しかし硫黄岳頂上で

珍らしくも、シリアゲアリが採集されていろ。これが常時生息しているものか、 何らかの形ちで人為的に運ばれたものか定かではない。

②B地区(1日火山地域)には、「グシク山(131m)」と前岳(210m)に囲ま

れる盆地帯の生態系が含まれろ。

ほぼ島の中央部から南側に形成された旧火山体とその外輪によってできた丘

陵帯で植生が豊かである。したがって全島の士壌動物の98%がこの地域から採

集されていろ。

島のやら中央部の盆地に当る俗に「から温泉」とよばれる水は湧き出ていな

いが岩間から90℃の蒸気が噴出し蒸し風呂になっている地域がある。この一帯

は2m程度の低木が茂り、ブッシュを形成し、植生も豊かである。鳥などもと

>で餌を求めたり休養をとろのだろう。

低木広葉樹林のlitter層(lmx1m)の方形区から、土壌動物の種類数と

個体数を調べた結果、19種、161個を算出した。 ワラジムシ51.5% アリ類198% ミミズ類6.8%

その他、多足類、クモ類、ゴキブリはいずれも10%以下となっており、他

地域に比べて極端に少ないことがわかった。 -26-

(18)

表-2硫黄鳥島多足類一覧表 ('83.8.7.現在) -27- ムカデ類 ジムカデ(目) イシムカデ科 ヒトフシムカデ属 ①ムラサキヒトフシムカデ マツジムカデ科 サキブトジムカデ属 ②サキプトジムカデ ナガズジムカデ科 ナガズジムカデ属 ③ナガズジムカデ ヤスデ類 sp. (3科3属3種) ヤケヤスデ科ジヤスデ科 ヤケヤスデ属⑥ポウニンジヤスデ ④ヤケヤスデ クピヤスデ科フサヤスデ科 オオギヤスデ属フサヤスデ属 ⑤オオギヤスデ⑦フサヤスデ (4科4属4種) 計7科7属7種 △‐ ロ

(19)

表-3硫黄烏島アリ類一覧表 (83.8.7.現在) -28- アリ類 カタアリ亜科 ヤマアリ〃〃 フタフシアリ〃〃 クレピレハリアリ〃〃 リ ①ルアリ ②アワテキイロコヌカアリ ③アメイロアリ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ sp.1 sp・2 Sp、3 sp. sp. 4 5 sp、6 ⑩ォオアリ ⑪アメイロハヤアリ ⑫オオズアカアリ ⑬ ノ、 ダカアリ ⑭シリアゲアリ ⑮シヮ アリ ⑯オオシワアリ ⑰ムネボソアリ ⑱トフシアリ ⑲ヒメアリ ⑳クピレハリアリ 4亜科15属20種

(20)

表-4硫黄鳥島ササラダニ類一覧表 ('83.8.7.現在) -29- ササラダ 夕 --類 ①クゴウイレコダニ ②ハナピ フ イレコダニ ③Paraphthiracarussp. ④ ヒメヘソイレコダニ ⑤Austrotritiasp. ⑥フトゲナガヒワダ ⑦0 カザリヒワダ 一 一 二 ⑧スズキチョウチンダニ ⑨Epilohmannia sp. ⑩ハナピラオニダニ ⑪ホソツキノワダ二二 ⑫Eremulus sp。 ⑬ヤマトクモスケダニ ⑭ Liacarus sp. ⑮イトノコダ二 ⑯コノハイプシダニ ⑰ツパサクワガタダ二 ⑱(ロ-イカダニ ⑲コブヒゲツブダニ ⑳0ppla sp. ⑳Scheloribates ⑳ sp sp 1 2 ⑳リュウキュウマルコソデダニ ⑭Protoribates ⑳ ノマロ-コノマ sp。 ネダ二二 ⑳Eupelos sp. ⑰ Galumna sp. 合計 22科25属27種

(21)

以上が今回の調査の概要であるが、ボウニンジヤスデBonmozonium属の1 種やリュウキュウマルコソデダニ(南方系種)のように飛び離れた地域の種属 があるかと思えば、ムラサキヒトフシムカデのような北方系の種が生息すると いうように、小さな島で南北両種が見られる点で興味深いものを感じたα 概して種類数の割には個体が少ない点などから島喚型分布の典型を示してお り、今後どのような遷移があるか、さらに隣接地域との関連や、また飛翔力の ある鳥や昆虫などによってどのようなものが侵入するかなど、他の動物群との 相互関係などにも関心をもって継続調査を実施してみたい。 -30-

(22)

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(23)

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(24)

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(25)

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(26)

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参考文献及び参考図書 1.高桑良興1940「唇足綱整形類ジムカデ目」日本動物分類9巻8編1号 (三省堂) 2.””1942「唇足綱改形類イシムカデ目」日本動物分類9巻8編3 号(三省堂) 3.〃〃1954日本産倍脚綱總説(日本学術振興会) 4.三好保徳・高桑良興1964新日本動物図鑑(中)(北陸館) 5.大淵真龍1965新日本動物図鑑(上)(」腱館) 6.黒田長久1973生態講座23動物地理学 7.木崎甲子郎198o琉球の自然史(築地書館) 8.加藤祐三1982「硫黄島島の自然」琉球新報(1982.8.13日号) 9〃〃1983「硫黄島島の火山活動」上・下琉球新報掲載(9月8日夕 刊) 10.嘉手納宗徳・新納義馬1983沖縄百科事典 11.宮城栄昌・高宮広衛1983沖縄歴史地図25(柏書房) 12.青木淳一1973土壌動物学(北陸館) 13大嶺哲雄1965「沖縄新産のヤスデ類」沖縄生物学会誌第2巻4号(12月) 14.〃〃1969「沖縄産ムカデ類」沖大論叢NU9,voLL 15.〃〃1977AnoutlineofMYRIOPODAfaunainTakarajima andNakanoshima.(琉球大学理学部陸棲動物) 自然保護研究シリーズ 16.大嶺哲雄・中玉利澄男・高嶺英恒1982 1982西表島中央部の土壌動物相沖縄大学紀要第2号(通巻 22号) -39-

参照

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